説明

媒体送り装置、記録装置

【課題】 残り一枚であっても安定して被送り媒体を送り方向上流側へ逆送りすることを考慮した媒体送り装置を提供すること。
【解決手段】 媒体送り装置(10)は、載置面18における第1送り手段と対向する位置に設けられた摩擦部材(15)と、該摩擦部材に隣接して設けられ、前記摩擦部材より被送り媒体(P)の積層方向上方へ突出した第1状態と、前記摩擦部材より積層方向下方へ退避した第2状態とを切り換え可能な変位部材5と、を備え、前記第1送り手段によって前記載置面に載置された残り一枚の被送り媒体を送り方向下流側へ送る際、前記変位部材を前記第2状態に設定し、前記残り一枚の被送り媒体の送り方向上流端である後端が前記摩擦部材を通過した後に該被送り媒体を第2送り手段によって前記第1送り手段の送り方向を基準とした送り方向上流側へ逆送りする際、前記変位部材を前記第1状態に設定する構成であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被送り媒体が載置される載置面と、該載置面に載置された被送り媒体を送り方向下流側へ送る第1送り手段と、該第1送り手段によって送られた被送り媒体を前記第1送り手段の送り方向を基準とした送り方向上流側および下流側へ送る第2送り手段と、前記載置面における前記第1送り手段と対向する位置に設けられた摩擦部材と、を備えた媒体送り装置および該媒体送り装置を備えた記録装置に関する。
本願において、記録装置には、インクジェットプリンター、ワイヤドットプリンター、レーザープリンター、ラインプリンター、複写機、ファクシミリ等の種類が含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
従来では、特許文献1に示す如く、記録装置としてのプリンターは、被送り媒体の一例である用紙を送る送り装置を備えていた。該送り装置は、用紙が載置される載置面としてのトレイと、送り手段としての送りローラーと、高摩擦部材と、を備えていた。このうち、前記送りローラーは、前記トレイ上に載置された複数枚の用紙を一枚ずつ送ることができるように設けられていた。また、前記高摩擦部材は、前記トレイにおける前記送りローラーと対向する位置に設けられていた。そして、載置された用紙と用紙との間における摩擦係数μ1より、前記高摩擦部材と用紙との摩擦係数μ2が大きくなるように構成されていた。従って、複数の用紙が重なった束の状態のまま前記送りローラーによって送り方向下流側へ送られることを低減することができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−094521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、用紙が送られる際、送り方向に対して用紙の姿勢が傾く虞があり、用紙の姿勢を正す動作を実行した際、用紙において該用紙の厚み方向に撓みが生じる。これは、用紙の先端をローラー対の外接する箇所に押し付けるためである。そして、用紙の先端の姿勢を前記ローラー対の外接する箇所が成す線方向に倣わせる。これにより、用紙の先端側の姿勢を正すことができる。ここで、送り方向に対して用紙の姿勢が傾いていた場合、用紙の幅方向左右における一端側の撓み量と、他端側の撓み量とに差が生じる。
【0005】
用紙の撓みは、前記ローラー対に対して用紙を送り方向下流側へ押し出すように作用する。即ち、前記ローラー対における送り量に影響を及ぼす。そして、前記一端側の撓み量と、前記他端側の撓み量とに差があった場合、前記一端側の送り量と、前記他端側の送り量とに差が生じる虞がある。そこで、例えば、用紙の後端側を送り方向上流側へ逆送りして用紙の撓み量の前記差を除去することが考えられる。尚、逆送りする目的は、撓みを除去することに限らない。
しかしながら、最後の残り一枚の後端側を逆送りしようとした場合、用紙のサイズによっては、用紙の後端が前記高摩擦部材と接触するため、逆送りの妨げとなる虞がある。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、残り一枚であっても安定して被送り媒体を送り方向上流側へ逆送りすることを考慮した媒体送り装置および該媒体送り装置を備えた記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様の媒体送り装置は、被送り媒体が載置される載置面と、該載置面に載置された被送り媒体を送り方向下流側へ送る第1送り手段と、該第1送り手段によって送られた被送り媒体を前記第1送り手段の送り方向を基準とした送り方向上流側および下流側へ送る第2送り手段と、前記載置面における前記第1送り手段と対向する位置に設けられた摩擦部材と、該摩擦部材に隣接して設けられ、前記摩擦部材より被送り媒体の積層方向上方へ突出した第1状態と、前記摩擦部材より積層方向下方へ退避した第2状態とを切り換え可能な変位部材と、を備え、前記第1送り手段によって前記載置面に載置された残り一枚の被送り媒体を送り方向下流側へ送る際、前記変位部材を前記第2状態に設定し、前記残り一枚の被送り媒体の送り方向上流端である後端が前記摩擦部材を通過した後に該被送り媒体を前記第2送り手段によって送り方向上流側へ逆送りする際、前記変位部材を前記第1状態に設定する構成であることを特徴とする。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、残りの枚数の複数枚である場合、前記変位部材は、前記第2状態であるので、載置された最上位の被送り媒体と次位以降の被送り媒体とを前記摩擦部材によって分離する分離能力を確保することができる。
また、残りの枚数が一枚となった場合、最後の一枚が逆送りされた際に被送り媒体の後端が前記摩擦部材と接触することを防止することができる。従って、被送り媒体の逆送りが妨げられる虞がない。即ち、安定した逆送りを実行することができる。
【0009】
一度送り方向下流側へ送った被送り媒体を送り方向上流側へ逆送りする技術的意義について以下に説明する。
例えば、逆送りすることによりスキュー取りの際に生じた被送り媒体の撓みを除去することができる。
ここで、「スキュー取り」とは、送り方向に対する被送り媒体の傾いた姿勢を正すことをいう。特に、ニップラインに対する用紙の送り方向下流端である先端の傾いた姿勢を正すことをいう。また、「ニップライン」とは、ローラー対の外接する箇所が成す線をいう。即ち、ローラー対における挟圧する箇所が成す線である。
【0010】
尚、スキュー取り動作は、所謂、「食い付き吐き出し方式」でも「突き当て方式」でもよい。
ここで、「食い付き吐き出し方式」とは、例えば第2送り手段より送り方向下流側の第3送り手段としての搬送ローラー対が被送り媒体の先端を一度挟持し、搬送ローラー対を逆転させて被送り媒体の先端側を送り方向上流側へ逆送りする。そして、第2送り手段としての送りローラー対と搬送ローラー対との間において、被送り媒体を撓ませて被送り媒体の先端を搬送ローラー対のニップラインに押し付けることにより、先端の姿勢をニップラインに倣わせる方式をいう。即ち、搬送ローラー対に被送り媒体の先端を一度食い付かせた後、送り方向上流側へ被送り媒体の先端側を吐き出すことにより被送り媒体を撓ませて先端の姿勢をニップラインに倣わせる方式をいう。
【0011】
一方、「突き当て方式」とは、送りローラー対によって被送り媒体を送り方向下流側へ送り被送り媒体の先端を、停止している状態または逆転駆動している状態の搬送ローラー対のニップラインに押し付けることにより、先端の姿勢をニップラインに倣わせる方式をいう。即ち、搬送ローラー対に被送り媒体の先端を突き当てることにより先端の姿勢をニップラインに倣わせる方式をいう。尚、送りローラー対と搬送ローラー対との間において、被送り媒体を撓ませて先端の姿勢をニップラインに倣わせるのは勿論である。
【0012】
仮に、被送り媒体の撓みを形成した後に逆送りしない構成にしたとすると、被送り媒体の幅方向Xの一端側の撓み量と、被送り媒体の幅方向Xの他端側の撓み量との差が生じたままの状態となる。送りローラー対と搬送ローラー対との間における被送り媒体の撓みによって、搬送ローラー対において被送り媒体が送り方向下流側へ押されるように作用する。従って、前記撓み量の差によって、幅方向Xの一端側の搬送量と、幅方向Xの他端側の搬送量との間に差が生じる虞がある。その結果、スキュー取り後の搬送中において被送り媒体が送り方向に対して新たに傾く所謂、累積スキューが生じる虞がある。
【0013】
特に、ピックアップから搬送ローラー対までの用紙の案内経路が側視湾曲している場合に問題が生じやすい傾向である。
そこで、前記第2送り手段によって被送り媒体を逆送りする。
その結果、その後に前記第2送り手段等によって被送り媒体を送り方向下流側へ送る際の送り精度を安定させることができる。
【0014】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記摩擦部材は、前記載置面より被送り媒体の積層方向上方へ突出して設けられていることを特徴とする。
本発明の第2の態様によれば、第1の態様と同様の作用効果に加え、最後の一枚が逆送りされた際に被送り媒体の後端が、前記載置面と前記摩擦部材とが成す段差に引っ掛かることを防止することができる。
【0015】
ここで、前記摩擦部材が前記載置面より上方へ突出して設けられていることの技術的意義は、前記摩擦部材が前記載置面に載置された被送り媒体と確実に接触することができるようにするためである。これにより、被送り媒体を前記第1手段によって送り方向下流側へ送る際、積層方向における最上位の被送り媒体と、次位以降の被送り媒体とを分離する分離能力を安定させることができる。
係る場合に、最後の一枚を逆送りした際、被送り媒体の後端が前記段差に引っ掛かり、逆送りの妨げとなる虞があるので、前記変位部材を有する構成は特に有効である。
【0016】
