説明

安全停止装置

【課題】エネルギー源からエネルギーの供給を受けて作動する機械を任意に停止させることができ、不測の事態への対応能力を向上させることができ、作業の安全性を向上させることができる安全停止装置の提供。
【解決手段】作業員の操作によって第1の信号S1を発信する端末器10と、端末器10からの第1の信号S1を受信して第2の信号S2を発信する受信器24と、受信器24からの第2の信号S2を受信して電源54が作業用機械52に供給する電力の伝達を遮断する制御器30と、によって、安全停止装置1を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー源からエネルギーの供給を受けて作動する機械を任意に停止させる安全停止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な作業が日々行なわれている。そして、作業員の労力軽減と作業効率の向上を図るべく、様々な作業用機械が開発されている。このような作業用機械の中には、非常に大きな力を発する可動部を有することが多い。
かかる作業用機械として、例えば、舗装道路の表層を剥離する掘削作業車を挙げることができる(特許文献1を参照)。この掘削作業車は、可動部として回転掘削放出手段を有する。この回転掘削放出手段が、舗装道路の路面に掘削溝を形成しつつ掘削で生じる破砕物を放出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−324404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した掘削作業車の回転掘削放出手段が発する力は非常に大きなものであるため、作業員等は、安全上、充分な距離を回転掘削放出手段から保っている。そして、不測の事態が生じた場合に備えて、掘削作業車には回転掘削放出手段の緊急停止装置が装備されている。
しかしながら、様々な偶然の積み重ねにより緊急停止装置が作動しない事態が発生する可能性を完全に否定することはできない。
本発明は、上記問題を解決するものであり、その目的とするところは、エネルギー源からエネルギーの供給を受けて作動する機械を任意に停止させることができ、不測の事態への対応能力を向上させるとともに、作業の安全性を向上させる安全停止装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、その課題を解決するために以下のような構成をとる。請求項1の発明に係る安全停止装置は、エネルギー源からエネルギーの供給を受けて作動する機械を任意に停止させる安全停止装置であって、作業員の操作によって第1の信号を発信する端末器と、前記端末器が発信する前記第1の信号を受信して第2の信号を発信する受信器と、前記受信器が発信する前記第2の信号を直接的または間接的に受信して前記エネルギー源が前記機械に供給するエネルギーの伝達を遮断する制御器と、を有する。
【0006】
作業員が、作動している機械を直ちに停止する場合、その作業員は、端末器を操作しての第1の信号を受信器に発信する。受信器は、第1の信号を受信すると、第2の信号を制御器に発信する。制御器は、第2の信号を受信すると、エネルギー源が機械に供給するエネルギーの伝達を遮断する。この結果、作動している機械は停止する。
エネルギー源から機械に供給されるエネルギーの伝達媒体として、例えば、電気、圧搾空気、作動油や水などの流体、光、音、熱などを挙げることができる。また、機械が外部から供給される物理的力をエネルギー源としている場合、この物理的力を伝える構造がエネルギーの伝達媒体となる。
【0007】
例えば、複数の作業員に端末器を携帯させることができる。端末器を携帯する作業員でありさえすれば、そのうちの誰であっても必要を感じた者が、作動している機械を直ちに停止させることができる。
端末器が発信する第1の信号は、無線によって受信器に発信される信号であっても良いし、有線によって受信器に発信される信号であっても良い。端末器を携帯する作業員の行動の自由度の観点から、端末器が発信する第1の信号は、無線によって受信器に発信される信号であることがより好ましい。
【0008】
例えば、安全停止装置によって停止する機械が、電気により作動する場合、電源から供給される電流を遮断するスイッチを制御器とすることができる。
安全停止装置によって停止する機械が、光、熱または音をエネルギー源として作動する場合、制御器は、光、熱または音の入力経路や伝達経路を遮断すれば良い。
安全停止装置によって停止する機械が圧搾空気や作動油をエネルギー源として駆動する場合、圧搾空気や作動油の流路を遮断する弁を制御器とすることができる。この場合、弁の設置位置は、安全停止装置によって停止する機械に近ければ近い方が好ましい。なぜならば、弁が作動した後、機械に流れる圧搾空気や作動油の量を減らすことができるからであり、弁が作動してから機械が停止するまでの時間をより短縮することができるからである。
【0009】
安全停止装置によって停止する機械が、外部から供給される回転力等の物理的力をエネルギー源として作動する場合、制御器は、その外部からの物理的力の伝達を強制的に遮断すれば良い。例えば、制御器がクラッチである場合、第2の信号がクラッチを切れば良い。
なお、受信器と制御器とは、一体に構成されていても良いし、別々に構成されていても良いのは勿論である。
【0010】
請求項2の発明に係る安全停止装置は、請求項1に記載の安全停止装置であって、前記端末器が発信する前記第1の信号は、この前記第1の信号を受信する前記受信器に対応して与えられた識別情報を含み、前記受信器は、前記第1の信号が前記識別情報を含んでいる場合にのみ、前記第2の信号を発信する。
