説明

安定なウリカーゼ製剤

【課題】医薬、化粧品、染毛剤等に利用可能なウリカーゼ製剤を提供する。より詳しくは、冷蔵での保管維持、流通はもとより常温(JIS規格で15〜25℃)、あるいはそれ以上の温度での保管維持、流通が可能な組成のウリカーゼ製剤を提供する。特に、水溶解条件下で高い温度でも安定なウリカーゼ製剤を提供する。
【解決手段】活性成分としてウリカーゼ活性を有するタンパク質を含む、体温に近い35〜45℃に活性の至適温度を有し、かつ安定性の極めて高いウリカーゼ製剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性発現の至適温度が体温に近い35〜45℃で、かつ水溶解条件下で安定なウリカーゼ製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトは尿酸分解酵素を持たないため、尿酸がプリン代謝の最終生成物となる。血液中の尿酸過剰は、痛風および尿酸の合成または排泄のいずれかに関する疾患において起こる症状である。尿酸過剰は、腎機能不全やケトアシド−シスなどにも関連している。また、白血病、リンパ腫、赤血球増加症、および種々の核蛋白生成および代謝に影響を与える疾患は、尿酸過剰をもたらすであろう。従って、尿酸過剰の抑制のため、尿酸分解酵素であるウリカーゼ活性を有するタンパク質を薬用の活性成分として用いる意義がある。
【0003】
また、化粧品および皮膚科用組成物としてウリカーゼ活性を有するタンパク質を利用する方法が開発された。ウリカーゼおよびその基質である尿酸から成る活性物質を組み合わせて使用することにより、微生物の駆除、およびその化粧品としての作用または病理学的な作用を得ることを目的としている。また、皮膚および/または毛髪の色抜き(皮膚の漂白)、皮膚の水分を上昇させることをも目的としている(特許文献1)。
【0004】
また、染毛剤成分としてウリカーゼ活性を有するタンパク質を利用する方法も開発された。ウリカーゼおよび尿酸を組み合わせて使用することにより、穏やかな酸化作用で充分な効果を有する毛髪用化粧料組成物を提供すること、皮膚刺激が少なく、毛髪および皮膚を傷めることの少ない酸化染毛料、二浴式パーマネントウェーブ用酸化固定剤組成物など酸化的機能を有する毛髪用化粧料組成物を提供することを目的としている(特許文献2)。
【0005】
ウリカーゼ活性を有するタンパク質が上記目的に使用される場合、製品の保管寿命、すなわち安定性はウリカーゼの安定性により制限される。また、使用状況から活性発現の至適温度が体温に近い温度であることも、重要な用件である。
【0006】
市販のウリカーゼの安定性は様々である。例えば、ウリカーゼを含む尿酸測定試薬の安定時間に関して、2種類の液状試薬からなる尿酸測定試薬キットが2〜8℃にて3ヶ月間の安定性を有していたことが報告されているが、実用性において満足できる安定性とはいえない(非特許文献1)。
【0007】
ウリカーゼを含む尿酸測定試薬は、EDTAによっても安定化された。該試薬は、pH7.5のトリス緩衝溶液中に、ウリカーゼ、ペルオキシダーゼ、O−ジアニシジン、0.03%ウシ血清アルブミン、および1mM のEDTAを有していた。冷蔵された該試薬の安定性は数週間のレベルで、十分なものとはいえなかった(非特許文献2)。
【0008】
ウリカーゼは、凍結乾燥状態で非イオン性界面活性剤、血清アルブミンおよび/または塩基性アミノ酸を伴って安定化されることが知られている(特許文献3)。
【0009】
また、ウリカーゼは、液状製剤中にてC2〜C5 、好ましくはC4 またはC5 の置換または非置換ジカルボン酸を添加することで安定化されることが知られている(特許文献4)。
【0010】
さらに、ウリカーゼ含有液にクエン酸、イタコン酸、およびリンゴ酸の少なくとも一つを含有させることで安定化されることが知られている(特許文献5)。
【0011】
しかしながら、これらの添加剤による安定化方法は、ウリカーゼの安定化効果において十分満足できるものではなかった。さらには、医薬、化粧品、染毛剤などの用途において添加剤の使用そのものが効果と安全性の面から制限される。したがって、ウリカーゼ活性を有するタンパク質そのものの安定化によるウリカーゼ製剤の安定化が望まれていた。
【0012】
酵素の安定化方法としては、大別して以下の3通りの取組みがなされている。
1)耐熱性酵素のスクリーニング
2)タンパク質工学的手法によるアミノ酸配列の改変
3)酵素への別の化合物の付加、修飾
1)は、酵素給源として好熱性微生物を用いることにより、極めて耐熱性の高い酵素が得られている。例えば、遺伝子操作に用いるDNAポリメラーゼは、90℃以上の温度で安定なものが実用化されている。しかしながら、このような酵素の至適温度は必然的に高温であり、体温に近い温度での相対活性は相当低い。
2)は、様々な酵素に対し研究室レベルでの成功例が種々得られている。しかし、実用化されている例は依然として少ない。現在の技術レベルをもってしても、アミノ酸配列の合理的な改変で安定性を大幅に向上させることが容易くないこと、試行錯誤を繰り返す必要があることが一因と考えられる。また、1)と同様に、安定化された改変酵素の至適温度は一般に高温であり、体温に近い温度での相対活性は低下する。
