説明

安定化エマルジョン

飲料エマルジョンの調製のための新規な油相が、飲料エマルジョン、完成飲料及びそれらの調製方法と共に開示されている。サトウダイコンペクチンを乳化剤として使用する場合、安定性のあるエマルジョンを達成するために密度及び粘度が重要である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料エマルジョン中に使用するための油相、このような油性成分を含む飲料エマルジョン、このようなエマルジョンを含む飲料、及びこのような成分及びエマルジョンの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料エマルジョンは、よく知られた部類の食品材料である。それらは、その中で不連続油相が微小液滴の形態で分散した連続水相からなる。したがって、それらは水中油型(O/W)エマルジョンとして特徴付けられる。典型的には、不透明な又は濁った外観を有している。
【0003】
飲料エマルジョンを含む飲料は、食品材料の中で人気のカテゴリーである。その通常では濁った外観によって、消費者は天然果汁の外観と関連付ける。さらに、油相は、フレーバー油などのそうでなければ飲料中で不混和性であろう1種又は複数の親油性成分を含み得る。
【0004】
このような飲料エマルジョンに対する調製のための必要条件は非常に厳しい。それらは、広範囲の温度及び保存条件に亘って、濃縮物及び希釈された(すなわち最終)飲料の両方として安定性がなくてはならない一方で、飲料に配合し組み込むのにまた容易でなくてはならない。
【0005】
飲料エマルジョンは、本質的には熱力学的に不安定であり、保存によって分解する傾向がある。飲料エマルジョン劣化の最も一般的な現れは、「リング発生」及び「沈降」である。リング発生は容器のネック部に白っぽいリングが形成されることであり、一方沈降は底に材料が沈殿することである。
【0006】
飲料エマルジョンの安定性を制御する試みにおいて、主に2つのアプローチが用いられてきた。
i 油相と水相との密度の差異の最小化
ii 分散(すなわち油)相の液滴径の縮小
【0007】
水相と油相との密度の差異の最小化は、増量剤の利用によって行われる。このような増量剤は通常、油相の密度を増加させる役割を果たす親油性成分である。以前は、臭素化植物油が、広く用いられた増量剤であった。しかし、この添加物は、いくつかの国では食品材料への使用が認められていない。今日、より一般に用いられる増量剤には、SAIB(イソ酪酸酢酸スクロース)及びエステルガム(ウッドロジンのグリセロールエステル)が挙げられる。通常、油相の密度は、SAIB又はSAIBとエステルガムとの混合物によって0.96〜0.99に、或いはエステルガムによって0.93〜0.95に調節される。
【0008】
液滴径は、エマルジョンを得るのに用いる方法と、使用する乳化剤の性質の組合せとによって通常制御される。150〜300バールの均質化圧力が、エマルジョンの安定性に関して良好な結果をもたらすことが見出されてきた。
【0009】
アラビアゴムは、飲料エマルジョンの中で一般に好まれる乳化剤である。しかし、アラビアゴムは、アフリカの乾燥地帯に最も適した低木であるアラビアゴムノキから生じる天然に滲出したゴムである。したがって、その供給性及び価格は、世界におけるこの地帯の政治及び気候条件の変動の影響を受けやすい。
【0010】
アラビアゴムの様々な可能性のある代替物、特に変性デンプンが提案されてきた。しかし、特に比較的大量の乳化剤が必要とされる場合は、飲料製品のフレーバー及び口あたりに悪影響を与える可能性がある。より高い濃度で飲料製品に含まれる場合は、ある乳化剤は飲料エマルジョンをさらに不安定にする可能性がある。さらに、多くの炭水化物ガムは比較的高価である。
【0011】
サトウダイコンペクチンが、飲料エマルジョン中のアラビアゴムの代替物として可能性があることがこれまでに確認されている。サトウダイコンペクチンは、サトウダイコンパルプから得られ、経済的に魅力的な価格で入手可能である。天然の材料であり、したがって消費者及び監督機関により広く受け入れられ、配合された飲料に不快なフレーバー又は望ましくない口あたりの特質を与えない。
【0012】
従来技術
US5,008,254は、使用済みサトウダイコンパルプの高温の制御された加水分解水抽出から生じるペクチン、及び食料品中の機能性成分としてのその使用を開示している。このように調製されたペクチンは、水中の柑橘油エマルジョンの安定化において優れた特性を有すると述べられている。臭素化植物油で1.046の密度に調節したカリフォルニア産オレンジ油を、水相及びサトウダイコンペクチン乳化剤と共に含む、フレーバー油エマルジョンが開示されている。
【0013】
このようにして得たエマルジョンは、乳化剤としてアラビアゴムを使用したエマルジョンと同程度の安定性であるが、3カ月の保存後は、ある程度の重力沈降が観察される可能性がある。
【0014】
DE4313549には、そうでなければ慣例の段階であるアルコール沈殿を省略する、サトウダイコンからペクチン抽出物を得る方法が開示されている。得られたペクチンは、食品エマルジョンの安定化のために特に適切である。
【0015】
US6,663,717B2には、サトウダイコンパルプからのペクチン及びペクチン糖類/オリゴマー類の同時の精製及び分離の方法が開示されている。得られたペクチンは、乳化剤として有用であると述べられている。
【0016】
Application note 0002082-02(Copenhagen Pectin A/S, a division of Hercules Incorporated)には、i)エステルガム8BGで増量し、0.93の密度にブレンドされたオレンジ油からなる油相、ii)水、及びiii)GENUペクチンタイプBETAを含む、飲料エマルジョンが開示されている。エステルガムは、オストワルド熟成として知られている不安定現象を遅らせると述べられている。
【0017】
Publication FAO 5.13.09-02"Flavour Oil Emulsion with XPQ-EMP 3"(Degussa Texturant Systems)には、飲料エマルジョンの調製におけるサトウダイコンペクチンの使用が開示されている。このエマルジョンにおける油相は、オレンジ油を増量剤と共に含む。
【0018】
Publication "GENU pectin type BETA for flavour oil emulsions"(CPK Kelco, Denmark, 1999)には、フレーバー油エマルジョン中に使用される乳化剤としてのGENUペクチンタイプBETA(サトウダイコンペクチン)が開示されている。クリーム分離の問題を避けるために、Hercules社製エステルガム8BGが油相増量剤として推奨されている。
【0019】
