説明

安全表示装置

【課題】屋内施設の特定位置における歩行者の安全を図る安全表示装置を提供する。
【解決手段】屋内施設内の通路6a、6bは交差領域7で互いに直交し、交差領域7の4面には通路遮蔽物8a〜8dが設けられている。各通路の交差領域7への入り口付近の床面には圧電素子群を配設した検知ゾーン1a〜1dを設ける。検知ゾーン1a〜1dの圧電素子群は、導線3a〜3dにより表示ゾーン4の光源と電気的に接続されている。歩行者9aが検知ゾーン1aに到達して荷重が印加されると圧電素子群に電力が発生し、導線3aで電気エネルギーが表示ゾーン4の発光素子群に伝達され、出力光が出射される。異なる方向から交差領域に接近する歩行者9bに歩行者9aの存在を報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内施設などの特定位置における歩行者の安全を図るために設けた安全表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
民間会社などの事務棟や公共施設などの屋内施設内においては、通路が直交する交差領域や曲がり角(コーナー領域)などが設けられている。これらの交差領域やコーナー領域において、異なる方向から来た歩行者同士の出会い頭の衝突事故が発生する場合がある。その原因は、壁面などの通路遮蔽物により視界が遮られて死角になっているため、異なる方向から来る歩行者を相互に認識できないことによるものである。
【0003】
ところで、物体の重量が印加されると電気エネルギーを発生する圧電素子が知られている。圧電素子は、センサーなどの種々の用途に利用されているが、例えば特許文献1には、歩行者や車両が通過する際に圧電素子に発生する電力を取り出すことが開示されている。すなわち、圧電素子を電源として利用することが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−197704
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のような交差領域などにおける歩行者の衝突防止対策として、曲がり角の部分にミラーを設置し、死角を減らす方法がある。しかし一般的に使用されている凸面鏡は、物が小さく映るために視認性が悪いという問題があった。またある程度の設置スペースが必要であり、狭い通路には設置が難しいという問題があった。さらに、歩行者が特定領域に存在することを特許文献1に記載されたような圧電素子を利用することも考えられるが、特許文献1には、このような応用に対する具体的な構成が記載されていないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであって、施設内の特定位置における歩行者や台車などの物体の衝突防止を図るために、圧電素子の発生電力を用いた安全表示装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明の安全表示装置は、施設内の特定位置における第1の歩行者または物体の通行を検知する検知手段と、前記第1の歩行者または物体の通行を表示する表示手段と、前記検知手段と前記表示手段とを電気的に連結する手段とを備え、前記表示手段は前記第1の歩行者または物体の通行方向とは異なる方向から通行する第2の歩行者が視認できる位置に設置されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の安全表示装置は、前記第2の歩行者は、前記第1の歩行者または物体の通行を直接には見ることができない遮蔽物が設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の安全表示装置は、前記表示手段は、出力光に指向性がある光源を有することを特徴とする。
【0010】
前記光源は複数の発光素子を有し、各発光素子の出力光の指向性を異ならせたことを特徴とする、請求項3に記載の安全表示装置。
【0011】
また、本発明の安全表示装置は、前記施設内に交差領域を有する通路を設け、前記各通路の前記交差領域への入口付近に前記検知手段を設けたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の安全表示装置は、前記交差領域に前記表示手段を設け、当該表示手段は前記第1の歩行者または物体の通行する方向と対面する方向に発光面が形成されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の安全表示装置は、前記表示手段は、前記第1の歩行者または物体の通行方向の左右両側の前記遮蔽物に設けたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の安全表示装置は、前記施設内にコーナー領域を有する通路を設け、前記各通路の前記コーナー領域への入口付近に前記検知手段を設けたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の安全表示装置は、