3)は、酵素の構造を変化させずに安定性を向上させ得るが、酵素製剤の製造工程に化合物の付加、修飾工程が加わり、手間とコストの面で実用化は難しい。また、化合物の付加、修飾は酵素の失活を伴うので、酵素製剤の収率が低下する。
【0013】
【特許文献1】特開平09−175991号公報
【特許文献2】特開平11−021215号公報
【特許文献3】特開昭60−224499号公報
【特許文献4】特開平05−308968号公報
【特許文献5】特開平07−313162号公報
【非特許文献1】P.Fossatiら著,「Clin.Chem.」,1980年,第26巻,p227
【非特許文献2】J.H.Jr.Marymontら著,「Am.J.Clin.Pathol.」,1980年,第42巻,p630
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、体温に近い35〜45℃に活性の至適温度を有し、かつ安定性の極めて高いウリカーゼ製剤を提供することにより、医薬、化粧品、染毛剤等に利用可能なウリカーゼ製剤を、有用なものとすることにある。より詳しくは、冷蔵での保管維持、流通はもとより常温(JIS規格で15〜25℃)、あるいはそれ以上の温度での保管維持、流通が可能な組成のウリカーゼ製剤を提供することにより、商品の流通時、保管時における簡便性を向上させることにある。特に、水溶解条件下で高い温度でも安定なウリカーゼ製剤を提供することにより、様々な時期や地域での室温流通、室温保管を可能とする。さらに、水溶液状態のウリカーゼ製剤は粉末状態と異なり、医薬品、化粧品、染毛剤などへの加工の際にそのまま溶液として調合できる。粉末標品は、簡便に分注調合するため水に再溶解して使用することが多いが、水溶液調製の手間、および再溶解時の誤差が発生し、そのまま使用できる水溶液製剤に比較して正確性、簡便性に劣る。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、野生型タンパク質に比して極めて熱安定性が向上し、かつ野生型タンパク質に対して至適温度が体温に近い温度(35〜45℃)に低下したウリカーゼ活性を有するタンパク質を、人工的なアミノ酸配列の改変により取得することに成功した。そして、このようなウリカーゼが高い温度安定性と実用域である体温に近い反応最適温度の両方を具備するという、天然の酵素には無い性質を有することを確認し、該ウリカーゼを含有する製剤を開発することにより本発明を完成させた。
これまで、安定性の向上と活性の至適温度の低下という、一見相反する性質を同時に酵素に付与することは困難であった。
【0016】
すなわち本発明は、以下のような構成からなるものである。
(1)活性成分としてウリカーゼ活性を有するタンパク質を含むウリカーゼ製剤であって、該タンパク質が、35〜45℃に活性の至適温度を有し、かつ水溶解条件下で60℃、1日間保存後も初期活性の60%以上を維持することを特徴とする該製剤。
(2)ウリカーゼ活性を有するタンパク質が、ジスルフィド結合を保持することを特徴とする、(1)記載のウリカーゼ製剤。
(3)ウリカーゼ活性を有するタンパク質が、配列表の配列番号1に記載されるアミノ酸配列と50%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる、(1)または(2)に記載のウリカーゼ製剤。
(4)ウリカーゼ活性を有するタンパク質が、配列表の配列番号1に記載されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる、(3)記載のウリカーゼ製剤。
(5)ウリカーゼ活性を有するタンパク質が、配列表の配列番号1に記載されるアミノ酸配列中のアミノ酸の1もしくは数個が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるウリカーゼ改変体であることを特徴とする、(1)または(2)に記載のウリカーゼ製剤。
(6)ウリカーゼ活性を有するタンパク質が、配列表の配列番号1に記載されるアミノ酸配列中の298位またはそれと同等の位置のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されているアミノ酸配列からなるウリカーゼ改変体であることを特徴とする、(1)または(2)に記載のウリカーゼ製剤。
(7)ウリカーゼ活性を有するタンパク質が、配列表の配列番号1に記載されるアミノ酸配列中の298位またはそれと同等の位置のアミノ酸がシステインに置換されているアミノ酸配列からなるウリカーゼ改変体であることを特徴とする、(6)記載のウリカーゼ製剤。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、安定性の向上と活性の至適温度の低下という、一見相反する性質を同時に酵素に付与し、至適温度が体温に近い温度(35〜45℃)で、かつ水溶解条件下で高い温度安定性を有するという、天然の酵素には無い性質のウリカーゼを含有する製剤を供給することが可能となる。さらに、本発明のウリカーゼ製剤を、医薬品、化粧品、染毛剤、臨床検査薬、漂白剤などの様々な用途に利用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明のウリカーゼ製剤は、少なくともウリカーゼ活性を有するタンパク質を活性成分として含有する。リン酸塩やGOODバッファー、トリスバッファーなどの緩衝剤を含んでもよい。更には、酵素反応を妨害するイオンを捕捉するEDTAなどのキレート試薬や、トリトンX−100やNP−40などの各種界面活性剤、ストレプトマイシンなどの各種抗菌剤や防腐剤などを含んでもよい。これらの製剤は、単一製剤でも2種類以上の試薬からなるものであってもよいが、本発明の利点を活かすためには簡便な単一製剤がより好ましい。また、本発明の利点を活かすためには取扱いの簡便な液状製剤が好ましい。