端末器が記憶部に記憶する識別情報は、その端末器が発信する第1の信号を受信すべき受信機を特定する。第1の信号に含まれる識別情報によって、受信器は、特定の端末器が発信する前記第1の信号にのみ、反応する。これにより、複数の機械が作動している場合であっても、作業員は、目的とする機械のみを的確に停止させることができる。
【0011】
請求項3の発明に係る安全停止装置は、請求項2に記載の安全停止装置であって、前記端末器は、前記識別情報を書き換え可能に記憶する記憶部を有する。
記憶部に記憶された識別情報を書き換えることによって、同じ端末器を任意の受信機に対応付けることができる。この結果、安全停止装置によって停止する機械の数が増えても、端末器の数が増えることを防止でき、端末器の管理を容易化することができる。
【0012】
請求項4の発明に係る安全停止装置は、請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の安全停止装置であって、前記機械は、前記エネルギー源から供給されるエネルギーによって動作する可動部と、当該可動部の動作を停止させるブレーキと、を有し、前記制御器は、前記受信器が発信する前記第2の信号を直接的または間接的に受信して前記ブレーキを作動させる。
【0013】
安全停止装置によって停止する機械が、エネルギー源から供給されるエネルギーによって動作する可動部を有する場合、エネルギー源から供給されるエネルギーの伝達が遮断されても、慣性によって可動部はその動作を続けようとする。このような場合であっても、作業員が、端末器を操作すると、制御器がブレーキを作動させて、可動部の動作は停止する。
なお、可動部の動作とは、例えば、回転動作、前進動作、後進動作、打撃動作、振動動作等の物理的運動の動作のことである。
【発明の効果】
【0014】
上記のような安全停止装置であるので、エネルギー源からエネルギーの供給を受けて作動する機械を任意に停止させることができ、不測の事態への対応能力が向上させることができ、作業の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】安全停止装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る安全停止装置を、図1を参照しつつ説明する。
安全停止装置1は、端末器10と、受信器24と、制御器30と、を有する。
作業車両50は、エネルギー源としての電源54と、電気をエネルギーとして駆動する作業用機械52と、を搭載している。作業用機械52は、電気をエネルギーとして回転する回転機構58と、回転機構58の回転を停止させるブレーキ60と、を有している。回転機構58が、作業用機械52の可動部をなしている。
【0017】
端末器10は、ひとつの独立した存在であり、作業員が端末器10を常時携帯可能に構成されている。端末器10は、作業員が端末器10を首からぶら下げるための吊り紐(図示せず)を有している。
端末器10は、主スイッチ12と、記憶部14と、信号発信部16と、解除スイッチ18と、を有している。
主スイッチ12は、ON状態とOFF状態とを切り替え可能に構成されている。そして、主スイッチ12は、主スイッチ12がON状態になったことを示す信号S3を信号発信部16に送信する構成を有している。
【0018】
記憶部14には、識別情報Dが記憶されている。識別情報Dは、受信器24に対応して与えられた情報である。そして、記憶部14は、記憶している識別情報Dを書き換え可能に構成されている。
信号発信部16は、主スイッチ12からの信号S3を受信すると、無線で第1の信号S1を受信器24に発信する構成を有している。第1の信号S1は、信号発信部16が記憶部14から読み出す識別情報Dを含んでいる。
解除スイッチ18は、ON状態となった主スイッチ12をOFF状態に復帰させる構成を有しており、作業員が手動で解除スイッチ18を操作した場合にのみ、主スイッチ12をOFF状態に復帰させる構成を有している。
【0019】
受信器24と、制御器30と、は、作業車両50に設置されている。
受信器24は、信号発信部16から第1の信号S1を受信可能に構成されている。そして、受信器24は、第1の信号S1に含まれる識別情報Dが、受信器24に対応している場合にのみ、第2の信号S2を制御器30に発信する構成を有している。
制御器30は、電源54と作業用機械52とを接続する回線56上に設置されている。制御器30は、受信器24から第2の信号S2を受信した場合にのみ、回線56を遮断し、作業用機械52に電源54から供給される電力を遮断する構成を有している。
【0020】
また、制御器30は、ブレーキ60に接続されており、第2の信号S2を受信器24から受信した場合にのみ、ブレーキ60を作動させる作動信号S4を発信する構成を有している。ブレーキ60は、作動信号S4を受信すると作動して回転機構58の回転を停止させる構成を有している。
制御器30は、手動式の復帰スイッチ32を有している。復帰スイッチ32は、作業員が手動で復帰スイッチ32を操作した場合にのみ、制御器30が遮断した回線56を再び接続する構成を有している。また、復帰スイッチ32は、作業員が手動で復帰スイッチ32を操作した場合にのみ、ブレーキ60の作動を解除する構成をも有している。
【0021】
安全停止装置1は、上述した構成を有している。次に、安全停止装置1が奏する作用効果について説明する。
作業員A、B、Cの3人が、作業用機械52を使って作業を行なう。
作業員A、B、Cは、各自がひとつの端末器10を携帯し、首から端末器10をぶら下げている。作業中、作業員Aが、作業車両50の運転を行い、作業員Bが、作業用機械52の運転を行い、作業員Cは、少し離れた位置から作業全体を見守る。
