説明

孔壁の形状および孔壁に形成された空洞を検出する孔壁・空洞形状検出方法ならびに孔壁の形状および孔壁に形成された空洞を検出する孔壁・空洞形状検出システム

【課題】地下トンネルから上向きに掘削したボーリング孔などの孔壁の形状および孔壁に形成された空洞の位置、大きさおよび形状を、効率的に検出することができる孔壁・空洞形状検出方法を提供する。
【解決手段】トンネルから上方に向けて、地面をボーリングし、ボーリング孔内に、先端部にレーザスキャナ式測域センサ8が取付けられたロッド5を挿入し、レーザスキャナ式測域センサ8によって、ボーリング孔の内壁に照射されるレーザビームの投光波形の位相と、ボーリング孔の内壁によって反射され、レーザスキャナ式測域センサ8が受光したレーザビームの受光波形の位相との位相差に基づいて内壁までの距離を測定する。ボーリング孔の内壁全体を走査して、得られたボーリング孔の内壁の断面形状データに基づいて、ボーリング孔の内壁の形状ならびにボーリング孔の内壁に形成された空洞9の位置、大きさおよび形状を検出するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボーリング孔などの孔壁の形状および孔壁に形成された空洞の位置、大きさおよび形状を検出する孔壁・空洞形状検出方法ならびに孔壁の形状および孔壁に形成された空洞を検出する孔壁・空洞形状検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネルの上方に位置している道路などの地表の陥没事故は大惨事にもなりかねず、未然に防ぐことが必要である。地表の陥没事故は、トンネルの上部にできる空洞が、何らかの原因で崩壊することに起因するものであり、したがって、地下にある空洞の位置、大きさおよび形状を検出し、空洞内にセメントミルク等の充填材を充填することができれば、地表の陥没事故を未然に防ぐことが可能になる。
【0003】
地下にできた空洞の位置、大きさおよび形状を検出する方法としては、従来は、地下に空洞があると思われる箇所に地上からボーリングをし、ボーリングされた孔内に、カメラとレーザ距離計を備えた検出装置を下ろして、一定角度ずつ、検出装置を回転させて、孔壁の形状ならびに空洞の位置、大きさおよび形状を検出するのが一般的であった。
【0004】
たとえば、特開2003−130641号公報には、地下空洞までボーリングし、スチルカメラ、ストロボ、直視ビデオカメラ、側視ビデオカメラ、レーザ距離計などを搭載した撮影計測用ゾンデをボーリング孔内からゆっくり降下させ、ゾンデが地下空洞に入ったとき、撮影計測用ゾンデを回転させて、所定の方位に対して空洞内を写真撮影するとともに、撮影時の深度とその深度における撮影方位での空洞側壁までの距離を測定するようにした地下空洞調査装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−130641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この地下空洞調査装置によって、地下にできた空洞の位置、大きさおよび形状を検出するためには、地上からボーリングをすることが必要になるが、空洞があると予想される箇所の上部には、家屋などの構造物、道路などの公共設備、耕作地などがあり、ボーリングする場所の確保が難しいという問題点があった。
【0007】
さらに、空洞があると予想される箇所の下部に、地下トンネルがある場合には、ボーリングをするために、正確な測量をする必要があり、空洞がトンネルのすぐ上にあると予想される場合には、トンネルぎりぎりまでボーリングをしなければならないため、使用中のトンネル壁を突き破る危険性もあった。
【0008】
このような問題は、空洞があると予想される箇所の下部にトンネルがある場合に、トンネルから上向きにボーリングして、空洞の位置、大きさおよび形状を検出することができれば、解決することができるが、特許文献1に記載された地下空洞調査装置は、撮影計測用ゾンデをボーリング孔内に下降させるもののため、トンネルから上向きにボーリングして、空洞の位置、大きさおよび形状を検出することは不可能であった。
【0009】
