説明

安定化コンタクトレンズ

安定化ゾーンを備えるコンタクトレンズが、ベジェ曲線などの数学的構造体を用いて設計され、これは眼上の性能のモデル化の対象となる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
特定の視覚欠陥の矯正は、円筒型、二焦点、若しくは多焦点の特性など、非球面矯正物の特質をコンタクトレンズの1つ又は2つ以上の面に応用することで達成することができる。これらのレンズが有効であるためには一般に、眼上にあるときに特定の向きで保持されなければならない。レンズの眼上での方向の維持は通常、レンズの機械的特性を変えることによって行われる。安定化アプローチの例としては、レンズの背面に対する前面の偏心化、下方レンズ周辺部の厚さの増大、レンズ表面上における俯角又は仰角の形成、及びレンズ縁部の切断を含む、プリズムの安定化が挙げられる。更に、薄いゾーン、又は、レンズ周辺部の厚さが減少する領域を使用することによってレンズを安定化させる動的安定化が用いられている。典型的に、この薄いゾーンは、眼上配置の有利な地点から、レンズの垂直軸又は水平軸に対して対称である2つの領域に配置される。
【0002】
レンズ設計の評価には、眼上のレンズの性能に関する判断を行うことと、必要に応じて可能な場合にその設計の最適化を行うことと、を伴う。このプロセスは典型的に、患者において試験的設計の臨床的評価を行うことによってなされる。しかしながらこのプロセスは、患者ひとりひとりの相違を考慮しなければならないため、かなり数多くの患者について試験を行う必要があり、時間がかかり、高価となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特定のコンタクトレンズの安定性の改善とその設計方法に対する継続的ニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、安定化ゾーンが数学的構造体により定義されている安定化コンタクトレンズの設計方法である。この構造体はベジェ曲線であり得る。
【0005】
本発明の一態様において、レンズは、偏角厚さプロファイルの上部分を記述するベジェ曲線の係数を用い、サグ値が負になるようにして設計される。安定化ゾーンがレンズ周縁部に追加されるとき、レンズの上部分の厚さは、増大されるのではなく低減される。安定化ゾーンの上部分の厚さを低減させることにより、最大厚さを低減させ、依然として同じ厚さ差異を維持することが可能になる。最大厚さ位置周囲の傾きは、このプロファイル変更によって過度の影響は受けない。
【0006】
本発明の別の一態様において、負のサグ値を含む領域が、安定化ゾーンの上部分及び下部分に適用される。
【0007】
更に本発明の別の一態様において、この安定化ゾーンの最大厚さは、左側と右側で異なる。
【0008】
更に本発明の別の一態様において、正及び/又は負の角度に向かう厚さプロファイルの傾斜面は、その傾斜面角度を増加又は低減させるよう調節することができる。
【0009】
更に本発明の別の一態様において、この設計方法に従って作製されたレンズは、改善された安定性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】安定化コンタクトレンズの前面又は対物像。
【図2A】レンズに対して作用する回転軸及びさまざまなトルクを識別する、レンズが装着された眼の概略図。
【図2B】レンズに対して作用する回転軸及びさまざまなトルクを識別する、レンズが装着された眼の概略図。
【図2C】レンズに対して作用する回転軸及びさまざまなトルクを識別する、レンズが装着された眼の概略図。
【図3A】実施例1のレンズ厚さマップ及び厚さプロファイルのグラフ。
【図3B】実施例1のレンズ厚さマップ及び厚さプロファイルのグラフ。
【図4A】実施例2のレンズ厚さマップ及び厚さプロファイルのグラフ。
【図4B】実施例2のレンズ厚さマップ及び厚さプロファイルのグラフ。
【図5A】実施例3のレンズ厚さマップ及び厚さプロファイルのグラフ。
【図5B】実施例3のレンズ厚さマップ及び厚さプロファイルのグラフ。
【図6A】実施例4のレンズ厚さマップ及び厚さプロファイルのグラフ。
【図6B】実施例4のレンズ厚さマップ及び厚さプロファイルのグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のコンタクトレンズは、レンズに対して作用するさまざまな力のバランスに基づいて安定化を最適化した設計を有する。これには、眼に対して作用するトルクと、眼の構成要素と、及び最終的に眼の上に配置される安定化レンズとのバランスをとるための、設計プロセスの適用を伴う。好ましくは、安定化の改善は、安定化要素を含んでいる公称設計の改善プロセスを開始することによって達成される。例えば、中心を通る水平軸と垂直軸の両方に対して対称である2つの安定化ゾーンを有するレンズ設計は、便利な参照であり、ここから、本発明の方法に従ってレンズの安定化を最適化することができる。