【0020】
本発明のウリカーゼ製剤とは、ウリカーゼを活性成分とし、錠剤やカプセル、溶液など薬の剤形を為す。すなわち、ウリカーゼ製剤は、有効成分であるウリカーゼと非活性成分である添加剤から成る。例えば、ウリカーゼと緩衝剤、希釈剤、安定剤などとの混合物を指す。
ウリカーゼ活性を有するタンパク質成分とは、狭義にはウリカーゼそのものを指すが、牛血清アルブミンなどの他のタンパク質にウリカーゼが結合したものや、ウリカーゼをアミノ酸やペプチドで修飾したものなどを広義に含む。
【0021】
本発明に使用する緩衝剤としては、6.5−8.5のpH範囲において充分な緩衝能力を有する任意の緩衝剤を使用することができる。このpH範囲の緩衝剤は、リン酸塩、トリス、ビス−トリスプロパン、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(TES)、および3−〔N−トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ〕−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(TAPSO)を含む。低価格および高い安定性のため、好ましい緩衝剤はリン酸塩である。好ましい濃度範囲は、20−200mMのリン酸塩であり、pH7〜8である。
【0022】
不活性タンパク質を、更にウリカーゼの安定性を増すために添加してもよい。不活性タンパク質は、大豆タンパク質、小麦タンパク質などの植物性タンパク質、硬タンパク質類および繊維性タンパク質類を含む。好ましいタンパク質は、硬タンパク質であり、特にコラーゲン、ゼラチンなどが好ましい。wt/volにおける好ましい濃度は、0.05−10%である。より低い濃度が有用であり得る。好ましい不活性タンパク質は、酵素分解を起こすであろうプロテアーゼ不純物を含まないものである。
【0023】
本発明において使用するウリカーゼ活性を有するタンパク質は、35〜45℃に活性の至適温度を有し、かつ水溶解条件下で60℃、1日間保存後も初期活性の60%以上を維持しているものである。
【0024】
「35〜45℃に活性の至適温度を有し」とは、35〜45℃を含む連続的な温度範囲において活性の至適温度を有することを意味する。例えば、35〜50℃に活性の至適温度を有する酵素を含む。
「活性の至適温度」とは、後述の活性測定法で、酵素濃度10U/l〜200U/lの範囲内で調整した酵素の活性を、5℃以下の間隔を有する何点かの異なる温度で測定した際に、最も高い活性を示した温度における測定値を100としたときの相対値が、80以上である温度をいう。
「水溶解条件」とは、後述の活性測定法に用いる組成で、酵素濃度5kU/l〜200kU/lの範囲内で調整した状態を指す。
【0025】
本発明者らは種々検討した結果、このような性質を有するウリカーゼを用いること無しに、ウリカーゼ製剤の常温(JIS規格で15〜25℃)での流通、保管はもとより、室温流通、保管を行うことは到底できないという結論に達した。室温で流通、保管させるためには、時期や地域によっては40℃前後の高い温度で1日間〜1週間の放置も覚悟する必要がある。本発明における60℃、1日間保存後も初期活性の60%以上を維持しているという用件は、決して過剰な用件とはいえない。
【0026】
また、本発明のウリカーゼ製剤は、65℃、60分間の処理で80%以上の残存活性を有するものが好ましい。より好ましくは、65℃、60分間の処理で90%以上の残存活性を有するものである。
本発明において使用するウリカーゼ活性を有するタンパク質は、水溶液中80℃、5分間の処理で80%以上の残存活性を有するものが好ましい。より好ましくは、水溶液中80℃、5分間の処理で90%以上の残存活性を有するものである。
【0027】
このようなウリカーゼの給源としては特に制約はないが、現在、このようなウリカーゼは天然において知られていない。このようなウリカーゼを得る手段としては、広く自然界に求めても良いが、既知のウリカーゼのアミノ酸配列を人工的に改変して調整してもよい。
【0028】
本発明において、ウリカーゼ活性を有するタンパク質は、ウリカーゼ製剤中5〜200kU/Lの酵素濃度で使用されることが好ましい。
【0029】
本発明において使用するウリカーゼの改変に供されるウリカーゼ活性を有するタンパク質は、バチルス属、キャンディダ属、エンテロバクター属、セルロモナス属、アースロバクター属などの微生物由来のウリカーゼ等が例示されるが、特に限定されるものではない。
