説明

媒体搬送装置

【課題】低コストで、紙葉類搬送時に装置内で発生する騒音を低減することができる媒体搬送装置を提供することにある。
【解決手段】実施形態に係る媒体搬送装置は、媒体を搬送する搬送機構と、前記搬送機構を収容し、第1面24及び当該第1面24に対向して配置される第2面28を有する筐体21であって、前記媒体を取り出し、或いは排出するための第1開口部23が前記第1面24に形成され、前記第1開口部23の合計面積の0.3倍以上の合計面積を有する第2開口部26が前記第2面に形成されている筐体21と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、紙葉類等の媒体を搬送する媒体搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙葉類(紙状媒体とも称せられる。)を検査及び処理する装置、例えば、プリンタ、複写機、現金自動預払機(ATM)、銀行券処理機、郵便物処理装置等の装置においては、印刷用紙、紙幣、コピー紙、封書、葉書、カード、証券類等の紙葉類を扱っている。このような装置は、紙葉類を搬送するための媒体搬送装置を備えている。上記の装置においては、年々搬送速度又は処理能力の向上が要求され、これに伴って装置内部で発生する騒音及び熱等が増大する問題がある。郵便物処理装置の集積部では、熱を発生する機器の実装密度が小さいことから、放熱よりも低騒音化が重要になる。
【0003】
媒体搬送装置において生じる騒音としては、固体伝播音、空気伝播音、反射音及び共鳴音等がある。媒体搬送装置の筐体が金属製である場合、筐体内部で空気共鳴が発生することが多く、共鳴音が筐体の内壁面で反射され、反響され、増幅される。郵便物処理装置のような媒体搬送装置では、紙葉類を筐体内に導入するために、或いは、紙葉類を筐体外に排出するために、機能上遮蔽することができない開口部が筐体に形成されており、筐体内で増幅された共鳴音がこの開口部から騒音として放射される。金属筐体の内部共鳴による騒音を低減する方法としては、筐体の内壁面に吸音材を貼り付ける方法があり、また、放熱用に設けられた開口部からの騒音を低減する場合には、放熱用開口部にルーバーを取り付ける方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−20898号公報
【特許文献2】特開2008−142974号公報
【特許文献3】特開2009−57857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した吸音材を使用する騒音低減方法においては、郵便物処理装置等のような大型の装置では吸音材を貼り付ける領域が大きく、コスト高及び手間の増大につながる。また、紙葉類を導入するための開口部、又は紙葉類を排出するための開口部には、ルーバーを取り付けることはできない。従って、媒体搬送装置においては、低コストで、紙葉類搬送時に装置内で発生する騒音を低減することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、媒体を搬送する搬送機構と、前記搬送機構を収容し、第1面及び当該第1面に対向して配置される第2面を有する筐体であって、前記媒体を取り出し、或いは排出するための第1開口部が前記第1面に形成され、前記第1開口部の合計面積の0.3倍以上の合計面積を有する第2開口部が前記第2面に形成されている筐体と、を具備する媒体搬送装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態に係る郵便物処理装置を概略的に示すブロック図。
【図2】図1に示した区分集積部の外観を概略的に示す斜視図。
【図3】図2に示した区分集積部を概略的に示す断面図。
【図4】図2に示した区分集積部が備えている搬送機構を示す概略図。
【図5】ホワイトノイズに対する筐体内騒音計の周波数応答を示すグラフ。
【図6A】図5の実験に使用した筐体の寸法を示す図。
【図6B】図6Aに示した筐体で起こる共鳴モードの一例を示す図。
【図7】一般的な吸音材における吸音率の周波数特性を示すグラフ。
【図8】図2に示す筐体の背面を概略的に示す斜視図。
【図9A】図8に示した背面扉に形成されている開口部の他の例を示す概略図。
【図9B】図8に示した背面扉に形成されている開口部のさらに他の例を示す概略図。
