説明

媒体鑑別装置

【課題】搬送された媒体の画像データを確実に取得し、かつ画像データ取得のタイミングが遅れてしまうことを防止する手段を提供する。
【解決手段】媒体を搬送する媒体搬送路と、該媒体搬送路を横断し、媒体の画像データを取得する光学ラインセンサとを備え、前記光学ラインセンサを、ラインセンサ発光部と、複数の画素を1列に配置したラインセンサ受光部とにより構成し、前記ラインセンサ受光部が、光により媒体を検知した場合、前記媒体を検知した画素数が所定の判定値以上の画素数であったときに、前記光学ラインセンサによる画像データの取得を開始することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融機関の自動取引装置等に備えられ、紙幣やカード等の紙葉類の媒体の画像データを取得する媒体鑑別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の媒体鑑別装置は、透過光センサよりも媒体の搬送方向の手前にトリガセンサを配置し、搬送された媒体がトリガセンサ上を通過したことを検知して透過光センサを動作させて搬送される媒体の画像データを取得している(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平8−96201号公報(段落0016、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来の技術においては、トリガセンサは複数間隔を空けて配置されるため、搬送された紙幣が小さく折り畳まれているとトリガセンサ上を通らない場合があり、そのような場合はトリガセンサが反応せず、透過光センサが動作しないため、媒体の画像データを取得できないという問題がある。
また、搬送方向に対して斜めに搬送された媒体の先端の角がトリガセンサ間を通った後、トリガセンサで媒体を検知した場合に、画像データ取得のタイミングが遅れて取得した画像データの一部が欠けてしまうという問題がある。
【0004】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、搬送された媒体の画像データを確実に取得し、かつ画像データ取得のタイミングが遅れてしまうことを防止する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、媒体を搬送する媒体搬送路と、該媒体搬送路を横断し、媒体の画像データを取得する光学ラインセンサとを備え、前記光学ラインセンサを、ラインセンサ発光部と、複数の画素を1列に配置したラインセンサ受光部とにより構成し、前記ラインセンサ受光部が、光により媒体を検知した場合、前記媒体を検知した画素数が所定の判定値以上の画素数であったときに、前記光学ラインセンサによる画像データの取得を開始することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】

このように、本発明は、光学ラインセンサにより媒体を検知し、ラインセンサ受光部の媒体を検知した画素数が判定値以上となったときに画像データ取得を開始するため、媒体が搬送されたときにタイミングが遅れることなく確実に光学ラインセンサを動作させて画像データを取得することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、図面を参照して本発明による媒体鑑別装置の実施例について説明する。
【実施例1】
【0008】
図1は実施例1の媒体鑑別装置を示す構成図、図2は実施例1の媒体鑑別装置を示すブロック図、図3は媒体を検知する光学ラインセンサの画素を示す説明図である。
図1、図2において、1は媒体鑑別装置であり、図示しない金融機関の自動取引装置等の内部に設けられ、媒体搬送路2により搬送された紙幣Pの鑑別処理を行う。
3は光学ラインセンサであり、常時動作して媒体搬送路2を横断する1本のLED(Light Emitting Diode)を備えるラインセンサ発光部4と、ラインセンサ発光部4に対向し、複数の画素を一列に配置した総画素数Nのラインセンサ受光部5とにより構成され、ラインセンサ発光部4の光をラインセンサ受光部5で受光し、搬送された紙幣Pがラインセンサ発光部4の光を遮ったときに明度が暗くなった光をラインセンサ受光部5が受光して画素ごとに紙幣Pによる光の遮りの有無を検知する。
【0009】