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様において、前記変位部材を有する第1アーム部と、該第1アーム部より送り方向上流側に設けられ、該第1アーム部と係合可能な第2アーム部と、該第2アーム部に設けられ、前記載置面から突出した第3状態と、該第3状態より積層方向下方に退避した第4状態とを切り換え可能な突部と、をさらに備え、前記突部は、外力が付与されていない状態では前記第3状態となり、該突部上の一枚の被送り媒体の自重によって前記第4状態となるように第1付勢手段によって付勢されており、前記突部の前記第4状態において、前記第2アーム部と前記第1アーム部との係合は解除され、前記第2アーム部と前記第1アーム部との係合が解除されている状態において、前記変位部材は、該変位部材および前記突部に対して外力が付与されていない状態では前記第1状態となり、該変位部材上の一枚の被送り媒体の自重によって前記第2状態となるように第2付勢手段によって付勢されており、該第2付勢手段による付勢力は、前記第1付勢手段による付勢力より大となる関係を有しており、前記第2状態から前記第1状態に切り替わる際、前記第1アーム部は前記第2アーム部と係合し、前記突部の前記第3状態において、前記第2アーム部は前記第1アーム部との係合によって前記変位部材の前記第1状態を保持する構成であることを特徴とする。
【0017】
本発明の第3の態様によれば、第1または第2の態様と同様の作用効果に加え、被送り媒体が一枚でも前記載置面に載置されている場合、被送り媒体の自重によって前記変位部材は前記第2状態、前記突部は第4状態となる。従って、最後の一枚の被送り媒体の後端が前記摩擦部材を通過する前までの状態では、前記変位部材を前記第2状態とすることができる。また、被送り媒体の後端が前記摩擦部材を通過した後に前記第2アーム部と前記第1アーム部とを係合させて前記変位部材を前記第1状態で保持することができる。即ち、最後の被送り媒体が逆送りされた際のみに、前記変位部材を前記第1状態で保持することができる。
【0018】
本発明の第4の態様は、第3の態様において、送り方向において前記変位部材における積層方向上方の縁部は、前記摩擦部材の頂部の送り方向上流端より上流側から該摩擦部材の頂部の送り方向下流端より下流側まで延設されており、前記第1状態において、前記縁部における前記摩擦部材の頂部の下流端より下流側は、下流端が前記載置面より積層方向下方であり、上流側へ行くに従って前記頂部より積層方向上方となるように前記載置面に対して傾いた傾斜部を有することを特徴とする。
【0019】
本発明の第4の態様によれば、第3の態様と同様の作用効果に加え、前記変位部材の前記縁部は、前記摩擦部材より送り方向に長く延設されている。また、送り方向における前記摩擦部材が設けられている範囲より広い範囲に設けられている。従って、被送り媒体が逆送りされ、被送り媒体の後端が前記変位部材と接触した状態では、被送り媒体の後端が前記摩擦部材と接触する虞がない。またさらに、前記変位部材は前記傾斜部を有しているので、逆送りされて際に被送り媒体の前記後端をすくい上げるようにして、前記摩擦部材より積層方向上方へ案内することができる。即ち、被送り媒体の後端が前記摩擦部材に引っ掛かることを確実に防止することができる。
【0020】
本発明の第5の態様は、第4の態様において、前記縁部における前記傾斜部より上流側には平坦部が設けられており、前記変位部材が前記第1状態、かつ、前記突部が前記第3状態において、被送り媒体が前記第1状態の前記変位部材上にないとき、該変位部材の前記縁部における前記平坦部の姿勢は、該平坦部における上流側が下流側より積層方向上方となるように前記摩擦部材の頂部に対して傾いており、被送り媒体が前記第2送り手段によって逆送りされ前記第1状態の前記変位部材上に移動してきた際、被送り媒体の自重によって前記第1アーム部が変位したとき、前記第2アーム部が該第1アーム部の所定量以上の変位を制限し、このときの前記縁部における前記平坦部の姿勢は、前記摩擦部材の頂部に倣っている構成であることを特徴とする。
ここで、「所定量」とは、前記第2アーム部と前記第1アーム部との係合が強固になるために必要な量であって、ごく僅かな量をいう。
また、「倣っている」とは、両者の姿勢が略同じであることをいう。即ち、略平行であることをいう。厳密に平行である必要はなく、誤差の範囲を含むことは勿論である。
【0021】
本発明の第5の態様によれば、第4の態様と同様の作用効果に加え、逆送りされた際、被送り媒体の後端が前記変位部材と接触したときの被送り媒体の自重によって前記第1アーム部と前記第2アーム部とを強固に係合させることができる。即ち、前記変位部材を前記第1状態でロックすることができる。
また、ロック状態の前記変位部材の前記縁部の姿勢は、前記摩擦部材の頂部の姿勢に対して平行となる。従って、被送り媒体の後端が前記摩擦部材と接触することをより確実に防止することができる。
【0022】
本発明の第6の態様の記録装置は、被記録媒体を送り方向下流側へ送る媒体送り手段と、該媒体送り手段によって送られた被記録媒体に対して記録ヘッドにより記録する記録部と、を備えた記録装置であって、前記媒体送り手段は、上記第1から第5のいずれか一の態様の前記媒体送り装置を備え、前記被記録媒体は、前記被送り媒体であることを特徴とする。
本発明の第6の態様によれば、前記媒体送り手段は、上記第1から第5のいずれか一の態様の前記媒体送り装置を備えている。従って、前記記録装置において、上記第1から第5のいずれか一の態様と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るプリンター内部におけるピックアップ時の動作を示す側面図。
【図2】本発明に係るプリンター内部における土手分離時の動作を示す側面図。
【図3】本発明に係るプリンター内部におけるリタード分離の動作を示す側面図。
【図4】本発明に係るプリンター内部におけるリタード分離後の動作を示す側面図。
【図5】本発明に係るプリンター内部におけるリタード分離後の動作を示す側面図。
【図6】本発明に係るスキュー取りの際の初期食い付き状態を示す側面図。
【図7】本発明に係るスキュー取りの際の吐き出し状態を示す側面図。
【図8】本発明に係るスキュー取りの際の頭出し状態を示す側面図。
【図9】本発明に係るスキュー取り後の逆転動作を示す側面図。
【図10】本発明において後続用紙をピックアップする様子を示す側面図。
【図11】本発明に係るカセット部における変位部材を示す斜視図。
【図12】本発明に係るカセット部における変位部材を示す平面図。
【図13】本発明に係る変位部材の第1状態を示す概略側断面図(用紙なし時)。
【図14】本発明に係る変位部材の第2状態を示す概略側断面図(用紙あり時)。
【図15】本発明に係る変位部材の第2状態を示す概略側断面図(用紙後端通過前)。
【図16】本発明に係る変位部材の第1状態を示す概略側断面図(用紙後端通過後)。
【図17】本発明に係る変位部材の第1状態を示す概略側断面図(逆送り時)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すのは、「記録装置」或いは「液体噴射装置」の一例としてのインクジェットプリンター(以下「プリンター」と言う)1の内部におけるピックアップ時の動作を示す側面図である。
ここで、液体噴射装置とは、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッドから記録紙等の被記録材へインクを噴射して被記録材への記録を実行するインクジェット式記録装置、複写機及びファクシミリ等の記録装置に限らず、インクに代えて特定の用途に対応する液体を前述した記録ヘッドに相当する液体噴射ヘッドから、被記録材に相当する被噴射材に噴射して、液体を被噴射材に付着させる装置を含む意味で用いる。
【0025】
またさらに、液体噴射ヘッドとしては、前述した記録ヘッド以外に、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタ製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイや面発光ディスプレイ(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料を噴射する試料噴射ヘッド等が挙げられる。
【0026】
図1に示す如く、プリンター1は、用紙Pを送る送り装置としての送り部3と、記録部80と、図示しない排出部とを備えている。このうち、送り部3は、給送部10と、搬送部70と、を有する。また、給送部10は、ピックアップ部20と、予備分離部30と、本分離部40とを有している。ピックアップ部20は、カセット部14に載置された用紙Pをピックアップして送り方向下流側へ送ることができるように設けられている。
【0027】
具体的には、駆動源の一例である第1モーター91の動力によって駆動するピックアップローラー21と、ピックアップローラー21を保持しアーム軸23を支点に揺動するアーム部22とを有する。そして、図示しない付勢手段によって、ピックアップローラー21が用紙Pに接近する方向に付勢されている。また、図示しないピックアップ退避手段によってアーム部22が揺動し、ピックアップローラー21が載置された用紙Pから離間する方向へ移動することができるように設けられている。所謂、ピックアップレリース動作である。
【0028】
また、予備分離部30は、所謂、土手分離を実行する土手分離部31を有する。作用については後述するものとする。
またさらに、本分離部40は、予備分離部30の送り方向下流側に設けられている。本分離部40は、所定の負荷によって回動する所謂、リタードローラー41を有している。リタードローラー41は、第1モーター91の動力によって駆動する中間駆動ローラー50と対を成すように設けられている。そして、リタードローラー41は、揺動機構43によって、中間駆動ローラー50に対して接離移動可能に設けられている。具体的には、揺動機構43は、リタードローラー41をリタードホルダー(図示せず)によって保持し、揺動軸(図示せず)を支点に揺動するように構成されている。