【図9C】図8に示した背面扉に形成されている開口部のさらにまた他の例を示す概略図。
【図10A】図3に示した開口部にルーバーが取り付けられた例を概略的に示す側断面図。
【図10B】図10Aに示したルーバーの一部を拡大して示す模式図。
【図11A】図10Bに示したルーバーの他の例を示す模式図。
【図11B】図10Bに示したルーバーのさらに他の例を示す模式図。
【図11C】図10Bに示したルーバーのさらにまた他の例を示す模式図。
【図11D】図10Bに示したルーバーのさらに他の例を示す模式図。
【図11E】図10Bに示したルーバーのさらにまた他の例を示す模式図。
【図12】開口率と平均吸音率との関係を説明するための金属製筐体を示す断面図。
【図13】図12に示した筐体における開口率と内部音響エネルギーとの関係を示すグラフ。
【図14】図12に示した筐体に設けられる開口部に取り付けるルーバーの一例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、必要に応じて図面を参照しながら、実施形態に係る媒体搬送装置を説明する。
【0009】
図1は、一実施形態に係る媒体搬送装置としての郵便物処理装置を概略的に示している。この郵便物処理装置は、図1に示されるように、積層された郵便物を1通ずつ分離して搬送路上に取り出す供給部11、並びに、取り出された郵便物の表面に記載されている郵便番号及び住所等の区分情報を取得する宛先認識部12を備えている。さらに、郵便物処理装置は、取得された区分情報に基づいて、郵便物を区分して集積する区分集積部13を備えている。区分集積部13には、区分された郵便物を集積するための複数のスタッカ(図2に示される。)が設けられており、区分された郵便物は、対応するスタッカに集積される。
【0010】
供給部11には、作業者による手作業で、複数の郵便物が一括してセットされ、即ち、積層される。積層された郵便物は、供給部11によって、1通ずつ分離して取り出され、搬送路へ供給される。取り出された郵便物は、搬送路に沿って宛先認識部12へ搬送される。
【0011】
宛先認識部12では、郵便物の表面に記載されている区分情報が読み取られる。具体的には、宛先認識部12は、郵便物の画像を取得し、取得した画像に含まれる郵便番号及び住所等の宛先を示す区分情報を認識する。その後、宛先認識部12は、認識した区分情報を特殊フォーマットでコード化したバーコードを、インクジェットプリンタで郵便物に印字する。宛先認識部12が区分情報を読み取れなかった場合、取得された郵便物の画像がモニタ(図示せず)に表示され、表示された画像に従って作業者が区分情報を入力し、郵便物にバーコードが印字される。
【0012】
バーコードが印字された郵便物は、区分集積部13へ搬送される。図2を参照して後に説明するように、区分集積部13には、スタッカが上下2段に分かれて設けられている。バーコードが印字された郵便物は、図示しないゲートを介して、区分情報に従って上段又は下段に振り分けられる。振り分けられた郵便物は、区分情報に従って、対応するスタッカまで搬送されて集積される。スタッカに集積された郵便物は、作業者によって回収される。
【0013】
図2は、区分集積部13の外観を概略的に示す斜視図であり、図3は、区分集積部13の側断面図である。区分集積部13は、図2に示されるように、郵便物を搬送する搬送機構(図4に示される。)等の内部機器を収容する金属製の筐体21を備え、この筐体21は、細長い箱型に形成されている。筐体21の宛先認識部12側の側面には、宛先認識部12から郵便物を導入するための導入口30が形成されている。区分集積部13の筐体21は、宛先認識部12の筐体(図示せず)と連結されており、区分集積部13の筐体21及び宛先認識部12の筐体が郵便物処理装置の筐体を形成している。筐体21は、図3に示されるように、図2の矢印Aで示される郵便物の搬送方向に交差する断面が矩形枠状に、即ち、略ロ字型に形成されている。
【0014】
筐体21の1つの外側面24には、複数のスタッカ22が、郵便物の搬送方向に沿って、かつ上下2段に配設されている。また、この外側面24には、各スタッカ22に対応して、郵便物を排出するための開口部23が形成されている。区分情報に従って搬送先であるスタッカ22が決定された郵便物は、対応する開口部23を介して筐体21の外部へ排出されて、スタッカ22に集積される。実施形態では、スタッカ22及び開口部23が設けられている側の筐体21の側面27を正面と称し、正面27と対向する側面28を背面と称す。
