説明

安全弁を備えた電池

【課題】 電池の密閉性が高く,開弁圧の安定した安全弁を備えた電池を提供すること。
【解決手段】 電池の内圧が上昇した際に電池内の気体の一部を外部に排出させる安全弁を備えた電池が本発明の適用対象である。本発明の安全弁はさらに,電池の内側と外側とを連通する排出穴が形成された弁部材と,弁部材における電池の外側の位置に,弁部材に向かって押し付けられて配置されるとともに,排出穴を覆う弾性部材とを有している。また,弁部材と弾性部材とが接触するシール部位には,排出穴を囲む環状の内シール部位と,内シール部位を囲む環状の外シール部位とが形成されている。そして,内シール部位における接触の面圧が外シール部位における接触の面圧より高く,外シール部位における接触のシール長が内シール部位における接触のシール長より長い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,安全弁を備えた電池に関する。さらに詳細には,電池の内部圧力が上昇した時に開弁し,余分なガスを排出する安全弁を備えた電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池は,携帯電話やノート型パソコンなどの電子機器用の電源として,また,ハイブリッド自動車や電気自動車などの車両用の電源として,多岐にわたる分野で利用されている。そして,電池には,ニッケルカドミウム二次電池,ニッケル水素二次電池,リチウムイオン二次電池などがある。
【0003】
電池には,例えば内部短絡などの異常時において,その内部にガスが発生することがある。そして,電池の外形をなす電池ケースには,ガスの発生により内部圧力が上昇した時に開弁し,余分なガスを排出するための安全弁が備えられている。これにより,電池の内部圧力が,過度に上昇しないようにされている。このような機能を持つ安全弁の構造として,特許文献1が挙げられる。
【0004】
特許文献1の安全弁は,ケース内部に連通する排出穴が形成された弁部材と,シールリップ部を有する弁体とを有している。そして特許文献1には,弁体のシールリップ部を,排出穴を塞ぐように弁部材に押し付けてなるシール構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−197483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,特許文献1の図2に開示されている安全弁においては,電池の密閉性が良くないという問題があった。シールリップ部が薄いことによりシール長が短く,シール性が低いからである。このため,電池の内部圧力が安全弁の開弁圧以下であっても,電池内部のガスが徐々に流出する。これにより,電池内部の組成が変化してしまうおそれがあった。
【0007】
そこで,特許文献1の図5に開示されている安全弁においては,シールリップ部を厚くしている。シール長を長くし,シール性を向上させるためである。しかし,シールリップ部を厚くすることにより,開弁圧が安定しないという問題があった。シール長が長いことにより,シール部においては,安全弁の構成部材の寸法公差やシール部の面粗さ,シールリップ部の硬度などのばらつきの影響を受ける面積が大きくなる。これにより,シール部の面圧が,場所によって,また個体によってばらついてしまうためである。
【0008】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点の解決を目的としてなされたものである。すなわちその課題とするところは,電池の密閉性が高く,開弁圧の安定した安全弁を備えた電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の電池は,電池の外形の一部をなし,電池の内圧が上昇した際に電池内の気体の一部を外部に排出させる安全弁を備えた電池であって,安全弁は,電池の外形をなす電池ケースに取り付けられ,電池の内側と外側とを連通する排出穴が形成された弁部材と,弁部材における電池の外側の位置に,弁部材に向かって押し付けられて配置されるとともに,排出穴を覆う弾性部材とを有し,弁部材と弾性部材とが接触するシール部位には,排出穴を囲む環状の内シール部位と,内シール部位を囲む環状の外シール部位とが形成されており,内シール部位における接触の面圧が外シール部位における接触の面圧より高く,外シール部位における接触のシール長が内シール部位における接触のシール長より長いことを特徴とする電池である。
【0010】
本発明の安全弁は,面圧が高くシール長の短い内シール部位と,面圧が低くシール長の長い外シール部位との,2つのシール部位を有している。そして,外シール部位においては,シール性が高い。シール長が長いからである。一方,内シール部位においては,開弁圧が安定している。シール長が短いことにより,シール部位においては,面圧の分布のばらつきが低減されているからである。すなわち,シール性の高い外シール部位と,開弁圧が安定した内シール部位との,2つのシール部位を有しているのである。