具体的には例えば、バチルス・エスピー(Bacillus sp.)TB−90株に由来するウリカーゼが例示され、そのアミノ酸配列は配列表の配列番号1、当該アミノ酸配列をコードする遺伝子は配列番号2でそれぞれ示される。これらはいずれも特許第1966484号公報に記載されている。なお、配列番号1において、アミノ酸の表記は、メチオニンを1として番号付けされている。
【0030】
本発明において使用するウリカーゼは、ウリカーゼ活性を保持していれば、分子間または分子内架橋が施されたもの、糖鎖やその他の官能基により化学修飾されたもの、あるいは、ヒスチジンタグが付与されたもの、各種融合タンパク質などであっても、特に問題とならない。
【0031】
本発明において使用するウリカーゼの改変方法は、ウリカーゼ活性を有する改変前のタンパク質を構成するアミノ酸配列の1もしくは数個のアミノ酸を欠失、置換もしくは付加することにより、改変前のタンパク質と比較して、安定性を向上させ、かつ酵素活性の至適温度を低下させるものである。
本発明における「安定性の向上」とは、改変体(a)と改変前の親タンパク質(b)が各々十分に精製され、適当な緩衝液中に溶解された状態で比較した場合の安定性が、(a)>(b)となるような状態をいう。「十分に精製された」とは、例えばSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により、ウリカーゼ以外の夾雑タンパク質が見られない状態をいう。
「適当な緩衝液」は、ウリカーゼが作用するpH範囲で十分な緩衝能を持つよう、その種類と濃度を選べば特に限定されないが、例えば、50mMリン酸塩緩衝液(pH8.0)、50mMホウ酸緩衝液(pH8.0)、または50mMトリス緩衝液(pH8.0)などが選択される。緩衝液にはさらに界面活性剤、塩類、キレート試薬、防腐剤などを含んでいてもよい。
【0032】
本発明において使用するウリカーゼの改変体は、好ましくは配列表の配列番号1に記載されるアミノ酸配列と50%以上の相同性を有する。さらに好ましくは、サブユニットのインターフェースに位置するループ領域もしくはそれと相互作用する領域に位置するアミノ酸の1もしくは数個を欠失・置換もしくは付加されたものである。(ここで、改変の態様は欠失・置換および付加のうち2種以上であってもよい。)
【0033】
本発明のウリカーゼの改変体は、好ましくはジスルフィド結合を保持する。ジスルフィド結合は分子間であることが好ましい。例えば、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)、アースロバクター・グロビフォルミス(Arthrobacter globiformis)などのウリカーゼは4量体で酵素活性を発揮するが、サブユニット間にジスルフィド結合を保持することにより、立体構造を強固に維持できるため安定性が向上する。
【0034】
ウリカーゼの改変部位としては、例えば、バチルス・エスピーTB−90株由来のウリカーゼにおいては、277位〜300位と277位〜300位の間においてサブユニット間の距離が近接しており、ここに、分子間ジスルフィド結合を形成することが好ましい。さらには、296位と300位の間、296位と300位の間に分子間ジスルフィド結合を形成することがより好ましい。
さらに、ウリカーゼの改変部位としては、アミノ酸残基の側鎖間の距離が6Å(オングストローム)以内であることが望ましい。
このような改変体の改変部位としては、例えば、バチルス・エスピー(Bacillus sp.)TB−90株由来のウリカーゼをコードするアミノ酸配列(配列番号1)では、298位のアミノ酸が例示される。配列番号1における298位のアミノ酸では、特にシステインに置換されてなるものが好ましい。
【0035】
なお、上記の改変位置は、バチルス・エスピー(Bacillus sp.)TB−90株以外の起源に由来するウリカーゼ活性を有するタンパク質のアミノ酸配列における同等の位置であっても良い。同等の位置かどうかは、一次構造、立体構造の知見を基に判断することができる。
【0036】
ウリカーゼの立体構造は、上記バチルス属由来のもの以外に、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)、アースロバクター・グロビフォルミス(Arthrobacter globiformis)由来のウリカーゼについてもProtein Data Bank(http://www.rcsb.org/pdb/Welcome.do)などで公開されているが、これまでに安定性をタンパク質工学的に向上させ、かつ同時に反応至適温度をタンパク質工学的に実用域に低下させることを示唆する記載はなかった。
【0037】
上記以外の他起源に由来するウリカーゼ活性を有するタンパク質についても、一次構造、立体構造の情報を用いて、改変するアミノ酸を選択し、安定性が向上する改変体を、過度の検討なくして得ることが可能であるが、好ましくは、配列表の配列番号1に記載されるアミノ酸配列と50%以上の相同性を有するウリカーゼ改変体が挙げられ、さらに好ましくは、配列表の配列番号1に記載されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するウリカーゼ改変体が挙げられる。