「安定化ゾーン」とは、周縁ゾーンの他の領域よりも厚い厚さ値を有するレンズ周縁ゾーン領域を意味する。本発明の安定化ゾーンは、いくつかの点において、レンズの周縁ゾーンの平均厚さよりも薄い厚さ値を有するが、にもかかわらず他の点において、より厚いゾーンを有する。「周縁ゾーン」とは、レンズのオプティカルゾーンを取り囲む周囲方向のレンズ表面領域を意味し、レンズの縁まで伸びるが、縁自体は含まない。有用な開始点である別の安定化設計は、米国特許公開第20050237482号に記述されており、これは、参照により本明細書に組み込まれるが、本発明により最適化される公称設計として、任意の安定化設計を使用することができる。安定化設計の改善プロセスには、更に、後述する眼モデルで改善を試験することと、その試験結果を評価することと、その改善プロセスを、望ましいレベルの安定性が達成されるまで繰り返して継続することと、が組み込まれ得る。
【0012】
図1は、安定化レンズの前側(又は対物側)表面である。レンズ10はオプティカルゾーン11を有する。このレンズの周縁部分がオプティカルゾーン11を取り囲んでいる。2つの厚い領域12が周縁部分に配置され、これらが安定化ゾーンである。
【0013】
新しい設計を作成するためのプロセスに好ましく使用されるモデルは、機械的操作及びそのレンズ安定性に対する影響をシミュレーションするさまざまな要素及び仮定を組み込む。好ましくは、周知のプログラミング技法により、標準のプログラミング及びコーディング技法を用いるソフトウェアに適応される。幅広い概要では、このモデルは、処方されたまばたき回数以内で、後述の付加力シミュレーションにより、安定化レンズを設計するためのプロセスに使用される。レンズが回転し偏心する度合は、これにより測定される。この設計は次に、回転及び/又は偏心がより望ましいレベルになるように誘導する方法で変更される。次いで、再びモデルを使って、あらかじめ定められたまばたき回数後に、まばたきによる移動を測定する。
【0014】
このモデルは、眼が、少なくとも2つの球面部分(角膜と強膜に相当)からなり、x−y−z座標軸の原点は、角膜に相当する球面の中心にある。非球面などの、より複雑な表面を使用することもできる。レンズのベース形状は、球表面部分からなるが、レンズのベースカーブ半径により、レンズの中心から縁に向かっての変化が可能になる。裏側表面を記述するのに、複数のベースカーブを使うことができる。眼上に配置されたレンズは、眼と同じ形状を有していると仮定される。レンズの厚さ分布は、必ずしも回転対称である必要はなく、実際、本発明のレンズのいくつかの好ましい実施形態においては、対称的ではない。レンズの縁にある厚いゾーンは、レンズの動きの位置と向きを制御するのに使用することができる。液体(涙液の膜)の均一な薄膜が、レンズと眼との間に存在し、典型的には厚さ5μmである。この涙液膜は、レンズ下(post-lens)涙液膜と呼ばれる。レンズの縁では、レンズと眼との間の液体膜の厚さはずっと薄くなり、これはムチン涙液膜と呼ばれる。典型的な厚さ5.0μmの液体の均一な薄膜(涙液膜)が、レンズと下眼瞼及び上眼瞼との間に存在し、これらはレンズ上(pre-lens)涙液膜と呼ばれる。下眼瞼と上眼瞼両方の境界線は平面上に横たわり、x−y平面内の単位垂直ベクトルを有する。よって、z軸に対して垂直な面上のこれら境界線の投影は、直線となる。この仮定は、眼瞼が動いている時にも行われる。上眼瞼は、コンタクトレンズに対して均一な圧力をかける。この均一な圧力は、上眼瞼で覆われているコンタクトレンズ領域全体にかかるか、あるいは、上眼瞼の境界線近くのこの領域の一部分に均一な幅でかかる(眼瞼縁を描く曲線を通る面に対して垂直な方向で測定される)。下眼瞼は、コンタクトレンズに対して均一な圧力をかける。この圧力は、下眼瞼で覆われているコンタクトレンズ領域全体にかかる。コンタクトレンズに対して眼瞼からかけられる圧力は、コンタクトレンズの不均一な厚さ分布(厚いゾーン)、特に縁近くを介して、レンズに対して作用するトルクに寄与する。コンタクトレンズに作用するトルクに対するこの圧力の効果は、メロン種効果と呼ばれる。レンズが眼に対して動くとき、レンズ下涙液膜に粘性摩擦が存在する。また、レンズが眼に対して動くとき、レンズ縁と眼との間のムチン涙液膜に粘性摩擦が存在する。加えて、レンズ及び/又は眼瞼が動くとき、レンズ上涙液膜に粘性摩擦が存在する。レンズの変形により、レンズのひずみと応力が生じる。このひずみと応力により、レンズの弾性エネルギー成分が生じる。レンズが眼に対して動き、レンズの変形が変化すると、この弾性エネルギー成分も変化する。レンズは、弾性エネルギー成分が最小限である位置に向かって動く傾向がある。
【0015】
眼の形状、レンズのベース形状、及び眼瞼の動きを表わすパラメータを、図2に示す。レンズの動きは、レンズに作用する運動量モーメントのバランスによって生じる。慣性効果は無視される。したがって、レンズに作用する全モーメント合計はゼロとなる。ゆえに、
【数1】

