安定化されたインターフェロン液体製剤
緩衝剤、シクロデキストリン、等張性剤及び酸化防止剤を含む溶液である、インターフェロン(IFN)、或いはそのイソ型、ムテイン、融合タンパク質、機能的誘導体、活性な分画物、又は塩を含む安定化された液体医薬組成物が本発明において記載される。好ましくは、インターフェロンはインターフェロンβ−1aであり、シクロデキストリンはHPBCDである。本発明の製剤は室温で安定であり、したがって、製剤貯蔵のための費用を低下させ、且つ取り扱い時における起こり得る「過ち」に関して患者に対する安全性を増大させているという利点をもたらす。実際、室温で安定であるそのような製剤を有することは、有害な事象(例えば、免疫原性)に潜在的に関わる分解産物が形成する危険性を低下させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、緩衝剤、シクロデキストリン、等張性剤及び酸化防止剤を含む溶液である、インターフェロン(IFN)、或いはそのイソ型、ムテイン、融合タンパク質、機能的誘導体、活性な分画物、又は塩を含む安定化された液体医薬組成物、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
インターフェロンは、サイトカイン、すなわち細胞間のメッセージを伝達し、且つ感染を引き起こす微生物を殺すことを助けることによって、また生じた何らかの損傷を修復することによって免疫系において不可欠な役割を果たす可溶性のタンパク質である。インターフェロンは自然の状態では感染細胞によって分泌され、1957年に初めて同定された。この名称は、インターフェロンがウイルスの複製及び増殖を「妨害(interfere)」するという事実に由来する。
【0003】
インターフェロンは抗ウイルス活性及び抗増殖活性の両方を示す。生化学的性質及び免疫学的性質に基づいて、天然に存在するヒトインターフェロンは3つの大きなクラスに分類される:インターフェロン−α(白血球)、インターフェロン−β(繊維芽細胞)及びインターフェロン−γ(免疫)。α−インターフェロンは、現在、毛様細胞性白血病、性病性疣贅、カポジ肉腫(後天性免疫不全症候群(AIDS)に罹患している患者を一般には苦しめるガン)及び慢性の非A非B肝炎を処置するために米国及び他の国々において承認されている。
【0004】
さらに、インターフェロン(IFN)は、ウイルス感染に応答して身体によって産生される糖タンパク質である。インターフェロンは、保護された細胞においてウイルスの増殖を阻害する。より低分子量のタンパク質からなることにより、IFNはその作用において著しく非特異的である。すなわち、ある1つのウイルスによって誘導されたIFNは広範囲の他のウイルスに対して効果的である。しかし、インターフェロンは種特異的である。すなわち、ある1つの種によって産生されたIFNは同じ種又は近縁種の細胞においてのみ抗ウイルス活性を刺激する。IFNは、その潜在的な抗腫瘍活性及び抗ウイルス活性のために利用されることになった最初のサイトカイン群であった。
【0005】
3つの主要なIFNは、IFN−α、IFN−β及びIFN−γと称される。このような主要な種類のIFNは最初、その起源細胞に従って分類されていた(白血球、繊維芽細胞又はT細胞)。しかし、数タイプが1種の細胞によって産生され得ることが明らかになった。したがって、現在、白血球IFNはIFN−αと、繊維芽細胞IFNはIFN−βと、T細胞IFNはIFN−γと呼ばれる。第4のタイプのIFN(リンパ芽球様IFN)も存在し、これは「ナマルワ(Namalwa)」細胞系(これはバーキットリンパ腫に由来する)において産生される。ナマルワ細胞系は白血球IFNと繊維芽細胞IFNの混合物を産生するようである。
【0006】
インターフェロンユニット又はインターフェロンに対する国際単位(U又はIU(国際単位を表す))が、50%の細胞をウイルス損傷から保護するために必要な量と定義されるIFN活性の尺度として報告されている。生物活性を測定するために使用され得るアッセイは、記載されるような細胞傷害作用阻害アッセイである(Rubinstein他、1981;Familletti,P.C.他、1981)。インターフェロンについてのこの抗ウイルスアッセイにおいて、約1ユニット/mlのインターフェロンは、50%の細胞障害作用を生じさせるために必要な量である。ユニット数は、国立衛生研究所によって提供されるHu−IFN−βについての国際基準標準物に関して決定される(Pestka,S.、1986)。
【0007】
どのクラスのIFNもいくつかの異なったタイプを含有する。IFN−β及びIFN−γはそれぞれ、単一遺伝子の産物ある。
【0008】
IFN−αとして分類されるタンパク質は、約15のタイプを含有する最も多様な一群である。IFN−α遺伝子のクラスターが第9染色体上に存在し、このクラスターは少なくとも23の遺伝子を含有し、そのうちの15個が活性であり、転写される。成熟型IFN−αはグリコシル化されていない。
【0009】
IFN−α及びIFN−βはすべて、同じ長さ(165アミノ酸又は166アミノ酸)である類似する生物活性を有する。IFN−γは長さが146アミノ酸であり、αクラス及びβクラスとそれほど密接に似ていない。IFN−γのみがマクロファージを活性化することができ、又はキラーT細胞の成熟化を誘導することができる。これらの新しいタイプの治療剤は、腫瘍に対する生物の応答に対して作用を及ぼし、それにより、免疫調節による認識に影響を及ぼすので、生物応答修飾剤(BRM)と呼ばれることがある。
【0010】
ヒト繊維芽細胞インターフェロン(IFN−β)は抗ウイルス活性を有し、新生物細胞に対するナチュラルキラー細胞を刺激することもできる。ヒト繊維芽細胞インターフェロンは、ウイルス及び二本鎖RNAによって誘導される約20,000Daのポリペプチドである。組換えDNA技術によってクローン化された繊維芽細胞インターフェロンに対する遺伝子のヌクレオチド配列(Derynk他、1980)から、タンパク質の完全なアミノ酸配列が推定された。その長さは166アミノ酸である。
【0011】
Shepard他(1981)は、その抗ウイルス活性を無効にした塩基842における変異(141位において、Cys→Try)、及び、ヌクレオチド1119〜1121の欠失を有する変化体クローンを記載した。
【0012】
Mark他(1984)は、塩基469(T)を(A)で置換し、これにより17位におけるCys→Serのアミノ酸交換を生じさせることによって人工的な変異を挿入した。得られるIFN−βは、「天然型」IFN−βと同じくらい活性であり、長期の貯蔵(−70℃)の期間中、安定であることが報告された。
【0013】
Rebit(登録商標)(Serono−組換えヒトインターフェロン−β)は、多発性硬化症(MS)のためのインターフェロン治療において最近開発されたものであり、哺乳動物の細胞系から産生されるインターフェロン(IFN)−β−1aである。その推奨される国際一般名(INN)は「インターフェロンβ−1a」である。
【0014】
タンパク質ベースのすべての医薬品の場合と同様に、治療剤としてのIFN−βの使用において克服しなければならない1つの大きな障害は、医薬製剤におけるその不安定性から生じ得る薬学的効力の喪失である。
【0015】
医薬製剤におけるポリペプチドの活性及び効力を脅かす物理的不安定性には、変性、並びに可溶性及び不溶性の凝集物の形成が含まれ、一方、化学的不安定性には、加水分解、イミド形成、酸化、ラセミ化及び脱アミド化が含まれる。これらの変化のいくつかが、対象のタンパク質の薬学的活性の喪失又は低下を生じさせることが知られている。他の場合では、これらの変化の正確な影響は不明であるが、生じる分解生成物は、望ましくない副作用に対する潜在的可能性のために医薬品として受け入れられないと依然として見なされている。
【0016】
医薬組成物におけるポリペプチドの安定化は、試行錯誤が大きな役割を果たす領域を依然として残している(このことは、Wang(1999)、Int.J.Pharm.、185:129〜188;Wang及びHanson(1988)、J.Parenteral Sci.Tech.、42;S3〜S26によって総説される)。その安定性を増大させるためにポリペプチド医薬製剤に加えられる賦形剤には、緩衝剤、糖、界面活性剤、アミノ酸、ポリエチレングリコール及びポリマーが含まれるが、これらの化学的添加剤の安定化作用はタンパク質に依存して変化する。
【0017】
シクロデキストリンは環状のオリゴ糖である。最も一般的なシクロデキストリンは、α−シクロデキストリン(これは6個のグルコース残基の環から構成される)、β−シクロデキストリン(これは7個のグルコース残基の環から構成される)、及びγ−シクロデキストリン(これは8個のグルコース単位の環から構成される)である。シクロデキストリンの内部空洞は親油性であり、一方で、シクロデキストリンの外側は親水性であり、この組み合わさった性質は、特に医薬品に関連して、シクロデキストリン類の広範囲の研究をもたらしており、多くの包接複合体が報告されている。β−シクロデキストリンはその空洞サイズのために特別に注目されているが、その比較的低い水溶性(25℃で約1.8%w/v)及び付随する腎毒性により、医薬品分野でのその使用が制限される。天然シクロデキストリンの性質を変える様々な試みにより、ヘプタキス(2,6−ジ−O−メチル)−β−シクロデキストリン、ヘプタキス(2,3,6−トリ−O−メチル)−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン及びβ−シクロデキストリン−エピクロロヒドリンポリマーなどが開発されている。医薬品研究における様々なシクロデキストリン及びそれらの使用の包括的な総説については、Pitha他、Controlled Drug Deliver(編者:S.D.Bruck)、Vol.I、CRC Press、Boca Raton、Fla、125頁〜148頁(1983)を参照のこと。さらにより最近の総説については、Uekama他、CRC Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems、Vol.3(1)、1〜40(1987);Uekama、Topics in Pharmaceutical Sciences(1987年、編者:D.D.Breimer及びP.Speiser)、Elsevier Science Publishers B.V.(Biomedical Division)、181〜194(1987);及び、Pegington、Chemistry in Britain、455頁〜458頁(1987年5月)を参照のこと。シクロデキストリンの、特にペプチド送達及びタンパク質送達のこの分野における使用が、T.Irie他によってAdv.Drug.Deliv.Rev.、Vol.36、101〜123(1999)に総説されており、ヒツジ成長ホルモン、インターロイキン−2及びウシインスリンの場合における例が、Brewster他、1991、Pharmaceutical Research、8(6)、792〜795に記載される。
【0018】
国際特許出願公開WO90/03784及び米国特許第5,997,856号は、シクロデキストリンによるポリペプチド(特に、タンパク質)の可溶化及び/又は安定化のための方法を記載する。しかし、インターフェロンの安定化に関するデータはこの文書には何ら報告されていない。
【0019】
米国特許第6,582,728号は、シクロデキストリンをさらには含有し得る、インターフェロン−βを含有し、且つヒト血清アルブミンもまた含有する肺投与のための乾燥粉末組成物を記載する。しかし、この場合でさえ、シクロデキストリンをも含有するインターフェロン組成物の安定化に関するデータはこの文書には何ら報告されていない。
【0020】
国際特許出願公開WO2003/002152は、インターフェロン分子と、シクロデキストリンの特定の誘導体(すなわち、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン)とを含む安定化された組成物を記載する。
【0021】
したがって、このタンパク質の溶解性を改善し、且つ凝集物形成に対してタンパク質を安定化し、それにより、医薬品としてのその有用性を高める生理学的に適合し得る安定化剤を含むIFN−βのさらなる医薬組成物が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、インターフェロン(IFN)を含む安定化された医薬組成物、その調製方法及びその使用を対象とする。具体的には、本発明の主要な目的は、緩衝剤、シクロデキストリン、好ましくは等張性剤、及び酸化防止剤を含む溶液である、インターフェロン(IFN)、或いはそのイソ型、ムテイン、融合タンパク質、機能的誘導体、活性な分画物、又は塩を含む安定化された液体医薬組成物を提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の組成物は、ヒト血清アルブミン(HSA)の非存在下で好ましくは調製され、したがって、この薬学的賦形剤を含まない。そのような組成物は、本明細書中では「HSA非含有」IFN医薬組成物として示され、インターフェロン(IFN)、或いはそのイソ型、ムテイン、融合タンパク質、機能的誘導体、活性な分画物、又は塩を含む。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、本発明の組成物はまた静菌剤を含む。
【0025】
本明細書中で使用される「インターフェロン」又は「IFN」は、文献においてそのようなものとして定義される任意の分子を包含することが意図され、これには、例えば、上記の「発明の背景」の節で述べられた任意のタイプのIFNが含まれる。具体的には、IFN−α、IFN−β及びIFN−γが上記の定義に含まれる。IFN−βが、本発明による好ましいIFNである。本発明に好適なIFNは、例えば、Rebif(登録商標)(Serono)、Avonex(登録商標)(Biogen)又はBetaferon(登録商標)(Schering)として市販されている。本発明によれば、ヒト起源のインターフェロンの使用も好ましい。インターフェロンという用語は、本明細書中で使用されるとき、その塩、機能的誘導体、変化体、アナログ及び活性なフラグメントを包含することが意図される。
【0026】
本明細書中で使用される用語「インターフェロン−β(IFN−beta又はIFN−β)」は、生物流体からの単離によって得られるような、或いは原核生物宿主細胞又は真核生物宿主細胞からDNA組換え技術によって得られるような繊維芽細胞インターフェロン(具体的には、ヒト起源の繊維芽細胞インターフェロン)、並びにその塩、機能的誘導体、変化体、アナログ及び活性なフラグメントを包含することが意図される。好ましくは、IFN−βはインターフェロンβ−1aを意味することが意図される。
【0027】
本明細書中で使用される用語「ムテイン」は、野生型IFNと比較して、生じる生成物の活性をかなり変化させることなく、天然IFNのアミノ酸残基の1つ又は複数が異なるアミノ酸残基によって置換されているか、又は欠失しているか、或いは1つ又は複数のアミノ酸残基がIFNの天然配列に付加されているIFNのアナログを示す。このようなムテインは、知られている合成技術及び/又は部位特異的変異誘発技術によって、或いは、その好適な任意の他の知られている技術によって調製される。好ましいムテインには、例えば、Shepard他(1981)又はMark他(1984)によって記載されるムテインが含まれる。
【0028】
任意のそのようなムテインは、好ましくは、例えば、IFNと実質的に類似する活性又はさらに一層良好な活性を有するような、IFNのアミノ酸配列を十分に複製するアミノ酸の配列を有する。インターフェロンの生物学的機能は当業者には広く知られており、また、生物学的標準物が確立され、例えば、the National Institute for Biological Standards and Control(http://immunology.org/links/NIBSC)から入手可能である。
【0029】
IFN活性を決定するための様々なバイオアッセイが記載されている。IFNアッセイを、例えば、Rubinstein他(1981)による記載のように行うことができる。したがって、任意の所与のムテインが、実質的に類似する活性を有するか、又はIFNよりもさらに一層良好な活性を有するかどうかを日常的な実験によって決定することができる。
【0030】
IFNのムテイン(これは本発明に従って使用することができる)、又はそれをコードする核酸は、本明細書中に示される教示及び指針に基づいて、過度な実験を用いることなく、当業者によって日常的に得ることができる置換ペプチド又は置換ポリヌクレオチドのような実質的に対応する配列の有限な集合を含む。
【0031】
本発明によるムテインのための好ましい変化は、「保存的」置換として知られているものである。本発明のポリペプチド又はタンパク質の保存的なアミノ酸置換では、グループのメンバー間の置換が分子の生物学的機能を保持するように十分に類似する物理化学的性質を有するグループ内の同義的アミノ酸を含むことができる。アミノ酸の挿入及び欠失もまた、特に、挿入又は欠失が少数のアミノ酸(例えば、30個未満、好ましくは、10個未満)を伴うだけであり、且つ機能的な立体配座にとって重要なアミノ酸(例えば、システイン残基)を除去しないか、又はそのようなアミノ酸と入れ替わらないならば、それらの機能を変化させることなく、上記で定義された配列において行われ得ることは明らかである。そのような欠失及び/又は挿入によって作製されるタンパク質及びムテインは本発明の範囲に含まれる。
【0032】
好ましくは、同義的アミノ酸群は、表Iに定義されるアミノ酸群である。より好ましくは、同義的アミノ酸群は、表IIに定義されるアミノ酸群であり、最も好ましくは、同義的アミノ酸群は、表IIIに定義されるアミノ酸群である。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
本発明において使用されるIFNのムテインを得るために使用することができるタンパク質におけるアミノ酸置換を作製する例には、任意の知られている方法ステップが含まれる:例えば、米国特許第4,959,314号、同第4,588,585号及び同第4,737,462号(Mark他);米国特許第5,116,943号(Koths他);米国特許第4,965,195号(Namen他);米国特許第4,879,111号(Chong他);及び、米国特許第5,017,691号(Lee他)などに示される方法ステップ;並びに米国特許第4,904,584号(Shaw他)に示されるリシン置換タンパク質。IFN−βの具体的なムテインが、例えば、Mark他(1984)によって記載されている。
【0037】
用語「融合タンパク質」は、例えば、体液における長時間の滞留時間を有する別のタンパク質に融合された、IFN又はそのムテインを含むポリペプチドを示す。したがって、IFNを別のタンパク質又はポリペプチド(例えば、免疫グロブリン又はそのフラグメント)などに融合することができる。
【0038】
本明細書中で使用される「機能的誘導体」は、残基上の側鎖或いはN末端基又はC末端基として存在する官能基からこの分野で知られている手段によって調製され得るINFの誘導体、並びにそれらのムテイン及び融合タンパク質を包含し、それらが依然として医薬的に許容され得る限り、すなわちIFNの活性と実質的に類似するタンパク質の活性を破壊せず、且つそれを含有する組成物に毒性の性質を与えない限り、本発明に含まれる。このような誘導体は、例えば、抗原性部位を遮蔽し、且つ体液におけるIFNの滞留を延ばすことができるポリエチレングリコール側鎖を含むことができる。他の誘導体では、カルボキシル基の脂肪族エステル、アンモニア又は第一級アミン若しくは第二級アミンとの反応によるカルボキシル基のアミド、アシル成分(例えば、アルカノイル基又はカルボン酸アロイル基)により形成されるアミノ酸残基の遊離アミノ基のN−アシル誘導体、又はアシル成分により形成される遊離ヒドロキシル基(例えば、セリル残基又はトレオニル残基のヒドロキシル基)のO−アシル誘導体が含まれる。
【0039】
IFNの「活性な分画物」、又はムテイン及び融合タンパク質として、本発明は、前記分画物が、対応するIFNと比較して、著しく低下した活性を有しないならば、タンパク質分子のポリペプチド鎖の任意のフラグメント又は前駆体を単独で、或いはそれに結合した関連する分子又は残基(例えば、糖残基若しくはリン酸残基、又はタンパク質分子の凝集体、又は自身による糖残基)と一緒に包含する。
【0040】
本明細書中における用語「塩」は、上記に記載されるタンパク質又はそのアナログのカルボキシル基の塩及びアミノ基の酸付加塩の両方を示す。カルボキシル基の塩を、この分野で知られている手段によって形成させることができ、これには、無機塩、例えば、ナトリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、第一鉄塩又は亜鉛塩など、及び、有機塩基との塩、例えば、アミン(例えば、トリエタノールアミン、アルギニン又はリシン、ピペリジン、プロカインなど)により形成される塩が含まれる。酸付加塩には、例えば、鉱酸(例えば、塩酸又は硫酸など)との塩、及び、有機酸(例えば、酢酸又はシュウ酸など)との塩が含まれる。当然のことではあるが、任意のそのような塩は、本発明に関連したタンパク質(IFN)の生物活性(すなわち、対応する受容体に結合し、且つ受容体のシグナル伝達を開始させる能力)を保持しなければならない。
【0041】
本発明によれば、組換えヒトIFN−β及び本発明の化合物の使用がさらに特に好ましい。
【0042】
特別な種類のインターフェロン変化体が最近では記載されている。いわゆる「コンセンサスインターフェロン」はINFの天然に存在しない変化体である(米国特許第6,013,253号)。本発明の好ましい実施形態によれば、本発明の化合物はコンセンサスインターフェロンとの組合せで使用される。
【0043】
