説明

安全なトリメチルシリルアジド組成物

【課題】 トリメチルシリルアジドは、消防法危険物第5類(自己反応性物質)に該当し、貯蔵上又は搬送上の制約を受けるので、安全且つ取扱い容易な組成物を提供する。
【解決手段】 トリメチルシリルアジドの品質を低下させないで、消防法危険物第4類まで安全性を高かめる方法として、芳香族炭化水素等の有機溶媒と所定の割合で混合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全性の高いトリメチルシリルアジド組成物、具体的には、消防法危険物第4類(引火性液体)に該当する比較的安全な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
トリメチルシリルアジドは、機能性化学品の合成に有用な化合物である。しかし、消防法危険物第5類(自己反応性物質)に該当することから(非特許文献1参照)、貯蔵上、温度、火気、更に衝撃、摩擦等に細心の注意を払わなければならない。また、搬送時には他の類の化学物質と混載できない等の取扱いに制約を受ける。
【非特許文献1】 東京化成工業(株)試薬カタログ:TOKYO KASEI ORGANIC CHEMICALS、2004年版、1675頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、トリメチルシリルアジドの品質を低下させることなく、消防法危険物第5類(自己反応性物質)から有機溶剤並みの取扱いが可能な同法危険物第4類(引火性液体)のトリメチルシリルアジド組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記の課題に対し鋭意検討した結果、トリメチルシリルアジドの品質を低下させることなく、消防法危険物第4類に属する汎用の有機溶剤程度まで安全性を高かめる方法として、汎用の有機溶剤を任意の割合で混合して、その安全性を検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち、本発明は、下記に示す安全なトリメチルシリルアジド組成物を提供するものである。
【0006】
項1. 式(1):
(CHSi−N (1)
で示されるトリメチルシリルアジド10〜70重量%と芳香族炭化水素溶媒90〜30重量%からなる安全なトリメチルシリルアジド組成物。
項2. 芳香族炭化水素溶媒が、トルエン、キシレンである項1に記載の安全な組成物。
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】
トリメチルシリルアジドを溶解する有機溶媒としては、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒、脂肪族系溶媒、芳香族系溶媒が挙げられる。例えば、エーテル系溶媒ではジエチルエーテル、メチルターシャリーブチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンが、ケトン系溶媒ではアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが、ニトリル系溶媒ではアセトニトリルが、脂肪族系溶媒ではヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、オクタンが、芳香族系溶媒ではトルエン、キシレン、ベンゼン、メシチレンが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0009】
本発明組成物の混合割合は、トリメチルシリルアジド10〜70重量%に対し有機溶媒90〜30重量%であり、好ましくはトリメチルシリルアジド50〜70重量%に対し有機溶媒50〜30重量%である。トリメチルシリルアジドの割合が70重量%を超えると、分解した際の危険性が大きく、また、10重量%未満では危険性の問題はないが、輸送および貯蔵におけるコストが増大し、工業的に不利である。
【0010】
トリメチルシリルアジドは上記の有機溶媒に室温下で溶解可能であり、その相溶性は非常に良好であり、これらの組成物は均一な溶液状態を有している。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、トリメチルシリルアジドの品質を低下させることなく、消防法危険物第5類(自己反応性物質)から有機溶剤並みの取扱いが可能な同法危険物第4類(引火性液体)のトリメチルシリルアジド組成物を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されない。
【0013】
(比較例1)
トリメチルシリルアジドの消防法危険物第5類の確認試験として圧力容器試験を行い、以下の結果を得た。
(1)圧力容器試験結果
:ランク2
トリメチルシリルアジドは、消防法危険物第5類に該当する。
【0014】
(実施例1)
トリメチルシリルアジド:7kg、トルエン:3kgを混合し、以下の溶液状の組成物を得た。
トリメチルシリルアジド:70重量%
トルエン :30重量%
実施例1の組成物を室温下、6ヶ月放置した場合のトリメチルシリルアジドの分解損失は観察されなかった。
実施例1の組成物を消防法危険物第5類の確認試験(圧力容器試験)および危険物第4類の確認試験を行い、以下の結果を得た。
(1)圧力容器試験結果
:ランク3 危険物第5類非危険物
(2)危険物第4類の確認試験結果
:第1石油類
実施例1の組成物は消防法危険物第5類に該当せず、消防法危険物第4類第1石油類に該当する。
【0015】
(実施例2)
トリメチルシリルアジド:1kg、トルエン:1kgを混合し、以下の溶液状の組成物を得た。
トリメチルシリルアジド:50重量%
トルエン :50重量%
実施例2の組成物を室温下、6ヶ月放置した場合のトリメチルシリルアジドの分解損失は観察されなかった。
実施例2の組成物を消防法危険物第5類の確認試験(圧力容器試験)および危険物第4類の確認試験を行い、以下の結果を得た。
(1)圧力容器試験結果
:ランク3 危険物第5類非危険物
(2)危険物第4類の確認試験結果
:第1石油類
実施例2の組成物は消防法危険物第5類に該当せず、消防法危険物第4類第1石油類に該当する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
(CHSi−N (1)
で示されるトリメチルシリルアジド10〜70重量%と芳香族炭化水素溶媒90〜30重量%からなる安全なトリメチルシリルアジド組成物。
【請求項2】
芳香族炭化水素溶媒が、トルエン、キシレンである請求項1に記載の安全な組成物。

【公開番号】特開2007−204464(P2007−204464A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−51153(P2006−51153)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(000222554)東洋化成工業株式会社 (52)
【Fターム(参考)】