【0015】
なお、スタッカ22は、図2に示されるような上下2段に設けられる例に限定されず、1段に、或いは3以上の段にわたって、筐体21の外側面24に設けられてもよい。
【0016】
さらに、図3に示されるように、郵便物排出用の開口部23から放射される、筐体21内部で発生した騒音を低減するために、筐体21の内部から外部へ連通する開口部26が、筐体21の背面28に形成されている。この騒音低減用の開口部(背面開口部ともいう)26の面積は、後に説明するように、郵便物排出用の開口部(正面開口部ともいう)23の面積に応じて決定される。騒音低減用の開口部26については後に詳細に説明する。また、筐体21内には、略中央位置に、かつ搬送方向に沿って水平に、正面27及び背面28に連結された仕切り板25が設けられ、この仕切り板25によって、筐体21内の空間が2分割されている。
【0017】
図4は、区分集積部13が備える、郵便物を搬送するための搬送機構を概略的に示している。区分集積部13の搬送機構は、図4に示されるように、駆動モータ41、プーリ42及び搬送ベルト43を備えている。搬送機構では、駆動モータ41によって搬送ベルト43が駆動され、郵便物が、搬送ベルト43に挟持された状態で、搬送ベルト43により規定される搬送路に沿って、区分情報に従って、対応するスタッカ22まで搬送される。
【0018】
区分集積部13の筐体21内では、駆動モータ41、プーリ42及び搬送ベルト43を含む内部機器の駆動音が発生し、さらに、郵便物の搬送時に郵便物から衝撃音等が発生する。筐体21内で発生した駆動音及び衝撃音等の騒音は、筐体21内で反響して、或いは共鳴して増幅される。増幅された騒音は、筐体21に形成されている正面開口部23から放射される。正面開口部23から放射された騒音は、正面開口部23に対向する位置でスタッカ22に集積された郵便物を回収する図3に示されるような作業者50に向けられ、それによって、騒音による大きな負荷が作業者50に与えられる。区分集積部13の筐体21の背面28に開口部26が形成される場合、正面開口部23のみならず、背面開口部26からも騒音が放射されることになるので、背面開口部26が設けられない場合と比較して、正面開口部23から放射される騒音の音響エネルギーを低減することができ、作業者に与えられる負荷を低減することができる。
【0019】
図5は、ホワイトノイズを音源とした場合に、箱型に形成されている筐体内で得られる周波数応答関数の測定結果を示している。測定は、筐体内部に設置された騒音計によって行われる。測定に使用した筐体は、図6Aに示すように、幅4200mm、高さ250mm、奥行き650mmの箱型、即ち、直方体状に形成されている。図5に示される測定結果には、複数の周波数ピークがあり、筐体内部で共鳴による増幅が起こっていることが分かる。一方、図6Aに示す筐体寸法から、下記数式1により計算された共鳴周波数は、約230Hz(1次モード)であり、図5の実験結果に出現する1次ピーク(215Hz)と略合致する。共鳴周波数の計算では、図6Bに示すように、奥行き方向の振動モードを想定し、開口端補正には正面断面における短手方向の寸法(ここでは、高さに一致する。)を使用している。
【数1】

【0020】
図2に示す区分集積部13の筐体21の外形寸法は、典型的には、奥行きが0.5〜1.0m、高さが1〜2m(ただし、内部は仕切り板によって、0.2〜0.5mに仕切られている場合がある。)、幅が1mから数十mであり、従って、外容積は、0.5mから数十mである。これらのうち、内部共鳴に影響するのは、主に奥行き方向の寸法である。筐体内の機器構成等に応じて変わるが、このような郵便物処理装置では、往々にして100〜400Hz付近の周波数帯で内部共鳴が発生しやすく、正面開口部23から放射される騒音としては、この周波数帯の音が支配的である。
【0021】
従来から、筐体の内壁面に吸音材を貼付して、筐体の内部共鳴による音響エネルギーを吸音材に吸音させることによって、正面開口部から漏れ出る騒音を低減している。しかしながら、郵便物処理装置のような大型装置の場合、吸音材を貼付ける領域が大きいために、コスト高につながる。さらに、一般的な吸音材は、図7に示すように、低周波数領域(500Hz以下)に対して吸音率が低く、高周波領域に対して吸音率が高くなる傾向がある。従って、前述のように100〜400Hz付近に内部共鳴が発生する郵便物処理装置では、吸音材による騒音低減効果が得られにくい。