Conference paper "Lecture of the Master Class on Emulsion Technology" held at FI Food Ingredients Europe, 3-5 November 1998, Frankfurt, Germany (Herbstreith & Fox)には、サトウダイコンペクチンを乳化剤として用いた水中油型エマルジョンが開示されている。油相は、エステルガムで0.968g/mlの密度に増量した柑橘油を含む。この論文の結論は、サトウダイコンペクチンが大量の油を含むエマルジョンには適切ではないということである。
【0020】
J. Agric. Food Chem. 2005, 53, 3592-3597には、サトウダイコンペクチン及びその画分の乳化特性が開示されている。エステルガム及びオレンジ油が、1:1の比で混合されている。10%エステルガム/オレンジ油混合物及び0.5〜5%サトウダイコンペクチンを使用して、水中油型エマルジョンを調製する。
【0021】
GB1118019には、得られる混合物の比重を上げるために増量剤としてスクロースエステルのみを使用して、水中で精油を乳化する方法が開示されている。
【0022】
US6086938には、水相が食用果物の粉砕し脱脂した種の抽出物を含む、清涼飲料のためのエマルジョン濃縮物の調製方法が開示されている。イソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)及びエステルガムが、可能性のある増量剤として提案されている。エステルガム及びリモネンが、1:1の比で混合されている。
【0023】
EP0501094には、油相の密度がダンマル樹脂の添加によって増加し、水相の粘度がペクチンなどの増粘剤の添加によって増加する、精油をベースとした液体濃縮物の製造方法が開示されている。
【0024】
US2004/0062845には、飲料エマルジョン中に使用するための安定剤が開示されており、この安定剤は、変性デンプン及びアルギン酸プロピレングリコールを含む組成物である。増量剤としてフレーバー油及びエステルガムの混合物が開示されている。
【0025】
WO03/096824は、乳製品エマルジョン(水中のバターオイル)の安定化に関する。エマルジョンは、高メトキシペクチン及びホエイタンパク質の添加によって安定化する。水相中に使用されるホエイタンパク質及び高メトキシペクチンの特定の組合せによって、エマルジョンの分散相中に含有される親油性物質の有利な乳化及び安定化がもたらされる。ホエイタンパク質及び高メトキシペクチンの特定の組合せはまた、エマルジョンの粘度増加も抑える。
【0026】
WO2005/048744は、改良された取扱適性を有する、飲料産業において有用なイソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)配合物に関する。具体的には、イソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)配合物は固体である。エステルガムは、その密度がイソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)又は臭素化植物油の密度未満であり、過剰のエステルガムは最終飲料の味に影響し得るため、増量剤として使用する場合に問題があると記載されている。
【0027】
EP1151677には、水相及び分散油相を含有する飲料エマルジョンが開示されている。イソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)、エステルガム及びダンマルガムを含めた、いくつかの可能性のある増量剤が開示されている。
【0028】
Int. Food Ingredients, (1995), No.1, 47-49には、濁った柑橘類飲料の安定性を向上させるためのイソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)の特別グレードの使用が開示されている。
【0029】
Int. Food Marketing and Technology, 2000, (June), 14(3), 6-8には、フレーバー油の比重を増加するために使用される可能性のある増量剤が開示されている。このような増量剤には、イソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)、臭素化植物油及びエステルガムが挙げられる。臭素化植物油及びエステルガムの問題が明らかにされている。
【0030】
本発明の発明者らは、従来技術の組成物を評価し、ほとんどの場合濃縮された配合物は、ある程度安定性のある飲料エマルジョンをもたらすが、完成飲料が調製されたときに、瓶詰工場における条件を模倣した条件下で製造した場合はいつでも、顕著な白っぽいリングがネック部に48時間以内に観察されることが多いことを確認した。
【特許文献1】US5,008,254
【特許文献2】DE4313549
【特許文献3】US6,663,717B2
【特許文献4】GB1118019
【特許文献5】US6086938
【特許文献6】EP0501094
【特許文献7】US2004/0062845
【特許文献8】WO03/096824
【特許文献9】WO2005/048744
【特許文献10】EP1151677
【非特許文献1】Application note 0002082-02(Copenhagen Pectin A/S,a division of Hercules Incorporated)
【非特許文献2】Publication FAO 5.13.09-02"Flavour Oil Emulsion with XPQ-EMP 3"(Degussa Texturant Systems)
【非特許文献3】Publication "GENU pectin type BETA for flavour oil emulsions"(CPK Kelco, Denmark, 1999)
【非特許文献4】Conference paper "Lecture of the Master Class on Emulsion Technology" held at FI Food Ingredients Europe, 3-5 November 1998, Frankfurt, Germany (Herbstreith & Fox)
【非特許文献5】J. Agric. Food Chem. 2005, 53, 3592-3597
【非特許文献6】Int. Food Ingredients, (1995), No.1, 47-49
【非特許文献7】Int. Food Marketing and Technology, 2000, (June), 14(3), 6-8
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