例えば、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)由来のウリカーゼは、バチルス・エスピー(Bacillus sp.)TB−90株と一次配列上の相同性は26%と低いことが知られているが(J.Biochem.119,80-84,1996)、立体構造上高い類似性を有しており、本発明に使用できる極めて安定性の高いウリカーゼを得ることができる。
なお、アミノ酸配列の相同性は、例えば、GENETYX等の市販の遺伝子解析ソフトウェアを利用した2種類の配列のhomology searchにより検索することができる。
【0038】
さらに、本発明において使用するウリカーゼの改変体は、尿酸に対する作用性が本質的に維持される限り、いくつかの由来の野生型ウリカーゼの断片を組み合わせて構成したキメラタンパク質も含み得る。
【0039】
ウリカーゼ改変体は、改変体をコードする遺伝子により合成される。ウリカーゼ改変体をコードする遺伝子は、例えば、微生物など種々の起源(由来)より得られる野生型ウリカーゼをコードする遺伝子を含むDNA断片を改変することにより得ることができる。具体的には、例えばバチルス・エスピー(Bacillus sp.)TB−90株、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)、アースロバクター・グロビフォルミス(Arthrobacter globiformis)、キャンディダ・ウチリス(Candida utilis)、セルロモナス・フラビゲナ(Cellulomonas・flavigena)などの公知のウリカーゼをコードする遺伝子を利用して作成することができる。
ウリカーゼ改変体をコードする遺伝子は、好ましくは、配列番号2に記載の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつウリカーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAである。ここでストリンジェントな条件とは、相同性が高い核酸同士、例えば完全にマッチしたハイブリッドのTmから該Tmより15℃、好ましくは10℃低い温度までの範囲の温度でハイブリダイズする条件をいう。具体的には、例えば一般的なハイブリダイゼーション用緩衝液(例えば、×6 SSC、×5 デンハルト、0.1% SDS、100μg/ml サケ精子DNA)中で、68℃、20時間の条件でハイブリダイズする条件をいう。本発明において、配列番号1に記載の塩基配列がコードするアミノ酸配列(配列番号2)と50%以上の相同性、好ましくは80%以上の相同性を有するアミノ配列をコードする塩基配列は、前記のストリンジェントな条件下で配列番号1に記載の塩基配列とハイブリダイズする塩基配列に相当すると考えられる。
【0040】
さらに、ウリカーゼ改変体をコードする遺伝子を、ウリカーゼの発現を向上させるように、コドンユーセージ(Codon usage)を変更したものを含み得る。
【0041】
ウリカーゼをコードする遺伝子を改変する方法としては、通常行われる遺伝情報を改変する手法が用いられる。すなわち、タンパク質の遺伝情報を有するDNAの特定の塩基を変換することにより、あるいは特定の塩基を挿入または欠失させることにより、改変タンパク質の遺伝情報を有するDNAが作成される。DNA中の塩基を変換する具体的な方法としては、例えば市販のキット(Transformer Site−Directed Mutagenesis Kit;Clonetech製,QuickChange Site Directed Mutagenesis Kit;Stratagene製など)の使用、あるいはポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)の利用が挙げられる。
【0042】
作成されたウリカーゼ改変体の遺伝情報を有するDNAは、プラスミドと連結された状態にて宿主微生物中に移入され、改変タンパク質を生産する形質転換体となる。
ベクターとしてプラスミドを用いる場合、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)を宿主微生物とする場合にはpBluescript,pUC18などが使用できる。宿主微生物としては、例えば、エシェリヒア・コリ−W3110、エシェリヒア・コリ−C600、エシェリヒア・コリ−JM109、エシェリヒア・コリ−DH5αなどが利用できる。宿主微生物に組換えベクターを移入する方法としては、例えば宿主微生物がエシェリヒア属に属する微生物の場合には、カルシウムイオンの存在下で組換えDNAの移入を行う方法などを採用することができ、更にエレクトロポレーション法を用いても良い。更には、市販のコンピテントセル(例えば、コンピテントハイJM109;東洋紡績製)を用いてもよい。
【0043】
このような遺伝子はこれらの菌株より抽出してもよく、また化学的に合成することもできる。さらに、PCR法の利用により、ウリカーゼ遺伝子を含むDNA断片を得ることも可能である。
【0044】