6は媒体鑑別装置1の制御部であり、媒体鑑別装置1の各部を制御すると共に、図3に示すように光の遮りによって紙幣Pを検知したラインセンサ受光部5の画素の数を計数し、紙幣Pを検知したそれぞれの画素が受光した光の明度を検出することにより紙幣Pの形や模様等の画像データを取得する画像取得処理を実行する。
7は記憶部であり、制御部6が実行するプログラムやそれに用いる各種のデータおよび制御部6による処理結果等が格納される。
【0010】
この記憶部7には、紙幣Pによってラインセンサ受光部5が受光する光が遮られたとき、光学ラインセンサ3によって紙幣Pの画像データ取得の開始を判定するための取得開始判定値(例えば、ラインセンサ受光部5の2mm分の画素数)と、紙幣Pの画像データ取得の終了を判定するための取得終了判定値(例えば、ラインセンサ受光部5の総画素数N)が格納されている。
【0011】
また、記憶部7には制御部6が実行する画像取得処理プログラムが格納されており、制御部6と画像取得処理プログラムにより本実施例のハードウェアとしての各種の機能手段が形成される。
上述した構成の作用について、図4に示す実施例1の画像取得処理を示すフローチャートを用い、Sで示すステップに従って説明する。
【0012】
S1、媒体鑑別装置1の制御部6は、光学ラインセンサ3を作動させて待機する。
S2、媒体搬送路2により搬送された紙幣Pがラインセンサ発光部4が発光する光を遮ると制御部6は、受光した光の明度の変化で紙幣Pを検知したラインセンサ受光部5の画素数(以下、検知画素数という。)を計数し、記憶部7に格納している取得開始判定値を読み出して検知画素数と比較する。
【0013】
S3、制御部6は検知画素数が取得開始判定値未満の場合はステップS2に戻って検知画素数と取得開始判定値との比較を続け、検知画素数が取得開始判定値以上の場合はステップS4に移行する。
S4、検知画素数が取得開始判定値以上であると判断した制御部6は、光学ラインセンサ3により、紙幣Pの画像データの取得を開始する。
【0014】
S5、画像データを取得している制御部6は、紙幣Pを検知していない光学ラインセンサ3の画素数(以下、未検知画素数という。)を計数し、記憶部7に格納している取得終了判定値を読み出して未検知画素数と比較する。
S6、未検知画素数が取得終了判定値未満のときはステップS5に戻って未検知画素数と取得終了判定値との比較を続け、未検知画素数が取得終了判定値と同じになったときにステップS7に移行する。
【0015】
S7、未検知画素数が取得終了判定値と同じと判断した制御部6は、光学ラインセンサ3による紙幣Pの画像データ取得を終了し、ステップS1に戻って待機する。
以上説明したように、本実施例では、光学ラインセンサにより紙幣を検知し、ラインセンサ受光部の検知画素数を計数し、それが取得開始判定値以上となったときに紙幣の画像データ取得を開始するため、紙幣が搬送方向に対して斜め向きに搬送された場合でも、紙幣の角部を検知して画像データを取得するので、画像データ取得のタイミングが遅れてしまうことを防止することができる。
【0016】
また、トリガセンサを実装しないで光学ラインセンサで画像データ取得のタイミングを計ることができるので、トリガセンサを実装するためのコストを減らすことができる。
また、搬送された紙幣が折り畳まれていても光学ラインセンサを確実に動作させて紙幣を検知し、その画像データを取得することができる。
【実施例2】
【0017】
本実施例の媒体鑑別装置1の構造は上記実施例1と同様である。
なお、上記実施例1と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施例の記憶部7は、紙幣Pを検知していないときにごみ等の異物によって光が遮られた検知したラインセンサ受光部5の画素数(以下、異物検知画素数という。)を記憶すると共に、異物検知画素数の光学ラインセンサ3の画像データ取得の動作が妨げられる異物の限界画素数(例えば、ラインセンサ受光部5の1cm分の画素数)を格納する。
【0018】
また、記憶部7は紙幣Pの対角線が紙幣Pの搬送方向と平行に搬送されたときに、光学ラインセンサ3が画像データの取得を開始してから紙幣Pが完全に通過するまでの時間を画像取得限度時間として格納する。
上述した構成の作用について、図5に示す実施例2の画像取得処理を示すフローチャートを用い、SAで示すステップに従って説明する。
【0019】
SA1、媒体鑑別装置1の制御部6は、光学ラインセンサ3を作動させて待機する。