したがって、本発明は、地下トンネル内から、掘削したボーリング孔など、とくに、地下トンネル内から上方に掘削したボーリング孔などの孔壁の形状および孔壁に形成された空洞の位置、大きさおよび形状を精度よく、かつ、効率的に検出することができる孔壁・空洞形状検出方法を提供することを目的とするものである。
【0010】
本発明の別の目的は、地下トンネル内から、掘削したボーリング孔など、とくに、地下トンネル内から上方に掘削したボーリング孔などの孔壁の形状および孔壁に形成された空洞の位置、大きさおよび形状を精度よく、かつ、効率的に検出することができる孔壁・空洞形状検出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のかかる目的は、トンネル内から、地面をボーリングし、ロッド挿入手段によって、ボーリング孔内に、先端部に、レーザスキャナ式測域センサが取付けられたロッドを挿入し、ロッド位置測定手段によって、前記ロッドの前記ボーリング孔内における位置を測定しつつ、前記レーザスキャナ式測域センサによって、前記ボーリング孔の内壁に向けて、レーザビームを発し、前記ボーリング孔の内壁に照射されるレーザビームの投光波形の位相と、前記ボーリング孔の内壁によって反射され、前記レーザスキャナ式測域センサが受光したレーザビームの受光波形の位相との位相差に基づいて、前記ボーリング孔の内壁までの距離を測定し、前記レーザビームによって、前記ボーリング孔の内壁全体を走査して、前記ボーリング孔の内壁の各点までの距離を測定して、前記ボーリング孔の内壁の断面形状を測定し、得られた前記ボーリング孔の内壁の断面形状データに基づいて、前記ボーリング孔の内壁の形状ならびに前記ボーリング孔の内壁に形成された空洞の位置、大きさおよび形状を検出することを特徴とする孔壁・空洞形状検出方法によって達成される。
【0012】
本発明によれば、トンネル内から、地面をボーリングし、ロッド挿入手段により、ロッドをボーリング孔内に挿入し、ロッド位置測定手段によって、ロッドのボーリング孔内の位置を測定しつつ、ロッドの先端部に取付けたレーザスキャナ式測域センサによって、ボーリング孔壁に向けて、レーザビームを発し、ボーリング孔の内壁に照射されるレーザビームの投光波形の位相と、ボーリング孔の内壁によって反射され、受光したレーザビームの受光波形の位相との位相差に基づいて、ボーリング孔の内壁までの距離を測定し、レーザビームによって、ボーリング孔の内壁を走査して、ボーリング孔の内壁の各点までの距離を測定し、ボーリング孔の内壁の断面形状を測定し、得られたボーリング孔の内壁の断面形状データに基づいて、ボーリング孔の内壁の形状ならびにボーリング孔の内壁に形成された空洞の位置、大きさおよび形状を検出するように構成されているから、空洞があると予想される箇所の上部に、家屋などの構造物、道路などの公共設備、耕作地などがあり、ボーリングする場所の確保が難しい場合にも、ボーリング孔壁の形状ならびにボーリング孔の内壁に形成された空洞の位置、大きさおよび形状を測定することができ、短時間に、かつ、精度よく、ボーリング孔の内壁の形状ならびにボーリング孔の内壁に形成された空洞の位置、大きさおよび形状を測定することが可能になる。
【0013】
本発明が適用されるトンネルはとくに限定されるものではなく、本発明は、水路トンネル、道路トンネル、鉄道トンネルなどに適用することができる。
【0014】
本発明の好ましい実施態様においては、ロッド位置測定手段として、ワイヤーエンコーダが用いられる。
【0015】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記ロッド挿入手段が、ロッドを固定する移動ロッドホルダーを備えた電動スライダと、ロッドを継ぎ足す際に、ロッドを一時的に固定する固定ロッドホルダーを備えている。
【0016】
本発明の前記目的はまた、ボーリング孔の内壁に向けて、レーザビームを発し、前記ボーリング孔の内壁に照射されるレーザビームの投光波形の位相と、前記ボーリング孔の内壁によって反射され、受光したレーザビームの受光波形の位相との位相差に基づいて、前記ボーリング孔の内壁までの距離を測定し、レーザビームによって、前記ボーリング孔の内壁を走査して、前記ボーリング孔の内壁の各点までの距離を測定し、前記ボーリング孔の内壁の断面形状を測定するレーザスキャナ式測域センサが、先端部に取付けられたロッドと、前記ボーリング孔内で、前記ロッドを内方に移動させるロッド挿入手段装置と、前記ロッドの位置情報を測定するロッド位置測定手段を備えたことを特徴とする孔壁・空洞形状検出システムによって達成される。