従来技術で解決されていない問題は、飲料エマルジョン及び完成飲料の両方として保存したときに相分離を減少させる乳化剤としてサトウダイコンペクチンを用いた、飲料エマルジョンを提供することである。
【0032】
従来技術で解決されていないさらなる問題は、ゲル化及び/又は微生物汚染なしに周囲温度又は周囲温度未満(すなわち20℃未満)で保存することができる乳化剤としてサトウダイコンペクチンを用いた、飲料エマルジョンを提供することである。
【0033】
従来技術で解決されていないさらなる問題は、製造の間に薄片が沈殿しない、飲料エマルジョンの調製のためのシロップを提供することである。
【0034】
従来技術で解決されていないさらなる問題は、飲料シロップへの添加によって薄片形成の減少を示す飲料エマルジョンを提供することである。
【0035】
従来技術で解決されていないさらなる問題は、完成飲料において安定性のある許容できるレベルの濁り度を実現した飲料エマルジョンを提供することである。
【0036】
従来技術で解決されていないさらなる問題は、瓶詰工場での現在の加工条件と適合する飲料エマルジョンを提供することである。
【0037】
本発明は、従来技術と関連する問題の1つ又は複数に取り組む。
【課題を解決するための手段】
【0038】
第1の態様によると、安定性のある飲料エマルジョンの調製のための油相を提供し、前記油相は、20℃で0.99〜1.05gcm−3の密度及び10〜1500cPの粘度を有する。
【0039】
第2の態様によると、
i 本発明の油相と、
ii 水相と、
iii ペクチンと
を含む飲料エマルジョンを提供する。
【0040】
第3の態様によると、本発明の飲料エマルジョンを含む完成飲料を提供する。
【0041】
第4の態様によると、
油相及び水相の成分を混合し、混合物を形成するステップと、
前記混合物を均質化させるステップと
を含む、本発明の飲料エマルジョンの調製方法を提供する。
【0042】
第5の態様によると、本発明の油相と、水相とを含む飲料エマルジョン中の乳化剤としてのサトウダイコンペクチンの使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本発明は、ペクチンを乳化剤として用いる安定性のある水中油型エマルジョンを提供する。本発明の驚くべき知見は、濃縮物及び完成(すなわち希釈)飲料の両方として長期保存に対して安定性のある水中油型エマルジョンを得るために、ペクチンを乳化剤として利用する一方で、アラビアゴム又は変性デンプンなどの他の乳化剤と共に首尾よく用いられ得る油相と比較して、密度及び粘度に関して異なる特性を有する油相を用いることが必要であるということである。
【0044】
具体的には、油相の粘度を制御することが重要であることが見出された。粘度が特定の範囲内でないと、効率的な均質化を達成することができない。
【0045】
同時に、油相の密度を制御することが重要であることが見出された。この点において、アラビアゴム又は変性デンプンなどが安定剤として作用する飲料エマルジョン中で首尾よく用いられた従来技術の油相は、サトウダイコンペクチンを乳化剤として使用する本発明の組成物において満足のいく結果をもたらさない。
【0046】
油相
本明細書で使用する場合、「油相」という用語は、水中油型エマルジョンの油性成分として存在する場合に、水相と実質的に不混和性である組成物を意味する。
【0047】
油相は、配合された飲料エマルジョンに望ましい濁り又は不透明度を与える役割を果たす。エマルジョン中に1種又は複数の水不溶性フレーバー成分を保持する役目も果たす(油相がこのようなエマルジョン中に存在する場合)。
【0048】
好ましくは、油相は、フレーバー油、増量剤、不透明化剤、抗酸化剤、及び色素を含む群の1種又は複数を含む。
【0049】
フレーバー油
「フレーバー油」という用語は、本明細書で使用する場合、それを含有する油相にフレーバー又は芳香又は両方を与える役目を果たす、任意の水不混和性液体を意味する。
【0050】
適切なフレーバーには、グアバ、キウイ、モモ、マンゴー、パパイヤ、パイナップル、バナナ、イチゴ、ラズベリー、ブルーベリー、オレンジ、グレープフルーツ、タンジェリン、レモン、ライム、レモンライムなどの果物フレーバー;コーラフレーバー;ティーフレーバー;コーヒーフレーバー;チョコレートフレーバー;乳製品フレーバー;サリチル酸メチル(冬緑油、レンタカンバ油)などのルートビール及びバーチビールフレーバーが挙げられる。柑橘類フレーバーの飲料製品において、フレーバー油は、バランスのよいフレーバーが生じるように通常異なるタイプの数種類の柑橘油を含有する。柑橘油は、90重量%超のモノテルペン及びより少量のセスキテルペンを含有し得る。両方とも、油の特徴的な芳香及びフレーバープロファイルに関与している、含酸素テルペノイド、特にアルコール、アルデヒド、ケトン、酸、及びエステルの担体である。
【0051】
増量剤
「増量剤」という用語は、本明細書で使用する場合、20℃で1.00gcm−3超の密度を有する、上記で説明したような油相中で可溶性又は混和性の水不混和性成分を意味する。
【0052】
本発明の油相の密度を調節するための増量剤の例には、エステルガム、ダンマルガム、臭素化植物油(BVO)及びイソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)が挙げられる。本発明の油相は、1種又は複数の増量剤を含み得る。
【0053】
エステルガムは、ペールウッドロジンの食品用のグリセロールによるエステル化によって生成される。マツの含油樹脂に見出される固形の樹脂性物質であるウッドロジンは、約90重量%の樹脂酸、主としてアビエチン酸及びピメリン酸と、約10重量%の非酸性中性成分とを含有する。エステルガムは、ウッドロジンのグリセロールによるエステル化によって生成され、モノ−、ジ−、及びトリグリセリドの混合物が生成される。減圧蒸留及び蒸気スパージングによって過剰なグリセリンを除去した後、ウッドロジンは通常25℃で約1.08の比重を有する。現在、エステルガムは、米国及びいくつかの他の国で食品添加物として認められている。
【0054】
ダンマルガムは、マレーシア、インドネシア、及び東インド諸島に固有のダンマル属、特にジャケツイバラ科及びフタバガキ科の低木からの水不溶性の天然滲出液の群を意味する。これは、精油中で非常に可溶性であり、濁ったエマルジョン中の増量剤として通常使用される。ダンマルガムは、20℃で約1.04〜1.08の比重を通常有する。
【0055】
臭素化植物油(BVO)は、元素の臭素と反応した不飽和植物油を意味する。臭素化植物油は、20℃で1.23〜1.33の比重を通常有する。
【0056】
イソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)は、スクロース1モル当たり約2モルの酢酸エステル及び6モルの酪酸エステルを含有するスクロースエステルの混合物、主として6,6’−ジアセチル−2,3,4,1’,3’,4’−ヘキサイソブチリルスクロースである。これは、スクロースの無水酢酸によるエステル化によって生成される。イソ酪酸酢酸スクロースは、20℃で約1.146の比重の、無味無臭無色の粘稠液体である。
【0057】
好ましくは、本発明の油相は、少なくともSAIBを含む。さらに好ましくは、油相は、少なくともSAIB及び他の増量剤を含む。さらに好ましくは、油相は、少なくともSAIB及びエステルガムを含む。
【0058】
極めて好ましい実施形態では、本発明の油相は、SAIB及びエステルガムを増量剤として含む。この実施形態では、存在するエステルガムの量は、油相の重量に基づいて50%w/w未満であることが好ましい。さらに好ましくは、存在するエステルガムの量は、油相の重量に基づいて45%w/w未満である。さらに好ましくは、存在するエステルガムの量は、油相の重量に基づいて40%w/w未満である。さらに好ましくは、存在するエステルガムの量は、油相の重量に基づいて35%w/w未満である。
【0059】
好ましくは、存在するエステルガムの量は、油相の重量に基づいて少なくとも10%w/wである。さらに好ましくは、存在するエステルガムの量は、油相の重量に基づいて少なくとも15%w/wである。さらに好ましくは、存在するエステルガムの量は、油相の重量に基づいて少なくとも20%w/wである。
【0060】
好ましくは、エステルガムの量は、上記で言及した好ましい範囲のいずれかの間の範囲内である。さらに好ましくは、エステルガムは、油相の重量に基づいて20〜50%w/wの量で存在する。さらに好ましくは、エステルガムは、油相の重量に基づいて20〜40%w/wの量で存在する。さらに好ましくは、エステルガムは、油相の重量に基づいて20〜35%w/wの量で存在する。
【0061】
好ましくは、油相中のSAIB:エステルガムの重量比は、10:1〜1:1(すなわち、SAIB10部:エステルガム1部〜SAIB1部:エステルガム1部である)。さらに好ましくは、油相中のSAIB:エステルガムの重量比は、10:1〜2:1である。さらに好ましくは、油相中のSAIB:エステルガムの重量比は、6:1〜2:1である。
【0062】
好ましくは、臭素化植物油は、油相の重量に基づいて20%w/w未満の量で存在する。さらに好ましくは、臭素化植物油は、油相の重量に基づいて10%w/w未満の量で存在する。さらに好ましくは、臭素化植物油は、油相の重量に基づいて5%w/w未満の量で存在する。さらに好ましくは、臭素化植物油は、油相の重量に基づいて1%w/w未満の量で存在する。最も好ましくは、油相は、実質的に臭素化植物油を含まない。
【0063】
不透明化剤
「不透明化剤」という用語は、本明細書で使用する場合、前記油相を含むエマルジョンの「濁り度」又は混濁度を増加させる役割を果たす、上記で定義したような油相中で可溶性又は混和性の水不混和性成分を意味する。
【0064】
好ましい不透明化剤には、植物油(アブラナ、ピーナッツ、トウモロコシ、アマニ、ダイズ、ヒマワリ、綿実、並びにそれらの組合せ及びブレンドなど)、部分硬化及び硬化植物油、及びエステル化エポキシド延長ポリオール(EEEP)などの油代替品が挙げられる。
【0065】
抗酸化剤
「抗酸化剤」という用語は、この状況において使用する場合、上記で定義したような油相中で可溶性又は混和性の水不混和性成分を意味し、前記油相の酸化及び/又は酸敗化を防止する役目を果たす。
【0066】
好ましい抗酸化剤は、トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)及びブチルヒドロキシトルエン(BHT)である。
【0067】
他の成分
当業者であれば理解するであろうが、油相には、水相と不混和性ではあるが、前記油相中では混和性又は可溶性であり、油相、前記油相を含む飲料エマルジョン、又は本発明の完成飲料に望ましい機能的特性を与える役割を果たす1種又は複数の他の成分が含まれてもよい。
【0068】
他の成分には、色素、保存料及びビタミンが挙げられる。
【0069】
粘度
「粘度」という用語は、本明細書で使用する場合、ずり応力下での流体の変形に対する抵抗の程度を意味する。粘度は、回転式粘度計によって測定される。用いる粘度計は、下記のプロトコル1によってViscometer Model LVF(Brookfield社製、USA)である。測定は、20℃で行われる。
【0070】
疑義を避けるため、「油相の粘度」という用語は、単独での油相の粘度を意味する(すなわち、エマルジョン中にある場合の粘度ではない)。
【0071】
好ましくは、油相の粘度は、少なくとも20cpである。さらに好ましくは、油相の粘度は、少なくとも30cpである。さらに好ましくは、油相の粘度は、少なくとも40cpである。さらに好ましくは、油相の粘度は、少なくとも45cpである。さらに好ましくは、油相の粘度は、少なくとも50cpである。さらに好ましくは、油相の粘度は、少なくとも55cpである。さらに好ましくは、油相の粘度は、少なくとも60cpである。
【0072】
好ましくは、油相の粘度は、1400cp未満である。さらに好ましくは、油相の粘度は、1350cp未満である。さらに好ましくは、油相の粘度は、1300cp未満である。さらに好ましくは、油相の粘度は、1250cp未満である。さらに好ましくは、油相の粘度は、1200cp未満である。さらに好ましくは、油相の粘度は、1150cp未満である。さらに好ましくは、油相の粘度は、1100cp未満である。さらに好ましくは、油相の粘度は、1050cp未満である。さらに好ましくは、油相の粘度は、1000cp未満である。
【0073】
好ましくは、粘度は、上記で言及した好ましい範囲のいずれかの間の範囲内である。さらに好ましくは、油相の粘度は、50〜1500cpである。さらに好ましくは、油相の粘度は、30〜1000cpである。さらに好ましくは、油相の粘度は、50〜1000cpである。
【0074】
密度
「密度」という用語は、本明細書で使用する場合、特定の組成物の単位体積当たりの質量を意味する。密度は、下記のプロトコル2に従ってデンシトメーター(Density Meter DMA 38、Anton Paar社製)によって測定する。測定は20℃で行う。全体を通して(別段の指定がない限り)、密度はgcm−3で表す。
【0075】
疑義を避けるため、「油相の密度」という用語は、単独での油相の密度を意味する(すなわち、エマルジョン中に存在する場合の密度ではない)。
【0076】
好ましくは、油相の密度は、少なくとも1.00gcm−3である。さらに好ましくは、油相の密度は、少なくとも1.01gcm−3である。さらに好ましくは、油相の密度は、少なくとも1.02gcm−3である。さらに好ましくは、油相の密度は、少なくとも1.05gcm−3である。