【0022】
本実施形態では、機能上必須の正面開口部23から放射される騒音の音響エネルギーを低減するために、従来の吸音材による騒音低減方法に替わる対策として、図3に示されるように、筐体21の背面28に開口部26を設けている。図8には、騒音低減用の開口部26の一例が示されている。図8では、筐体21の背面28にメンテナンス用の背面扉81が設けられており、この背面扉81には、水平方向に延びるスリット状の開口部26が、垂直方向に沿って互いに一定の間隔だけ離間して形成されている。後に説明するように、背面開口部26の面積を大きくするにつれて、正面開口部23から放射される騒音に対する騒音低減効果は大きくなる。しかしながら、発明者らが行った実験では、各背面開口部26のスリット幅が12mm程度あれば、背面開口部26面積を最大にした場合(例えば、扉81を開放している状態)と略同等の効果が得られることが確認されている。従って、安全面も配慮して大人の指があまり奥まで入らないように、各背面開口部26は、好ましくは幅が12mm前後のスリット状に形成される。
【0023】
筐体21の背面28に開口部26を設けると、まず共鳴条件が変わり、それによって、共鳴周波数が高周波数側にシフトして低騒音化する。また、筐体21の開口率が増大すると、筐体21の平均吸音率が増大するため、筐体21の正面27に形成されている開口部23からの騒音を低減することができる。筐体21の開口率と騒音低減効果との関係については後述する。なお、郵便物処理装置の場合、通常、筐体21の背面28側では作業者は通常は作業しないので、背面開口部26から放射される騒音は考慮しなくてもよい。
【0024】
図9A、9B及び9Cは、背面開口部の変形例を夫々示している。背面扉81には、図9Aに示されるように、垂直方向に延びるスリット状の開口部31が、水平方向に沿って互いに一定間隔だけ離間して形成されてもよく、或いは、図9B及び図9Cに示されるように、円形状の開口部32又は菱形状の開口部33が互い違いに配列されてもよい。
【0025】
なお、騒音低減用の開口部は、図8及び図9A〜9Cに示されるような背面扉81に形成される例に限らず、背面のいずれの領域に形成されてもよく、また、騒音を低減すべき開口部23が形成されている面(正面)とは異なるいずれの面(側面、上面、底面又はこれらの組み合わせ)に設けられてもよい。さらに、騒音低減用の開口部の形状は、スリット状、円形状、菱形状に限定されず、任意の形状であってよい。
【0026】
図10Aは、背面開口部の他の変形例を示している。背面開口部26には、図10Aに示されるように、ルーバー29が取り付けられていてもよい。即ち、筐体21の背面28には、複数のルーバー板34を備えたルーバー29が設けられ、複数のルーバー板34が夫々背面開口部26を形成している。ルーバー29は、音の遮蔽効果があり、ルーバー29によって背面開口部26付近での騒音が低減される。その結果、背面開口部26から放射された騒音の壁面による反射音等が、筐体21の正面27側に回りこむことを抑制することができる。また、背面28付近での騒音を低減する必要がある場合に、背面開口部26にルーバー29を取り付けることは有効である。
【0027】
図10Bは、図10Aのルーバー29の一部を拡大して模式的に示している。図10に示されるルーバー板34間の間隔a、ルーバー板34の長さb、ルーバー板34が垂直方向となす角θ、及び背面側から水平方向に見た際の開口部26の隙間tは、任意に設定することができる。図11Bにおいて、e=b×cosθ+t、d=b×sinθ、c=e×sinθである。例えば、ルーバー付き開口部の寸法cは、安全面を考慮して人間の指が入らない幅に設定される。また、隙間tは、背面エリアでの遮音効果を確保するために、3mm以下に設計される。
【0028】
