説明

子宮頸部細胞の細胞学的解析方法

本発明は、子宮頸部細胞障害を診断し、どの患者が癌に進行する可能性があるか予見するための、癌特異的な遺伝的異常をモニターするための診断テストを提供する。遺伝的異常は、3q及び/又は5p標的プローブのFISH解析を用いた3番染色体及び5番染色体の染色体コピー数の同定によって検出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、子宮頸部細胞における染色体異常の解析のための方法及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
子宮頸癌は、世界的に最も一般的で致命的な女性の癌の一種である。早期に発見されれば、子宮頸癌及びその先駆病変は効果的に治療され得る。Papテストは子宮頸癌の一次スクリーニングであり、形態学的解析を用いて疑わしい細胞を同定する。しかし、単一の細胞診は比較的感度が低く、再現性が低く、曖昧な結果を生じることが多い。パパニコロウ(Pap)テストの約6%は意義不明異型扁平上皮細胞(ASCUS;atypical squamous cells of undetermined significance)と診断されて追跡検査を必要とし、またASCUS患者の5〜10%は未発見の癌である。患者のための現在のガイドラインとして、追跡Papテスト、ヒトパピローマウイルス(HPV)検査及び/又はコルポスコピーが挙げられる。
【0003】
HPV感染は子宮頸癌と関連があり、多くの患者はASCUS・Papテスト結果の後にHPVの検査を受ける。高感度HPV検査は、その感度の高さによって非常に高い陰性的中率をもたらし、検査で陰性が出た女性は子宮頸癌を発症するリスクが低い。しかし、HPV陽性初期病変のごく一部でも高度異形成や癌に進行するため、HPV検査の陽性的中率は限定的である。したがって、HPVの検出は、細胞形態学的評価と組み合わせたとしても特異性の低い検査である。
【0004】
更に、Papテストの約3%は軽度扁平上皮内病変(LSIL;low−grade squamous intraepithelial lesions)と診断される。このような患者のための現在のガイドラインは、追加的なモニタリング及び/又はコルポスコピーを薦めている。臨床研究は、このような患者の多くがHPV+であることを示す。
【0005】
ASCUS/HPV+又はLSIL患者には、より重度の子宮頸疾患に進行し、初期検査の2年後に外科的治療を必要とする顕著なリスクがある。進行する可能性のあるこのような患者の同定を形態学とHPV感染に基づいて行うのは不可能である。患者の疾病進行リスクを予見できる、子宮頸癌の初期発生における遺伝的変化が同定された。このような異常は、DNA量の全体的な変化(例えば、倍数性)、並びに両者共に細胞の不死に関連する3番染色体の一部、特にテロメラーゼタンパク質サブユニットをコードするTERC遺伝子を含む遺伝子座3q26及び5番染色体の一部、特にテロメラーゼタンパク質の別のサブユニットをコードするTERT遺伝子を含む5p15の両方の増幅を含む。研究は、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)によって、マルチカラー蛍光DNAプローブが倍数性並びに3q及び5pコピー数の両方における異常を他の方法よりも高い感度と特異性で検出できることを示した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
子宮頸癌スクリーニングプログラムの実施は、先進工業国における疾病の発生と死亡とを顕著に低減させた。しかし、単一の細胞学的評価は依然として比較的低感度であり、したがって多くの場合追跡検査を必要とする。このことは、サンプリング又は解釈のミス、一部の初期病変は認識可能な表現型変化を生じ得ないという事実に起因する。浸潤頸癌は、子宮頸部異形成の発達段階を経て、頸部上皮内腫瘍(CIN)1、CIN2及びCIN3並びに外科的介入を必要とする真の前癌状態の病変と考えられている上皮内癌へと発生する。しかし、全軽度異形成病変の約15%だけがこの直線進行経路を辿る。Pap及びHPV検査は、子宮頸部異形成又は癌の存在を決定するための間接的方法である。したがって、異形成又は癌の存在を直接的に同定し、疾病進行をモニターするための分子マーカーを用いる方法の必要性は依然として満たされていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、FISH、CISH、フローサイトメトリー又は当業者に知られた他の方法によってハイブリダイゼーションを検出するため、また従来の症状が現れる数年前ではないにしろ、数ヶ月前にどの患者が癌に進行し得るか進行しそうにないか予見するために、遺伝的異常を検出するための様々な細胞学的手法を用いて子宮頸部細胞の遺伝的変化をモニターするための診断方法を提供する。
【0008】
染色体の異数性及び特定の癌関連遺伝子のコピー数変化の可視化は、細胞学的試料のルーチンの形態学的評価の重要な補完となった。染色体の異数性とその結果生じるゲノム不均衡は、癌細胞に特異的で異なる癌腫で異なり、また疾病進行初期に起こるため、このアプローチは生物学的に有効で成功を収めた。他のヒト癌腫の大部分と同様に、子宮頸癌はゲノム不均衡の分布によって定義される。ヒトパピローマウイルスの高リスクサブタイプの感染に加えて、続く子宮頸部扁平上皮の形質転換は、他の細胞学的異常の中でも染色体腕3q及び5pの追加的なコピーの獲得を必要とする。本発明の一態様において、軽度子宮頸部異形成における5p15増幅と共に3q26増幅の同定は、個々の病変が高度子宮頸部異形成及び癌へと進行する潜在性に関する情報を提供できる。
【0009】
一態様において、本発明は、子宮頸部異形成又は癌を含み得る子宮頸部細胞障害の患者の状態を評価するための方法であって、患者から得られた試料において染色体3qにおけるゲノム増幅と、染色体5pにおけるゲノム増幅と、対照として7番染色体のセントロメア(CEN7)の存在及び/又は増幅とを検出するステップを含む方法を提供する。染色体3q及び染色体5pのゲノム増幅の検出は、患者の状態が高度子宮頸部異形成に進行したことを示す。7番染色体のゲノム増幅の検出は、子宮頸部細胞の全体的な倍数性状態を測定する。通常、7番染色体のコピー数変化は、子宮頸癌形成初期段階では生じない。7番染色体のゲノム増幅が存在する場合、これは進行性前癌及び癌に関連する状態である異数性を示す。本方法は、患者状態の軽度子宮頸部異形成から高度子宮頸部異形成又は癌状態への変化を評価できる。
【0010】
本発明の更に別の一態様において、患者状態の軽度から高度子宮頸部異形成へのシフトをモニターするための方法が提供される。本発明の特定の態様において、開示されている方法は、患者状態の軽度子宮頸部異形成から高度子宮頸部異形成状態への変化を評価するステップと、浸潤頸癌発症リスクのある患者を同定するステップと、患者状態の軽度子宮頸部異形成維持又は患者状態の軽度子宮頸部異形成若しくは正常への回復を評価するステップとを含む。
【0011】
特定の一態様において、本明細書に開示されている方法は、染色体3q及び5pにおける遺伝子増幅を検出するステップに加えて、染色体1q、20q、12q、19q、11q、6q、17p、7、8q(後期異形成において検出される)、9q、16q、2q、9p、10q、18p及びそれらの任意の組み合わせにおける増幅を検出するステップを更に含むことができる。本発明の更に特定の態様において、3q26遺伝子座及び5p15遺伝子座における増幅が検出される。3q26及び5p15遺伝子座の検出に加えて、次の染色体座、1q21〜31、20q12、12q13〜24、19q13、11q21、7q11〜22、8q24(後期異形成において検出される)、9q33〜34、16q23、2q32、9p22、10q21〜24、18p11及びそれらの任意の組み合わせにおける増幅を検出できる。
【0012】
本明細書に開示されている方法は、染色体3q及び/若しくは染色体5pのゲノム増幅が試料中に存在すること、又は染色体3q及び/若しくは染色体5pのゲノム増幅が試料中に存在しないことを決定するステップを更に含むことができる。
【0013】
本発明の別の一態様において、開示されている染色体領域を対象とするプローブが提供され、また本発明の方法を実施するためのキットが提供される。
【0014】
数例の例示的実施形態の上述及び他の態様は、次の説明及び添付の図面と併せて考慮するとより良く評価、理解できる。尚、次の説明は好ましい実施形態やその多くの具体的詳細を示しているが、これらは限定のためではなく説明のために記載されていると理解するべきである。実施形態の範囲内で、その精神を逸脱することなく多くの変更や修正を施すことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】3q26染色体コピー数増加増幅によって表される子宮頸癌進行ステージを説明する図である。
【図1B】3q26染色体コピー数増加増幅によって表される子宮頸癌進行ステージを説明する図である。
【図1C】3q26染色体コピー数増加増幅によって表される子宮頸癌進行ステージを説明する図である。
【図2】3q26及び5p15染色体コピー数増加増幅によって表される子宮頸癌進行ステージを説明する図である。
【図3】Papテストに続く子宮頸癌発見のための患者管理プロセスを説明する図である。
【図4】3q単独における異常に対する液状処理細胞診患者試料検査から得られた陰性結果の説明図である。
【図5】3q単独における異常に対する液状処理細胞診患者試料検査から得られた陽性結果の説明図である。
【図6】3q及び5pにおける異常に対する液状処理細胞診患者試料検査から得られた陽性結果の説明図である。
【図7】3q及び5pにおける異常に対する液状処理細胞診患者試料検査から得られた陰性結果の説明図である。
【図8A】3q単独における異常に対する患者の組織生検試料検査から得られた陰性結果の説明図である。CIN1組織生検に由来する。
【図8B】3q単独における異常に対する患者の組織生検試料検査から得られた陰性結果の説明図である。CIN2生検に由来する。
【図9A】3q単独における異常に対する患者の組織生検試料検査から得られた陽性結果の説明図である。CIN1組織生検に由来する。
【図9B】3q単独における異常に対する患者の組織生検試料検査から得られた陽性結果の説明図である。CIN2組織生検に由来する。
【図9C】3q単独における異常に対する患者の組織生検試料検査から得られた陽性結果の説明図である。CIN3組織生検に由来する。
【図10】3q及び5pにおける異常に対する患者の組織生検試料検査から得られた結果の説明図である。
【図11】四倍体細胞を用いた3q単独における異常に対する液状処理細胞診患者試料検査の説明図である。
【図12】四倍体細胞を用いた3q及び5pにおける異常に対する液状処理細胞診患者試料検査の説明図である。
【図13】他の遺伝子の中でもTERC遺伝子位置を含む染色体座3q26のゲノム構成と、標識DNAプローブの作製に適したBACクローンを説明する図である。
【図14】他の遺伝子の中でもTERT及びTRIP13遺伝子位置を含む染色体座5p15のゲノム構成と、標識DNAプローブの作製に適したBACクローンを説明する図である。