【0022】
作業中、例えば、作業員Bの衣服の一部が、回転している回転機構58に巻き込まれそうになったとする。この場合、作業員A、B、Cのうちでかかる事態の発生に気づいた者が、直ちに、自分が携帯している端末器10の主スイッチ12を操作し、主スイッチ12をON状態とする。
主スイッチ12は、ON状態になると、信号S3を信号発信部16に送信する。信号発信部16は、信号S3を主スイッチ12から受信すると、無線で第1の信号S1を受信器24に発信する。第1の信号S1は、信号発信部16が記憶部14から読み出した識別情報Dを含んでいる。
【0023】
受信器24は、第1の信号S1を信号発信部16から受信する。第1の信号S1が、受信器24に対応する識別情報Dを含んでいるので、受信器24は、第2の信号S2を制御器30に発信する。
制御器30は、第2の信号S2を受信器24から受信すると、回線56を遮断し、作業用機械52に供給される電力を遮断する。作業用機械52は、電力を遮断されて停止する。同時に、制御器30は、ブレーキ60に作動信号S4を発信する。ブレーキ60は、作動信号S4を受信して作動し、回転機構58の回転が停止する。
【0024】
作業用機械52が停止し、回転機構58の回転も停止して、作業員Bは事なきを得ることができる。
作業員Cは、作業員Bの無事を確認する。次いで、作業員A、B、Cのうちで端末器10の主スイッチ12を操作した者が、自分の端末器10の解除スイッチ18を操作し、ON状態となった主スイッチ12をOFF状態に復帰させる。
そして、作業員Bが、制御器30の復帰スイッチ32を操作し、制御器30が遮断した回線56を再び接続し、ブレーキ60の作動を解除し、作業を再開する。
【0025】
作業員A、B、Cのうちの誰かが端末器10の主スイッチ12を操作してON状態とすれば、作業用機械52が停止するとともに、回転機構58の回転が停止してしまう。そして、解除スイッチ18を操作して主スイッチ12をOFF状態に戻すとともに、復帰スイッチ32を操作して遮断した回線56を再び接続しない限り、作業用機械52が再び動きはじめることはない。また、復帰スイッチ32を操作して、ブレーキ60の作動を解除しない限り、回転機構58が再び回転を開始することもない。
【0026】
複数の作業用機械52が使われている場合であっても、それぞれの作業用機械52の受信器24に対応する識別情報Dを変えることにより、端末器10と、この端末器10が作動を停止させる作業用機械52と、を対応付けることができる。したがって、停止させる必要のない作業用機械52を端末器10が停止させてしまうことが防止される。
【0027】
端末器10の記憶部14に記憶された識別情報Dを書き換えれば、同じ端末器10を別の作業用機械において2使用することができる。端末器10の数が増えることを防止でき、端末器10の管理が容易化される。
なお、端末器10は、作業員が端末器10を首からぶら下げるための吊り紐を有しているとしたが、端末器10は、作業員が端末器10を衣服に止めるためのクリップを有していても良い。
【産業上の利用可能性】
【0028】
上記のような安全停止装置であるので、機械を必要な場合に即座に停止させることができ、作業の安全性をより確実に確保するうえで有用である。
【符号の説明】
【0029】
1 安全停止装置
10 端末器
12 主スイッチ
14 記憶部
16 信号発信部
18 解除スイッチ
24 受信器
30 制御器
32 復帰スイッチ
50 作業車両
52 作業用機械
54 作業用機械の電源
56 作業用機械の電源と作業用機械とを接続する回線
58 回転機構
60 ブレーキ
S3 第1の信号
S2 第2の信号
S3 主スイッチがON状態になったことを示す信号
S4 ブレーキの作動信号
D 記憶部が記憶している識別情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー源からエネルギーの供給を受けて作動する機械を任意に停止させる安全停止装置であって、
作業員の操作によって第1の信号を発信する端末器と、
前記端末器が発信する前記第1の信号を受信して第2の信号を発信する受信器と、
前記受信器が発信する前記第2の信号を直接的または間接的に受信して前記エネルギー源が前記機械に供給するエネルギーの伝達を遮断する制御器と、を有することを特徴とする安全停止装置。
【請求項2】
前記端末器が発信する前記第1の信号は、この前記第1の信号を受信する前記受信器に対応して与えられた識別情報を含み、
前記受信器は、前記第1の信号が前記識別情報を含んでいる場合にのみ、前記第2の信号を発信することを特徴とする請求項1に記載の安全停止装置。
【請求項3】
前記端末器は、前記識別情報を書き換え可能に記憶する記憶部を有することを特徴とする請求項2に記載の安全停止装置。
【請求項4】
前記機械は、前記エネルギー源から供給されるエネルギーによって動作する可動部と、当該可動部の動作を停止させるブレーキと、を有し、
前記制御器は、前記受信器が発信する前記第2の信号を直接的または間接的に受信して前記ブレーキを作動させることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の安全停止装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−197906(P2012−197906A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63652(P2011−63652)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(511074268)株式会社常盤建設 (1)
【Fターム(参考)】