本明細書中で使用される場合、ヒトインターフェロンコンセンサス(INF−con)は、天然に存在するヒト白血球インターフェロンサブタイプ配列の大部分を表すIFN−αのサブセットに共通するそのようなアミノ酸残基を主として含む天然に存在しないポリペプチドで、すべてのサブタイプに共通するアミノ酸が存在しないそのような位置の1つ又は複数において、その位置において主として存在するアミノ酸を含み、且つ少なくとも1つの天然に存在するサブタイプにおけるその位置に存在しないいずれかのアミノ酸残基をいかなる場合でも含まないポリペプチドを意味するものとする。IFN−conは、米国特許第4,695,623号、同第4,897,471号及び同第5,541,293号に開示されるIFN−con1、IFN−con2及びIFN−con3と称されるアミノ酸配列を包含するが、これらに限定されない。IFN−conをコードするDNA配列を上記の特許に記載されるように作製することができ、又は他の標準的な方法によって作製することができる。
【0044】
さらなる好ましい実施形態において、融合タンパク質はIg融合を含む。この融合は直接的であり得るか、或いは長さが1アミノ酸残基〜3アミノ酸残基ほどの短さであり得るか、又はそれよりも長いこと(例えば、13アミノ酸残基の長さ)が可能である短いリンカーペプチドを介して可能である。前記リンカーは、例えば、配列E−F−M(Glu−Phe−Met)(配列番号1)のトリペプチド、又はIFNの配列と、免疫グロブリン配列との間に導入されたGlu−Phe−Gly−Ala−Gly−Leu−Val−Leu−Gly−Gly−Gln−Phe−Met(配列番号2)を構成する13アミノ酸リンカー配列であり得る。得られる融合タンパク質は、改善された性質(例えば、体液における延長された滞留時間(半減期)、増大した比活性、増大した発現レベルなど)を有することができ、又は融合タンパク質の精製が容易になる。
【0045】
さらなる好ましい実施形態において、IFNはIg分子の定常領域に融合される。好ましくは、IFNは、例えば、ヒトIgG1のCH2ドメイン及びCH3ドメインのような重鎖領域に融合される。Ig分子の他のイソ型もまた、本発明に従って融合タンパク質を作製するために好適である(例えば、IgG2、IgG3又はIgG4のイソ型、或いは、例えば、IgM又はIgAのような他のIgクラス)。融合タンパク質はモノマーであり得るか、或いはマルチマー(ヘテロマルチマー又はホモマルチマー)であり得る。
【0046】
さらなる好ましい実施形態において、機能的誘導体は、アミノ酸残基上の1つ又は複数の側鎖として存在する1つ又は複数の官能基に結合した少なくとも1つの成分を含む。好ましくは、そのような成分はポリエチレン(PEG)成分である。PEG化を、例えば、国際特許出願公開WO99/55377に記載される方法などの知られている方法によって行うことができる。
【0047】
単回投薬又は多回投薬として個体に投与される投薬量は、薬物動態学的性質、投与経路、患者の状態及び特性(性別、年齢、体重、健康状態、体格)、症状の程度、同時治療、処置頻度、並びに所望される効果を含めた様々な要因に依存して変化する。
【0048】
ヒトIFN−βの標準的な投薬量は、1日あたり80000IU/kg〜200000IU/kg、又は1日あたり6MIU(百万国際単位)/人〜12MIU/人、又は22μg(マイクログラム)/人〜44μg/人の範囲である。本発明によれば、IFNは、好ましくは、1日あたり1人につき約1μg〜50μg(より好ましくは、約10μg〜30μg、又は約10μg〜20μg)の投薬量で投与される。
【0049】
本発明による有効成分の投与は、静脈内経路、筋肉内経路又は皮下経路によって可能である。IFNについての好ましい投与経路は皮下経路である。
【0050】
IFNはまた、毎日、又は1日おきに、又はより少ない頻度で投与することができる。好ましくは、IFNは、1週間に1回、2回又は3回で投与される。
【0051】
好ましい投与経路は皮下投与であり、これは、例えば、1週間に3回、投与される。さらなる好ましい投与経路は筋肉内投与であり、これは、例えば、1週間に1回、施すことができる。
【0052】
再発寛解型MSの本発明による処置におけるIFN−βの投薬は、使用されるINF−βのタイプに依存する。
【0053】
本発明によれば、IFNが、大腸菌(E.Coli)で作製された組換えIFN−β1bである場合、これはBetaseron(登録商標)の商標で市販されているが、IFNを、好ましくは、1人あたり約250μg〜300μg又は8MIU〜9.6MIUの投薬量で2日毎に皮下に投与することができる。
【0054】
本発明によれば、IFNが、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)で作製された組換えIFN−β1aである場合、これはAvonex(登録商標)の商標で市販されているが、IFNを、好ましくは、1人あたり約30μg〜33μg又は6MIU〜6.6MIUの投薬量で1週間に1回、筋肉内に投与することができる。
【0055】
本発明によれば、IFNが、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)で作製された組換えIFN−β1aである場合、これはRebif(登録商標)の商標で市販されているが、IFNを、好ましくは、1人あたり約22μg〜44μg又は6MIU〜12MIUの投薬量で1週間に3回(TIW)、皮下に投与することができる。
【0056】
用語「安定性」は、(生物学的効力の維持を含めて)本発明のインターフェロンの製剤の物理的安定性、化学的安定性及び立体配座的安定性を示す。タンパク質製剤の不安定性は、タンパク質分子の化学的分解、又はタンパク質分子が凝集して、より高次のポリマーを形成すること、脱グリコシル化、グリコシル化の修飾、酸化、或いは本発明において含まれるインターフェロンポリペプチドの少なくとも1つの生物活性を低下させる任意の他の構造的修飾によって引き起こされ得る。
【0057】
「安定な」又は「安定化された」溶液又は製剤は、それにおけるタンパク質の分解、修飾、凝集、生物活性の喪失などの程度が、受け入れられ得るほど抑制され、且つ時間とともに受け入れられ得ないほど増大しないものである。好ましくは、製剤は少なくとも60%又は約60%(より好ましくは、少なくとも70%又は約70%、最も好ましくは、少なくとも80%又は約80%)の表示されたインターフェロン活性を24ヶ月の期間にわたって維持する。本発明の安定化されたIFN組成物は、好ましくは、少なくとも約6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、より好ましくは、少なくとも20ヶ月、さらにより好ましくは、少なくとも約22ヶ月、最も好ましくは、少なくとも約24ヶ月の貯蔵寿命を、2℃〜8℃で貯蔵されたときに有する。
【0058】
本発明のIFN医薬組成物の安定性をモニターするための様々な方法が、本明細書中に開示される実施例に記載されるそのような方法を含めてこの分野では利用可能である。したがって、本発明の液体医薬組成物の貯蔵時におけるIFN凝集物の形成を、溶液における可溶性IFNの変化を経時的に測定することによって容易に明らかにすることができる。溶液中の可溶性ポリペプチドの量は、IFNの検出に適合した数多くの分析アッセイによって定量することができる。そのようなアッセイには、例えば、下記の実施例において記載されるようにサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)−HPLC及びUV吸収分光分析法が含まれる。
【0059】
液体製剤における貯蔵期間中の可溶性凝集物及び不溶性凝集物の両方の測定を、例えば、可溶性凝集物として存在する可溶性ポリペプチドのそのような部分と、凝集していない生物学的に活性な分子形態で存在するそのような部分とを識別するために、下記の実施例において記されるような分析的超遠心分離を使用して達成することができる。
【0060】
表現「多回投薬使用」は、2回以上の注射(例えば、2回、3回、4回、5回、6回又はそれ以上の注射)のためのインターフェロン製剤の単回用のバイアル、アンプル又はカートリッジの使用を包含することが意図される。注射は、好ましくは、少なくとも12時間又は約12時間、少なくとも24時間又は約24時間、少なくとも48時間又は約48時間などから、好ましくは、12日又は約12日までの期間にわたって行われる。注射は一定の間隔を置くことができ、例えば、6時間、12時間、24時間、48時間又は72時間の間隔を置くことができる。
【0061】
用語「緩衝剤」又は用語「生理学的に許容され得る緩衝剤」は、製剤での医薬的使用又は獣医学的使用のために安全であることが知られ、且つ製剤のために所望されるpH範囲で製剤のpHを維持又は制御するという作用を有する化合物の溶液を示す。適度な酸性pHから適度な塩基性pHでpHを制御するための好適な緩衝剤には、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、アルギニン、TRIS及びヒスチジンのような化合物が含まれるが、これらに限定されない。「TRIS」は2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールを示し、また、その任意の薬理学的に許容され得る塩を示す。好ましい緩衝剤は、生理的食塩水又は許容され得る塩を含む酢酸塩緩衝液である。
【0062】
本発明における使用のために意図される「シクロデキストリン」は、β−シクロデキストリンのヒドロキシプロピル誘導体、ヒドロキシエチル誘導体、グルコシル誘導体、マルトシル誘導体及びマルトトリオシル誘導体、並びにγ−シクロデキストリンの対応する誘導体である。ヒドロキシアルキル基化体は1つ又は複数のヒドロキシル基を含有する(例えば、ヒドロキシプロピル(2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル)、ジヒドロキシプロピルなど)。グルコシル誘導体、マルトシル誘導体及びマルトトリオシル誘導体は1つ又は複数の糖残基(例えば、グルコシル又はジグルコシル、マルトシル又はジマルトシル)を含有することができる。シクロデキストリン誘導体の様々な混合物を同様に使用することができる(例えば、マルトシル誘導体及びジマルトシル誘導体の混合物)。本発明において使用される具体的なシクロデキストリン誘導体には、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPCD又はHPBCD)、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン(HEBCD)、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン(HPGCD)、ヒドロキシエチル−γ−シクロデキストリン(HEGCD)ジヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(2HPBCD)、グルコシル−β−シクロデキストリン(G1−β−CD又はG1BCD)、ジグルコシル−β−シクロデキストリン(2GG1−β−CD又は2G1BCD)、マルトシル−β−シクロデキストリン(G2−β−CD又はG2BCD)、マルトシル−γ−シクロデキストリン(G2−γ−CD又はG2GCD)、マルトトリオシル−β−シクロデキストリン(G3−β−CD又はG3BCD)、マルトトリオシル−γ−シクロデキストリン(G3−γ−CD又はG3GCD)及びジマルトトリオシル−β−シクロデキストリン(2G2−β−CD又は2G2BCD)、並びにこれらの混合物(例えば、マルトシル−β−シクロデキストリン/ジマルトシル−β−シクロデキストリンなど)が含まれる。
【0063】
本発明の組成物において使用されるヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンは市販されており、本発明による好ましいシクロデキストリンである。
【0064】
或いは、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンは、知られている方法によって、特に、Pitha他(International Journal of Pharmaceutics、29、73〜82(1986))の最適化された手順の使用によって調製することができる。
【0065】
「等張性剤」は、生理学的に許容され、且つ製剤と接触している細胞膜を横断する水の正味の流れを防止するために好適な張性を製剤に与える化合物である。グリセリンなどの化合物が、知られている濃度でそのような目的のために一般に使用される。他の好適な等張性剤には、例えば、アミノ酸又はタンパク質(例えば、グリシン又はアルブミンなど)、塩(例えば、塩化ナトリウム)及び糖(例えば、デキストロース、マンニトール、スクロース及びラクトース)が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、等張性剤はマンニトールである。
【0066】
用語「酸化防止剤」は、酸素又は酸素由来フリーラジカルが他の物質と相互作用することを防止する化合物を示す。酸化防止剤は、物理的安定性及び化学的安定性を高めるために医薬品系に一般に添加される数多くの賦形剤の1つである。酸化防止剤は、酸素にさらされたとき、又はフリーラジカルの存在下で、いくつかの薬物又は賦形剤とともに生じる酸化プロセスを最小限に抑えるか、又は遅らせるために添加される。このようなプロセスは、光、温度、濃縮時の水素、微量金属の存在又は過酸化物によって触媒され得ることが多い。亜硫酸塩、重亜流酸塩、チオウレア、メチオニン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)の塩、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)及びブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)が、薬物における酸化防止剤として頻繁に使用される。ナトリウムEDTAは、そうでない場合には酸化反応を触媒する金属イオンをキレート化することによって酸化防止剤の活性を高めることが見出されている。最も好ましい酸化防止剤はメチオニンである。
【0067】
用語「静菌剤」は、抗菌剤として作用させるために製剤に添加される化合物又は組成物を示す。本発明の保存されたインターフェロン含有製剤は、好ましくは、商業的に実現可能な多回使用製造物であるための保存有効性についての法定指針又は規制指針を満たす。静菌剤の例には、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム及びチメロサールが含まれる。好ましくは、静菌剤はベンジルアルコールである。
【0068】
好ましい実施形態において、本発明は、緩衝剤、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、等張性剤及び酸化防止剤を含む溶液である、インターフェロン(IFN)、或いはそのイソ型、ムテイン、融合タンパク質、機能的誘導体、活性な分画物、又は塩を含む安定化された液体医薬組成物を提供する。
【0069】
さらなる好ましい実施形態において、本発明は、前記インターフェロンがIFN−β(例えば、組換えヒトIFN−βなど)である安定化された液体医薬組成物を提供する。
【0070】
別の好ましい実施形態において、本発明は、前記緩衝剤が、3.8又は約3.8のpH値を含めて、約3〜約6(例えば、3.0又は約3.0〜約6.0のpH値など)である指定されたpHの±0.5単位の範囲内で前記組成物のpHを維持するために十分な量で存在する安定化された液体医薬組成物を提供する。
【0071】
別の好ましい実施形態において、本発明は、前記緩衝剤が約5mM〜500mMの濃度(例えば、50mM又は約50mMの濃度など)で存在する安定化された液体医薬組成物を提供する。
【0072】
別の好ましい実施形態において、本発明は、前記緩衝剤が酢酸塩緩衝剤である安定化された液体医薬組成物を提供する。
【0073】
別の好ましい実施形態において、本発明は、前記等張性剤がマンニトールである安定化された液体医薬組成物を提供する。
【0074】
別の好ましい実施形態において、本発明は、前記等張性剤が約0.5mg/ml〜約500mg/mlの濃度(例えば、50mg/ml又は約50mg/mlの濃度など)で存在する安定化された液体医薬組成物を提供する。
【0075】
別の好ましい実施形態において、本発明は、酸化防止剤がメチオニンである安定化された液体医薬組成物を提供する。
【0076】
別の好ましい実施形態において、本発明は、酸化防止剤が、約0.01mg/ml〜約5.0mg/mlの濃度(例えば、0.1mg/ml又は約0.1mg/mlの濃度など)を含めて、約0.01mg/ml〜約5mg/mlの濃度で存在する安定化された液体医薬組成物を提供する。
【0077】
別の好ましい実施形態において、本発明は、前記インターフェロンが約10μg/ml〜約800μg/mlの濃度(例えば、44μg/ml又は約44μg/ml、88μg/ml又は約88μg/ml、或いは、276μg/ml又は約276μg/mlの濃度など)で存在する安定化された液体医薬組成物を提供する。
【0078】
別の好ましい実施形態において、本発明は、前記シクロデキストリンが約500倍モル過剰から約700倍モル過剰までの対インターフェロンモル比で存在する安定化された液体医薬組成物を提供する。
【0079】
別の好ましい実施形態において、本発明は、水溶液である安定化された液体医薬組成物を提供する。
【0080】
別の好ましい実施形態において、本発明は、静菌剤(例えば、ベンジルアルコールなど)をさらに含む安定化された液体医薬組成物を提供する。
【0081】
別の好ましい実施形態において、本発明は、静菌剤をさらに含み、静菌剤が、0.1%又は約0.1%〜約2.0%の濃度(例えば、0.2%又は約0.2%或いは0.3%又は約0.3%の濃度など)を含めて、約0.1%〜約2%の濃度で存在する安定化された液体医薬組成物を提供する。
【0082】
さらなる好ましい実施形態において、本発明は、等張性剤がマンニトールであり、酸化防止剤がメチオニンであり、且つインターフェロンがインターフェロンβである安定化された液体医薬組成物を提供する。
【0083】
別のさらなる好ましい実施形態において、本発明は、下記の液体製剤である安定化された液体医薬組成物を提供する:
【表4】
【0084】
別の実施形態において、本発明は、本発明による安定化された液体医薬組成物を調製するための方法を提供する。この場合、前記方法は、計算量の2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、酸化防止剤及び等張性剤を緩衝化された溶液に加えること、及び、次いで、インターフェロン(IFN)、或いはそのイソ型、ムテイン、融合タンパク質、機能的誘導体、活性な分画物、又は塩を加えることを含む。
【0085】
別の実施形態において、本発明は、本発明による液体医薬製剤を含む、使用前の貯蔵のために無菌且つ適切な状態で密封された容器を提供する。そのような容器の例は、自己注射器用のバイアル又はカートリッジである。本発明による容器は単回投薬投与又は多回投薬投与のためのものである。
【0086】
好ましい実施形態において、本発明は、単回投薬投与のための事前に充填されたシリンジである本発明による容器を提供する。
【0087】
別の好ましい実施形態において、本発明は、本発明による医薬組成物の多回投薬投与のためのキットを提供する。この場合、キットは、本発明による医薬組成物により充填された第1の容器と、静菌剤の溶液の充填された第2のカートリッジとを含む。
【0088】
好ましくは、製剤におけるIFN−βの濃度は10μg/ml又は約10μg/ml〜800μg/ml又は約800μg/mlであり、より好ましくは、20μg/ml又は約20μg/ml〜500μg/ml又は約500μg/mlであり、より特に好ましくは、30μg/ml又は約30μg/ml〜300μg/ml又は約300μg/mlであり、最も好ましくは、44μg/ml、88μg/ml又は264μg/ml、或いは約44μg/ml、約88μg/ml又は約264μg/mlである。
【0089】
好ましくは、本発明の製剤は約3.0〜4.5又は約4.5の間のpHを有し、より好ましくは、3.8又は約3.8のpHである。好ましい緩衝剤は酢酸塩であり、好ましい対イオンはナトリウムイオン又はカリウムイオンである。酢酸塩生理的食塩水緩衝液がこの分野では広く知られている。溶液全体における緩衝剤濃度は、5mM又は約5mM、9.5mM又は約9.5mM、10mM又は約10mM、50mM又は約50mM、100mM又は約100mM、150mM又は約150mM、200mM又は約200mM、250mM又は約250mMと、500mM又は約500mMとの間で変化させることができる。好ましくは、緩衝剤濃度は10mM又は約10mMである。特に好ましいものは、3.8のpHを有する、酢酸イオンが50mMの緩衝液である。
【0090】
好ましくは、本発明の組成物において、酸化防止剤(例えば、メチオニン)は0.01mg/ml又は約0.01mg/ml〜5mg/ml又は約5mg/mlの濃度で存在し、より好ましくは、0.05mg/ml又は約0.05mg/ml〜0.3mg/ml又は約0.3mg/mlの濃度で存在し、最も好ましくは、0.1mg/ml又は約0.1の濃度で存在する。
【0091】
好ましくは、液体製剤における等張性剤(例えば、マンニトール)の濃度は0.5mg/ml又は約0.5mg/ml〜500mg/ml又は約500mg/mlであり、より好ましくは、1mg/ml又は約1mg/ml〜250mg/ml又は約250mg/mlであり、より特に好ましくは、10mg/ml又は約10mg/ml〜100mg/ml又は約100mg/mlであり、最も好ましくは、50mg/ml又は約50mg/mlである。
【0092】
さらなる好ましい実施形態において、本発明は、等張性剤がマンニトールであり、酸化防止剤がメチオニンであり、且つインターフェロンがインターフェロンβである本発明による組成物を提供する。
【0093】
別の好ましい実施形態において、本発明は、液体組成物が下記である本発明による組成物を提供する:
【表5】
【0094】
本発明は液体製剤を包含する。好ましい溶媒は注射用水である。