【0011】
そして,内シール部位においては,シール長が短く,シール性は低い。つまり,内シール部位からは,電池の内部圧力が正常であるにもかかわらず,ガスが流出するおそれがある。しかし,内シール部位から流出したガスは,外シール部位より外部には流出しにくい。外シール部位においては,シール長が長く,シール性が高いからである。これにより,電池の内部圧力が正常である通常使用時において,電池の密閉性は,シール性の高い外シール部位により保つことができる。
【0012】
また,電池の内部圧力が上昇した場合には,まず,内シール部位が開弁する。そしてこの時,外シール部位も開弁することとなる。外シール部位の面圧は,内シール部位の面圧よりも低いからである。つまり,安全弁の開弁圧は,内シール部位により規定されている。さらに,内シール部位においては,シール長が短いことにより,開弁圧が安定している。これにより,安全弁の開弁圧は,開弁圧の安定している内シール部位により規定されているのである。よって,電池の密閉性が高く,開弁圧の安定した安全弁を備えた電池を構築することができる。
【0013】
また,上記に記載の電池において,弁部材のうち,弾性部材と接触するシール部位には,排出穴を囲む環状の連続的な第1の突起部と,第1の突起部を囲む環状の連続的な第2の突起部とが形成されており,第2の突起部の断面における曲率半径が,第1の突起部の断面における曲率半径より大きく,第1の突起部により内シール部位が形成され,第2の突起部により外シール部位が形成されていてもよい。また,上記に記載の電池において,弾性部材のうち,弁部材と接触するシール部位には,排出穴を囲む環状の連続的な第1の突起部と,第1の突起部を囲む環状の連続的な第2の突起部とが形成されており,第2の突起部の断面における曲率半径が,第1の突起部の断面における曲率半径より大きく,第1の突起部により内シール部位が形成され,第2の突起部により外シール部位が形成されていてもよい。また,弁部材と弾性部材とのシール部位には,排出穴を囲む第1のリング部材と,第1のリング部材を囲む第2のリング部材とが挟み込まれており,第2のリング部材のシール部位となる部分の断面における曲率半径が,第1のリング部材のシール部位となる部分の断面における曲率半径より大きく,第1のリング部材により内シール部位が形成され,第2のリング部材により外シール部位が形成されていてもよい。これらのように,シール部位の構成には,様々なパターンが考えられる。そして,これらシール部位の構成はいずれも,電池の密閉性が高く,開弁圧の安定した安全弁を備えた電池を構築することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば,電池の密閉性が高く,開弁圧の安定した安全弁を備えた電池が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る電池の斜視図である。
【図2】第1の形態の安全弁の断面図である。
【図3】図2中のX−X位置における断面図である。
【図4】安全弁のカバーの斜視図である。
【図5】第2の形態の安全弁の組付け前における断面図である。
【図6】第3の形態の安全弁の組付け前における断面図である。
【図7】第4の形態の安全弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の形態]
以下,本発明を具体化した最良の形態について,図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,ニッケル水素二次電池について本発明を具体化したものである。図1に,本形態に係る電池10を示す。電池10は,電極体20および電解液である水酸化カリウム水溶液を電池ケース60の内部に収容してなるニッケル水素二次電池である。
【0017】
電池ケース60は,電池ケース本体61とケース蓋62とを備えている。電池ケース本体61は,図1中上部が開口しており,その開口部より電極体20は挿入されている。その後,電池ケース本体61の開口部は,ケース蓋62が接合されることにより封止されている。また,ケース蓋62からは,正極端子31および負極端子41が突出している。
【0018】
電極体20は,複数枚の正極板30および負極板40を,これらの間にセパレータ50を挟みこみつつ交互に積層してなるものである。正極板30は,正極端子31と接続されている。負極板40は,負極端子41と接続されている。
【0019】
正極板30としては,例えば,集電体である発泡ニッケル基板に,活物質として水酸化ニッケルを充填したものを用いることができる。負極板40としては,例えば,パンチングメタルなどの負極基板に,活物質として水素吸蔵合金を充填したものを用いることができる。セパレータ50としては,例えば,親水化処理された合成繊維からなる不織布を用いることができる。
【0020】
