説明

安定な殺生物剤を生成する装置

本発明は、酸化型殺生物剤を生成する装置に関する。この装置は、生成物が貯蔵されるリモート生成システムとして使用することができ、あるいは、生成物が処理されるシステムと流体連通できるインサイチュウ生成システムでもよい。このシステムの好適な生成物は、この装置で安定な形態で生成可能なクロラミンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
著作権の注意
この特許出願書類の開示の一部は、著作権が保護された材料を含んでいるか、あるいは、その可能性がある。この著作権の所有者は、米国特許商標庁のファイルまたはレコードに存在する特許出願書類または特許開示の写真複製に対する異議を有しないが、それ以外の全ての著作権は保持する。
【0002】
安定な酸化型殺生物剤の生成物およびこの生成物に使用される装置に関する。本発明は、この装置のいくつかの実施例を有するが、本発明の主な実施例は、インサイチュウ生成物およびリモート生成物の2つである。酸化殺生物剤がより安定な形状にあるという事実によって、その生成、貯蔵および輸送が可能となった。本発明は、安定な酸化剤殺生物剤の一例として安定かつ機能的なクロラミンを生成するのに使用される装置を示し、この安定な酸化殺生物剤によって、殺生物成分が急速に分解しないので、水処理システムおよびその他各種の処理システム中でのクロラミンの使用が可能となる。
【背景技術】
【0003】
本明細書に記載される本発明は、生物付着制御剤を生成する装置に関する。本発明のベースは、反応物の成分および濃縮反応物を使用した生成条件を提供する装置であり、2つの溶液を天然の化学形態から別の形態に変換し、殺生物特性を改良する。
【0004】
世界中に、数多くの種類の工業用水システムが存在する。化学的機構および生物学的プロセスが所望の成果を得るために実行可能なように、工業用水システムが存在する。付着物は、現在利用可能な最もよい水処理プログラムを用いて処理される工業用水システムにも均等に生じる可能性がある。この特許出願の目的において、「付着(fouling)」は、「表面上の有機または無機材料の堆積」として定義される。
【0005】
工業用水システムに微生物付着制御のための処理がなされない場合は、システムに重度の付着が生じる。付着は、工業用水システムに負の影響を及ぼす。例えば、厳しいミネラルスケール(無機材料)が水接触面に構築され、微生物の成長には理想的環境である。
【0006】
付着は、空気伝達および風邪伝達による汚染物質堆積および水によって形成される汚染物質堆積、水の汚れ、プロセスリークおよび他の因子を含む各種機構によって生じる。進展が認められる場合、このシステムには、運転効率の低下、時期尚早の装置故障、生産性の低下、製品の品質低下、および、微生物付着に関連した健康関連リスクの上昇の可能性がある。
【0007】
さらに、付着は、微生物汚染物質に起因しておこる場合がある。工業用水システム中の微生物汚染物質源は多数有り、限定するものではないが、空気伝達汚染、水のメークアップ(water make−up)、プロセスリークおよび不適切に洗浄された設備、を含んでもよい。これらの微生物は、工業用水システムの湿潤または半湿潤表面の上に微生物コミュニティを構築することができる。これらの微生物のポピュレーションが、バルク水中にあると、99%以上の微生物は、水中に、バイオフィルムの形態で、全ての表面に存在するであろう。
【0008】
微生物から分泌されたエキソポリメリック物質は、微生物コミュニティが表面で展開するとき、バイオフィルムの形態を促進する。これらのバイオフィルムは、栄養素を濃縮する手段を構築して増殖に対する保護を提供する、複合体生態系(ecosystem)である。バイオフィルムは、スケール、腐食および他の付着プロセスを加速させることができる。バイオフィルムは、システムの効率の低減に影響を及ぼすだけでなく、病原体バクテリアを含むおそれのある微生物の増殖環境を提供する。従って、バイオフィルムおよびその他の付着プロセスが、可能な限り最大限に、プロセス効率を最大化して、水伝達病原体から健康関連リスクを最小限にするように、低減されることが重要である。
【0009】
いくつかの因子は、生物学的付着の問題に影響を及ぼし、その拡張範囲を決定する。水温、水pH;有機および無機栄養分、好気性または嫌気性条件などの増殖条件、および、日光などのあり、なしは、重要な役割を果たす。さらに、これらの因子は、どのような微生物の種類が水システムに存在する可能性があるか、判定するのに役立つ。
【0010】
上述したように、生物学的付着は、望ましくないプロセス干渉を生じさせるおそれがあり、従って、制御しなければならない。多種多様なアプローチは、工業プロセスにおける生物学的付着の制御に利用されている。最も一般的に使用されている方法は、処理水に殺生物剤化合物を加えることである。加えられた殺生物剤は、天然において、酸化型または非酸化型でもよい。経済および環境問題など、いくつかの異なる因子のために、酸化型の殺生物剤が好ましい。塩素ガス、次亜塩素酸、臭素由来殺生物剤、および、他の酸化型殺生物剤など、酸化型殺生物剤は、工業用水システムの処置に幅広く使用される。
【0011】
酸化型殺生物剤の効率を規定する因子の1つは、「塩素要求量」または酸化型殺生物剤要求量を構成する水マトリックス内成分の存在である。「塩素要求量」は、水中の物質によって、還元されるか、あるいは、不活性形態の塩素に変換される塩素量として規定される。塩素消費物質は、限定するものではないが、微生物、有機分子、アンモニアおよびアミノ誘導体、硫化物、シアン化物、酸化可能なカチオン、パルプリグニン、スターチ、糖、オイル、スケールおよび腐食インヒビタなどの水処理添加物など、を含む。水中およびバイオフィルム中での微生物の増殖は、水の塩素要求量および処理されるシステムの塩素要求量に影響を与える。従来の酸化型殺生物剤は、重スライム(heavy slime)など、高塩素要求量を含む水中では非効率的であることがわかっている。
【0012】