【0017】
本発明の好ましい実施態様においては、前記ロッド位置測定手段として、ワイヤーエンコーダが用いられる。
【0018】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記ロッド挿入手段が、ロッドを固定する移動ロッドホルダーを備えた電動スライダと、ロッドを継ぎ足す際に、ロッドを一時的に固定する固定ロッドホルダーを備えている。
【0019】
本発明において、レーザスキャナ式測域センサとしては、たとえば、北陽電機株式会社製の「URG-04LX」を好ましく使用することができ、電動スライダとしては、たとえば、オリエンタルモーター株式会社製の「電動スライダEZ limo ELSシリーズ」を好ましく使用することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、地下トンネル内から、掘削したボーリング孔など、とくに、地下トンネル内から上方に掘削したボーリング孔などの孔壁の形状および孔壁に形成された空洞の位置、大きさおよび形状を精度よく、かつ、効率的に検出することができる孔壁・空洞形状検出方法を提供することが可能になる。
【0021】
また、本発明によれば、地下トンネル内から、掘削したボーリング孔など、とくに、地下トンネル内から上方に掘削したボーリング孔などの孔壁の形状および孔壁に形成された空洞の位置、大きさおよび形状を精度よく、かつ、効率的に検出することができる孔壁・空洞形状検出システムを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる孔壁の形状および孔壁に形成された空洞を検出する孔壁・空洞形状検出システムの略正面図である。
【図2】図2は、図1に示された孔壁・空洞形状検出システムの略側面図である。
【図3】図3は、図1に示された孔壁・空洞形状検出システムの略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる孔壁の形状および孔壁に形成された空洞の位置、大きさおよび形状を検出する孔壁・空洞形状検出システムの概略図であり、図2は、その略側面図、図3は、その略平面図である。
【0024】
図1、図2および図3に示されるように、本発明の好ましい実施態様にかかる孔壁・空洞形状検出システムは、水路トンネル1内を走行可能な作業用台車2と、作業用台車2に搭載された孔壁・空洞形状検出装置3と、孔壁・空洞形状検出装置3の動作を制御するパーソナルコンピュータ4を備えている。
【0025】
図1に示されるように、孔壁・空洞形状検出装置3は、水路トンネル1から、上方に向けてボーリングされたボーリング孔10内を上下方向に移動可能なロッド5と、ロッド5を上方に移動させるロッド挿入装置6と、ロッド5の上下方向の位置を測定するワイヤーエンコーダ7を備えている。ロッド5としては、たとえば、アルミニウム製のロッド5が用いられる。
【0026】
図1に示されるように、ロッド挿入装置6は、装置全体を支持するアルミニウム枠11と、アルミニウム枠11に電動スライダ取り付け具12によって取り付けられた電動スライダ13と、ロッド5を電動スライダ13のスライド部14に固定する移動ロッドホルダー15と、ロットを継ぎ足す際またはロッド5を取り外す際に、ロッドを一時的に固定する固定ロッドホルダー16を備えている。ロッド5の先端部には、レーザスキャナ式測域センサ8が取付けられている。さらに、ロッド挿入装置6は、ロッド5の動きを制御する電動スライダコントローラ17を備えている。
【0027】