さらに,ケース蓋62には,安全弁100が備えられている。図2は,本形態の安全弁100の断面図である。図2に示すように,安全弁100は,弾性部材110と,弾性部材110を収容するための弁部材120と,弁部材120の開口部121を封止するためのカバー130とで構成されている。
【0021】
弾性部材110は,電解液を透過させず,電解液に対する耐性を有し,ゴム弾性を有する材質により形成されている。弾性部材110に好適な材質として,エチレンプロピレンゴム(EPDM),ニトリルゴム(NBR),スチレンブタジエンゴム(SBR)などが例示される。なお,本形態においては,EPDMを用いている。
【0022】
また,弾性部材110は,弁部材120およびカバー130と組付けられる前においては,円柱形状である。すなわち,弁部材120およびカバー130と組付けられる前の弾性部材110の下面は,平面である。しかし,図2に示す組付け後の状態において,弾性部材110の下面は,突起部125,126に向かって押圧されることにより,へこんでいる。
【0023】
弁部材120は,図2に示すように,有底円筒形状をしている。そして,図2において上面の開口している部分を開口部121とし,開口部121と対向する底面部分を底部122としている。また,開口部121から底部122の縁部までの円筒形状をしている部分を筒部123としている。
【0024】
底部122の中央には,電池ケース60の内部と連通する排出穴124が形成されている。また,底部122の上面には,排出穴124の外周を囲むように,環状の連続した突起部125が形成されている。さらには,突起部125の外周を囲むように,環状の連続した突起部126が形成されている。突起部125,126はともに,その断面が凸状であり,頂点において丸みを帯びた形状である。
【0025】
図3は,図2中のX−X位置における断面図である。また,図2は,図3中のZ−Z位置における断面図である。筒部123の内側の側面のうち,図2中開口部121の下には,逃し部127が形成されている。逃し部127は,図3に示す断面においては円形状をしている。
【0026】
さらに図3に示すように,筒部123の内側の側面には,複数の凸部128が形成されている。凸部128は,図2における上下方向に筋状に形成されている。筒部123の内側の側面のうち凸部128が形成されているのは,図2中逃し部127の下から底部122の上面までの間である。加えて,この部分のうち凸部128が形成されていない部分においては,図3に示すような凹部129となっている。
【0027】
そして,弾性部材110は,図3に示すように,複数の凸部128により,弁部材120の中心に位置するように保持されている。また,弁部材120の内部には,弾性部材110の側面と凹部129とで囲まれた複数の隙間Aが形成されている。隙間Aは,図2に示すように,逃し部127と連通している。
【0028】
弁部材120は,電解液を透過させず,電解液に対して耐性を有する材質により形成されている。このような材質としては,ポリプロピレン(PP),PPとポリフェニレンエーテル(PPE)との合成樹脂ポリマーアロイであるPP/PPE,Alなどの金属材料などが例示される。なお,本形態においては,PP/PPEを用いている。
【0029】
カバー130は,図2に示すように,円筒部131とフランジ部132とを有している。また,カバー130には,その中央を上下に貫通する貫通穴133が形成されている。そして,弁部材120とカバー130とは,図2においてYで示す位置,すなわち,開口部121とフランジ部132とにおいて,例えば超音波溶着を用いることにより接合されている。
【0030】
図4は,カバー130を,図2において下方より見た時の斜視図である。図4に示すように,フランジ部132の下面には,2つの溝部134が十字状に交差するように形成されている。そして,溝部134は,弁部材120とカバー130とが組付けられた際には,逃し部127と連通している。よって,図2に示すように,隙間Aは,逃し部127,溝部134,貫通穴133を介し,電池10の外部と連通している。
【0031】
カバー130は,電解液を透過させず,電解液に対して耐性を有する材質により形成されている。このような材質としては,PP,PP/PPE,Alなどの金属材料などが例示される。なお,本形態においては,PP/PPEを用いている。
【0032】
また,弁部材120とカバー130とを接合する際には,弾性部材110に,底部122の上面とフランジ部132の下面とにより圧縮応力がかけられる。このため,弾性部材110の上面は,フランジ部132の下面と密着している。また,弾性部材110の下面は,底部122の上面と密着している。さらに,弾性部材110の下面は,底部122の上面に向かって押圧されることにより,突起部125,126の形状に沿ってへこんでいる。これにより,電池10は,弾性部材110と突起部125,126との密着箇所である2つのシール部により密閉されている。
【0033】