【図15】5p15.33バンドにおけるプローブを同定するために用いられたクローンの順序と、TRIP13に対する標識DNAプローブの作製に適した特異的BACクローンを説明する図である。
【図16A】子宮頸部細胞における染色体異常を測定するための本発明の特異プローブによって標的とされ得る遺伝子のリストを説明する図である。
【図16B】子宮頸部細胞における染色体異常を測定するための本発明の特異プローブによって標的とされ得る遺伝子のリストを説明する図である。
【図16C】子宮頸部細胞における染色体異常を測定するための本発明の特異プローブによって標的とされ得る遺伝子のリストを説明する図である。
【図16D】子宮頸部細胞における染色体異常を測定するための本発明の特異プローブによって標的とされ得る遺伝子のリストを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、子宮頸癌と関連する染色体領域のコピー数増加の同定に基づく。癌は遺伝病であり、遺伝子異常は罹患細胞において観察できる。異常は、遺伝子領域の増加或いは減少として遺伝子異常を測定することによって細胞学的に観察できる。また、細胞学的に観察できるにしろできないにしろ、バイオマーカー発現の測定が細胞における病状の診断上の指標となり得るように、特定の遺伝子発現の差異は癌細胞において明らかである。本明細書に記載されている方法は、染色体の異常領域と結合する蛍光標識プローブを用いて子宮頸部細胞DNAの異常を直接的に同定することができる。期待数より多い又は少ない数のシグナルが観察される場合、細胞試料を罹病と診断でき、細胞学的に観察できる前に子宮頸部異形成を診断できる。この異常を有する患者は、予後不良となる可能性があり、またより進行した子宮頸疾患を発症するリスクが高くなり得る。患者の疾病進行リスクに関してより具体的な情報を提供するために、本明細書に開示されている方法は、細胞診から得られた他の異常結果の中でもASCUS/HPV+又はLSIL・Papテストの後に或いはその代わりに行うことができる。
【0017】
本明細書において、「子宮頸部細胞障害」、「子宮頸障害」又は「子宮頸疾患」は、次の内、即ち、子宮頸癌形成、上皮内病変又は悪性に関して陰性(NILM;Negative for Intraepithelial Lesion or Malignancy)、ヒトパピローマウイルス(HPV)陽性、意義不明異型扁平上皮細胞(ASC−US)、軽度扁平上皮内病変(LSIL)、異型扁平上皮細胞,HSIL(ASC−H;Atypical Squamous Cells,HSIL)、意義不明異型腺細胞(AGUS;Atypical Glandular Cells Undetermined Significance)、高度扁平上皮内病変(HSIL;High−grade Squamous Intraepithelial Lesion)、子宮頸部異形成、前癌、前悪性病変、子宮頸癌、子宮頸腺癌、頸部扁平上皮癌、頸部上皮内腫瘍1(CIN1)、頸部上皮内腫瘍(CIN2)、頸部上皮内腫瘍3(CIN3)、上皮内癌、浸潤頸癌及び細胞の細胞学的又は遺伝的異常の内のいずれかを意味する。また、本明細書における「疾病」、「細胞障害」又は「障害」は、細胞の細胞学的又は遺伝的異常のいずれかを含むが、これらに限定されない。
【0018】
本方法は、疾病進行に関する予後情報並びに子宮頸部扁平上皮細胞及び腺細胞の両方に機能する柔軟性と共に、形態学的に正常細胞及び異常細胞における遺伝的異常の直接的同定を提供する。
【0019】
コピー数増加
ヒトパピローマウイルス(HPV)の宿主ゲノムへの組込みに加えて3qコピー数の増加は、両者共に子宮頸部異形成の浸潤癌への進行における重要な関連事象であると思えるように、CIN2又はCIN3の頸癌への進行に関わっている。Hopman et al.J.Pathol.2006 Dec:210(4):412−9。より進行したステージの腫瘍又はリンパ節転移腫瘍は、3q、1q及び8qの増加並びに11q、3q、6q及び2qの減少を含む更なる染色体不均衡を有する。3q11〜q22及び3q26〜qterの増加は、リンパ節転移により一般的である。Huang,K.F.et al.、J.Formos Med Assoc.2007 Nov;106(11):894−902。
【0020】
浸潤頸癌に見られる3q増加、特にヒトテロメラーゼ遺伝子(TERC)における増加は、PapスメアのTERC増加検出における診断ツールとしてのFISHプローブセットの開発に用いられてきた。TERC増加はCIN1/CIN2からCIN3及び浸潤癌への進行を予見し得ることが示唆されてきた。Heselmeyer−Haddad et al.Am Journal of Pathology 2005;166:1229−1238。
【0021】
5pもまた、癌腫で高頻度に観察される構造的変化した染色体である。Atkin,N.B 1997 Elsevier;95:33−39。Arias−Pulido,H.et al.2002 Mol.Cancer;1:3。Huang F.Y.,et al.2005 Cancer Gen.and Cyto.、157:46−47。Macville M.,et al.1999 Cancer Res.;59:141−50。Heselmeyer K.et al.1997 Genes Chromosomes Cancer;19:233−40。Rao P.H.et al.2004 BMC Cancer;4:5。5p増加は進んだステージの癌腫へと進行する際に観察され、多くの場合全腕増幅に関与する。Heselmeyer K.et al.1997 Genes Chromosomes Cancer;19:233−40。
【0022】
5p増幅を示した癌細胞系を用いることによって、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)遺伝子をコードする5p13.33における変化の最小領域が定義された。Lockwood,W.et al.Int.J.Cancer 2006;120:436−443。最後に、HPV組込み部位もまた5p11〜15にマッピングされた。Lockwood,W.et al.Int.J.Cancer 2006;120:436−443。テロメラーゼ活性は、癌細胞不死の一要素である。Takuma,Y.et al.2004 Journal of Gastroenterology and Hepatology;19:1300−1304。Takahashi S.et al.2000 Eur.Jour.Of Cancer,36:496−502。Toshikuni,N.et al.2000 Br.J.Cancer;82;833−837。hTERTは、テロメラーゼ触媒サブユニットとして同定された。Takahashi S.et al.2000 Eur.Jour.Of Cancer,36:496−502。
【0023】
hTERT発現は頸癌等、多くの癌細胞系において観察され、特定の癌細胞系は癌性病変においてhTERT発現が高いが、非癌性組織においては高くないことを示した。Takahashi S.et al.2000 Eur.Jour.Of Cancer,36:496−502。このようなディファレンシャルな発現は、頸癌よりも肝臓癌に見られ、この結果はhTERT発現が肝臓癌形成の初期段階に行われたことを示唆する。Takahashi S.et al.2000 Eur.Jour.Of Cancer,36:496−502。更に、5pのhTERT遺伝子増幅は、HPV感染子宮頸癌におけるhTERTのmRNA発現増加と密接に相関する。Zhang A.et al.2000 Cancer Res.;60:6230−6235。Zhang A.et al.2002 Genes Chromosomes Cancer;34:269−75。5pは、発癌の様々なステージにおいて構造変化する染色体として常に同定される。この構造変化はまた、5pにコードされたTERT遺伝子に常に影響すると思われる。
【0024】
5p増加は、浸潤頸癌において観察された。Scotto,et al.、Molecular Cancer 2008。3q、特に3q26増加と共に試料で観察される場合、これは子宮頸部異形成から浸潤頸癌へと進んだ病状進行の指標となり得る。少なくとも1種類の対照プローブ(例えばCEP3、CEN7)及び5p、特に、5p15領域のゲノムプローブと組み合わせた3q、特に染色体バンド3q26領域のゲノムプローブを用いて、コピー数増加は頸部上皮内腫瘍の浸潤癌への悪性転換に先行し、ASCUS又はCIN1からCIN2又はCIN3への、またCIN2又はCIN3から上皮内癌、浸潤頸癌への移行を更に伴う。更に、3q及び5pの両方における増加の同定は、ASCUS又はCIN1からCIN2又はCIN3への、またCIN2又はCIN3から上皮内癌、浸潤頸癌への促進された移行を示す。
【0025】
本方法は、標的染色体、例えば5p、3q又はそれら両方共のコピー数増加を正常と比較することによる、生じ得る子宮頸部細胞障害の同定を提供する。本明細書において、「正常」は、通常は二倍体の細胞が細胞周期において四倍体相となり四倍性が観察された場合を除いた哺乳類細胞における染色体の二倍性を意味する。
【0026】
あらゆる細胞は、23対の染色体の正常な相補物を有し、これは二倍体として説明される状態である。しかし、細胞が増殖し細胞分裂を行う場合、細胞は染色体23対の第二のセットを生じ、その後各セットは形成された2個の娘細胞に存在するようになる。この状態は四倍体として説明される。四倍性は、体のあらゆる組織や器官で普通に生じる自然なプロセスであるが、概して低頻度で起こる。癌の一指標は、制御不能な細胞増殖と複製である。これは通常、正常細胞における標準的な複製制御システムから細胞を逸脱させる細胞の染色体における複数の異常が原因で起こる。染色体におけるこれら複数の異常は、染色体相補物がもはや23対ではなくそれ以外のものである異数性として説明される状態をもたらす。通常、異数体細胞は、一部染色体の余分のコピーを有し、他の染色体を失い、更に2本以上の染色体を一体に融合することによって雑種染色体を形成した細胞である。非常に活発な細胞分裂及び四倍体は、異数体細胞が発生する基礎を提供する。したがって四倍体は、異数体細胞及びより重篤な細胞障害の発生に対するより高いリスクレベルを示す変動状態となり得る。したがって、これら方法は、本明細書に開示されている方法に従って四倍性を測定し、子宮頸部細胞障害及び生じ得る子宮頸癌進行の同定を提供することができる。
【0027】
方法
本方法は、子宮頸部異形成の診断及び予後マーカーとして用いることができる。倍数性異常及び/又は3qコピー数増加及び/又は5pコピー数増加を有する患者は、予後不良であり、より進行した子宮頸疾患を発症するリスクが高い。
【0028】
本発明の一実施形態は、染色体5p及び3qの遺伝子座並びにCEN7を対象とするマルチカラーFISHプローブ、特に5p15及び3q26を対象とするプローブを用いて子宮頸部の細胞学的試料におけるDNA量及び3q+5pコピー数変化を同定することである。好ましい一実施形態において、異なる標的のプローブは、標的を区別できるように異なる色の蛍光となるであろう。