【0095】
液体製剤は単回投薬又は多回投薬であり得る。多回投薬のために意図される本発明のそのような液体インターフェロン製剤は、好ましくは、静菌剤、例えば、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンセトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム及びチメロサールを含む。特に好ましいものは、フェノール、ベンジルアルコール及びm−クレゾールであり、より好ましいものはベンジルアルコールである。静菌剤は、製剤を、12時間又は約12時間或いは24時間又は約24時間〜12日又は約12日(好ましくは、6日又は約6日〜12日又は約12日)までであり得る多回投薬の注射の期間を通して(注射のために好適である)本質的に細菌非含有で維持するために効果的である濃度をもたらす量で使用される。静菌剤は、好ましくは、0.1%又は約0.1%(静菌剤の質量/溶媒の質量)〜2.0%又は約2.0%の濃度で存在し、より好ましくは、0.2%又は約0.2%〜1.0%又は約1.0%の濃度で存在する。ベンジルアルコールの場合、0.2%又は0.3%の濃度が特に好ましい。
【0096】
静菌剤はまた、単回投薬製剤にも存在させることができる。
【0097】
本発明の製剤におけるインターフェロンの範囲は、再構成したとき、約1.0μg/ml〜約50mg/mlの濃度をもたらす量を包含する。だが、それよりも低い濃度及びより高い濃度を使用することができ、そのような濃度は、意図された送達ビヒクルに依存し、例えば、溶液製剤は、経皮パッチ、肺方法、経粘膜法、又は浸透圧ポンプ法若しくはマイクロポンプ法とは異なる。インターフェロン濃度は、好ましくは、5μg/ml又は約5μg/ml〜2mg/ml又は約2mg/mlであり、より好ましくは、10μg/ml又は約10μg/ml〜1mg/ml又は約1mg/mlであり、最も好ましくは、30μg/ml又は約30μg/ml〜100μg/ml又は約100μg/mlである。
【0098】
好ましくは、本発明の製剤は、24ヶ月の期間を通して包装時におけるインターフェロン活性の少なくとも60%又は約60%(より好ましくは、少なくとも70%又は約70%、最も好ましくは、少なくとも80%又は約80%)を保持する。
【0099】
さらなる好ましい実施形態において、本発明は、前記のような液体医薬組成物を製造するための方法を提供する。
【0100】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明は、有効成分と、前記のような賦形剤とを含む溶液を設置することを含む、包装された医薬組成物を製造するための方法を提供する。
【0101】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明は、前記のような医薬組成物を含むバイアルと、そのような溶液が最初の使用の後の24時間又は約24時間又はそれ以上の期間にわたって保持され得ることを述べる書面の媒体とを含む、ヒトでの薬学的使用のための製造物を提供する。好ましくは、書面の媒体は、溶液が12日又は約12日まで保持され得ることを述べる。
【0102】
多回投薬製剤の最初の使用の後、製剤は少なくとも24時間又は約24時間(好ましくは、4日又は約4日、5日又は約5日、或いは6日又は約6日、より好ましくは、12日までの期間)保たれ、且つ使用することができる。製剤の最初の使用の後、製剤は、好ましくは、室温よりも低い温度(すなわち、25℃又は約25℃よりも低い温度)で、より好ましくは、10℃又は約10℃よりも低い温度で、より好ましくは、2℃又は約2℃〜8℃又は約8℃で、最も好ましくは、5℃又は約5℃で貯蔵される。
【0103】
本発明の製剤は、計算量の賦形剤を緩衝化された溶液に加えること、及び、次いで、インターフェロンを加えることを含むプロセスによって調製することができる。
【0104】
得られる溶液は、その後、バイアル、アンプル又はカートリッジに入れられる。このプロセスの様々な変法が当業者によって認識される。例えば、成分が加えられる順序、さらなる添加剤が使用されるかどうか、製剤が調製される温度及びpHはすべてが、使用される濃度及び投与手段のために最適化され得る因子である。
【0105】
多回投薬使用製剤の場合、静菌剤を、有効成分(インターフェロン)を含有する溶液に加えることができ、或いは別個のバイアル又はカートリッジにおいて保ち、その後、使用時に有効成分を含有する溶液に混合することができる。
【0106】
本発明の製剤は、認められているデバイスを使用して投与することができる。このような単回バイアルシステムを含む例には、溶液を送達するための自己注射器デバイス又はペン型注射器デバイス(例えば、Rebiject(登録商標)など)が含まれる。
【0107】
現時点で特許請求される製造物は包装材を含む。包装材は、規制当局により要求される情報に加えて、製造物が使用され得る条件を提供する。本発明の包装材は、最終的な溶液を調製し、且つ2つのバイアルの(湿潤/乾燥)製造物について24時間又はそれ以上の期間にわたってそのような最終的な溶液を使用するために、必要ならば、患者への指示を提供する。単回バイアルの溶液製造物については、表示は、そのような溶液が24時間又はそれ以上の期間にわたって使用され得ることを示す。現時点で特許請求される製造物は、ヒトでの医薬製造物の使用のために有用である。
【0108】
安定な保存された製剤は透明な溶液として患者に与えることができる。溶液は単回使用のためのものであり得るか、或いは多数回再使用することができ、且つ患者処置の1回又は多数回のサイクルのために十分であり得るし、したがって、現在利用可能であるよりも好都合な処置療法を提供する。
【0109】
本明細書中に記載される安定な、又は保存された製剤又は溶液のいずれかにおけるインターフェロンは、この分野で広く知られているように、SC注射又はIM注射;当業者により理解される経皮的手段、肺手段、経粘膜手段、インプラント手段、浸透圧ポンプ手段、カートリッジ手段、マイクロポンプ手段、経口的手段又は他の手段を含む様々な送達方法によって、本発明に従って患者に投与することができる。
【0110】
用語「バイアル」は、広義には、含有される無菌状態において固体形態又は液体形態でインターフェロンを保持するために好適な入れ物を示す。本明細書中において使用されるようなバイアルの例には、シリンジ、ポンプ(浸透圧ポンプを含む)、カテーテル、経皮パッチ、肺スプレー又は経粘膜スプレーによってインターフェロンを患者に送達するために好適なアンプル、カートリッジ、ブリスターパッケージ、又は他のそのような入れ物が含まれる。非経口投与、肺投与、経粘膜投与又は経皮投与のための製造物を詰めるために好適な様々なバイアルがこの分野では広く知られており、また認められている。
【0111】
用語「処置」は、本発明の関連では、疾患発症後の病理学的発達の弱化、減少、低下又は軽減をはじめとする、疾患の進行に対する任意の有益な効果を示す。
【0112】
IFN、或いはそのイソ型、ムテイン、誘導タンパク質、機能的誘導体、活性な分画物、又は塩を含む本発明の医薬組成物は、このポリペプチドによる治療に応答し得る臨床的適応症の診断、防止及び処置(局所的又は全身的)のために有用である。そのような臨床的適応症には、例えば、中枢神経系(CNS)、脳及び/又は脊髄の障害又は疾患(これには、多発性硬化症が含まれる);自己免疫疾患(これには、リウマチ様関節炎、乾癬、クローン病が含まれる);及びガン(これには、乳ガン、前立腺ガン、膀胱ガン、腎臓ガン及び結腸ガンが含まれる)が含まれる。
【0113】
一実施形態において、本発明は、中枢神経系(CNS)、脳及び/又は脊髄を冒す障害又は疾患(これには、多発性硬化症が含まれる);自己免疫疾患(これには、リウマチ様関節炎、乾癬、クローン病が含まれる);及びガン(これには、乳ガン、前立腺ガン、膀胱ガン、腎臓ガン及び結腸ガンが含まれる)を処置するための医薬製剤の調製のための、本発明の組成物の使用を含む。
【0114】
別の実施形態において、本発明は、その必要性のある患者において本発明の組成物の投与を含む、中枢神経系(CNS)、脳及び/又は脊髄を冒す障害又は疾患(これには、多発性硬化症が含まれる);自己免疫疾患(これには、リウマチ様関節炎、乾癬、クローン病が含まれる);及びガン(これには、乳ガン、前立腺ガン、膀胱ガン、腎臓ガン及び結腸ガンが含まれる)を処置する方法を提供する。
【0115】
本発明の別の実施形態において、本発明の組成物は、中枢神経系(CNS)、脳及び/又は脊髄を冒す障害又は疾患(これには、多発性硬化症が含まれる);自己免疫疾患(これには、リウマチ様関節炎、乾癬、クローン病が含まれる);及びガン(これには、乳ガン、前立腺ガン、膀胱ガン、腎臓ガン及び結腸ガンが含まれる)を処置するのに有用である。
【0116】
本明細書中で引用されるすべての参考文献(雑誌の論文又は要約、公開又は非公開の米国特許出願又は外国特許出願、発行された米国特許又は外国特許、或いは任意の他の参考文献を含む)は、引用された参考文献に示されるすべてのデータ、表、図及び本文を含めて、全体が参考として本明細書中に組み込まれる。加えて、本明細書中で引用される参考文献において引用される参考文献の全内容もまた、全体が参考として組み込まれる。
【0117】
知られている方法工程、従来の方法工程、知られている方法又は従来の方法に対する参照は、本発明の任意の局面、記載又は実施形態が関連技術分野おいて開示、教示又は示唆されることを決して承認するものではない。
【0118】
具体的な実施形態の前記記載は本発明の一般的な特質を十分に明らかにするものであるので、他の実施形態では、この技術分野の技能における知識(本明細書中で引用される参考文献の内容を含む)を適用することによって、過度な実験を行うことなく、また、本発明の一般的な概念から逸脱することなく、そのような具体的な実施形態を様々な適用のために容易に改変及び/又は適合化することができる。したがって、そのような適合化及び改変は、本明細書中に示される教示及び指針に基づいて、開示された実施形態の様々な均等物の意味に含まれることが意図される。本明細書中における表現法又は用語法は、本明細書の用語法又は表現表が、当業者の知識との組合せで、本明細書中に示される教示及び指針に照らして当業者によって解釈され得るように、記述のためであって、限定のためでないことを理解しなければならない。
【実施例】
【0119】
下記の略号はそれぞれ下記の定義を示す:
cm(センチメートル)、mg(ミリグラム)、μg(マイクログラム)、min(分)、mM(ミリモル濃度)、mL(ミリリットル)、nm(ナノメートル)、BHT(ブチル化ヒドロキシトルエン)、CD(円二色性)、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、HPBCD(ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン)、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)、IFN(インターフェロン)、IM(筋肉内)、OD(光学濃度)、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)、PEG(ポリエチレングリコール)、RMBCD(ランダム置換されたメチル−β−シクロデキストリン)、SC(皮下)、TFA(トリフルオロ酢酸)、TRIS(2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール)、UV(紫外)、WFI(注射用水)。
【0120】
方法
比濁法測定
タンパク質の凝集を、UV可視分光光度計システム(Perkin Elmer Lambda40)を使用して360nmにおいて30分間モニターした。
【0121】
予備研究により、タンパク質が適切な凝集挙動を示す操作条件を確立した。すなわち、ポリプロピレンバイアルにおける、PBSでの30mg/mLのPEG10,000の溶液(0.2μmφでろ過)による1:2でのインターフェロンβ−1aバルクの希釈、その後、T=62±2℃での10分間の恒温水浴におけるインキュベーション。
【0122】
加熱及びPEGを、タンパク質会合プロセスを熱変性及び排除体積効果によりそれぞれ高めるために使用した。UV可視分析を、3mLのサンプル体積を含有するセルにおいて行った(最終的なインターフェロンβ−1aの濃度=0.116mg/mL)。
【0123】
それぞれの濁度分析を少なくとも三連で繰り返し、光学濃度(OD)360nm対時間の平均曲線を報告する。タンパク質単独の凝集を種々の濃度での賦形剤の存在下におけるインターフェロンβ−1aと比較した。
【0124】
円二色性測定
CD測定を、ペルチェ温度コントローラーを備えたJasco J810分光旋光計を用いて行った。サンプルを栓付きの1cm石英セルに含有し、熱走査のために、磁石による撹拌速度は約150rpmであった。
【0125】
遠UVスペクトル(260〜185nm)のために、約44μg/mlのタンパク質濃度、0.2nmの分解能、及び、2秒の応答時間を伴う2nm/分の走査速度、並びに3回の積算を用いた。
【0126】
インターフェロンβ−1aの二次構造の熱的摂動をモニターするために、温度の関数としての222nmにおけるCDシグナルを、1℃/分の温度上昇速度及び60秒の遅延時間を使用して0.2℃の間隔で25℃〜85℃の間で追跡した。
【0127】
それぞれの測定を、コントロールとしてのインターフェロンβ−1aバルクに対して、また、種々の濃度の賦形剤を含有するインターフェロンβ−1a溶液に対して少なくとも三連で行った。
【0128】
サイズ排除クロマトグラフィー(Sec)分析
安定性研究の所定の時点での液体インターフェロンβ−1a製剤を、インターフェロンβ−1aの純度及びアッセイ(回収%として表される)を明らかにするためにSE−HPLCによって分析した。
【0129】
使用した操作条件は下記の通りであった:
・クロマトグラフィーカラム:TSK G2000SWXL(7.8mmIDx30cm、5μ、125Å);
・注入体積:100μL;
・カラム温度:室温;
・サンプル温度:室温;
・流速:0.5mL/分;
・移動相:70%(v/v)精製水(MILLIQ−Millipore)−30%(v/v)アセトニトリル−0.2%(v/v)TFA;
・処理時間:27分;
・平衡時間:3分;
・波長:214nm;
・校正曲線を、25μgから100μgまでの範囲で、インターフェロンβ−1aアッセイを定量するために用いた。
【0130】
材料
・インターフェロンβ−1aバルク(Serono S.A.、バッチ:G4D024)
・PEG10000(ポリエチレングリコール)
・Lutrol F68(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体)
・L−メチオニン
・D−マンニトール
・L−アスコルビン酸
・リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4±0.1)(組成:KH2PO4、0.19g/L;Na2HPO4・12H2O、2.38g/L;NaCl、8g/L)
・ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン
【0131】
装置
・TSKカラムG2000を備えたHPLCシステム(Waters及びPE)
・UV可視分光光度計システム(Perkin Elmer Lambda40)
・ペルチェ温度コントローラーを備えたJasco J810分光旋光計
・浸透圧計(OSMOMAT 030D、Gonotech)
・pH−電導度計MPC227−Mettler Toledo
・分析天秤AG245及びAG285(Mettler Toledo)
・校正済みのピペット(Gilson)
・磁石式撹拌装置ホットプレート(Stuart Scientific)
・超音波浴、Falc
・温度計
【0132】
結果及び考察
比濁法アッセイ
濁度法によって検出される、HPBCD、マンニトール及びL−メチオニンのインターフェロンβ−1a凝集に対する影響を下記に報告する。アスコルビン酸ナトリウムの塩もまた、凝集増強作用を有する賦形剤の例として含められる。
【0133】
図1は、下記の種々の濃度のHPBCDの存在下におけるインターフェロンβ−1aの凝集速度論を示す:1.19mg/mL(インターフェロンβ−1aのモル量に対して150倍モル過剰)、3.97mg/mL(500倍モル過剰)、5.56mg/mL(700倍モル過剰)、及び、7.94mg/mL(1000倍モル過剰)。調べられた濃度範囲において、この賦形剤はインターフェロンβ−1aの脱安定化を完全には回避しないこと、及び、中間のモル比率が最も良い阻害効果を示すことを認めることができる。
【0134】
700倍モル過剰を、インターフェロンβ−1a製剤の調製及びさらなる物理化学的特長づけ(例えば、円二色性)のための基準濃度として選んだ。シクロデキストリンの濃度は、濃度が、調製で使用されたインターフェロンβ−1aの量に依存して変化し、且つそれに従って計算され得るので、インターフェロンβ−1aに対するモル比(倍モル過剰)としてより良好には表される。
【0135】
その後、インターフェロンβ−1aの凝集に対するマンニトールの影響をモニターしたが、図2に示されるように、著しい影響が、使用した条件(PEG/PBSでの62℃)のもとでの40,000倍モル過剰(これは37.35mg/mLに対応する)でさえ、見出されなかった。
【0136】
しかし、マンニトールを、非経口投与のために必要な等張性に達するためにインターフェロンβ−1a液体製剤に加えた。
【0137】
最後に、L−メチオニンを比濁法実験で調べた。図3は、種々の濃度のL−メチオニンの存在下でのインターフェロンβ−1aの凝集速度論を示す(0.116mg/mL、PEG/PBS中、62±2℃で10分間のインキュベーションの後)。
【0138】
L−メチオニンは、タンパク質凝集に対して、HPBCDよりも小さい阻害効果を有することを認めることができる。調べられた最大濃度でさえ、L−メチオニンはインターフェロンβ−1aの脱安定化を完全には回避せず、曲線は、インターフェロンβ−1aコントロールと類似する「プラトー状態」に達している。
【0139】
図4には、インターフェロンβ−1a単独、並びに400倍モル過剰のメチオニン(0.308mg/mL)及び/又は700倍モル過剰のHPBCD(5.56mg/mL)の存在下でのインターフェロンβ−1aの凝集速度論が報告される。
【0140】
この実験は、これら2つの賦形剤のインターフェロンに対する相乗作用を最終的には評価するために行われた。メチオニンが、シクロデキストリンの活性に加えて、タンパク質凝集に対する保護作用を全く発揮しないことが明らかである。
【0141】
上記検討の後、HPBCDが、凝集に対するインターフェロンβ−1aの安定化において大きな役割を果たしていることが確認され、タンパク質とシクロデキストリンとの間での相互作用を円二色性によってさらに調べた。
【0142】
図5におけるタンパク質凝集に対する「負の作用」を有する賦形剤の例として、種々の濃度のアスコルビン酸塩の存在下でのインターフェロンβ−1aの濁度速度論が報告される。
【0143】
62±2℃での10分間のインキュベーションの後におけるPEG/PBS中でのインターフェロンβ−1a(0.116mg/mL;5.16μM)の凝集に対する、50倍モル過剰(0.045mg/mL)、150倍モル過剰(0.136mg/mL)、500倍モル過剰(0.453mg/mL)及び10,000倍モル過剰(9.07mg/mL)のL−アスコルビン酸塩の影響を図5に示す。
【0144】
タンパク質凝集に対する影響が濃度依存的な様式で変化することを認めることは興味深いことである。高濃度では、負荷電が脱安定化作用を示すようであり、一方で、より低いモル比では、この賦形剤は阻害的影響を有するようである。
【0145】
しかし、タンパク質凝集を妨げると考えられる濃度(0.453mg/mL、これは、500に等しい賦形剤/インターフェロンβ−1aモル比に対応する)を特定することが可能であった。
【0146】
その後、アスコルビン酸塩を、その酸化防止作用を特異的な抗凝集作用と組み合わせる目的により、インターフェロンβ−1a製剤のための可能な賦形剤として選んだ。
【0147】
円二色性
図6には、25℃〜85℃の間での熱誘導によるアンフォールディング、及び、インターフェロンβ−1aバルクサンプル(約44μg/mL)の遠UVスペクトルが報告される。推定されるTm値が64.97±0.31℃であり、一方、スペクトル解析では、変性前及び変性後のα−らせん含有量における顕著な違い(例えば、それぞれ48.0%対41.2%など)が示されることを認めることができる。
【0148】
比較として、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを含有する類似したサンプルを、インターフェロンβ−1aのモル量に対して700倍のモル過剰(これは、タンパク質凝集が比濁法実験において部分的に阻害される濃度である)において円二色性によって分析した。図7には、熱変性曲線が、約44μg/mLのインターフェロンβ−1a及び2.11mg/mLのHPBCD(700倍モル過剰)を含有する溶液について報告される。推定される融解温度値は65.46±0.50℃であり、これは、同じ操作条件でのタンパク質単独に関する値(64.97℃)と一致していた(図5を参照のこと)。
【0149】
タンパク質の融解温度は、試験された添加剤の存在下では一定しているが、熱的アンフォールディングの可逆性は非常に異なっている。HPBCDの存在下では、変性前の状況と、変性後の状況との間でのインターフェロンβ−1aのα−らせんの差が明らかにより小さいこと(約4%の差、対して、タンパク質単独については約7%)を認めることができる。このことは、シクロデキストリンがインターフェロンβ−1aの不可逆的反応(例えば、アンフォールディング後の熱誘導による凝集など)を妨げているかもしれないか、又はタンパク質のリフォールディングを助けているかもしれないことを示唆している。アンフォールディングを可逆的にする配合組成物を見出すことは、実際、長期間の安定性(貯蔵寿命)のためには、融解温度を上昇させることよりも重要であり得るので、これらの観測結果は非常に興味深いものである(Arakawa他、Adv.Drug.Deliv.Rev.、46(1−3):307〜326(2001)もまた参照のこと)。