ここにおいて,突起部125の断面における曲率半径は,できるだけ小さくなるように設定されている。一方,突起部126の断面における曲率半径は,突起部125の断面における曲率半径よりも大きくなるように設定されている。特に限定する訳ではないが,本形態においては,突起部125の断面における曲率半径を,0.4mmとしている。また,突起部126の断面における曲率半径を,0.8mmとしている。
【0034】
突起部に弾性体を押し付けることによるシール部においては,一般に,突起部の断面における曲率半径が小さいほど,突起部と弾性体とが接触する長さであるシール長は短くなる。またこれとは反対に,突起部の断面における曲率半径が大きいほど,シール長は長くなる。
【0035】
つまり,図2において,弾性部材110と突起部125とが接触している長さであるシール長は,できるだけ短くされている。また,弾性部材110と突起部126とのシール長は,弾性部材110と突起部125とのシール長よりも長くされている。
【0036】
そして,電池10の内部圧力が正常である通常使用時において,電池10の密閉性は,シール長の長い弾性部材110と突起部126とのシール部により保たれている。
【0037】
突起部に弾性体を押し付けることによるシール部においては,一般に,シール長が長いほどシール性は高くなる。しかし,前述したように,弾性部材110と突起部125とのシール部においては,シール長ができるだけ短くされているため,シール性は低い。つまり,弾性部材110と突起部125とのシール部からは,電池10の内部圧力が正常であるにもかかわらず,電池10の内部のガスが徐々に流出してしまうおそれがあるのである。
【0038】
そして,弾性部材110と突起部125とのシール部から流出したガスは,弾性部材110と突起部126とのシール部に到達する。しかし,弾性部材110と突起部126とのシール部からは,ガスが流出しにくくなっている。弾性部材110と突起部126とのシール長は長いため,シール性が高いからである。すなわち,電池10の密閉性は,シール性の高い弾性部材110と突起部126とのシール部により保たれている。よって,電池10内部の組成が変化することにより,電池性能が低下することを防止することができる。
【0039】
また,電池10には,内部短絡などの異常時において,電池10の内部にガスが発生する場合がある。この場合には,安全弁100が開弁して余分なガスを排出することにより,電池10の内部圧力が過度に上昇しないようにされている。
【0040】
本形態において電池10の内部圧力が上昇した場合には,まず,弾性部材110と突起部125との間に隙間ができる。すなわち,弾性部材110と突起部125とのシール部が開弁するのである。さらにこの時には,弾性部材110と突起部126とのシール部においても開弁することとなる。前述したように,突起部126の曲率半径は,突起部125の曲率半径よりも大きい。このため,弾性部材110と突起部126とのシール部の面圧は,弾性部材110と突起部125とのシール部の面圧よりも低いからである。このように,安全弁100の開弁圧は,弾性部材110と突起部125とのシール部により規定されている。
【0041】
そして,弾性部材110と突起部125,126との2つのシール部が開弁することにより,排出穴124と隙間Aとは連通される。これにより,発生した余分なガスは,隙間A,逃し部127,溝部134,貫通穴133を通過し,電池10の外部に排出される。その後,電池10の内部圧力は,弾性部材110と突起部125とのシール部の開弁圧よりも低くなる。このため,弾性部材110は,突起部125および突起部126と再び密着することとなる。
【0042】
ところで,突起部に弾性体を押し付けることによるシール部においては,一般に,シール長が短いほど開弁圧が安定する。シール部においては,シール長が短いほど安全弁100の構成部材の寸法公差やシール部の面粗さ,弾性部材110の硬度などのばらつきの影響を受ける面積は小さくなる。これにより,面圧の分布のばらつきが低減されるからである。よって,シール長の短い弾性部材110と突起部125とのシール部においては,開弁圧が安定している。
【0043】
すなわち,安全弁100の開弁圧は,開弁圧の安定した弾性部材110と突起部125とのシール部により規定されているのである。よって,電池10の内部圧力の上昇を,適切に抑制することができる。
【0044】
さらに,本形態においては,曲率半径の小さい突起部125により内シール部位が形成されており,曲率半径の大きい突起部126により外シール部位が形成されている。そして,内シール部位の面圧が外シール部位の面圧より高く,外シール部位のシール長が内シール部位のシール長より長くされている。これにより,内シール部位により開弁圧を規定し,外シール部位により電池10の密閉性を保つような構成とされている。
【0045】