図11Aから図11Eは、夫々ルーバーの変形例を模式的に示している。図11Aに示すルーバー51では、金属板(筐体21の背面28)に切り込みを入れて押し出して、ルーバー板35が形成されている。図11Bに示すルーバー52は、ルーバー板36がオーバーラップするように作製されている。図11Cに示すルーバー53は、湾曲したルーバー板37を備えている。図11Dに示すルーバー54は、図11Aに示したルーバー板35の先端が垂直方向に延びた形状に形成されたルーバー板38を備えている。図11Eに示すルーバー55は、図11Aに示されるような打ち抜きにより製作したルーバー51を2列に配置したものであって、各々のルーバー板35の位相をずらすことにより実現される。図11D及び11Eに示すルーバー54、55のように、床面と平行にルーバーを見た際に隙間がないようにすると、ルーバーによる遮音効果を大きくすることができる。図11Aに示すルーバー51は、金属板1枚を打ち抜くことで製作することができるため、安価かつ容易に製作することができる。ルーバーは、図11Aから図11Eに示される例に限定されず、遮音効果を保ちつつ開口部を確保することができればよく、いかなる形状に形成されてもよい。
【0029】
上述のように、機能上必須の開口部が形成されている面とは異なる面に、騒音低減用の開口部を設け、かつ、この開口部にルーバーを付与することにより、必須の開口部から放射される騒音を低減することができる。
【0030】
次に、正面開口部から照射される騒音に関して目標とする音圧レベル低下量を得るために必要な、騒音低減用の開口部の面積を決定する方法を説明する。
騒音の音圧レベルを測定する位置である評価点を、例えば、区分集積部13から1m離れ、高さが1.6mの地点に設定する。この評価点での騒音は、区分集積部13の筐体21内に含まれる騒音源による正面開口部23からの放射音、筐体21からの透過音、騒音源の振動による固体伝播音、及び区分集積部13以外から発生する音等を含む。正面開口部23からの放射音の目標低減量は、評価点での目標とする音圧レベル低下量(目標音圧レベル低下量)、及び各要素音の寄与率から求められる。評価点での目標音圧レベル低下量を3dBに設定し、ある条件での要素音の寄与率に基づいて、正面開口部23からの放射音の目標低減量を5dBに決定した場合を例にとって説明する。筐体21内の音響エネルギーEは、下記数式2のように、下記数式3に示す筐体の平均吸音率の二乗に反比例する。
【数2】

【0031】
図12に示すような一般的な金属製の筐体を想定し、筐体の吸音率αを0、開口部(空気)の吸音率αopenを1とすると、数式3に示す平均吸音率は、下記数式4のように、開口率sに等しくなる。
【数3】

【0032】
ここで、Sopenは、開口部の面積(開口部が複数の場合は合計面積)を示し、Sallは、開口部の面積Sopenを含む筐体の表面積を示す。また、開口率sは、筐体の表面積における開口部の面積の割合を指す。図13には、開口率sと内部音響エネルギーの関係が示されている。図13からは、開口率sが増大すると、内部音響エネルギーが低減することが分かる。
【0033】
開口率sをs1からs2に変化させたときの内部音響エネルギーの低減量η(=ΔE)[dB]は、下記数式5のように、開口率の比の対数で表される。正面開口部23のみが形成されている場合の開口率をs1とし、数式5を変形して得られる数式6から、目標音響エネルギー低減量ηだけ騒音を低減するのに必要な開口率s2を求め、開口率s2と開口率s1との差から騒音低減用開口部の面積(合計面積)を求めることができる。
【数4】

【0034】
ここで、Eは開口率s1のときの内部音響エネルギーを示し、Eは開口率がs2のときの内部音響エネルギーを示す。
【0035】
区分集積部13の筐体21の寸法を、例えば、幅4.5[m]、高さ1.7[m]、奥行き0.6[m]とする。このとき、筐体21の表面積は、22.74[m]となる。また、筐体21に0.2[m]×0.25[m]の正面開口部23が20個形成され、即ち、正面開口部23の合計面積が1[m]であるとする。この場合、背面が閉じられている場合(即ち、背面開口部26がない場合)の開口率、即ち、平均吸音率は、約0.044である。内部音響エネルギーを5dB低減するためには、数式6から、開口率を約0.078以上にすればよいことが分かり、正面開口部23に加えて、新たに約0.778[m]以上の開口部26を設ける必要がある。例えば、図14に示すようなルーバー29が背面開口部26に取り付けられ、ルーバー板34によって0.0026[m]×0.5[m]の開口部が形成される場合、5dBの内部音響エネルギー低減量を達成するためには、開口部は約600個必要になる。これらの600個の開口部は、例えば、背面扉の大部分のエリアに一様に配置されることにより実現することができる。