【0150】
インターフェロンβ−1aとアスコルビン酸ナトリウム塩との相互作用をより良く特徴づけるために、CD分析を、500倍モル過剰のアスコルビン酸塩を含有するインターフェロンβ−1aサンプルについて行った。実際、速度論的濁度研究では、アスコルビン酸塩−インターフェロンβ−1a溶液は、500に等しいモル比では、タンパク質凝集を全く示さなかったことが明らかにされた。
【0151】
図8には、インターフェロンβ−1a(約44μg/mL)単独、及び、500倍モル過剰のアスコルビン酸塩(0.194mg/mL)の存在下でのインターフェロンβ−1a(約44μg/mL)のCDシグナル(222nm)に対する温度の影響が示される。アスコルビン酸塩を含有するサンプルの場合、Tm値を推定するために実験曲線を近似することができなかった。このことは、タンパク質に対するこの賦形剤の変性作用を示唆している。
【0152】
実際、融解転移の前後における上記サンプルの二次構造の比較により、融解前の状況において既に存在するα−らせんの非常に低い残留が確認された:例えば、35.0(同じ条件でのインターフェロンβ−1aバルクの48.0に対して)。インターフェロンβ−1aの二次構造は、融解転移後、アスコルビン酸塩の存在によってさらに一層変化し、28.8%に低下した(図9を参照のこと)。
【0153】
この結果は、比濁法で示された保護的作用とは対照的であり、アスコルビン酸塩が、タンパク質を時間とともに脱安定化させ得るインターフェロンβ−1aの立体配座的変化を誘導しているかもしれないことを示唆している。この理由のために、アスコルビン酸ナトリウムを含有する液体製剤を調製し、25℃での安定性を保ち、所定の時点でSE−HPLCによって分析した。
【0154】
安定性研究
上記結果の後、表1及び表2に示される組成を有する2つのインターフェロンβ−1a液体製剤を調製し、FORM1の場合には25℃及び50℃で、FORM2の場合には25℃で一定時間保った。
【0155】
コントロールとして、インターフェロンβ−1aバルク(同じ組成で酢酸塩緩衝液において50mM)もまた調べた。
【0156】
【表6】
【0157】
【表7】
【0158】
安定性研究からのサンプルを、方法の節で記載されたようにSE−HPLCによって分析した。結果を、表3(FORM1)、表4(FORM2)及び表5(インターフェロンβ−1aバルク/コントロール)に報告する。
【0159】
【表8】
【0160】
【表9】
【0161】
【表10】
【0162】
表3における結果から、HPBCDを含有するインターフェロンβ−1a液体製剤が25℃及び50℃で1ヶ月にわたって安定であることを明らかに認めることができる。凝集レベルは非常に低く、モノマー含有量は50℃で1週間後でさえ90%を超えている。加えて、質量回収は90%を超えている。このことはまた、不溶性凝集物の形成がシクロデキストリンの存在によって最小限に抑えられていることを示している。
【0163】
比較において、インターフェロンβ−1aバルク単独は、両方の検討された温度(表5を参照のこと)で凝集する傾向を有する:50℃では、1週間後、モノマー含有量は83%に低下し、同時に、質量回収は約73%でしかなかった。
【0164】
後者の結果は、インターフェロンβ−1aの凝集及び立体配座的安定性に対するHPBCDの有益な効果を示唆する比濁法及び円二色性の測定と一致している。
【0165】
最後に、FORM2(これはアスコルビン酸塩を含む)に関連する表4に示される結果は、この製剤が25℃において安定でないことを示している。ダイマー及び凝集物の著しい増大、並びに質量回収の並行した低下が25℃で1ヶ月後に記録された。さらに、不明のピークがクロマトグラムに現れ、このことは、CDの結果によってもまた示唆されるように、おそらくは変化した立体配座が存在することを示唆している。このことが、アスコルビン酸塩を含有する製剤の安定性がより高い温度(例えば、50℃)では発揮されなかった理由であった。
【0166】
後者の場合、比濁法分析により得られたこの最初の有望な結果を、タンパク質の立体配座的安定性に対する既知の賦形剤の影響をモニターすることができる円二色性などの代わりの方法を用いて確認することが重要であった。
【0167】
より高いpHでの比濁法アッセイ
液体製剤のより広いpH範囲(すなわち、約3.0〜約4.0のpH)におけるHPBCDのインターフェロンβ−1a凝集に対する影響を調べた。
【0168】
この方法は、本質的には、以前に記載された比濁法アッセイであった。すなわち、インターフェロンβ−1aバルクを、PBSにおける30mg/mLのPEG10,000の溶液(0.2μmφでろ過され、少量の1N NaOHを加えることによって適正に塩基性にされたもの)により1:2で希釈し、その後、T=62±2℃で10分間、恒温水浴においてインキュベーションした。タンパク質凝集を、UV可視分光光度計システム(Perkin Elmer Lambda40)を使用して360nmにおいて30分間モニターした。それぞれの濁度分析を二連で繰り返した。光学濃度(OD)360nm対時間の平均曲線を報告する。タンパク質単独の凝集をシクロデキストリンの存在下でのインターフェロンβ−1aと比較した。
【0169】
PBSによる1:1での50mM酢酸塩緩衝液(すなわち、IFNバルクの媒体)の希釈は4.4の最終溶液pHをもたらす。したがって、この目的は、より高い最終pHについてタンパク質凝集を調べることであった。
【0170】
図10は、700倍モル過剰のHPBCD(5.56mg/mL)の非存在下及び存在下でのインターフェロンβ−1aの凝集速度論を示す(この場合、分析された溶液のpHは室温で4.7に等しい)。
【0171】
pHの増大はIFNの凝集の程度を高めるが、シクロデキストリンの存在はタンパク質の脱安定化を依然として部分的に阻害することを認めることができる。この実験について計算された相対的なパーセントOD(すなわち、賦形剤の存在下及び非存在下での30分後のOD360nmのパーセント比率)は66%であり、より低いpHでの通常的な操作条件で観測された値(52.7%)と大きく異なっていない。
【0172】
研究を、図11に示されるように、より高いpH(すなわち、5.1)に拡大した。IFNの凝集に対する、700倍モル過剰のHPBCD(5.56mg/mL)及び500倍モル過剰のRMBCD(3.38mg/mL)の影響を調べた。pHの増大に起因したより顕著なタンパク質の脱安定化、及び、速度論的傾向がほぼ完全に存在しないこと(すなわち、分析開始時におけるプラトー領域)を認めることができる。注目される発見は、IFNの凝集がシクロデキストリンの存在によって依然として部分的に阻害され、相対的なパーセントODがHPBCDの場合における69.7%に等しいことである(この場合、利点をメチル誘導体の使用によって何ら認めることができない)。
【0173】
第3のpH値を調べた。図12は、pH5.7でのPEG/PBSにおけるIFNの凝集速度論、及び、700倍モル過剰のHPBCDの添加の影響を示す。この賦形剤はタンパク質の脱安定化を回避しないが、IFNのコントロールに対して、その程度を著しく低下させる(62.5%の相対的なパーセントOD)。
【0174】
上記の検討は、安定化賦形剤としてのHPBCDの使用が、タンパク質バルクよりも高いpH(すなわち、pH3.8±0.5)での液体製剤に拡大され得ることを示している。
【0175】
結論
・いくつかのインターフェロンβ−1a液体製剤を調製し、室温(25℃)及び加速条件(50℃)での安定性を保った。
・最も安定な製剤は、L−メチオニン、HPBCD及びマンニトールを含有する。SE−HPLCの結果は、モノマー含有量が50℃で1週間後又は25℃で1ヶ月後において90%を超えていることを示している。
・HPBCDの好ましい結果が予測され、インターフェロンβ−1a凝集に対するこの賦形剤(及び、部分的には同様に、L−メチオニン)の濃度依存的な阻害作用を示した比濁法測定によって確認された。さらに、CD分析は、HP−β−シクロデキストリンの存在下では、融解転移後におけるインターフェロンβ−1aのα−らせんの喪失が明らかに小さいことを示した。
・インターフェロンβ−1aバルクは、同じ貯蔵条件で保たれたとき、異なる安定性プロフィルを示す。モノマー含有量が50℃で1ヶ月後において83%に低下した。
注目すべきことに、25℃では、1ヶ月後におけるモノマー含有量は依然として97%に等しく、これは驚くほど高い。この結果は、バルクがpH3.8での酢酸塩緩衝液を含有するという事実によって説明することができる。この条件は、それ自体が、インターフェロンβ−1aに対するある程度の安定化作用を有する。
・安定性研究における明らかな負の結果が、アスコルビン酸塩を含有する製剤に関して見出された。SECにより、25℃で1ヶ月後において(60%への)顕著なモノマー喪失が示される。同時に、インターフェロンβ−1aの立体配座に対する負の影響もまたCD分析によって示された。
【0176】
薬学的製造
1M水酸化ナトリウム溶液の調製
1M水酸化ナトリウムの溶液をWFIにおいて調製した。
【0177】
0.05M酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.8)(100mL)の調製
80mLのMilliQ水を含有するメスフラスコにおいて、0.286mLの酢酸(氷酢酸)を加え、振とう後、0.500mLの1M NaOHを加え、水を100mLまで加える:pH=3.8±0.05。
【0178】
賦形剤溶液の調製
酢酸塩緩衝液におけるHPBCD及びL−メチオニンの高濃度(10倍)溶液をポリプロピレン製メスフラスコにおいて調製する。
【0179】
ポリプロピレン製フラスコにおいて、5gのマンニトールを含有する適量の50mM酢酸塩緩衝液を加える。溶液を、3回ひっくり返すことによって均一にする。
【0180】
薬物溶液の配合
必要量B(g)のインターフェロンβ−1a薬物を必要量の賦形剤溶液V(g)に加え、穏やかに撹拌して均一にする。
【0181】
シリンジの充填
1mlのガラス製シリンジに0.5mlの最終溶液を無菌的に充填することができる。
【0182】
参考文献
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】下記の種々の濃度のHPBCDの存在下での、62±2℃で10分間のインキュベーションの後におけるPEG/PBS中でのインターフェロンβ−1a(0.116mg/mL;5.16μM)の凝集速度論を示す図である:1.19mg/mL(インターフェロンβ−1aのモル量に対して150倍モル過剰)、3.97mg/mL(インターフェロンβ−1aのモル量に対して500倍モル過剰)、5.56mg/mL(インターフェロンβ−1aのモル量に対して700倍モル過剰)、及び、7.94mg/mL(インターフェロンβ−1aのモル量に対して1000倍モル過剰)。Y軸には、比濁法に正比例する360nmで測定された光学濃度が報告される(Cancellieri他、BIOPOLYMERS、VOL.13、735〜743、1974)。
【図2】PBS/PEG10000における(62±3℃で10分間のインキュベーションの後での)0.116mg/mL(5.1μM)のインターフェロンβ−1aの凝集に対する10,000倍モル過剰、20,000倍モル過剰及び40,000倍モル過剰のマンニトールの影響を示す図である。
【図3】下記の種々の濃度のL−メチオニンの存在下におけるインターフェロンβ−1aの凝集速度論を示す図である:0.077mg/mL(インターフェロンβ−1aのモル量に対して100倍モル過剰)、0.158mg/mL(インターフェロンβ−1aのモル量に対して205倍モル過剰)、0.308mg/mL(インターフェロンβ−1aのモル量に対して400倍モル過剰)、0.769mg/mL(インターフェロンβ−1aのモル量に対して1000倍モル過剰)、及び、7.69mg/mL(インターフェロンβ−1aのモル量に対して10000倍モル過剰)。
【図4】インターフェロンβ−1a単独、並びにインターフェロンβ−1aのモル量に対して400倍モル過剰のメチオニン(0.308mg/mL)及び/又はインターフェロンβ−1aのモル量に対して700倍モル過剰のHPBCD(5.56mg/mL)の存在下でのインターフェロンβ−1aの凝集速度論を示す図である。
【図5】62±2℃で10分間のインキュベーションの後におけるPEG/PBS中でのインターフェロンβ−1a(0.116mg/mL;5.16μM)の凝集に対する、インターフェロンβ−1aのモル量に対して50倍モル過剰のL−アスコルビン酸塩(0.045mg/mL)、インターフェロンβ−1aのモル量に対して150倍モル過剰のL−アスコルビン酸塩(0.136mg/mL)、インターフェロンβ−1aのモル量に対して500倍モル過剰のL−アスコルビン酸塩(0.453mg/mL)、及び、インターフェロンβ−1aのモル量に対して10000倍モル過剰のL−アスコルビン酸塩(9.07mg/mL)の影響を示す図である。
【図6】インターフェロンβ−1aバルク(約44μg/mL)の熱変性(すなわち、222nmにおけるCDシグナルに対する温度の影響)を図の上側に、融解転移の前(実線)及び融解転移の後(破線)での相対的なCDスペクトルを図の下側に示す図である。以降、それぞれのCDNN(円二色性ニューラルネットワーク)解析(4回の分析の平均)を報告する。注:融解転移曲線又は熱変性は222nmにおけるCDシグナルに対する温度の影響を表す。すべてのCDグラフはY軸にモル楕円率をdegM−1cm−1(Y軸)として有する。表において、200nm〜260nmの範囲におけるαらせんの残留が、融解前/融解後のCDNN解析(4回の分析の平均)におけるIFNの立体配座的安定性の比較のために検討されている。
【図7】インターフェロンβ−1a(約44μg/mL)及びHPBCD(2.11mg/mL)(インターフェロンβ−1aのモル量に対して700倍モル過剰)を含有する溶液についての熱変性曲線、すなわちモル楕円率(degM−1cm−1)として表される222nmにおけるCDシグナルに対する温度の影響を、タンパク質単独(破線)と比較して図の上側(実線)に、融解転移の前(実線)及び融解転移の後(破線)での相対的なCDスペクトルを図の下側に示す図である。以降、それぞれのCDNN(円二色性ニューラルネットワーク)解析(4回の分析の平均)を報告する。
【図8】インターフェロンβ−1a単独(破線の曲線)、及び、インターフェロンβ−1aのモル量に対して500倍モル過剰のL−アスコルビン酸Naの存在下でのインターフェロンβ−1a(実線の曲線)の熱変性を示す図である。
【図9】融解転移の前(実線の曲線)及び融解転移の後(破線の曲線)でのCDスペクトル[インターフェロンβ−1a/アスコルビン酸塩、500倍]及びそれぞれのCDNN解析(上記参照)を示す図である。
【図10】62±2℃で10分間のインキュベーションの後におけるPEG/PBS(最終pH=4.7)中でのインターフェロンβ−1a(0.116mg/mL;5.16μM)の凝集速度論、及び、700倍モル過剰のHPBCD(5.56mg/mL)の影響を示す図である。Y軸には、比濁法に正比例する360nmで測定された光学濃度が報告される。
【図11】62±2℃で10分間のインキュベーションの後におけるPEG/PBS(最終pH=5.1)中でのインターフェロンβ−1a(0.116mg/mL;5.16μM)の凝集速度論、並びに700倍モル過剰のHPBCD(5.56mg/mL)及び500倍モル過剰のRMBCD(3.38mg/mL)の影響を示す図である。
【図12】62±2℃で10分間のインキュベーションの後におけるPEG/PBS(最終pH=5.7)中でのインターフェロンβ−1a(0.116mg/mL;5.16μM)の凝集速度論、及び、700倍モル過剰のHPBCD(5.56mg/mL)の影響を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、緩衝剤、シクロデキストリン、等張性剤及び酸化防止剤を含む溶液である、インターフェロン(IFN)、或いはそのイソ型、ムテイン、融合タンパク質、機能的誘導体、活性な分画物、又は塩を含む安定化された液体医薬組成物、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
インターフェロンは、サイトカイン、すなわち細胞間のメッセージを伝達し、且つ感染を引き起こす微生物を殺すことを助けることによって、また生じた何らかの損傷を修復することによって免疫系において不可欠な役割を果たす可溶性のタンパク質である。インターフェロンは自然の状態では感染細胞によって分泌され、1957年に初めて同定された。この名称は、インターフェロンがウイルスの複製及び増殖を「妨害(interfere)」するという事実に由来する。
【0003】
インターフェロンは抗ウイルス活性及び抗増殖活性の両方を示す。生化学的性質及び免疫学的性質に基づいて、天然に存在するヒトインターフェロンは3つの大きなクラスに分類される:インターフェロン−α(白血球)、インターフェロン−β(繊維芽細胞)及びインターフェロン−γ(免疫)。α−インターフェロンは、現在、毛様細胞性白血病、性病性疣贅、カポジ肉腫(後天性免疫不全症候群(AIDS)に罹患している患者を一般には苦しめるガン)及び慢性の非A非B肝炎を処置するために米国及び他の国々において承認されている。
【0004】
さらに、インターフェロン(IFN)は、ウイルス感染に応答して身体によって産生される糖タンパク質である。インターフェロンは、保護された細胞においてウイルスの増殖を阻害する。より低分子量のタンパク質からなることにより、IFNはその作用において著しく非特異的である。すなわち、ある1つのウイルスによって誘導されたIFNは広範囲の他のウイルスに対して効果的である。しかし、インターフェロンは種特異的である。すなわち、ある1つの種によって産生されたIFNは同じ種又は近縁種の細胞においてのみ抗ウイルス活性を刺激する。IFNは、その潜在的な抗腫瘍活性及び抗ウイルス活性のために利用されることになった最初のサイトカイン群であった。
【0005】
3つの主要なIFNは、IFN−α、IFN−β及びIFN−γと称される。このような主要な種類のIFNは最初、その起源細胞に従って分類されていた(白血球、繊維芽細胞又はT細胞)。しかし、数タイプが1種の細胞によって産生され得ることが明らかになった。したがって、現在、白血球IFNはIFN−αと、繊維芽細胞IFNはIFN−βと、T細胞IFNはIFN−γと呼ばれる。第4のタイプのIFN(リンパ芽球様IFN)も存在し、これは「ナマルワ(Namalwa)」細胞系(これはバーキットリンパ腫に由来する)において産生される。ナマルワ細胞系は白血球IFNと繊維芽細胞IFNの混合物を産生するようである。
【0006】
インターフェロンユニット又はインターフェロンに対する国際単位(U又はIU(国際単位を表す))が、50%の細胞をウイルス損傷から保護するために必要な量と定義されるIFN活性の尺度として報告されている。生物活性を測定するために使用され得るアッセイは、記載されるような細胞傷害作用阻害アッセイである(Rubinstein他、1981;Familletti,P.C.他、1981)。インターフェロンについてのこの抗ウイルスアッセイにおいて、約1ユニット/mlのインターフェロンは、50%の細胞障害作用を生じさせるために必要な量である。ユニット数は、国立衛生研究所によって提供されるHu−IFN−βについての国際基準標準物に関して決定される(Pestka,S.、1986)。
【0007】
どのクラスのIFNもいくつかの異なったタイプを含有する。IFN−β及びIFN−γはそれぞれ、単一遺伝子の産物ある。
【0008】
IFN−αとして分類されるタンパク質は、約15のタイプを含有する最も多様な一群である。IFN−α遺伝子のクラスターが第9染色体上に存在し、このクラスターは少なくとも23の遺伝子を含有し、そのうちの15個が活性であり、転写される。成熟型IFN−αはグリコシル化されていない。
【0009】
IFN−α及びIFN−βはすべて、同じ長さ(165アミノ酸又は166アミノ酸)である類似する生物活性を有する。IFN−γは長さが146アミノ酸であり、αクラス及びβクラスとそれほど密接に似ていない。IFN−γのみがマクロファージを活性化することができ、又はキラーT細胞の成熟化を誘導することができる。これらの新しいタイプの治療剤は、腫瘍に対する生物の応答に対して作用を及ぼし、それにより、免疫調節による認識に影響を及ぼすので、生物応答修飾剤(BRM)と呼ばれることがある。
【0010】
ヒト繊維芽細胞インターフェロン(IFN−β)は抗ウイルス活性を有し、新生物細胞に対するナチュラルキラー細胞を刺激することもできる。ヒト繊維芽細胞インターフェロンは、ウイルス及び二本鎖RNAによって誘導される約20,000Daのポリペプチドである。組換えDNA技術によってクローン化された繊維芽細胞インターフェロンに対する遺伝子のヌクレオチド配列(Derynk他、1980)から、タンパク質の完全なアミノ酸配列が推定された。その長さは166アミノ酸である。
【0011】
Shepard他(1981)は、その抗ウイルス活性を無効にした塩基842における変異(141位において、Cys→Try)、及び、ヌクレオチド1119〜1121の欠失を有する変化体クローンを記載した。
【0012】
Mark他(1984)は、塩基469(T)を(A)で置換し、これにより17位におけるCys→Serのアミノ酸交換を生じさせることによって人工的な変異を挿入した。得られるIFN−βは、「天然型」IFN−βと同じくらい活性であり、長期の貯蔵(−70℃)の期間中、安定であることが報告された。
【0013】
Rebit(登録商標)(Serono−組換えヒトインターフェロン−β)は、多発性硬化症(MS)のためのインターフェロン治療において最近開発されたものであり、哺乳動物の細胞系から産生されるインターフェロン(IFN)−β−1aである。その推奨される国際一般名(INN)は「インターフェロンβ−1a」である。