例えば,この構成を逆にした場合には,外シール部位により開弁圧を規定し,内シール部位により電池10の密閉性を保つような構成となる。すなわち,外シール部位の面圧が内シール部位の面圧より高く,内シール部位のシール長が外シール部位のシール長より長いこととなる。このような構成においては,電池10の内部圧力が内シール部位の開弁圧より高く外シール部位の開弁圧より低い場合,電池10の密閉性を保つことができない。面圧の低い内シール部位が開弁し,シール長の短い外シール部位からガスが流出してしまうからである。よって,曲率半径の小さい突起部125が内側に,曲率半径の大きい突起部126が外側に形成されているのである。
【0046】
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係る安全弁100においては,排出穴124が形成された弁部材120の底部122に,排出穴124を覆うように弾性部材110を押し付けることによりシール部が形成されている。また,底部122には,弾性部材110とによりシール部を形成する箇所において,内側に位置する曲率半径が小さい突起部125と,外側に位置する曲率半径が大きい突起部126とが形成されている。このため,内シール部位の面圧が外シール部位の面圧より高く,外シール部位のシール長が内シール部位のシール長より長い。これにより,電池10の密閉性は,外シール部位により保たれている。また,安全弁100の開弁圧は,開弁圧の安定した内シール部位により規定されている。従って,電池の密閉性が高く,開弁圧の安定した安全弁を備えた電池が実現されている。
【0047】
なお,本実施の形態は単なる例示に過ぎず,本発明を何ら限定するものではない。従って本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲で種々の改良,変形が可能である。例えば,本実施の形態においては,ニッケル水素二次電池について本発明を適用したが,その他の電池についても本発明を適用することができる。
【0048】
[第2の形態]
第2の形態について説明する。本形態の安全弁は,弁部材に突起部が形成されている第1の形態の安全弁に対し,弾性部材に突起部が形成されている点において異なる。その他の電池10の構成は,本形態においても,第1の形態と同様である。
【0049】
図5は,本形態の安全弁200の,組付け前における断面図である。安全弁200は,第1の形態と同じカバー130と,第1の形態とは異なる弾性部材210および弁部材220とにより構成される。弾性部材210,弁部材220,カバー130にはそれぞれ,第1の形態において例示した材質を好ましく用いることができる。
【0050】
図5に示すように,弁部材220の底部222の上面は,平面である。一方,弾性部材210の下面には,環状の連続した突起部211,212が形成されている。突起部211,212はともに,その断面が凸状であり,頂点において丸みを帯びた形状である。
【0051】
そして,突起部211の位置は,弾性部材210と弁部材220とが組付けられた際に,排出穴124の外周を囲むように底部222の上面と接触するような位置である。さらに,突起部212の位置は,突起部211の外周を囲むように底部222の上面と接触するような位置である。
【0052】
本形態の安全弁200においても,弁部材220とカバー130とを接合する際には,弾性部材210に,底部222の上面とフランジ部132の下面とにより圧縮応力がかけられる。これにより,電池10は,突起部211,212と底部222との密着箇所である2つのシール部により密閉されることとなる。
【0053】
そして,突起部211の断面における曲率半径は,できるだけ小さくなるように設定されている。一方,突起部212の断面における曲率半径は,突起部211の断面における曲率半径よりも大きくなるように設定されている。特に限定する訳ではないが,本形態においては,突起部211の断面における曲率半径を,0.4mmとしている。また,突起部212の断面における曲率半径を,0.8mmとしている。
【0054】
つまり,突起部211と底部222とのシール長は,できるだけ短くされている。また,突起部212と底部222とのシール長は,突起部211と底部222とのシール長よりも長くされている。このため,突起部212と底部222とのシール部においては,シール長が長いことにより,シール性が高い。そして,本形態においても,電池10の通常使用時における密閉性は,外シール部位であるシール性の高い突起部212と底部222とのシール部により保たれている。
【0055】
また,突起部211と底部222とのシール部の面圧は,突起部212と底部222とのシール部の面圧よりも高い。さらに,突起部211と底部222とのシール部においては,シール長が短いことにより,開弁圧が安定している。すなわち,本形態においても,安全弁200の開弁圧は,内シール部位である開弁圧の安定した突起部211と底部222とのシール部により規定されている。
【0056】