【0016】
最初の4つのモーメントは抵抗トルクであり、レンズの動きに線形的に依存する。その他のトルクは駆動トルクである。運動量モーメントのこのバランスは、レンズの位置βの非線形1次微分方程式をもたらす。
【数2】

【0017】
この式は、4次ルンゲ−クッタ積分法で解かれる。コンタクトレンズ上の点の位置は、回転ベクトルβ(t)を中心とした回転に従う。点の古い位置から現在の位置へと変換する回転マトリックスR(t)は、ロドリゲスの式に従う。
【数3】

式中
【数4】

数値積分法においては、時間離散が使用される。次に、レンズの動きは、結果として起こる数多くの回転として見ることができ、よって次の時間ステップ
【数5】

において、回転マトリックスは次の式のようになる。
【数6】

式中、
【数7】

は時間ステップ
【数8】

中の回転である。
回転マトリックスは、レンズの回転
【数9】

と偏心
【数10】

とに分解される。
【数11】

レンズの回転は、レンズの中心線を中心とした回転である。偏心は、(x,y)平面内のある線を中心とした回転である。ゆえに、レンズの位置は、偏心
【数12】

に従う中心線を中心としたレンズの回転
【数13】

として観察される。
【0018】
設計は、1つ又は2つ以上の数学的構造体を使用して設計詳細を記述することにより、上記のモデルを用いて作成又は最適化される。好ましくは、安定化ゾーンはベジェ曲線を用いて記述されるが、他の数学的記述を使用して安定化ゾーンの完全記述を得ることもできる。ベジェ曲線アプローチを使用する場合、半径方向厚さプロファイルを記述する半径関数A(t)が、好ましくは5つの制御を用いて定義される。偏角の厚さプロファイルを記述する偏角関数Bα(tα)も、5つの制御点を用いて定義される。例えば、数学的記述は次のように式で表わすことができる:
【数14】