【0014】
タンパク質ベースのすべての医薬品の場合と同様に、治療剤としてのIFN−βの使用において克服しなければならない1つの大きな障害は、医薬製剤におけるその不安定性から生じ得る薬学的効力の喪失である。
【0015】
医薬製剤におけるポリペプチドの活性及び効力を脅かす物理的不安定性には、変性、並びに可溶性及び不溶性の凝集物の形成が含まれ、一方、化学的不安定性には、加水分解、イミド形成、酸化、ラセミ化及び脱アミド化が含まれる。これらの変化のいくつかが、対象のタンパク質の薬学的活性の喪失又は低下を生じさせることが知られている。他の場合では、これらの変化の正確な影響は不明であるが、生じる分解生成物は、望ましくない副作用に対する潜在的可能性のために医薬品として受け入れられないと依然として見なされている。
【0016】
医薬組成物におけるポリペプチドの安定化は、試行錯誤が大きな役割を果たす領域を依然として残している(このことは、Wang(1999)、Int.J.Pharm.、185:129〜188;Wang及びHanson(1988)、J.Parenteral Sci.Tech.、42;S3〜S26によって総説される)。その安定性を増大させるためにポリペプチド医薬製剤に加えられる賦形剤には、緩衝剤、糖、界面活性剤、アミノ酸、ポリエチレングリコール及びポリマーが含まれるが、これらの化学的添加剤の安定化作用はタンパク質に依存して変化する。
【0017】
シクロデキストリンは環状のオリゴ糖である。最も一般的なシクロデキストリンは、α−シクロデキストリン(これは6個のグルコース残基の環から構成される)、β−シクロデキストリン(これは7個のグルコース残基の環から構成される)、及びγ−シクロデキストリン(これは8個のグルコース単位の環から構成される)である。シクロデキストリンの内部空洞は親油性であり、一方で、シクロデキストリンの外側は親水性であり、この組み合わさった性質は、特に医薬品に関連して、シクロデキストリン類の広範囲の研究をもたらしており、多くの包接複合体が報告されている。β−シクロデキストリンはその空洞サイズのために特別に注目されているが、その比較的低い水溶性(25℃で約1.8%w/v)及び付随する腎毒性により、医薬品分野でのその使用が制限される。天然シクロデキストリンの性質を変える様々な試みにより、ヘプタキス(2,6−ジ−O−メチル)−β−シクロデキストリン、ヘプタキス(2,3,6−トリ−O−メチル)−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン及びβ−シクロデキストリン−エピクロロヒドリンポリマーなどが開発されている。医薬品研究における様々なシクロデキストリン及びそれらの使用の包括的な総説については、Pitha他、Controlled Drug Deliver(編者:S.D.Bruck)、Vol.I、CRC Press、Boca Raton、Fla、125頁〜148頁(1983)を参照のこと。さらにより最近の総説については、Uekama他、CRC Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems、Vol.3(1)、1〜40(1987);Uekama、Topics in Pharmaceutical Sciences(1987年、編者:D.D.Breimer及びP.Speiser)、Elsevier Science Publishers B.V.(Biomedical Division)、181〜194(1987);及び、Pegington、Chemistry in Britain、455頁〜458頁(1987年5月)を参照のこと。シクロデキストリンの、特にペプチド送達及びタンパク質送達のこの分野における使用が、T.Irie他によってAdv.Drug.Deliv.Rev.、Vol.36、101〜123(1999)に総説されており、ヒツジ成長ホルモン、インターロイキン−2及びウシインスリンの場合における例が、Brewster他、1991、Pharmaceutical Research、8(6)、792〜795に記載される。
【0018】
国際特許出願公開WO90/03784及び米国特許第5,997,856号は、シクロデキストリンによるポリペプチド(特に、タンパク質)の可溶化及び/又は安定化のための方法を記載する。しかし、インターフェロンの安定化に関するデータはこの文書には何ら報告されていない。
【0019】
米国特許第6,582,728号は、シクロデキストリンをさらには含有し得る、インターフェロン−βを含有し、且つヒト血清アルブミンもまた含有する肺投与のための乾燥粉末組成物を記載する。しかし、この場合でさえ、シクロデキストリンをも含有するインターフェロン組成物の安定化に関するデータはこの文書には何ら報告されていない。
【0020】
国際特許出願公開WO2003/002152は、インターフェロン分子と、シクロデキストリンの特定の誘導体(すなわち、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン)とを含む安定化された組成物を記載する。
【0021】
したがって、このタンパク質の溶解性を改善し、且つ凝集物形成に対してタンパク質を安定化し、それにより、医薬品としてのその有用性を高める生理学的に適合し得る安定化剤を含むIFN−βのさらなる医薬組成物が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、インターフェロン(IFN)を含む安定化された医薬組成物、その調製方法及びその使用を対象とする。具体的には、本発明の主要な目的は、緩衝剤、シクロデキストリン、好ましくは等張性剤、及び酸化防止剤を含む溶液である、インターフェロン(IFN)、或いはそのイソ型、ムテイン、融合タンパク質、機能的誘導体、活性な分画物、又は塩を含む安定化された液体医薬組成物を提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の組成物は、ヒト血清アルブミン(HSA)の非存在下で好ましくは調製され、したがって、この薬学的賦形剤を含まない。そのような組成物は、本明細書中では「HSA非含有」IFN医薬組成物として示され、インターフェロン(IFN)、或いはそのイソ型、ムテイン、融合タンパク質、機能的誘導体、活性な分画物、又は塩を含む。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、本発明の組成物はまた静菌剤を含む。
【0025】
本明細書中で使用される「インターフェロン」又は「IFN」は、文献においてそのようなものとして定義される任意の分子を包含することが意図され、これには、例えば、上記の「発明の背景」の節で述べられた任意のタイプのIFNが含まれる。具体的には、IFN−α、IFN−β及びIFN−γが上記の定義に含まれる。IFN−βが、本発明による好ましいIFNである。本発明に好適なIFNは、例えば、Rebif(登録商標)(Serono)、Avonex(登録商標)(Biogen)又はBetaferon(登録商標)(Schering)として市販されている。本発明によれば、ヒト起源のインターフェロンの使用も好ましい。インターフェロンという用語は、本明細書中で使用されるとき、その塩、機能的誘導体、変化体、アナログ及び活性なフラグメントを包含することが意図される。
【0026】
本明細書中で使用される用語「インターフェロン−β(IFN−beta又はIFN−β)」は、生物流体からの単離によって得られるような、或いは原核生物宿主細胞又は真核生物宿主細胞からDNA組換え技術によって得られるような繊維芽細胞インターフェロン(具体的には、ヒト起源の繊維芽細胞インターフェロン)、並びにその塩、機能的誘導体、変化体、アナログ及び活性なフラグメントを包含することが意図される。好ましくは、IFN−βはインターフェロンβ−1aを意味することが意図される。
【0027】
本明細書中で使用される用語「ムテイン」は、野生型IFNと比較して、生じる生成物の活性をかなり変化させることなく、天然IFNのアミノ酸残基の1つ又は複数が異なるアミノ酸残基によって置換されているか、又は欠失しているか、或いは1つ又は複数のアミノ酸残基がIFNの天然配列に付加されているIFNのアナログを示す。このようなムテインは、知られている合成技術及び/又は部位特異的変異誘発技術によって、或いは、その好適な任意の他の知られている技術によって調製される。好ましいムテインには、例えば、Shepard他(1981)又はMark他(1984)によって記載されるムテインが含まれる。
【0028】
任意のそのようなムテインは、好ましくは、例えば、IFNと実質的に類似する活性又はさらに一層良好な活性を有するような、IFNのアミノ酸配列を十分に複製するアミノ酸の配列を有する。インターフェロンの生物学的機能は当業者には広く知られており、また、生物学的標準物が確立され、例えば、the National Institute for Biological Standards and Control(http://immunology.org/links/NIBSC)から入手可能である。
【0029】
IFN活性を決定するための様々なバイオアッセイが記載されている。IFNアッセイを、例えば、Rubinstein他(1981)による記載のように行うことができる。したがって、任意の所与のムテインが、実質的に類似する活性を有するか、又はIFNよりもさらに一層良好な活性を有するかどうかを日常的な実験によって決定することができる。
【0030】
IFNのムテイン(これは本発明に従って使用することができる)、又はそれをコードする核酸は、本明細書中に示される教示及び指針に基づいて、過度な実験を用いることなく、当業者によって日常的に得ることができる置換ペプチド又は置換ポリヌクレオチドのような実質的に対応する配列の有限な集合を含む。
【0031】
本発明によるムテインのための好ましい変化は、「保存的」置換として知られているものである。本発明のポリペプチド又はタンパク質の保存的なアミノ酸置換では、グループのメンバー間の置換が分子の生物学的機能を保持するように十分に類似する物理化学的性質を有するグループ内の同義的アミノ酸を含むことができる。アミノ酸の挿入及び欠失もまた、特に、挿入又は欠失が少数のアミノ酸(例えば、30個未満、好ましくは、10個未満)を伴うだけであり、且つ機能的な立体配座にとって重要なアミノ酸(例えば、システイン残基)を除去しないか、又はそのようなアミノ酸と入れ替わらないならば、それらの機能を変化させることなく、上記で定義された配列において行われ得ることは明らかである。そのような欠失及び/又は挿入によって作製されるタンパク質及びムテインは本発明の範囲に含まれる。
【0032】
好ましくは、同義的アミノ酸群は、表Iに定義されるアミノ酸群である。より好ましくは、同義的アミノ酸群は、表IIに定義されるアミノ酸群であり、最も好ましくは、同義的アミノ酸群は、表IIIに定義されるアミノ酸群である。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
本発明において使用されるIFNのムテインを得るために使用することができるタンパク質におけるアミノ酸置換を作製する例には、任意の知られている方法ステップが含まれる:例えば、米国特許第4,959,314号、同第4,588,585号及び同第4,737,462号(Mark他);米国特許第5,116,943号(Koths他);米国特許第4,965,195号(Namen他);米国特許第4,879,111号(Chong他);及び、米国特許第5,017,691号(Lee他)などに示される方法ステップ;並びに米国特許第4,904,584号(Shaw他)に示されるリシン置換タンパク質。IFN−βの具体的なムテインが、例えば、Mark他(1984)によって記載されている。
【0037】
用語「融合タンパク質」は、例えば、体液における長時間の滞留時間を有する別のタンパク質に融合された、IFN又はそのムテインを含むポリペプチドを示す。したがって、IFNを別のタンパク質又はポリペプチド(例えば、免疫グロブリン又はそのフラグメント)などに融合することができる。
【0038】
本明細書中で使用される「機能的誘導体」は、残基上の側鎖或いはN末端基又はC末端基として存在する官能基からこの分野で知られている手段によって調製され得るINFの誘導体、並びにそれらのムテイン及び融合タンパク質を包含し、それらが依然として医薬的に許容され得る限り、すなわちIFNの活性と実質的に類似するタンパク質の活性を破壊せず、且つそれを含有する組成物に毒性の性質を与えない限り、本発明に含まれる。このような誘導体は、例えば、抗原性部位を遮蔽し、且つ体液におけるIFNの滞留を延ばすことができるポリエチレングリコール側鎖を含むことができる。他の誘導体では、カルボキシル基の脂肪族エステル、アンモニア又は第一級アミン若しくは第二級アミンとの反応によるカルボキシル基のアミド、アシル成分(例えば、アルカノイル基又はカルボン酸アロイル基)により形成されるアミノ酸残基の遊離アミノ基のN−アシル誘導体、又はアシル成分により形成される遊離ヒドロキシル基(例えば、セリル残基又はトレオニル残基のヒドロキシル基)のO−アシル誘導体が含まれる。
【0039】
IFNの「活性な分画物」、又はムテイン及び融合タンパク質として、本発明は、前記分画物が、対応するIFNと比較して、著しく低下した活性を有しないならば、タンパク質分子のポリペプチド鎖の任意のフラグメント又は前駆体を単独で、或いはそれに結合した関連する分子又は残基(例えば、糖残基若しくはリン酸残基、又はタンパク質分子の凝集体、又は自身による糖残基)と一緒に包含する。
【0040】
本明細書中における用語「塩」は、上記に記載されるタンパク質又はそのアナログのカルボキシル基の塩及びアミノ基の酸付加塩の両方を示す。カルボキシル基の塩を、この分野で知られている手段によって形成させることができ、これには、無機塩、例えば、ナトリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、第一鉄塩又は亜鉛塩など、及び、有機塩基との塩、例えば、アミン(例えば、トリエタノールアミン、アルギニン又はリシン、ピペリジン、プロカインなど)により形成される塩が含まれる。酸付加塩には、例えば、鉱酸(例えば、塩酸又は硫酸など)との塩、及び、有機酸(例えば、酢酸又はシュウ酸など)との塩が含まれる。当然のことではあるが、任意のそのような塩は、本発明に関連したタンパク質(IFN)の生物活性(すなわち、対応する受容体に結合し、且つ受容体のシグナル伝達を開始させる能力)を保持しなければならない。
【0041】
本発明によれば、組換えヒトIFN−β及び本発明の化合物の使用がさらに特に好ましい。
【0042】
特別な種類のインターフェロン変化体が最近では記載されている。いわゆる「コンセンサスインターフェロン」はINFの天然に存在しない変化体である(米国特許第6,013,253号)。本発明の好ましい実施形態によれば、本発明の化合物はコンセンサスインターフェロンとの組合せで使用される。
【0043】
本明細書中で使用される場合、ヒトインターフェロンコンセンサス(INF−con)は、天然に存在するヒト白血球インターフェロンサブタイプ配列の大部分を表すIFN−αのサブセットに共通するそのようなアミノ酸残基を主として含む天然に存在しないポリペプチドで、すべてのサブタイプに共通するアミノ酸が存在しないそのような位置の1つ又は複数において、その位置において主として存在するアミノ酸を含み、且つ少なくとも1つの天然に存在するサブタイプにおけるその位置に存在しないいずれかのアミノ酸残基をいかなる場合でも含まないポリペプチドを意味するものとする。IFN−conは、米国特許第4,695,623号、同第4,897,471号及び同第5,541,293号に開示されるIFN−con1、IFN−con2及びIFN−con3と称されるアミノ酸配列を包含するが、これらに限定されない。IFN−conをコードするDNA配列を上記の特許に記載されるように作製することができ、又は他の標準的な方法によって作製することができる。
【0044】
さらなる好ましい実施形態において、融合タンパク質はIg融合を含む。この融合は直接的であり得るか、或いは長さが1アミノ酸残基〜3アミノ酸残基ほどの短さであり得るか、又はそれよりも長いこと(例えば、13アミノ酸残基の長さ)が可能である短いリンカーペプチドを介して可能である。前記リンカーは、例えば、配列E−F−M(Glu−Phe−Met)(配列番号1)のトリペプチド、又はIFNの配列と、免疫グロブリン配列との間に導入されたGlu−Phe−Gly−Ala−Gly−Leu−Val−Leu−Gly−Gly−Gln−Phe−Met(配列番号2)を構成する13アミノ酸リンカー配列であり得る。得られる融合タンパク質は、改善された性質(例えば、体液における延長された滞留時間(半減期)、増大した比活性、増大した発現レベルなど)を有することができ、又は融合タンパク質の精製が容易になる。
【0045】
さらなる好ましい実施形態において、IFNはIg分子の定常領域に融合される。好ましくは、IFNは、例えば、ヒトIgG1のCH2ドメイン及びCH3ドメインのような重鎖領域に融合される。Ig分子の他のイソ型もまた、本発明に従って融合タンパク質を作製するために好適である(例えば、IgG2、IgG3又はIgG4のイソ型、或いは、例えば、IgM又はIgAのような他のIgクラス)。融合タンパク質はモノマーであり得るか、或いはマルチマー(ヘテロマルチマー又はホモマルチマー)であり得る。
【0046】
さらなる好ましい実施形態において、機能的誘導体は、アミノ酸残基上の1つ又は複数の側鎖として存在する1つ又は複数の官能基に結合した少なくとも1つの成分を含む。好ましくは、そのような成分はポリエチレン(PEG)成分である。PEG化を、例えば、国際特許出願公開WO99/55377に記載される方法などの知られている方法によって行うことができる。
【0047】
単回投薬又は多回投薬として個体に投与される投薬量は、薬物動態学的性質、投与経路、患者の状態及び特性(性別、年齢、体重、健康状態、体格)、症状の程度、同時治療、処置頻度、並びに所望される効果を含めた様々な要因に依存して変化する。
【0048】
ヒトIFN−βの標準的な投薬量は、1日あたり80000IU/kg〜200000IU/kg、又は1日あたり6MIU(百万国際単位)/人〜12MIU/人、又は22μg(マイクログラム)/人〜44μg/人の範囲である。本発明によれば、IFNは、好ましくは、1日あたり1人につき約1μg〜50μg(より好ましくは、約10μg〜30μg、又は約10μg〜20μg)の投薬量で投与される。
【0049】
本発明による有効成分の投与は、静脈内経路、筋肉内経路又は皮下経路によって可能である。IFNについての好ましい投与経路は皮下経路である。
【0050】
IFNはまた、毎日、又は1日おきに、又はより少ない頻度で投与することができる。好ましくは、IFNは、1週間に1回、2回又は3回で投与される。
【0051】
好ましい投与経路は皮下投与であり、これは、例えば、1週間に3回、投与される。さらなる好ましい投与経路は筋肉内投与であり、これは、例えば、1週間に1回、施すことができる。
【0052】
再発寛解型MSの本発明による処置におけるIFN−βの投薬は、使用されるINF−βのタイプに依存する。
【0053】
本発明によれば、IFNが、大腸菌(E.Coli)で作製された組換えIFN−β1bである場合、これはBetaseron(登録商標)の商標で市販されているが、IFNを、好ましくは、1人あたり約250μg〜300μg又は8MIU〜9.6MIUの投薬量で2日毎に皮下に投与することができる。
【0054】
本発明によれば、IFNが、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)で作製された組換えIFN−β1aである場合、これはAvonex(登録商標)の商標で市販されているが、IFNを、好ましくは、1人あたり約30μg〜33μg又は6MIU〜6.6MIUの投薬量で1週間に1回、筋肉内に投与することができる。
【0055】
本発明によれば、IFNが、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)で作製された組換えIFN−β1aである場合、これはRebif(登録商標)の商標で市販されているが、IFNを、好ましくは、1人あたり約22μg〜44μg又は6MIU〜12MIUの投薬量で1週間に3回(TIW)、皮下に投与することができる。
【0056】
用語「安定性」は、(生物学的効力の維持を含めて)本発明のインターフェロンの製剤の物理的安定性、化学的安定性及び立体配座的安定性を示す。タンパク質製剤の不安定性は、タンパク質分子の化学的分解、又はタンパク質分子が凝集して、より高次のポリマーを形成すること、脱グリコシル化、グリコシル化の修飾、酸化、或いは本発明において含まれるインターフェロンポリペプチドの少なくとも1つの生物活性を低下させる任意の他の構造的修飾によって引き起こされ得る。
【0057】
「安定な」又は「安定化された」溶液又は製剤は、それにおけるタンパク質の分解、修飾、凝集、生物活性の喪失などの程度が、受け入れられ得るほど抑制され、且つ時間とともに受け入れられ得ないほど増大しないものである。好ましくは、製剤は少なくとも60%又は約60%(より好ましくは、少なくとも70%又は約70%、最も好ましくは、少なくとも80%又は約80%)の表示されたインターフェロン活性を24ヶ月の期間にわたって維持する。本発明の安定化されたIFN組成物は、好ましくは、少なくとも約6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、より好ましくは、少なくとも20ヶ月、さらにより好ましくは、少なくとも約22ヶ月、最も好ましくは、少なくとも約24ヶ月の貯蔵寿命を、2℃〜8℃で貯蔵されたときに有する。
【0058】