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係る安全弁200においては,排出穴124が形成された弁部材220の底部222に,排出穴124を覆うように弾性部材210を押し付けることによりシール部が形成されている。そして,弾性部材210には,底部222とによりシール部を形成する箇所において,内側に位置する曲率半径が小さい突起部211と,外側に位置する曲率半径が大きい突起部212とが形成されている。このため,内シール部位の面圧が外シール部位の面圧より高く,外シール部位のシール長が内シール部位のシール長より長い。これにより,電池10の密閉性は,外シール部位により保たれている。また,安全弁200の開弁圧は,開弁圧の安定した内シール部位により規定されている。従って,電池の密閉性が高く,開弁圧の安定した安全弁を備えた電池が実現されている。
【0057】
なお,本実施の形態は単なる例示に過ぎず,本発明を何ら限定するものではない。従って本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲で種々の改良,変形が可能である。例えば,本実施の形態においては,ニッケル水素二次電池について本発明を適用したが,その他の電池についても本発明を適用することができる。
【0058】
[第3の形態]
第3の形態について説明する。本形態の安全弁は,突起部によりシール部を形成している第1の形態の安全弁に対し,Oリングを用いてシール部を形成している点において異なる。その他の電池10の構成は,本形態においても,第1の形態と同様である。
【0059】
図6は,本形態の安全弁300の,組付け前における断面図である。安全弁300は,第1の形態と同じカバー130と,第1の形態とは異なる弾性部材310および弁部材320とにより構成される。加えて,安全弁300は,構成部材として,Oリング330,340を備えている。弾性部材310,弁部材320,カバー130にはそれぞれ,第1の形態において例示した材質を好ましく用いることができる。
【0060】
図6に示すように,弾性部材310の下面は,平面である。さらに,弁部材320の底部322の上面においても,平面である。つまり,弾性部材310および弁部材320には,突起部が形成されていない。しかし,本形態においては,弾性部材310の下面と弁部材320の底部322の上面との間に,Oリング330,340が組付けられる。
【0061】
Oリング330,340はともに,その断面が楕円状をしたOリングである。Oリング330,340の材質としては,電解液を透過させず,電解液に対して耐性を有するものであれば,ゴムや樹脂,金属のものを好ましく用いることができる。なお,本形態においては,Oリング330,340にいずれも,EPDMを用いている。
【0062】
図6に示すように,Oリング330の内径は,弁部材320の排出穴124よりも大きい。また,Oリング340の内径は,Oリング330の外形よりも大きい。そして,Oリング330,340は,安全弁300に組付けられる際には,排出穴124の外周を囲むように,弾性部材310の下面と底部322の上面との間に挟み込まれる。
【0063】
本形態の安全弁300においては,弁部材320とカバー130とを接合する際には,弾性部材310およびOリング330,340に,底部322の上面とフランジ部132の下面とにより圧縮応力がかけられる。これにより,電池10は,Oリング330,340による2つのシール部により密閉されることとなる。
【0064】
ここにおいて,Oリング330の断面は,図6に示すように,Oリング330の軸方向に長い縦長の楕円形状をしている。すなわち,Oリング330のシール部となる部分の断面における曲率半径は,できるだけ小さくなるように設定されている。一方,Oリング340の断面は,Oリング340の直径方向に長い横長の楕円形状をしている。すなわち,Oリング340のシール部となる部分の断面における曲率半径は,Oリング330のシール部となる部分の断面における曲率半径よりも大きくなるように設定されている。特に限定する訳ではないが,本形態においては,Oリング330のシール部となる部分の断面における曲率半径を,0.4mmとしている。また,Oリング340のシール部となる部分の断面における曲率半径を,0.8mmとしている。
【0065】
つまり,Oリング330によるシール長は,できるだけ短くされている。また,Oリング340によるシール長は,Oリング330によるシール長よりも長くされている。このため,Oリング340によるシール部においては,シール長が長いことにより,シール性が高い。そして,本形態においても,電池10の通常使用時における密閉性は,外シール部位であるシール性の高いOリング340によるシール部により保たれている。
【0066】
また,Oリング330によるシール部の面圧は,Oリング340によるシール部の面圧よりも高い。さらに,Oリング330によるシール部においては,シール長が短いことにより,開弁圧が安定している。すなわち,本形態においても,安全弁300の開弁圧は,内シール部位である開弁圧の安定したOリング330によるシール部により規定されている。
【0067】