レーザスキャナ式測域センサ8は、ボーリング孔10の内壁に向けて、レーザビームを発し、ボーリング孔10の内壁に照射されるレーザビームの投光波形の位相と、ボーリング孔10の内壁によって反射されて、受光したレーザビームの受光波形の位相との位相差に基づいて、ボーリング孔10の内壁までの距離を測定し、レーザビームによって、ボーリング孔10の内壁全体を走査して、ボーリング孔10の内壁の各点までの距離を測定することによって、ボーリング孔壁の断面形状を測定するものであり、レーザスキャナ式測域センサ8としては、たとえば、北陽電機株式会社製の「URG-04LX」などが好ましく使用することができる。レーザスキャナ式測域センサ8として、北陽電機株式会社製の「URG-04LX」を用いる場合には、レーザスキャナ式測域センサ8の測定範囲が240°であるため、2つのセンサを180°隔てて、配置することが必要である。
【0028】
また、作業用台車としては、ファクトリーゼロ社製のジェットランチャー4輪(J-1480-4X)などを好ましく使用することができる。
【0029】
以上のように構成された孔壁・空洞形状検出システムは、以下のようにして、ボーリング孔10の内壁の断面形状およびボーリング孔10内に形成された空洞9の位置、大きさおよび形状を検出する。
【0030】
まず、図示しないボーリング装置によって、水路トンネル1内から、鉛直に、上方に向けて、空洞があると予想される箇所に、ボーリング孔10が形成される。
【0031】
次いで、作業用台車2が移動され、孔壁・空洞形状検出装置3のロッド5が、ボーリング孔10の下方に位置決めされる。
【0032】
ロッド5が、ボーリング孔10の下方に位置決めされると、オペレータによって、ボーリング孔10の内壁形状を検出する旨の検出開始信号がパーソナルコンピュータ4に入力されるとともに、駆動開始信号が電動スライダコントローラ17に入力される。
【0033】
駆動信号が入力されると、電動スライダコントローラ17によって、ロッド5が、一定速度でボーリング孔10内に挿入される。
【0034】
ボーリング孔10内におけるロッド5の位置は、ワイヤーエンコーダ7によって測定されて、ロッド位置測定信号がパーソナルコンピュータ4に出力され、パーソナルコンピュータ4のメモリ(図示せず)内に、ロッド位置データとして、記憶される。
【0035】
ロッド5がボーリング孔10内に挿入されると、パーソナルコンピュータ4から、ロッド5の先端部に取付けられたレーザスキャナ式測域センサ8に距離測定指示信号が出力され、レーザスキャナ式測域センサ8から、ボーリング孔10の内壁に向けて、レーザビームが発せられ、ボーリング孔10の内壁によって反射されたレーザビームが、レーザスキャナ式測域センサ8によって受光される。
【0036】
ボーリング孔10の内壁によって反射されたレーザビームを受光すると、レーザスキャナ式測域センサ8は、ボーリング孔10の内壁に照射したレーザビームの投光波形の位相と、受光したレーザビームの受光波形の位相との位相差に基づいて、ボーリング孔10の内壁までの距離を測定し、距離測定信号をパーソナルコンピュータ4に出力する。
【0037】
距離測定信号が入力されると、パーソナルコンピュータ4は距離測定信号を距離測定データとして、メモリに記憶させるとともに、距離測定信号に基づいて、ボーリング孔10の内壁の断面形状を算出し、孔壁断面測定データとして、メモリに記憶させる。
【0038】
ロッド5は、ボーリング孔10内を、ロッド挿入装置6によって上方に向けて移動され、電動スライダのスライド部14が上限まで移動すると、ロッド挿入装置6はロッド5の移動を停止させる。
【0039】
レーザスキャナ式測域センサ8をさらに上昇させる必要があるときは、オペレータにより、固定ロッドホルダー16が操作されて、ロッド5が固定され、その上で、ロッド5が継ぎ足され、次いで、移動ロッドホルダー15が緩められて、スライド部14が下限まで下降される。その後、移動ロッドホルダー15が締められ、ロッド5が電動スライダ13のスライド部14に固定され、固定ロッドホルダー16が緩められ測定を再開する。
【0040】
本実施態様において用いられているレーザスキャナ式測域センサ8は軽量であるため、オペレータによって、容易に、ロッド5を継ぎ足して、レーザスキャナ式測域センサ8を上昇させることができる。
【0041】
同様にして、必要に応じて、ロッド5が継ぎ足され、ロッド挿入装置6によって、ロッド5がボーリング孔10を上昇されつつ、レーザスキャナ式測域センサ8から放出されるレーザビームによって、ボーリング孔10の内壁が順次走査され、ボーリング孔10の内壁の各点までの距離が測定されて、距離測定信号がパーソナルコンピュータ4に出力され、距離測定データと孔壁断面形状測定データが、メモリに記憶される。