通常、クロラミンは、塩素などの酸化型殺生物剤に対する高い要求量がある条件、あるいは、「酸化型」殺生物剤の残留から利益を得る条件下で使用される。家庭用水システムは、クロラミンで処理されることが多くなっている。一般的にクロラミンは、遊離塩素が水に存在するアンモニアまたは水に加えられたアンモニアと反応するときに形成される。クロラミンを生産する多種多様の方法が開示されている。塩素と窒素源との間の反応の重要な所定のパラメータが、生成された殺生物剤化合物の安定性および効率を決定する。前述した方法は、いずれかの反応物の希釈液のプリフォーメーションに依存しており、これらを混合してクロラミン溶液を生成する。反応物は、アンモニウム塩(硫酸塩、臭化物または塩化物)の形態のアミン源、および、ガス状またはアルカリ土類金属(NaまたはCa)と結合したCl−提供体(donar)(塩素提供体)、である。さらに、上述した方法は、高pHでの反応物の添加、または、腐食性(caustic)溶液の個別添加による、反応混合液のpHの調製に依存している。従って、生成された消毒剤は、この消毒剤が急速に分解するので、処理すべきシステムに即時に供給されなければならない。消毒溶液は、処理されるシステムの外側で作成され、次いで、処理するための水溶液システムに供給される。生物学的付着を制御するための液体を生成する上述の方法において、殺生物剤の活性成分が、化学的に不安定であり、急速に分解され、pHが急激に低下するという重大な問題が生じた。このような殺生物剤成分の急速な劣化は、効率面での低下につながる。殺生物剤の活性成分のpHは、殺生物剤成分の急速な分解によって、けっして8.0を超えることがないことも観察された(米国特許第5,976,386号参照)。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、以下の重要な側面を開示する:
1.安定な酸化型殺生物剤を適切に調製する装置。
2.リモート生成またはインサイチュウ生成として、酸化型殺生物剤を生成することができる装置。
3.混合前に反応成分を希釈する必要のない安定な酸化型殺生物剤を生成する方法。
4.生成された安定な酸化型殺生物剤がクロラミンである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、装置の一実施例の概略図である。
【0015】
【図2】図2は、蔵置の別の実施例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上述した内容は、以下の図を参照することによって、よりよく理解されるであろう。図面は、本発明を実施する方法を例示することを意図するものであり、本発明の範囲を限定するものではありません。
【0017】
本発明は、第1の供給ライン12と、第2の供給ライン14と、第3の供給ライン15と、撹拌機16と、生成物出口17とを具える安定な酸化型殺生物剤を生成するための装置10に関連している。本発明の第3の供給ライン15は、反応媒体と反応物を装置に供給して、安定な酸化型殺生物剤を生成するのに使用される。第3の供給ライン15は、好ましくは水、最も好ましくはシステムの駆動水である反応媒体(reaction means)に使用される。この駆動水は、酸化型殺生物剤で処理されるプロセスから得ることができる。
【0018】
本発明の別の実施例においては、安定な酸化型殺生物剤を生成する装置10は、第1の供給ライン12、第2の供給ライン14、撹拌機16および生成物出口17を具える。第1の供給ライン12および第2の供給ライン14は、安定な酸化型殺生物剤を生成するのに使用される生成物の輸送に適している。本発明の実施例は、共通に以下のコンポーネントを含み、従って、下記の説明は、全ての実施例に関連している。
【0019】
本発明の撹拌機16は、最も好ましくは静置型のインライン式ミキサである。本発明の生成物の生成物出口17は、酸化型殺生物剤のインサイチュウ生成を提供するように処理されるプロセスに直接連結されるか、後で使用するために酸化型殺生物剤を保存する保存用デバイスに連結されてもよい。また、本発明は、インサイチュウ生成を提供するように、処理されるプロセスに流体連通する生成物出口17を有することができる。
【0020】
装置10を用いて生成される好ましい安定な殺生物剤は、安定なクロラミンである。安定なクロラミンを生成するために、第1の供給ライン12および第2の供給ライン14を通過する反応物は、塩素源で濃縮され、アミン源で濃縮される。
【0021】
本明細書に記載される好適な実施例に対する各種変形および修正は、当業者には明らかであることを理解されたい。このような変形および修正は、本発明の意図および範囲から逸脱することなく、かつ意図した利点を低減することなく実施されうる。従って、上述した変形および修正は、添付の請求の範囲に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定な酸化型殺生物剤を生成する装置において、
(i)第1の供給ラインと、
(ii)第2の供給ラインと、
(iii)第3の供給ラインと、
(iv)撹拌機と、
(v)生成物出口と、
を具えることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記第1の供給ライン、前記第2の供給ラインおよび前記第3の供給ラインは、安定な酸化型殺生物剤を生成するように、反応媒体と反応物を輸送することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第3の供給ラインが反応媒体のために使用されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記反応媒体が水であることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記反応媒体が、さらに、システムの駆動水であることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記駆動水が、酸化型殺生物剤で処理されるプロセスから得られることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記撹拌機が、インラインミキサであることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記インラインミキサが静置型であることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記生成物出口が、前記酸化型殺生物剤をインサイチュウ生成するように、処理されるプロセスに直接連結されることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項10】