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係る安全弁300においては,排出穴124が形成された弁部材320の底部322に,排出穴124を覆うように弾性部材310を,これらの間にOリング330,340を挟み込みつつ押し付けることによりシール部が形成されている。そして,シール部の曲率半径の小さいOリング330が内側に,シール部の曲率半径の大きいOリング340が外側に配置されている。このため,内シール部位の面圧が外シール部位の面圧より高く,外シール部位のシール長が内シール部位のシール長より長い。これにより,電池10の密閉性は,外シール部位により保たれている。また,安全弁300の開弁圧は,開弁圧の安定した内シール部位により規定されている。従って,電池の密閉性が高く,開弁圧の安定した安全弁を備えた電池が実現されている。
【0068】
なお,本実施の形態は単なる例示に過ぎず,本発明を何ら限定するものではない。従って本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲で種々の改良,変形が可能である。例えば,本実施の形態においては,ニッケル水素二次電池について本発明を適用したが,その他の電池についても本発明を適用することができる。
【0069】
また,本形態においては,外側のOリングのシール部の曲率半径を,内側のOリングのシール部の曲率半径よりも大きくなるように設定しているが,これに限るものではない。例えば,内側のOリングに外側のOリングよりも硬い材質のものを用いた場合,内側のOリングのシール部の曲率半径と外側のOリングのシール部の曲率半径とが同じであっても良い。このような構成とすることにより,内シール部位の面圧を,外シール部位の面圧よりも高くすることができる。また,外側のOリングのつぶし代が,内側のOリングのつぶし代よりも大きくなる。これにより,外シール部位のシール長を,内シール部位のシール長よりも長くすることができる。よって,このような構成であっても,本形態と同様の効果を得ることができる。
【0070】
[第4の形態]
第4の形態について説明する。本形態の安全弁は,突起部が2つある第1の形態の安全弁に対し,突起部が1つである点において異なる。その他の電池10の構成は,本形態においても,第1の形態と同様である。
【0071】
図7は,本形態の安全弁400の断面図である。安全弁400は,第1の形態と同じ弾性部材110およびカバー130と,第1の形態とは異なる弁部材420とにより構成されている。弾性部材110,弁部材420,カバー130にはそれぞれ,第1の形態において例示した材質を好ましく用いることができる。
【0072】
図7に示すように,弁部材420の底部422の上面には,排出穴124の外周を囲むように,環状の連続した突起部425が形成されている。突起部425は,その断面が凸状であり,頂点において丸みを帯びた形状である。
【0073】
本形態の安全弁400においても,弁部材420とカバー130とを接合する際には,弾性部材110に,底部422の上面とフランジ部132の下面とにより圧縮応力がかけられている。そして,弾性部材110の下面は,底部422の上面に圧迫されることにより,突起部425の形状に沿ってへこんでいる。これにより,電池10は,弾性部材110の下面と突起部425との密着箇所であるシール部により密閉されている。
【0074】
ここにおいて,本形態の突起部425の断面における曲率半径は一様でない。すなわち,突起部425においては,その頂点より排出穴124に近い内径側と,頂点より筒部123に近い外径側とで曲率半径が異なっている。そして,突起部425の内径側の断面における曲率半径は,できるだけ小さくなるように設定されている。一方,突起部425の外径側の断面における曲率半径は,突起部425の内径側の断面における曲率半径よりも大きくなるように設定されている。特に限定する訳ではないが,本形態においては,突起部425の内径側の断面における曲率半径を,0.4mmとしている。また,突起部425の外径側の断面における曲率半径を,0.8mmとしている。
【0075】
つまり,弾性部材110と突起部425の内径側とのシール長は,できるだけ短くされている。また,弾性部材110と突起部425の外径側とのシール長は,弾性部材110と突起部425の内径側とのシール長よりも長くされている。このため,弾性部材110と突起部425の外径側とのシール部においては,シール長が長いことにより,シール性が高い。そして,本形態においても,電池10の通常使用時における密閉性は,外シール部位であるシール性の高い弾性部材110と突起部425の外径側とのシール部により保たれている。
【0076】
また,弾性部材110と突起部425の内径側とのシール部の面圧は,弾性部材110と突起部425の外径側とのシール部の面圧よりも高い。さらに,弾性部材110と突起部425の内径側とのシール部においては,シール長が短いことにより,開弁圧が安定している。すなわち,本形態においても,安全弁400の開弁圧は,内シール部位である開弁圧の安定した弾性部材110と突起部425の内径側とのシール部により規定されている。