【0042】
したがって、パーソナルコンピュータ4のメモリには、ボーリング孔10内におけるロッド5の位置を示すロッド位置データと、ボーリング孔10の内壁までの距離測定データおよびボーリング孔10の内壁の断面形状を示す孔壁断面形状測定データとが、互いに関連付けられて、記憶される。
【0043】
こうして、ロッド5がボーリング孔10の最上部に達すると、必要に応じて、固定ロッドホルダー16と移動ロッドホルダー15が操作されて、互いに連結されていたロッド5の連結が、一つずつ、取り外され、その結果、重力によって、ロッド5が下降し、ロッド5とその先端部に取付けられたレーザスキャナ式測域センサ8がボーリング孔10から引き出される。
【0044】
こうして、ボーリング孔10の全長にわたって、ボーリング孔10の内壁までの距離が測定され、パーソナルコンピュータ4のメモリに、距離測定データおよび孔壁断面形状測定データならびにロッド位置データが記憶されると、1つのボーリング孔10の内壁形状の測定が完了する。
【0045】
必要に応じて、さらに、作業台車2が水路トンネル1内を移動され、空洞があると予想される箇所に達すると、同様にして、水路トンネル1から、上方に向けて、ボーリングされたボーリング孔10の内壁形状が測定される。
【0046】
同様の動作を繰り返し、調査が必要な部分にボーリングされた全てのボーリング孔10の内壁形状の測定が終わると、孔壁・空洞形状検出装置3による測定が完了する。
【0047】
孔壁・空洞形状検出装置3による測定が完了後、パーソナルコンピュータ4のメモリに記憶された距離測定データおよび内壁の孔壁断面形状測定データならびにロッド位置データに基づいて、各ボーリング孔10の内壁の断面形状が可視化されて、パーソナルコンピュータ4のディスプレイ(図示せず)上に表示され、パーソナルコンピュータ4のディスプレイ上に表示された画像に基づいて、各ボーリング孔10内の空洞の有無、空洞がある場合には、空洞の位置、大きさおよび形状を検出することができる。
【0048】
したがって、検出された空洞に、その空洞の大きさおよび形状にしたがって、セメントミルク等の充填材を充填することによって、地表の陥没事故件数を減少させることが可能になる。
【0049】
本実施態様によれば、水路トンネル1から、上方に向けてボーリングされたボーリング孔10内に、ロッド5を挿入し、ワイヤーエンコーダ7によって、ロッド5のボーリング孔10内における位置を測定しつつ、ロッド5の先端部に取付けたレーザスキャナ式測域センサ8によって、ボーリング孔10の内壁に向けて、レーザビームを発し、ボーリング孔10の内壁に照射されるレーザビームの投光波形の位相と、ボーリング孔10の内壁によって反射され、レーザスキャナ式測域センサ8が受光したレーザビームの受光波形の位相との位相差に基づいて、ボーリング孔10の内壁までの距離を測定し、レーザビームによって、ボーリング孔10の内壁を走査して、ボーリング孔10の内壁の各点までの距離を測定して、ボーリング孔の10内壁の断面形状を測定し、得られたボーリング孔10の内壁の断面形状データに基づいて、ボーリング孔10の内壁の形状ならびにボーリング孔10の内壁に形成された空洞の位置、大きさおよび形状を検出するように構成されているから、大掛かりな測定装置を用いることなく、単に、先端部に、レーザスキャナ式測域センサ8が取付けられたロッド5をボーリング孔10内に挿入して、ロッド5のボーリング孔10内の位置を測定しつつ、レーザスキャナ式測域センサ8からボーリング孔10の内壁に向けて、レーザビームを照射し、ボーリング孔10の内壁によって反射されたレーザビームをレーザスキャナ式測域センサ8によって受光するだけで、ボーリング孔10内壁の形状ならびにボーリング孔10の内壁に形成された空洞の位置、大きさおよび形状を測定することができ、短時間に、かつ、精度よく、ボーリング孔10の内壁の形状ならびにボーリング孔10の内壁に形成された空洞の位置、大きさおよび形状を測定することが可能になる。
【0050】
