安定な酸性飲料エマルジョン及びその製造方法
飲料組成物を製造する方法であって、疎水性成分を含有する水性飲料媒体を準備し、該媒体はpHが約2から約6.5であり、疎水性成分と乳化剤成分とを接触させ、乳化剤の少なくとも一部は実効電荷を有し、及びエマルジョンとポリマー成分とを接触させ、ポリマー成分の少なくとも一部は乳化剤成分の実効電荷とは反対の実効電荷を有することを含む飲料組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出願第60/721279号(2005年9月28日出願)(全趣旨を参照することによりここに取り込む)の優先権を享有する。
米国政府は、農務省からマサチューセッツユニバーシティーへの許可番号2002−35503−12296に準じてこの発明に対する特定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
一般に、用語「飲料エマルジョン」は、例えば、茶、コーヒー、ミルク、フルーツドリンク、乳製品系ドリンク、飲むヨーグルト、特殊調製粉乳、栄養飲料、スポーツドリンク及びコーラ等の飲料として消費されるいずれかの水中油型エマルジョンを指す。より詳しくは、それは、通常、冷やして飲まれる(例えば、果物、野菜、茶、コーヒー及びコーラ飲物)中等度又は高い酸性飲料(pH2〜6.5)を示すものとして用いることができる。この種の製品には、多くの共通する製造、組成及び物理化学的特製を有する。飲料エマルジョンは、通常、油相及び水相を一緒にホモジナイズし、濃縮水中油型エマルジョンをつくることにより製造され、それは、後に水溶液で希釈して最終製品となる。飲料エマルジョンの油相は、通常、無極性キャリヤ油(例えば、テルペン)、香味油及び増量剤の混合物を含み、一方、水相は、一般的に、水、乳化剤、砂糖、酸及び防腐剤を含む。最終飲料エマルジョンの水相は、通常非常に酸性度が高い(pH2.5〜4.0)。最終飲料製品は、比較的低い油滴濃縮物(一般的に0.01〜0.1重量%)を含むので、わずかに濁っているか、「曇った」外観を有する。また、それらは、滴の存在よりもむしろ連続相によって支配される流動学的特性を有する。飲料エマルジョンは、クリーミング、凝集沈殿、合着及びオストワルト成長を含む種々の物理化学的メカニズムによって、保存の間、破壊される傾向がある熱力学的に不安定なシステムである。飲料エマルジョンの長期安定性は、加工又はホモジナイズの間、これらのプロセスを妨害する種々の安定化剤(例えば、乳化剤、増粘剤及び増量剤等)を添加することによって、通常延長される。
【0003】
市販の飲料エマルジョンで用いられる最も一般的な乳化剤は、アラビアゴムである。アラビアゴムは(別名アカシアゴム)、通常、アカシア属の木からの天然の滲出液に由来するポリマー材料である。アラビアゴムは、通常、その表面活性、高い水溶性、低溶液粘度及びエマルジョン滴の周辺に保護膜を形成する能力のため、有効な乳化剤である。いずれにしても、それは比較的低い表面活性(界面活性剤及びタンパク質と比較した場合)を有し、比較的大量での使用を必要とする。例えば、20%程度のアラビアゴムが、安定な12.5%の水中油型エマルジョンを生成するために必要とされるかもしれないが、一方、1%未満のホエイタンパク質分離株が必要である。そのうえ、常に高品質のアラビアゴムを信頼できる筋から得ること及び多くの飲料製造業者に他の乳化剤源を調査させることを促すことには、重大な問題がある。
【0004】
種々の食物タンパク質が、酸性飲料エマルジョンにおいて乳化剤として用いることができることが提案されている(例えば、ホエイタンパク質、大豆タンパク質、カゼイン、植物タンパク質、魚タンパク質、食肉蛋白質又は卵タンパク質)。そのようなタンパク質は、エマルジョンを安定化させるためのアラビアゴムより非常に低濃度で用いることができる(例えば、0.1g未満のタンパク質が1gの油を安定化させるために通常必要とされ、一方、1gの油を安定化させるために1gより多いアラビアゴムが必要とされる)。その上、タンパク質成分の組成的及び機能的な特性と供給信頼性とは、通常、アラビアゴムのそれより非常によいことが示されている。いずれにしても、多くのタンパク質安定化エマルジョンは、酸性条件(pH3〜6)下、滴凝集沈殿及び合着に対して、相当安定性が低い。さらに、大部分の食物タンパク質は、酸性飲料エマルジョンで見出される条件下でカチオンである(つまり、正に荷電されている)滴を生成し、その場合の溶液pHはそれらの等電点より低い。これは、システム中で、カチオン滴と種々のアニオン成分(例えば、アニオン生物高分子、ミネラルイオン、ビタミン、フレバー、防腐剤、緩衝剤、酸等)との間の静電気引力のため、製品の安定性に対して、さらなる問題を引き起こすこととなる。これらの理由から、食物タンパク質はめったに用いられず、酸性飲料エマルジョンを安定化させる他のアプローチを模索するという課題を残す。
【0005】
発明の要旨
上記の観点から、本発明の目的は、水性エマルジョン及び/又は関連飲料組成物及びそれらの製造方法を提供することであり、これによって、上述したものを含む従来技術の種々の欠点及び短所を解消することができる。本発明の1以上の観点は所定の目的に合致し、一方、1以上の他の観点は、所定の他の目的に合致することは当業者に理解されるであろう。それぞれの目的は、本発明のその全ての観点において、あらゆる局面に等しく適用されなくてもよい。従って、この発明のいかなる1つの面に関して、以下の目的は、択一的に捕らえることができる。
【0006】
本発明の目的は、従来のアラビアゴムと比較して、システムを安定化させるために必要とされる乳化剤の総量を著しく低下させることができる1以上の乳化システム又は乳化組成物を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、著しい凝集沈殿又は合着なしに、酸性条件下において安定なエマルジョンを提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、1以上の荷電したシステム成分の存在において、酸性条件下で安定なエマルジョンシステムを提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、上述した1以上のいずれかの目的とともに、1以上の本発明のエマルジョンを含む酸性飲料組成物を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的、特徴、利益及び利点が要旨及び以下の記載から明らかであり、水性エマルジョン、関連飲料組成物及び製造技術の知識を有する当業者にとって容易に理解できるであろう。そのような目的、特徴、利益及び利点は実施例、データ、図面及びこれらから引き出される全ての合理的な推論の単独またはここに組み込まれた参考文献の検討を一緒に考慮することにより明らかであろう。
【0011】
一つには、本発明は、乳化された実質的に疎水性油脂成分を含有する飲料を製造及び/又は安定化する方法を提供することができる。そのような方法は、油脂成分を準備し、油脂成分を、少なくとも一部が実効電荷を有する乳化剤成分と接触させ、及びそれぞれ少なくとも一部が、乳化剤成分及び/又は先に取り込まれた食品等級のポリマー成分とは反対の実効電荷を有する少なくとも1つの食品等級のポリマー成分と接触させ又は取り込むことを含むことができる。限定されることなく、図1Aを参照して、油脂エマルジョンの製造を説明する。そのような油脂成分は、酸性飲料組成物又は生成物あるいはエマルジョン後にそれに取り込まれたものの一部として存在することができる。例えば、多層組成物又は成分膜によって囲まれた油滴の水性エマルジョンは、スプレードライ又はフリーズドライで、対応する粒子状の材料を与え、次いで、飲料組成物の一部として再構成することができる。例えば、同時出願の同時係属出願「カプセル化エマルジョン及びその製造方法」(全趣旨を参照することによりここに取り込む)参照。いずれにしても、ここ以外で示されているように、そのようなエマルジョンは、pHが安定し、酸性飲料組成物の状況で良好に機能する。
【0012】
従って、特定の実施形態において、そのような方法は、反対に荷電された乳化剤又は食品等級のポリマー成分の交互の接触又は取り込みを含むことができ、それぞれのそのような接触又は取り込みは、先に接触され又は取り込まれた乳化剤又は食品等級のポリマー成分との静電気相互作用を含む。そのような方法は、形成されたいかなる凝集又は浮塊をも破壊するために、得られた組成物の機械的振動及び/又は超音波処理を任意に含むことができる。
【0013】
上記によれば、疎水性成分は、水性又は他の媒体に少なくとも部分的に不溶とすることができ、及び/又は水性媒体中でエマルジョンを形成することができる。特定の実施形態において、疎水性成分は、限定されないが、当業者に公知のいずれかの可食植物油(例えば、コーン、大豆、キャノーラ、菜種、オリーブ、ピーナツ、藻類、パーム、ココナッツ、ナッツ及び/又は植物油、魚油又はその組合せ)を含む脂肪又は油成分を含むことができる。疎水性成分は、水素化又は部分的に水素化された脂肪及び油から選択することができ、例えば、酪農脂肪を含むいずれの乳業又は動物性脂肪もしくは油をも含むことができる。さらに、疎水性成分は、香料、酸化防止剤、防腐剤及び/又は栄養成分(例えば、脂溶性ビタミン)をさらに含むことができる。
【0014】
本発明のより幅広い観点と一致して、疎水性成分は、限定されないが、所定の食物又は飲料エンドユーザ用途で必要とされるような、脂肪酸(飽和又は不飽和)、グリセロール、グリセリド及びそれらの各誘導体、リン脂質及びそれらの各誘導体、糖脂質、フィトステロール及び/又はステロールエステル(例えば、コレステロールエステル、フィトステロールエステル及びそれらの誘導体)、カロテノイド、テルペン、酸化防止剤、着色剤及び/又は香料オイル(例えば、ペパーミント、柑橘類、ココナッツ又はバニラ及びそれらの抽出物(例えば、柑橘類油からのテルペン))を含むいずれかの天然及び/又は合成脂質成分をさらに含有することができることは容易に明確に理解されるであろう。そのような成分の他のものは、限定されないが、臭素化植物油、エステルガム、蔗糖アセテートイソブチレート、ダマールガム等が挙げられる。従って、本発明は、広範な可食油脂、ワックス及び/又は種々の分子量の脂質成分を意図しており、炭化水素類(芳香族、飽和、不飽和)、アルコール、アルデヒド、ケトン、酸性及び/又はアミン部位又は官能基を含む。
【0015】
乳化剤成分は、少なくとも部分的に水相中の疎水性成分を乳化し、それらの少なくとも一部に実効電荷を与えることができる当該分野で公知のいずれかの食物等級の界面活性成分、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤を含むことができる。乳化剤成分は、小分子界面活性剤、脂肪酸、リン脂質、タンパク質及び多糖類ならびにそれらの誘導体を含んでもよい。そのような乳化剤は、限定されないが、レシチン、キトサン、改変デンプン、ペクチン、ガム(例えば、ローカストビーンガム、アラビアゴム、グアーゴム等)、アルギン酸、アルギナート及びそれらの誘導体ならびにセルロース及びその誘導体の1以上を含む。タンパク質乳化剤は、酪農タンパク質(例えば、ホエイ及びカゼイン)、植物タンパク(例えば、大豆)、食肉蛋白質、魚タンパク質、植物タンパク質、卵タンパク質、オバルブミン、糖タンパク質、ムコタンパク質、リンタンパク質、血清アルブミン、コラーゲン及びそれらの組み合わせのいずれか1つを含むことができる。成分を乳化するタンパク質は、それらのアミノ酸残基(例えば、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等)に基づいて、疎水性成分のまわりの界面膜の全実効電荷を最適化し、従って、結果として生じるエマルジョンシステムにおける疎水成分の安定性を最適化するために、選択することができる。
【0016】
実際、乳化剤成分は、例えば、モノグリセライドの酢酸エステル(ACTEM)、モノグリセリドの乳酸エステル(LACTEM)、モノグリセライドのクエン酸エステル(CITREM)、モノグリセライドのジアセチル酸エステル(DATEM)、モノグリセライドのコハク酸エステル、ポリグリセロールポリリシノール酸エステル、脂肪酸のソルビタンエステル、脂肪酸のプロピレングリコールエステル、脂肪酸の蔗糖エステル、モノ及びジグリセリド、果物酸エステル、ステアロイルラクチラート、ポリソルベート、澱粉、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)及び/又はそれらの組合せを含む広範な一連の乳化剤を含むことができる。
【0017】
上述したように、ポリマー成分は、吸着、静電気相互作用及び/又は疎水性成分及び/又は関連乳化剤成分に結合することができる、いずれかの食品等級のポリマー材料を含むことができる。従って、食品等級のポリマー成分は、限定されないが、タンパク質(例えば、ホエイ、カゼイン、大豆、卵、植物、肉及び魚タンパク質)、イオン性又はイオン化可能な多糖類(例えば、キトサン及び/又はキトサン硫酸塩)、セルロース、ペクチン、アルギナート、核酸、グリコーゲン、アミロース、キチン、ポリヌクレオチド、アラビアゴム、アカシアガム、ガラギナン、キサンタン、寒天、グアーゴム、ゲランガム、トラガカントゴム、カラヤゴム、ローカストビーンガム、リグニン及び/又はそれらの組み合わせから選択されるバイオポリマー材料であってもよい。上述したように、そのようなタンパク質成分は、それらのアミノ酸残基に基づいて、全実効電荷、乳化剤成分との相互作用及び/又は結果として生じるエマルジョン安定性を最適化するために選択することができる。食品等級のポリマー成分は、改変ポリマー(例えば、改変デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデキストラン又はリグニンスルホンネート)から、代わりになるべきものとして選択することができる。
【0018】
本発明は、特定の食品に適用できる環境又は最終用途状況の下で、十分に安定な油/脂肪及び/又は脂質成分を含む多層組成物の形成をもたらす乳化剤及びポリマー成分のいずれかの組み合わせを意図する。従って、疎水性成分は、疎水性成分が取り込まれるエマルジョンシステム/食品のpH、イオン強度、塩濃度、温度及び処理条件によって、広範な乳化剤/ポリマー成分をカプセル化及び/又は固定化することができる。そのような乳化剤/ポリマー成分の組み合わせは、他との静電的相互作用及び対応エマルジョンの形成によってのみ制限される。いずれにしても、適当な壁成分の導入において、そのようなエマルジョンは、貯蔵、輸送及び/又はその後の飲料組成物中又は飲料組成物との再組成のために、噴霧乾燥することができるか、あるいは、粉末又は粒子材料に加工することができる。そのような疎水性成分、乳化剤成分及びポリマー成分は、出願中の特許出願第11/078,216号(2005年3月11日出願)(全趣旨を参照することによりここに取り込む)で記載又は示されたものから選択することができる。
【0019】
一つには、本発明は、エマルジョン及び微粒子の形成のための他の方法を含むことができる。先のことに関して、ポリマー成分は、十分な静電的相互作用のために助けにならないpHで又は条件下で、油脂成分及び乳化成分を含む組成物を取り込むか又はそのような組成物と接触することができる。pHは、よって、ポリマー成分との静電的相互作用又はポリマー成分の取り込みを十分促進させ、エマルジョン、乳化油脂成分及び/又はポリマー成分の実効電荷を変化させるために、変化させることができる。限定されることなく、安定な酸性飲料エマルジョンは、カチオン又は実効正荷電エマルジョン滴を形成するために、その等電点以下のpHで、タンパク質乳化剤(例えば、限定されることなく、カゼイン、ホエイ、大豆、卵又はゼラチン)を用いて、次いで、最初のエマルジョン組成物との静電的相互作用のために、アニオン又は実効負荷電多糖類(例えば、限定されることなく、ペクチン、カラゲーニン、アルギナート又はアラビアゴム)を用いて、製造することができる(例えば、図1B参照)。製造方法に関係なく、そのようなエマルジョンは、酸性飲料組成物に共通して、他のアニオン成分との相互作用に安定である。
【0020】
製造方法に関係なく、エマルジョンは、極性脂質、タンパク質及び/又は炭水化物から選択される壁成分と接触することができる。種々の壁成分は、当該分野における及び本発明を認識する当業者に公知である。そのようなエマルジョンは、1以上の壁成分と共に、噴霧乾燥器からの供給材料として用いることができる。従って、対応するエマルジョンは、乳化油脂成分のまわりの壁成分を含む滴の分散液に加工することができる。分散は、分散滴から水相の少なくとも部分的な蒸発を促進するために、加熱乾燥媒体に導入又は接触させることができ、壁成分マトリクス中における油脂、乳化剤及びポリマー成分を含む固体又は固体様粒子を与える。適用されると、エマルジョンは、ここに記述された種類の酸性飲料で再構成させることができる。