【0019】
式中、Pri(x)とPri(y)は制御点の座標であり、tは半径方向プロファイルに沿った正規化座標である。半径方向厚さプロファイルを記述する開始点はPr1で定義され、終点はPr5で定義される。
【数15】

【0020】
式中、Pαi(x)及びPαi(y)は制御点の座標であり、tαは偏角プロファイルに沿った正規化座標である。偏角厚さプロファイルを記述する開始点はPα1で定義され、終点はPα5で定義される。
【0021】
C(t,tα)(3)で記述される安定化ゾーンの強度は、半径関数Ar,yと偏角関数Bα,yの積から得られる。尺度因子Mがこの2つの関数の積に適用され、安定化ゾーンの強度を制御する。
【数16】

【0022】
これらの式は、任意の数の制御点に拡大することができる。その場合、この式は次の表に書き直すことができる:
【数17】

【0023】
非対称安定化ゾーン設計により、左側から右側の安定化ゾーンを記述するのに、別の異なる関数セットを使用することができる。
【0024】
本発明の好ましい実施形態において、偏角厚さプロファイルの上部分を記述するベジェ曲線の係数は、サグ値が負になるように設定される。この特定の場合において、安定化ゾーンがレンズ周縁部に追加されるとき、レンズの上部分の厚さは、増大するのではなく減少する。図5は、安定化ゾーンの上部分における厚さ低下の効果を示す。これにより最大厚さが低減でき、しかも同じ厚さ差異を保つことができる。最大厚さ位置周囲の傾きは、このプロファイル変更によってあまり影響を受けない。
【0025】
好ましくは、本発明は、例えば米国特許第5,652,638号、同第5,805,260号、及び同第6,183,082号(これらは参照により全体が本明細書に組み込まれる)に開示されている安定化トーリックレンズ又は安定化多焦点トーリックレンズを設計及び次いで製造するのに使用される。
【0026】
更に別の代替方法として、本発明のレンズは、高い眼収差、角膜トポグラフィーデータ、又はその両方の補正を取り入れてもよい。かかるレンズの例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第6,305,802号及び同第6,554,425号に見出される。
【0027】
本発明のレンズは、メガネのレンズ、コンタクトレンズ、及び眼内レンズを非限定的に含む眼科用レンズを製造するのに好適な任意のレンズ成形材料から製造されてもよい。ソフト・コンタクトレンズを形成するための例示的な材料は、例えば、限定することなく、シリコーンエラストマー、シリコーン含有マクロマー(例えば、限定することなく、米国特許第5,371,147号、同第5,314,960号、及び同第5,057,578号(これらは、本明細書において参照により全体が組み込まれる)に開示されているものを含む)、ヒドロゲル、シリコーン含有ヒドロゲルなど、これらの組み合わせが挙げられる。より好ましくは、表面はシロキサンであるか、又はポリジメチルシロキサンマクロマー、メタクリルオキシプロピルポリアルキルシロキサン、及びそれらの混合物、シリコーンヒドロゲル若しくはエタフィルコンAなどのヒドロゲルを含むがこれらに限定されないシロキサン官能基を含む。
【0028】
レンズ材料の硬化は、任意の便宜のよい方法で行うことができる。例えば材料を型に入れ、熱、放射線、化学物質、電磁放射線硬化など、及びこれらの組み合わせによって硬化させることができる。好ましくは、コンタクトレンズの実施形態では、紫外線を使用して、又は可視光線のフルスペクトルを使用して成型が行われる。より具体的には、レンズ材料を硬化させる正確な条件は、選択した材料及び形成すべきレンズによって決定される。好適なプロセスは、米国特許第5,540,410号に開示され、この文献は、本明細書において参照により全体が組み込まれている。
【0029】
本発明のコンタクトレンズは、あらゆる好都合な方法で製造され得る。このような方法の1つは、金型インサートを作製するために、VARIFORM(商標)アタッチメントを備えるOPTOFORM(商標)旋盤を使用する。この成型インサートを使用して型を作製する。その後、好適な液体樹脂を金型間に配置した後に、樹脂を圧縮及び硬化して、本発明のレンズを形成する。当業者は、あらゆる多くの既知の方法を用いて本発明のレンズを製造することができることを認識するであろう。
【0030】
ここで、本発明について、以下の非限定的な実施例について更に記述される。
【実施例】
【0031】
(実施例1)
既知の設計を有し、下記の設計入力パラメータで従来型のレンズ設計ソフトウェアを用いて設計された、乱視患者用のコンタクトレンズが、作製された:
−球面屈折力:−3.00D
−円柱屈折力:−0.75D
−円柱軸:180度
−レンズ直径:14.50mm
−前側オプティカルゾーン直径8.50mm
−後側オプティカルゾーン直径11.35mm
−レンズベースカーブ:8.55mm
【0032】
安定化ゾーンは、レンズの厚さプロファイルに追加された、余分の厚みをもつゾーンである。左側及び右側の安定化ゾーンが、前述の数学的関数に適用される一群の制御点(表1)を用いて構築される。レンズ厚さプロファイルを図3に示す。
【表1】