また、本実施態様によれば、水路トンネル1から上方に向けて、ボーリング孔10を穿ち、下方から、ロッド5を挿入し、ロッド5の先端部に取付けられたレーザスキャナ式測域センサ8によって、ボーリング孔10の内壁形状を検出するように構成されているから、空洞があると予想される箇所が交通量の多い道路の下方であっても、交通を遮断することなく、ボーリング孔10の内壁形状が検出でき、また、空洞があると予想される箇所が住居の下方で、上方から下方に向けて、ボーリングをすることが不可能な箇所においても、容易に、ボーリング孔10の内壁形状を検出することが可能になる。
【0051】
さらに、本実施態様によれば、水路トンネル1から上方に向けて、ボーリング孔10を穿ち、下方から、ロッド5を挿入し、ロッド5の先端部に取付けられたレーザスキャナ式測域センサ8によって、ボーリング孔10の内壁形状を検出するように構成されているから、通常多くの空洞が分布しているトンネルに近い上部空洞の位置、大きさおよび形状を低コストで検出することができる。
【0052】
また、本実施態様によれば、空洞があると予想される箇所の下部に、地下トンネルがある場合に、地表からボーリングをするために、正確な測量をする必要がなく、コストや手間を省くことが可能になる。
【0053】
さらに、空洞がトンネルのすぐ上にあると予想されるときに、地表からボーリングをする場合には、トンネルぎりぎりまでボーリングをしなければならないために、使用中の水路トンネルの壁を突き破るおそれがあり、水路トンネルの壁が突き破られたときは、水路トンネル内の流水がトンネル周辺に流れ出し、周辺の空洞を大きくして、陥没事故を起こすおそれがあるが、本実施態様によれば、水路トンネル内から上方に向けて、ボーリングがされるから、かかる危険を完全に防止することが可能になる。
【0054】
本発明は、以上の実施態様に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0055】
たとえば、前記実施態様においては、ロッド5の上下方向の位置を、ワイヤーエンコーダによって測定しているが、ワイヤーエンコーダを用いて、ロッド5の上下方向の位置を測定することは必ずしも必要でなく、エンコーダを用いて、ロッド5の上下方向の位置を測定するようにしてもよい。
【0056】
また、前記実施態様においては、孔壁・空洞形状検出装置3の動作を制御するパーソナルコンピュータ4のディスプレイに、各ボーリング孔10の内壁の断面形状を表示させ、内壁の断面形状が検出されたボーリング孔10に空洞があるときは、空洞の位置、大きさおよび形状を検出するように構成されているが、パーソナルコンピュータ4のメモリに保存されているデータを取り出して、より高速処理が可能な他のコンピュータを用いて、各ボーリング孔10の内壁の断面形状が可視化し、コンピュータのディスプレイ上に表示された画像に基づいて、各ボーリング孔10内の空洞の有無、空洞がある場合には、空洞の位置、大きさおよび形状を検出するようにしてもよい。
【0057】
さらに、前記実施態様においては、水路トンネル1から、上方に向けて、ボーリング孔10を形成し、ボーリング孔10の内壁の形状ならびにボーリング孔10の内壁に形成された空洞の位置、大きさおよび形状を測定するように構成されているが、本発明は、水路トンネルから、上方に向けて、ボーリング孔10を形成する場合に限定されるものではなく、道路トンネル、鉄道トンネルなど、あらゆるトンネルに適用することができる。
【0058】
また、前記実施態様においては、ボーリング孔10が、鉛直上方に向けて形成されているが、ボーリング孔10を、鉛直上方に向けて形成することは必ずしも必要でなく、本発明は、トンネル内からあらゆる方向に向けて形成されたボーリング孔10の内壁の形状ならびにボーリング孔10の内壁に形成された空洞の位置、大きさおよび形状を測定する場合に、広く適用することができ、したがって、空洞が存在すると予想される部分の直下にトンネルが形成されていなくても、空洞が存在すると予想される部分の近傍に、トンネルが形成されていれば、ボーリング孔10の内壁の形状ならびにボーリング孔10の内壁に形成された空洞の位置、大きさおよび形状を測定することができ、短時間に、かつ、精度よく、ボーリング孔10の内壁の形状ならびにボーリング孔の内壁に形成された空洞の位置、大きさおよび形状を測定することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 水路トンネル