【0021】
限定されることなく、以下の実施例によれば、エマルジョンは、食品等級成分及び標準的な製造方法(例えば、ジョモジナイズ及び混合)を用いて製造することができる。まず、電気的に荷電された乳化剤成分を含む最初の水性エマルジョンを、油脂成分、水相及び実効電荷を有する適当な乳化剤とホモジナイズすることによって製造することができる。任意に、機械的動揺又は超音波処理を、いずれかの浮塊形成を破壊させるために最初のエマルジョンに適用することができ、取り込まれていない乳化剤成分のいずれかを除去するために、エマルジョンの洗浄を行うことができる。第2のエマルジョンは、最初のエマルジョンと実効電荷ポリマー成分との接触によって製造することができる。ポリマー成分は、最初のエマルジョンの少なくとも一部とは反対の実効電荷を有することができる。任意に、機械的動揺又は超音波処理を、いずれかの浮塊形成を破壊させるために適用してもよく、取り込まれていない乳化剤成分のいずれかを除去するために、エマルジョンの洗浄を行うことができる。上述したように、エマルジョンの特徴は、最初のエマルジョンとポリマー成分との静電的相互作用を促進するか、強化するために、pH調整によって変化させることができる。製造方法に関係なく、壁成分は、粉末形成及びその後の飲料組成物中又は飲料組成物との再構成のために、最初又は第2のエマルジョンのいずれかとともに又は連続して導入することができる。
【0022】
従って、本発明は、少なくとも一部には、実質的に疎水性油脂成分、乳化剤成分及びポリマー成分を含む酸性飲料組成物に関する。本発明の広範な観点に一致して、そのような組成物は、油脂成分のまわりにいずれかの食品等級の複数の成分層を含みことができ、各層はそのような材料に隣接する少なくとも一部と反対の実効電荷を有する。あるいは、そのようなエマルジョンを乾燥し、次いで、飲料製品の一部として再構成することができ、そのような製品は、限定されないが、ここで示した又は当業者に知られているであろういずれかの酸性飲料を含む。そのような飲料は、エマルジョンの再構成又はそれらの形成にかかわらず、限定されないが、約2から約6.5の範囲のpHを示す中等度及び高度の酸性飲料を含み、そのような飲料は、限定されないが、コーラ及び/又はソーダ(炭酸及び非炭酸)、フルーツ及び野菜ジュース及びドリンク、茶及びコーヒー(及びそれらの誘導体)、酸性化酪農系ドリンクを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
ここのどこか他で記載したように、本発明は、1以上の乳化油脂成分を含む酸性、水性飲料組成物に指向することができ、それによって、結果として生じるエマルジョンが、例えば、従来例のアラビアゴム乳化剤のその有効な使用にまさる、ある程度の物理的安定性を提供する。本発明の乳化剤及び/又はポリマー成分は、一実施形態では、さらなる試験又は規制の承認なしに、食品等級のタンパク質(現在の生産技術を使用して経済的に製造することができる)を含むことができる。さらに、取り込まれた1以上の文献に十分記載されているように、そのような乳化剤及びポリマー成分は、劣化(例えば、酸化)に対する乳化疎水性成分の安定性を向上させることができる。
【0024】
限定されることなく、本発明の多層成分界面膜によって安定化されたエマルジョンは、(1)乳化剤及び/又はポリマー成分を、油及び水相のホモジナイズの前にシステムに取り込み、(2)乳化剤及び/又はポリマー成分を、油及び水相のホモジナイズの後に取り込み、及び(3)乳化剤及び/又はポリマー成分を、油及び水相のホモジナイズの間にシステムに取り込む3つの方法の1つによって製造することができる。ここのどこか他で記載したように、そのような準備システムの水相は、酸性飲料組成物又はその途中で有用な成分とすることができる。
【0025】
方法(2)を参照すると、例えば、多段方法は、エマルジョンを製造するために用いることができ、2又は3成分相(例えば、乳化剤−バイオポリマー1−(任意に)バイオポリマー2)によって被覆することができる。第1に、乳化剤の層によって安定化された電気的に荷電された滴を含む一次エマルジョンは、油成分、水相及びイオン性又は両親媒性乳化剤とともにホモジナイズすることによって製造することができる。必要であれば、機械的動揺又は超音波処理を、いずれかの形成された浮塊を破壊させるために一次エマルジョンに適用することができ、取り込まれていない非吸着バイオポリマーのいずれかを除去する(例えば、遠心分離又はろ過によって)ために、エマルジョンの洗浄を行うことができる。第2に、乳化剤−バイオポリマー1膜によって安定化された荷電滴を含む二次エマルジョンは、バイオポリマー1を一次エマルジョンに取り込むことによって製造することができる。バイオポリマー1は、一次エマルジョン中の滴の少なくとも一部とは反対の実効電荷を有することができる。必要であれば、機械的動揺又は超音波処理を、いずれかの形成された浮塊を破壊させるために適用してもよく、取り込まれていない非吸着バイオポリマーのいずれかを除去する(例えば、遠心分離又はろ過によって)ために、エマルジョンの洗浄を行うことができる。第3に、乳化剤−バイオポリマー1−バイオポリマー2膜によって安定化された荷電滴を含む三次エマルジョンは、バイオポリマー2を二次エマルジョンに取り込むことによって製造することができる。バイオポリマー2は、二次エマルジョン中の滴の少なくとも一部とは反対の実効電荷を有することができる。必要であれば、機械的動揺又は超音波処理を、いずれかの形成された浮塊を破壊させるために三次エマルジョンに適用してもよく、非吸着バイオポリマーのいずれかを除去する(例えば、遠心分離又はろ過によって)ために、エマルジョンの洗浄を行うことができる。この工程は、さらなる層を界面膜に加えるために連続してもよい。
【0026】
例えば、実施例1〜3によれば、3層被覆脂質滴を含むエマルジョンを、食品等級の成分(レシチン、キトサン、ペクチン)及び標準的な製造方法(ホモジナイズ及び混合)を利用する方法を用いて製造した。最初に、小さなアニオンカプセルを含む一次エマルジョンを、油、水及びレシチンのホモジナイズによって製造した。次いで、レシチン−キトサン膜で被覆されたカチオンカプセルを含む二次エマルジョンを、キトサン溶液と一次エマルジョンとを混合することによって製造し、いずれかの形成された浮塊を破壊させるために、機械的動揺を適用した。レシチン−キトサン−ペクチン膜で被覆されたカチオンカプセルを含む三次エマルジョンを、次いで、第2のエマルジョンとペクチン溶液とを混合することによって製造し、さらにいずれかの形成された浮塊を破壊させるために機械的動揺を適用した。二次及び三次エマルジョンは、本発明の酸性飲料組成物に共通するものを含む、広範なpH値にわたって、凝集に対して良好な安定性を有した。
【0027】
ここに記載したように、エマルジョンシステムは、油脂成分を1以上の乳化剤及び/又はポリマー成分に接触させることによって製造することができる。そのエマルジョンは、最終用途条件の下でも安定であり、よって、脂質、乳化剤及び/又はポリマー成分を、特定の飲料製品の加工及び最終用途適用のために適する温度、pH、塩濃度及びイオン強度に基づいて選択することができる。さらに、脂質成分をカプセル化する各層成分の成分選択を広範囲にし、よって、カプセル化された脂質の物理化学的及び知覚上の特性を変化させない成分材料の選択を可能にするとともに、そのようなカプセル化された脂質を、製品の味、外観、テクスチャー及び安定性に悪影響を与えることなく、飲料製品に容易に代用することを可能にする。
【0028】
実施例4a〜4c及び5a〜5eでは、種々の多糖類がたんぱく質被覆油滴の表面に吸着されるか否かを測定し、形成された界面の電気特性についての情報を得るために多くの実験を行った。最初に、β−Lg−安定化エマルジョンを、多糖類の異なる種類の有(二次エマルジョン)無(一次エマルジョン)及び異なる濃度にて、pH7で調整した。pH7で、タンパク質及び多糖類は、同様の電気的荷電を有し、従って、多糖類は、タンパク質被覆滴の表面に吸着されることを予想しなかった。よって、pH7からpH3又はpH4に、エマルジョンのpHを減少させ、1日保存後、得られたエマルジョンの粒子のζ−電位を測定した(図2)。これらのpH値で、タンパク質(正)及び多糖類(負)における電荷は反対であり、よって、水相におけるアニオン多糖類はカチオンタンパク質被覆滴に電気的にひきつけられることが予想された。
【0029】
エマルジョン滴における電荷(ζ−電位)は、最終的なpH、多糖類の種類及び多糖類の濃度に強く依存した(図2)。多糖類が存在しない場合、吸着β−Lgはその等電点(pI〜5.0)以下であるために、タンパク質被覆エマルジョン滴における電荷は正であった。エマルジョンの水相における多糖類の濃度の上昇につれて、滴における電荷は、最初、正が弱くなり、最終的にプラトー値に達するまで、より負が強くなった。同様の結果が、ζ−電位における変化は、滴表面が飽和されるまで、カチオンタンパク質被覆滴表面におけるアニオン多糖類の吸着が進行するのに寄与したという、先の研究で観察されている。多糖類濃度の増加に伴ってζ−電位が最初に急激に変化し、飽和ζ−電位は多糖類の種類及びpHに依存した。
【0030】
ζ−電位を、以下の経験式によって計算された多糖類濃度曲線に対してシュミレーションした。
【数1】
(ここで、ζ(c)は多糖類濃度cでのエマルジョン滴のζ−電位であり、ζ0は多糖類がない場合のζ−電位であり、ζsatは滴が多糖類で飽和した場合のζ−電位であり、c*は臨界多糖類濃度である。)
数学的には、c*は、ζ−電位における変化が、飽和に対するζ−電位における総変化の1/eである場合:Δζ=Δζsat/eの濃度である。従って、c*の値は、滴表面に対する多糖類の結合親和力の大きさであり、c*が高くなると、結合親和力が小さくなる。従って、滴表面への多糖類の結合は、ζsat及びc*によって特徴付けられる。ζ0、ζsat及びc*値を、pH3及び4での3種の異なる多糖類について、表1に一覧する。ζ0及びζsatの値を、多糖類なし及び用いられた最も高い濃度の多糖類(飽和が予想される)でのζ−電位の測定から決定した。よって、c*値は、式1と実験データとの間での最適な量を見出すことによって(マイクロソフト社のエクセルのsolver ルーチンを用いて)得た。実験測定値と、式1及び表1に挙げられたパラメータを用いて二次エマルジョンに対して予測されるζ−電位との間で良好な一致を示した(図2)。
【0031】
結合親和力は、多糖類の種類及び溶液のpHに依存した(表1)。pH3及び4の双方で、アラビアゴムよりも、アルギナート及びカラギナンのc*値は、かなり低く、それらが滴表面に対して強い結合親和力を有していることを示唆している。カラギナン及びアラビアゴムについて、結合親和性は、pH3及び4で相当類似していたが、アルギナートについて、結合親和性は、pH3及び4で非常に高い(c*を低くする)。また、ζ−電位の飽和値は、多糖類の種類及び溶液のpHに依存した(表1)。タンパク質/ガラギナン被覆滴は、高い負の電荷を有し、pH3及び4で同様のζsat値を有した(ζsat≒−50mV)。タンパク質/アルギナート被覆滴は、pH4で高い負の電荷を有した(ζsat≒−45mV)が、pH3で、かなり小さな電荷となった(ζsat≒−26mV)。タンパク質/アラビアゴム被覆滴は、双方のpHで最小の負の電荷を有するが、負の電荷は、pH4でζsat≒−35mVであり、pH3でζsat≒−19mVよりも、かなり高かった。
【0032】
表1:pH3及び4での多糖類濃度の測定値に対するζ−電位から測定したタンパク質被覆滴表面への多糖類の結合を特徴付けるパラメータ
【表1】
【0033】
タンパク質/多糖類被覆滴の電気特性における差異は、多糖類分子の電荷密度における差異のためと考えられる。従って、0.1重量%の多糖類水溶液の電気特性(ζ−電位対pH)を測定した(図3)。これらの測定値は、多糖類分子のζ−電位(ζPS)が、タンパク質/多糖類複合体によって被覆されたエマルジョン滴のζsat値と同様の動向に従うことを示す:ガラギナン、アルギナート及びアラビアゴムのそれぞれにおいて、pH3で、ζPS=−53、−30及び−9mV、pH4で、ζPS=−51、−55及び−23mVである(図3)。カラギナン分子及びタンパク質/カラギナン被覆滴の電荷は、pH3及び4の双方で高い負である。アルギナート分子及びタンパク質/カラギナン被覆滴の電荷はpH4では高い負であるが、pH3ではそれほどではない。アラビアゴム分子及びタンパク質/アラビアゴム被覆滴の電荷は、他の2種の多糖類に対してかなり弱い負であり、pH3及び4でかなり低い。よって、タンパク質/多糖類被覆滴の電気特性は多糖類分子の電気特性によって主に決定されるようである。
【0034】
タンパク質被覆滴が多糖類で飽和された場合、ζ−電位における全体の変化を試験することも実態を見抜いている:Δζsat=ζ0−ζsat(表1)。カラギナンについて、ζ−電位の全体の変化は、最終的なζsat値が双方のpH値でかなり類似していた(ζsat≒−50mV)としても、pH4(ζsat≒81mV)でよりもpH3で相当高い(ζsat≒112mV)。カラギナン分子における電荷はpH3及びpH4でかなり近似しており(図3)、よって、限定されることなく、pH4でよりも、pH3で滴表面によりカラギナン分子が吸着すると仮定することができる。この観察の考えられる説明は、それが接近している荷電多糖類及び荷電表面の間の電気的相互作用に関して与えることができる。反対の電荷表面上の合成高分子電解質の吸着の研究では、その電荷密度があまり低くないならば、最終的なζ−電位が、吸着している高分子電解質の電荷密度に依存していないと報告している。この現象は、一旦表面荷電が特定の値に達すると、水相における表面と同様に荷電された多糖類との間で強い静電反発が起こるという事実に起因し、それは高分子電解質のさらなる吸着を制限する。よって、タンパク質被覆滴表面に吸着したカラギナン分子は、特定のζ−電位に達し(≒−50mV)、次いで、静電反発が、さらなるポリマー吸着を防止するのに十分なほど強くなった。
【0035】
これらの実験の目的は、多糖類の種類、多糖類の濃度及びβ−Lg−被覆滴を含む水中油型エマルジョンの安定性におけるpHを試験するためであった。上述したように、β−Lg−安定化エマルジョンを、pH7で、多糖類の異なる種類及び濃度の有(二次エマルジョン)無(一次エマルジョン)において製造し、次いで、pHを、酸を添加することによってpH3又は4のいずれかに減じた。凝集及びクリームの滴に対するエマルジョンの安定性を、次いで、光分散、濁度及びクリーミング安定性測定器を用いて測定した(図4から6)。
【0036】
凝集及びクリーミングの滴に対するエマルジョンの安定性は、多糖類の種類、多糖類濃度及び溶液pH(図4から6)に相当依存した。多糖類がない場合、一次エマルジョンは、pH3及び4で24時間の貯蔵の後、凝集滴に対して安定に見えた(低z粒径、低τ800)。おそらく、タンパク質被覆滴の正電荷は、強い滴間静電反発(3)を生じることによって滴凝集を防止するほど十分高かった。また、pH3の一次エマルジョンは、室温で7日間保存の後、クリーミングに対して安定し、それは滴凝集が起こらないことを示した。他方、pH4の一次エマルジョンは、7日間保存の後にクリーミングに対して不安定であり、それはいくらかの滴凝集が時間とともに起こったことを示した。一次エマルジョンが、pH4でクリーミングに対して不安定だった理由は、このpHが、吸着したβ−ラクトグロブリン分子の等電点に対して相当近似しいるためであり、それによって、長期の保存の間に、滴間に、凝集を防止するために十分に強い静電反発がなくなるからかもしれない。
【0037】
中間の多糖類濃度では、二次エマルジョンは、滴凝集(高z粒径、高τ800)及びクリーミングに対してあまり安定でなかった。この現象は、電荷の中和及び架橋凝集作用に起因するものとすることができる。タンパク質被覆滴を完全に被覆するために十分な多糖類が存在しない場合、滴表面で露出する正電荷の領域及び負電荷の領域があり、これは、架橋凝集を促進するであろう。さらに、滴間の静電反発が、引力相互作用(例えば、ファンデアワールス及び疎水性)を克服するのに不十分であるために、滴における全体の実効電荷は比較的小さかった(|ζ|<15mV)。高濃度の多糖類では、二次エマルジョンは、pH3及び4の双方で、滴凝集(低z粒径、低τ800)及びクリーミングに対して安定であった。この再安定性は、滴表面が、多糖類で完全に被覆され、滴電荷が比較的高くなったという事実に起因するかもしれない(図2)。さらに、界面厚が、滴表面に対する多糖類の吸着のために、増加したであろう。よって、それら凝集に反発するであろうタンパク質/多糖類被覆滴間に強い静電及び立体反発があったであろう。
【0038】