本発明のIFN医薬組成物の安定性をモニターするための様々な方法が、本明細書中に開示される実施例に記載されるそのような方法を含めてこの分野では利用可能である。したがって、本発明の液体医薬組成物の貯蔵時におけるIFN凝集物の形成を、溶液における可溶性IFNの変化を経時的に測定することによって容易に明らかにすることができる。溶液中の可溶性ポリペプチドの量は、IFNの検出に適合した数多くの分析アッセイによって定量することができる。そのようなアッセイには、例えば、下記の実施例において記載されるようにサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)−HPLC及びUV吸収分光分析法が含まれる。
【0059】
液体製剤における貯蔵期間中の可溶性凝集物及び不溶性凝集物の両方の測定を、例えば、可溶性凝集物として存在する可溶性ポリペプチドのそのような部分と、凝集していない生物学的に活性な分子形態で存在するそのような部分とを識別するために、下記の実施例において記されるような分析的超遠心分離を使用して達成することができる。
【0060】
表現「多回投薬使用」は、2回以上の注射(例えば、2回、3回、4回、5回、6回又はそれ以上の注射)のためのインターフェロン製剤の単回用のバイアル、アンプル又はカートリッジの使用を包含することが意図される。注射は、好ましくは、少なくとも12時間又は約12時間、少なくとも24時間又は約24時間、少なくとも48時間又は約48時間などから、好ましくは、12日又は約12日までの期間にわたって行われる。注射は一定の間隔を置くことができ、例えば、6時間、12時間、24時間、48時間又は72時間の間隔を置くことができる。
【0061】
用語「緩衝剤」又は用語「生理学的に許容され得る緩衝剤」は、製剤での医薬的使用又は獣医学的使用のために安全であることが知られ、且つ製剤のために所望されるpH範囲で製剤のpHを維持又は制御するという作用を有する化合物の溶液を示す。適度な酸性pHから適度な塩基性pHでpHを制御するための好適な緩衝剤には、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、アルギニン、TRIS及びヒスチジンのような化合物が含まれるが、これらに限定されない。「TRIS」は2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールを示し、また、その任意の薬理学的に許容され得る塩を示す。好ましい緩衝剤は、生理的食塩水又は許容され得る塩を含む酢酸塩緩衝液である。
【0062】
本発明における使用のために意図される「シクロデキストリン」は、β−シクロデキストリンのヒドロキシプロピル誘導体、ヒドロキシエチル誘導体、グルコシル誘導体、マルトシル誘導体及びマルトトリオシル誘導体、並びにγ−シクロデキストリンの対応する誘導体である。ヒドロキシアルキル基化体は1つ又は複数のヒドロキシル基を含有する(例えば、ヒドロキシプロピル(2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル)、ジヒドロキシプロピルなど)。グルコシル誘導体、マルトシル誘導体及びマルトトリオシル誘導体は1つ又は複数の糖残基(例えば、グルコシル又はジグルコシル、マルトシル又はジマルトシル)を含有することができる。シクロデキストリン誘導体の様々な混合物を同様に使用することができる(例えば、マルトシル誘導体及びジマルトシル誘導体の混合物)。本発明において使用される具体的なシクロデキストリン誘導体には、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPCD又はHPBCD)、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン(HEBCD)、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン(HPGCD)、ヒドロキシエチル−γ−シクロデキストリン(HEGCD)ジヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(2HPBCD)、グルコシル−β−シクロデキストリン(G1−β−CD又はG1BCD)、ジグルコシル−β−シクロデキストリン(2GG1−β−CD又は2G1BCD)、マルトシル−β−シクロデキストリン(G2−β−CD又はG2BCD)、マルトシル−γ−シクロデキストリン(G2−γ−CD又はG2GCD)、マルトトリオシル−β−シクロデキストリン(G3−β−CD又はG3BCD)、マルトトリオシル−γ−シクロデキストリン(G3−γ−CD又はG3GCD)及びジマルトトリオシル−β−シクロデキストリン(2G2−β−CD又は2G2BCD)、並びにこれらの混合物(例えば、マルトシル−β−シクロデキストリン/ジマルトシル−β−シクロデキストリンなど)が含まれる。
【0063】
本発明の組成物において使用されるヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンは市販されており、本発明による好ましいシクロデキストリンである。
【0064】
或いは、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンは、知られている方法によって、特に、Pitha他(International Journal of Pharmaceutics、29、73〜82(1986))の最適化された手順の使用によって調製することができる。
【0065】
「等張性剤」は、生理学的に許容され、且つ製剤と接触している細胞膜を横断する水の正味の流れを防止するために好適な張性を製剤に与える化合物である。グリセリンなどの化合物が、知られている濃度でそのような目的のために一般に使用される。他の好適な等張性剤には、例えば、アミノ酸又はタンパク質(例えば、グリシン又はアルブミンなど)、塩(例えば、塩化ナトリウム)及び糖(例えば、デキストロース、マンニトール、スクロース及びラクトース)が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、等張性剤はマンニトールである。
【0066】
用語「酸化防止剤」は、酸素又は酸素由来フリーラジカルが他の物質と相互作用することを防止する化合物を示す。酸化防止剤は、物理的安定性及び化学的安定性を高めるために医薬品系に一般に添加される数多くの賦形剤の1つである。酸化防止剤は、酸素にさらされたとき、又はフリーラジカルの存在下で、いくつかの薬物又は賦形剤とともに生じる酸化プロセスを最小限に抑えるか、又は遅らせるために添加される。このようなプロセスは、光、温度、濃縮時の水素、微量金属の存在又は過酸化物によって触媒され得ることが多い。亜硫酸塩、重亜流酸塩、チオウレア、メチオニン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)の塩、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)及びブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)が、薬物における酸化防止剤として頻繁に使用される。ナトリウムEDTAは、そうでない場合には酸化反応を触媒する金属イオンをキレート化することによって酸化防止剤の活性を高めることが見出されている。最も好ましい酸化防止剤はメチオニンである。
【0067】
用語「静菌剤」は、抗菌剤として作用させるために製剤に添加される化合物又は組成物を示す。本発明の保存されたインターフェロン含有製剤は、好ましくは、商業的に実現可能な多回使用製造物であるための保存有効性についての法定指針又は規制指針を満たす。静菌剤の例には、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム及びチメロサールが含まれる。好ましくは、静菌剤はベンジルアルコールである。
【0068】
好ましい実施形態において、本発明は、緩衝剤、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、等張性剤及び酸化防止剤を含む溶液である、インターフェロン(IFN)、或いはそのイソ型、ムテイン、融合タンパク質、機能的誘導体、活性な分画物、又は塩を含む安定化された液体医薬組成物を提供する。
【0069】
さらなる好ましい実施形態において、本発明は、前記インターフェロンがIFN−β(例えば、組換えヒトIFN−βなど)である安定化された液体医薬組成物を提供する。
【0070】
別の好ましい実施形態において、本発明は、前記緩衝剤が、3.8又は約3.8のpH値を含めて、約3〜約6(例えば、3.0又は約3.0〜約6.0のpH値など)である指定されたpHの±0.5単位の範囲内で前記組成物のpHを維持するために十分な量で存在する安定化された液体医薬組成物を提供する。
【0071】
別の好ましい実施形態において、本発明は、前記緩衝剤が約5mM〜500mMの濃度(例えば、50mM又は約50mMの濃度など)で存在する安定化された液体医薬組成物を提供する。
【0072】
別の好ましい実施形態において、本発明は、前記緩衝剤が酢酸塩緩衝剤である安定化された液体医薬組成物を提供する。
【0073】
別の好ましい実施形態において、本発明は、前記等張性剤がマンニトールである安定化された液体医薬組成物を提供する。
【0074】
別の好ましい実施形態において、本発明は、前記等張性剤が約0.5mg/ml〜約500mg/mlの濃度(例えば、50mg/ml又は約50mg/mlの濃度など)で存在する安定化された液体医薬組成物を提供する。
【0075】
別の好ましい実施形態において、本発明は、酸化防止剤がメチオニンである安定化された液体医薬組成物を提供する。
【0076】
別の好ましい実施形態において、本発明は、酸化防止剤が、約0.01mg/ml〜約5.0mg/mlの濃度(例えば、0.1mg/ml又は約0.1mg/mlの濃度など)を含めて、約0.01mg/ml〜約5mg/mlの濃度で存在する安定化された液体医薬組成物を提供する。
【0077】
別の好ましい実施形態において、本発明は、前記インターフェロンが約10μg/ml〜約800μg/mlの濃度(例えば、44μg/ml又は約44μg/ml、88μg/ml又は約88μg/ml、或いは、276μg/ml又は約276μg/mlの濃度など)で存在する安定化された液体医薬組成物を提供する。
【0078】
別の好ましい実施形態において、本発明は、前記シクロデキストリンが約500倍モル過剰から約700倍モル過剰までの対インターフェロンモル比で存在する安定化された液体医薬組成物を提供する。
【0079】
別の好ましい実施形態において、本発明は、水溶液である安定化された液体医薬組成物を提供する。
【0080】
別の好ましい実施形態において、本発明は、静菌剤(例えば、ベンジルアルコールなど)をさらに含む安定化された液体医薬組成物を提供する。
【0081】
別の好ましい実施形態において、本発明は、静菌剤をさらに含み、静菌剤が、0.1%又は約0.1%〜約2.0%の濃度(例えば、0.2%又は約0.2%或いは0.3%又は約0.3%の濃度など)を含めて、約0.1%〜約2%の濃度で存在する安定化された液体医薬組成物を提供する。
【0082】
さらなる好ましい実施形態において、本発明は、等張性剤がマンニトールであり、酸化防止剤がメチオニンであり、且つインターフェロンがインターフェロンβである安定化された液体医薬組成物を提供する。
【0083】
別のさらなる好ましい実施形態において、本発明は、下記の液体製剤である安定化された液体医薬組成物を提供する:
【表4】
【0084】
別の実施形態において、本発明は、本発明による安定化された液体医薬組成物を調製するための方法を提供する。この場合、前記方法は、計算量の2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、酸化防止剤及び等張性剤を緩衝化された溶液に加えること、及び、次いで、インターフェロン(IFN)、或いはそのイソ型、ムテイン、融合タンパク質、機能的誘導体、活性な分画物、又は塩を加えることを含む。
【0085】
別の実施形態において、本発明は、本発明による液体医薬製剤を含む、使用前の貯蔵のために無菌且つ適切な状態で密封された容器を提供する。そのような容器の例は、自己注射器用のバイアル又はカートリッジである。本発明による容器は単回投薬投与又は多回投薬投与のためのものである。
【0086】
好ましい実施形態において、本発明は、単回投薬投与のための事前に充填されたシリンジである本発明による容器を提供する。
【0087】
別の好ましい実施形態において、本発明は、本発明による医薬組成物の多回投薬投与のためのキットを提供する。この場合、キットは、本発明による医薬組成物により充填された第1の容器と、静菌剤の溶液の充填された第2のカートリッジとを含む。
【0088】
好ましくは、製剤におけるIFN−βの濃度は10μg/ml又は約10μg/ml〜800μg/ml又は約800μg/mlであり、より好ましくは、20μg/ml又は約20μg/ml〜500μg/ml又は約500μg/mlであり、より特に好ましくは、30μg/ml又は約30μg/ml〜300μg/ml又は約300μg/mlであり、最も好ましくは、44μg/ml、88μg/ml又は264μg/ml、或いは約44μg/ml、約88μg/ml又は約264μg/mlである。
【0089】
好ましくは、本発明の製剤は約3.0〜4.5又は約4.5の間のpHを有し、より好ましくは、3.8又は約3.8のpHである。好ましい緩衝剤は酢酸塩であり、好ましい対イオンはナトリウムイオン又はカリウムイオンである。酢酸塩生理的食塩水緩衝液がこの分野では広く知られている。溶液全体における緩衝剤濃度は、5mM又は約5mM、9.5mM又は約9.5mM、10mM又は約10mM、50mM又は約50mM、100mM又は約100mM、150mM又は約150mM、200mM又は約200mM、250mM又は約250mMと、500mM又は約500mMとの間で変化させることができる。好ましくは、緩衝剤濃度は10mM又は約10mMである。特に好ましいものは、3.8のpHを有する、酢酸イオンが50mMの緩衝液である。
【0090】
好ましくは、本発明の組成物において、酸化防止剤(例えば、メチオニン)は0.01mg/ml又は約0.01mg/ml〜5mg/ml又は約5mg/mlの濃度で存在し、より好ましくは、0.05mg/ml又は約0.05mg/ml〜0.3mg/ml又は約0.3mg/mlの濃度で存在し、最も好ましくは、0.1mg/ml又は約0.1の濃度で存在する。
【0091】
好ましくは、液体製剤における等張性剤(例えば、マンニトール)の濃度は0.5mg/ml又は約0.5mg/ml〜500mg/ml又は約500mg/mlであり、より好ましくは、1mg/ml又は約1mg/ml〜250mg/ml又は約250mg/mlであり、より特に好ましくは、10mg/ml又は約10mg/ml〜100mg/ml又は約100mg/mlであり、最も好ましくは、50mg/ml又は約50mg/mlである。
【0092】
さらなる好ましい実施形態において、本発明は、等張性剤がマンニトールであり、酸化防止剤がメチオニンであり、且つインターフェロンがインターフェロンβである本発明による組成物を提供する。
【0093】
別の好ましい実施形態において、本発明は、液体組成物が下記である本発明による組成物を提供する:
【表5】
【0094】
本発明は液体製剤を包含する。好ましい溶媒は注射用水である。
【0095】
液体製剤は単回投薬又は多回投薬であり得る。多回投薬のために意図される本発明のそのような液体インターフェロン製剤は、好ましくは、静菌剤、例えば、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンセトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム及びチメロサールを含む。特に好ましいものは、フェノール、ベンジルアルコール及びm−クレゾールであり、より好ましいものはベンジルアルコールである。静菌剤は、製剤を、12時間又は約12時間或いは24時間又は約24時間〜12日又は約12日(好ましくは、6日又は約6日〜12日又は約12日)までであり得る多回投薬の注射の期間を通して(注射のために好適である)本質的に細菌非含有で維持するために効果的である濃度をもたらす量で使用される。静菌剤は、好ましくは、0.1%又は約0.1%(静菌剤の質量/溶媒の質量)〜2.0%又は約2.0%の濃度で存在し、より好ましくは、0.2%又は約0.2%〜1.0%又は約1.0%の濃度で存在する。ベンジルアルコールの場合、0.2%又は0.3%の濃度が特に好ましい。
【0096】
静菌剤はまた、単回投薬製剤にも存在させることができる。
【0097】
本発明の製剤におけるインターフェロンの範囲は、再構成したとき、約1.0μg/ml〜約50mg/mlの濃度をもたらす量を包含する。だが、それよりも低い濃度及びより高い濃度を使用することができ、そのような濃度は、意図された送達ビヒクルに依存し、例えば、溶液製剤は、経皮パッチ、肺方法、経粘膜法、又は浸透圧ポンプ法若しくはマイクロポンプ法とは異なる。インターフェロン濃度は、好ましくは、5μg/ml又は約5μg/ml〜2mg/ml又は約2mg/mlであり、より好ましくは、10μg/ml又は約10μg/ml〜1mg/ml又は約1mg/mlであり、最も好ましくは、30μg/ml又は約30μg/ml〜100μg/ml又は約100μg/mlである。
【0098】
好ましくは、本発明の製剤は、24ヶ月の期間を通して包装時におけるインターフェロン活性の少なくとも60%又は約60%(より好ましくは、少なくとも70%又は約70%、最も好ましくは、少なくとも80%又は約80%)を保持する。
【0099】
さらなる好ましい実施形態において、本発明は、前記のような液体医薬組成物を製造するための方法を提供する。
【0100】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明は、有効成分と、前記のような賦形剤とを含む溶液を設置することを含む、包装された医薬組成物を製造するための方法を提供する。
【0101】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明は、前記のような医薬組成物を含むバイアルと、そのような溶液が最初の使用の後の24時間又は約24時間又はそれ以上の期間にわたって保持され得ることを述べる書面の媒体とを含む、ヒトでの薬学的使用のための製造物を提供する。好ましくは、書面の媒体は、溶液が12日又は約12日まで保持され得ることを述べる。
【0102】
多回投薬製剤の最初の使用の後、製剤は少なくとも24時間又は約24時間(好ましくは、4日又は約4日、5日又は約5日、或いは6日又は約6日、より好ましくは、12日までの期間)保たれ、且つ使用することができる。製剤の最初の使用の後、製剤は、好ましくは、室温よりも低い温度(すなわち、25℃又は約25℃よりも低い温度)で、より好ましくは、10℃又は約10℃よりも低い温度で、より好ましくは、2℃又は約2℃〜8℃又は約8℃で、最も好ましくは、5℃又は約5℃で貯蔵される。
【0103】
本発明の製剤は、計算量の賦形剤を緩衝化された溶液に加えること、及び、次いで、インターフェロンを加えることを含むプロセスによって調製することができる。
【0104】
得られる溶液は、その後、バイアル、アンプル又はカートリッジに入れられる。このプロセスの様々な変法が当業者によって認識される。例えば、成分が加えられる順序、さらなる添加剤が使用されるかどうか、製剤が調製される温度及びpHはすべてが、使用される濃度及び投与手段のために最適化され得る因子である。
【0105】
多回投薬使用製剤の場合、静菌剤を、有効成分(インターフェロン)を含有する溶液に加えることができ、或いは別個のバイアル又はカートリッジにおいて保ち、その後、使用時に有効成分を含有する溶液に混合することができる。
【0106】
本発明の製剤は、認められているデバイスを使用して投与することができる。このような単回バイアルシステムを含む例には、溶液を送達するための自己注射器デバイス又はペン型注射器デバイス(例えば、Rebiject(登録商標)など)が含まれる。
【0107】
現時点で特許請求される製造物は包装材を含む。包装材は、規制当局により要求される情報に加えて、製造物が使用され得る条件を提供する。本発明の包装材は、最終的な溶液を調製し、且つ2つのバイアルの(湿潤/乾燥)製造物について24時間又はそれ以上の期間にわたってそのような最終的な溶液を使用するために、必要ならば、患者への指示を提供する。単回バイアルの溶液製造物については、表示は、そのような溶液が24時間又はそれ以上の期間にわたって使用され得ることを示す。現時点で特許請求される製造物は、ヒトでの医薬製造物の使用のために有用である。
【0108】
安定な保存された製剤は透明な溶液として患者に与えることができる。溶液は単回使用のためのものであり得るか、或いは多数回再使用することができ、且つ患者処置の1回又は多数回のサイクルのために十分であり得るし、したがって、現在利用可能であるよりも好都合な処置療法を提供する。
【0109】
本明細書中に記載される安定な、又は保存された製剤又は溶液のいずれかにおけるインターフェロンは、この分野で広く知られているように、SC注射又はIM注射;当業者により理解される経皮的手段、肺手段、経粘膜手段、インプラント手段、浸透圧ポンプ手段、カートリッジ手段、マイクロポンプ手段、経口的手段又は他の手段を含む様々な送達方法によって、本発明に従って患者に投与することができる。
【0110】
用語「バイアル」は、広義には、含有される無菌状態において固体形態又は液体形態でインターフェロンを保持するために好適な入れ物を示す。本明細書中において使用されるようなバイアルの例には、シリンジ、ポンプ(浸透圧ポンプを含む)、カテーテル、経皮パッチ、肺スプレー又は経粘膜スプレーによってインターフェロンを患者に送達するために好適なアンプル、カートリッジ、ブリスターパッケージ、又は他のそのような入れ物が含まれる。非経口投与、肺投与、経粘膜投与又は経皮投与のための製造物を詰めるために好適な様々なバイアルがこの分野では広く知られており、また認められている。
【0111】