【0036】
このように筐体21が金属製の場合には、筐体21の外形寸法から開口率が計算することができ、開口率が平均吸音率に等しいことから、開口率変化による内部音響エネルギーの低減量を容易に計算することができる。なお、ルーバーを用いた時の開口部の面積は、最小断面積を指し、図10Bのcで示される断面積を示す。
【0037】
正面開口部23の寄与率が1(100%)としても、正面開口部23における騒音低減のためには、内部音響エネルギーの低減量を少なくとも2dB以上確保しないと、人間の耳には有意に騒音が低下したと感じられない。そこで、内部音響エネルギーの低減量を2dB以上確保するためには、前述した計算式によると、s2/s1=1.3が必要となり、即ち、正面開口部23のみの開口率s1に対して、正面開口部23以外の開口部の合計面積による開口率は、0.3×s1である必要がある。従って、正面開口部23の0.3倍以上の面積になるように、正面以外の面(例えば、背面)に開口部を形成することで、低騒音化することができる。
【0038】
なお、騒音低減用の開口部は、図3に示されるような筐体21の背面28に形成される例に限定されず、機能上遮蔽することができない開口部が形成されている面(正面)とは異なる面であれば、いずれの面に形成されてもよい。原理的には、騒音低減用の開口部は、筐体の上面及び下面に形成されてもよいが、上面は雨漏り等の可能性があり、下面は床の反射や反響が発生する可能性があるため、通常は背面及び側面に形成されるが、特に背面に設けられる方が有効である。また、筐体の形状は、図2に示されるような箱型に限定されず、いかなる形状であってもよい。
【0039】
さらに、上述した騒音低減の原理は、実施形態に説明された郵便物処理装置に限定されず、紙葉類等の媒体を搬送する媒体搬送機構、及びこの媒体搬送機構を収容する筐体を備えたいかなる装置、例えば、画像形成装置等にも適用することができる。また、上述した騒音低減の原理は、筐体内部に騒音源を備え、かつ筐体の側面に機能上遮蔽することができない開口部が形成されているいかなる装置に対しても適用することができる。
【0040】
以上のように、実施形態によれば、低コストで、内部で生じた騒音を低減することができる媒体搬送装置を提供することができる。さらに、筐体に騒音低減用の開口部を設けることによる低騒音化手法は、高周波数帯に対しても効果があり、安価かつ容易に製作することができるので、吸音材の代わりとして有効である。また、騒音低減用の開口部は、筐体内で発生した熱を放出するための開口部としても機能することができる。
【0041】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0042】
11…供給部、12…宛先認識部、13…区分集積部、21…筐体、22…スタッカ、23…正面開口部、25…仕切り板、26…背面開口部、28…ルーバー、34…ルーバー板、41…駆動モータ、42…プーリ、43…搬送ベルト、81…背面扉。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送する搬送機構と、
前記搬送機構を収容し、第1面及び当該第1面に対向して配置される第2面を有する筐体であって、前記媒体を取り出し、或いは排出するための第1開口部が前記第1面に形成され、前記第1開口部の合計面積の0.3倍以上の合計面積を有する第2開口部が前記第2面に形成されている筐体と、
を具備することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
前記第2開口部は、ルーバーを備えることを特徴とする請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項3】
前記第2開口部は、スリット状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の媒体搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−255318(P2011−255318A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132163(P2010−132163)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】