エマルジョンが滴凝集及びクリーミングに対して安定でなかった中間の多糖類濃度の範囲は、多糖類の種類及びpHに依存した(図4から6)。例えば、カラギナンを添加したタンパク質被覆滴を含むエマルジョンは、pH3及び4で0.002重量%でのみ不安定であり、カラギナンを添加したこれらはpH4で0.002重量%で不安定であったが、pH3で0.002から0.006では安定であり、アラビアゴムを添加したものは、pH4で0.002から0.006重量%で不安定であったが、pH3で0.002から0.01で安定であった。滴凝集の作用におけるこれらの差異は、滴電化における差異に起因するであろう(図2)。一般に、エマルジョンは、ζ−電位の大きさが大きく、滴が多糖類で十分被覆されている場合、滴凝集に安定であった。
【0039】
環境ストレスに対するエマルジョンの安定性
一連の実験の目的は、タンパク質/多糖類被覆滴を含む二次エマルジョンが、タンパク質被覆滴を含む一次エマルジョンよりも環境ストレスに対してより安定であるか否かを測定することである。ζ−電位測定は、タンパク質被覆滴と多糖類との相互作用を評価するために用いられ、クリーミング安定性測定は、エマルジョンの全体的な安定性を評価するために用いられた。異なる塩濃度(0、50又は100mMのNaCl)、糖濃度(0又は10重量%の蔗糖)及び熱処理(30又は90℃)での一次及び二次エマルジョン(0.1重量%水中コーン油型エマルジョン、pH4)を分析した。二次エマルジョンの多糖類濃度を、(i)それがζ−電位測定から測定されたものとしてタンパク質被覆滴表面を飽和するために十分となる(図2)ように、(ii)それは滴凝集及びクリーミングに対して安定であった二次エマルジョンを生成するために必要な最小限濃度以上となる(図4から6)ように、選択した。このため、二次エマルジョンを、0.004重量%カラギナン、0.004重量%アルギナート、0.02重量%アラビアゴムを用いて調製した。
【0040】
エマルジョンの安定性における熱処理(30分間、30又は90℃)の影響を、図7に示す。先の研究は、β−Lg安定化エマルジョンを90℃に加熱することが、吸着タンパク質の熱変性のために滴凝集を促進し得ることを示した。非加熱及び加熱一次エマルジョンは、pHが吸着β−ラクトグロブリンの等電点にかなり近かったため、双方とも加熱に対して不安定であり、そのため滴間で凝集を防止するほど十分に強い静電反発がなかった。他方、二次エマルジョンの全ては、熱処理に対して安定であった(図7)。多糖類は、タンパク質被覆滴の表面に吸着し、界面厚み及び電荷を増加させることによって滴間の立体及び静電反発を増加させたと考えられる。結果は、加熱が滴表面から多糖類を脱着させず、二次エマルジョンは一次エマルジョンのように滴凝集に対して不安定にならなかったことを示唆する。この仮説は、ζ−電位測定によって確認され、それは、二次エマルジョンにおける滴の電荷が、熱処理において±2mV未満まで変化した(データを示さず)ことを示す。よって、加熱によって引き起こされた滴表面から多糖類の脱着の証拠はない。
【0041】
エマルジョンの安定性において塩の添加(0、50又は100mMのNaCl)の影響を図8に示す。一次エマルジョンは上述した理由のためにすべての塩濃度において不安定であった。アルギナート及びカラギナンを含む二次エマルジョンは、0及び50mMのNaClでクリーミングに対して安定であったが、100mMのNaClで不安定であった。一方、アラビアゴムを含む二次エマルジョンは、50及び100mMのNaClでクリーミングに対して非常に不安定であった。エマルジョンに対する塩の添加は、多くの方法においてそれらのクリーミングの安定性に悪影響を与えるかもしれない。第1に、塩は、荷電滴間の静電反発をスクリーニングし、それは、反発コロイド相互作用の強度がもはや吸引コロイド相互作用を克服するのに相当十分でない場合、滴凝集を促進することができる。第2に、エマルジョンにおける塩の存在は、多糖類とタンパク質被覆油滴との間の静電吸引を弱めているかもしれず、それは、多糖類分子の部分的又は十分な脱着をもたらすかもしれない。これらのエマルジョンのζ−電位は塩濃度の増加に伴って相当変化することはないという事実(以下参照)は、カラギナン分子が滴表面から十分脱着しないことを示唆する。いずれにしても、多糖類とタンパク質被覆滴表面との間の引力を弱めることは、1以上の滴に対する多糖類の吸着のために、架橋凝集をもたらすかもしれない。pH4で、タンパク質/アラビアゴム被覆滴は、タンパク質/カラギナン又はタンパク質/アルギナート被覆滴よりもおおむね低いζ−電位を有し、これは、滴間の静電反発が弱いことを意味する。これは、低量のNaClがアラビアゴムエマルジョンにおける滴凝集を促進するために必要であったという事実の説明になるであろう。さらに、滴表面に対するアラビアゴムの架橋親和性は、カラギナン及びアルギナートのそれよりも弱く(表1)、NaClがより容易にアラビアゴムを吸着しているかもしれないという可能性をもたらす。滴のζ−電位の測定を、塩の添加に伴って観察されたエマルジョンにおける安定性の物理化学的起源に対するさらなる見通しを与えるために用いた。
【0042】
ζ−電位測定におけるNaClの影響は、二次エマルジョンを調製するために用いられた多糖類の種類に大いに依存した(図9)。つまり、ζ∝κ-1(連続表面荷電密度及び界面構造における変化なしを仮定する)である(ここで、κ-1はデバイ・スクリーニング長(3))、静電スクリーニング作用のために、塩濃度の増加に伴うζ−電位における漸進的な減少が予想される。室温での水溶液に対して、デバイ・スクリーニング長は、κ-1≒0.304/√Inm(ここで、Iはモル/リットルで表される溶液のイオン強度(3))によりイオン強度に関連する。よって、滴電位は以下の様式:ζ∝1/√Iにおける塩濃度の増加に伴って減少することが予想される。
【0043】
タンパク質被覆滴に対して、塩濃度の増加に伴うζ−電位における漸進的な減少があり(図9)、これは、静電スクリーニング作用に起因するかもしれない。一方、タンパク質/カラギナン及びタンパク質/アルギナート被覆滴について、塩濃度の増加に伴うζ−電位における減少は、予想よりもはるかに少なかった。この種の作用は、β−ラクトグロブリン/ペクチン被覆滴を含有する二次エマルジョンに対しても観察されており、塩濃度に伴う界面膜の組成、厚み及び構造における変化に起因していた。塩添加の結果としてのこれらの界面特性の変化は、吸着及び非吸着多糖類間(反発)、2以上の吸着多糖類間(反発)又は吸着多糖類とタンパク質との間(引力)の静電的相互作用の減少のために起こるかもしれない。最後に、タンパク質/アラビアゴム被覆滴は、タンパク質/アルギナート又はタンパク質/カラギナン被覆滴よりも、塩濃度の増加に伴うζ−電位における相当の減少を示し、それはアラビアゴムのいくらかが滴表面から脱着するかもしれず、それによって、電荷中和及びポリマー架橋作用によってNaClの低濃度での不安定化を促進することができることを示唆する。3種の多糖類の異なる作用は、それらの異なる化学組成(官能基)又は異なる分子形態のためかもしれない。カラギナン及びアルギナート分子は、アラビアゴム分子よりも構造的により拡張されることが予想されるであろう。
【0044】
また、エマルジョンの安定性に対する糖の添加(0又は10重量%蔗糖)の影響を測定した(データは示さず)。滴におけるζ−電位又はクリーミング安定性の変化は、蔗糖の有無によって変化が観察されず、これは、蔗糖が界面組成又はエマルジョン安定性における影響がないことを示す。
【0045】
以下、本発明のより広い範囲の典型例に説明するように、飲料エマルジョンは、タンパク質/多糖類界面によって被覆された油滴を含んで製造することができる。これらの界面複合物を、カチオン性タンパク質被覆滴上のアニオン性多糖類の静電的積層によって形成した。形成された界面の電気特性は、主に、多糖類の電荷によって決定されるようであり、それは、溶液pH及び多糖類の種類によって制御された。形成された二次エマルジョンは熱処理(90℃にて30分間)、糖(10%蔗糖)及び塩(≦50mMのNaCl)に対して安定であった。これらの結果は、この界面エンジニアリング技術が、アラビアゴム及び改質でんぷんのような従来の多糖類乳化剤にとってかわるために飲料産業で使用することができることを示す。従来の多糖類の乳化剤に対するタンパク質/多糖類複合体の利点は、かなり低量で使用することができ、多糖類の乳化剤よりも価格及び質においてより変動がないことである。
【実施例】
【0046】
以下の限定されない実施例及びデータは、酸性飲料エマルジョンの製造を含む本発明のエマルジョン/飲料及び/又は方法に関連する種々の観点及び特徴を示し、それらはここに記載される方法論を通して入手することができる。先行技術と比較すると、本発明のエマルジョン/飲料システム及び方法は、意外で、予想外で、対照的な結果及びデータを示す。本発明の有用性がそれとともに使われるいくつかの水性飲料のようなシステムと乳化剤/ポリマー成分の組合せを用いることにより例示され、相当する結果が、この発明の範囲に相応するように、種々の他のそのようなシステム、酸性飲料組成物疎水性成分及び乳化剤/ポリマー成分の組み合わせで得られることは、当業者によって理解されるであろう。
【0047】
実施例1a
三次エマルジョンを、0.5重量%コーン油、0.1重量%レシチン、0.0078重量%キトサン、0.02重量%ペクチン及び100mM酢酸(pH3.0)の組成で調製した。利用の前に、このエマルジョンで形成されるいずれかの浮塊を、4000psiで2回、高圧ホモジナイザーに通すことによって破壊した。異なるpH(3〜8)及びイオン強度(0又は100mMのNaCl)による一連の希釈エマルジョン(〜0.005重量%コーン油)を、一次、二次及び三次エマルジョンを、蒸留水又はNaCl溶液で希釈し、次いで、HCl又はNaOHでpHを調節することによって形成した。これらのエマルジョンを、さらなる希釈剤を必要とせずに、レーザー回折、粒子電気泳動及び濁度技術によって直接分析した。次いで、希釈一次、二次及び三次マルジョンを、室温にて1週間保存し、それらの電荷及び平均滴径を測定した。
【0048】
実施例1b
滴電荷における影響−一次エマルジョン
一次エマルジョンの滴のζ−電位は、全てのpH値において負であったが、低いpHでよりも相当負がより高かった(図4)。レシチンにおけるアニオン性リン酸基のpKa値が約pH1.5付近であったため、吸着レシチン分子のより少ないフラクションがイオン化されたので、滴の電荷は低pHでより弱い負であった。一次エマルジョンの滴における電荷の大きさは、塩の添加で減少し、例えば、NaClが0から100mMに増加した場合、ζ−電位が、pH3で−42から−13mVに変化した。この減少は、静電的スクリーニング作用に起因するものであり、それはイオン強度を増加させることでコロイド粒子の表面荷電電位における減少をもたらす。
【0049】
実施例1c
滴電荷における影響−二次エマルジョン
二次エマルジョンの滴のζ−電位は、アニオン性レシチン被覆滴の表面におけるカチオン性キトサン分子の吸着のため、pH3で高い正(〜38mV)であった。pHの増加につれて、滴における電荷は、より小さいな正となり(pH4)、ついに負になった(pH≧5)。pHの増加に伴う滴における正電荷の減少は、おそらく、キトサンにおける−NH3+基の脱プロトン化の結果である。これらの基は約6.3から7のpK値を有し、よって、pHが増加するにつれて、キトサンは、より低い正荷電となる。キトサンがその正荷電を失うにつれて、アニオン性レシチン分子とカチオン性キトサン分子間の静電引力は減少する。その結果、これは観察された作用を説明するために必要ではないが、キトサン分子は高いpHで滴表面から脱着するかもしれない可能性がある。
【0050】
実施例1d
滴電荷における影響−三次エマルジョン
pH3で、三次エマルジョンにおけるζ−電位は、塩の不存在下、わずかに正であり(+8mV)、これは、吸着されたペクチン分子における負の電荷はレシチン−キトサン被覆滴における高い正電荷(+38mV)を克服するのには不十分であったことを示唆する。ペクチンのカルボキシル基のpKa値は通常pH4〜5周辺にあり、よって、ペクチンは、高いpHでよりも、低いpHでより小さな負電荷を有する。従って、キトサン被覆滴における正電荷の減少での有効性は、この低いpHで減少するであろう。興味深いことに、100mMのNaClがpH3で存在した場合、三次エマルジョンに対する荷電は負であり(−9mV)、それは吸着ペクチンの負電荷が、塩の存在下、レシチン−キトサン被覆滴において非常に減少した正電荷(+11mV)を克服するのに十分だったことを示唆する。pH≧4で、三次エマルジョンは、塩の存在及び非存在下でアニオン性であり、これは、吸着ペクチン分子における負電荷がレシチン−キトサン被覆滴における正電荷とバランスするのに十分以上であったことを示唆する。
【0051】
実施例2a
滴凝集における影響−一次エマルジョン
一次エマルジョンにおける滴は、全てのpH及びNaCl値で広範な滴凝集に対して比較的安定であった。しかし、塩の存在下で、低いpH値(pH3及び4)で保存されたエマルジョンにおける粒子は、塩がない状態で保存されたエマルジョンにおけるそれらよりも非常に大きかった。例えば、pH3で、100mMのNaClにてd32=2.1±0.2μm、0mMのNaClにて0.91±0.09μmであった。低いpH及び高い塩での滴凝集は、増加した静電スクリーニングと組み合わせられたレシチン分子における減少した電荷が、滴間の静電反発の減少をもたらしたためかもしれない。さらに、塩は、極性脂質の有効ヘッド基のサイズを減少させることによってリン脂質膜の曲げを減少し、それは、エマルジョンにおける滴合体に有利である。
【0052】
実施例2b
滴凝集における影響−二次エマルジョン
NaClを添加しない場合、二次エマルジョンの滴は、低いpH値(pH3及び4)で、滴凝集に対して比較的安定であったが、中間のpH値(5〜7間)で、非常に不安定であった。滴の高い正電荷が、滴間で強い静電反発をもたらしたので、滴はpH3で、滴凝集におそらく安定であったのであろう。pHが増加するにつれて、キトサン分子はそれらの正電荷(pKa〜6.3〜7)を失い始め、よって、滴に対する電荷は減少した。さらに、カチオン性のキトサンとアニオン性のレシチン分子間の静電吸引が減少したため、キトサン分子はレシチン被覆滴の表面により強く保持されない。従って、キトサン分子のいくつかは、エマルジョンにおける滴表面から、完全に又は部分的に、移動したかもしれない。これらのキトサン分子は、よって、負に荷電したレシチン被覆滴を一緒に保持するポリマー架橋として機能することができた。従って、架橋凝集は、中間のpH値(5〜7)で観察された滴凝集に対して比較的安定であったかもしれない。100mMのNaClの存在下、エマルジョンは低いpH値(pH3及び4)で凝集にまだ比較的安定であったが、すべてのより高い値で不安定であった。
【0053】
実施例2c
滴凝集における影響−三次エマルジョン
0mMのNaClのpH3でのエマルジョンを除いては、三次エマルジョンの滴は、塩の存在及び非存在下のすべてのpH値で、滴凝集に安定であった。滴は、それらの間の静電反発が比較的弱くなるような、小さなζ−電位を有するために、おそらく、凝集がこのエマルジョンで起こったのであろう。さらに、水相における負荷電ペクチン分子と正荷電滴との間の架橋凝集が起こるかもしれない。これらの結果は、滴凝集に対する良好な安定性を示すエマルジョンは、レシチン−キトサン−ペクチン膜を用いて製造することができることを示す。
【0054】
実施例3a
本発明の種々の他の面を例示する。5重量%マグロ油、1重量%レシチン及び0.2重量%キトサンを含む水中マグロ油型エマルジョンを調製した。濃縮水中マグロ油型エマルジョン(15重量%油、3重量%レシチン)を、15重量%マグロ油を85重量%水性乳化剤溶液(3.53重量%レシチン)と、高速のブレンダー(M133/1281-0、Biospec Products社製、ESGC、スイス)を利用して混合し、次いで5000psiでの一段式高圧力弁ホモジナイザー(APV-Gaulin、Model Mini-Lab 8.30H、ウィルミントン、MA)に3回通すことによって調製した。この一次エマルジョンを、二次エマルジョン(5重量%マグロ油、1重量%レシチン及び0.2重量%キトサン)を形成するために、水性キトサン溶液で希釈した。二次エマルジョンで形成されるいずれかの浮塊を、4000psiの圧力で、高圧力弁ホモジナイザーに1回通すことによって破壊した。また、上述した同じ時期の出願で述べられているように、二次エマルジョンを、コーンシロップ固体(20重量%)と溶液中で混合することによって調製した。ここで述べられるように、粉末を、噴霧乾燥によって製造した。
【0055】
実施例3b