【0029】
本発明の一実施形態は、患者から得られた試料において染色体3qにおけるゲノム増幅、染色体5pにおけるゲノム増幅並びにCEN7の存在及び/又は増幅を検出するステップを含む、子宮頸部異形成又は癌の患者状態を評価するための方法を提供することである。染色体3q及び染色体5pのゲノム増幅の検出は、患者状態の軽度から高度子宮頸部異形成への進行を示す。
【0030】
本発明の方法は、患者試料における軽度から高度子宮頸部異形成状態への変化、染色体3qにおけるゲノム増幅、染色体5pにおけるゲノム増幅並びにCEN7の存在及び/又は増幅をモニターするために用いることができる。染色体3q及び染色体5pのゲノム増幅の検出は、患者状態の高度子宮頸部異形成への進行を示す。
【0031】
本明細書に開示されている方法は、染色体3q及び5pにおける遺伝子増幅の検出するステップに加えて、染色体1q、20q、12q、19q、11q、6q、17p、7、8q(後期異形成において検出される)、9q、16q、2q、9p、10q、18p及びそれらの任意の組み合わせにおける増幅を検出するステップを更に含んでもよい。
【0032】
本発明の特定の実施形態において、Cri du Chat領域を含む3q26遺伝子座及び5p15遺伝子座バンドにおける増幅が検出できる。本発明の更に特定の実施形態において、3q26及び5p15遺伝子座の検出に加えて、次の染色体座、即ち、1q21〜31、20q12、12q13〜24、19q13、11q21、7q11〜22、8q24(後期異形成において検出される)、9q33〜34、16q23、2q32、9p22、10q21〜24、18p11及びそれらの任意の組み合わせにおける増幅が検出できる。
【0033】
本方法は、染色体3q及び/又は染色体5pのゲノム増幅が試料に存在しないことを決定するステップを更に含んでもよい。異数性が発見され子宮頸部細胞障害が同定された状態と比較する場合、染色体増幅の喪失は細胞障害の回復と場合によっては疾病回復に対して暗示的となり得る。
【0034】
本方法は、後期異形成を評価及びモニターするために用いることができ、染色体5p及び8q、特に8q24と共に染色体3qにおけるゲノム増幅を検出するステップを含む。3qにおける増幅と組み合わせた8qコピー数の増加及び/又は5pコピー数の増加は、頸部上皮内腫瘍の浸潤癌への悪性転換を示し、ASCUS/CIN1からCIN2/CIN3への、またCIN2/CIN3から上皮内癌、浸潤頸癌への移行を更に伴うことができる。更に、3qと5pの両方における増加の同定は、ASCUS/CIN1からCIN2/CIN3への、またCIN2/CIN3から上皮内癌、浸潤頸癌への促進された移行を示す。
【0035】
本方法は、染色体3q及び5pに対するプローブを含み、1q、20q、12q、19q、11q、6q、17p、7、8q(後期異形成において検出される)、9q、16q、2q、9p、10q、18pに対するプローブ及びそれらプローブの任意の組み合わせを更に含むことができる特異プローブパネルを更に提供する。上述のプローブパネルに関する特定の実施形態において、Cri du Chat領域を含む3q26遺伝子座及び5p15遺伝子座に対するプローブに加えて、次の染色体座、即ち1q21〜31、20q12、12q13〜24、19q13、11q21、7q11〜22、8q24(後期異形成において検出される)、9q33〜34、16q23、2q32、9p22、10q21〜24、18p11及びそれらの任意の組み合わせに対するプローブを用いてもよい。
【0036】
当業者であれば、本明細書に記載されている遺伝子座の配列に相補的な核酸プローブを調製することができる。更に、多くのこのようなプローブが市販されている。
【0037】
最近の臨床研究は、HPV感染の役割が肛門癌の発生であることに光を当てた。実のところ、メディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)は近年、肛門標本の一連の細胞診及びHPV検査のための保険の提供を始めた。子宮頸部と肛門の発癌は、類似の細胞型とウイルスイニシエーションを含む類似の生物学的特性を備えるため、ゲノム異常及びコピー数変化は、他の遺伝子座の中でも3q及び5pで生じる。したがって、本発明の更に別の一実施形態は、他の染色体コピー数変化の中でも3q及び5pに対して肛門細胞標本を解析し、患者が肛門疾患に罹患し得るか決定することである。したがって、これら方法は、肛門標本に用いて肛門の発癌に関する有益な臨床情報を提供することができる。
【0038】
プローブ
本明細書に例示されている特定の遺伝子座と特異的にハイブリダイズするプローブを同定するために、多くの方法を用いることができる。例えば、染色体特異的ライブラリーからクローンを無作為選択することによってプローブを作製し、続いてデジタル画像顕微鏡によってマッピングできる。この手順は米国特許第5,472,842号明細書に記載されている。全染色体に及ぶ様々なライブラリーも、例えばIllumina Inc.から市販されている。特定の染色体座にハイブリダイズするプローブは、Abbot Molecular、Inc.(デスプレーンズ、イリノイ州)から市販されている。
【0039】
簡潔に説明すると、ゲノム又は染色体特異的DNAを制限酵素で消化、或いは機械的に剪断し、少なくとも約20kb、より好ましくは約40kb〜300kbのDNA配列を得る。部分配列消化の技法は、本技術分野においてよく知られている。例えば、Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning,2nd Ed.、Wiley N.Y.(1998)を参照。その結果生じた配列をベクターと連結し、適切な宿主に導入する。この目的に適した例示的なベクターとして、コスミド、酵母人工染色体(YAC)、バクテリア人工染色体(BAC)及びP1ファージが挙げられる。全染色体に及ぶ様々なライブラリーは、例えばGenome Systemsからも市販されている。
【0040】
ひとたびプローブライブラリーが構築されると、プローブのサブセットは選択された染色体上に物理的にマッピングされる。FISH及びデジタル画像解析は、クローンの所望の染色体に沿った座位決定するために用いることができる。簡潔に説明すると、例えばFITCを蛍光プローブとして用いたFISHによって正常細胞の中期細胞伸展物にクローンをマッピングする。染色体は、基剤組成に関係なくDNAを染色する染色試薬(例えば、DAPI又はヨウ化プロピジウム)によって対比染色し、染色体輪郭を画定できる。染色された中期染色体は、色依存的画像変化を避けるため多色ビームスプリッターを備える蛍光顕微鏡で撮像される。様々なカラー画像がCCDカメラを用いて得られ、デジタル画像はコンピューターに保存される。続いてコンピュータープログラムを用いて染色体軸を計算し、(シングルコピー配列に対して)2個のFITCシグナルを軸に直角に突出させ、通常はp−テロメアである確定座位から平均断片長を計算する。このアプローチは、例えば米国特許第5,472,842号明細書に記載されている。
【0041】
本明細書において同定された遺伝子の配列情報によって、これら遺伝子から標的配列の検出に適した高度に特異的なハイブリダイゼーションプローブ又は増幅プライマーを設計することが可能となる。上述の通り、これら遺伝子の完全配列は公知である。遺伝子内の特定DNA配列を検出するための手段は、当業者によく知られている。例えば、遺伝子内の選択されたサブシーケンスに対して相補的になるように選択されたオリゴヌクレオチドプローブを用いることができる。或いは、配列又はサブシーケンスは、プローブを用いた検出の前に様々なDNA増幅技法(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応、リガーゼ連鎖反応、転写増幅等による)によって増幅できる。DNA増幅は、可能な標的サブシーケンスの更に別のコピーをもたらすことによってアッセイの感度を高める。更に、増幅プロセスにおいて標識プライマーを用いることによって、増幅するに従ってDNA配列を標識できる。
【0042】
一実施形態において、本発明のプローブは、3q26.2バンドのTERC遺伝子及び5p15.3のTERT又はTRIP13の少なくとも一部を対象とし得る。特に、約495kbの3q26領域TERCに対するプローブは、スペクトラム・ゴールドで標識して用いることができ、またスペクトラム・グリーン標識5p15プローブも同様である。このようなプローブは、Abbot Molecular(デスプレーンズ、イリノイ州)から市販されている。なお、本発明のプローブは、Cri du Chat領域内の遺伝子や図16A〜図16Dに列挙されている遺伝子等、3q26及び5p15上の任意の遺伝子並びに3q26又は5p15上の遺伝子の任意の組み合わせ又はその一部を含むことができる。
【0043】
特定の一実施形態において、検出可能なプローブマーカーは蛍光シグナルを発するか、或いはプローブは発色することができる。プローブは、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を用いてハイブリダイズする。FISHは、染色体上の特定DNA配列の有無を検出又は座位決定するために用いられる細胞遺伝学的手法である。FISHは、プローブと高度な配列類似性を示す染色体部分に結合する蛍光プローブを用いる。蛍光顕微鏡は、蛍光プローブが染色体と結合する位置を発見するために用いることができる。in situハイブリダイゼーションは、細胞調製物内の特定の核酸配列の可視化を可能にする手法である。特に、FISHは一本鎖蛍光標識DNAプローブの相補的標的配列への正確なアニーリングを必要とする。プローブの細胞DNA部位とのハイブリダイゼーションは、蛍光顕微鏡を用いた直接的な検出によって観察可能となる。
【0044】
追加的な遺伝物質が検査に必要とされる例において、ゲノムはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅又は検出できる。
【0045】
本発明の更に別の一実施形態は、本明細書に開示されている方法の実施におけるDNAプローブの良好なハイブリダイゼーションのためのSUREPATH(登録商標)又はTHINPREP(登録商標)標本等、液状処理細胞診標本においてFISHを行う手順を提供することである。SUREPATH(登録商標)は、Becton−Dickinson(スパークス、メリーランド州)から得られる。THINPREP(登録商標)は、Hologic Laboratories(ベッドフォード、マサチューセッツ州)から得られる。
【0046】
本発明の更に別の一態様は、試料細胞における遺伝子増幅の検出前に、液状処理細胞診標本から扁平上皮細胞と腺細胞を分離するための抗体の使用である。細胞型の分離は、扁平上皮癌と腺癌両方の検出を改善することができ、従来のPapテストでは稀にしか検出されないが、3q26増幅、5p15増幅又はそれら両方を示す頸癌の検出を改善することができる。
【0047】