前記施設内に設けた通路に向けて開放されるドアを有し、当該ドアの前記開放側とは反対側に前記検知手段を設けたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の安全表示装置は、前記遮蔽物に前記表示手段を設けたことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の安全表示装置は、前記検知手段は帯状に形成されており、複数の圧電素子が配列されていることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の安全表示装置は、前記検知手段と前記表示手段とを電気的に連結する手段は導線であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の安全表示装置は、前記検知手段と前記表示手段とを電気的に連結する手段は、前記検知手段側に設けた送信アンテナと前記表示手段側に設けた受信アンテナ間の電波であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、次のような効果が得られる。(1)交差領域やコーナー領域に、歩行者や台車などの物体が近づいてきているかどうかを表示する機能を有する安全表示装置を安価に実現できる。(2)安全表示装置を床面や壁面に埋め込んだ状態で使用するので、設置スペースをほとんど取らず、スペースを節約できる。(3)圧電素子を組み込んだ床材自体がセンサと電源の機能を兼ねており、電力供給が不要である。(4)構成要素が少なく、施工性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明の実施形態における安全表示装置を示す説明図である。図1において、屋内施設内の通路6a、6bは交差領域7で互いに直交する。交差領域7の4面には、壁面やパーティションなどの通路遮蔽物8a〜8dが設けられている。各通路の交差領域7への入り口付近の床面には、圧電素子群を配設した検知ゾーン1a〜1dを取り付けている。これらの検知ゾーン1a〜1dの圧電素子群は、導線3a〜3dにより表示ゾーン4の光源、例えばLED単体、または複数のLEDからなる発光素子群、と電気的に接続されている。検知ゾーン1a〜1dは、通路の床材に直接埋め込むことができ、圧電素子群は歩行者や台車などの物体検知のセンサと、電源の機能を兼ねており電力供給が不要である。
【0022】
表示ゾーン4は、交差領域7の床面に設けられている。表示ゾーン4の表面には、透明または半透明の強化ガラスや透明プラスチックが被覆されており、光源の発光素子群を機械的な押圧力から保護している。また、発光素子群の出力光が外部に出射して表示ゾーン4を照明できるようにしてある。導線3a〜3dは、交差領域7の床面下に配線されている。
【0023】
検知ゾーン1a〜1dは、通路遮蔽物8a〜8dの端面、すなわち、交差領域7の入り口から1〜2m程度の位置に帯状に設ける。検知ゾーン1a〜1dをあまり交差領域7に近い位置に設置すると、異なる方向から交差領域に接近してくる歩行者に対する警告の表示が遅れてしまうからである。例えば、歩行者9a(第1の歩行者)が交差領域7に接近し、検知ゾーン1aに到達して荷重が印加されると圧電素子群に電力が発生し、導線3aで電気エネルギーが表示ゾーン4の発光素子群に伝達され、発光素子群から出力光が出射される。
【0024】
表示ゾーン4には、4方向から交差領域7に進行してくる歩行者に対面する位置に、それぞれ発光面を設けている。例えば、歩行者9aの進行方向には発光面4aが設けられている。このため、歩行者9aが検知ゾーン1aに到達すると表示部4aから発光素子群の出力光が出射され、発光面4aが明るく照らされる。歩行者9aとは異なる方向から交差領域7に進行してくる歩行者9b(第2の歩行者)は、発光面4aが照明されることにより、歩行者9aが交差領域7に進行してくることを事前に判断できる。圧電素子群の発生エネルギー量は少なく短時間の発光しか行えないが、出力光に指向性を持たせることで、報知を必要とする人のみに視認性の高い表示を行う。
【0025】
このようにして、特定方向に発光面を有する表示ゾーン4を設けることにより、歩行者9bが歩行者9aと交差領域7で出会い頭に衝突する事故の発生を防止することができる。歩行者9bが検知ゾーン1dに到達すると、表示ゾーン4の発光面4dが明るくされる。なお、検知ゾーン1a〜1dでは、歩行者のみならず物体、例えば台車などの交差領域7への進行も検知することができる。この場合には、歩行者と台車、または台車同士が交差領域7で出会い頭に衝突する事故の発生を防止することができる。
【0026】
図2は、図1を立体的に表示した例を示す説明図である。図1で説明したように、歩行者9aが検知ゾーン1aに存在していると、表示ゾーン4の発光面4aのみが明るくされる。このため、歩行者9aとは異なる方向から交差領域7に接近してきた他の歩行者9bは、歩行速度を遅くしたり歩行者9aの通過を待つなどの措置をとることができる。
【0027】