【0029】
そして、付勢ばね(図示せず)の一端が基体部2と係合され、他端がリタードホルダー(図示せず)の自由端側と係合されている。従って、リタードローラー41を中間駆動ローラー50に対して接近する方向へ付勢することができる。また、揺動機構43は、付勢ばね(図示せず)の付勢力に抗してリタードローラー41を中間駆動ローラー50から離間移動させる手段として、第2モーター92の動力によって駆動するカム部45を有している。カム部45は、リタードホルダー(図示せず)の図示しない凸部と係合して溝カム機構を構成し、リタードホルダー(図示せず)を介してリタードローラー41を中間駆動ローラー50に対して離間移動させることができるように設けられている。
【0030】
また、土手分離部31とリタードローラー41との間には、従動回転する第1アシストローラー48が設けられている。そして、第1アシストローラー48は、土手分離部31を通過した用紙Pの先端を、リタードローラー41と中間駆動ローラー50とのニップ点Nにスムーズに案内することができるように設けられている。
またさらに、リタードローラー41と中間駆動ローラー50とのニップ点Nより送り方向下流側において、後述する用紙先端規制リブ60、60が設けられている。
【0031】
さらに送り方向下流側には、基体部2に回動自在に保持され、中間駆動ローラー50と外接する第2アシストローラー51が設けられている。第2アシストローラー51は、中間駆動ローラー50と共に送りローラー対96を形成するように構成されている。またさらに送り方向下流側には、第3アシストローラー52が回動自在に設けられている。
ここで、用紙Pの送り経路は、ピックアップ部20から搬送部70まで側視U字型に形成されている。具体的には、U字型の外側から用紙Pを案内するU字型外側用紙案内部11と、内側から案内する内側用紙案内部12と、土手分離部31と、後述する巻き込み防止部13と、によってU字型の送り経路が構成されている。
【0032】
従って、第1アシストローラー48〜第3アシストローラー52によって用紙Pと基体部2のU字型外側用紙案内部11との間に生じる摩擦抵抗を低減することができる。従って、さらに送り方向下流側である搬送部70へ用紙Pを滑らかに送ることができる。
尚、送りローラー対96を構成する中間駆動ローラー50および第2アシストローラー51は、幅方向Xにおいて複数設けられている。これは、側視U字型の経路において用紙に対して十分な送り力を付与し、用紙Pを確実に送り方向下流側へ送るためである。
【0033】
搬送部70は、用紙Pを搬送する搬送ローラー対71を有する。搬送ローラー対71は、第4モーター94の動力によって駆動する搬送駆動ローラー72と、従動回転する搬送従動ローラー73とを有する。このうち、搬送従動ローラー73は、従動ローラーホルダー74によって回動自在に保持されている。
また、従動ローラーホルダー74は、図示しない付勢手段によって搬送従動ローラー73を搬送駆動ローラー72に対して圧接させている。
【0034】
またさらに、送り方向Yにおいて、搬送ローラー対71の上流側近傍には、用紙Pの有無を検出する第1用紙検出器75が設けられている。具体的には、第1用紙検出器75は、揺動可能な用紙検出レバー77と、センサー部76とを有している。そして、用紙検出レバー77の一端が用紙Pと当接することによって揺動し、用紙検出レバー77の他端がセンサー部76の図示しない発光部と受光部との間から離れることによって、ON状態になるように構成されている。
【0035】
また、搬送部70は、送り方向下流側に設けられた記録部80へ用紙Pを搬送することができるように設けられている。
またさらに、記録部80は、用紙Pに対してインクを吐出して記録を実行する記録ヘッド82と、記録ヘッド82と対向し下方から用紙Pを支持する媒体支持部81とを有する。
その後、図示しない排出部の排出ローラーによって、記録された用紙Pは、プリンター1の前面の排出トレイ(図示せず)へ排出される。
【0036】
続いて、より詳細な用紙送り動作について説明する。
図1に示す如く、カセット部14に載置されたピックアップローラー21に対して最上位の用紙P1をピックアップする際、制御部90は、アーム部22を揺動させピックアップローラー21を最上位の用紙P1と接触させる。そして、第3モーター93を駆動させることによって、ピックアップローラー21を図中における時計方向へ回動させる。
【0037】
このとき、ピックアップローラー21は、図示しない付勢手段によって用紙Pに対して接近する方向へ付勢されている。従って、ピックアップローラー21と最上位の用紙P1との間に摩擦力が生じ、送り方向下流側へ送る力である送り力を発生させることができる。そして、該送り力によって、最上位の用紙P1は、送り方向下流側へ移動し始める。即ち、ピックアップされて下流側へ送られる。
【0038】
尚、ピックアップローラー21と最上位の用紙P1との間の摩擦係数μ1、用紙Pと用紙Pとの間の摩擦係数μ2とする。さらに、基体部側のピックアップローラー21と対向する位置に設けられた摩擦部材の一例としてコルク材で形成されたパッド部15と用紙Pとの間の摩擦係数μ3とする。係る場合、摩擦係数μ1>摩擦係数μ3>摩擦係数μ2の関係が成り立つように構成されている。従って、数枚の用紙Pが重なって送られる所謂、重送される虞を低減することができる。
また、ピックアップされる際、リタードローラー41は、中間駆動ローラー50に対して接近した状態である。
【0039】
またさらに、詳しくは後述するように、幅方向Xにおけるパッド部15の両側には、変位部材5、5が隣接するように設けられている(図11および図12参照)。ここで、パッド部15は、用紙Pが載置される載置面18に設けられている。そして、パッド部15における用紙Pの積層方向上方の頂部15aは、載置面18より積層方向上方へ僅かに突出するように設けられている。これは、ピックアップローラー21によって用紙Pが送り方向下流側へ送られる際、パッド部15が載置されている最下位の用紙Pの裏面と確実に接触するためである。これにより、重送を低減することができる。
【0040】
図2に示すのは、本発明に係るプリンター内部における土手分離時の動作を示す側面図である。
図2に示す如く、ピックアップローラー21にピックアップされた用紙Pは、送り方向下流側へ送られる。そして、送られた用紙Pは、予備分離部30としての土手分離部31へ進入する。
【0041】
ここで、ピックアップローラー21に対して最上位の用紙P1と次位以降の用紙P2との間の摩擦係数μ2およびピックアップローラー21を付勢する付勢力によって、次位以降の用紙P2にも送り力が発生する虞がある。
係る場合、ピックアップローラー21によって最上位の用紙P1だけでなく、次位以降の用紙P2も送り方向下流側へ送られる。
【0042】
そこで、重送された次位以降の用紙P2を、最上位の用紙P1から分離するために、用紙Pの先端の姿勢が変位する角度で設けられた土手分離部31へ用紙Pを進入させる。そして、用紙Pの先端を土手分離部31に度当てることによって次位以降の用紙P2が停止するきっかけをつくる。さらに、最上位の用紙P1と、次位以降の用紙P2との間に隙間を設けることができる。従って、重送された次位以降の用紙P2を、最上位の用紙P1から分離することができる。
【0043】
図3に示すのは、本発明に係るプリンター内部におけるリタード分離の動作を示す側面図である。
図3に示す如く、土手分離部31によって分離された用紙Pは、ピックアップローラー21によってさらに送り方向下流側へ送られる。そして、用紙Pは、本分離部40であるリタードローラー41と中間駆動ローラー50とが外接するニップ点Nへ送られる。
尚、本実施例において、予備分離部30はあくまでも予備的な分離手段であるため、本分離部40へは、数枚の用紙Pが重送される虞があるものとする。以下、数枚の用紙Pが重送されることを前提として説明する。
【0044】
重送された用紙Pがニップ点Nへ送られると、中間駆動ローラー50に対して最上位の用紙P1のみが中間駆動ローラー50と直に接触する。また、次位以降の用紙P2の先端は、回動に所定の負荷を伴うリタードローラー41と接触する。
ここで、中間駆動ローラー50と最上位の用紙P1との間の摩擦係数μ4、用紙Pと用紙Pとの間の摩擦係数μ2、リタードローラー41と用紙Pとの間の摩擦係数μ5とする。係る場合、摩擦係数μ4>摩擦係数μ2、摩擦係数μ5>摩擦係数μ2の関係が成り立つように構成されている。
【0045】
従って、最上位の用紙P1に作用する送り力を次位以降の用紙P2に作用する送り力より大きくすることができる。
ここで、リタードローラー41の前記負荷は、次位以降の用紙P2に作用する送り力より大となるように構成されている。
従って、中間駆動ローラー50を図中における時計方向へ回動させることによって、最上位の用紙P1のみを送り方向下流側へ送ることができる。
【0046】
より具体的には、次位以降の用紙P2の先端は、リタードローラー41の前記負荷によってニップ点Nで保持され、最上位の用紙P1と次位の用紙P2との間でスリップを発生させることができる。従って、最上位の用紙P1を、次位以降の用紙P2から分離して送り方向下流側へ送ることができる。そして、最上位の用紙P1の先端は、第2アシストローラー51を通過し、U字型外側用紙案内部11および内側用紙案内部12に案内されながら、第3アシストローラー52まで到達する。
【0047】
図4に示すのは、本発明に係るプリンター内部におけるリタード分離後の動作を示す側面図である。