本方法は、in situハイブリダイゼーションアッセイに用いるための蛍光標識核酸プローブであるプローブを利用できる。標識プローブパネルは、3番、5番及び7番染色体の特定領域並びに本明細書に開示されている他の染色体領域に相同なDNAプローブ配列の少なくとも3色3種プローブ混合物からなることができる。
【0048】
本明細書において、「標識(単数又は複数)」は、あらゆる組成物、例えば蛍光色素(例えばフルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド等、酵素、高電子密度試薬、磁気標識等)を非限定的に含む分光的、光化学的、生化学的、免疫化学的又は化学的手段によって検出可能なプローブである。直接的には検出されないが間接標識の使用によって検出される標識は、ビオチン及びジオキシゲニン並びに標識抗血清又はモノクローナル抗体が利用できるハプテン及びタンパク質を含む。核酸及びプローブを標識する方法は、当業者によく知られている。好ましい標識は、in situハイブリダイゼーションにおける使用に適した標識である。核酸プローブは、ハイブリダイゼーション前に検出可能に標識できる。或いは、ハイブリダイゼーション産物に結合する検出可能な標識を用いてもよい。このような検出可能な標識は、検出可能な物理的又は化学的性質を備える任意の材料を含み、イムノアッセイの分野で良く開発されている。
【0049】
患者試料由来の子宮頸部扁平上皮及び/又は腺細胞を用いることができる本方法の更に別の実施形態は、本方法を用いて染色体異常を評価することである。
【0050】
それぞれ異なる蛍光染色試薬によって標識された3種類のプローブを用いた、染色体異常を検出するための3色FISH法の好ましい実施形態において、通常、複数の色を用いることが望ましい。前記好ましい実施形態において、目的領域にハイブリダイズする2種類の検査プローブは2種類の異なる染色試薬で標識され、別の領域とハイブリダイズする対照プローブは第三の染色試薬で標識される。それぞれが独自の染色試薬で標識されていれば、4種類以上のプローブを用いてもよい。セントロメア等、目的染色体安定領域とハイブリダイズする核酸プローブは対照プローブとして好ましく、試料間のハイブリダイゼーション効率の差を決定できる。
【0051】
患者から採取された標本又は試料から回収、単離された細胞は、スライド上で固定することができる。標本は本技術分野において公知の様々な技法を用いて回収できる。一実施形態において、標本はTHINPREP(登録商標)及び/又はSUREPATH(登録商標)試料から回収できる。SUREPATH(登録商標)は、子宮頸癌スクリーニングのために用いられるPapテストである。SUREPATH(登録商標)は、患者からPap試料を採取するための様々な採取器具を備える。その一部は着脱可能な頭部を有するが、これは試料を保持し、直接取り外してスクリーニングに用いられるバイアルに入れ、これによって100%の試料をプロセシングに利用できるようにする。その全体を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する米国特許出願第11/521,144号明細書に開示されているように、従来のPapスメアと比べて高い検出率を主張するBD SUREPATH(登録商標)液状処理Papテストと呼ばれる薄層細胞調製プロセスを用いた液状処理Papテストは、着脱可能な頭部を備えるほうき状器具又はブラシ/スパチュラ等、SUREPATH(登録商標)採取器具と共に用いられる。THINPREP(登録商標)Papは、液状処理細胞診方法である。子宮頸部細胞試料をスライド上に擦り付ける代わりにバイアル内でリンスし、これによって細胞凝集を防ぐ。細胞を実験室で分離して血液や粘膜を除去し、次に、検査する細胞を癌細胞検出実験のためにスライド上に置く。
【0052】
試料は、LEEP、子宮摘出、錐体生検、ECC等、子宮頸部生検、パンチ生検、外科処置由来の組織の分析を含んでもよい。試料は、子宮頚管、膣又は外陰部から摘出した組織又は細胞から調製できる。
【0053】
ハイブリダイゼーション
一実施形態において、本明細書に開示されている領域は、in situハイブリダイゼーションを用いて同定される。一般に、in situハイブリダイゼーションは、次の主要なステップ、(1)解析する組織又は生物学的構造物の固定、(2)標的DNAの接近をより容易にし、非特異的結合を抑制するための、生物学的構造物のプレハイブリダイゼーション処理、(3)核酸混合物と生物学的試料又は組織の核酸とのハイブリダイゼーション、(4)ハイブリダイゼーションで結合しなかった核酸断片を除去するための、ハイブリダイゼーション後洗浄及び(5)ハイブリダイズした核酸の検出を含む。本明細書に記載の適用のためのハイブリダイゼーションプロトコールは、その全体を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する米国特許第6,277,563号明細書に記載されている。
【0054】
試料において、標的DNAを一本鎖型に変性し、続いて本方法のプローブとハイブリダイズさせることができる。ハイブリダイゼーションの後、非結合プローブを一連の洗浄によって除去し、核をDNA特異的染色試薬DAPI(4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール)で対比染色する。DNAプローブのハイブリダイゼーションは、水色及び金色の蛍光シグナルの可視化を可能にする適切な励起及び放射フィルターを備える蛍光顕微鏡を用いて観察できる。CEN7、5p15及び3q26シグナルの計数は、核の顕微鏡検査によって行われる。
【0055】
本明細書に開示されている臨床試験は、子宮頸癌早期発見のための組み合わせた数種類のバイオマーカーを用いることができ、現在の形態学に基づいたスクリーニング及び検出方法は重大な制約を有するため、この試験は重要である。3q26及び5p15の同定、とりわけ増幅及びその他の細胞遺伝学的異常の同定は、子宮頸癌発症リスクのある患者をより正確且つ精密に同定し、患者に初期治療を受けさせることができる。
【0056】
画像解析
本発明の一実施形態は、開示されている方法の自動画像解析及び記録を提供することである。in situハイブリダイゼーションは、細胞調製物内の特定の核酸配列の可視化を可能にする技法である。特に、DNA蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)は、一本鎖蛍光標識DNAプローブの相補的な標的配列への正確なアニーリングを必要とする。プローブの細胞DNA部位へのハイブリダイゼーションは、蛍光顕微鏡を用いた直接検出によって可視化される。本明細書に記載されている方法は、in situハイブリダイゼーションアッセイの一部としての利用のための、蛍光標識された核酸プローブであるプローブを利用する。好ましい一実施形態において、プローブパネルは、3番、5番及び7番染色体の特定領域に相同なDNAプローブ配列の3色3種類のプローブ混合物からなる。プローブ混合物は、染色体3q26、5p15及び7番染色体セントロメア(CEN7)に対する遺伝子座特異的プローブからなる。
【0057】
本発明の一実施形態は、FISHプローブシグナルの自動画像解析を提供することである。顕微鏡は、顕微鏡ステージ上の標本/スライド内視野のデジタル画像を自動記録させることができる。このような顕微鏡のメーカーは、Carl Zeiss、Leica、Nikon及びOlympus等である。また、本方法は、とりわけIkonisys(コネチカット州)、Metasystems(マサチューセッツ州及びドイツ)、Bioimagene(カリフォルニア州)並びにBioview(マサチューセッツ州及びイスラエル)等の団体によって開発された顕微鏡ソフトウエアシステム等、自動画像解析のためのソフトウエアプラットフォームを提供する。このような自動システムは、患者試料の3q染色体単独又は5pと組み合わせた異常の観察に適用できる。
【0058】
標本から回収された細胞はスライド上で固定できる。標的DNAをその一本鎖型に変性し、続いてプローブとハイブリダイズさせる。ハイブリダイゼーションに続いて、非結合プローブを一連の洗浄によって除去することができ、核をDNA特異的染色試薬DAPI(4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール)で対比染色する。プローブのハイブリダイゼーションは、3種類の蛍光シグナルの可視化を可能にする適切な励起及び放射フィルターを備える蛍光顕微鏡を用いて観察できる。CEN7、5p15及び3q26シグナルの計数は、核の自動顕微鏡検査によって行われる。
【0059】
プローブセットとDAPI対比染色は、100ワット水銀灯並びに次のフィルター、DAPI、スペクトラム・アクア(7番染色体セントロメア)、スペクトラム・グリーン(5p15における遺伝子座)及びスペクトラム・オレンジ(3q26における遺伝子座)又は本技術分野において公知で本明細書に開示の他の標識及びプローブのフィルターを備える落射蛍光顕微鏡で観察できる。DAPIフィルターと100×倍率によって、患者スライドの試料範囲を手早く走査し、細胞の量と質を決定できる。標的範囲の左上四分円の解析を始める。63×油浸対物レンズを用いて視野を左から右へ、また上から下へ、同一範囲を再走査することなく走査した。本システムは、合計1000個の細胞を計数できる。本方法は、細胞計数を自動記録するステップを更に含む。
【0060】
スライド解析手順の臨床的な意義。標本に対するFISH実験手順の実施は手腕を問われるものである一方、その結果である手続分析を疾病の文脈内に置く必要があり、臨床実務に対して技術結果の妥当性を決定しなければならない。本明細書に開示されている方法は、子宮頸部細胞障害に関連する特定遺伝子座における染色体コピー数の直接的な評価となるよう考案されている。癌を発症するかなり以前に、Papテスト等、子宮頸癌スクリーニング標本においてこのような遺伝的異常が存在することは、患者の管理及び治療と密接な関係を有する。標本のFISHに基づく解析結果は、臨床ケアガイドライン及び手順内で考慮することができる。
【0061】
少なくとも800個の細胞、好ましくは1000個の細胞における染色体コピー数の決定は、各臨床標本の十分なサンプリングとなることができる。800個未満の細胞又は1000個より多い細胞を本システムにおいて利用してもよい。本方法及びシステムは、サンプリング変動及びスライド作製手順の制約を克服する。本方法及びシステムは、染色体コピー数変化の有る標本と変化の無い標本との間の閾値を決定するよう、専門医療機関(ACMG)によって推奨された方法と一致する。Wolf,D.J.et al.(2007)Period Guidelines for Fluorescence In Situ Hybridization Testing。
【0062】
自動化方法及びシステムは、陽性標本に対して少なくとも90%の精密性を提供し、疾病進行リスクが増加した患者を同定する。本方法及びシステムは、95%より高い精密性を更に提供できる。
【0063】