SA2、媒体搬送路2により搬送された紙幣Pがラインセンサ発光部4が発光する光を遮ると制御部6は、紙幣Pを検知したラインセンサ受光部5の検知画素数を計数すると共に、記憶部7に格納している取得開始判定値(後述するステップSA8で記憶部7に異物検知画素数が記憶されているときは、異物検知画素数を取得開始判定値に足し合わせた修正取得開始判定値)と検知画素数とを比較する。
【0020】
SA3、制御部6は検知画素数が取得開始判定値(または修正取得開始判定値)未満の場合はステップSA2に戻って検知画素数と取得開始判定値(または修正取得開始判定値)との比較を続け、検知画素数が取得開始判定値(または修正取得開始判定値)以上の場合はステップSA4に移行する。
SA4、検知画素数が取得開始判定値(または修正取得開始判定値)以上であると判断した制御部6は、光学ラインセンサ3により紙幣Pの画像データの取得を開始すると共に、画像データ取得の画像取得時間の計測を開始する。
【0021】
SA5、画像データを取得している制御部6は、紙幣Pを検知していない光学ラインセンサ3の未検知画素数を認識し、記憶部7に格納している取得終了判定値(後述するステップSA8で記憶部7に異物検知画素数が記憶されているときは、取得終了判定値から異物検知画素数を差し引いた修正取得終了判定値)と未検知画素数とを比較する。
SA6、未検知画素数が取得終了判定値(または修正取得終了判定値)未満の場合はステップSA7に分岐し、未検知画素数が取得終了判定値(または修正取得終了判定値)と同じ場合はステップSA8に移行する。
【0022】
SA7、未検知画素数が取得終了判定値(または修正取得終了判定値)未満と判断した制御部6は、記憶部7に格納している画像取得限度時間を読み出して計測している画像取得時間と比較し、画像取得時間が画像取得限度時間に達していないときはステップSA5に戻って未検知画素数と取得終了判定値(または修正取得終了判定値)との比較を続け、画像取得時間が画像取得限度時間に達したときはステップSA8に移行する。
【0023】
SA8、画像取得時間が画像取得限度時間に達したと判断した、またはステップSA6で未検知画素数が取得終了判定値(または修正取得終了判定値)と同じと判断した制御部6は、紙幣Pの画像データ取得を終了し、つまり紙幣Pを検知していないと認識し、光の遮りからごみ等の異物を検知したラインセンサ受光部5の異物検知画素数を計数して記憶部7に記憶する。
【0024】
SA9、制御部6は、記憶部7に記憶した異物検知画素数と格納した限界画素数とを比較し、異物検知画素数が限界画素数未満の場合はステップSA1に戻って待機し、異物検知画素数が限界画素数以上の場合はステップSA10に移行する。
SA10、異物検知画素数が限界画素数を超えたと判断した制御部6は、エラー発生通知を媒体鑑別装置1を搭載した図示しない自動取引装置に送信して媒体鑑別装置1の作動を停止する。
【0025】
以上説明したように、本実施例では、上記実施例1と同様の効果に加えて、紙幣を検知していないと認識したときに、異物を検知した光学ラインセンサの画素数を基に取得開始判定値を修正するため、異物に反応して光学ラインセンサが動作してしまうのを防止し、紙幣検出の精度を向上させることができる。
また、異物検知画素数が限界画素数を超えたときにエラー発生通知を自動取引装置に送信するので、蓄積する異物の量が増えることによる自動取引装置のシステム休止率を低下させることができる。
【0026】
なお、上記各実施例において、紙幣によって遮られて明度が暗くなったラインセンサ発光部からの光をラインセンサ受光部が受光することによって紙幣を検知し、検知した光の明度から紙幣の形や模様等の画像データを取得するとして説明したが、ラインセンサ発光部の光が紙幣を介して反射し、その反射した光をラインセンサ受光部が受光することによって紙幣を検知する反射型の光学ラインセンサを適用した場合、光を受光したラインセンサ受光部の画素数が取得開始判定値以上のとき、受光した光の明度をもとに紙幣の画像データを取得するようにすれば上記各実施例と同様の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0027】
図6は実施例3の光学ラインセンサを示す説明図である。
なお、上記実施例2と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