図4に示す如く、中間駆動ローラー50に対して最上位の用紙P1が送り方向下流側へさらに送られると、最上位の用紙P1の先端が第1用紙検出器75によって検出される。具体的には、最上位の用紙P1の先端が、用紙検出レバー77の一端と当接し、用紙検出レバー77を揺動させる。このとき、用紙検出レバー77の他端は、センサー部76の発光部と受光部との間から外れるため、第1用紙検出器75はON状態となる。
【0048】
これをトリガーとして制御部90は、リタードローラー41を中間駆動ローラー50から離間移動させる。具体的には、第2モーター92によってカム部45を回動させ、付勢ばね(図示せず)の付勢力に抗してリタードホルダー(図示せず)を中間駆動ローラー50に対して退避する方向へ揺動させる。
また、制御部90は、第3モーター93を駆動させアーム部22を、ピックアップローラー21がカセット部14に載置された用紙Pから退避する方向へアーム軸23を支点に揺動させる。
尚、リタードローラー41の離間移動を開始するタイミングは、中間駆動ローラー50およびピックアップローラー21が所定の回動量に達したときとしてもよい。
【0049】
リタードローラー41が離間移動すると、最上位の用紙P1は、中間駆動ローラー50と第2アシストローラー51とによって送られる。
また、ピックアップローラー21が離間移動すると、次位以降の用紙P2には、直接的に中間駆動ローラー50およびピックアップローラー21から送り力の作用は及ばない。従って、リタードローラー41に先端が保持されていた次位以降の用紙P2は、自重によってカセット部14へ戻ろうとする。
【0050】
ところが、中間駆動ローラー50によって送られている最上位の用紙である先行する用紙P1の後端と、リタードローラー41に先端が保持されていた次位以降の用紙である後続の用紙P2の先端とが接触する。従って、後続の用紙P2には、間接的に送り力が作用する。
そこで、U字型外側用紙案内部11における中間駆動ローラー50とリタードローラー41とのニップ点Nより送り方向下流側に、凸状の用紙先端規制リブ60、60が設けられている。また、用紙先端規制リブ60、60は、用紙Pの幅方向Xにおいて、リタードローラー41の両側近傍に設けられている。
【0051】
そして、送り経路はU字型に曲がっているので、リタードローラー41が離間移動すると、次位以降の用紙である後続の用紙P2の先端は、U字型外側用紙案内部側へ変位する。
従って、用紙先端規制リブ60、60は、リタードローラー41が離間移動した後において、次位以降の用紙である後続の用紙P2の先端と当接して、送り方向下流側へ変位を規制することができる。
【0052】
即ち、確実に後続の用紙P2が送り方向下流側へ送られることを防止することができる。その結果、後続の用紙P2が先行する用紙P1に連れられて送られる所謂、連れ給紙を防止することができる。連れ給紙は、後続の用紙P2と先行する用紙P1とが接触する面積が大きくなる特にサイズの大きい用紙Pを給送する場合に生じやすい。具体的には、A3サイズ以上のサイズにおいて生じやすい。言い換えると、A4サイズ以下であれば、前記接触する面積が小さいので連れ給紙が発生する虞が小さいからである。
【0053】
このとき、ピックアップローラー21を離間移動させることによって、後続の用紙P2の撓み量を小さくすることができる。即ち、後続の用紙P2の姿勢をできるだけ真っ直ぐな姿勢にすることができる。従って、後続の用紙P2の先端を、積極的に用紙先端規制リブ60、60に突き当てるようにすることができる。
また、先行する用紙P1の後端は、後続の用紙P2の先端をU字型経路の外側であるU字型外側用紙案内部側へ押し出すように作用する。従って、後続の用紙P2の先端を、積極的に用紙先端規制リブ60、60に当接させることができる。
【0054】
その結果、確実に連れ給紙を防止することができる。即ち、従来技術において設けられていた所謂、戻しレバーを設けることなく、連れ給紙を防止することができる。
また、従来技術より早いタイミングでリタードローラー41を離間移動させることができる。その結果、リタードローラー41の負荷による所謂、バックテンションを早いタイミングで低減させることができる。例えば、最上位の用紙P1の先端が第2アシストローラー51に到達したとき、リタードローラー41の離間移動を開始してもよい。
【0055】
図5に示すのは、本発明に係るプリンター内部におけるリタード分離後の動作を示す側面図である。
図5に示す如く、図4の状態からさらに中間駆動ローラー50に対して最上位の用紙である先行する用紙P1が送り方向下流側へ送られると、先行する用紙P1の後端は、中間駆動ローラー50とリタードローラー41との間を通過する。
【0056】
ここで、U字型経路の内側には巻き込み防止部13が設けられている。具体的には、送り方向Yにおける中間駆動ローラー50とリタードローラー41とのニップ点Nより送り方向上流側において、中間駆動ローラー50を覆うように設けられている。従って、巻き込み防止部13は、後続の用紙P2が中間駆動ローラー50と接触することを防止することができる。
【0057】
その結果、後続の用紙P2に対して直接的に中間駆動ローラー50が送り力を作用させる虞がない。
そして、先行する用紙P1の先端は、搬送ローラー対71にニップされる。その後、スキュー取りが実行され、先行する用紙P1は、搬送ローラー対71によって送り方向下流側へ搬送されながら、記録部80によって記録される。そして、図示しない排出部によってプリンター1の前方の排出トレイ(図示せず)に排出される。
【0058】
続いて、スキュー取り動作について説明する。
図6に示すのは、本発明に係るスキュー取りの際の初期食い付き状態を示す側面図である。
図6に示す如く、制御部90は、第1モーター91を正転駆動させ中間駆動ローラー50を図中における時計方向へ回動させる。また、第4モーター94を正転駆動させ搬送駆動ローラー72を図中における時計方向へ回動させる。
【0059】
従って、前述したように先行する用紙P1の先端は、搬送ローラー対71にニップされる。そして、先行する用紙P1は、用紙P1の先端が所定量だけ搬送ローラー対71より下流側に位置するまで送られる。
ここで、用紙P1の先端の姿勢が、搬送ローラー対71のニップラインに対して傾いている虞がある。所謂、スキューである。尚、ニップラインは、X軸方向である。
そこで、用紙P1の前記ニップラインに対する傾きを取り除く所謂、スキュー取りため、以下の動作を実行する。
【0060】
図7に示すのは、本発明に係るスキュー取りの際の吐き出し状態を示す側面図である。
図7に示す如く、図6の状態から制御部90は、第1モーター91を停止させ中間駆動ローラー50を停止させる。また、第4モーター94を逆転駆動に切り替えて搬送駆動ローラー72を図中における反時計方向へ回動させる。従って、先行する用紙P1の先端は、搬送ローラー対71によって搬送ローラー対71の上流側へ逆送りされる。所謂、吐き出し動作である。
【0061】
このとき、中間駆動ローラー50は停止している。従って、送り方向Yにおける中間駆動ローラー50と第2アシストローラー51とから成る送りローラー対96と、搬送ローラー対71との間において、先行する用紙P1を撓ませることができる。
【0062】
そして、先行する用紙P1の先端を搬送ローラー対71のニップラインに倣わせることができる。
【0063】
ここで、図6に示す状態において用紙P1が前記ニップラインに対して傾いていた場合、図7において実線で示す如く用紙P1の幅方向Xの一端側は大きく撓み、鎖線で示す用紙P1の幅方向Xの他端側僅かに撓む。また、用紙P1の幅方向Xの一端側と他端側との差の大きさは、図6に示す状態における用紙先端の傾きの大きさに比例する。
尚、図6に示す状態において用紙P1が前記ニップラインに対して傾いていなかった場合、図7において用紙幅方向Xの一端側および他端側は、実線で示す姿勢となる。
【0064】
図8に示すのは、本発明に係るスキュー取りの際の頭出し状態を示す側面図である。
図8に示す如く、図7の状態から制御部90は、第1モーター91を正転駆動させ中間駆動ローラー50を図中における時計方向へ回動させる。また、第4モーター94を正転駆動させ搬送駆動ローラー72を図中における時計方向へ回動させる。従って、前記ニップラインに対して傾いていない状態の用紙P1の先端を、搬送ローラー対71にニップさせることができる。そして、先行する用紙P1の先端を記録開始位置まで送り、第1モーター91および第4モーター94を停止させる。所謂、頭出し動作である。
ここで、記録開始位置とは、記録ヘッド82の図示しないノズル列と対向する位置をいう。
【0065】
このとき、送り方向Yにおける送りローラー対96と搬送ローラー対71との間において、用紙Pの幅方向Xの一端側と他端側との差はまだ消滅していない状態である。
ここで、従来技術において述べたように、前記一端側の撓み量と前記他端側の撓み量との差により、搬送ローラー対71における前記一端側の搬送量と、前記他端側の搬送量との間に差が生じる虞がある。
そこで、前記一端側の撓み量と前記他端側の撓み量との差を無くすため、以下の動作を実行する。
【0066】
図9に示すのは、本発明に係るスキュー取り後の逆転動作を示す側面図である。
図9に示す如く、図8の状態から制御部90は、先ず、切り換え機構4により第2アシストローラー51を、中間駆動ローラー50に対して離間する方向へ移動させる。
ここで、切り換え機構4は、第2アシストローラー51が中間駆動ローラー50に対して接近した第1状態と、離間した第2状態とを切り換えることができるように構成されている。例えば、前述した揺動機構43と同様にカムを備えた構成とすることにより、前記第1状態と、前記第2状態とを切り換えることができる。
【0067】
尚、逆に中間駆動ローラー50を、第2アシストローラー51に対して離間する方向へ移動させるように構成してもよいのは勿論である。係る場合も、後述する作用効果と同様の作用効果を得ることができるからである。本実施形態において、第2アシストローラー51を移動させるように構成した理由は、中間駆動ローラー50が駆動する構成であるからである。即ち、駆動側である中間駆動ローラー50を移動させるより、従動回転する側である第2アシストローラー51を移動させた方が容易だからである。