in situハイブリダイゼーションは、細胞調製物内の特定の核酸配列の可視化を可能にする技法である。従来、プローブシグナルの可視化は、高度な訓練を受けた作業員による手作業で行われてきた。しかし、現在の技術を適用して画像収集及び解析プロセスを自動化することが可能である。Carl Zeiss、Leica、Nikon及びOlympusによって製造された顕微鏡等、今日の市場における顕微鏡によって、ユーザーは顕微鏡ステージ上の標本/スライド内の視野のデジタル画像を収集できる。これらメーカーの一部は、標本/スライドから自動画像収集を行うのに利用可能なソフトウエアを有する。更に、多くの団体(とりわけIkonisys、Metasystems、Bioimagene、BioView、Aperio、Ventana)は、特に商業実験室における使用のためにソフトウエアプラットフォームを作製した。これら団体の一部は、Ikonisys製Ikoniscope Digital Microscopy Systemや、Metasystems製Metafer及びMetacyte等、顕微鏡プラットフォームと自動イメージングソフトウエアの両方を含むシステムを有する。
【0064】
解析する標本の種類及びソースは、解析プロセスと手順に直接影響を与える。各組織型は独自の生物学的特性と構造を有し、その上、各々の癌は発癌率に影響を与える異なる因子によって異なるように発生する。したがって、本発明は、標本の自動画像収集及び解析のための多くの方法を提供する。
【0065】
本システム及び方法の一実施形態は、THINPREP(登録商標)及びSUREPATH(登録商標)に加えて任意の細針生検(FNA)、唾液又は綿棒による回収等、液状処理細胞診標本を含む顕微鏡スライド上に均一な単層細胞で置くことのできる懸濁液中の標本と共に用いられることである。この自動化方法は、FISH調製スライド上の細胞に覆われた全範囲をスクリーニングし、DAPI染色を用いて細胞核を識別する。システムは、次にDAPI染色領域内の各プローブシグナルを計数し、同定された各プローブのコピー数を記録する。ソフトウエアシステムは、少なくとも800個の細胞の結果が得られるまで、細胞及び各細胞内の染色体コピー数の自動記録を続ける。800個の細胞の閾値が得られると、ソフトウエアは、撮像計数された各細胞を、同定された各染色体コピー数に基づくカテゴリーに分類する。3q26、5p15及びCEN7の各プローブにつき2コピーを備える正常細胞は、2、2、2カテゴリーに分類される。異常細胞は、そのプローブシグナルパターンによって同定される。例えば、CEN7プローブを2コピー、3q26プローブを5コピー、5p15プローブを3コピー備える細胞は、2、5、3カテゴリーに分類され得る。撮像された全細胞が分類されると、標本は陽性/陰性疾病閾値に対して評価することができる。自動イメージングシステムによって異常と同定された全細胞は、医者に検査結果を連絡する前に、訓練された作業員によって手作業で再検査し検証してもよい。本方法及びシステムは、自動検証を更に提供する。特定の細胞閾値数は標本の種類や収集方法によって変化し得る。更に、ソフトウエアは、生物学的特性(細胞形、細胞サイズ、核のDNA量、細胞同士の近傍性、細胞型等)又は疾病関連差異(異常数を有する遺伝子座の数、1細胞内の遺伝子座における異常の数、異常と生存又は治療応答との関係)を反映するように適用できる。本方法及びシステムは、全範囲の代わりに、スライド上の細胞に覆われた範囲の代表サンプリングに用いることができ、通常、撮像細胞の最低閾値が達成されるまで細胞密度に基づいて複数の視野又は経路を撮像することによって行われる。
【0066】
本システム及び方法の更に別の一実施形態は、THINPREP(登録商標)及びSUREPATH(登録商標)に加えて任意の細針生検(FNA)、唾液又は綿棒を用いた回収等、液状処理細胞診標本を含む顕微鏡スライド上に均一な単層細胞で置くことのできる懸濁液中の標本と共に用いてよいことである。この自動化方法は、FISH調製スライド上の細胞に覆われた全範囲をスクリーニングし、DAPI染色を用いて細胞核を識別する。システムは、次にDAPI染色領域内の各プローブシグナルを計数し、同定された各プローブのコピー数を記録する。ソフトウエアシステムは、スライド上の全細胞の結果が得られるまで、細胞及び各細胞内の染色体コピー数の自動記録を続ける。全細胞を撮像すると、ソフトウエアは、撮像計数された各細胞を、同定された各染色体のコピー数に基づくカテゴリーに分類する。例えば、3q26、5p15及びCEN7の各プローブにつき2コピーを備える正常細胞は、2、2、2カテゴリーに分類される。異常細胞は、そのプローブシグナルパターンによって同定される。例えば、CEN7プローブを2コピー、3q26プローブを5コピー、5p15プローブを3コピー備える細胞は、2、5、3カテゴリーに分類される。全細胞を撮像、計数及び分類すると、ソフトウエアは最大数の異常を有する細胞を同定し、高度異常細胞の降順ランクに基づく順序を提供する。このような標本内の高度異常細胞のランクに基づく順序は、陽性/陰性疾病閾値に対して評価することができる。通常、自動イメージングシステムによって異常と同定された細胞は、検査結果を本技術分野において公知の方法を用いてコンピューターで医者に連絡する前に、訓練された作業員によって手作業で再検査され検証されるが、必ずしもそうとは限らない。特定の細胞閾値数は標本の種類や収集方法によって変化し得る。更に、ソフトウエアは、生物学的特性(細胞形、細胞サイズ、核のDNA量、細胞同士の近傍性、細胞型等)又は疾病関連差異(異常数を有する遺伝子座の数、1細胞内の遺伝子座における異常の数、異常と生存又は治療応答との関係)を反映するように適用できる。本実施形態は、全範囲の代わりに、スライド上の細胞に覆われた範囲の代表サンプリングに用いることができ、通常、撮像細胞の最低閾値が達成されるまで細胞密度に基づいて複数の視野又は経路を撮像することによって行われる。臨床及び疾病意義がサブセットで公知であれば、ランク順の異常細胞サブセットだけが陽性/陰性検査閾値に対して再検査され得る。通常、サブセットは標本内の最も異常な25個又は50個の細胞であるが、他のサブセットも標本ソース、収集法及び疾病に依存して同定及び利用され得る。
【0067】
更に別の一実施形態は、生検や外科的処置によって得られた標本等、組織利用標本と共に用いることができる。更に、本システム及び方法は、同一の組織利用標本に由来するヘマトキシリン・エオシン染色(H&E)で染色されたコンパニオンスライドを用いることができる。この自動化方法は、FISH調製スライド上の組織利用標本に覆われた全範囲をスクリーニングし、DAPI染色を用いて細胞核を識別する。システムは、次にDAPI染色領域内の各プローブシグナルを計数し、同定された各プローブのコピー数を記録する。ソフトウエアシステムは、組織利用標本全体が検査されるまで、細胞及び各細胞内の染色体コピー数の自動記録を続ける。続いてソフトウエアは、DAPI染色で識別された少なくとも25個の核を含むスライドの小区分を評価する。小区分位置の選択は、H&Eコンパニオンスライドにおける疾病指標に基づいて導かれる。通常、少なくとも2個の小区分が各標本で選択される。続いてソフトウエアは、撮像計数された各細胞を、同定された各染色体のコピー数に基づくカテゴリーに分類する。例えば、3q26、5p15及びCEN7の各プローブにつき2コピーを備える正常細胞は、2、2、2カテゴリーに分類される。異常細胞は、そのプローブシグナルパターンによって同定される。例えば、CEN7プローブを2コピー、3q26プローブを5コピー、5p15プローブを3コピー備える細胞は、2、5、3カテゴリーに分類される。撮像された全細胞が分類されると、同定されたプローブシグナル数がシステムによって計数された全核数と比較され、一遺伝子座当たりの染色体コピー数対、計数された細胞数の比率が得られる。各染色体座の比率が決定されると、標本は陽性/陰性疾病閾値に対して評価できる。通常、自動イメージングシステムによる異常比率で同定された全標本小区分は、医者に検査結果を連絡する前に、訓練された作業員によって手作業で再検査され検証される。特定の小区分のサイズ及び計数される核の数は、標本の種類や収集方法によって変化し得る。更に、ソフトウエアは、生物学的特性(細胞形、細胞サイズ、核のDNA量、細胞同士の近傍性、細胞型、組織内の位置、細胞質の量等)又は疾病関連差異(異常数を有する遺伝子座の数、1細胞内の遺伝子座における異常の数、異常と生存又は治療応答との関係、組織利用標本における異常の位置等)を反映するように適用できる。
【0068】
更に別の一実施形態において、本システム及び方法は、生検又は外科的処置から得られた標本等、組織利用標本と共に用いることができる。この自動化方法は、FISH調製スライド上の組織利用標本に覆われた全範囲をスクリーニングし、DAPI染色を用いて細胞核を識別する。次にシステムは、DAPI染色領域内の各プローブシグナルを計数し、同定された各プローブのコピー数を記録する。ソフトウエアシステムは、組織利用標本全体が検査されるまで、細胞及び各細胞内の染色体コピー数の自動記録を続ける。続いてソフトウエアは、DAPI染色で識別された少なくとも25個の核を含むスライドの小区分を評価する。通常、少なくとも2個の小区分が各標本で選択される。その後、ソフトウエアは、撮像計数された各細胞を同定された各染色体コピー数に基づくカテゴリーに分類する。例えば、3q26、5p15及びCEN7の各プローブにつき2コピーを備える正常細胞は、2、2、2カテゴリーに分類される。異常細胞は、そのプローブシグナルパターンによって同定される。例えば、CEN7プローブを2コピー、3q26プローブを5コピー、5p15プローブを3コピー備える細胞は、2、5、3カテゴリーに分類される。撮像された全細胞が分類されると、同定されたプローブシグナル数がシステムによって計数された全核数と比較され、一遺伝子座当たりの染色体コピー数対、計数された細胞数の比率が得られる。各染色体座の比率が決定されると、標本は陽性/陰性疾病閾値に対して評価できる。通常、自動イメージングシステムによる異常比率で同定された全標本小区分は、医者に検査結果を連絡する前に、訓練された作業員によって手作業で再検査され検証される。特定の小区分のサイズ及び計数される核の数は、標本の種類や収集方法によって変化し得る。更に、ソフトウエアは、生物学的特性(細胞形、細胞サイズ、核のDNA量、細胞同士の近傍性、細胞型、組織内の位置、細胞質の量等)又は疾病関連差異(異常数を有する遺伝子座の数、1細胞内の遺伝子座における異常の数、異常と生存又は治療応答との関係、組織利用標本における異常の位置等)を反映するように適用できる。
【0069】
スコアデータは、シグナル(例えば、3q、5p又はCEN7)の内いずれか1種類の数を計算し、記録された全核数で割り、その数をスコアシート上部のチャートに記録することによって解析できる。2より大きい結果は、ある所定のプローブが増幅されたとして記録、報告される。
【0070】
スコアデータは、シグナル(3q、5p又はCEN7)の内いずれか1種類の数を足し、記録された全核数で割ることによって解析される。2より大きい結果は、ある所定のプローブが増幅されたと報告できる。画像は、標本ナンバー及びスライドナンバーで命名されて保存される。
【0071】