図3は、本発明の異なる実施形態を示す説明図である。この例では、発光部に指向性のある光源(例えば砲弾型のLED等)、あるいは偏光フィルタを用いることにより、進行方向に対して直角方向の指向性を持たせ、表示が不要な進行方向に発光させないようにしている。また、発光部の形状を三角あるいは矢印にして、歩行者がどの方向から来るのかについて認識性を高める。
【0028】
図3(a)において、歩行者9aの進行方向をXとするときに、表示ゾーン4の発光面4aからは、Y方向には光源の出力光は出射しない。光源の出力光13a、13bは、歩行者9aの進行方向Xに対して直交する方向に出射する。この場合には、特に出力光13a、13bの方出射向に対面して進行する他の歩行者に対して、歩行者9aの交差領域への進行を報知することができる。
【0029】
図3(b)は、三角形状の発光素子5の例を示している。この場合には、先端方向に強い指向性がある出力光が出射される。図3(c)は、複数の砲弾形状の発光素子群5a、5bを配列して、それぞれ異なる方向に出力光13a、13bを出射する例を示している。図3(d)は、単一の砲弾形状の発光素子5を設けて出力光13を出射する例を示している。図3(a)〜図3(d)に示されたように、光源の出力光に指向性を持たせることにより、多様な発光面を形成する表示ゾーン4を実現することができる。
【0030】
図4は、本発明の他の実施形態を示す説明図である。図4の例では、表示手段を交差領域7に設けることに代えて、壁面などの通路遮蔽物に設けている。10a、10dは、通路遮蔽物8a、8dに設けた表示部で、導線3a、3bにより検知ゾーン1aの圧電素子群と電気的に接続されている。表示部10a、10dからは、光源の出力光13a、13dが出射される。この場合には、歩行者9aからみて左右両側の通路遮蔽物8a、8dの2個所に表示部10a、10dを設けているので、歩行者9aとは異なる方向から交差領域に接近する歩行者に、確実に歩行者9aの存在を報知することができる。
【0031】
図5は、図4の立体的な表示の例を示す説明図である。図4で説明したように、第1の歩行者が交差領域に接近すると、通路遮蔽物の特定個所の表示部が発光するので、どの位置の検知ゾーンに第1の歩行者が存在しているかが、他の歩行者(第2の歩行者)に分かりやすい利点がある。図5の例では、他の歩行者9bは、自分からみて発光部10a、10dの左側の検知ゾーン1aに第1の歩行者9aが存在していることを判断することができる。
【0032】
図6は、本発明の他の実施形態を示す説明図である。図6では、通路6に対して、事務室などのドア11が外開きに開放される例を示している。このような場合には、急にドア11が開放されるとドア近傍を通行している歩行者がドアにぶつかる恐れがある。そこで、ドア11の開放方向とは反対側の位置に検知ゾーン1xを設ける。検知ゾーン1xを設ける位置は、ドア11から1〜2m離れた位置とする。通路側の壁面には表示部10u、10vを設ける。
【0033】
ドア11を開放して通路6にでようとする第1の歩行者が存在すると、検知ゾーン1xでこれを検知し、表示部10u、10vから光源の出力光を出射させる。このため、ドア11の近傍の通路6を通行している他の歩行者(第2の歩行者)は、ドア11の位置から離れる、などの対応をとることができる。この例でも、通路を台車が進行する場合やドアから台車がでる場合にも、それぞれ歩行者、または台車との衝突を防止することができる。なお、図6の例ではドア11の内側は事務室に限らず、倉庫などから台車で物品を搬出する際の事故防止にも有用である。
【0034】
図7は、本発明の他の実施形態を示す説明図である。図7では、通路6r、6sが直角に曲がって、コーナー領域を形成している。この場合には、コーナー領域の手前1〜2mの位置に検知ゾーン1y、1zを設ける。また、コーナー領域の壁面には、表示部10r、10sを設ける。この例でも、通路遮蔽部8xで視野が遮られている歩行者は、表示部10r、10sによりコーナー領域の進行方向に他の歩行者、または台車が存在して、自分の方向に対向して進行してきているかどうかを判断することができる。
【0035】
図8は、本発明の概略構成を示すブロック図である。図8において、検知ゾーン1には、複数の圧電素子群2を例えば並列に接続する。表示ゾーン4には、単一または複数の発光素子5が配列されており、圧電素子群2と発光素子(群)は、導線3で接続される。
【0036】
図9は、本発明の異なる実施形態のブロック図である。この例では、検知ゾーン1に送信部14を設け、表示ゾーン4に受信部15を設ける。送信部14には送信アンテナ14aを取り付け、受信部15には受信アンテナ15aを取り付ける。検知ゾーン1と表示ゾーン4間の距離が短いので、微弱な電波でも十分に送受信が可能である。この場合には、導線の敷設が不要になる。なお、光源への給電電力が不足する場合には、表示ゾーン4の光源に電池を接続し、受信アンテナが電波を受信した際にスイッチが動作して、電池から光源の発光素子に給電する構成としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上説明したように、本発明は、屋内施設などに設置されている通路の特定位置における歩行者の安全を図る安全表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態の全体構成を示す説明図である。