【0068】
次に、第1モーター91を逆転駆動させ中間駆動ローラー50を図中における反時計方向へ回動させる。この間、第4モーター94は停止したままの状態である。
このとき、第2アシストローラー51は中間駆動ローラー50から離間している。従って、中間駆動ローラー50は、用紙P1と中間駆動ローラー50の外周との間で滑らせながら用紙P1に対して、送り方向上流側へ適度な逆送り力を作用させることができる。
【0069】
ここで、「適度な逆送り力」とは、送り方向Yにおける送りローラー対96と搬送ローラー対71との間において、用紙P1をU字の送り経路の内側へ軽く押し付けるように余分な撓みを除去することができる程度の逆送り力をいう。余分な撓みが除去されて用紙P1がそれ以上内側へ変位することができない状態になったとき、用紙P1と中間駆動ローラー50の外周との間で必ずスリップが生じる。従って、用紙P1がダメージを受ける虞は殆どない。
【0070】
その結果、送り方向Yにおける送りローラー対96と搬送ローラー対71との間において生じていた用紙P1の撓み量を小さくすることができる。
さらに、用紙P1の前記一端側の撓み量と、前記他端側の撓み量との差を無くすことができる。その結果、その後の記録実行時における搬送ローラー対71における前記一端側の搬送量と、前記他端側の搬送量との間に差が生じる虞がない。
また、中間駆動ローラー50を逆転駆動させる際、ピックアップローラー21は、前述したように用紙Pに対して離間移動した状態である(図6参照)。従って、用紙P1の前記一端側の撓み量と、前記他端側の撓み量との差を無くすことを妨げる虞がない。
【0071】
その後、中間駆動ローラー50の逆転駆動を停止させる。そして、第1モーター91を正転駆動させ中間駆動ローラー50を図中における時計方向へ回動させる。また、第4モーター94を正転駆動させ搬送駆動ローラー72を図中における時計方向へ回動させる。そして、前述したように、先行する用紙P1は、搬送ローラー対71によって送り方向下流側へ搬送されながら、記録部80によって記録される。
【0072】
その後、図示しない排出部によってプリンター1の前方の排出トレイ(図示せず)に排出される。
尚、中間駆動ローラー50を時計方向へ回動させるタイミングは、後述する後続用紙Pのピックアップを開始するタイミングであってもよい。即ち、搬送中において、搬送ローラー対71および送りローラー対96によって送り力を発生させるようにしてもよいし、搬送ローラー対71のみによって送り力を発生させるようにしてもよい。
【0073】
また、本実施形態では所謂、「食い付き吐き出し方式」のスキュー取り動作について説明したが所謂、「突き当て方式」でもよい。
ここで、「突き当て方式」とは、前述したように送りローラー対96によって用紙P1を送り方向下流側へ送り用紙P1の先端を、停止している状態または逆転駆動している状態の搬送ローラー対71のニップラインに押し付けることにより、先端の姿勢をニップラインに倣わせる方式をいう。即ち、搬送ローラー対71に用紙P1の先端を突き当てることにより先端の姿勢をニップラインに倣わせる方式をいう。尚、送りローラー対96と搬送ローラー対71との間において、用紙P1を撓ませて先端の姿勢をニップラインに倣わせるのは勿論である。
【0074】
図10に示すのは、本発明において後続用紙をピックアップする様子を示す側面図である。
図10に示す如く、先行する用紙P1が記録部80へ搬送された後、続けて用紙Pを給送することができる。具体的には、制御部90は、用紙P1の後端を第1用紙検出器75で検出した後、リタードローラー41および第2アシストローラー51を中間駆動ローラー50に接近移動させる。より具体的には、第2モーター92によってカム部45を回動させ、付勢ばね(図示せず)の付勢力によってリタードホルダー(図示せず)を中間駆動ローラー50に対して接近する方向へ揺動させる。
【0075】
同様に切り換え機構4を作用させて第2アシストローラー51を中間駆動ローラー50に対して接近する方向へ移動させる。
また、制御部90は、第3モーター93を駆動させアーム部22を、ピックアップローラー21がカセット部14に載置された用紙Pに対して接近する方向へアーム軸23を支点に揺動させる。
【0076】
このとき、用紙先端規制リブ60、60に保持された後続の用紙P2が、リタードローラー41の接近移動によって、中間駆動ローラー側へ変位する。そして、中間駆動ローラー50とリタードローラー41とによってニップされる。従って、後続の用紙P2の先端は、用紙先端規制リブ60、60による規制状態から解除された状態となる。該状態において、前述したように中間駆動ローラー50およびピックアップローラー21が図中における時計方向へ回動する。
【0077】
このとき、用紙先端規制リブ60、60に保持された後続の用紙P2が一枚であれば、該一枚の用紙P2が送り方向下流側へ送られる。
また、用紙先端規制リブ60、60に保持された後続の用紙P2、P3…が複数枚であれば、前述したように摩擦係数μ4>摩擦係数μ2、摩擦係数μ5>摩擦係数μ2の関係が成り立つ。
【0078】
従って、中間駆動ローラー50に対して最上位の用紙P2に作用する送り力を、次位以降の用紙P3に作用する送り力より大きくすることができる。即ち、リタードローラー41によって次位以降の用紙P3を分離し、最上位の用紙P2のみを送り方向下流側へ送ることができる。このとき、最上位の用紙P2の先端は、前述したようにリタードローラー41の接近移動によって中間駆動ローラー側へ変位したので、用紙先端規制リブ60、60に規制される虞はない。
【0079】
尚、本実施形態において、送り経路は側視U字としたがこれに限られるものではない。側視一直線でもよいし、一部に側視湾曲した区間Rを有する構成でもよい。係る場合も同様に、スキュー取り後において、第2アシストローラー51が離間した状態の中間駆動ローラー50を逆転駆動させることによって幅方向左右の撓み量の差を除去することができるからである。少なくとも一部に側視湾曲した区間Rを有する構成が望ましい。用紙Pの厚み方向Z’において、用紙Pがどちら側に撓むかを決めることができるからである。
【0080】
続いて、本発明に係る変位部材5について詳しく説明する。
図11に示すのは、本発明に係るカセット部における変位部材を示す斜視図である。また、図12に示すのは、本発明に係るカセット部における変位部材を示す平面図である。またさらに、図13に示すのは、載置面に用紙が載置されていない状態における変位部材の第1状態を示す概略側断面図である。また、図14に示すのは、載置面に用紙が載置されている状態における変位部材の第2状態を示す概略側断面図である。
ここで、「変位部材の第1状態」とは、変位部材が載置面に設けられたパッド部より積層方向上方へ突出した状態をいう。一方、「変位部材の第2状態」とは、変位部材がパッド部より積層方向下方へ退避した状態をいう。
【0081】
図11〜図13に示す如く、カセット部14には、載置面18に載置された用紙Pの幅方向側端と接触し、側端を揃える第1エッジガイド25および第2エッジガイド26が設けられている。また、載置された用紙Pの後端を揃える後端側ガイド27が設けられている。第1エッジガイド25は幅方向Xにおいて原則固定されている。一方、第2エッジガイド26は、幅方向Xへ移動させることができるように設けられている。従って、各用紙サイズに対応することができる。
【0082】
また、後端側ガイド27は、送り方向Yへ移動させることができるように設けられている。従って、各用紙サイズに対応することができる。
尚、第1エッジガイド25および第2エッジガイド26は、載置されている用紙Pが送り方向下流側へ送られる際、幅方向Xにおける用紙Pに対して外側へ僅かに移動するように構成されている。これは、用紙Pが送り方向下流側へ送られる際の、用紙Pの側端と、第1エッジガイド25および第2エッジガイド26との接触による摩擦抵抗を低減させるためである。即ち、バックテンションを低減させるためである。これにより、用紙Pの送り精度を安定させることができる。
【0083】
また、載置面18のパッド部15の幅方向両側に隣接した位置には、第1長穴18a、18aが形成されている。またさらに、第1長穴18a、18aより送り方向上流側には、第2長穴18bおよび第3長穴18cが形成されている。そして、第1長穴18a、18aを介して変位部材5、5が積層方向上方へ突出することができるように構成されている。
尚、変位部材5、5は同一の後述する第1レバー部材6に形成されている。さらに、第1長穴18a、18aおよび変位部材5、5は左右同様であるため、以下、一方のみについて説明するものとし、他方についての説明は省略する。
【0084】
同様に、第2長穴18bを介して突部16bが積層方向上方へ突出することができるように構成されている。変位部材5は、後述するように第1レバー部材6に形成されている。同様に、突部16bは、第2レバー部材16に形成されている。
尚、第3長穴18cから突出するのは、第2用紙検出器28を構成する第3レバー部材29の突出部29aである。これにより用紙Pの有無を検出することができる。また、載置されている用紙Pが最後の一枚である場合、用紙Pの後端が通過したタイミングを検出することができる。
【0085】
第2レバー部材16によって第2用紙検出器28を構成してもよいのは勿論である。本実施形態において、第2レバー部材16とは別の第3レバー部材29によって第2用紙検出器28を構成した理由は、幅方向Xにおける用紙サイズが、第1エッジガイド25と第2長穴18bとの間の距離よりも短いサイズにも対応するためである。即ち、載置可能な全てのサイズの用紙Pは、第1エッジガイド側に揃えられる構成であり、第1エッジガイド25に近い位置に第2用紙検出器28を設けることにより、全ての用紙サイズに対応するためである。