用語「処置」は、本発明の関連では、疾患発症後の病理学的発達の弱化、減少、低下又は軽減をはじめとする、疾患の進行に対する任意の有益な効果を示す。
【0112】
IFN、或いはそのイソ型、ムテイン、誘導タンパク質、機能的誘導体、活性な分画物、又は塩を含む本発明の医薬組成物は、このポリペプチドによる治療に応答し得る臨床的適応症の診断、防止及び処置(局所的又は全身的)のために有用である。そのような臨床的適応症には、例えば、中枢神経系(CNS)、脳及び/又は脊髄の障害又は疾患(これには、多発性硬化症が含まれる);自己免疫疾患(これには、リウマチ様関節炎、乾癬、クローン病が含まれる);及びガン(これには、乳ガン、前立腺ガン、膀胱ガン、腎臓ガン及び結腸ガンが含まれる)が含まれる。
【0113】
一実施形態において、本発明は、中枢神経系(CNS)、脳及び/又は脊髄を冒す障害又は疾患(これには、多発性硬化症が含まれる);自己免疫疾患(これには、リウマチ様関節炎、乾癬、クローン病が含まれる);及びガン(これには、乳ガン、前立腺ガン、膀胱ガン、腎臓ガン及び結腸ガンが含まれる)を処置するための医薬製剤の調製のための、本発明の組成物の使用を含む。
【0114】
別の実施形態において、本発明は、その必要性のある患者において本発明の組成物の投与を含む、中枢神経系(CNS)、脳及び/又は脊髄を冒す障害又は疾患(これには、多発性硬化症が含まれる);自己免疫疾患(これには、リウマチ様関節炎、乾癬、クローン病が含まれる);及びガン(これには、乳ガン、前立腺ガン、膀胱ガン、腎臓ガン及び結腸ガンが含まれる)を処置する方法を提供する。
【0115】
本発明の別の実施形態において、本発明の組成物は、中枢神経系(CNS)、脳及び/又は脊髄を冒す障害又は疾患(これには、多発性硬化症が含まれる);自己免疫疾患(これには、リウマチ様関節炎、乾癬、クローン病が含まれる);及びガン(これには、乳ガン、前立腺ガン、膀胱ガン、腎臓ガン及び結腸ガンが含まれる)を処置するのに有用である。
【0116】
本明細書中で引用されるすべての参考文献(雑誌の論文又は要約、公開又は非公開の米国特許出願又は外国特許出願、発行された米国特許又は外国特許、或いは任意の他の参考文献を含む)は、引用された参考文献に示されるすべてのデータ、表、図及び本文を含めて、全体が参考として本明細書中に組み込まれる。加えて、本明細書中で引用される参考文献において引用される参考文献の全内容もまた、全体が参考として組み込まれる。
【0117】
知られている方法工程、従来の方法工程、知られている方法又は従来の方法に対する参照は、本発明の任意の局面、記載又は実施形態が関連技術分野おいて開示、教示又は示唆されることを決して承認するものではない。
【0118】
具体的な実施形態の前記記載は本発明の一般的な特質を十分に明らかにするものであるので、他の実施形態では、この技術分野の技能における知識(本明細書中で引用される参考文献の内容を含む)を適用することによって、過度な実験を行うことなく、また、本発明の一般的な概念から逸脱することなく、そのような具体的な実施形態を様々な適用のために容易に改変及び/又は適合化することができる。したがって、そのような適合化及び改変は、本明細書中に示される教示及び指針に基づいて、開示された実施形態の様々な均等物の意味に含まれることが意図される。本明細書中における表現法又は用語法は、本明細書の用語法又は表現表が、当業者の知識との組合せで、本明細書中に示される教示及び指針に照らして当業者によって解釈され得るように、記述のためであって、限定のためでないことを理解しなければならない。
【実施例】
【0119】
下記の略号はそれぞれ下記の定義を示す:
cm(センチメートル)、mg(ミリグラム)、μg(マイクログラム)、min(分)、mM(ミリモル濃度)、mL(ミリリットル)、nm(ナノメートル)、BHT(ブチル化ヒドロキシトルエン)、CD(円二色性)、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、HPBCD(ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン)、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)、IFN(インターフェロン)、IM(筋肉内)、OD(光学濃度)、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)、PEG(ポリエチレングリコール)、RMBCD(ランダム置換されたメチル−β−シクロデキストリン)、SC(皮下)、TFA(トリフルオロ酢酸)、TRIS(2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール)、UV(紫外)、WFI(注射用水)。
【0120】
方法
比濁法測定
タンパク質の凝集を、UV可視分光光度計システム(Perkin Elmer Lambda40)を使用して360nmにおいて30分間モニターした。
【0121】
予備研究により、タンパク質が適切な凝集挙動を示す操作条件を確立した。すなわち、ポリプロピレンバイアルにおける、PBSでの30mg/mLのPEG10,000の溶液(0.2μmφでろ過)による1:2でのインターフェロンβ−1aバルクの希釈、その後、T=62±2℃での10分間の恒温水浴におけるインキュベーション。
【0122】
加熱及びPEGを、タンパク質会合プロセスを熱変性及び排除体積効果によりそれぞれ高めるために使用した。UV可視分析を、3mLのサンプル体積を含有するセルにおいて行った(最終的なインターフェロンβ−1aの濃度=0.116mg/mL)。
【0123】
それぞれの濁度分析を少なくとも三連で繰り返し、光学濃度(OD)360nm対時間の平均曲線を報告する。タンパク質単独の凝集を種々の濃度での賦形剤の存在下におけるインターフェロンβ−1aと比較した。
【0124】
円二色性測定
CD測定を、ペルチェ温度コントローラーを備えたJasco J810分光旋光計を用いて行った。サンプルを栓付きの1cm石英セルに含有し、熱走査のために、磁石による撹拌速度は約150rpmであった。
【0125】
遠UVスペクトル(260〜185nm)のために、約44μg/mlのタンパク質濃度、0.2nmの分解能、及び、2秒の応答時間を伴う2nm/分の走査速度、並びに3回の積算を用いた。
【0126】
インターフェロンβ−1aの二次構造の熱的摂動をモニターするために、温度の関数としての222nmにおけるCDシグナルを、1℃/分の温度上昇速度及び60秒の遅延時間を使用して0.2℃の間隔で25℃〜85℃の間で追跡した。
【0127】
それぞれの測定を、コントロールとしてのインターフェロンβ−1aバルクに対して、また、種々の濃度の賦形剤を含有するインターフェロンβ−1a溶液に対して少なくとも三連で行った。
【0128】
サイズ排除クロマトグラフィー(Sec)分析
安定性研究の所定の時点での液体インターフェロンβ−1a製剤を、インターフェロンβ−1aの純度及びアッセイ(回収%として表される)を明らかにするためにSE−HPLCによって分析した。
【0129】
使用した操作条件は下記の通りであった:
・クロマトグラフィーカラム:TSK G2000SWXL(7.8mmIDx30cm、5μ、125Å);
・注入体積:100μL;
・カラム温度:室温;
・サンプル温度:室温;
・流速:0.5mL/分;
・移動相:70%(v/v)精製水(MILLIQ−Millipore)−30%(v/v)アセトニトリル−0.2%(v/v)TFA;
・処理時間:27分;
・平衡時間:3分;
・波長:214nm;
・校正曲線を、25μgから100μgまでの範囲で、インターフェロンβ−1aアッセイを定量するために用いた。
【0130】
材料
・インターフェロンβ−1aバルク(Serono S.A.、バッチ:G4D024)
・PEG10000(ポリエチレングリコール)
・Lutrol F68(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体)
・L−メチオニン
・D−マンニトール
・L−アスコルビン酸
・リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4±0.1)(組成:KH2PO4、0.19g/L;Na2HPO4・12H2O、2.38g/L;NaCl、8g/L)
・ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン
【0131】
装置
・TSKカラムG2000を備えたHPLCシステム(Waters及びPE)
・UV可視分光光度計システム(Perkin Elmer Lambda40)
・ペルチェ温度コントローラーを備えたJasco J810分光旋光計
・浸透圧計(OSMOMAT 030D、Gonotech)
・pH−電導度計MPC227−Mettler Toledo
・分析天秤AG245及びAG285(Mettler Toledo)
・校正済みのピペット(Gilson)
・磁石式撹拌装置ホットプレート(Stuart Scientific)
・超音波浴、Falc
・温度計
【0132】
結果及び考察
比濁法アッセイ
濁度法によって検出される、HPBCD、マンニトール及びL−メチオニンのインターフェロンβ−1a凝集に対する影響を下記に報告する。アスコルビン酸ナトリウムの塩もまた、凝集増強作用を有する賦形剤の例として含められる。
【0133】
図1は、下記の種々の濃度のHPBCDの存在下におけるインターフェロンβ−1aの凝集速度論を示す:1.19mg/mL(インターフェロンβ−1aのモル量に対して150倍モル過剰)、3.97mg/mL(500倍モル過剰)、5.56mg/mL(700倍モル過剰)、及び、7.94mg/mL(1000倍モル過剰)。調べられた濃度範囲において、この賦形剤はインターフェロンβ−1aの脱安定化を完全には回避しないこと、及び、中間のモル比率が最も良い阻害効果を示すことを認めることができる。
【0134】
700倍モル過剰を、インターフェロンβ−1a製剤の調製及びさらなる物理化学的特長づけ(例えば、円二色性)のための基準濃度として選んだ。シクロデキストリンの濃度は、濃度が、調製で使用されたインターフェロンβ−1aの量に依存して変化し、且つそれに従って計算され得るので、インターフェロンβ−1aに対するモル比(倍モル過剰)としてより良好には表される。
【0135】
その後、インターフェロンβ−1aの凝集に対するマンニトールの影響をモニターしたが、図2に示されるように、著しい影響が、使用した条件(PEG/PBSでの62℃)のもとでの40,000倍モル過剰(これは37.35mg/mLに対応する)でさえ、見出されなかった。
【0136】
しかし、マンニトールを、非経口投与のために必要な等張性に達するためにインターフェロンβ−1a液体製剤に加えた。
【0137】
最後に、L−メチオニンを比濁法実験で調べた。図3は、種々の濃度のL−メチオニンの存在下でのインターフェロンβ−1aの凝集速度論を示す(0.116mg/mL、PEG/PBS中、62±2℃で10分間のインキュベーションの後)。
【0138】
L−メチオニンは、タンパク質凝集に対して、HPBCDよりも小さい阻害効果を有することを認めることができる。調べられた最大濃度でさえ、L−メチオニンはインターフェロンβ−1aの脱安定化を完全には回避せず、曲線は、インターフェロンβ−1aコントロールと類似する「プラトー状態」に達している。
【0139】
図4には、インターフェロンβ−1a単独、並びに400倍モル過剰のメチオニン(0.308mg/mL)及び/又は700倍モル過剰のHPBCD(5.56mg/mL)の存在下でのインターフェロンβ−1aの凝集速度論が報告される。
【0140】
この実験は、これら2つの賦形剤のインターフェロンに対する相乗作用を最終的には評価するために行われた。メチオニンが、シクロデキストリンの活性に加えて、タンパク質凝集に対する保護作用を全く発揮しないことが明らかである。
【0141】
上記検討の後、HPBCDが、凝集に対するインターフェロンβ−1aの安定化において大きな役割を果たしていることが確認され、タンパク質とシクロデキストリンとの間での相互作用を円二色性によってさらに調べた。
【0142】
図5におけるタンパク質凝集に対する「負の作用」を有する賦形剤の例として、種々の濃度のアスコルビン酸塩の存在下でのインターフェロンβ−1aの濁度速度論が報告される。
【0143】
62±2℃での10分間のインキュベーションの後におけるPEG/PBS中でのインターフェロンβ−1a(0.116mg/mL;5.16μM)の凝集に対する、50倍モル過剰(0.045mg/mL)、150倍モル過剰(0.136mg/mL)、500倍モル過剰(0.453mg/mL)及び10,000倍モル過剰(9.07mg/mL)のL−アスコルビン酸塩の影響を図5に示す。
【0144】
タンパク質凝集に対する影響が濃度依存的な様式で変化することを認めることは興味深いことである。高濃度では、負荷電が脱安定化作用を示すようであり、一方で、より低いモル比では、この賦形剤は阻害的影響を有するようである。
【0145】
しかし、タンパク質凝集を妨げると考えられる濃度(0.453mg/mL、これは、500に等しい賦形剤/インターフェロンβ−1aモル比に対応する)を特定することが可能であった。
【0146】
その後、アスコルビン酸塩を、その酸化防止作用を特異的な抗凝集作用と組み合わせる目的により、インターフェロンβ−1a製剤のための可能な賦形剤として選んだ。
【0147】
円二色性
図6には、25℃〜85℃の間での熱誘導によるアンフォールディング、及び、インターフェロンβ−1aバルクサンプル(約44μg/mL)の遠UVスペクトルが報告される。推定されるTm値が64.97±0.31℃であり、一方、スペクトル解析では、変性前及び変性後のα−らせん含有量における顕著な違い(例えば、それぞれ48.0%対41.2%など)が示されることを認めることができる。
【0148】
比較として、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを含有する類似したサンプルを、インターフェロンβ−1aのモル量に対して700倍のモル過剰(これは、タンパク質凝集が比濁法実験において部分的に阻害される濃度である)において円二色性によって分析した。図7には、熱変性曲線が、約44μg/mLのインターフェロンβ−1a及び2.11mg/mLのHPBCD(700倍モル過剰)を含有する溶液について報告される。推定される融解温度値は65.46±0.50℃であり、これは、同じ操作条件でのタンパク質単独に関する値(64.97℃)と一致していた(図5を参照のこと)。
【0149】
タンパク質の融解温度は、試験された添加剤の存在下では一定しているが、熱的アンフォールディングの可逆性は非常に異なっている。HPBCDの存在下では、変性前の状況と、変性後の状況との間でのインターフェロンβ−1aのα−らせんの差が明らかにより小さいこと(約4%の差、対して、タンパク質単独については約7%)を認めることができる。このことは、シクロデキストリンがインターフェロンβ−1aの不可逆的反応(例えば、アンフォールディング後の熱誘導による凝集など)を妨げているかもしれないか、又はタンパク質のリフォールディングを助けているかもしれないことを示唆している。アンフォールディングを可逆的にする配合組成物を見出すことは、実際、長期間の安定性(貯蔵寿命)のためには、融解温度を上昇させることよりも重要であり得るので、これらの観測結果は非常に興味深いものである(Arakawa他、Adv.Drug.Deliv.Rev.、46(1−3):307〜326(2001)もまた参照のこと)。
【0150】
インターフェロンβ−1aとアスコルビン酸ナトリウム塩との相互作用をより良く特徴づけるために、CD分析を、500倍モル過剰のアスコルビン酸塩を含有するインターフェロンβ−1aサンプルについて行った。実際、速度論的濁度研究では、アスコルビン酸塩−インターフェロンβ−1a溶液は、500に等しいモル比では、タンパク質凝集を全く示さなかったことが明らかにされた。
【0151】
図8には、インターフェロンβ−1a(約44μg/mL)単独、及び、500倍モル過剰のアスコルビン酸塩(0.194mg/mL)の存在下でのインターフェロンβ−1a(約44μg/mL)のCDシグナル(222nm)に対する温度の影響が示される。アスコルビン酸塩を含有するサンプルの場合、Tm値を推定するために実験曲線を近似することができなかった。このことは、タンパク質に対するこの賦形剤の変性作用を示唆している。
【0152】
実際、融解転移の前後における上記サンプルの二次構造の比較により、融解前の状況において既に存在するα−らせんの非常に低い残留が確認された:例えば、35.0(同じ条件でのインターフェロンβ−1aバルクの48.0に対して)。インターフェロンβ−1aの二次構造は、融解転移後、アスコルビン酸塩の存在によってさらに一層変化し、28.8%に低下した(図9を参照のこと)。
【0153】
この結果は、比濁法で示された保護的作用とは対照的であり、アスコルビン酸塩が、タンパク質を時間とともに脱安定化させ得るインターフェロンβ−1aの立体配座的変化を誘導しているかもしれないことを示唆している。この理由のために、アスコルビン酸ナトリウムを含有する液体製剤を調製し、25℃での安定性を保ち、所定の時点でSE−HPLCによって分析した。
【0154】
安定性研究
上記結果の後、表1及び表2に示される組成を有する2つのインターフェロンβ−1a液体製剤を調製し、FORM1の場合には25℃及び50℃で、FORM2の場合には25℃で一定時間保った。
【0155】
コントロールとして、インターフェロンβ−1aバルク(同じ組成で酢酸塩緩衝液において50mM)もまた調べた。
【0156】
【表6】
【0157】
【表7】
【0158】
安定性研究からのサンプルを、方法の節で記載されたようにSE−HPLCによって分析した。結果を、表3(FORM1)、表4(FORM2)及び表5(インターフェロンβ−1aバルク/コントロール)に報告する。
【0159】
【表8】
【0160】
【表9】
【0161】
【表10】
【0162】
表3における結果から、HPBCDを含有するインターフェロンβ−1a液体製剤が25℃及び50℃で1ヶ月にわたって安定であることを明らかに認めることができる。凝集レベルは非常に低く、モノマー含有量は50℃で1週間後でさえ90%を超えている。加えて、質量回収は90%を超えている。このことはまた、不溶性凝集物の形成がシクロデキストリンの存在によって最小限に抑えられていることを示している。
【0163】
比較において、インターフェロンβ−1aバルク単独は、両方の検討された温度(表5を参照のこと)で凝集する傾向を有する:50℃では、1週間後、モノマー含有量は83%に低下し、同時に、質量回収は約73%でしかなかった。
【0164】
後者の結果は、インターフェロンβ−1aの凝集及び立体配座的安定性に対するHPBCDの有益な効果を示唆する比濁法及び円二色性の測定と一致している。
【0165】
最後に、FORM2(これはアスコルビン酸塩を含む)に関連する表4に示される結果は、この製剤が25℃において安定でないことを示している。ダイマー及び凝集物の著しい増大、並びに質量回収の並行した低下が25℃で1ヶ月後に記録された。さらに、不明のピークがクロマトグラムに現れ、このことは、CDの結果によってもまた示唆されるように、おそらくは変化した立体配座が存在することを示唆している。このことが、アスコルビン酸塩を含有する製剤の安定性がより高い温度(例えば、50℃)では発揮されなかった理由であった。
【0166】
後者の場合、比濁法分析により得られたこの最初の有望な結果を、タンパク質の立体配座的安定性に対する既知の賦形剤の影響をモニターすることができる円二色性などの代わりの方法を用いて確認することが重要であった。
【0167】
より高いpHでの比濁法アッセイ
液体製剤のより広いpH範囲(すなわち、約3.0〜約4.0のpH)におけるHPBCDのインターフェロンβ−1a凝集に対する影響を調べた。
【0168】
この方法は、本質的には、以前に記載された比濁法アッセイであった。すなわち、インターフェロンβ−1aバルクを、PBSにおける30mg/mLのPEG10,000の溶液(0.2μmφでろ過され、少量の1N NaOHを加えることによって適正に塩基性にされたもの)により1:2で希釈し、その後、T=62±2℃で10分間、恒温水浴においてインキュベーションした。タンパク質凝集を、UV可視分光光度計システム(Perkin Elmer Lambda40)を使用して360nmにおいて30分間モニターした。それぞれの濁度分析を二連で繰り返した。光学濃度(OD)360nm対時間の平均曲線を報告する。タンパク質単独の凝集をシクロデキストリンの存在下でのインターフェロンβ−1aと比較した。
【0169】
PBSによる1:1での50mM酢酸塩緩衝液(すなわち、IFNバルクの媒体)の希釈は4.4の最終溶液pHをもたらす。したがって、この目的は、より高い最終pHについてタンパク質凝集を調べることであった。
【0170】
図10は、700倍モル過剰のHPBCD(5.56mg/mL)の非存在下及び存在下でのインターフェロンβ−1aの凝集速度論を示す(この場合、分析された溶液のpHは室温で4.7に等しい)。
【0171】
pHの増大はIFNの凝集の程度を高めるが、シクロデキストリンの存在はタンパク質の脱安定化を依然として部分的に阻害することを認めることができる。この実験について計算された相対的なパーセントOD(すなわち、賦形剤の存在下及び非存在下での30分後のOD360nmのパーセント比率)は66%であり、より低いpHでの通常的な操作条件で観測された値(52.7%)と大きく異なっていない。
【0172】
研究を、図11に示されるように、より高いpH(すなわち、5.1)に拡大した。IFNの凝集に対する、700倍モル過剰のHPBCD(5.56mg/mL)及び500倍モル過剰のRMBCD(3.38mg/mL)の影響を調べた。pHの増大に起因したより顕著なタンパク質の脱安定化、及び、速度論的傾向がほぼ完全に存在しないこと(すなわち、分析開始時におけるプラトー領域)を認めることができる。注目される発見は、IFNの凝集がシクロデキストリンの存在によって依然として部分的に阻害され、相対的なパーセントODがHPBCDの場合における69.7%に等しいことである(この場合、利点をメチル誘導体の使用によって何ら認めることができない)。