粉末(0.5g)を、所望のpH(3から8)で4.5mLのアセトン緩衝液で溶解した。再構成されたエマルジョンを、ガラス試験管(内部の直径=15mm、高さ=125mm)に移し、次いで、分析前に室温にて保存した。エマルジョンの油滴の電荷(ζ−電位)を、粉末電気泳動器具(ZEM5003、Zetamaster、マルヴァーンInstruments、Worcs.、英国)を用いて測定した。エマルジョンを、多重散乱効果を避けるために、分析前にpHを調整した二回蒸留水で約0.008重量%の油滴濃度に希釈した。
【0056】
実施例3c
異なるpH値(3から8)の一連の希釈エマルジョン(10g固体/100gエマルジョン)を室温にて24時間保存し、電荷(ζ−電位)を測定した。
再構成されたエマルジョンのζ−電位は、低pH値(<pH8)で正であったが、高い値では負となった。キトサンにおけるカチオン基は、一般に約6.3から7のpKa値を有する。Schulz, P. C, Rodriguez, M.S., Del Blanco, L.F., Pistonesi, M., & Agullo, E. (1998)参照。キトサンの乳化特性、Colloid and Polymer Science, 276, 1159-1165参照。このように、キトサンは、このpHの周辺でその電荷の一部を失う。従って、キトサン及びレシチン被覆滴間での静電吸引が弱められたかも知れず、それは吸着キトサンのいくつかの放出をもたらすかもしれない。あるいは、キトサンの一部又はすべては、滴表面に吸着されたままだったかもしれないが、キトサンが一部のその正電荷を失ったので、滴は、負に荷電するようになった。再構成されたエマルジョンは、pH<5.0で、滴凝集に対して安定であったが、平均粒径の相当の増加から推論すると、より高いpH値で非常に不安定だった。より高いpH値でのエマルジョンの不安定性は、おそらく、ζ−電位の大きさが比較的低かったからであり、それは、滴間で静電反発を減少し、広範な滴凝集をもたらした。さらに、滴表面からのキトサン分子の部分的な脱着は、若干の架橋凝集をもたらしたかもしれない。
【0057】
材料及び方法
実施例4から5の材料
粉末β−ラクトグロブリン(β−Lg)がDavisco Foods International (ロット番号:JE 001-3-922、Le Sueur、MN)から供給された。タンパク質含有量は、供給元によって98.3%(乾燥ベース)であることが報告され、β−Lgは全タンパク質の95.5%で形成されている。タンパク質粉末の含水量は、4.9%であることが報告された。この製品の脂肪、アッシュ及びラクトース含量は、それぞれ、0.3±0.1、2.5±0.2及び<0.5重量%であることが報告されている。アルギン酸ナトリウム(ロット番号:6724(TIC Pretested(登録商標)Colloid 488T))及びアラビアゴム(ロット番号:8475)(食品等級)は、TICガムによって寄付された。食品等級のτ−カラギナンは、FMC BioPolymer(フィラデルフィア、PA)(ロット番号:10325050)によって寄付された。メーカーは、このサンプルが他のミネラル(<5%)からの混入物が低量であり、ほとんど純粋なナトリウムであると報告した。分析等級の塩酸、水酸化ナトリウム、アジ化ナトリウム及びリン酸ナトリウムを、シグマアルドリッチ(セントルイス、MO)から得た。コーン油を、地元のスーパーマーケットから購入し、さらなる精製なしで使用した。浄水システム(Nanopure Infinity、Barnsteadインターナショナル、IA)からの蒸留及び脱イオン化水を、すべての溶液に用いた。
【0058】
実施例4a
溶液の調製
乳化剤溶液を、5mMリン酸緩衝液(pH7.0)中に0.1重量%のβ−Lgを分散させ、少なくとも2時間攪拌することによって調製した。アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム及びτ−カラギナン溶液を5mMのリン酸緩衝液(pH7.0)中に粉末多糖類の適当量を分散させ、少なくとも2時間攪拌することによって調製した。τ−カラゲーニンの場合、次いで、分散及び溶解を促進するために、溶液を20分間70℃に水浴中で加熱した(19)。アジ化ナトリウム(0.02重量%)を、微生物の成長を防止するために、各溶液に添加した。調製後、タンパク質及び多糖類溶液を、バイオポリマーの完全な水和を行うために、5℃にて一晩保存した。
【0059】
実施例4b
エマルジョンの調製
この実験では、用語「一次エマルジョン」は、乳化剤としてタンパク質のみを用いて製造したエマルジョンを指すために用い、一方、用語「二次エマルジョン」は、多糖類をも添加された一次エマルジョンを指すために用いる。多糖類は、溶液条件(例えば、pH及びイオン強度)によって二次エマルジョンにおいて滴表面に吸着されるかもしれないし、吸着されないかもしれない。
【0060】
水中コーン油型エマルジョンを、1重量%コーン油を99重量%の水性エマルジョン溶液(5mMリン酸緩衝液(pH7)中の0.091重量%β−Lg)を用い、高速のブレンダー(M133/1281-0、Biospec Products社製、スイス)を用いて室温にて2分間混合することによって調製した。この粗エマルジョンを、次いで、2段階高圧ホモジナイザー(LAB 1000、APV-Gaulin、ウィルミントン、MA)(1段階目4500psi、2段階目500psi)に3回通し、平均粒径を小さくした。結果として生じたエマルジョンを、次いで、リン酸緩衝液及びアジ化ナトリウム溶液(0.2重量%油、0.018重量%β−Lg、pH7.0)で希釈して希釈エマルジョンを得た。最後に、この希釈エマルジョンを、多糖類ストック溶液(アジ化ナトリウム、τ−カラギナン又はアラビアゴム)及びリン酸緩衝液の異なる比で希釈し、以下の組成を有する一次及び二次エマルジョンを得た。0.1重量%コーン油、0.009重量%β−Lg、0〜0.012重量%アルギン酸ナトリウム又は0.012重量%τ−カラギナン又は0〜0.05重量%アラビアゴム(pH7.0、5mMリン酸緩衝液)。一次及び二次エマルジョンを、次いで、30分間室温で攪拌し、0.1又は1MのHClを添加することによって、pH3又は4のいずれかに調節した。続いて、エマルジョンを、分析(下記参照)前に、室温で保存した。
【0061】
実施例5a
粒子電荷測定
水溶液中の多糖類分子の電荷を、電気泳動測定(Zetasizer Nano-ZS、マルヴァーンInstruments、ウースターシャー、英国)が可能な商用手段を使って測定した。水中油型エマルジョンの滴の電荷を、もう一つの商用電気泳動手段(ZEM、Zetamaster、マルヴァーンInstruments、ウースターシャー、英国)を使って測定した。これらの器具は、電界印加における分子又は粒子運動の方向及び速度を測定し、次いで、計算された電気泳動移動度をζ−電位値に変換した。水溶液及びエマルジョンを調製し、分析前に、24時間室温にて保存した。
【0062】
実施例5b
粒径測定
エマルジョンの平均粒径を、商用ダイナミック光散乱手段(Zetasizer Nano-ZS、マルヴァーンInstruments、ウースターシャー、英国)を使って測定した。この器具は、それらの拡散係数の測定値から、粒径を推測する。エマルジョンを調製し、分析前に、24時間室温にて保存した。
【0063】
実施例5c
スペクトル−濁度測定
コロイド分散の濁度スペクトルはそれが含む粒径に依存する(23)ため、エマルジョンにおける滴凝集の指標を、濁度対波長の測定値から得た。エマルジョンの約1.5gのサンプルを、5mmの経路長プラスチック分光光度計キュベットに入れた。エマルジョンを、滴のクリーミングのために濁度のいかなる変化をも回避するために、それらを均一にすることを確保するように測定前に何度もひっくり返した。エマルジョンの吸収における変化を、参照として蒸留水を用い、UV−可視分光光度計(UV-2101PC、島津製作所、東京、日本)を用いて、800nmから400nmまで波長が変化したとき、記録した。滴凝集が生じたこれらのエマルジョンにおいて800nmで、エマルジョン濁度において相当の増加があったことを見出した。従って、この波長での濁度測定を、エマルジョンにおける滴凝集の程度を示すために用いた。エマルジョンを調製し、分析前に、24時間室温にて保存した。
【0064】
実施例5d
クリーミング安定性測定
エマルジョンの約3.5gの試料を、10mm経路長のプラスチック分光光度計キュベットに入れ、それから7日間、30℃にて保存した。乱れていないエマルジョンの600nmでの濁度の変化を、参照として蒸留水を用い、UV−可視分光光度計(UV-210 IPC、島津製作所、東京、日本)を用いて保存の間、測定した。光線を、キュベットの底から約15mmの高さ、すなわち、エマルジョンの高さのおよそ42%の高さで、エマルジョンに通した。エマルジョンの油滴は、重力のために時間とともに上へ動く傾向があり、それはキュベットの底で比較的透明な滴枯渇水分漿液層の形成をもたらす。この水分漿液層が上方へ動いた速度は、エマルジョンのクリーミング安定性の指標を与え、速度が速いほど、エマルジョンはより不安定である(24)。従って、エマルジョン汚濁におけるかなりの減少は、水分漿液層がエマルジョンの高さの少なくとも42%まで上がったという事実の指標となった。クリーミング安定性を、以下の式で定量化した:
安定性(%)=100×τ(7日)/τ(0日)、
ここで、τ(7日)及びτ(0日)は、それぞれ、0日目及び7日目に行われた濁度の測定値である。従って、100%値は、7日間の保管の間に滴クリーミングが起こらず、一方、0%値は、迅速にクリーミングが起こったことを示す(つまり、全ての滴が測定点より上に動いた)。また、エマルジョン濁度は、粒径及び滴濃度に依存し、よって、クリーミング安定性における観察された変化が、滴凝集及びクリーミングにおける変化を反映することに留意すべきである。
【0065】
実施例5e
静電分析
上述した測定値のそれぞれを、少なくとも2つの新鮮な調製サンプルを用いて行い、その結果を、平均及び標準偏差で報告する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1A】特定の限定されない実施形態、安定化飲料エマルジョンの製造を示す。
【図1B】特定の限定されない実施形態、安定化飲料エマルジョンの製造を示す。
【図2A】異なる種類の多糖類を含む0.1重量%の水中油型エマルジョン中の多糖類の濃度に依存する滴荷電(ゼータ電位)である。pH3、予測曲線は式1及び表1のパラメータを用いて行った。
【図2B】異なる種類の多糖類を含む0.1重量%の水中油型エマルジョン中の多糖類の濃度に依存する滴荷電(ゼータ電位)である。pH4、予測曲線は式1及び表1のパラメータを用いて行った。
【図3】水溶液中の多糖類分子の有効なゼータ電位のpH依存性を示す。
【図4A】異なる種類の多糖類を含む0.1重量%の水中油型エマルジョン中の多糖類の中間粒径に依存する滴荷電(ゼータ電位)である。pH3。
【図4B】異なる種類の多糖類を含む0.1重量%の水中油型エマルジョン中の多糖類の中間粒径に依存する滴荷電(ゼータ電位)である。pH4。
【図5A】異なる種類の多糖類を含む0.1重量%の水中油型エマルジョン中の多糖類の800nmでの濁度の依存性である。pH3。濁度の増加は、粒子凝集の指標である。
【図5B】異なる種類の多糖類を含む0.1重量%の水中油型エマルジョン中の多糖類の800nmでの濁度の依存性である。pH4。
【図6A】異なる種類の多糖類を含む0.1重量%の水中油型エマルジョン中の多糖類のクリーム安定性の依存性である。pH3。クリーム安定性の増加は、粒子凝集の指標である。
【図6B】異なる種類の多糖類を含む0.1重量%の水中油型エマルジョン中の多糖類のクリーム安定性の依存性である。pH4。クリーム安定性の増加は、粒子凝集の指標である。
【図7】異なる種類の多糖類の有無における0.1重量%の水中油型エマルジョン(pH4)中の安定性における熱処理の影響を示す。
【図8】異なる種類の多糖類の有無における0.1重量%の水中油型エマルジョン(pH4)中の安定性におけるNaClの影響を示す。
【図9】異なる種類の多糖類の有無における0.1重量%の水中油型エマルジョン(pH4)中のゼータ電位のNaClの影響を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、出願第60/721279号(2005年9月28日出願)(全趣旨を参照することによりここに取り込む)の優先権を享有する。
米国政府は、農務省からマサチューセッツユニバーシティーへの許可番号2002−35503−12296に準じてこの発明に対する特定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
一般に、用語「飲料エマルジョン」は、例えば、茶、コーヒー、ミルク、フルーツドリンク、乳製品系ドリンク、飲むヨーグルト、特殊調製粉乳、栄養飲料、スポーツドリンク及びコーラ等の飲料として消費されるいずれかの水中油型エマルジョンを指す。より詳しくは、それは、通常、冷やして飲まれる(例えば、果物、野菜、茶、コーヒー及びコーラ飲物)中等度又は高い酸性飲料(pH2〜6.5)を示すものとして用いることができる。この種の製品には、多くの共通する製造、組成及び物理化学的特製を有する。飲料エマルジョンは、通常、油相及び水相を一緒にホモジナイズし、濃縮水中油型エマルジョンをつくることにより製造され、それは、後に水溶液で希釈して最終製品となる。飲料エマルジョンの油相は、通常、無極性キャリヤ油(例えば、テルペン)、香味油及び増量剤の混合物を含み、一方、水相は、一般的に、水、乳化剤、砂糖、酸及び防腐剤を含む。最終飲料エマルジョンの水相は、通常非常に酸性度が高い(pH2.5〜4.0)。最終飲料製品は、比較的低い油滴濃縮物(一般的に0.01〜0.1重量%)を含むので、わずかに濁っているか、「曇った」外観を有する。また、それらは、滴の存在よりもむしろ連続相によって支配される流動学的特性を有する。飲料エマルジョンは、クリーミング、凝集沈殿、合着及びオストワルト成長を含む種々の物理化学的メカニズムによって、保存の間、破壊される傾向がある熱力学的に不安定なシステムである。飲料エマルジョンの長期安定性は、加工又はホモジナイズの間、これらのプロセスを妨害する種々の安定化剤(例えば、乳化剤、増粘剤及び増量剤等)を添加することによって、通常延長される。
【0003】
市販の飲料エマルジョンで用いられる最も一般的な乳化剤は、アラビアゴムである。アラビアゴムは(別名アカシアゴム)、通常、アカシア属の木からの天然の滲出液に由来するポリマー材料である。アラビアゴムは、通常、その表面活性、高い水溶性、低溶液粘度及びエマルジョン滴の周辺に保護膜を形成する能力のため、有効な乳化剤である。いずれにしても、それは比較的低い表面活性(界面活性剤及びタンパク質と比較した場合)を有し、比較的大量での使用を必要とする。例えば、20%程度のアラビアゴムが、安定な12.5%の水中油型エマルジョンを生成するために必要とされるかもしれないが、一方、1%未満のホエイタンパク質分離株が必要である。そのうえ、常に高品質のアラビアゴムを信頼できる筋から得ること及び多くの飲料製造業者に他の乳化剤源を調査させることを促すことには、重大な問題がある。
【0004】
種々の食物タンパク質が、酸性飲料エマルジョンにおいて乳化剤として用いることができることが提案されている(例えば、ホエイタンパク質、大豆タンパク質、カゼイン、植物タンパク質、魚タンパク質、食肉蛋白質又は卵タンパク質)。そのようなタンパク質は、エマルジョンを安定化させるためのアラビアゴムより非常に低濃度で用いることができる(例えば、0.1g未満のタンパク質が1gの油を安定化させるために通常必要とされ、一方、1gの油を安定化させるために1gより多いアラビアゴムが必要とされる)。その上、タンパク質成分の組成的及び機能的な特性と供給信頼性とは、通常、アラビアゴムのそれより非常によいことが示されている。いずれにしても、多くのタンパク質安定化エマルジョンは、酸性条件(pH3〜6)下、滴凝集沈殿及び合着に対して、相当安定性が低い。さらに、大部分の食物タンパク質は、酸性飲料エマルジョンで見出される条件下でカチオンである(つまり、正に荷電されている)滴を生成し、その場合の溶液pHはそれらの等電点より低い。これは、システム中で、カチオン滴と種々のアニオン成分(例えば、アニオン生物高分子、ミネラルイオン、ビタミン、フレバー、防腐剤、緩衝剤、酸等)との間の静電気引力のため、製品の安定性に対して、さらなる問題を引き起こすこととなる。これらの理由から、食物タンパク質はめったに用いられず、酸性飲料エマルジョンを安定化させる他のアプローチを模索するという課題を残す。
【0005】
発明の要旨
上記の観点から、本発明の目的は、水性エマルジョン及び/又は関連飲料組成物及びそれらの製造方法を提供することであり、これによって、上述したものを含む従来技術の種々の欠点及び短所を解消することができる。本発明の1以上の観点は所定の目的に合致し、一方、1以上の他の観点は、所定の他の目的に合致することは当業者に理解されるであろう。それぞれの目的は、本発明のその全ての観点において、あらゆる局面に等しく適用されなくてもよい。従って、この発明のいかなる1つの面に関して、以下の目的は、択一的に捕らえることができる。