【0077】
好ましくは、油相の密度は、1.045gcm−3未満である。さらに好ましくは、油相の密度は、1.04gcm−3未満である。さらに好ましくは、油相の密度は、1.035gcm−3未満である。さらに好ましくは、油相の密度は、1.03gcm−3未満である。さらに好ましくは、油相の密度は、1.025gcm−3未満である。さらに好ましくは、油相の密度は、1.02gcm−3未満である。
【0078】
好ましくは、密度は、上記で言及した好ましい範囲のいずれかの間の範囲内である。さらに好ましくは、密度は0.99〜1.04gcm−3である。さらに好ましくは、密度は1.00〜1.05gcm−3である。さらに好ましくは、密度は1.00〜1.04gcm−3である。さらに好ましくは、密度は0.99〜1.02gcm−3である。さらに好ましくは、密度は1.00〜1.02gcm−3である。
【0079】
当業者であれば、本発明の油相などの多成分系において、成分の性質に基づいて粘度及び密度を予測することが常に可能とは限らないことを理解するであろう。ある程度の通常の試行錯誤が必要であろう。粘度及び密度の決定のための詳細な手順を、実施例1及び2に各々示す。
【0080】
当業者であれば、上記で論じた特性は単離した油相の特性に関するが、実際は単離した油相を調製することは不必要であり又は望ましくない場合があり、このような油相を含むエマルジョンを調製することがより便利であり得ることをさらに理解するであろう。
【0081】
飲料エマルジョン
さらなる本発明の実施形態によると、上記のような本発明の油相は、水相及びペクチンと混合され、飲料エマルジョンをもたらす。
【0082】
「エマルジョン」という用語は、本明細書で使用する場合、2種類の不混和性(ブレンドが可能でない)物質の混合物を意味する。1種類の物質(分散相)が、他の物質(連続相)中に分散している。
【0083】
好ましくは、水相が連続相であり、油相が分散相である。すなわち、エマルジョンは、水中油型エマルジョンである、
【0084】
水相
本明細書で使用する場合、「水相」という用語は、本発明の飲料エマルジョンの連続成分として存在する場合は、実質的に油相と不混和性である、水をベースとした組成物を意味する。
【0085】
水相は、飲料エマルジョンの製造には通例の1種又は複数の成分を含み得る。好ましくは、水相は、下記の1種又は複数を含む。
糖類、低カロリー甘味料、及び低カロリー甘味料などの甘味料、
スクロースを含めた糖類、
アセスルファムK、アリテーム、アスパルテーム、シクラマート、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、タガトース、ネオテーム、サッカリン、ステビオサイド、及びスクラロースを含めた低カロリー甘味料、
エリトリトール、加水分解水添デンプン及びマルチトールシロップ、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール及びマンニトール、キシリトール、結晶フルクトース、高フルクトースコーンシロップ、イソマルツロース、トレハロース、フラクトオリゴ糖及びポリデキストロース(Litesse(登録商標)など)を含めた低カロリー甘味料、
水溶性フレーバー料、
水溶性着色料、
カフェイン、
クエン酸、リンゴ酸及びリン酸を含めた酸、並びに食品として許容されるそれらの塩、
ソルビン酸、安息香酸を含めた水溶性保存料、並びに食品として許容されるそれらの塩、特にナトリウム塩及びカリウム塩
アラビアゴム、変性デンプン、キサンタンガム、レシチン及び他の多糖類を含めたさらなる乳化剤。
【0086】
好ましくは、水相はクエン酸を含む。さらに好ましくは、水相は、エマルジョンの重量に基づいて0.1%w/w〜0.5%w/wの量のクエン酸を含む。
【0087】
好ましくは、水相は安息香酸ナトリウムを含む。さらに好ましくは、水相は、エマルジョンの重量に基づいて0.05%w/w〜0.1%w/wの量の安息香酸ナトリウムを含む。
【0088】
別の好ましい実施形態では、水相は、エマルジョンの重量に基づいて0.05%w/w〜0.18%w/wの合わせた量の安息香酸ナトリウム及びソルビン酸カリウムの両方を含む。
【0089】
好ましくは、水相のpHは1〜7である。さらに好ましくは、水相のpHは2.5〜4である。さらに好ましくは、水相のpHは3.2〜3.8である。
【0090】
好ましくは、水相は、飲料エマルジョンの量に基づいて70〜96%w/wの量で存在する。さらに好ましくは、水相は、飲料エマルジョンの量に基づいて80〜93%w/wの量で存在する。さらに好ましくは、水相は、飲料エマルジョンの量に基づいて85〜92%w/wの量で存在する。さらに好ましくは、水相は、飲料エマルジョンの量に基づいて86〜90%w/wの量で存在する。
【0091】
好ましくは、油相は、飲料エマルジョンの量に基づいて4〜30%w/wの量で存在する。さらに好ましくは、油相は、飲料エマルジョンの量に基づいて7〜20%w/wの量で存在する。さらに好ましくは、油相は、飲料エマルジョンの量に基づいて8〜15%w/wの量で存在する。さらに好ましくは、油相は、飲料エマルジョンの量に基づいて10〜14%w/wの量で存在する。
【0092】
ペクチン
本発明のエマルジョンの水相は、少なくとも1種類のペクチンを含む。「ペクチン」という用語は、本明細書で使用する場合、別段の指定がない限り、1種類の特定の由来又は複数の由来のペクチンを意味し得る。
【0093】
ペクチンは、植物細胞壁中にプロトペクチンの形態で通常見出される、高分子量の高分子炭水化物である構造多糖類である。ペクチンは、EU番号E440及び米国FDA参照番号184.1588を有する(GRAS)。ペクチン分子は通常、150,000までの分子量、800単位までの重合度を有する。細胞壁の構造を形成しているのはプロトペクチン及びセルロースであるため、ペクチンは植物細胞に重要な影響を有する。
【0094】
ペクチンの骨格は、少数の1,2結合したα−L−ラムノース単位によって中断されるα−1−4結合したガラクツロン酸残基を含む。さらに、ペクチンはほとんど交互になっているラムノ−ガラクツロナン鎖と共に高度に分岐した領域を含む。これらの高度に分枝した領域はまた、ラムノース単位のC3又はC4原子、或いはガラクツロン酸単位のC2又はC3原子へのグリコシド結合によって結合されている他の糖単位(D−ガラクトース、L−アラビノース及びキシロースなど)を含む。α−1−4結合したガラクツロン酸残基の長鎖は、通常「平滑」領域と称されるが、一方高度に分枝した領域は、通常「毛状領域」と称される。
【0095】
好ましくは、本発明のエマルジョンに使用されるペクチンは、50〜85%のガラクツロン酸含量を有する。さらに好ましくは、ペクチンは、65〜80%のガラクツロン酸含量を有する。
【0096】