図6において、10は制御回路基盤であり、ラインセンサ発光部4と接続してラインセンサ発光部4への電流を制御して光学ラインセンサ3へ供給する電流を調整する電流調整部11と、ラインセンサ受光部5と接続して光学ラインセンサ3の出力値を取得する出力値取得部12とを備える。
【0028】
本実施例の記憶部7は、紙幣Pを検知していないときにおける光学ラインセンサ3の基準出力値が格納される。
上記の構成の作用について説明する。
紙幣Pの画像データを取得中に、ラインセンサ受光部5の未検知画素数が記憶部7に格納した取得終了判定画素数と同じであると判断した、または計測している画素取得時間が記憶部7に格納した画素取得限度時間に達したと判断して画像データの取得を終了した制御部6は、紙幣Pを検知していないと認識して制御回路基盤10の出力値取得部12により光学ラインセンサ3の出力値を認識すると共に、記憶部7に格納されている光学ラインセンサ3の基準出力値を読み出して認識した出力値と比較する。
【0029】
制御部6は認識した出力値が基準出力値未満であると判断した場合は電流調整部11によりラインセンサ発光部4への電流を大きくし、認識した出力値が基準出力値以上であると判断した場合は電流調整部11によりラインセンサ発光部4への電流を小さくして認識した出力値が基準出力値と同じになるように調整する。
以上説明したように、本実施例では、上記各実施例と同様の効果に加えて、紙幣を検知していないときの出力値を認識して基準出力値となるようにラインセンサ発光部に流れる電流を調整するので、温度変化や経年変化等で出力が変動して媒体検出精度および紙幣認識精度が低下することを防止することができる。
【0030】
なお、上記各実施例において、光学ラインセンサで紙幣の画像データを取得する際に、ラインセンサ発光部の発光色を変化させるようにしてもよい。これにより外部から光学ラインセンサが動作していることが目視で確認できるようになる。
また、上記各実施例においては、ラインセンサ発光部を1本のLEDとして説明したが、2本のLEDであってもよく、またラインセンサ受光部の各画素に対向するように配置した複数のLEDで構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1の媒体鑑別装置を示す構成図
【図2】実施例1の媒体鑑別装置を示すブロック図
【図3】紙幣を検知する光学ラインセンサの画素を示す説明図
【図4】実施例1の画像取得処理を示すフローチャート
【図5】実施例2の画像取得処理を示すフローチャート
【図6】実施例3の光学ラインセンサを示す説明図
【符号の説明】
【0032】
1 媒体鑑別装置
2 媒体搬送路
3 光学ラインセンサ
4 ラインセンサ発光部
5 ラインセンサ受光部
6 制御部
7 記憶部
10 制御回路基盤
11 電流調整部
12 出力値取得部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送する媒体搬送路と、該媒体搬送路を横断し、媒体の画像データを取得する光学ラインセンサとを備え、
前記光学ラインセンサを、ラインセンサ発光部と、複数の画素を1列に配置したラインセンサ受光部とにより構成し、
前記ラインセンサ受光部が、光により媒体を検知した場合、前記媒体を検知した画素数が所定の判定値以上の画素数であったときに、前記光学ラインセンサによる画像データの取得を開始することを特徴とする媒体鑑別装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ラインセンサ受光部が、媒体を検知していない場合に、光により異物を検知したときに、該異物を検知した画素数により前記判定値を修正することを特徴とする媒体鑑別装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記ラインセンサ発光部へ供給する電流を調整する電流調整部と、
前記ラインセンサ受光部の出力値を取得する出力値取得部とを設け、
前記電流調整部が、前記ラインセンサ受光部が媒体を検知していないときに、前記出力値取得部が取得した出力値を所定の基準値と同じになるように調整することを特徴とする媒体鑑別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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