【0006】
本発明の目的は、従来のアラビアゴムと比較して、システムを安定化させるために必要とされる乳化剤の総量を著しく低下させることができる1以上の乳化システム又は乳化組成物を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、著しい凝集沈殿又は合着なしに、酸性条件下において安定なエマルジョンを提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、1以上の荷電したシステム成分の存在において、酸性条件下で安定なエマルジョンシステムを提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、上述した1以上のいずれかの目的とともに、1以上の本発明のエマルジョンを含む酸性飲料組成物を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的、特徴、利益及び利点が要旨及び以下の記載から明らかであり、水性エマルジョン、関連飲料組成物及び製造技術の知識を有する当業者にとって容易に理解できるであろう。そのような目的、特徴、利益及び利点は実施例、データ、図面及びこれらから引き出される全ての合理的な推論の単独またはここに組み込まれた参考文献の検討を一緒に考慮することにより明らかであろう。
【0011】
一つには、本発明は、乳化された実質的に疎水性油脂成分を含有する飲料を製造及び/又は安定化する方法を提供することができる。そのような方法は、油脂成分を準備し、油脂成分を、少なくとも一部が実効電荷を有する乳化剤成分と接触させ、及びそれぞれ少なくとも一部が、乳化剤成分及び/又は先に取り込まれた食品等級のポリマー成分とは反対の実効電荷を有する少なくとも1つの食品等級のポリマー成分と接触させ又は取り込むことを含むことができる。限定されることなく、図1Aを参照して、油脂エマルジョンの製造を説明する。そのような油脂成分は、酸性飲料組成物又は生成物あるいはエマルジョン後にそれに取り込まれたものの一部として存在することができる。例えば、多層組成物又は成分膜によって囲まれた油滴の水性エマルジョンは、スプレードライ又はフリーズドライで、対応する粒子状の材料を与え、次いで、飲料組成物の一部として再構成することができる。例えば、同時出願の同時係属出願「カプセル化エマルジョン及びその製造方法」(全趣旨を参照することによりここに取り込む)参照。いずれにしても、ここ以外で示されているように、そのようなエマルジョンは、pHが安定し、酸性飲料組成物の状況で良好に機能する。
【0012】
従って、特定の実施形態において、そのような方法は、反対に荷電された乳化剤又は食品等級のポリマー成分の交互の接触又は取り込みを含むことができ、それぞれのそのような接触又は取り込みは、先に接触され又は取り込まれた乳化剤又は食品等級のポリマー成分との静電気相互作用を含む。そのような方法は、形成されたいかなる凝集又は浮塊をも破壊するために、得られた組成物の機械的振動及び/又は超音波処理を任意に含むことができる。
【0013】
上記によれば、疎水性成分は、水性又は他の媒体に少なくとも部分的に不溶とすることができ、及び/又は水性媒体中でエマルジョンを形成することができる。特定の実施形態において、疎水性成分は、限定されないが、当業者に公知のいずれかの可食植物油(例えば、コーン、大豆、キャノーラ、菜種、オリーブ、ピーナツ、藻類、パーム、ココナッツ、ナッツ及び/又は植物油、魚油又はその組合せ)を含む脂肪又は油成分を含むことができる。疎水性成分は、水素化又は部分的に水素化された脂肪及び油から選択することができ、例えば、酪農脂肪を含むいずれの乳業又は動物性脂肪もしくは油をも含むことができる。さらに、疎水性成分は、香料、酸化防止剤、防腐剤及び/又は栄養成分(例えば、脂溶性ビタミン)をさらに含むことができる。
【0014】
本発明のより幅広い観点と一致して、疎水性成分は、限定されないが、所定の食物又は飲料エンドユーザ用途で必要とされるような、脂肪酸(飽和又は不飽和)、グリセロール、グリセリド及びそれらの各誘導体、リン脂質及びそれらの各誘導体、糖脂質、フィトステロール及び/又はステロールエステル(例えば、コレステロールエステル、フィトステロールエステル及びそれらの誘導体)、カロテノイド、テルペン、酸化防止剤、着色剤及び/又は香料オイル(例えば、ペパーミント、柑橘類、ココナッツ又はバニラ及びそれらの抽出物(例えば、柑橘類油からのテルペン))を含むいずれかの天然及び/又は合成脂質成分をさらに含有することができることは容易に明確に理解されるであろう。そのような成分の他のものは、限定されないが、臭素化植物油、エステルガム、蔗糖アセテートイソブチレート、ダマールガム等が挙げられる。従って、本発明は、広範な可食油脂、ワックス及び/又は種々の分子量の脂質成分を意図しており、炭化水素類(芳香族、飽和、不飽和)、アルコール、アルデヒド、ケトン、酸性及び/又はアミン部位又は官能基を含む。
【0015】
乳化剤成分は、少なくとも部分的に水相中の疎水性成分を乳化し、それらの少なくとも一部に実効電荷を与えることができる当該分野で公知のいずれかの食物等級の界面活性成分、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤を含むことができる。乳化剤成分は、小分子界面活性剤、脂肪酸、リン脂質、タンパク質及び多糖類ならびにそれらの誘導体を含んでもよい。そのような乳化剤は、限定されないが、レシチン、キトサン、改変デンプン、ペクチン、ガム(例えば、ローカストビーンガム、アラビアゴム、グアーゴム等)、アルギン酸、アルギナート及びそれらの誘導体ならびにセルロース及びその誘導体の1以上を含む。タンパク質乳化剤は、酪農タンパク質(例えば、ホエイ及びカゼイン)、植物タンパク(例えば、大豆)、食肉蛋白質、魚タンパク質、植物タンパク質、卵タンパク質、オバルブミン、糖タンパク質、ムコタンパク質、リンタンパク質、血清アルブミン、コラーゲン及びそれらの組み合わせのいずれか1つを含むことができる。成分を乳化するタンパク質は、それらのアミノ酸残基(例えば、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等)に基づいて、疎水性成分のまわりの界面膜の全実効電荷を最適化し、従って、結果として生じるエマルジョンシステムにおける疎水成分の安定性を最適化するために、選択することができる。
【0016】
実際、乳化剤成分は、例えば、モノグリセライドの酢酸エステル(ACTEM)、モノグリセリドの乳酸エステル(LACTEM)、モノグリセライドのクエン酸エステル(CITREM)、モノグリセライドのジアセチル酸エステル(DATEM)、モノグリセライドのコハク酸エステル、ポリグリセロールポリリシノール酸エステル、脂肪酸のソルビタンエステル、脂肪酸のプロピレングリコールエステル、脂肪酸の蔗糖エステル、モノ及びジグリセリド、果物酸エステル、ステアロイルラクチラート、ポリソルベート、澱粉、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)及び/又はそれらの組合せを含む広範な一連の乳化剤を含むことができる。
【0017】
上述したように、ポリマー成分は、吸着、静電気相互作用及び/又は疎水性成分及び/又は関連乳化剤成分に結合することができる、いずれかの食品等級のポリマー材料を含むことができる。従って、食品等級のポリマー成分は、限定されないが、タンパク質(例えば、ホエイ、カゼイン、大豆、卵、植物、肉及び魚タンパク質)、イオン性又はイオン化可能な多糖類(例えば、キトサン及び/又はキトサン硫酸塩)、セルロース、ペクチン、アルギナート、核酸、グリコーゲン、アミロース、キチン、ポリヌクレオチド、アラビアゴム、アカシアガム、ガラギナン、キサンタン、寒天、グアーゴム、ゲランガム、トラガカントゴム、カラヤゴム、ローカストビーンガム、リグニン及び/又はそれらの組み合わせから選択されるバイオポリマー材料であってもよい。上述したように、そのようなタンパク質成分は、それらのアミノ酸残基に基づいて、全実効電荷、乳化剤成分との相互作用及び/又は結果として生じるエマルジョン安定性を最適化するために選択することができる。食品等級のポリマー成分は、改変ポリマー(例えば、改変デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデキストラン又はリグニンスルホンネート)から、代わりになるべきものとして選択することができる。
【0018】
本発明は、特定の食品に適用できる環境又は最終用途状況の下で、十分に安定な油/脂肪及び/又は脂質成分を含む多層組成物の形成をもたらす乳化剤及びポリマー成分のいずれかの組み合わせを意図する。従って、疎水性成分は、疎水性成分が取り込まれるエマルジョンシステム/食品のpH、イオン強度、塩濃度、温度及び処理条件によって、広範な乳化剤/ポリマー成分をカプセル化及び/又は固定化することができる。そのような乳化剤/ポリマー成分の組み合わせは、他との静電的相互作用及び対応エマルジョンの形成によってのみ制限される。いずれにしても、適当な壁成分の導入において、そのようなエマルジョンは、貯蔵、輸送及び/又はその後の飲料組成物中又は飲料組成物との再組成のために、噴霧乾燥することができるか、あるいは、粉末又は粒子材料に加工することができる。そのような疎水性成分、乳化剤成分及びポリマー成分は、出願中の特許出願第11/078,216号(2005年3月11日出願)(全趣旨を参照することによりここに取り込む)で記載又は示されたものから選択することができる。
【0019】
一つには、本発明は、エマルジョン及び微粒子の形成のための他の方法を含むことができる。先のことに関して、ポリマー成分は、十分な静電的相互作用のために助けにならないpHで又は条件下で、油脂成分及び乳化成分を含む組成物を取り込むか又はそのような組成物と接触することができる。pHは、よって、ポリマー成分との静電的相互作用又はポリマー成分の取り込みを十分促進させ、エマルジョン、乳化油脂成分及び/又はポリマー成分の実効電荷を変化させるために、変化させることができる。限定されることなく、安定な酸性飲料エマルジョンは、カチオン又は実効正荷電エマルジョン滴を形成するために、その等電点以下のpHで、タンパク質乳化剤(例えば、限定されることなく、カゼイン、ホエイ、大豆、卵又はゼラチン)を用いて、次いで、最初のエマルジョン組成物との静電的相互作用のために、アニオン又は実効負荷電多糖類(例えば、限定されることなく、ペクチン、カラゲーニン、アルギナート又はアラビアゴム)を用いて、製造することができる(例えば、図1B参照)。製造方法に関係なく、そのようなエマルジョンは、酸性飲料組成物に共通して、他のアニオン成分との相互作用に安定である。
【0020】
製造方法に関係なく、エマルジョンは、極性脂質、タンパク質及び/又は炭水化物から選択される壁成分と接触することができる。種々の壁成分は、当該分野における及び本発明を認識する当業者に公知である。そのようなエマルジョンは、1以上の壁成分と共に、噴霧乾燥器からの供給材料として用いることができる。従って、対応するエマルジョンは、乳化油脂成分のまわりの壁成分を含む滴の分散液に加工することができる。分散は、分散滴から水相の少なくとも部分的な蒸発を促進するために、加熱乾燥媒体に導入又は接触させることができ、壁成分マトリクス中における油脂、乳化剤及びポリマー成分を含む固体又は固体様粒子を与える。適用されると、エマルジョンは、ここに記述された種類の酸性飲料で再構成させることができる。
【0021】
限定されることなく、以下の実施例によれば、エマルジョンは、食品等級成分及び標準的な製造方法(例えば、ジョモジナイズ及び混合)を用いて製造することができる。まず、電気的に荷電された乳化剤成分を含む最初の水性エマルジョンを、油脂成分、水相及び実効電荷を有する適当な乳化剤とホモジナイズすることによって製造することができる。任意に、機械的動揺又は超音波処理を、いずれかの浮塊形成を破壊させるために最初のエマルジョンに適用することができ、取り込まれていない乳化剤成分のいずれかを除去するために、エマルジョンの洗浄を行うことができる。第2のエマルジョンは、最初のエマルジョンと実効電荷ポリマー成分との接触によって製造することができる。ポリマー成分は、最初のエマルジョンの少なくとも一部とは反対の実効電荷を有することができる。任意に、機械的動揺又は超音波処理を、いずれかの浮塊形成を破壊させるために適用してもよく、取り込まれていない乳化剤成分のいずれかを除去するために、エマルジョンの洗浄を行うことができる。上述したように、エマルジョンの特徴は、最初のエマルジョンとポリマー成分との静電的相互作用を促進するか、強化するために、pH調整によって変化させることができる。製造方法に関係なく、壁成分は、粉末形成及びその後の飲料組成物中又は飲料組成物との再構成のために、最初又は第2のエマルジョンのいずれかとともに又は連続して導入することができる。
【0022】
従って、本発明は、少なくとも一部には、実質的に疎水性油脂成分、乳化剤成分及びポリマー成分を含む酸性飲料組成物に関する。本発明の広範な観点に一致して、そのような組成物は、油脂成分のまわりにいずれかの食品等級の複数の成分層を含みことができ、各層はそのような材料に隣接する少なくとも一部と反対の実効電荷を有する。あるいは、そのようなエマルジョンを乾燥し、次いで、飲料製品の一部として再構成することができ、そのような製品は、限定されないが、ここで示した又は当業者に知られているであろういずれかの酸性飲料を含む。そのような飲料は、エマルジョンの再構成又はそれらの形成にかかわらず、限定されないが、約2から約6.5の範囲のpHを示す中等度及び高度の酸性飲料を含み、そのような飲料は、限定されないが、コーラ及び/又はソーダ(炭酸及び非炭酸)、フルーツ及び野菜ジュース及びドリンク、茶及びコーヒー(及びそれらの誘導体)、酸性化酪農系ドリンクを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
ここのどこか他で記載したように、本発明は、1以上の乳化油脂成分を含む酸性、水性飲料組成物に指向することができ、それによって、結果として生じるエマルジョンが、例えば、従来例のアラビアゴム乳化剤のその有効な使用にまさる、ある程度の物理的安定性を提供する。本発明の乳化剤及び/又はポリマー成分は、一実施形態では、さらなる試験又は規制の承認なしに、食品等級のタンパク質(現在の生産技術を使用して経済的に製造することができる)を含むことができる。さらに、取り込まれた1以上の文献に十分記載されているように、そのような乳化剤及びポリマー成分は、劣化(例えば、酸化)に対する乳化疎水性成分の安定性を向上させることができる。
【0024】
限定されることなく、本発明の多層成分界面膜によって安定化されたエマルジョンは、(1)乳化剤及び/又はポリマー成分を、油及び水相のホモジナイズの前にシステムに取り込み、(2)乳化剤及び/又はポリマー成分を、油及び水相のホモジナイズの後に取り込み、及び(3)乳化剤及び/又はポリマー成分を、油及び水相のホモジナイズの間にシステムに取り込む3つの方法の1つによって製造することができる。ここのどこか他で記載したように、そのような準備システムの水相は、酸性飲料組成物又はその途中で有用な成分とすることができる。
【0025】
方法(2)を参照すると、例えば、多段方法は、エマルジョンを製造するために用いることができ、2又は3成分相(例えば、乳化剤−バイオポリマー1−(任意に)バイオポリマー2)によって被覆することができる。第1に、乳化剤の層によって安定化された電気的に荷電された滴を含む一次エマルジョンは、油成分、水相及びイオン性又は両親媒性乳化剤とともにホモジナイズすることによって製造することができる。必要であれば、機械的動揺又は超音波処理を、いずれかの形成された浮塊を破壊させるために一次エマルジョンに適用することができ、取り込まれていない非吸着バイオポリマーのいずれかを除去する(例えば、遠心分離又はろ過によって)ために、エマルジョンの洗浄を行うことができる。第2に、乳化剤−バイオポリマー1膜によって安定化された荷電滴を含む二次エマルジョンは、バイオポリマー1を一次エマルジョンに取り込むことによって製造することができる。バイオポリマー1は、一次エマルジョン中の滴の少なくとも一部とは反対の実効電荷を有することができる。必要であれば、機械的動揺又は超音波処理を、いずれかの形成された浮塊を破壊させるために適用してもよく、取り込まれていない非吸着バイオポリマーのいずれかを除去する(例えば、遠心分離又はろ過によって)ために、エマルジョンの洗浄を行うことができる。第3に、乳化剤−バイオポリマー1−バイオポリマー2膜によって安定化された荷電滴を含む三次エマルジョンは、バイオポリマー2を二次エマルジョンに取り込むことによって製造することができる。バイオポリマー2は、二次エマルジョン中の滴の少なくとも一部とは反対の実効電荷を有することができる。必要であれば、機械的動揺又は超音波処理を、いずれかの形成された浮塊を破壊させるために三次エマルジョンに適用してもよく、非吸着バイオポリマーのいずれかを除去する(例えば、遠心分離又はろ過によって)ために、エマルジョンの洗浄を行うことができる。この工程は、さらなる層を界面膜に加えるために連続してもよい。