市販のペクチンは通常、柑橘類果実(レモン、ライム、オレンジ及びグレープフルーツ)の皮、又はリンゴ酒の絞りかすから得られ、これらは全てゲル生成の目的のために良質なペクチンを出す。
【0097】
サトウダイコンペクチンは、糖抽出の後でサトウダイコンパルプから抽出される。これは、柑橘類又は他のペクチンと比較した場合ゲル化性に関して劣ると一般に考えられている。
【0098】
様々な化学的又は酵素的に改質されたペクチンもまた、「ペクチン」という用語の範囲内であることが意図されている。例えば、ペクチンは、高エステルペクチンでもよい。「高エステルペクチン」は、エステル化度すなわちDEが50%以上であるペクチンを意味する。高エステルペクチンはまた、「HEペクチン」としても知られている。
【0099】
或いは、ペクチンは低エステルペクチンでもよい。「低エステルペクチン」は、エステル化度すなわちDEが50%未満であるペクチンを意味する。低エステルペクチンはまた、「LEペクチン」としても知られている。
【0100】
好ましくは、組成物のペクチンは、55〜60%のエステル化度(DE)を有する。
【0101】
好ましくは、組成物のペクチンは、5〜50%のアセチル化度を有する。さらに好ましくは、組成物のペクチンは、10〜50%のアセチル化度を有する。さらに好ましくは、組成物のペクチンは、10〜40%のアセチル化度を有する。最も好ましくは、アセチル化度は、15〜35%である。
【0102】
好ましくは、ペクチンは、少なくともサトウダイコンペクチンを含む。さらに好ましくは、ペクチンは、本質的にサトウダイコンペクチンからなる。よりさらに好ましくは、ペクチンは、単一の乳化剤として本質的にサトウダイコンペクチンからなる。
【0103】
好ましくは、ペクチンの平均分子量は、10kDa超である。さらに好ましくは、ペクチンの平均分子量は、15kDa超である。よりさらに好ましくは、ペクチンの平均分子量は、20kDa超である。よりさらに好ましくは、ペクチンの平均分子量は、25kDa超である。よりさらに好ましくは、ペクチンの平均分子量は、30kDa超である。よりさらに好ましくは、ペクチンの平均分子量は、35kDa超である。よりさらに好ましくは、ペクチンの平均分子量は、40kDa超である。最も好ましくは、ペクチンの平均分子量は、45kDa超である。
【0104】
好ましくは、ペクチンの平均分子量は、100kDa未満である。さらに好ましくは、ペクチンの平均分子量は、90kDa未満である。よりさらに好ましくは、ペクチンの平均分子量は、80kDa未満である。よりさらに好ましくは、ペクチンの平均分子量は、70kDa未満である。最も好ましくは、ペクチンの平均分子量は、65kDa未満である。
【0105】
好ましくは、ペクチンの平均分子量は、上記で言及した好ましい範囲のいずれかの間の範囲内である。さらに好ましくは、ペクチンの平均分子量は、15〜100kDaの範囲内である。よりさらに好ましくは、ペクチンの平均分子量は、30〜100kDaの範囲内である。よりさらに好ましくは、ペクチンの平均分子量は、15〜70kDaの範囲内である。よりさらに好ましくは、ペクチンの平均分子量は、10〜60kDaの範囲内である。よりさらに好ましくは、ペクチンの平均分子量は、15〜100kDaの範囲内である。よりさらに好ましくは、ペクチンの平均分子量は、30〜70kDaの範囲内である。よりさらに好ましくは、ペクチンの平均分子量は、45〜70kDaである。よりさらに好ましくは、平均分子量は、30〜65kDaである。最も好ましくは、平均分子量は、45〜65kDaである。
【0106】
好ましくは、飲料エマルジョンは、エマルジョンの全重量に基づいて0.1〜5.0%w/wのペクチンを含む。さらに好ましくは、飲料エマルジョンは、エマルジョンの全重量に基づいて0.1〜2.5%w/wのペクチンを含む。さらに好ましくは、飲料エマルジョンは、エマルジョンの全重量に基づいて0.5〜2.5%w/wのペクチンを含む。さらに好ましくは、飲料エマルジョンは、エマルジョンの全重量に基づいて1.2〜2.5%w/wのペクチンを含む。最も好ましくは、飲料エマルジョンは、エマルジョンの全重量に基づいて1.2〜1.9%w/wのペクチンを含む。
【0107】
安定性
好ましくは、本発明の飲料エマルジョンは、貯蔵に際し安定性がある。この文脈で「安定性がある」とは、貯蔵したエマルジョンが、Tan and Holmes, "Stability of beverage flavour emulsions", Perfumer and Flavourist 1988, 13, 23-41に記載された「リング発生試験」を通ることを意味する(プロトコル3を参照されたい)。
【0108】
飲料エマルジョンの調製
本発明の飲料エマルジョンは、
i 油相と水相とを混合するステップと、
ii 混合物を均一化するステップと
を含む、2つのステップ法で適切に調製される。
【0109】
油相及び水相を混合するステップは、いくつかの方法のうちの任意の1つによって達成され得る。例えば、油相を水相に加え得る。或いは、水相を油相に加え得る。しかし、混合する前に油相又は水相を調製する必要はなく、別の方法では、水相の成分及び油相の成分を任意の便利な順番で共に加え得る。
【0110】
しかし、本発明の好ましい一実施形態では、油相及び水相は、混合する前に別々に調製される。
【0111】
均質化は、本明細書で使用する場合、水相及び油相を、連続水相中における油相の粒子が安定性のあるエマルジョンに変換する方法を意味する。
【0112】
好ましくは、均質化方法は、2つのステップ、すなわち予備均質化及び最終均質化として行われる。好ましくは、最終均質化は、予備均質化の後に行われる。
【0113】
予備均質化は、油相中で粒子が5〜20μm、さらに好ましくは5〜10μmの粒径を得ることとなる工程ステップである。
【0114】
予備均質化は、当業者に公知の種々の方法によって行い得る。予備均質化を行うための適切な方法には、高速ミキサー、hydroshearミキサー、ホモミキサー、又は0〜50バールの圧力での単一通過式均質化の使用が挙げられる。
【0115】
最終均質化は、油相中で粒子が0.3〜2.0μm、好ましくは0.5〜1.0μmの粒径を得ることとなる工程ステップである。
【0116】
最終均質化は、当業者に公知の種々の方法によって行い得る。好ましくは、上記の予備均質化の結果として得たエマルジョンは、150〜300バールの圧力で、さらに好ましくは200〜250バールの圧力でホモジナイザーを通過する。好ましくは、前記エマルジョンは、ホモジナイザーを2回以上通過する。さらに好ましくは、前記エマルジョンは、ホモジナイザーを2回又は3回通過する。最も好ましくは、前記エマルジョンは、ホモジナイザーを2回通過する。
【0117】
完成飲料
本発明の飲料エマルジョンは、水及び当技術分野で通例の1種又は複数の成分と混合して、消費に適した形態の飲料を得てもよい(「完成飲料」)。