【0086】
また、幅方向Xにおいて、パッド部15より第1エッジガイド側には、前記距離よりも短いサイズの用紙に対応した小サイズ用パッド部15bが設けられている。またさらに、パッド部より第2エッジガイド側には、前記距離よりも長いサイズの用紙に対応した大サイズ用パッド部15cが設けられている。
本実施形態では、送り経路の長さは一定であり、本実施形態の変位部材5は、送り方向における所定の長さの用紙を送る場合に使用するパッド部15と、該用紙を逆送りした際の用紙の後端との接触を考慮したものである。
【0087】
即ち、小サイズ用パッド部15bおよび大サイズ用パッド部15cを使用する場合は特に問題としない。ただし、変位部材5を、小サイズ用パッド部15bの両側にも設けることが望ましい。パッド部15を使用する場合は、パッド部15との接触と同様に用紙の後端が小サイズ用パッド部15bと接触する虞があるからである。
以下、幅方向Xにおいてパッド部15の両側に設けられた変位部材5について詳しく説明する。
【0088】
また、図13に示す如く、載置面18の下方には、第1レバー部材6および第2レバー部材16が設けられている。このうち、第1レバー部材6は、変位部材5と、第1レバー軸6aと、第1係合部6bと、第1度当て部6cとを有している。変位部材5は、幅方向Xにおいてパッド部15の両側となる位置であって、送り方向Yにおいてパッド部15の上流端より上流側から、パッド部15の下流端より下流側まで延設されている。
【0089】
そして、変位部材5は、第1長穴18aを介して載置面18より積層方向上方へ突出することができるように設けられている。また、変位部材5における積層方向上方の縁部7は、平坦部7bと、平坦部7bより送り方向下流側の傾斜部7aと、を有している。変位部材5が載置面18に設けられたパッド部15より積層方向上方へ突出した前記第1状態において、平坦部7bは、パッド部15の頂部15aより積層方向上方に位置する。
【0090】
また、傾斜部7aは、下流端が載置面18より積層方向下方に位置し、上流側の平坦部7bに進むに従って積層方向上方へ位置するように載置面18に対して傾斜している。そして、傾斜部7aは平坦部7bと滑らかに繋がっている。
また、第1レバー部材6は、第1レバー軸6aを支点に揺動可能に設けられている。またさらに、第1係合部6bは、後述する第2レバー部材16の第2係合部16eと係合可能に設けられている。また、第1度当て部6cは、載置面18の下方に形成された第1規制部19と当接することができるように設けられている。
【0091】
一方、第2レバー部材16は、突部16bと、第2レバー軸16aと、第2係合部16eと、第2度当て部16dと、第1付勢手段17の一例である錘部16cと、を備えている。このうち、突部16bは、第2長穴18bを介して載置面18より積層方向上方へ突出することができるように設けられている。本実施形態では、突部16bが載置面18より上方へ突出した状態を、突部16bの第3状態とする。
【0092】
また、第2レバー部材16は、第2レバー軸16aを支点に揺動可能に設けられている。またさらに、第2係合部16eは、前述したように第1レバー部材6の第1係合部6bと係合可能に設けられている。また、第2度当て部16dは、載置面18の下方に形成された第2規制部24と当接することができるように設けられている。またさらに、第1付勢手段17としての錘部16cは、突部16bが載置面18より上方へ突出する方向へ第2レバー部材16が揺動するように力を作用させている。言い換えると、錘部16cは、図13における第2レバー部材16を反時計方向へ揺動させるように作用する。
【0093】
また、第1レバー部材6は、第1レバー軸6aに設けられた第2付勢手段8の一例であるねじりコイルばね9によって図13における反時計方向へ付勢されている。
ここで、第1付勢手段17としての錘部16cのよる作用力の大きさ、および第2付勢手段8としてのねじりコイルばね9の付勢力の大きさについて説明する。
第1付勢手段17としての錘部16cのよる作用力の大きさは、一枚の用紙Pの自重に対抗することができないが、外力が作用していない状態では、突部16bを第3状態にすることができる程度に構成されている。
【0094】
同様に、第2付勢手段8としてのねじりコイルばね9の付勢力の大きさは、一枚の用紙Pの自重に対抗することができないが、外力が作用していない状態では、変位部材5を前記第1状態にすることができる程度に構成されている。
さらに、第2付勢手段8としてのねじりコイルばね9の付勢力の大きさは、第1付勢手段17としての錘部16cによる作用力の大きさより大きく構成されている。
【0095】
従って、図13に示す如く、用紙Pが載置面18に載置されていない状態では、第1レバー部材6の姿勢は、第1係合部6bにおいて第2レバー部材16の第2係合部16eを押し上げ、第1度当て部6cが載置面18の下方の第1規制部19と当接した状態となる。即ち、第1レバー部材6の姿勢は、第1度当て部6cが第1規制部19と当接することによって決められる。
【0096】
一方、第2レバー部材16の姿勢は、第1付勢手段17としての錘部16cが作用しているが、前述した付勢力と作用力との大小関係により第2係合部16eが第1レバー部材6の第1係合部6bに押し上げられた状態となる。即ち、第2レバー部材16の姿勢は、第2係合部16eが第1係合部6bと当接することによって決められる。このとき、第2度当て部16dは、載置面18の下方の第2規制部24から僅かに離間した状態である。
尚、図13に示す状態では、第1係合部6bは第2係合部16eと当接しているが、強固に係合した状態ではない。
【0097】
図14に示す如く、載置面18に用紙Pが載置された状態では、変位部材5および突部16bは、用紙Pの自重によって積層方向下方へ押し下げられる。
ここで、図13に示す如く、変位部材5の前記第1状態および突部16bの前記第3状態において、突部16bにおける積層方向上端である頂部は、変位部材5の積層方向上端である縁部7より積層方向上方に位置している。そして、用紙Pが載置される際、突部16bは、変位部材5より早いタイミングで用紙Pの裏面と接触する。
【0098】
従って、第2レバー部材16は、第1レバー部材6より早いタイミングで図14における時計方向へ揺動し始める。即ち、第2係合部16eは、第1係合部6bより早いタイミングで時計方向へ揺動し始める。この際、第2係合部16eは、第1係合部6bの軌道から退避するように揺動する。従って、第2係合部16eは、第1係合部6bの揺動を妨げる虞がない。その結果、変位部材5は、用紙Pの自重によって押し下げられ、変位部材5がパッド部15より積層方向下方へ退避した前記第2状態となる。
【0099】
ここで、変位部材5の縁部7の積層方向上端は、積層方向Zにおいて載置面18と略同じ位置まで退避する。この理由は、パッド部15の頂部15aは、載置面18より積層方向上方へ僅かに突出して設けられている。そして、用紙Pにおけるパッド部15に支えられている箇所以外の箇所が、自重によって撓み、パッド部15に支えられている箇所より積層方向下方に下がるからである。
同様に、突部16bは、用紙Pの自重によって押し下げられ、突部16bの頂部が積層方向Zにおいて載置面18と略同じ位置まで退避した第4状態となる。
【0100】
この状態では、載置された用紙Pは、パッド部15と確実に接触することができる。従って、ピックアップローラー21によって用紙Pを送る際、前述した摩擦係数の関係を維持することができる。その結果、最上位の用紙P1を次位以降の用紙P2から分離する分離能力を安定させることができる。そして、載置された用紙Pが何枚も送られると、やがて最後の一枚のみが載置された状態となる。
【0101】
図15に示すのは、最後の一枚の用紙が送り方向下流側へ送られる際であって、用紙の後端が突部を通過したときであって、変位部材を通過する前の状態を示す概略側断面図である。
尚、変位部材および突部の状態の理解を容易にするため、ピックアップローラーの図示を省略する。
図15に示す如く、最後の一枚の用紙Pがピックアップローラー21によって送り方向下流側へ送られ、用紙Pの後端が突部16bを通過する。
【0102】
すると、突部16bは用紙Pの自重から解放される。即ち、用紙Pの自重が突部16bに作用しない状態となる。従って、第2レバー部材16は、第1付勢手段17としての錘部16cの作用によって図中における反時計方向へ揺動する。そして、突部16bは、第2長穴18bを介して載置面18より積層方向上方へ突出した第3状態となる。この際、第2度当て部16dが第2規制部24と当接することにより、第2レバー部材16の反時計方向への揺動は停止する。
【0103】
一方、第2レバー部材16において第2レバー軸16aを基準として突部16bと反対側にある第2係合部16eは、第1レバー部材6の第1係合部6bに接近する。そして、第2係合部16eは、第1係合部6bと係合せずに停止する。ここで、第2係合部16eは、第1係合部6bと当接してもよいし、離間した状態でもよい。強固に係合していない状態であればどちらでもよい。
この際、変位部材上には用紙Pがあるため、用紙Pの自重が変位部材5に作用している。従って、第1レバー部材6の姿勢は、図14に示す状態と同じである。
【0104】
図16に示すのは、最後の一枚の用紙が送り方向下流側へ送られる際であって、用紙の後端が変位部材を通過したときの状態を示す概略側断面図である。
尚、変位部材および突部の状態の理解を容易にするため、ピックアップローラーの図示を省略する。
図16に示す如く、ピックアップローラー21および送りローラー対96によって送り方向下流側へ送られ、用紙Pの後端が変位部材5を通過する。
【0105】