【0026】
例えば、実施例1〜3によれば、3層被覆脂質滴を含むエマルジョンを、食品等級の成分(レシチン、キトサン、ペクチン)及び標準的な製造方法(ホモジナイズ及び混合)を利用する方法を用いて製造した。最初に、小さなアニオンカプセルを含む一次エマルジョンを、油、水及びレシチンのホモジナイズによって製造した。次いで、レシチン−キトサン膜で被覆されたカチオンカプセルを含む二次エマルジョンを、キトサン溶液と一次エマルジョンとを混合することによって製造し、いずれかの形成された浮塊を破壊させるために、機械的動揺を適用した。レシチン−キトサン−ペクチン膜で被覆されたカチオンカプセルを含む三次エマルジョンを、次いで、第2のエマルジョンとペクチン溶液とを混合することによって製造し、さらにいずれかの形成された浮塊を破壊させるために機械的動揺を適用した。二次及び三次エマルジョンは、本発明の酸性飲料組成物に共通するものを含む、広範なpH値にわたって、凝集に対して良好な安定性を有した。
【0027】
ここに記載したように、エマルジョンシステムは、油脂成分を1以上の乳化剤及び/又はポリマー成分に接触させることによって製造することができる。そのエマルジョンは、最終用途条件の下でも安定であり、よって、脂質、乳化剤及び/又はポリマー成分を、特定の飲料製品の加工及び最終用途適用のために適する温度、pH、塩濃度及びイオン強度に基づいて選択することができる。さらに、脂質成分をカプセル化する各層成分の成分選択を広範囲にし、よって、カプセル化された脂質の物理化学的及び知覚上の特性を変化させない成分材料の選択を可能にするとともに、そのようなカプセル化された脂質を、製品の味、外観、テクスチャー及び安定性に悪影響を与えることなく、飲料製品に容易に代用することを可能にする。
【0028】
実施例4a〜4c及び5a〜5eでは、種々の多糖類がたんぱく質被覆油滴の表面に吸着されるか否かを測定し、形成された界面の電気特性についての情報を得るために多くの実験を行った。最初に、β−Lg−安定化エマルジョンを、多糖類の異なる種類の有(二次エマルジョン)無(一次エマルジョン)及び異なる濃度にて、pH7で調整した。pH7で、タンパク質及び多糖類は、同様の電気的荷電を有し、従って、多糖類は、タンパク質被覆滴の表面に吸着されることを予想しなかった。よって、pH7からpH3又はpH4に、エマルジョンのpHを減少させ、1日保存後、得られたエマルジョンの粒子のζ−電位を測定した(図2)。これらのpH値で、タンパク質(正)及び多糖類(負)における電荷は反対であり、よって、水相におけるアニオン多糖類はカチオンタンパク質被覆滴に電気的にひきつけられることが予想された。
【0029】
エマルジョン滴における電荷(ζ−電位)は、最終的なpH、多糖類の種類及び多糖類の濃度に強く依存した(図2)。多糖類が存在しない場合、吸着β−Lgはその等電点(pI〜5.0)以下であるために、タンパク質被覆エマルジョン滴における電荷は正であった。エマルジョンの水相における多糖類の濃度の上昇につれて、滴における電荷は、最初、正が弱くなり、最終的にプラトー値に達するまで、より負が強くなった。同様の結果が、ζ−電位における変化は、滴表面が飽和されるまで、カチオンタンパク質被覆滴表面におけるアニオン多糖類の吸着が進行するのに寄与したという、先の研究で観察されている。多糖類濃度の増加に伴ってζ−電位が最初に急激に変化し、飽和ζ−電位は多糖類の種類及びpHに依存した。
【0030】
ζ−電位を、以下の経験式によって計算された多糖類濃度曲線に対してシュミレーションした。
【数1】
(ここで、ζ(c)は多糖類濃度cでのエマルジョン滴のζ−電位であり、ζ0は多糖類がない場合のζ−電位であり、ζsatは滴が多糖類で飽和した場合のζ−電位であり、c*は臨界多糖類濃度である。)
数学的には、c*は、ζ−電位における変化が、飽和に対するζ−電位における総変化の1/eである場合:Δζ=Δζsat/eの濃度である。従って、c*の値は、滴表面に対する多糖類の結合親和力の大きさであり、c*が高くなると、結合親和力が小さくなる。従って、滴表面への多糖類の結合は、ζsat及びc*によって特徴付けられる。ζ0、ζsat及びc*値を、pH3及び4での3種の異なる多糖類について、表1に一覧する。ζ0及びζsatの値を、多糖類なし及び用いられた最も高い濃度の多糖類(飽和が予想される)でのζ−電位の測定から決定した。よって、c*値は、式1と実験データとの間での最適な量を見出すことによって(マイクロソフト社のエクセルのsolver ルーチンを用いて)得た。実験測定値と、式1及び表1に挙げられたパラメータを用いて二次エマルジョンに対して予測されるζ−電位との間で良好な一致を示した(図2)。
【0031】
結合親和力は、多糖類の種類及び溶液のpHに依存した(表1)。pH3及び4の双方で、アラビアゴムよりも、アルギナート及びカラギナンのc*値は、かなり低く、それらが滴表面に対して強い結合親和力を有していることを示唆している。カラギナン及びアラビアゴムについて、結合親和性は、pH3及び4で相当類似していたが、アルギナートについて、結合親和性は、pH3及び4で非常に高い(c*を低くする)。また、ζ−電位の飽和値は、多糖類の種類及び溶液のpHに依存した(表1)。タンパク質/ガラギナン被覆滴は、高い負の電荷を有し、pH3及び4で同様のζsat値を有した(ζsat≒−50mV)。タンパク質/アルギナート被覆滴は、pH4で高い負の電荷を有した(ζsat≒−45mV)が、pH3で、かなり小さな電荷となった(ζsat≒−26mV)。タンパク質/アラビアゴム被覆滴は、双方のpHで最小の負の電荷を有するが、負の電荷は、pH4でζsat≒−35mVであり、pH3でζsat≒−19mVよりも、かなり高かった。
【0032】
表1:pH3及び4での多糖類濃度の測定値に対するζ−電位から測定したタンパク質被覆滴表面への多糖類の結合を特徴付けるパラメータ
【表1】
【0033】
タンパク質/多糖類被覆滴の電気特性における差異は、多糖類分子の電荷密度における差異のためと考えられる。従って、0.1重量%の多糖類水溶液の電気特性(ζ−電位対pH)を測定した(図3)。これらの測定値は、多糖類分子のζ−電位(ζPS)が、タンパク質/多糖類複合体によって被覆されたエマルジョン滴のζsat値と同様の動向に従うことを示す:ガラギナン、アルギナート及びアラビアゴムのそれぞれにおいて、pH3で、ζPS=−53、−30及び−9mV、pH4で、ζPS=−51、−55及び−23mVである(図3)。カラギナン分子及びタンパク質/カラギナン被覆滴の電荷は、pH3及び4の双方で高い負である。アルギナート分子及びタンパク質/カラギナン被覆滴の電荷はpH4では高い負であるが、pH3ではそれほどではない。アラビアゴム分子及びタンパク質/アラビアゴム被覆滴の電荷は、他の2種の多糖類に対してかなり弱い負であり、pH3及び4でかなり低い。よって、タンパク質/多糖類被覆滴の電気特性は多糖類分子の電気特性によって主に決定されるようである。
【0034】
タンパク質被覆滴が多糖類で飽和された場合、ζ−電位における全体の変化を試験することも実態を見抜いている:Δζsat=ζ0−ζsat(表1)。カラギナンについて、ζ−電位の全体の変化は、最終的なζsat値が双方のpH値でかなり類似していた(ζsat≒−50mV)としても、pH4(ζsat≒81mV)でよりもpH3で相当高い(ζsat≒112mV)。カラギナン分子における電荷はpH3及びpH4でかなり近似しており(図3)、よって、限定されることなく、pH4でよりも、pH3で滴表面によりカラギナン分子が吸着すると仮定することができる。この観察の考えられる説明は、それが接近している荷電多糖類及び荷電表面の間の電気的相互作用に関して与えることができる。反対の電荷表面上の合成高分子電解質の吸着の研究では、その電荷密度があまり低くないならば、最終的なζ−電位が、吸着している高分子電解質の電荷密度に依存していないと報告している。この現象は、一旦表面荷電が特定の値に達すると、水相における表面と同様に荷電された多糖類との間で強い静電反発が起こるという事実に起因し、それは高分子電解質のさらなる吸着を制限する。よって、タンパク質被覆滴表面に吸着したカラギナン分子は、特定のζ−電位に達し(≒−50mV)、次いで、静電反発が、さらなるポリマー吸着を防止するのに十分なほど強くなった。
【0035】
これらの実験の目的は、多糖類の種類、多糖類の濃度及びβ−Lg−被覆滴を含む水中油型エマルジョンの安定性におけるpHを試験するためであった。上述したように、β−Lg−安定化エマルジョンを、pH7で、多糖類の異なる種類及び濃度の有(二次エマルジョン)無(一次エマルジョン)において製造し、次いで、pHを、酸を添加することによってpH3又は4のいずれかに減じた。凝集及びクリームの滴に対するエマルジョンの安定性を、次いで、光分散、濁度及びクリーミング安定性測定器を用いて測定した(図4から6)。
【0036】
凝集及びクリーミングの滴に対するエマルジョンの安定性は、多糖類の種類、多糖類濃度及び溶液pH(図4から6)に相当依存した。多糖類がない場合、一次エマルジョンは、pH3及び4で24時間の貯蔵の後、凝集滴に対して安定に見えた(低z粒径、低τ800)。おそらく、タンパク質被覆滴の正電荷は、強い滴間静電反発(3)を生じることによって滴凝集を防止するほど十分高かった。また、pH3の一次エマルジョンは、室温で7日間保存の後、クリーミングに対して安定し、それは滴凝集が起こらないことを示した。他方、pH4の一次エマルジョンは、7日間保存の後にクリーミングに対して不安定であり、それはいくらかの滴凝集が時間とともに起こったことを示した。一次エマルジョンが、pH4でクリーミングに対して不安定だった理由は、このpHが、吸着したβ−ラクトグロブリン分子の等電点に対して相当近似しいるためであり、それによって、長期の保存の間に、滴間に、凝集を防止するために十分に強い静電反発がなくなるからかもしれない。
【0037】
中間の多糖類濃度では、二次エマルジョンは、滴凝集(高z粒径、高τ800)及びクリーミングに対してあまり安定でなかった。この現象は、電荷の中和及び架橋凝集作用に起因するものとすることができる。タンパク質被覆滴を完全に被覆するために十分な多糖類が存在しない場合、滴表面で露出する正電荷の領域及び負電荷の領域があり、これは、架橋凝集を促進するであろう。さらに、滴間の静電反発が、引力相互作用(例えば、ファンデアワールス及び疎水性)を克服するのに不十分であるために、滴における全体の実効電荷は比較的小さかった(|ζ|<15mV)。高濃度の多糖類では、二次エマルジョンは、pH3及び4の双方で、滴凝集(低z粒径、低τ800)及びクリーミングに対して安定であった。この再安定性は、滴表面が、多糖類で完全に被覆され、滴電荷が比較的高くなったという事実に起因するかもしれない(図2)。さらに、界面厚が、滴表面に対する多糖類の吸着のために、増加したであろう。よって、それら凝集に反発するであろうタンパク質/多糖類被覆滴間に強い静電及び立体反発があったであろう。
【0038】
エマルジョンが滴凝集及びクリーミングに対して安定でなかった中間の多糖類濃度の範囲は、多糖類の種類及びpHに依存した(図4から6)。例えば、カラギナンを添加したタンパク質被覆滴を含むエマルジョンは、pH3及び4で0.002重量%でのみ不安定であり、カラギナンを添加したこれらはpH4で0.002重量%で不安定であったが、pH3で0.002から0.006では安定であり、アラビアゴムを添加したものは、pH4で0.002から0.006重量%で不安定であったが、pH3で0.002から0.01で安定であった。滴凝集の作用におけるこれらの差異は、滴電化における差異に起因するであろう(図2)。一般に、エマルジョンは、ζ−電位の大きさが大きく、滴が多糖類で十分被覆されている場合、滴凝集に安定であった。
【0039】
環境ストレスに対するエマルジョンの安定性
一連の実験の目的は、タンパク質/多糖類被覆滴を含む二次エマルジョンが、タンパク質被覆滴を含む一次エマルジョンよりも環境ストレスに対してより安定であるか否かを測定することである。ζ−電位測定は、タンパク質被覆滴と多糖類との相互作用を評価するために用いられ、クリーミング安定性測定は、エマルジョンの全体的な安定性を評価するために用いられた。異なる塩濃度(0、50又は100mMのNaCl)、糖濃度(0又は10重量%の蔗糖)及び熱処理(30又は90℃)での一次及び二次エマルジョン(0.1重量%水中コーン油型エマルジョン、pH4)を分析した。二次エマルジョンの多糖類濃度を、(i)それがζ−電位測定から測定されたものとしてタンパク質被覆滴表面を飽和するために十分となる(図2)ように、(ii)それは滴凝集及びクリーミングに対して安定であった二次エマルジョンを生成するために必要な最小限濃度以上となる(図4から6)ように、選択した。このため、二次エマルジョンを、0.004重量%カラギナン、0.004重量%アルギナート、0.02重量%アラビアゴムを用いて調製した。
【0040】
エマルジョンの安定性における熱処理(30分間、30又は90℃)の影響を、図7に示す。先の研究は、β−Lg安定化エマルジョンを90℃に加熱することが、吸着タンパク質の熱変性のために滴凝集を促進し得ることを示した。非加熱及び加熱一次エマルジョンは、pHが吸着β−ラクトグロブリンの等電点にかなり近かったため、双方とも加熱に対して不安定であり、そのため滴間で凝集を防止するほど十分に強い静電反発がなかった。他方、二次エマルジョンの全ては、熱処理に対して安定であった(図7)。多糖類は、タンパク質被覆滴の表面に吸着し、界面厚み及び電荷を増加させることによって滴間の立体及び静電反発を増加させたと考えられる。結果は、加熱が滴表面から多糖類を脱着させず、二次エマルジョンは一次エマルジョンのように滴凝集に対して不安定にならなかったことを示唆する。この仮説は、ζ−電位測定によって確認され、それは、二次エマルジョンにおける滴の電荷が、熱処理において±2mV未満まで変化した(データを示さず)ことを示す。よって、加熱によって引き起こされた滴表面から多糖類の脱着の証拠はない。
【0041】
エマルジョンの安定性において塩の添加(0、50又は100mMのNaCl)の影響を図8に示す。一次エマルジョンは上述した理由のためにすべての塩濃度において不安定であった。アルギナート及びカラギナンを含む二次エマルジョンは、0及び50mMのNaClでクリーミングに対して安定であったが、100mMのNaClで不安定であった。一方、アラビアゴムを含む二次エマルジョンは、50及び100mMのNaClでクリーミングに対して非常に不安定であった。エマルジョンに対する塩の添加は、多くの方法においてそれらのクリーミングの安定性に悪影響を与えるかもしれない。第1に、塩は、荷電滴間の静電反発をスクリーニングし、それは、反発コロイド相互作用の強度がもはや吸引コロイド相互作用を克服するのに相当十分でない場合、滴凝集を促進することができる。第2に、エマルジョンにおける塩の存在は、多糖類とタンパク質被覆油滴との間の静電吸引を弱めているかもしれず、それは、多糖類分子の部分的又は十分な脱着をもたらすかもしれない。これらのエマルジョンのζ−電位は塩濃度の増加に伴って相当変化することはないという事実(以下参照)は、カラギナン分子が滴表面から十分脱着しないことを示唆する。いずれにしても、多糖類とタンパク質被覆滴表面との間の引力を弱めることは、1以上の滴に対する多糖類の吸着のために、架橋凝集をもたらすかもしれない。pH4で、タンパク質/アラビアゴム被覆滴は、タンパク質/カラギナン又はタンパク質/アルギナート被覆滴よりもおおむね低いζ−電位を有し、これは、滴間の静電反発が弱いことを意味する。これは、低量のNaClがアラビアゴムエマルジョンにおける滴凝集を促進するために必要であったという事実の説明になるであろう。さらに、滴表面に対するアラビアゴムの架橋親和性は、カラギナン及びアルギナートのそれよりも弱く(表1)、NaClがより容易にアラビアゴムを吸着しているかもしれないという可能性をもたらす。滴のζ−電位の測定を、塩の添加に伴って観察されたエマルジョンにおける安定性の物理化学的起源に対するさらなる見通しを与えるために用いた。
【0042】
ζ−電位測定におけるNaClの影響は、二次エマルジョンを調製するために用いられた多糖類の種類に大いに依存した(図9)。つまり、ζ∝κ-1(連続表面荷電密度及び界面構造における変化なしを仮定する)である(ここで、κ-1はデバイ・スクリーニング長(3))、静電スクリーニング作用のために、塩濃度の増加に伴うζ−電位における漸進的な減少が予想される。室温での水溶液に対して、デバイ・スクリーニング長は、κ-1≒0.304/√Inm(ここで、Iはモル/リットルで表される溶液のイオン強度(3))によりイオン強度に関連する。よって、滴電位は以下の様式:ζ∝1/√Iにおける塩濃度の増加に伴って減少することが予想される。