2 作業台車
3 孔壁・空洞形状検出装置
4 パーソナルコンピュータ
5 ロッド
6 ロッド挿入装置
7 ワイヤーエンコーダ
8 レーザスキャナ式測域センサ
9 空洞
10 ボーリング孔
11 アルミニウム枠
12 電動スライダ取り付け具
13 電動スライダ
14 スライド部
15 移動ロッドホルダー
16 固定ロッドホルダー
17 電動スライダコントローラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内から、地面をボーリングし、ロッド挿入手段によって、ボーリング孔内に、先端部に、レーザスキャナ式測域センサが取付けられたロッドを挿入し、ロッド位置測定手段によって、前記ロッドの前記ボーリング孔内における位置を測定しつつ、前記レーザスキャナ式測域センサによって、前記ボーリング孔の内壁に向けて、レーザビームを発し、前記ボーリング孔の内壁に照射されるレーザビームの投光波形の位相と、前記ボーリング孔の内壁によって反射され、前記レーザスキャナ式測域センサが受光したレーザビームの受光波形の位相との位相差に基づいて、前記ボーリング孔の内壁までの距離を測定し、前記レーザビームによって、前記ボーリング孔の内壁全体を走査して、前記ボーリング孔の内壁の各点までの距離を測定して、前記ボーリング孔の内壁の断面形状を測定し、得られた前記ボーリング孔の内壁の断面形状データに基づいて、前記ボーリング孔の内壁の形状ならびに前記ボーリング孔の内壁に形成された空洞の位置、大きさおよび形状を検出することを特徴とする孔壁・空洞形状検出方法。
【請求項2】
トンネルから上方に向けて、地面をボーリングし、ロッド位置測定手段によって、前記ロッドの前記ボーリング孔内における上下方向の位置を測定しつつ、前記ボーリング孔の内壁の形状ならびに前記ボーリング孔の内壁に形成された空洞の位置、大きさおよび形状を検出することを特徴とする請求項1に記載の孔壁・空洞形状検出方法。
【請求項3】
前記ロッド位置測定手段として、ワイヤーエンコーダが用いられることを特徴とする請求項1または2に記載の孔壁・空洞形状検出方法。
【請求項4】
前記ロッド挿入手段が、ロッドを固定する移動ロッドホルダーを備えた電動スライダと、ロッドを継ぎ足す際に、ロッドを一時的に固定する固定ロッドホルダーを備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の孔壁・空洞形状検出方法。
【請求項5】
ボーリング孔の内壁に向けて、レーザビームを発し、前記ボーリング孔の内壁に照射されるレーザビームの投光波形の位相と、前記ボーリング孔の内壁によって反射され、受光したレーザビームの受光波形の位相との位相差に基づいて、前記ボーリング孔の内壁までの距離を測定し、レーザビームによって、前記ボーリング孔の内壁を走査して、前記ボーリング孔の内壁の各点までの距離を測定し、前記ボーリング孔の内壁の断面形状を測定するレーザスキャナ式測域センサが、先端部に取付けられたロッドと、前記ボーリング孔内で、前記ロッドを内方に移動させるロッド挿入手段装置と、前記ロッドの位置情報を測定するロッド位置測定手段を備えたことを特徴とする孔壁・空洞形状検出システム。
【請求項6】
前記ロッド位置測定手段として、ワイヤーエンコーダが用いられることを特徴とする請求項5に記載のことを特徴とする孔壁・空洞形状検出システム。
【請求項7】
前記ロッド挿入手段が、ロッドを固定する移動ロッドホルダーを備えた電動スライダと、ロッドを継ぎ足す際に、ロッドを一時的に固定する固定ロッドホルダーを備えていることを特徴とする請求項5または6に記載の孔壁・空洞形状検出方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−180081(P2011−180081A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46746(P2010−46746)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(501091006)株式会社東設土木コンサルタント (5)