【0077】
さらに,本形態においては,第1の形態と比較し,突起部の形状が簡素化されている。このため,弁部材の成形時における樹脂の流れが向上するため,射出圧を低くすることができる。これにより,弁部材にバリが発生するなどの不良率を低減させることができる。
【0078】
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係る安全弁400においては,排出穴124が形成された弁部材420の底部422に,排出穴124を覆うように弾性部材110を押し付けることによりシール部が形成されている。また,弁部材420の底部422には,弾性部材110とによりシール部を形成する箇所において,内径側の曲率半径が小さく,外径側の曲率半径が大きい突起部425が形成されている。このため,内シール部位の面圧が外シール部位の面圧より高く,外シール部位のシール長が内シール部位のシール長より長い。これにより,電池10の密閉性は,外シール部位により保たれている。また,安全弁400の開弁圧は,開弁圧の安定した内シール部位により規定されている。従って,電池の密閉性が高く,開弁圧の安定した安全弁を備えた電池が実現されている。
【0079】
なお,本実施の形態は単なる例示に過ぎず,本発明を何ら限定するものではない。従って本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲で種々の改良,変形が可能である。例えば,本実施の形態においては,ニッケル水素二次電池について本発明を適用したが,その他の電池についても本発明を適用することができる。
【0080】
また例えば,本形態においては,内径側の曲率半径が小さく,外径側の曲率半径が大きい突起部を,弁部材の底部の上面に形成しているが,これに限るものではない。弁部材の底部の上面を平面とし,内径側の曲率半径が小さく,外径側の曲率半径が大きい突起部を弾性部材の下面に形成しても本形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0081】
10…電池
100…安全弁
110…弾性部材
120…弁部材
124…排出穴
125…突起部
126…突起部
130…カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の外形の一部をなし,電池の内圧が上昇した際に電池内の気体の一部を外部に排出させる安全弁を備えた電池において,
前記安全弁は,
前記電池の外形をなす電池ケースに取り付けられ,前記電池の内側と外側とを連通する排出穴が形成された弁部材と,
前記弁部材における電池の外側の位置に,前記弁部材に向かって押し付けられて配置されるとともに,前記排出穴を覆う弾性部材とを有し,
前記弁部材と前記弾性部材とが接触するシール部位には,前記排出穴を囲む環状の内シール部位と,前記内シール部位を囲む環状の外シール部位とが形成されており,
前記内シール部位における接触の面圧が前記外シール部位における接触の面圧より高く,
前記外シール部位における接触のシール長が前記内シール部位における接触のシール長より長いことを特徴とする電池。
【請求項2】
請求項1に記載の電池において,
前記弁部材のうち,前記弾性部材と接触するシール部位には,前記排出穴を囲む環状の連続的な第1の突起部と,前記第1の突起部を囲む環状の連続的な第2の突起部とが形成されており,
前記第2の突起部の断面における曲率半径が,前記第1の突起部の断面における曲率半径より大きく,前記第1の突起部により前記内シール部位が形成され,前記第2の突起部により前記外シール部位が形成されていることを特徴とする電池。
【請求項3】
請求項1に記載の電池において,
前記弾性部材のうち,前記弁部材と接触するシール部位には,前記排出穴を囲む環状の連続的な第1の突起部と,前記第1の突起部を囲む環状の連続的な第2の突起部とが形成されており,
前記第2の突起部の断面における曲率半径が,前記第1の突起部の断面における曲率半径より大きく,前記第1の突起部により前記内シール部位が形成され,前記第2の突起部により前記外シール部位が形成されていることを特徴とする電池。
【請求項4】
請求項1に記載の電池において,
前記弁部材と前記弾性部材とのシール部位には,前記排出穴を囲む第1のリング部材と,前記第1のリング部材を囲む第2のリング部材とが挟み込まれており,
前記第2のリング部材のシール部位となる部分の断面における曲率半径が,前記第1のリング部材のシール部位となる部分の断面における曲率半径より大きく,前記第1のリング部材により前記内シール部位が形成され,前記第2のリング部材により前記外シール部位が形成されていることを特徴とする電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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