【0043】
タンパク質被覆滴に対して、塩濃度の増加に伴うζ−電位における漸進的な減少があり(図9)、これは、静電スクリーニング作用に起因するかもしれない。一方、タンパク質/カラギナン及びタンパク質/アルギナート被覆滴について、塩濃度の増加に伴うζ−電位における減少は、予想よりもはるかに少なかった。この種の作用は、β−ラクトグロブリン/ペクチン被覆滴を含有する二次エマルジョンに対しても観察されており、塩濃度に伴う界面膜の組成、厚み及び構造における変化に起因していた。塩添加の結果としてのこれらの界面特性の変化は、吸着及び非吸着多糖類間(反発)、2以上の吸着多糖類間(反発)又は吸着多糖類とタンパク質との間(引力)の静電的相互作用の減少のために起こるかもしれない。最後に、タンパク質/アラビアゴム被覆滴は、タンパク質/アルギナート又はタンパク質/カラギナン被覆滴よりも、塩濃度の増加に伴うζ−電位における相当の減少を示し、それはアラビアゴムのいくらかが滴表面から脱着するかもしれず、それによって、電荷中和及びポリマー架橋作用によってNaClの低濃度での不安定化を促進することができることを示唆する。3種の多糖類の異なる作用は、それらの異なる化学組成(官能基)又は異なる分子形態のためかもしれない。カラギナン及びアルギナート分子は、アラビアゴム分子よりも構造的により拡張されることが予想されるであろう。
【0044】
また、エマルジョンの安定性に対する糖の添加(0又は10重量%蔗糖)の影響を測定した(データは示さず)。滴におけるζ−電位又はクリーミング安定性の変化は、蔗糖の有無によって変化が観察されず、これは、蔗糖が界面組成又はエマルジョン安定性における影響がないことを示す。
【0045】
以下、本発明のより広い範囲の典型例に説明するように、飲料エマルジョンは、タンパク質/多糖類界面によって被覆された油滴を含んで製造することができる。これらの界面複合物を、カチオン性タンパク質被覆滴上のアニオン性多糖類の静電的積層によって形成した。形成された界面の電気特性は、主に、多糖類の電荷によって決定されるようであり、それは、溶液pH及び多糖類の種類によって制御された。形成された二次エマルジョンは熱処理(90℃にて30分間)、糖(10%蔗糖)及び塩(≦50mMのNaCl)に対して安定であった。これらの結果は、この界面エンジニアリング技術が、アラビアゴム及び改質でんぷんのような従来の多糖類乳化剤にとってかわるために飲料産業で使用することができることを示す。従来の多糖類の乳化剤に対するタンパク質/多糖類複合体の利点は、かなり低量で使用することができ、多糖類の乳化剤よりも価格及び質においてより変動がないことである。
【実施例】
【0046】
以下の限定されない実施例及びデータは、酸性飲料エマルジョンの製造を含む本発明のエマルジョン/飲料及び/又は方法に関連する種々の観点及び特徴を示し、それらはここに記載される方法論を通して入手することができる。先行技術と比較すると、本発明のエマルジョン/飲料システム及び方法は、意外で、予想外で、対照的な結果及びデータを示す。本発明の有用性がそれとともに使われるいくつかの水性飲料のようなシステムと乳化剤/ポリマー成分の組合せを用いることにより例示され、相当する結果が、この発明の範囲に相応するように、種々の他のそのようなシステム、酸性飲料組成物疎水性成分及び乳化剤/ポリマー成分の組み合わせで得られることは、当業者によって理解されるであろう。
【0047】
実施例1a
三次エマルジョンを、0.5重量%コーン油、0.1重量%レシチン、0.0078重量%キトサン、0.02重量%ペクチン及び100mM酢酸(pH3.0)の組成で調製した。利用の前に、このエマルジョンで形成されるいずれかの浮塊を、4000psiで2回、高圧ホモジナイザーに通すことによって破壊した。異なるpH(3〜8)及びイオン強度(0又は100mMのNaCl)による一連の希釈エマルジョン(〜0.005重量%コーン油)を、一次、二次及び三次エマルジョンを、蒸留水又はNaCl溶液で希釈し、次いで、HCl又はNaOHでpHを調節することによって形成した。これらのエマルジョンを、さらなる希釈剤を必要とせずに、レーザー回折、粒子電気泳動及び濁度技術によって直接分析した。次いで、希釈一次、二次及び三次マルジョンを、室温にて1週間保存し、それらの電荷及び平均滴径を測定した。
【0048】
実施例1b
滴電荷における影響−一次エマルジョン
一次エマルジョンの滴のζ−電位は、全てのpH値において負であったが、低いpHでよりも相当負がより高かった(図4)。レシチンにおけるアニオン性リン酸基のpKa値が約pH1.5付近であったため、吸着レシチン分子のより少ないフラクションがイオン化されたので、滴の電荷は低pHでより弱い負であった。一次エマルジョンの滴における電荷の大きさは、塩の添加で減少し、例えば、NaClが0から100mMに増加した場合、ζ−電位が、pH3で−42から−13mVに変化した。この減少は、静電的スクリーニング作用に起因するものであり、それはイオン強度を増加させることでコロイド粒子の表面荷電電位における減少をもたらす。
【0049】
実施例1c
滴電荷における影響−二次エマルジョン
二次エマルジョンの滴のζ−電位は、アニオン性レシチン被覆滴の表面におけるカチオン性キトサン分子の吸着のため、pH3で高い正(〜38mV)であった。pHの増加につれて、滴における電荷は、より小さいな正となり(pH4)、ついに負になった(pH≧5)。pHの増加に伴う滴における正電荷の減少は、おそらく、キトサンにおける−NH3+基の脱プロトン化の結果である。これらの基は約6.3から7のpK値を有し、よって、pHが増加するにつれて、キトサンは、より低い正荷電となる。キトサンがその正荷電を失うにつれて、アニオン性レシチン分子とカチオン性キトサン分子間の静電引力は減少する。その結果、これは観察された作用を説明するために必要ではないが、キトサン分子は高いpHで滴表面から脱着するかもしれない可能性がある。
【0050】
実施例1d
滴電荷における影響−三次エマルジョン
pH3で、三次エマルジョンにおけるζ−電位は、塩の不存在下、わずかに正であり(+8mV)、これは、吸着されたペクチン分子における負の電荷はレシチン−キトサン被覆滴における高い正電荷(+38mV)を克服するのには不十分であったことを示唆する。ペクチンのカルボキシル基のpKa値は通常pH4〜5周辺にあり、よって、ペクチンは、高いpHでよりも、低いpHでより小さな負電荷を有する。従って、キトサン被覆滴における正電荷の減少での有効性は、この低いpHで減少するであろう。興味深いことに、100mMのNaClがpH3で存在した場合、三次エマルジョンに対する荷電は負であり(−9mV)、それは吸着ペクチンの負電荷が、塩の存在下、レシチン−キトサン被覆滴において非常に減少した正電荷(+11mV)を克服するのに十分だったことを示唆する。pH≧4で、三次エマルジョンは、塩の存在及び非存在下でアニオン性であり、これは、吸着ペクチン分子における負電荷がレシチン−キトサン被覆滴における正電荷とバランスするのに十分以上であったことを示唆する。
【0051】
実施例2a
滴凝集における影響−一次エマルジョン
一次エマルジョンにおける滴は、全てのpH及びNaCl値で広範な滴凝集に対して比較的安定であった。しかし、塩の存在下で、低いpH値(pH3及び4)で保存されたエマルジョンにおける粒子は、塩がない状態で保存されたエマルジョンにおけるそれらよりも非常に大きかった。例えば、pH3で、100mMのNaClにてd32=2.1±0.2μm、0mMのNaClにて0.91±0.09μmであった。低いpH及び高い塩での滴凝集は、増加した静電スクリーニングと組み合わせられたレシチン分子における減少した電荷が、滴間の静電反発の減少をもたらしたためかもしれない。さらに、塩は、極性脂質の有効ヘッド基のサイズを減少させることによってリン脂質膜の曲げを減少し、それは、エマルジョンにおける滴合体に有利である。
【0052】
実施例2b
滴凝集における影響−二次エマルジョン
NaClを添加しない場合、二次エマルジョンの滴は、低いpH値(pH3及び4)で、滴凝集に対して比較的安定であったが、中間のpH値(5〜7間)で、非常に不安定であった。滴の高い正電荷が、滴間で強い静電反発をもたらしたので、滴はpH3で、滴凝集におそらく安定であったのであろう。pHが増加するにつれて、キトサン分子はそれらの正電荷(pKa〜6.3〜7)を失い始め、よって、滴に対する電荷は減少した。さらに、カチオン性のキトサンとアニオン性のレシチン分子間の静電吸引が減少したため、キトサン分子はレシチン被覆滴の表面により強く保持されない。従って、キトサン分子のいくつかは、エマルジョンにおける滴表面から、完全に又は部分的に、移動したかもしれない。これらのキトサン分子は、よって、負に荷電したレシチン被覆滴を一緒に保持するポリマー架橋として機能することができた。従って、架橋凝集は、中間のpH値(5〜7)で観察された滴凝集に対して比較的安定であったかもしれない。100mMのNaClの存在下、エマルジョンは低いpH値(pH3及び4)で凝集にまだ比較的安定であったが、すべてのより高い値で不安定であった。
【0053】
実施例2c
滴凝集における影響−三次エマルジョン
0mMのNaClのpH3でのエマルジョンを除いては、三次エマルジョンの滴は、塩の存在及び非存在下のすべてのpH値で、滴凝集に安定であった。滴は、それらの間の静電反発が比較的弱くなるような、小さなζ−電位を有するために、おそらく、凝集がこのエマルジョンで起こったのであろう。さらに、水相における負荷電ペクチン分子と正荷電滴との間の架橋凝集が起こるかもしれない。これらの結果は、滴凝集に対する良好な安定性を示すエマルジョンは、レシチン−キトサン−ペクチン膜を用いて製造することができることを示す。
【0054】
実施例3a
本発明の種々の他の面を例示する。5重量%マグロ油、1重量%レシチン及び0.2重量%キトサンを含む水中マグロ油型エマルジョンを調製した。濃縮水中マグロ油型エマルジョン(15重量%油、3重量%レシチン)を、15重量%マグロ油を85重量%水性乳化剤溶液(3.53重量%レシチン)と、高速のブレンダー(M133/1281-0、Biospec Products社製、ESGC、スイス)を利用して混合し、次いで5000psiでの一段式高圧力弁ホモジナイザー(APV-Gaulin、Model Mini-Lab 8.30H、ウィルミントン、MA)に3回通すことによって調製した。この一次エマルジョンを、二次エマルジョン(5重量%マグロ油、1重量%レシチン及び0.2重量%キトサン)を形成するために、水性キトサン溶液で希釈した。二次エマルジョンで形成されるいずれかの浮塊を、4000psiの圧力で、高圧力弁ホモジナイザーに1回通すことによって破壊した。また、上述した同じ時期の出願で述べられているように、二次エマルジョンを、コーンシロップ固体(20重量%)と溶液中で混合することによって調製した。ここで述べられるように、粉末を、噴霧乾燥によって製造した。
【0055】
実施例3b
粉末(0.5g)を、所望のpH(3から8)で4.5mLのアセトン緩衝液で溶解した。再構成されたエマルジョンを、ガラス試験管(内部の直径=15mm、高さ=125mm)に移し、次いで、分析前に室温にて保存した。エマルジョンの油滴の電荷(ζ−電位)を、粉末電気泳動器具(ZEM5003、Zetamaster、マルヴァーンInstruments、Worcs.、英国)を用いて測定した。エマルジョンを、多重散乱効果を避けるために、分析前にpHを調整した二回蒸留水で約0.008重量%の油滴濃度に希釈した。
【0056】
実施例3c
異なるpH値(3から8)の一連の希釈エマルジョン(10g固体/100gエマルジョン)を室温にて24時間保存し、電荷(ζ−電位)を測定した。
再構成されたエマルジョンのζ−電位は、低pH値(<pH8)で正であったが、高い値では負となった。キトサンにおけるカチオン基は、一般に約6.3から7のpKa値を有する。Schulz, P. C, Rodriguez, M.S., Del Blanco, L.F., Pistonesi, M., & Agullo, E. (1998)参照。キトサンの乳化特性、Colloid and Polymer Science, 276, 1159-1165参照。このように、キトサンは、このpHの周辺でその電荷の一部を失う。従って、キトサン及びレシチン被覆滴間での静電吸引が弱められたかも知れず、それは吸着キトサンのいくつかの放出をもたらすかもしれない。あるいは、キトサンの一部又はすべては、滴表面に吸着されたままだったかもしれないが、キトサンが一部のその正電荷を失ったので、滴は、負に荷電するようになった。再構成されたエマルジョンは、pH<5.0で、滴凝集に対して安定であったが、平均粒径の相当の増加から推論すると、より高いpH値で非常に不安定だった。より高いpH値でのエマルジョンの不安定性は、おそらく、ζ−電位の大きさが比較的低かったからであり、それは、滴間で静電反発を減少し、広範な滴凝集をもたらした。さらに、滴表面からのキトサン分子の部分的な脱着は、若干の架橋凝集をもたらしたかもしれない。
【0057】
材料及び方法
実施例4から5の材料
粉末β−ラクトグロブリン(β−Lg)がDavisco Foods International (ロット番号:JE 001-3-922、Le Sueur、MN)から供給された。タンパク質含有量は、供給元によって98.3%(乾燥ベース)であることが報告され、β−Lgは全タンパク質の95.5%で形成されている。タンパク質粉末の含水量は、4.9%であることが報告された。この製品の脂肪、アッシュ及びラクトース含量は、それぞれ、0.3±0.1、2.5±0.2及び<0.5重量%であることが報告されている。アルギン酸ナトリウム(ロット番号:6724(TIC Pretested(登録商標)Colloid 488T))及びアラビアゴム(ロット番号:8475)(食品等級)は、TICガムによって寄付された。食品等級のτ−カラギナンは、FMC BioPolymer(フィラデルフィア、PA)(ロット番号:10325050)によって寄付された。メーカーは、このサンプルが他のミネラル(<5%)からの混入物が低量であり、ほとんど純粋なナトリウムであると報告した。分析等級の塩酸、水酸化ナトリウム、アジ化ナトリウム及びリン酸ナトリウムを、シグマアルドリッチ(セントルイス、MO)から得た。コーン油を、地元のスーパーマーケットから購入し、さらなる精製なしで使用した。浄水システム(Nanopure Infinity、Barnsteadインターナショナル、IA)からの蒸留及び脱イオン化水を、すべての溶液に用いた。
【0058】
実施例4a
溶液の調製
乳化剤溶液を、5mMリン酸緩衝液(pH7.0)中に0.1重量%のβ−Lgを分散させ、少なくとも2時間攪拌することによって調製した。アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム及びτ−カラギナン溶液を5mMのリン酸緩衝液(pH7.0)中に粉末多糖類の適当量を分散させ、少なくとも2時間攪拌することによって調製した。τ−カラゲーニンの場合、次いで、分散及び溶解を促進するために、溶液を20分間70℃に水浴中で加熱した(19)。アジ化ナトリウム(0.02重量%)を、微生物の成長を防止するために、各溶液に添加した。調製後、タンパク質及び多糖類溶液を、バイオポリマーの完全な水和を行うために、5℃にて一晩保存した。
【0059】
実施例4b
エマルジョンの調製
この実験では、用語「一次エマルジョン」は、乳化剤としてタンパク質のみを用いて製造したエマルジョンを指すために用い、一方、用語「二次エマルジョン」は、多糖類をも添加された一次エマルジョンを指すために用いる。多糖類は、溶液条件(例えば、pH及びイオン強度)によって二次エマルジョンにおいて滴表面に吸着されるかもしれないし、吸着されないかもしれない。
【0060】
水中コーン油型エマルジョンを、1重量%コーン油を99重量%の水性エマルジョン溶液(5mMリン酸緩衝液(pH7)中の0.091重量%β−Lg)を用い、高速のブレンダー(M133/1281-0、Biospec Products社製、スイス)を用いて室温にて2分間混合することによって調製した。この粗エマルジョンを、次いで、2段階高圧ホモジナイザー(LAB 1000、APV-Gaulin、ウィルミントン、MA)(1段階目4500psi、2段階目500psi)に3回通し、平均粒径を小さくした。結果として生じたエマルジョンを、次いで、リン酸緩衝液及びアジ化ナトリウム溶液(0.2重量%油、0.018重量%β−Lg、pH7.0)で希釈して希釈エマルジョンを得た。最後に、この希釈エマルジョンを、多糖類ストック溶液(アジ化ナトリウム、τ−カラギナン又はアラビアゴム)及びリン酸緩衝液の異なる比で希釈し、以下の組成を有する一次及び二次エマルジョンを得た。0.1重量%コーン油、0.009重量%β−Lg、0〜0.012重量%アルギン酸ナトリウム又は0.012重量%τ−カラギナン又は0〜0.05重量%アラビアゴム(pH7.0、5mMリン酸緩衝液)。一次及び二次エマルジョンを、次いで、30分間室温で攪拌し、0.1又は1MのHClを添加することによって、pH3又は4のいずれかに調節した。続いて、エマルジョンを、分析(下記参照)前に、室温で保存した。