【0033】
(実施例2)
実施例1に記述したレンズは、安定化ゾーンの半径方向位置を0.25mm押し広げ、これにより、選択された処方用に、オプティックゾーン直径を9.00mmに拡張した。左側及び右側の安定化ゾーンは、前述の数学的関数に適用される表2に示す一群の制御点を用いて構築された。安定化ゾーン厚さの上側部分は、増加させる代わりに低減させた。トーリックコンタクトレンズは、従来の単焦点レンズで提供されているものに同等のオプティックゾーンを有する。レンズの性能を示した、上述の眼モデルを用いたレンズの中央合わせと回転のモデル化は、安定化ゾーンの再配置によって大きな影響を受けなかった。レンズ厚さプロファイルを図4に示す。
【表2】

【0034】
(実施例3)
実施例1で記述したレンズを、本発明の方法を用いて再設計し、これにより左側安定化ゾーンの大きさを40μm減らした。左側及び右側の安定化ゾーンは、前述の数学的関数に適用される表3に示す一群の制御点を用いて構築された。
【0035】
厚さに非対称性を導入するには、両方の眼で同じ回転性能を維持するため、左眼と右眼で異なる設計が必要になる。眼モデルの結果、最も厚い安定化ゾーンを、上位置から下位置へと回転させなければならない場合、そのような設計でより良い回転性能が示された。レンズ厚さプロファイルを図5に示す。
【表3】

【0036】
(実施例4)
実施例1のレンズ設計を改変し、左側安定化ゾーンの大きさを40μm減らした。左側及び右側の安定化ゾーンは、前述の数学的関数に適用される表4に示す一群の制御点を用いて構築された。安定化ゾーン厚さの上側及び下側部分は、増加させる代わりに低減させ、同様の厚さ差異を維持しながら、安定化ゾーンの上側及び下側部分の厚さを低減させ、かつ最大厚さを低減させた。レンズ厚さプロファイルを図6に示す。
【表4】