改変前のウリカーゼをコードする遺伝子を得る方法としては、例えば、遺伝子配列が未知のウリカーゼ生産菌であれば、染色体を分離、精製した後、超音波処理、制限酵素処理等を用いてDNAを切断したものと、リニアーな発現ベクターと両DNAの平滑末端または付着末端においてDNAリガーゼなどにより結合閉鎖させて組換えベクターを構築する。該組換えベクターを複製可能な宿主微生物に移入した後、ベクターのマーカーと酵素活性の発現を指標としてスクリーニングして、ウリカーゼをコードする遺伝子を含有する組換えベクターを保持する微生物を得ることでできる。
【0045】
遺伝子配列が公知となっているものであれば、ウリカーゼのコードする遺伝子が増幅されるようなプライマーを作成した上で、PCR法を用いて遺伝子を取得し、適当なベクターに連結することで、比較的容易にウリカーゼをコードする遺伝子を含有する組換えベクターを得ることができる。
【0046】
形質転換を行う宿主微生物としては、組換えベクターが安定であり、かつ自律増殖可能で外来性遺伝子の形質発現できるものであれば特に制限されない。一般的には、エシェリヒア・コリ W3110、エシェリヒア・コリ C600、エシェリヒア・コリ HB101、エシェリヒア・コリ JM109、エシェリヒア・コリ DH5αなどを用いることができる。得られた形質転換体である微生物は、栄養培地で培養されることにより、多量のウリカーゼを安定に生産し得る。宿主微生物への目的組換えベクターの移入の有無についての選択は、目的とするDNAを保持するベクターの薬剤耐性マーカー発現する微生物を検索すればよい。
【0047】
上記の方法により得られたウリカーゼ遺伝子の塩基配列は、Science, 第214巻,1205(1981)に記載されたジデオキシ法により解読される。また、ウリカーゼのアミノ酸配列は上記のように決定された塩基配列より推定される。
【0048】
このようにして、一度選択されたウリカーゼ遺伝子を保有する組換えベクターより、ウリカーゼ生産能を有する微生物にて複製できる組換えベクターへの移入は、ウリカーゼ遺伝子を保持する組換えベクターから制限酵素やPCR法によりウリカーゼ遺伝子であるDNAを回収し、他のベクター断片と結合させることにより容易に実施できる。また、これらのベクターによるウリカーゼ生産能を有する微生物の形質転換は、カルシウム処理によるコンピテントセル法やエレクトロポレーション法などを用いることができる。
【0049】
例えば上記のようにして得られた形質転換体である微生物は、栄養培地で培養されることにより、多量の改変タンパク質を安定して生産し得る。形質転換体である宿主微生物の培養形態は、宿主の栄養生理的性質を考慮して培養条件を選択すればよく、多くの場合は液体培養で行う。工業的には通気攪拌培養を行うのが有利である。
【0050】
培地の栄養源としては,微生物の培養に通常用いられるものが広く使用され得る。炭素源としては資化可能な炭素化合物であればよく、例えば、グルコース、シュークロース、ラクトース、マルトース、糖蜜、ピルビン酸などが使用される。また、窒素源としては利用可能な窒素化合物であればよく、例えば、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、カゼイン加水分解物、大豆粕アルカリ抽出物などが使用される。その他、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、マグネシウム、カルシウム、カリウム、鉄、マンガン、亜鉛などの塩類、特定のアミノ酸、特定のビタミンなどが必要に応じて使用される。
【0051】
培養温度は菌が成育し、ウリカーゼ改変体を生産する範囲で適宜変更し得るが、例えば、エシェリヒア・コリを宿主として利用する場合、好ましくは20〜42℃程度である。培養時間は条件によって多少異なるが、ウリカーゼ改変体が最高収量に達する適当な時期に培養を完了すればよく、通常は6〜48時間程度である。培地のpHは菌が発育し、ウリカーゼ改変体を生産する範囲で適宜変更し得るが、好ましくはpH6.0〜9.0程度の範囲である。
【0052】
培養物中のウリカーゼ改変体を生産する菌体を含む培養液をそのまま採取し、利用することもできるが、一般には、常法に従って、ウリカーゼ改変体が培養液中に存在する場合はろ過、遠心分離などにより、ウリカーゼ改変体含有溶液と微生物菌体とを分離した後に利用される。ウリカーゼ改変体が菌体内に存在する場合には、得られた培養物からろ過または遠心分離などの手段により菌体を採取し、次いで、この菌体を機械的方法またはリゾチームなどの酵素的方法で破壊し、また、必要に応じて、EDTA等のキレート剤および界面活性剤を添加してウリカーゼ改変体を可溶化し、水溶液として分離採取する。
【0053】
上記のようにして得られたウリカーゼ改変体含有溶液を、例えば減圧濃縮、膜濃縮、さらに硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウムなどの塩析処理、あるいは親水性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、アセトンなどによる分別沈殿法により沈殿せしめればよい。また、加熱処理や等電点処理も有効な精製手段である。その後、吸着剤あるいはゲルろ過剤などによるゲルろ過、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーを行うことにより、精製されたウリカーゼ改変体を得ることができる。