【0061】
実施例5a
粒子電荷測定
水溶液中の多糖類分子の電荷を、電気泳動測定(Zetasizer Nano-ZS、マルヴァーンInstruments、ウースターシャー、英国)が可能な商用手段を使って測定した。水中油型エマルジョンの滴の電荷を、もう一つの商用電気泳動手段(ZEM、Zetamaster、マルヴァーンInstruments、ウースターシャー、英国)を使って測定した。これらの器具は、電界印加における分子又は粒子運動の方向及び速度を測定し、次いで、計算された電気泳動移動度をζ−電位値に変換した。水溶液及びエマルジョンを調製し、分析前に、24時間室温にて保存した。
【0062】
実施例5b
粒径測定
エマルジョンの平均粒径を、商用ダイナミック光散乱手段(Zetasizer Nano-ZS、マルヴァーンInstruments、ウースターシャー、英国)を使って測定した。この器具は、それらの拡散係数の測定値から、粒径を推測する。エマルジョンを調製し、分析前に、24時間室温にて保存した。
【0063】
実施例5c
スペクトル−濁度測定
コロイド分散の濁度スペクトルはそれが含む粒径に依存する(23)ため、エマルジョンにおける滴凝集の指標を、濁度対波長の測定値から得た。エマルジョンの約1.5gのサンプルを、5mmの経路長プラスチック分光光度計キュベットに入れた。エマルジョンを、滴のクリーミングのために濁度のいかなる変化をも回避するために、それらを均一にすることを確保するように測定前に何度もひっくり返した。エマルジョンの吸収における変化を、参照として蒸留水を用い、UV−可視分光光度計(UV-2101PC、島津製作所、東京、日本)を用いて、800nmから400nmまで波長が変化したとき、記録した。滴凝集が生じたこれらのエマルジョンにおいて800nmで、エマルジョン濁度において相当の増加があったことを見出した。従って、この波長での濁度測定を、エマルジョンにおける滴凝集の程度を示すために用いた。エマルジョンを調製し、分析前に、24時間室温にて保存した。
【0064】
実施例5d
クリーミング安定性測定
エマルジョンの約3.5gの試料を、10mm経路長のプラスチック分光光度計キュベットに入れ、それから7日間、30℃にて保存した。乱れていないエマルジョンの600nmでの濁度の変化を、参照として蒸留水を用い、UV−可視分光光度計(UV-210 IPC、島津製作所、東京、日本)を用いて保存の間、測定した。光線を、キュベットの底から約15mmの高さ、すなわち、エマルジョンの高さのおよそ42%の高さで、エマルジョンに通した。エマルジョンの油滴は、重力のために時間とともに上へ動く傾向があり、それはキュベットの底で比較的透明な滴枯渇水分漿液層の形成をもたらす。この水分漿液層が上方へ動いた速度は、エマルジョンのクリーミング安定性の指標を与え、速度が速いほど、エマルジョンはより不安定である(24)。従って、エマルジョン汚濁におけるかなりの減少は、水分漿液層がエマルジョンの高さの少なくとも42%まで上がったという事実の指標となった。クリーミング安定性を、以下の式で定量化した:
安定性(%)=100×τ(7日)/τ(0日)、
ここで、τ(7日)及びτ(0日)は、それぞれ、0日目及び7日目に行われた濁度の測定値である。従って、100%値は、7日間の保管の間に滴クリーミングが起こらず、一方、0%値は、迅速にクリーミングが起こったことを示す(つまり、全ての滴が測定点より上に動いた)。また、エマルジョン濁度は、粒径及び滴濃度に依存し、よって、クリーミング安定性における観察された変化が、滴凝集及びクリーミングにおける変化を反映することに留意すべきである。
【0065】
実施例5e
静電分析
上述した測定値のそれぞれを、少なくとも2つの新鮮な調製サンプルを用いて行い、その結果を、平均及び標準偏差で報告する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1A】特定の限定されない実施形態、安定化飲料エマルジョンの製造を示す。
【図1B】特定の限定されない実施形態、安定化飲料エマルジョンの製造を示す。
【図2A】異なる種類の多糖類を含む0.1重量%の水中油型エマルジョン中の多糖類の濃度に依存する滴荷電(ゼータ電位)である。pH3、予測曲線は式1及び表1のパラメータを用いて行った。
【図2B】異なる種類の多糖類を含む0.1重量%の水中油型エマルジョン中の多糖類の濃度に依存する滴荷電(ゼータ電位)である。pH4、予測曲線は式1及び表1のパラメータを用いて行った。
【図3】水溶液中の多糖類分子の有効なゼータ電位のpH依存性を示す。
【図4A】異なる種類の多糖類を含む0.1重量%の水中油型エマルジョン中の多糖類の中間粒径に依存する滴荷電(ゼータ電位)である。pH3。
【図4B】異なる種類の多糖類を含む0.1重量%の水中油型エマルジョン中の多糖類の中間粒径に依存する滴荷電(ゼータ電位)である。pH4。
【図5A】異なる種類の多糖類を含む0.1重量%の水中油型エマルジョン中の多糖類の800nmでの濁度の依存性である。pH3。濁度の増加は、粒子凝集の指標である。
【図5B】異なる種類の多糖類を含む0.1重量%の水中油型エマルジョン中の多糖類の800nmでの濁度の依存性である。pH4。
【図6A】異なる種類の多糖類を含む0.1重量%の水中油型エマルジョン中の多糖類のクリーム安定性の依存性である。pH3。クリーム安定性の増加は、粒子凝集の指標である。
【図6B】異なる種類の多糖類を含む0.1重量%の水中油型エマルジョン中の多糖類のクリーム安定性の依存性である。pH4。クリーム安定性の増加は、粒子凝集の指標である。
【図7】異なる種類の多糖類の有無における0.1重量%の水中油型エマルジョン(pH4)中の安定性における熱処理の影響を示す。
【図8】異なる種類の多糖類の有無における0.1重量%の水中油型エマルジョン(pH4)中の安定性におけるNaClの影響を示す。
【図9】異なる種類の多糖類の有無における0.1重量%の水中油型エマルジョン(pH4)中のゼータ電位のNaClの影響を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料組成物を製造する方法であって、
疎水性成分を含有する水性飲料媒体を準備し、該媒体はpHが約2から約6.5であり、
疎水性成分と乳化剤成分とを接触させ、乳化剤の少なくとも一部は実効電荷を有し、及び
エマルジョンとポリマー成分とを接触させ、ポリマー成分の少なくとも一部は乳化剤成分の実効電荷とは反対の実効電荷を有することを含む飲料組成物の製造方法。
【請求項2】
ポリマー成分を乳化疎水性成分に取り込む請求項1の方法。
【請求項3】
疎水成分は、コーン油、大豆油、ヒマワリ油、キャノーラ油、菜種油、オリーブ油、ピーナツ油、藻油、ナッツ油、植物油、ベジタブル油、魚油、フレバー油、動物脂肪、植物脂肪及びそれらの組合せから選択される油脂成分である請求項1の方法。
【請求項4】
乳化剤成分は、レシチン、キトサン、ペクチン、ローカストビーンガム、アラビアゴム、グアーゴム、アルギン酸、アルギナート、セルロース改変セルロース、改変デンプン、ホエイタンパク質、カゼイン、大豆タンパク質、魚タンパク質、食肉タンパク質、植物タンパク質、ポリソルベート、脂肪酸塩、小分子界面活性剤及びそれらの組み合わせから選択される請求項1の方法。
【請求項5】
ポリマー成分は、タンパク質、多糖類及びそれらの組み合わせから選択される請求項1の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの成分の実効電荷は、媒体のpHを調節することによって与えられる請求項1の方法。
【請求項7】
乳化剤成分は、タンパク質を含み、前記媒体のpHは前記タンパク質の等電点以下である請求項6の方法。
【請求項8】
ポリマー成分は、他の乳化剤成分と接触し、該他の乳化剤成分の少なくとも一部は実効電荷が前記ポリマー成分の実効電荷と反対である請求項1の方法。
【請求項9】
飲料組成物を製造する方法であって、
水性の酸性飲料媒体を準備し、
前記飲料媒体中における疎水性成分の水性エマルジョンを準備し、該エマルジョンは、実効電荷を有する乳化剤成分であり、
乳化剤成分とポリマー成分とを接触させ、ポリマー成分の少なくとも一部は乳化剤成分の実効電荷とは反対の実効電荷を有することを含む飲料組成物の製造方法。
【請求項10】
エマルジョンを飲料媒体中で調製する請求項9の方法。
【請求項11】
エマルジョンを飲料媒体に取り込む請求項9の方法。
【請求項12】
エマルジョンを、少なくとも部分的に疎水成分の無水エマルジョンとして取り込む請求項9の方法。
【請求項13】
疎水成分は、コーン油、大豆油、ヒマワリ油、キャノーラ油、菜種油、オリーブ油、ピーナツ油、藻油、ナッツ油、植物油、ベジタブル油、魚油、フレバー油、動物脂肪、植物脂肪及びそれらの組合せから選択される油脂成分である請求項9の方法。
【請求項14】
乳化剤成分は、レシチン、キトサン、ペクチン、ローカストビーンガム、アラビアゴム、グアーゴム、アルギン酸、アルギナート、セルロース改変セルロース、改変デンプン、ホエイタンパク質、カゼイン、大豆タンパク、魚タンパク質、食肉タンパク質、植物タンパク質、ポリソルベート、脂肪酸塩、小分子界面活性剤及びそれらの組み合わせから選択される請求項9の方法。
【請求項15】
水性媒体中の疎水成分のエマルジョンを含み、該エマルジョンは、実効電荷を有するエマルジョン成分と、ポリマー成分とを含有し、該ポリマー成分の少なくとも一部は、乳化剤成分の実効電荷と反対の実効電荷を有し、前記エマルジョンはpH約2から約6.5である酸性飲料エマルジョン。
【請求項16】
疎水成分は、コーン油、大豆油、ヒマワリ油、キャノーラ油、菜種油、オリーブ油、ピーナツ油、藻油、ナッツ油、植物油、ベジタブル油、魚油、フレバー油、動物脂肪、植物脂肪及びそれらの組合せから選択される油脂成分である請求項15のエマルジョン。
【請求項17】
乳化剤成分は、レシチン、キトサン、ペクチン、ローカストビーンガム、アラビアゴム、グアーゴム、アルギン酸、アルギナート、セルロース改変セルロース、改変デンプン、ホエイタンパク質、カゼイン、大豆タンパク、魚タンパク質、食肉タンパク質、植物タンパク質、ポリソルベート、脂肪酸塩、小分子界面活性剤及びそれらの組み合わせから選択される請求項15のエマルジョン。
【請求項18】
ポリマー成分は、タンパク質、多糖類及びそれらの組み合わせから選択される請求項1のエマルジョン。
【請求項19】
水性媒体は、少なくとも部分的に蒸発して粒子を与える請求項15のエマルジョン。
【請求項20】
水性媒体中で再構成される請求項19の飲料エマルジョン。
【請求項1】
飲料組成物を製造する方法であって、
疎水性成分を含有する水性飲料媒体を準備し、該媒体はpHが約2から約6.5であり、
疎水性成分と乳化剤成分とを接触させ、乳化剤の少なくとも一部は実効電荷を有し、及び
エマルジョンとポリマー成分とを接触させ、ポリマー成分の少なくとも一部は乳化剤成分の実効電荷とは反対の実効電荷を有することを含む飲料組成物の製造方法。
【請求項2】
ポリマー成分を乳化疎水性成分に取り込む請求項1の方法。
【請求項3】
疎水成分は、コーン油、大豆油、ヒマワリ油、キャノーラ油、菜種油、オリーブ油、ピーナツ油、藻油、ナッツ油、植物油、ベジタブル油、魚油、フレバー油、動物脂肪、植物脂肪及びそれらの組合せから選択される油脂成分である請求項1の方法。
【請求項4】
乳化剤成分は、レシチン、キトサン、ペクチン、ローカストビーンガム、アラビアゴム、グアーゴム、アルギン酸、アルギナート、セルロース改変セルロース、改変デンプン、ホエイタンパク質、カゼイン、大豆タンパク質、魚タンパク質、食肉タンパク質、植物タンパク質、ポリソルベート、脂肪酸塩、小分子界面活性剤及びそれらの組み合わせから選択される請求項1の方法。
【請求項5】
ポリマー成分は、タンパク質、多糖類及びそれらの組み合わせから選択される請求項1の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの成分の実効電荷は、媒体のpHを調節することによって与えられる請求項1の方法。
【請求項7】
乳化剤成分は、タンパク質を含み、前記媒体のpHは前記タンパク質の等電点以下である請求項6の方法。
【請求項8】
ポリマー成分は、他の乳化剤成分と接触し、該他の乳化剤成分の少なくとも一部は実効電荷が前記ポリマー成分の実効電荷と反対である請求項1の方法。
【請求項9】
飲料組成物を製造する方法であって、
水性の酸性飲料媒体を準備し、
前記飲料媒体中における疎水性成分の水性エマルジョンを準備し、該エマルジョンは、実効電荷を有する乳化剤成分であり、
乳化剤成分とポリマー成分とを接触させ、ポリマー成分の少なくとも一部は乳化剤成分の実効電荷とは反対の実効電荷を有することを含む飲料組成物の製造方法。
【請求項10】
エマルジョンを飲料媒体中で調製する請求項9の方法。
【請求項11】
エマルジョンを飲料媒体に取り込む請求項9の方法。
【請求項12】
エマルジョンを、少なくとも部分的に疎水成分の無水エマルジョンとして取り込む請求項9の方法。
【請求項13】
疎水成分は、コーン油、大豆油、ヒマワリ油、キャノーラ油、菜種油、オリーブ油、ピーナツ油、藻油、ナッツ油、植物油、ベジタブル油、魚油、フレバー油、動物脂肪、植物脂肪及びそれらの組合せから選択される油脂成分である請求項9の方法。
【請求項14】
乳化剤成分は、レシチン、キトサン、ペクチン、ローカストビーンガム、アラビアゴム、グアーゴム、アルギン酸、アルギナート、セルロース改変セルロース、改変デンプン、ホエイタンパク質、カゼイン、大豆タンパク、魚タンパク質、食肉タンパク質、植物タンパク質、ポリソルベート、脂肪酸塩、小分子界面活性剤及びそれらの組み合わせから選択される請求項9の方法。
【請求項15】
水性媒体中の疎水成分のエマルジョンを含み、該エマルジョンは、実効電荷を有するエマルジョン成分と、ポリマー成分とを含有し、該ポリマー成分の少なくとも一部は、乳化剤成分の実効電荷と反対の実効電荷を有し、前記エマルジョンはpH約2から約6.5である酸性飲料エマルジョン。
【請求項16】
疎水成分は、コーン油、大豆油、ヒマワリ油、キャノーラ油、菜種油、オリーブ油、ピーナツ油、藻油、ナッツ油、植物油、ベジタブル油、魚油、フレバー油、動物脂肪、植物脂肪及びそれらの組合せから選択される油脂成分である請求項15のエマルジョン。
【請求項17】
乳化剤成分は、レシチン、キトサン、ペクチン、ローカストビーンガム、アラビアゴム、グアーゴム、アルギン酸、アルギナート、セルロース改変セルロース、改変デンプン、ホエイタンパク質、カゼイン、大豆タンパク、魚タンパク質、食肉タンパク質、植物タンパク質、ポリソルベート、脂肪酸塩、小分子界面活性剤及びそれらの組み合わせから選択される請求項15のエマルジョン。
【請求項18】
ポリマー成分は、タンパク質、多糖類及びそれらの組み合わせから選択される請求項1のエマルジョン。
【請求項19】
水性媒体は、少なくとも部分的に蒸発して粒子を与える請求項15のエマルジョン。
【請求項20】
水性媒体中で再構成される請求項19の飲料エマルジョン。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2009−509537(P2009−509537A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533580(P2008−533580)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/037721
【国際公開番号】WO2007/038624
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(399093869)ユニバーシティー オブ マサチューセッツ (19)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/037721
【国際公開番号】WO2007/038624
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(399093869)ユニバーシティー オブ マサチューセッツ (19)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]