すると、変位部材5は用紙Pの自重から解放される。即ち、用紙Pの自重が変位部材5に作用しない状態となる。従って、第1レバー部材6は、第2付勢手段8としてのねじりコイルばね9の付勢力によって図中における反時計方向へ揺動する。そして、変位部材5は、第1長穴18aを介してパッド部15の頂部15aより積層方向上方へ突出した前記第1状態となる。
【0106】
この際、前述した付勢力と作用力との大小関係により第1係合部6bが、錘部16cの作用力に抗して第2係合部16eを押し上げ、第2レバー部材16を僅かに時計方向へ揺動させる。そして、第2係合部16eが第1係合部6bの軌道から外れることにより、第2係合部16eは一時的に第1係合部6bの押し上げから解放される。このとき、第2レバー部材16は、錘部16cの作用力により反時計方向へ揺動する。
【0107】
そして、第2係合部側が第1係合部側と当接することにより、第2レバー部材16の反時計方向への揺動は停止する。この際、第1レバー部材6の反時計方向への揺動は、第1度当て部6cが第1規制部19に度当たることにより停止する。即ち、第1レバー部材6の姿勢は、第1度当て部6cと第1規制部19との当接によって決められる。
一方、突部16bは載置面18より上方へ突出した前記第3状態である。そして、第2レバー部材16の姿勢は、第1係合部6bと第2係合部16eとの当接によって決められる。このとき、第2度当て部16dは、僅かに第2規制部24から離間した状態である。
即ち、前述した載置面18に用紙Pが載置されていない状態(図13)と同じ状態となる。
【0108】
図17に示すのは、最後の一枚の用紙が送り方向下流側に送られた後に、送り方向上流側へ逆送りされた際の状態を示す概略側断面図である。
尚、変位部材および突部の状態の理解を容易にするため、ピックアップローラーの図示を省略する。
図17に示す如く、最後の一枚の用紙Pが逆送りされる場合について考える。
【0109】
逆送りする技術的意義としては、例えば、前述したように用紙Pのスキュー取り動作を実行した際に送りローラー対96と搬送ローラー対71との間に生じた用紙Pの撓みを除去するためである。係る場合、前述したように、第2アシストローラー51を中間駆動ローラー50から離間させ、中間駆動ローラー50を逆転駆動させる。これにより用紙Pの後端側を記録時の送り方向上流側へ逆送りすることができる。この際、用紙Pの後端は、記録時の送り方向上流側へ移動する。
【0110】
ここで、太い一点鎖線で示すのは、逆送りされた用紙Pの姿勢であって、用紙Pの後端が変位部材5より記録時の送り方向下流側に位置する状態である。また、太い二点鎖線で示すのは、太い一点鎖線の状態からさらに逆送りされ、用紙Pの後端がパッド部15より記録時の送り方向下流側で変位部材5と接触した状態である。またさらに、太い実線で示すのは、太い二点鎖線の状態からさらに逆送りされ、用紙Pの後端が変位部材5と接触した状態でパッド部15の積層方向上方へ位置する状態である。
【0111】
最後の一枚の用紙Pが逆送りされた場合、送り経路の長さに応じて特定のサイズの用紙Pの後端が、送り方向Yにおいてパッド部近傍に位置する。このとき、前述したように、最後の一枚の用紙Pの後端が変位部材5を通過することにより、変位部材5は前記第1状態、突部16bは前記第3状態となる。そして、最後の一枚の用紙Pの後端側が逆送りされると、太い一点鎖線で示す如く、用紙Pの後端は、載置面18と接触し載置面18に案内されながら記録時の送り方向上流側へ移動する。
【0112】
さらに、逆送りされると、用紙Pの後端は、変位部材5の縁部7の傾斜部7aを上るように移動して平坦部7bへ案内される。この際、変位部材5には、用紙Pの自重が作用する。従って、第1レバー部材6は、時計方向へ揺動しようする。そして、第1レバー部材6が時計方向へ僅かに揺動したとき、第1係合部6bは、第2レバー部材16の第2係合部16eと係合する。係合することにより、第2レバー部材16には反時計方向へ揺動させる力が作用する。
【0113】
そして、第2レバー部材16が反時計方向へ僅かに揺動したとき、第2度当て部16dが第2規制部24と度当たることにより、第2レバー部材16の反時計方向への揺動が停止する。従って、第1レバー部材6の時計方向への揺動は、第1係合部6bと第2係合部16eとの係合によって停止する。即ち、第1係合部6bと第2係合部16eとが強固に係合し、第1レバー部材6の姿勢を保持する。
【0114】
さらに言い換えると、第2レバー部材16は、第1レバー部材6の姿勢をロックする。このとき、変位部材5の縁部7の平坦部7bの姿勢は、パッド部15の頂部15aの姿勢と略平行になる。
尚、変位部材5は、載置面18に設けられたパッド部15より積層方向上方へ突出した前記第1状態のままである。
【0115】
そして、さらに逆送りされると、用紙Pの後端は、変位部材5の縁部7の平坦部7bに案内される。ここで、積層方向Zにおいて平坦部7bは、パッド部15の頂部15aより上方に位置する。従って、用紙Pの後端が、パッド部15における記録時の送り方向下流端に引っ掛かる虞がない。即ち、変位部材5の縁部7は、用紙Pの後端をすくい上げるように案内して、載置面18とパッド部15の下流端とが成す段差を乗り越えさせることができる。また、さらに逆送りされた際、用紙Pの後端側がパッド部15と接触することを防止することができる。
【0116】
尚、逆送りされた際に用紙Pの後端は、第2レバー部材16の突部16bと接触することはないものとする。
また、重送によって最後の一枚の用紙が最後から二枚目の用紙と一緒に送られた場合、最後の一枚の用紙は、予備分離部30、本分離部40および用紙先端用規制リブ60のいずれか一によって分離される。
【0117】
この際、最後の一枚の用紙の後端は、パッド部15を通過していないものとする。即ち、最後の一枚の用紙が重送された場合、第2レバー部材16は第1レバー部材6の姿勢をロックしないものとする。また、仮にロックしたとしても、最後の一枚の用紙がピックアップローラー21に押さえられることにより、突部16bが積層方向下方へ押されて第1レバー部材6の姿勢のロックが解除されるものとする。
【0118】
以上、説明したように、最後の一枚の用紙Pの後端側が逆送りされた場合であっても、後端が載置面18とパッド部15との段差に引っ掛かる虞がない。また、用紙Pの後端側がパッド部15の頂部15aと接触して摩擦抵抗を受けることがない。即ち、用紙Pの後端側の逆送りが妨げられる虞がない。その結果、スキュー取り動作の際に生じた送りローラー対96と搬送ローラー対71との間の撓みを確実に除去することができる。そして、搬送精度を安定させることができる。
【0119】
尚、本実施形態において、変位部材5は、第1レバー部材6に設けられ揺動する構成としたが、揺動に限られない。積層方向上下に移動する構成でもよい。また、突部16bについても同様である。突部16bが積層方向上下に移動する構成でもよい。またさらに、第1付勢手段17の一例として錘部16cを設けたが、ばね等であってもよい。また、第2付勢手段8の一例としてねじりコイルばね9を用いたが、その他の種類のばねや錘を用いてもよい。
【0120】
また、摩擦部材の一例としてコルク材のパッド部15を用いたが、材質は前述した摩擦係数の関係が成立するその他の材質でもよい。またさらに、パッド部15の頂部15aが載置面18より積層方向上方へ突出していない構成でもよい。係る場合、逆送りした際、用紙Pの後端が段差に引っ掛かる虞はないが、用紙Pがパッド部15の頂部15aと接触することにより逆送りが妨げられる虞があるからである。
【0121】
またさらに、本実施形態では、用紙Pの自重によって第1レバー部材6が揺動して変位部材5の前記第1状態と前記第2状態とが切り替わるように構成したが、これに限られるものではない。第2用紙検出器28によって最後の用紙Pの後端が変位部材5を通過したことを検出して、モーター等の動力によりカム機構等の手段によって変位部材5の前記第1状態と前記第2状態とを切り換えるように構成してもよいのは勿論である。
【0122】
また、本実施形態において、突部16bの前記第4状態は、積層方向Zにおいて突部16bの頂部が載置面18と同じ位置としたが同じ位置に限られない。前記第3状態より下がった位置であればよい。前記第3状態より下がっていることにより、用紙Pが突部16bと接触していると判断することができるからである。
またさらに、本実施形態では、変位部材5、5を幅方向Xにおけるパッド部15の両側に設けたがこれに限られない。送り方向Yにおけるパッド部15の下流側でもよい。係る場合も同様に、最後の一枚の用紙が逆送りされた際、用紙の後端がパッド部15と接触することおよび載置面18とパッド部15とが形成する段差に引っ掛かることを防止することができるからである。
【0123】
本実施形態の媒体送り装置としての給送部10は、被送り媒体の一例である用紙Pが載置される載置面18と、載置面18に載置された用紙Pを送り方向下流側へ送る第1送り手段としてのピックアップローラー21と、ピックアップローラー21によって送られた用紙Pをピックアップローラー21の送り方向Yを基準とした送り方向上流側および下流側へ送る第2送り手段としての中間駆動ローラー50と、載置面18におけるピックアップローラー21と対向する位置に設けられた摩擦部材としてのコルク材で形成されたパッド部15と、パッド部15に隣接して設けられ、パッド部15より用紙Pの積層方向上方へ突出した第1状態と、パッド部15より積層方向下方へ退避した第2状態とを切り換え可能な変位部材5と、を備え、ピックアップローラー21によって載置面18に載置された残り一枚の用紙Pを送り方向下流側へ送る際、変位部材5を前記第2状態に設定し、前記残り一枚の用紙Pの送り方向上流端である後端がパッド部15を通過した後に用紙Pを中間駆動ローラー50によって送り方向上流側へ逆送りする際、変位部材5を前記第1状態に設定する構成であることを特徴とする。
【0124】
また、本実施形態において、パッド部15は、載置面18より用紙Pの積層方向上方へ突出して設けられていることを特徴とする。