他の実施形態において、本発明は、開示されている領域における染色体異常検出のためのキットを提供する。好ましい一実施形態において、キットは、本明細書に記載されている領域に対する1種又は複数のプローブ及び開示されているプローブの任意の組み合わせを含む。キットは、遺伝的変化の検出におけるキット内容物の使用方法を説明する取扱説明材料を追加的に含むことができる。キットは、プローブの検出を容易にする様々な標識又は標識試薬、バッファー、間期細胞伸展物、ウシ血清アルブミン及びブロッキングプローブ等の他のブロッキング試薬を含むハイブリダイゼーション試薬、細針、綿棒、アスピレーター等のサンプリング器具、ハイブリダイゼーションの陽性対照及び陰性対照並びに本技術分野において公知の他の対照の内の1つ又は複数を含むこともできる。
【0072】
次の図及び関連実施例の例示的な説明は、本明細書、特に実施例において頻繁に用いられている特定の用語の理解を容易にするために提供されている。説明は便宜のために提供されており、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0073】
(例1)
前もって調製された薄層液状処理細胞診試料(THINPREP(登録商標)、Cytyc、モールバラ、マサチューセッツ州)でFISHを行った。スライドをTHINPREP(登録商標)バイアルから作製し、続いてプロテアーゼ消化、ホルムアルデヒド固定、洗浄及び脱水を含む、前処理プロトコールに付した。2色複数標的の間期細胞FISHプローブキット(Abbot Molecular)を用いてハイブリダイゼーションを行った。キットは、CEN7−アクア、3q26(3q−オレンジ)及び5p15(5p−グリーン)の遺伝子座に直接標識プローブを含む。蛍光顕微鏡を用いて細胞を解析した。
【0074】
試料は、解析のため最小で800個の細胞を含む。陽性検査は、異数性と、(1)解析された細胞の1.0%以上における3qコピー数又は5pコピー数の増加、(2)解析された細胞の0.9%以上における3qコピー数のみ増加、又は(3)解析された細胞の0.7%以上における5pコピー数のみ増加を示した。陰性検査は、正常な倍数性と、(1)解析された細胞の1.0%未満が3qコピー数と5pコピー数の両方の増加、(2)解析された細胞の0.9%未満が3qコピー数のみ増加、又は(3)解析された細胞の0.7%未満が5pコピー数のみ増加を示した。倍数性異常及び/又は3qコピー数増加試料は、予後不良及びより進行した子宮頸疾患発症リスクを有すると決定された。
【0075】
結果は、子宮頸部異形成における診断及び予後マーカーとなり得る。倍数性異常及び/又は3qコピー数と5pコピー数の増加試料は、予後不良及び更に進行した子宮頸疾患発症リスクを有すると決定された。
【0076】
(例2)
図6の評価。この標本は、3q26上のTERC遺伝子及び5p15上のCri du Chat遺伝子座の異常コピー数を明らかにした。解析した1000個の細胞の内、986個の細胞が正常であったが、8個はTERC(3q)の余剰コピーのため異常であることが分かり、2個はCri du Chat(5p)の余剰コピーのため異常であることが分かり、4個はTERC及びCri du Chat(3q及び5p)の余剰コピーのため異常であることが分かり、異常細胞率は1.40%であった。
【0077】
(例3)
図7の評価。この標本は、3q26上のTERC遺伝子及び5p15上のCri du Chat遺伝子座の正常コピー数を明らかにした。解析した1000個の細胞の内、998個の細胞が正常であったが、2個はTERC(3q)の余剰コピーのため異常であることが分かり、0個はCri du Chat(5p)の余剰コピーのため異常であることが分かり、0個はTERC及びCri du Chat(3q及び5p)の余剰コピーのため異常であることが分かり、異常細胞率は0.20%であった。
【0078】
(例4)
染色体領域3q26上のTERC遺伝子に特異的なプローブによる蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を用いて、ヒトテロメラーゼ遺伝子(TERC)3q26の解析を行った。更に、CEN7に特異的なプローブを用いてDNA倍数性を評価した。子宮頸部細胞をスライドに固定し、これら蛍光プローブとハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーション解析を行って、正常細胞及び異常細胞の存在を評価した。
【0079】
(例5)
図5の評価。この標本は、TERC遺伝子の異常コピー数を明らかにした。TERCの異常コピー数を有する細胞の代表的な画像と共に示す。解析された1030個の細胞の内、1012個の細胞は正常であったが、18個は異常であることが分かり、異常細胞率は1.85%であった。
【0080】
(例6)
図4の評価によって、TERC遺伝子の正常なコピー数が明らかになった。3q26における遺伝子の増幅は検出されず、7番染色体セントロメアの評価は、正常な二倍体細胞であることを示した。これは、上に列挙されている以外の部位で生じる他の異常を除外しているわけではない。TERCの正常コピーを有する細胞の代表的な画像と共に示す。解析された800個の細胞の内、799個の細胞は正常であったが、1個は異常であることが分かり、異常細胞率は0.1%であった。
【0081】
(例7)
組織FISH
ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織標本から作製した厚さ4ミクロンの組織切片でFISHを行った(図8及び図9)。スライドをプロテアーゼ消化、洗浄及び脱水を含む前処理プロトコールに付した。CEN7−アクア及び3q26遺伝子座(3q−オレンジ)に対する直接標識プローブ(Abbott Molecular製のプローブ)を含む2色FISHプローブセットを用いてハイブリダイゼーションを行った。切片をDAPIで対比染色し、蛍光顕微鏡を用いて細胞を解析した。
【0082】
試料当たり最小で50個の細胞の倍数性状態を解析した。選択された細胞における3q26プローブシグナルの核に対する比率が2.0以上の場合、試料を異数性と判定した。選択された細胞における3q26プローブシグナルの核に対する比率が2未満である場合、試料を正常な倍数性を有すると判定した。倍数性異常及び/又は3qコピー数増加の患者は、予後不良のリスクがあり、より進行した子宮頸疾患を発症する高いリスクがあると決定した。
【0083】
結果は、子宮頸部異形成の診断及び予後マーカーとなり得る。倍数性異常及び/又は3qコピー数増加の試料は、予後不良及びより進行した子宮頸疾患の発症リスクがあると決定した。
【0084】
(例8)
ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織標本から作製した厚さ4ミクロンの組織切片でFISHを行った(図10)。スライドをプロテアーゼ消化、洗浄及び脱水を含む前処理プロトコールに付した。3色FISHプローブセットを用いてハイブリダイゼーションを行った。このセットはCEN7−アクア、3q26遺伝子座(3q−オレンジ)及び5p15遺伝子座(5p−グリーン)に対する直接標識プローブを含む(Abbott Molecular製プローブ)。切片をDAPIで対比染色し、蛍光顕微鏡を用いて細胞を解析した。試料当たり最小で50個の細胞の倍数性状態を解析した。
【0085】
(1)選択された細胞における3q26プローブシグナルの核に対する比率が2.0以上である、(2)選択された細胞における5p15プローブシグナルの核に対する比率が2.0以上である、(3)選択された細胞における3q26及び5p15プローブシグナルの核に対する比率が2.0以上である場合、試料は異数性を有すると判定した。選択された細胞における3q26、5p15又は3q26と5p15両方のプローブシグナルの核に対する比率が2未満である場合、試料は正常な倍数性を有すると判定された。倍数性異常及び/又は3qコピー数の増加を有する試料は、予後不良及びより進行した子宮頸疾患発症リスクがあると決定した。
【0086】
結果は、子宮頸部異形成の診断及び予後マーカーとなり得る。倍数性異常及び/又は3q若しくは5pコピー数増加を有する試料は、予後不良リスク及びより進行した子宮頸疾患発症リスクがあると決定した。
【0087】
(例9)
使用試薬の調製
1%ホルムアルデヒド溶液を調製するため、2.7mLの37%ホルムアルデヒド溶液と97.3mLの1×PBSを合わせ、最終容量100mLとする。完全に混合する。溶液をコプリンジャーに注ぐ。2×SSCを調製するため、100mlの20×SSCと900mlのdH2を合わせ、最終容量1000mlとする。
【0088】
(例10)
エタノール洗浄液
100%エタノールとdH2Oを用いて70%、90%希釈液を調製する。希釈液は、蒸発したり過剰使用で溶液が希釈されなければ、1週間用いることができる。使用しないときは蓋付容器で室温保存する。
【0089】
0.4×SSC/0.3%NP−40を調製するため、20mlの2×SSCと77.7mlのdH2O、0.3mlのNP−40を合わせ、最終容量100mlとする。完全に混合する。その日の終わりに使用した溶液を捨てる。2×SSC/0.1%NP−40を調製するために、99.9mlの2×SSC、0.1mlのNP−40を合わせ、最終容量100mlとする。完全に混合する。2×SSCを調製するため、900mlのdH2Oと100mlの20×SSCを合わせて最終容量1000mlとし、1×PBSは、900mlのdH2Oと100mlの10×PBSを合わせて最終容量1000mlとし、0.1M HClは、1mlの1N HClと9mlのdH2Oを合わせて最終容量100mlとし、ペプシン(ストック溶液)(100MG/ML)は、ペプシン5gと滅菌水50mlを合わせる。十分に混合する。氷上に維持し、50μlアリコートを作製し、−20℃で保存する。ペプシン(使用溶液、新たに調製)は、95.5mlのdH2Oと0.5mlの1M HClを合わせる。37℃に予熱(約15分間)する。20マイクロリットルのストックペプシン溶液を新しいコプリンジャーに添加し、予熱した0.1M HClを加える。
【0090】
(例11)
DNAハイブリダイゼーション手順
1日目の手順。1.スライドをTHINPREPマシン(THINPREP 2000 SOPを指す)上に調製し、2.必要な全試薬を調製、予熱し、3.スライドを2×SSCに5分間、室温で置き、4.スライドをプロテアーゼ溶液に10分間、37℃で置き(消化ステップ)、5.スライドをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に5分間RTで置き(洗浄)、6.スライドを1%ホルムアルデヒドに5分間RTで置き(固定)、7.スライドを1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に5分間RTで置き(洗浄)、8.スライドを70%EtOHに1分間RTで置き、9.スライドを90%EtOHに1分間RTで置き、10.スライドを100%EtOHに1分間RTで置き、11.スライドを乾燥させ、12.DNAプローブをボルテックス攪拌し、遠心分離し、適切な容量に分注し、13.10μlのプローブを各標的範囲に添加し、14.22mm四方のガラス製カバーガラスを被せてラバーセメントで封入し、15.72℃で2分間変性させ、16.スライドを湿室に置いて37℃で14〜16時間(一晩)インキュベートした。