【0118】
好ましくは、完成飲料は、完成飲料の重量に基づいて0.01〜1.00%w/wの本発明の飲料エマルジョンを含む。さらに好ましくは、完成飲料は、完成飲料の重量に基づいて0.02〜0.40%w/wの本発明の飲料エマルジョンを含む。さらに好ましくは、完成飲料は、完成飲料の重量に基づいて0.10〜0.40%w/wの本発明の飲料エマルジョンを含む。さらに好ましくは、完成飲料は、完成飲料の重量に基づいて0.10〜0.20%w/wの本発明の飲料エマルジョンを含む。
【0119】
完成飲料は、炭酸なしでもよい。或いは、完成飲料は、炭酸ガスで飽和されていてもよい。適切には、完成飲料は、0〜4.5%v/vの範囲で炭酸ガスで飽和されていてもよい。
【0120】
完成飲料は、アルコールを含有し得る。好ましくは、完成飲料は、完成飲料の容量に基づいて0.01〜15%v/vの量のアルコールを含有する。
【0121】
好ましくは、完成飲料は、0〜15°ブリックスである。
【0122】
好ましくは、完成飲料は、(飲料エマルジョン中にある成分に加えて)下記の1種又は複数を含み得る。
スクロースを含めた糖類、
アセスルファムK、アリテーム、アスパルテーム、シクラマート、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、タガトース、ネオテーム、サッカリン、ステビオサイド、及びスクラロースを含めた低カロリー甘味料、
エリトリトール、加水分解水添デンプン及びマルチトールシロップ、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール及びマンニトール、キシリトール、結晶フルクトース、高フルクトースコーンシロップ、イソマルツロース、トレハロース、フラクトオリゴ糖及びポリデキストロース(Litesse(登録商標)など)を含めた低カロリー甘味料、
水溶性フレーバー料、
水溶性着色料、
カフェイン、
グアバ、キウイ、モモ、マンゴー、パパイヤ、パイナップル、バナナ、イチゴ、ラズベリー、ブルーベリー、オレンジ、グレープフルーツ、タンジェリン、レモン、ライム、レモン−ライム及びリンゴを含めた果汁、
クエン酸、リンゴ酸及びリン酸を含めた酸、並びに食品として許容されるそれらの塩、
ソルビン酸、安息香酸を含めた水溶性保存料、並びに食品として許容されるそれらの塩、特にナトリウム塩及びカリウム塩、
アラビアゴム、変性デンプン、キサンタンガム、レシチン及び他の多糖類を含めたさらなる乳化剤。
【0123】
好ましくは、完成飲料はクエン酸を含む。さらに好ましくは、完成飲料は、クエン酸を完成飲料の重量に基づいて0.1%w/w〜0.5%w/wの量で含む。
【0124】
好ましくは、完成飲料は、安息香酸ナトリウムを含む。さらに好ましくは、完成飲料は、350ppmまでの量で安息香酸ナトリウムを含む。
【0125】
別の好ましい実施形態では、完成飲料は、350ppmまでの合わせた量で安息香酸ナトリウム及びソルビン酸カリウムの両方を含む。
【0126】
完成飲料は、ポストミックス又はプレミックス法によって適切に調製し得る。
【0127】
完成飲料は、配合後に、当技術分野において公知の方法を使用して適切に殺菌(pasteurize)し得る。例えば、完成飲料は、20〜30秒間85〜87℃で処理し得る。
【0128】
このように製造された完成飲料は、優れた安定したレベルの濁り度を示す。さらに、それらは、リング発生又は沈降なしに長期間安定性がある。
【0129】
本発明を、これから下記の実施例においてさらに詳細に説明する。
[実施例]
[実施例1]
【0130】
オレンジエマルジョンを、表1に示す成分配合を使用して調製する。
【0131】
【表1】

【0132】
成分を、表1に掲載した順番で共に混合し、続いて一段式ホモジナイザー(Rannie社製及びGaulin社製)を使用して2×250バールで均質化し、1マイクロメートル以下の平均粒径を有する飲料エマルジョンを生成する。
[実施例2]
【0133】
実施例1のオレンジエマルジョンを、表2の量及び順番でさらなる成分と混合し、シロップとし、これをさらに希釈して最終の炭酸飲料水とする。
【0134】
【表2】

[実施例3]
【0135】
実施例1に示した同じ水相及び調製方法を使用して、表3によって油相を含む組成物を調製した。次いで、完成飲料水を実施例2のように調製した。完成飲料水の貯蔵に際しての安定性を評価し、ネック部のリング又は沈降の外観を記録した。
【0136】
【表3】

【0137】
レモンエマルジョンを、表4の成分配合表を使用して調製する。
【0138】
【表4】

【0139】
成分を、表4に掲載した量及び順番で混合する。一段式ホモジナイザー(Rannie社製及びGaulin社製)を使用して2×250バールで混合物を均質化し、1マイクロメートル以下の平均粒径を有する飲料エマルジョンを生成する。
[実施例5]
【0140】
次いで、実施例4のレモンエマルジョンを、表5に記載した順番及び量でさらなる成分と混合し、シロップとし、これをさらに希釈して最終の炭酸飲料水とする。
【0141】
【表5】

[実施例6]
【0142】
油相V00〜V05を、表6によって調製した。これらを、サトウダイコンペクチンを含有する水相と共に配合し、下記の特性を有するエマルジョンを得た。
シロップ組成物
ブリックス:50.8°B
酸度:1.48%w/w
油相の密度:1.00gcm−3
サトウダイコンペクチンエマルジョンを、シロップ酸性化の後に加える。
【0143】
表6のデータは、薄片形成は、油ブレンド中のエステルガム(EG)含量を最適化することによって予防されることを示す。しかし、油ブレンド中のEGを削減することは、有意に混濁度の減少をもたらす。
【0144】
種々のエマルジョンの油ブレンド組成物
【0145】
【表6】

【0146】
プロトコル1
回転粘度測定法(Viscometer Model LVF、Brookfield社製、USA)によって、油相の粘度を測定する。試料を、自動温度調節した測定(20℃)室内に置いた。内筒を定トルク又は応力で駆動し、得られたひずみを内筒が回転する速度として測定した。この速度は、プレート間の流体の粘度により決まるので、所与のトルクでの回転が速くなるにつれ、分析対象の液体の粘度は低くなる。内筒の寸法パラメーターに従ってずり応力/ひずみの記録から粘度を計算した。LVスピンドル(LV2)を使用して20℃にて30RPMの速度で油相粘度を測定した。
【0147】
プロトコル2
油相の密度を、デンシトメーター(Density Meter DMA 38、Anton Paar(商標))によって測定する。分析する試料を、ガラス製U字管に注ぎ込み、これは交互の機械力を加えることによって正弦波状に振動する。流体の密度をU字管の共鳴振動数を測定することによって決定し、適切な数学方程式を使用してそれを密度と関連付ける。正確に知られている密度を有する2種類の流体によって、機器を較正する。