【0054】
例えば、セファデックス(Sephadex)ゲル(GEヘルスケアバイオサイエンス)などによるゲルろ過、DEAEセファロースCL−6B(GEヘルスケアバイオサイエンス)、オクチルセファロースCL−6B(GEヘルスケアバイオサイエンス)等のカラムクロマトグラフィーにより分離、精製し、精製酵素標品を得ることができる。該精製酵素標品は、電気泳動(SDS−PAGE)的に単一のバンドを示す程度に純化されていることが好ましい。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。実施例中、ウリカーゼ製剤は以下のような組成で調製した。また、ウリカーゼの活性は、以下のように測定した。試薬はナカライテスク社より購入したものを使用した。
【0056】
<ウリカーゼ製剤>
ウリカーゼ 5kU/L
50mM ホウ酸緩衝液(pH8.0)
<ウリカーゼ活性測定法>
ウリカーゼ活性は、尿酸を基質とし、ウリカーゼ反応による尿酸の消失を吸光度の変化で測定した。40μMの尿酸、0.00083%(W/V)のトリトンX−100および0.83mMのEDTAを含む42mMホウ酸緩衝液(pH8.0)2.5mlを37℃で5分間予備加温後、予め、酵素希釈液(0.001%(W/V)のトリトンX−100および0.1mMのEDTAを含む50mMホウ酸緩衝液(pH8.0))で希釈したウリカーゼ溶液0.5mlを加え、反応を開始する。37℃で正確に5分間反応させた後、20%(W/V)のKOH水溶液0.2mlを加えて反応を停止させ、290nmの吸光度を測定する(ΔODtest)。盲検は酵素溶液の代わりに酵素希釈液0.5mlを加え、上記同様に操作を行って吸光度を測定した(ΔODblank)。得られた吸光度より、下記計算式に基づきウリカーゼの酵素活性を算出した。尚、上記条件で1分間に1マイクロモルの尿酸を酸化する酵素量を1単位(U)とする。
計算式
活性値(U/ml)={ΔOD/min(ΔODtest−ΔODblank)×3.2(ml)×希釈倍率}/{12.2×1.0(cm)×0.5(ml)}
3.2(ml):全液量
12.2:尿酸を上記測定条件下で測定した時のミリモル吸光係数
1.0cm:セルの光路長
0.5(ml):酵素サンプル液量
【0057】
実施例1 ウリカーゼ改変体をコードする遺伝子の作製
バチルス・エスピーTB−90株由来のウリカーゼ遺伝子を含む発現プラスミドpKU1(特許第1966484号公報)と、配列表の配列番号3記載の合成オリゴヌクレオチドおよびこれと相補的な合成オリゴヌクレオチドを用いて、QuickChangeTM Site-Directed Mutagenesis Kit(STRATAGENE製)を用いて、そのプロトコールに従って変異処理操作を行い、更に塩基配列を決定して、配列番号1に記載のアミノ酸配列の298番目のアルギニンがシステインに置換されたウリカーゼ改変体をコードする組換えプラスミド(pUOD−R298C)を取得した。
【0058】
実施例2 ウリカーゼ改変体の作製
実施例1で取得した組換えプラスミド(pUOD−R298C)を用いて、エシェリヒア・コリJM109株コンピテントセル(東洋紡績製)を形質転換し、該形質転換体を取得した。得られた形質転換体は、エシェリヒア・コリJM109(pUOD−R298C)と命名した。
500mlのTB培地を2L容坂口フラスコに分注し、121℃、20分間オートクレーブを行い、放冷後別途無菌濾過したアンピシリンとイソプロピル−β−D−チオガラクトシドをそれぞれ終濃度が100μl/mlと0.1mMになるように添加した。この培地に100μl/mlのアンピシリンを含むLB培地で予め30℃、16時間培養したエシェリヒア・コリJM109(pUOD−R298C)の培養液を5ml接種し、37℃で24時間通気攪拌培養を行った。培養終了より菌体を遠心分離により集菌し、50mMホウ酸緩衝液(pH8.0)に懸濁した後、フレンチプレスにて破砕し、更に遠心分離を行い、上清液を粗酵素液として得た。得られた粗酵素液をポリエチレンイミンによる除核酸および硫安分画を行い、55℃、1時間の熱処理後、50mMホウ酸緩衝液(pH8.0)で透析を行った。更にDEAEセファロースCL−6B(GEヘルスケアバイオサイエンス製)、およびオクチルセファロース(GEヘルスケアバイオサオエンス製)の各カラムクロマトグラフィーにより分離・精製することにより、精製酵素標品(R298C)を得た。本方法により得られた標品は、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により、単一であることが確認された。
【0059】
実施例3 ウリカーゼ製剤の安定性および反応温度評価
実施例2で取得したウリカーゼを使用して、ウリカーゼ製剤(本発明製剤)を調製した。対象として、バチルス・エスピーTB−90株由来のウリカーゼ(商品コード:UAO−211,東洋紡績製)を使用したウリカーゼ製剤(比較例製剤)を調製した。UAO−211は、市販のウリカーゼで、好熱性バチルス属細菌由来酵素であるため、現在知られているウリカーゼの中でも安定性に優れている。