【0173】
第3のpH値を調べた。図12は、pH5.7でのPEG/PBSにおけるIFNの凝集速度論、及び、700倍モル過剰のHPBCDの添加の影響を示す。この賦形剤はタンパク質の脱安定化を回避しないが、IFNのコントロールに対して、その程度を著しく低下させる(62.5%の相対的なパーセントOD)。
【0174】
上記の検討は、安定化賦形剤としてのHPBCDの使用が、タンパク質バルクよりも高いpH(すなわち、pH3.8±0.5)での液体製剤に拡大され得ることを示している。
【0175】
結論
・いくつかのインターフェロンβ−1a液体製剤を調製し、室温(25℃)及び加速条件(50℃)での安定性を保った。
・最も安定な製剤は、L−メチオニン、HPBCD及びマンニトールを含有する。SE−HPLCの結果は、モノマー含有量が50℃で1週間後又は25℃で1ヶ月後において90%を超えていることを示している。
・HPBCDの好ましい結果が予測され、インターフェロンβ−1a凝集に対するこの賦形剤(及び、部分的には同様に、L−メチオニン)の濃度依存的な阻害作用を示した比濁法測定によって確認された。さらに、CD分析は、HP−β−シクロデキストリンの存在下では、融解転移後におけるインターフェロンβ−1aのα−らせんの喪失が明らかに小さいことを示した。
・インターフェロンβ−1aバルクは、同じ貯蔵条件で保たれたとき、異なる安定性プロフィルを示す。モノマー含有量が50℃で1ヶ月後において83%に低下した。
注目すべきことに、25℃では、1ヶ月後におけるモノマー含有量は依然として97%に等しく、これは驚くほど高い。この結果は、バルクがpH3.8での酢酸塩緩衝液を含有するという事実によって説明することができる。この条件は、それ自体が、インターフェロンβ−1aに対するある程度の安定化作用を有する。
・安定性研究における明らかな負の結果が、アスコルビン酸塩を含有する製剤に関して見出された。SECにより、25℃で1ヶ月後において(60%への)顕著なモノマー喪失が示される。同時に、インターフェロンβ−1aの立体配座に対する負の影響もまたCD分析によって示された。
【0176】
薬学的製造
1M水酸化ナトリウム溶液の調製
1M水酸化ナトリウムの溶液をWFIにおいて調製した。
【0177】
0.05M酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.8)(100mL)の調製
80mLのMilliQ水を含有するメスフラスコにおいて、0.286mLの酢酸(氷酢酸)を加え、振とう後、0.500mLの1M NaOHを加え、水を100mLまで加える:pH=3.8±0.05。
【0178】
賦形剤溶液の調製
酢酸塩緩衝液におけるHPBCD及びL−メチオニンの高濃度(10倍)溶液をポリプロピレン製メスフラスコにおいて調製する。
【0179】
ポリプロピレン製フラスコにおいて、5gのマンニトールを含有する適量の50mM酢酸塩緩衝液を加える。溶液を、3回ひっくり返すことによって均一にする。
【0180】
薬物溶液の配合
必要量B(g)のインターフェロンβ−1a薬物を必要量の賦形剤溶液V(g)に加え、穏やかに撹拌して均一にする。
【0181】
シリンジの充填
1mlのガラス製シリンジに0.5mlの最終溶液を無菌的に充填することができる。
【0182】
参考文献
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】下記の種々の濃度のHPBCDの存在下での、62±2℃で10分間のインキュベーションの後におけるPEG/PBS中でのインターフェロンβ−1a(0.116mg/mL;5.16μM)の凝集速度論を示す図である:1.19mg/mL(インターフェロンβ−1aのモル量に対して150倍モル過剰)、3.97mg/mL(インターフェロンβ−1aのモル量に対して500倍モル過剰)、5.56mg/mL(インターフェロンβ−1aのモル量に対して700倍モル過剰)、及び、7.94mg/mL(インターフェロンβ−1aのモル量に対して1000倍モル過剰)。Y軸には、比濁法に正比例する360nmで測定された光学濃度が報告される(Cancellieri他、BIOPOLYMERS、VOL.13、735〜743、1974)。
【図2】PBS/PEG10000における(62±3℃で10分間のインキュベーションの後での)0.116mg/mL(5.1μM)のインターフェロンβ−1aの凝集に対する10,000倍モル過剰、20,000倍モル過剰及び40,000倍モル過剰のマンニトールの影響を示す図である。
【図3】下記の種々の濃度のL−メチオニンの存在下におけるインターフェロンβ−1aの凝集速度論を示す図である:0.077mg/mL(インターフェロンβ−1aのモル量に対して100倍モル過剰)、0.158mg/mL(インターフェロンβ−1aのモル量に対して205倍モル過剰)、0.308mg/mL(インターフェロンβ−1aのモル量に対して400倍モル過剰)、0.769mg/mL(インターフェロンβ−1aのモル量に対して1000倍モル過剰)、及び、7.69mg/mL(インターフェロンβ−1aのモル量に対して10000倍モル過剰)。
【図4】インターフェロンβ−1a単独、並びにインターフェロンβ−1aのモル量に対して400倍モル過剰のメチオニン(0.308mg/mL)及び/又はインターフェロンβ−1aのモル量に対して700倍モル過剰のHPBCD(5.56mg/mL)の存在下でのインターフェロンβ−1aの凝集速度論を示す図である。
【図5】62±2℃で10分間のインキュベーションの後におけるPEG/PBS中でのインターフェロンβ−1a(0.116mg/mL;5.16μM)の凝集に対する、インターフェロンβ−1aのモル量に対して50倍モル過剰のL−アスコルビン酸塩(0.045mg/mL)、インターフェロンβ−1aのモル量に対して150倍モル過剰のL−アスコルビン酸塩(0.136mg/mL)、インターフェロンβ−1aのモル量に対して500倍モル過剰のL−アスコルビン酸塩(0.453mg/mL)、及び、インターフェロンβ−1aのモル量に対して10000倍モル過剰のL−アスコルビン酸塩(9.07mg/mL)の影響を示す図である。
【図6】インターフェロンβ−1aバルク(約44μg/mL)の熱変性(すなわち、222nmにおけるCDシグナルに対する温度の影響)を図の上側に、融解転移の前(実線)及び融解転移の後(破線)での相対的なCDスペクトルを図の下側に示す図である。以降、それぞれのCDNN(円二色性ニューラルネットワーク)解析(4回の分析の平均)を報告する。注:融解転移曲線又は熱変性は222nmにおけるCDシグナルに対する温度の影響を表す。すべてのCDグラフはY軸にモル楕円率をdegM−1cm−1(Y軸)として有する。表において、200nm〜260nmの範囲におけるαらせんの残留が、融解前/融解後のCDNN解析(4回の分析の平均)におけるIFNの立体配座的安定性の比較のために検討されている。
【図7】インターフェロンβ−1a(約44μg/mL)及びHPBCD(2.11mg/mL)(インターフェロンβ−1aのモル量に対して700倍モル過剰)を含有する溶液についての熱変性曲線、すなわちモル楕円率(degM−1cm−1)として表される222nmにおけるCDシグナルに対する温度の影響を、タンパク質単独(破線)と比較して図の上側(実線)に、融解転移の前(実線)及び融解転移の後(破線)での相対的なCDスペクトルを図の下側に示す図である。以降、それぞれのCDNN(円二色性ニューラルネットワーク)解析(4回の分析の平均)を報告する。
【図8】インターフェロンβ−1a単独(破線の曲線)、及び、インターフェロンβ−1aのモル量に対して500倍モル過剰のL−アスコルビン酸Naの存在下でのインターフェロンβ−1a(実線の曲線)の熱変性を示す図である。
【図9】融解転移の前(実線の曲線)及び融解転移の後(破線の曲線)でのCDスペクトル[インターフェロンβ−1a/アスコルビン酸塩、500倍]及びそれぞれのCDNN解析(上記参照)を示す図である。
【図10】62±2℃で10分間のインキュベーションの後におけるPEG/PBS(最終pH=4.7)中でのインターフェロンβ−1a(0.116mg/mL;5.16μM)の凝集速度論、及び、700倍モル過剰のHPBCD(5.56mg/mL)の影響を示す図である。Y軸には、比濁法に正比例する360nmで測定された光学濃度が報告される。
【図11】62±2℃で10分間のインキュベーションの後におけるPEG/PBS(最終pH=5.1)中でのインターフェロンβ−1a(0.116mg/mL;5.16μM)の凝集速度論、並びに700倍モル過剰のHPBCD(5.56mg/mL)及び500倍モル過剰のRMBCD(3.38mg/mL)の影響を示す図である。
【図12】62±2℃で10分間のインキュベーションの後におけるPEG/PBS(最終pH=5.7)中でのインターフェロンβ−1a(0.116mg/mL;5.16μM)の凝集速度論、及び、700倍モル過剰のHPBCD(5.56mg/mL)の影響を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩衝剤、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、等張性剤及び酸化防止剤を含む溶液である、インターフェロン(IFN)、或いはそのイソ型、ムテイン、融合タンパク質、機能的誘導体、活性な分画物、又は塩を含む安定化された液体医薬組成物。
【請求項2】
前記インターフェロンがIFN−βである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記IFN−βが組換えヒトIFN−βである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記緩衝剤が、約3〜約6である指定されたpHの±0.5単位の範囲内で組成物のpHを維持するために十分な量で存在する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記pHが3.8である、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記緩衝剤が約5mM〜500mMの濃度で存在する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記緩衝剤が約50mMの濃度で存在する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記緩衝剤が酢酸塩緩衝剤である、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記等張性剤がマンニトールである、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記等張性剤が約0.5mg/ml〜約500mg/mlの濃度で存在する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記等張性剤が約50mg/mlの濃度で存在する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記酸化防止剤がメチオニンである、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
前記酸化防止剤が約0.01mg/ml〜約5mg/mlの濃度で存在する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
前記酸化防止剤が約0.1mg/mlの濃度で存在する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
前記インターフェロンが約10μg/ml〜約800μg/mlの濃度で存在する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
前記シクロデキストリンが500倍モル過剰から700倍モル過剰までの対インターフェロンモル比で存在する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
前記インターフェロンが、約44μg/ml、88μg/ml又は276μg/mlの濃度で存在する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
水溶液である前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
静菌剤をさらに含む前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
前記静菌剤がベンジルアルコールである、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】
前記静菌剤が約0.1%〜約2%の濃度で存在する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項22】
前記静菌剤が約0.2%又は0.3%の濃度で存在する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項23】
前記等張性剤がマンニトールであり、前記酸化防止剤がメチオニンであり、前記インターフェロンがインターフェロン−βである、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項24】
下記の液体製剤:
【表1】
である、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項25】
計算量の2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、酸化防止剤及び等張性剤を緩衝化された溶液に加えること、及び次いで、インターフェロン(IFN)、或いはそのイソ型、ムテイン、融合タンパク質、機能的誘導体、活性な分画物、又は塩を加えることを含む、請求項1から24までのいずれかに記載の安定化された液体医薬組成物を調製するための方法。
【請求項26】
請求項1から24までのいずれかに記載の液体医薬組成物を含む、使用前の貯蔵のために無菌且つ適切な状態で密封された容器。
【請求項27】
単回投薬投与のための事前に充填されたシリンジである、請求項26に記載の容器。
【請求項28】
バイアルである請求項26に記載の容器。
【請求項29】
自己注射器用のカートリッジである請求項26に記載の容器。
【請求項30】
単回投薬投与又は多回投薬投与のためのものである請求項26から29までのいずれかに記載の容器。
【請求項31】
請求項1から24までのいずれかに記載の医薬組成物により充填された第1の容器と、静菌剤の溶液の充填された第2のカートリッジとを含む、請求項26から29までのいずれかに記載の医薬組成物を多回投薬投与するためのキット。
【請求項1】
緩衝剤、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、等張性剤及び酸化防止剤を含む溶液である、インターフェロン(IFN)、或いはそのイソ型、ムテイン、融合タンパク質、機能的誘導体、活性な分画物、又は塩を含む安定化された液体医薬組成物。
【請求項2】
前記インターフェロンがIFN−βである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記IFN−βが組換えヒトIFN−βである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記緩衝剤が、約3〜約6である指定されたpHの±0.5単位の範囲内で組成物のpHを維持するために十分な量で存在する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記pHが3.8である、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記緩衝剤が約5mM〜500mMの濃度で存在する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記緩衝剤が約50mMの濃度で存在する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記緩衝剤が酢酸塩緩衝剤である、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記等張性剤がマンニトールである、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記等張性剤が約0.5mg/ml〜約500mg/mlの濃度で存在する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記等張性剤が約50mg/mlの濃度で存在する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記酸化防止剤がメチオニンである、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
前記酸化防止剤が約0.01mg/ml〜約5mg/mlの濃度で存在する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
前記酸化防止剤が約0.1mg/mlの濃度で存在する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
前記インターフェロンが約10μg/ml〜約800μg/mlの濃度で存在する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
前記シクロデキストリンが500倍モル過剰から700倍モル過剰までの対インターフェロンモル比で存在する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
前記インターフェロンが、約44μg/ml、88μg/ml又は276μg/mlの濃度で存在する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
水溶液である前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
静菌剤をさらに含む前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
前記静菌剤がベンジルアルコールである、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】
前記静菌剤が約0.1%〜約2%の濃度で存在する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項22】
前記静菌剤が約0.2%又は0.3%の濃度で存在する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項23】
前記等張性剤がマンニトールであり、前記酸化防止剤がメチオニンであり、前記インターフェロンがインターフェロン−βである、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項24】
下記の液体製剤:
【表1】
である、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項25】
計算量の2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、酸化防止剤及び等張性剤を緩衝化された溶液に加えること、及び次いで、インターフェロン(IFN)、或いはそのイソ型、ムテイン、融合タンパク質、機能的誘導体、活性な分画物、又は塩を加えることを含む、請求項1から24までのいずれかに記載の安定化された液体医薬組成物を調製するための方法。
【請求項26】
請求項1から24までのいずれかに記載の液体医薬組成物を含む、使用前の貯蔵のために無菌且つ適切な状態で密封された容器。
【請求項27】
単回投薬投与のための事前に充填されたシリンジである、請求項26に記載の容器。
【請求項28】
バイアルである請求項26に記載の容器。
【請求項29】
自己注射器用のカートリッジである請求項26に記載の容器。
【請求項30】
単回投薬投与又は多回投薬投与のためのものである請求項26から29までのいずれかに記載の容器。
【請求項31】
請求項1から24までのいずれかに記載の医薬組成物により充填された第1の容器と、静菌剤の溶液の充填された第2のカートリッジとを含む、請求項26から29までのいずれかに記載の医薬組成物を多回投薬投与するためのキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2007−513925(P2007−513925A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543556(P2006−543556)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【国際出願番号】PCT/EP2004/053407
【国際公開番号】WO2005/058346
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(506197853)アレス トレーディング エス.エー. (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【国際出願番号】PCT/EP2004/053407
【国際公開番号】WO2005/058346
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(506197853)アレス トレーディング エス.エー. (3)
【Fターム(参考)】
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