【0148】
プロトコル3
「リング発生試験」は、清涼飲料中の飲料フレーバーエマルジョンの安定性を評価するための最も一般的な方法である。これは、飲料エマルジョンを含有する清涼飲料のボトルを直立位置で4℃、20℃及び35℃+/−2にて保持する、少なくとも2カ月の期間中のリング発生又は沈降の可視化のための試験である。Tan and Holmes (1988): Stability of beverage flavour emulsions, Perfumer and Flavourist, 13: 23-41において記載されているようにリング発生試験を行う。
【0149】
上記の明細書に記載されている全ての公開資料は、参照により本明細書に組み込まれている。本発明の説明した方法及びシステムの様々な改変及び変形は、本発明の範囲と趣旨から逸脱することなしに、当業者であれば明らかであろう。本発明を特定の好ましい実施形態に関連して説明してきたが、特許請求された本発明は、このような特定の実施形態に過度に限定されないことを理解すべきである。実際に、化学又は関連分野における当業者にとっては明らかである本発明を実施するための記載した態様の様々な改変は、下記の特許請求の範囲内であることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
20℃で0.99〜1.05gcm−3の密度及び10〜1500cPの粘度を有する、安定性のある飲料エマルジョンの調製のための油相。
【請求項2】
20℃で1.00〜1.04gcm−3の密度を有する、請求項1に記載の油相。
【請求項3】
20℃で1.00〜1.02gcm−3の密度を有する、請求項1に記載の油相。
【請求項4】
20℃で50〜1000cPの粘度を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の油相。
【請求項5】
1種又は複数の増量剤を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の油相。
【請求項6】
増量剤が、イソ酪酸酢酸スクロースである、請求項5に記載の油相。
【請求項7】
増量剤が、エステルガムである、請求項5又は6に記載の油相。
【請求項8】
増量剤が、イソ酪酸酢酸スクロース及びエステルガムを含む、請求項5〜7のいずれかに記載の油相。
【請求項9】
エステルガムが、油相の重量に基づいて20〜50%w/wの量で存在する、請求項8に記載の油相。
【請求項10】
油相中のイソ酪酸酢酸スクロースとエステルガムとの重量比が、10:1〜1:1である、請求項8に記載の油相。
【請求項11】
柑橘油を含む、請求項1〜10のいずれかに記載の油相。
【請求項12】
フレーバー油を含む、請求項1〜11のいずれかに記載の油相。
【請求項13】
トリグリセリドを含む、請求項1〜12のいずれかに記載の油相。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の油相と、
水相と、
ペクチンと
を含む、飲料エマルジョン。
【請求項15】
エマルジョンの全重量に基づいて4〜30%w/wの油相を含む、請求項14に記載の飲料エマルジョン。
【請求項16】
エマルジョンの全重量に基づいて70〜96%w/wの水相を含む、請求項14又は15に記載の飲料エマルジョン。
【請求項17】
エマルジョンの全重量に基づいて0.5%〜2.5%w/wのペクチンを含む、請求項14〜16のいずれかに記載の飲料エマルジョン。
【請求項18】
甘味料、フレーバー料、着色料、カフェイン、酸、保存料、及び乳化剤の1種又は複数を含む、請求項14〜17のいずれかに記載の飲料エマルジョン。
【請求項19】
ペクチンが、少なくともサトウダイコンペクチンを含む、請求項14〜18のいずれかに記載の飲料エマルジョン。
【請求項20】
0.3〜2.0μmの平均粒径を有する油相の粒子を含む、請求項14〜19のいずれかに記載の飲料エマルジョン。
【請求項21】
請求項14〜20のいずれかに記載の飲料エマルジョンを含む、完成飲料。
【請求項22】
飲料エマルジョンが、飲料の全重量に基づいて0.01〜1.00%w/wの量で存在する、請求項21に記載の完成飲料。
【請求項23】
炭酸飲料である、請求項21又は22に記載の完成飲料。
【請求項24】
殺菌された、請求項21〜23のいずれかに記載の完成飲料。
【請求項25】
油相及び水相の成分を混合し、混合物を形成するステップと、
前記混合物を均一化するステップと
を含む、請求項14〜19のいずれかに記載の飲料エマルジョンの調製方法。
【請求項26】
油相を形成するステップと、
水相を形成するステップと、
前記油相と前記水相とを混合するステップと、
得られた混合物を均一化するステップと
を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
均質化が、
5〜20μmの油相平均粒径を付与するための予備均質化ステップと、
0.3〜2.0μmの油相平均粒径を付与するための最終均質化ステップと
を含む、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
最終均質化が、150〜300バールの圧力でホモジナイザーを通過させることによって行われる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
混合物をホモジナイザーに2回以上通過させる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
請求項1〜13のいずれかに記載の油相と、水相とを含む飲料エマルジョン中の乳化剤としての、サトウダイコンペクチンの使用。
【請求項31】
実施例と関連して実質的に本明細書に記載される油相。
【請求項32】
実施例と関連して実質的に本明細書に記載される飲料エマルジョン。
【請求項33】
実施例と関連して実質的に本明細書に記載される完成飲料。
【請求項34】
実施例と関連して実質的に本明細書に記載される方法。
【請求項35】
実施例と関連して実質的に本明細書に記載される使用。

【公表番号】特表2009−518027(P2009−518027A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543939(P2008−543939)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【国際出願番号】PCT/IB2006/004016
【国際公開番号】WO2007/066233
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(508156339)
【氏名又は名称原語表記】DANISCO SUGAR A/S
【Fターム(参考)】