【0091】
2日目の手順。洗浄液を調製、予熱した。1.湿室からスライドを取り出し、2.ラバーセメントを穏やかに取り除き、スライドを2×SSCにRTで浸してカバーガラスを外し、3.スライドを0.4×SSC/0.3%NP−40に1分間、65℃で置き、4.スライドを取り出し、2×SSC/0.1%NP−40にRTで、1分間置き、5.スライドを取り出し、引き出しの暗所に垂直に置いて乾かし、6.標的範囲上にDAPI/抗退色剤溶液を1滴加え、DAPI溶液上に気泡が入らないようカバーガラス(22×50mm)を置き、7.シグナル計数前にスライドを暗所に保存した。
【0092】
(例12)
解析
DNAプローブセット及びDAPI対比染色は、100ワット水銀灯並びに次のフィルター、DAPI、スペクトラム・アクア(7番染色体セントロメア)、スペクトラム・オレンジ(3q26の遺伝子座)及びスペクトラム・グリーン(5p15の遺伝子座)を備えた落射蛍光顕微鏡で観察するべきである。DAPIフィルター及び100×倍率を用いて患者スライドの試料範囲を手早く走査し、細胞の量と質を決定した。標的範囲の左上四分円の解析を開始した。63×油浸対物レンズを用いて視野を左から右に、上から下に、同一範囲を再走査することなく走査した。合計1000個の細胞を(1個又は2個の読み取り機を用いて)計数した。このステップはハイスループット解析のため自動化できる。スペクトラム・オレンジフィルターを用いた走査を開始した。正常な2個の3q26プローブシグナルを有する細胞を計数し、記録した。3q26を走査した各視野内をスペクトラム・グリーンフィルターに切換え、5p15プローブシグナルのため視野を再走査した。3個以上の3q26又は5p15シグナルを有する細胞を発見した場合、アクアチャンネルに反転してCEN7シグナルを計数した。3個以上の3q26又は5p15シグナルを有するいずれの細胞も異常である。細胞計数をスコアシートの適切な列に記入した。4個の3q26又は5p15及び4個のCEN7シグナルを有する細胞は、四倍体であり、適切に記録した。この解析方法を2色プローブパネルを用いて行う場合、走査、イメージング及びシグナル記録を実際の2色プローブパネルが反映されるよう修正した。図7における標本の評価によって、染色体領域3q26及び5p15の正常コピー数が明らかになった。解析した多くの細胞において、3q26及び5p15の遺伝子座の増幅は検出されず、7番染色体セントロメアの評価によって正常な二倍体標本であることが示された。
【0093】
(例13)
自動解析及び評価のための方法及び標本選択
細胞診、HPV検査及び2色法検査が陰性結果である、NeoDiagnostix検査集団内で合計二十(20)個の標本を同定した。更に、これら20標本は全て、解析における変動を最小化するため計数された合計1000個の細胞を有する。三重陰性標本は疾病陰性であると考えられ、したがってFISHによって同定された異常細胞は、いずれも「偽陽性」であると考えられる。20標本に多くの「偽陽性」細胞が決定されると、記載されているBETAINV計算は、正常と異常標本間の閾値を決定するために用いることができる。
【0094】
結果。20個の三重陰性標本に対するFISH検査の結果を再検査し、標本毎の各染色体座の「偽陽性」細胞の合計数を同定した。標本は、FISHによって3q26と5p15の両遺伝子座に亘って異常であると同定された、標本当たり最大数の観察された「偽陽性」細胞である、5個の細胞を有していた。この観察はBETAINV計算に用いられ、正常標本と異常標本との間の閾値を95%信頼で決定した。この方程式に入力された細胞合計数は、1000であった。BETAINV計算は0.0104(1.0%)、即ち計数された細胞1000個の内10個の閾値を返した。閾値も99%信頼で決定し、これは0.0129(1.3%)即ち細胞1000個の内13個に相当する。
【0095】
更に、20個の三重陰性標本に対するFISH検査の結果を再検査し、標本毎の染色体座5p15のみ「偽陽性」細胞の合計数を同定した。標本は、FISHによって5p15異常であると同定された、標本当たり最大数の観察された「偽陽性」細胞である3個の細胞を含んでいた。この観察をBETAINV計算に用いて、正常標本と異常標本との間の閾値を95%信頼で決定した。方程式に入力した細胞合計数はND10107B由来の1000であった。BETAINV計算は0.0077(0.7%)、即ち計数された細胞1000個の内7個の閾値を返した。閾値も99%信頼で決定し、これは0.0099(0.9%)、即ち細胞1000個の内9個に相当した。
【0096】
ACMGガイドラインを用いて、Cervical DNA Dtex診断アッセイのために正常標本と異常標本との間の閾値を決定した。95%信頼を用いて、閾値は細胞1000個の内10個、即ち標本当たり1.0%が異常細胞であると決定した。したがって、FISHによる1.0%以上の異常細胞率の標本はいずれも異常であり、進行リスクの高い患者を同定した。この場合、陽性の診断検査結果が出されるであろう。標本が標本当たり1.0%未満の異常細胞を有することが判明した場合、陰性の診断検査報告が提出されるであろう。
【0097】
(例14)
生検標本の子宮頸部FISH
用いることができる試薬は、チオシアン酸ナトリウム(Kreatech LK−064A)、キシレン(Mallinckrodt 8668−04、500ml)、プロテイナーゼ細菌型XXIV(Sigma P8038、100ml)である。使用試薬の調製を次に示す。前処理溶液(1Mチオシアン酸ナトリウム)を、2gのチオシアン酸ナトリウムと50mlの脱イオン水で使用毎に新しく調製し、80℃に温めた。プロテイナーゼKは、0.025gのプロテイナーゼKを1mlの水に懸濁して最長1週間まで−20℃で保存した25mg/mlストック溶液を用いた。500μlのプロテイナーゼKストック溶液と49.5mlの2×SSCで使用毎に新しく調製し、45℃に温めた。2×SSCは、100mlの20×SSCと900mlのdH2Oで最終容量1000mlとした。エタノール洗浄液は、100%エタノールとdH2Oを用いた70%と90%の希釈液である。希釈液は、蒸発したり、過剰な使用のため溶液が希釈されたりしない限り、1週間用いることができ、また使用中でないときは蓋付容器で室温保存できる。プローブ混合物は、1×TERC−スペクトラム・ゴールド、1×Cri du Chat−スペクトラム・グリーン、0.1×CEP7−スペクトラム・アクアである。2×SSC/0.1%Tween−20(65℃で予熱)を調製するため、20mlの2×SSC、77.7mlのdH2O、0.3mlのNP−40を合わせ、最終容量100mlとする。完全に混合する。
【0098】
1日目の手順。(1)60分間、65℃でベークする。(2)切片をキシレンで2×10分間脱パラフィンする。(3)100%EtOHで2×5分間脱水する。(4)風乾する。(5)スライドを予熱した前処理溶液で8分間、80℃でインキュベートする。(6)脱イオン水で3分間、室温で洗浄する。(7)スライドを70%、90%、100%EtOHで各1分間脱水する。(8)風乾する。(9)スライドを2×SSCで5分間インキュベートする。(10)スライドを予熱したプロテイナーゼK溶液で10分間、45℃でインキュベートする[ステップ5〜10の代わりに、スライドを予熱したプロテイナーゼK溶液で55分間、45℃でインキュベートし、ステップ11に進んで続ける]。(11)スライドを2×SSCで5分間リンスする。(12)スライドを70%、90%、100%EtOHで各1分間脱水する。(13)風乾する。(14)プローブ混合液(短時間遠沈した)を置き、カバーガラスをかけ、ラバーセメントで封じる。比例サイズのカバーガラスを用いる組織切片に対して実用的となるように小型のカバーガラスを用いる。組織切片は気泡が入り易いが、スライド上の切片に置いたプローブ混合液を直接ピペッティングすることによって最小限に抑えられることを留意する。(15)72℃、5分間共変性させる。(16)37℃湿室で一晩インキュベートする。
【0099】
2日目の手順。(1)洗浄液2×SSC/0.1%Tween−20を65℃で予熱する。(2)カバーガラスを引き剥がさずに、スライドを2×SSCに浸してカバーガラスを浮かせて外し、剪断を最小限に抑える。(3)スライドを2×SSC/0.1%Tween−20で65℃、各回5分間を2回洗浄する。(4)スライドを2×SSC/0.1%NP−40で1分間、室温でリンスする。(5)スライドを取り出し、引き出しの暗所に垂直に置いて乾燥させる。(6)抗退色剤w/DAPIを載せ、カバーガラス(24×50mm)をかけ、スライドを4℃で保存する。
【0100】
上述のある特定の実施形態の説明は、このような特定の実施形態を一般概念から逸脱することなく、他者が現在の知識を用いることによって様々な適用のために容易に修正又は適合できる十分な情報を提供し、したがってこのような適合及び修正は、開示されている実施形態の均等の意義及び範囲内で理解するべきであり、理解することを目的とする。本明細書において用いられている語法又は専門用語は説明を目的とし、限定を目的としないことを理解するべきである。図面及び明細書において例示的実施形態が開示され、特定の用語が用いられていても、これは別のことが記載されていない限り一般的で説明的な意味でのみ用いられ、限定を目的とせず、したがって特許請求の範囲は殆ど限定されない。更に、当業者であれば、本明細書に記述されている方法の特定のステップを別の順に並べても、或いはステップを組み合わせてもよいことを理解するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本明細書に開示されている特定の実施形態に限定されないことが意図されている。
【0101】
本文に引用されている各特許出願及び特許のみならず、各特許出願及び特許に引用されている各文書又は参考文献(各交付特許の審査手続き中の「特許出願引用文書」を含む)や、PCT及び外国出願、或いはこれら特許出願及び特許のいずれかに相当する及び/又は優先権を主張する特許や、各特許出願引用文書に引用又は参照されている各文書は、これにより本明細書の一部を構成するものとしてここに明確に援用する。より一般には、文書又は参考文献は、特許請求の範囲の前の参考文献リストか、或いは文章そのものにおいて本文で引用され、これら文書又は参考文献(「本明細書に引用されている参考文献」)のそれぞれは、本明細書に引用されている参考文献のそれぞれに引用されている各文書又は参考文献(任意のメーカー仕様書、取扱説明書を含む)と共に、これにより本明細書の一部を構成するものとしてここに明確に援用する。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料における子宮頸部細胞障害の存在を決定するために染色体異常を検出するための方法であって、
患者試料を染色体5pにおける標的核酸配列に結合する核酸プローブとハイブリダイズさせるステップと、
患者試料を7番染色体セントロメア(CEN7)に結合する核酸対照プローブとハイブリダイズさせるステップと、