本発明製剤と比較例製剤の安定性を、60℃保存で確認した。
図1に示すように、本発明製剤は60℃、1日間放置後も初期活性の60%以上(66%)を維持していた。これに対し、比較例製剤は、60℃、1日間放置後に初期活性の40%に活性が低下した。
次に、本発明製剤と比較例製剤の反応温度を評価した。反応温度測定条件としは、酵素希釈液(0.001%(W/V)のトリトンX−100および0.1mMのEDTAを含む50mMホウ酸緩衝液(pH8.0))で希釈したウリカーゼ製剤を用いて、それぞれの反応温度にて活性測定を実施した。
結果を図2に示す。本発明製剤の反応至適温度は35〜45℃で、これに対し比較例製剤の反応至適温度は45〜50℃であった。
また、本発明製剤と比較例製剤の熱安定性も評価、比較した。ウリカーゼ製剤を65℃にて60分間処理した結果を図3に示す。本発明製剤が、65℃、60分間の処理で90%以上(93%)の残存活性を有したのに対し、比較例製剤の残存活性は約50%であった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によって、体温に近い35〜45℃に活性の至適温度を有し、安定性の極めて高いウリカーゼ製剤を提供することができる。これにより、医薬、化粧品、染毛剤、臨床検査薬、漂白剤等に利用可能なウリカーゼ製剤を、更に有用なものとすることができる。すなわち、冷蔵での保管維持、流通はもとより常温(JIS規格で15〜25℃)、あるいはそれ以上の温度での保管維持、流通が可能な組成のウリカーゼ製剤を提供することが可能となり、商品の流通時、保管時における簡便性を向上させることができる。特に、水溶解条件下で高い温度でも安定なウリカーゼ製剤を提供できるため、様々な時期や地域での室温流通、室温保管を行うことができる。
ウリカーゼ製剤の用途は、どれも体温に近い温度で性能を発揮することが求められており、本発明の安定性が高く体温に近い35〜45℃に活性の至適温度を有するウリカーゼ製剤は、極めて有益なものとなる。
本発明により、ウリカーゼ製剤、およびウリカーゼを含有する商品の更なる普及に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、ウリカーゼ製剤の60℃における安定性評価結果を示す。●;本発明製剤、○;比較例製剤
【図2】図2は、ウリカーゼ製剤の反応至適温度の評価結果を示す。●;本発明製剤、○;比較例製剤
【図3】図3は、ウリカーゼ製剤の熱安定性の評価結果を示す。●;本発明製剤、○;比較例製剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分としてウリカーゼ活性を有するタンパク質を含むウリカーゼ製剤であって、該タンパク質が、35〜45℃に活性の至適温度を有し、かつ水溶解条件下で60℃、1日間保存後も初期活性の60%以上を維持することを特徴とする該製剤。
【請求項2】
ウリカーゼ活性を有するタンパク質が、ジスルフィド結合を保持することを特徴とする、請求項1記載のウリカーゼ製剤。
【請求項3】
ウリカーゼ活性を有するタンパク質が、配列表の配列番号1に記載されるアミノ酸配列と50%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる、請求項1または2に記載のウリカーゼ製剤。
【請求項4】
ウリカーゼ活性を有するタンパク質が、配列表の配列番号1に記載されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる、請求項3記載のウリカーゼ製剤。
【請求項5】
ウリカーゼ活性を有するタンパク質が、配列表の配列番号1に記載されるアミノ酸配列中のアミノ酸の1もしくは数個が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるウリカーゼ改変体であることを特徴とする、請求項1または2に記載のウリカーゼ製剤。
【請求項6】
ウリカーゼ活性を有するタンパク質が、配列表の配列番号1に記載されるアミノ酸配列中の298位またはそれと同等の位置のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されているアミノ酸配列からなるウリカーゼ改変体であることを特徴とする、請求項1または2に記載のウリカーゼ製剤。
【請求項7】
ウリカーゼ活性を有するタンパク質が、配列表の配列番号1に記載されるアミノ酸配列中の298位またはそれと同等の位置のアミノ酸がシステインに置換されているアミノ酸配列からなるウリカーゼ改変体であることを特徴とする、請求項6記載のウリカーゼ製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−24635(P2008−24635A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−198280(P2006−198280)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【出願人】(507157045)公立大学法人福井県立大学 (22)
【Fターム(参考)】