【図2】本発明の処理手順を示す説明図である。。
【図3】本発明の実施形態を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態を示す説明図である。
【図5】本発明の実施形態を示す特性図である。
【図6】本発明の実施形態を示す説明図である。
【図7】本発明の実施形態を示す説明図である。
【図8】本発明の実施形態を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施形態を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0039】
1・・・検知ゾーン、2・・・圧電素子、3・・・導線、4・・・表示ゾーン、5・・・発光素子、6・・・通路、7・・・交差領域、8・・・通路遮蔽物、9・・・歩行者、10・・・表示部、11・・・ドア、12・・・コーナー領域、13・・・出射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設内の特定位置における第1の歩行者または物体の通行を検知する検知手段と、前記第1の歩行者または物体の通行を表示する表示手段と、前記検知手段と前記表示手段とを電気的に連結する手段とを備え、前記表示手段は前記第1の歩行者または物体の通行方向とは異なる方向から通行する第2の歩行者が視認できる位置に設置されていることを特徴とする、安全表示装置。
【請求項2】
前記第2の歩行者は、前記第1の歩行者または物体の通行を直接には見ることができない遮蔽物が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の安全表示装置。
【請求項3】
前記表示手段は、出力光に指向性がある光源を有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の安全表示装置。
【請求項4】
前記光源は複数の発光素子を有し、各発光素子の出力光の指向性を異ならせたことを特徴とする、請求項3に記載の安全表示装置。
【請求項5】
前記施設内に交差領域を有する通路を設け、前記各通路の前記交差領域への入口付近に前記検知手段を設けたことを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の安全表示装置。
【請求項6】
前記交差領域に前記表示手段を設け、当該表示手段は前記第1の歩行者または物体の通行する方向と対面する方向に発光面が形成されていることを特徴とする、請求項5に記載の安全表示装置。
【請求項7】
前記表示手段は、前記第1の歩行者または物体の通行方向の左右両側の前記遮蔽物に設けたことを特徴とする、請求項5に記載の安全表示装置。
【請求項8】
前記施設内にコーナー領域を有する通路を設け、前記各通路の前記コーナー領域への入口付近に前記検知手段を設けたことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の安全表示装置。
【請求項9】
前記施設内に設けた通路に向けて開放されるドアを有し、当該ドアの前記開放側とは反対側に前記検知手段を設けたことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の安全表示装置。
【請求項10】
前記遮蔽物に前記表示手段を設けたことを特徴とする、請求項8または請求項9に記載の安全表示装置。
【請求項11】
前記検知手段は帯状に形成されており、複数の圧電素子が配列されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の安全表示装置。
【請求項12】
前記検知手段と前記表示手段とを電気的に連結する手段は導線であることを特徴とする、請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の安全表示装置。
【請求項13】
前記検知手段と前記表示手段とを電気的に連結する手段は、前記検知手段側に設けた送信アンテナと前記表示手段側に設けた受信アンテナ間の電波であることを特徴とする、請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の安全表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−281904(P2008−281904A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127717(P2007−127717)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】