染色体5p及びCEN7におけるハイブリダイゼーション複合体の形成を検出するステップであって、前記ハイブリダイゼーション複合体の検出が、正常細胞と比べて染色体コピー数の増加を示し、子宮頸部細胞障害の存在と相関するステップと
を含む上記方法。
【請求項2】
試料における子宮頸部細胞障害の存在を決定するために染色体異常を検出するための方法であって、
患者試料を染色体3qにおける標的核酸配列に結合する核酸プローブとハイブリダイズさせるステップと、
患者試料を7番染色体セントロメア(CEN7)配列に結合する核酸対照プローブとハイブリダイズさせるステップと、
染色体3q及びCEN7におけるハイブリダイゼーション複合体の形成を検出するステップであって、前記ハイブリダイゼーション複合体の検出が、正常細胞と比べて染色体コピー数の増加を示し、子宮頸部細胞障害の存在と相関するステップと
を含む上記方法。
【請求項3】
試料における子宮頸部細胞障害の存在を決定するために染色体異常を検出するための方法であって、
患者試料を染色体3qにおける標的核酸配列に結合する核酸プローブとハイブリダイズさせるステップと、
患者試料を染色体5pにおける標的核酸に結合する核酸プローブとハイブリダイズさせるステップと、
患者試料を7番染色体セントロメア(CEN7)に結合する核酸対照プローブとハイブリダイズさせるステップと、
染色体5p、染色体3q及びCEN7におけるハイブリダイゼーション複合体の形成を検出するステップであって、前記ハイブリダイゼーション複合体の検出が、正常細胞と比べて染色体コピー数の増加を示し、子宮頸疾患の存在と相関するステップと
を含む上記方法。
【請求項4】
前記子宮頸部細胞障害が、子宮頸癌形成、上皮内病変又は悪性に関して陰性(NILM)、ヒトパピローマウイルス(HPV)陽性、意義不明異型扁平上皮細胞(ASC−US)、軽度扁平上皮内病変(LSIL)、異型扁平上皮細胞HSIL(ASC−H)、意義不明異型腺細胞(AGUS)、高度扁平上皮内病変(HSIL)、子宮頸部異形成、前癌、前悪性病変、子宮頸癌、子宮頸腺癌、頸部扁平上皮癌、頸部上皮内腫瘍1(CIN1)、頸部上皮内腫瘍(CIN2)、頸部上皮内腫瘍3(CIN3)、上皮内癌及び浸潤頸癌からなる群から選択される1つ又は複数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記子宮頸部細胞障害が、子宮頸癌形成、上皮内病変又は悪性に関して陰性(NILM)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、意義不明異型扁平上皮細胞(ASC−US)、軽度扁平上皮内病変(LSIL)、異型扁平上皮細胞HSIL(ASC−H)、意義不明異型腺細胞(AGUS)、高度扁平上皮内病変(HSIL)、子宮頸部異形成、前癌、前悪性病変、子宮頸癌、子宮頸腺癌、頸部扁平上皮癌、頸部上皮内腫瘍1(CIN1)、頸部上皮内腫瘍(CIN2)、頸部上皮内腫瘍3(CIN3)、上皮内癌及び浸潤頸癌からなる群から選択される1つ又は複数を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記子宮頸部細胞障害が、子宮頸癌形成、上皮内病変又は悪性に関して陰性(NILM)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、意義不明異型扁平上皮細胞(ASC−US)、軽度扁平上皮内病変(LSIL)、異型扁平上皮細胞HSIL(ASC−H)、意義不明異型腺細胞(AGUS)、高度扁平上皮内病変(HSIL)、子宮頸部異形成、前癌、前悪性病変、子宮頸癌、子宮頸腺癌、頸部扁平上皮癌、頸部上皮内腫瘍1(CIN1)、頸部上皮内腫瘍(CIN2)、頸部上皮内腫瘍3(CIN3)、上皮内癌及び浸潤頸癌からなる群から選択される1つ又は複数を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
プローブが5p15における標的核酸と結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
プローブが3q27又は3q26における標的核酸と結合する、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
プローブが5p15及び3q26における標的核酸配列と結合する、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
プローブが5p15及び3q26における標的核酸と結合する、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
プローブが5p15及び3q26における標的核酸配列と結合する、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
5pにおける標的核酸配列が、5p15.33、5p15.32、5p15.31、5p15.2、5p15.1又はそれらの任意の部分若しくは組み合わせからなる群から選択される遺伝子座における標的を含む、請求項1又は3に記載の方法。
【請求項13】
3qにおける標的核酸配列が、3q26.1、3q26.2、3q26.31、3q26.32、3q26.33からなる群から選択される遺伝子座における標的を含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項14】
染色体腕5pにおける標的核酸配列がTERT遺伝子由来の核酸配列を含む、請求項1又は3に記載の方法。
【請求項15】
染色体腕3qにおける標的核酸配列がTERC由来の核酸配列を含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項16】
染色体腕5pにおける標的核酸配列がTRIP13由来の核酸配列を含む、請求項1又は3に記載の方法。
【請求項17】
標的核酸がPIC3CA又はGLUT2を含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項18】
標的核酸配列が5p15におけるCri du Chat遺伝子座に存在する、請求項1又は3に記載の方法。
【請求項19】
1q、20q、12q、19q、11q、6q、17p、7、8q、9q、16q、2q、9p、10q、18p及びそれらの任意の組み合わせを含む1つ又は複数の腕を標的とするプローブを更に含む、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項20】
1q21〜31、20q12、12q13〜24、19q13、11q21、7q11〜22、8q24、9q33〜34、16q23、2q32、9p22、10q21〜24、18p11及びそれらの任意の組み合わせを含む1つ又は複数の領域を標的とするプローブを更に含む、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項21】
四倍性が観察される、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項22】
FISH、CISH、PCR、ELISA、CGH、アレイCGH又はフローサイトメトリーを用いた検出を更に含む、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項23】
試料が、子宮、子宮頚管、膣、膣円蓋、外陰部、卵巣又は卵管から採取された細胞を含む、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項24】
試料が中期細胞又は間期細胞を含む、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項25】
子宮頸部細胞を含む試料が、papスメア、薄層細胞診標本、薄層懸濁液、細針吸引、組織標本、パンチ生検、ループ式電気焼灼切除術(LEEP)、錐体生検、子宮摘出、子宮頚管内掻爬術(ECC)から得られた試料である、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項26】
試料がヒトパピローマウイルス感染陽性患者に由来する、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項27】
請求項1、2又は3に記載の染色体変化を検出するためのキット。
【請求項28】
請求項1、2又は3に記載の方法のステップを含む、患者状態のシフトを評価するための方法。
【請求項29】
軽度から高度子宮頸部異形成又は癌への患者状態の変化を決定するステップを更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
請求項1、2又は3に記載の方法のステップを含む、子宮頸部細胞障害を発症する患者のリスク、素因又は可能性を決定するための方法。
【請求項31】
請求項1、2又は3に記載の方法のステップを含む、軽度子宮頸部異形成又は正常への患者状態の維持又は回復を評価するための方法。
【請求項32】
請求項1、2又は3に記載の方法を含む、病状が、子宮頸癌形成、上皮内病変又は悪性に関して陰性(NILM)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、意義不明異型扁平上皮細胞(ASC−US)、軽度扁平上皮内病変(LSIL)、異型扁平上皮細胞HSIL(ASC−H)、意義不明異型腺細胞(AGUS)、高度扁平上皮内病変(HSIL)、子宮頸部異形成、前癌、前悪性病変、子宮頸癌、子宮頸腺癌、頸部扁平上皮癌、頸部上皮内腫瘍1(CIN1)、頸部上皮内腫瘍(CIN2)、頸部上皮内腫瘍3(CIN3)、上皮内癌及び浸潤頸癌からなる群から選択される1つ又は複数であることを確認するための方法。
【請求項33】
子宮頸部細胞障害の成功的治療を検出、確認又は検証する、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項34】
子宮頸部細胞障害の範囲及び/又は重症度を定量化する、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項35】
前記検出ステップがハイブリダイゼーション複合体の自動イメージング解析を更に含む、請求項1、2又は3に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図16D】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2011−528568(P2011−528568A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520141(P2011−520141)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/051301
【国際公開番号】WO2010/011683
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(511018088)ネオディアグノスティックス、インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】