またさらに、本実施形態において、変位部材5を有する第1アーム部としての第1レバー部材6と、第1レバー部材6より送り方向上流側に設けられ、第1レバー部材6と係合可能な第2アーム部としての第2レバー部材16と、第2レバー部材16に設けられ、載置面18から突出した第3状態と、該第3状態より積層方向下方に退避した第4状態とを切り換え可能な突部16bと、をさらに備え、突部16bは、外力が付与されていない状態では前記第3状態となり、突部上の一枚の用紙Pの自重によって前記第4状態となるように第1付勢手段17の一例である錘部16cの自重によって付勢されており、突部16bの前記第4状態において、第2レバー部材16と第1レバー部材6との係合は解除され、第2レバー部材16と第1レバー部材6との係合が解除されている状態において、変位部材5は、変位部材5および突部16bに対して外力が付与されていない状態では前記第1状態となり、変位部材上の一枚の用紙Pの自重によって前記第2状態となるように第2付勢手段8の一例であるねじりコイルばね9のばね力によって付勢されており、ねじりコイルばね9による付勢力は、錘部16cの自重による付勢力より大となる関係を有しており、前記第2状態から前記第1状態に切り替わる際、第1レバー部材6は第2レバー部材16と係合し、突部16bの前記第3状態において、第2レバー部材16は第1レバー部材6との係合によって変位部材5の前記第1状態を保持する構成であることを特徴とする。
【0125】
また、本実施形態において、送り方向Yにおいて変位部材5における積層方向上方の縁部7は、パッド部15の頂部15aの送り方向上流端より上流側からパッド部15の頂部15aの送り方向下流端より下流側まで延設されており、前記第1状態において、縁部7におけるパッド部15の頂部15aの下流端より下流側は、下流端が載置面18より積層方向下方であり、上流側へ行くに従って頂部15aより積層方向上方となるように載置面18に対して傾いた傾斜部7aを有することを特徴とする。
【0126】
またさらに、本実施形態において、縁部7における傾斜部7aより上流側には平坦部7bが設けられており、変位部材5が前記第1状態、かつ、突部16bが前記第3状態において、用紙Pが前記第1状態の変位部材上にないとき、変位部材5の縁部7における平坦部7bの姿勢は、平坦部7bにおける上流側が下流側より積層方向上方となるようにパッド部15の頂部15aに対して傾いており、用紙Pが中間駆動ローラー50によって逆送りされ前記第1状態の変位部材上に移動してきた際、用紙Pの自重によって第1レバー部材6が変位したとき、第2レバー部材16が第1レバー部材6の所定量以上の変位を制限し、このときの縁部7における平坦部7bの姿勢は、パッド部15の頂部15aの姿勢に倣っている構成であることを特徴とする。
【0127】
本実施形態の記録装置としてのプリンター1は、被記録媒体の一例である用紙Pを送り方向下流側へ送る媒体送り手段としての給送部10と、給送部10によって送られた用紙Pに対して記録ヘッド82により記録する記録部80と、を備えていることを特徴とする。
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0128】
1 プリンター、2 基体部、3 送り部、4 切り換え機構、5 変位部材、
6 第1レバー部材、6a 第1レバー軸、6b 第1係合部、6c 第1度当て部、
7 縁部、7a 傾斜部、7b 平坦部、8 第2付勢手段、9 ねじりコイルばね、
10 給送部、11 U字型外側用紙案内部、12 内側用紙案内部、
13 巻き込み防止部、14 カセット部、15 パッド部、
15a (パッド部の)頂部、15b 小サイズ用パッド部、
15c 大サイズ用パッド部、16 第2レバー部材、16a 第2レバー軸、
16b 突部、16c 錘部、16d 第2度当て部、16e 第2係合部、
17 第1付勢手段、18 載置面、18a 第1長穴、18b 第2長穴、
18c 第3長穴、19 第1規制部、20 ピックアップ部、
21 ピックアップローラー、22 アーム部、23 アーム軸、24 第2規制部、
25 第1エッジガイド、26 第2エッジガイド、27 後端側ガイド、
28 第2用紙検出器、29 第3レバー部材、29a 突出部、30 予備分離部、
31 土手分離部、40 本分離部、41 リタードローラー、43 揺動機構、
45 カム部、48 第1アシストローラー、50 中間駆動ローラー、
51 第2アシストローラー、52 第3アシストローラー、60 用紙先端規制リブ、
70 搬送部、71 搬送ローラー対、72 搬送駆動ローラー、
73 搬送従動ローラー、74 従動ローラーホルダー、75 第1用紙検出器、
76 センサー部、77 用紙検出レバー、80 記録部、81 媒体支持部、
82 記録ヘッド、90 制御部、91 第1モーター、92 第2モーター、
93 第3モーター、94 第4モーター、96 送りローラー対、N ニップ点、
P 用紙、P1 先行する用紙、P2 後続の用紙、R 湾曲した区間、X 幅方向、
Y 送り方向、Z (用紙の)積層方向、Z’ (用紙の)厚み方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被送り媒体が載置される載置面と、
該載置面に載置された被送り媒体を送り方向下流側へ送る第1送り手段と、
該第1送り手段によって送られた被送り媒体を前記第1送り手段の送り方向を基準とした送り方向上流側および下流側へ送る第2送り手段と、
前記載置面における前記第1送り手段と対向する位置に設けられた摩擦部材と、
該摩擦部材に隣接して設けられ、前記摩擦部材より被送り媒体の積層方向上方へ突出した第1状態と、前記摩擦部材より積層方向下方へ退避した第2状態とを切り換え可能な変位部材と、を備え、
前記第1送り手段によって前記載置面に載置された残り一枚の被送り媒体を送り方向下流側へ送る際、前記変位部材を前記第2状態に設定し、
前記残り一枚の被送り媒体の送り方向上流端である後端が前記摩擦部材を通過した後に該被送り媒体を前記第2送り手段によって送り方向上流側へ逆送りする際、前記変位部材を前記第1状態に設定する構成である媒体送り装置。
【請求項2】
請求項1に記載の媒体送り装置において、前記摩擦部材は、前記載置面より被送り媒体の積層方向上方へ突出して設けられていることを特徴とする媒体送り装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の媒体送り装置において、前記変位部材を有する第1アーム部と、
該第1アーム部より送り方向上流側に設けられ、該第1アーム部と係合可能な第2アーム部と、
該第2アーム部に設けられ、前記載置面から突出した第3状態と、該第3状態より積層方向下方に退避した第4状態とを切り換え可能な突部と、をさらに備え、
前記突部は、外力が付与されていない状態では前記第3状態となり、該突部上の一枚の被送り媒体の自重によって前記第4状態となるように第1付勢手段によって付勢されており、
前記突部の前記第4状態において、前記第2アーム部と前記第1アーム部との係合は解除され、
前記第2アーム部と前記第1アーム部との係合が解除されている状態において、前記変位部材は、該変位部材および前記突部に対して外力が付与されていない状態では前記第1状態となり、該変位部材上の一枚の被送り媒体の自重によって前記第2状態となるように第2付勢手段によって付勢されており、
該第2付勢手段による付勢力は、前記第1付勢手段による付勢力より大となる関係を有しており、前記第2状態から前記第1状態に切り替わる際、前記第1アーム部は前記第2アーム部と係合し、
前記突部の前記第3状態において、前記第2アーム部は前記第1アーム部との係合によって前記変位部材の前記第1状態を保持する構成である媒体送り装置。
【請求項4】
請求項3に記載の媒体送り装置において、送り方向において前記変位部材における積層方向上方の縁部は、前記摩擦部材の頂部の送り方向上流端より上流側から該摩擦部材の頂部の送り方向下流端より下流側まで延設されており、
前記第1状態において、前記縁部における前記摩擦部材の頂部の下流端より下流側は、下流端が前記載置面より積層方向下方であり、上流側へ行くに従って前記頂部より積層方向上方となるように前記載置面に対して傾いた傾斜部を有することを特徴とする媒体送り装置。
【請求項5】
請求項4に記載の媒体送り装置において、前記縁部における前記傾斜部より上流側には平坦部が設けられており、
前記変位部材が前記第1状態、かつ、前記突部が前記第3状態において、
被送り媒体が前記第1状態の前記変位部材上にないとき、該変位部材の前記縁部における前記平坦部の姿勢は、該平坦部における上流側が下流側より積層方向上方となるように前記摩擦部材の頂部に対して傾いており、
被送り媒体が前記第2送り手段によって逆送りされ前記第1状態の前記変位部材上に移動してきた際、被送り媒体の自重によって前記第1アーム部が変位したとき、前記第2アーム部が該第1アーム部の所定量以上の変位を制限し、このときの前記縁部における前記平坦部の姿勢は、前記摩擦部材の頂部に倣っている構成である媒体送り装置。
【請求項6】
被記録媒体を送り方向下流側へ送る媒体送り手段と、
該媒体送り手段によって送られた被記録媒体に対して記録ヘッドにより記録する記録部と、を備えた記録装置であって、
前記媒体送り手段は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載された前記媒体送り装置を備え、前記被記録媒体は、前記被送り媒体である記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−79643(P2011−79643A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234083(P2009−234083)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】