前記生成物出口が、貯蔵デバイスと流体連通することを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項11】
前記生成物出口が、前記酸化型殺生物剤をインサイチュウ生成するように、処理されるプロセスに流体連通することを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項12】
前記安定な酸化型殺生物剤がクロラミンであることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項13】
前記反応物が、濃縮塩素源および濃縮アミン源であることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
安定なクロラミンを生成する装置において、
(i)第1の供給ラインと、
(ii)第2の供給ラインと、
(iii)第3の供給ラインと、
(iv)撹拌機と、
(v)生成物出口と、
を具えることを特徴とする装置。
【請求項15】
前記第1の供給ライン、前記第2の供給ラインおよび前記第3の供給ラインは、安定なクロラミンを生成するように、反応媒体、塩素源およびアミン源を供給するように使用されることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記塩素源およびアミン源は、濃縮形態で使用されることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記第3の供給ラインは、前記反応媒体に使用されることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項18】
前記反応媒体が水であることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記反応媒体が、さらに、システムの駆動水であることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項20】
前記駆動水が、安定なクロラミンで処理されるプロセスから得られることを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記撹拌機がインラインミキサであることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項22】
前記インラインミキサが静置型であることを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記生成物出口が、前記安定なクロラミンをインサイチュウ生成するように、処理されるプロセスに直接連結されることを特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項24】
前記生成物出口が、貯蔵デバイスと流体連通することを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項25】
前記生成物出口が、前記安定なクロラミンをインサイチュウ生成するように、処理されるプロセスと流体連通することを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項26】
安定な酸化型殺生物剤を生成する装置において、
(i)第1の供給ラインと、
(ii)第2の供給ラインと、
(iii)撹拌機と、
(iv)安定な酸化型殺生物剤出口と
を具えることを特徴とする装置。
【請求項27】
前記第1の供給ラインおよび第2の供給ラインが、安定な酸化型殺生物剤を生成する反応物を供給するために使用される請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記反応物が、濃縮形態で使用されることを特徴とする請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記撹拌機がインラインミキサであることを特徴とする請求項26に記載の装置。
【請求項30】
前記インラインミキサが静置型であることを特徴とする請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記生成物出口が貯蔵デバイスと流体連通することを特徴とする請求項29に記載の装置。
【請求項32】
前記生成物出口が、処理されるプロセスと流体連通することを特徴とする請求項29に記載の装置。
【請求項33】
前記安定な酸化型殺生物剤は、クロラミンであることを特徴とする請求項32に記載の装置。
【請求項34】
前記反応物が、濃縮塩素源および濃縮アミン源であることを特徴とする請求項33に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−514792(P2010−514792A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544254(P2009−544254)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/088869
【国際公開番号】WO2008/083182
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(507248837)ナルコ カンパニー (91)
【Fターム(参考)】