【0037】
本明細書に記述される眼モデルを利用し、実施例1、2、及び3のレンズは、40〜50度の整列不良範囲付近で、最適の回転速度を示している。レンズの向きに依存する光学特性を備えたレンズ、例えば、垂直軸に沿って安定化ゾーンが非対称であるためにレンズ向きが一方向であるようなカスタム化視覚補正レンズには、これらの実施例の設計が望ましい。これらのレンズはまた、従来型の市販レンズに比べ、最終的位置から20度以内のレンズ向きに対して、より高い回転速度を示す。左側と右側の安定化ゾーンが非対称である実施例3から、更なるカスタム化を得ることができる。これらの設計及びレンズは、最終的位置から30度以内のレンズ向きに対して、(既存の市販レンズに比較してより大きな回転速度を示す)。
【0038】
実施例1及び2(安定化の大きさは、実施例1から実施例2への移行で10%低減された)に示すように、厚さ差異の程度が維持されていれば、安定化ゾーンの厚さの低減は、レンズの回転の性能に影響しない。実施例2のレンズ設計は、従来製品に比べ、安定化ゾーンの最大厚さが約20%低減されているため、着用者にとってより快適なレンズを作製することができる。
【0039】
実施例4のモデル化では、レンズの向きによって、回転速度は遅くなるが、回転速度の変動は少なくなることが示された。レンズの向きに依存しない光学特性を備えたレンズ、例えば、安定化ゾーンの設計で対称性が保たれている、レンズの向きが双方向であり得るトーリックレンズなどには、実施例4による設計が望ましい。
【0040】
〔実施の態様〕
(1) 安定化ゾーンパラメータの公称セットを伴ったレンズ設計を提供することによって作製された設計で安定化されたコンタクトレンズであって、前記レンズ設計パラメータを数学的構造体として特徴付けることと、前記設計を運動量モーメントのバランスをとるモデルを用いてモデル化することと、前記モデル化の結果に基づいて前記設計を選択することと、によって改善された、コンタクトレンズ。
(2) 前記構造体がベジェ関数である、実施態様1に記載のコンタクトレンズ。
(3) 安定化ゾーンの前記角度プロファイルが、低減した厚さ(negative thickness)を伴う1つ又は2つ以上の部分で画定される、実施態様1に記載のコンタクトレンズ。
(4) 前記安定化ゾーンの最大厚さを含む前記角度プロファイルに沿った最大の低減厚さ値が0.010mm〜0.060mmであり、好ましくは約0.025mmである、実施態様3に記載のコンタクトレンズ。
(5) 前記安定化ゾーンの最も厚い部分が、前記レンズの水平軸の下、15度〜35度に位置している、実施態様4に記載のコンタクトレンズ。
(6) 前記安定化ゾーンの最も厚い部分が、前記レンズの水平軸の下、少なくとも25度の間に位置している、実施態様5に記載のコンタクトレンズ。
(7) 厚さが互いに異なる安定化ゾーンを有している、実施態様1に記載のコンタクトレンズ。
(8) 前記安定化ゾーン間の厚さの相違が0.020mm〜0.045mmである、実施態様7に記載のコンタクトレンズ。
(9) 前記安定化ゾーン間の厚さの相違が少なくとも0.030mmである、実施態様8に記載のコンタクトレンズ。
(10) 各ゾーン内でさまざまな厚さの安定化ゾーンを有する、実施態様1に記載のコンタクトレンズ。
(11) 前記ゾーンが、そのピーク寸法からその最も薄い寸法まで不均一な傾斜面を有している、実施態様10に記載のコンタクトレンズ。
(12) 安定化ゾーンを含むコンタクトレンズであって、前記安定化ゾーンの前記角度プロファイルが、低減した厚さを備える1つ又は2つ以上の部分によって画定される、コンタクトレンズ。
(13) 前記安定化ゾーンの最大厚さを含む前記角度プロファイルに沿った最大の低減厚さ値が0.010mm〜0.060mmであり、好ましくは約0.025mmである、実施態様12に記載のコンタクトレンズ。
(14) 前記安定化ゾーンの最も厚い部分が、前記レンズの水平軸の下、15度〜35度に位置している、実施態様4に記載のコンタクトレンズ。
(15) 前記安定化ゾーンの最も厚い部分が、前記レンズの水平軸の下、少なくとも25度の間に位置している、実施態様5に記載のコンタクトレンズ。
(16) 厚さが互いに異なる安定化ゾーンを有している、コンタクトレンズ。
(17) 前記安定化ゾーン間の厚さの相違が0.020mm〜0.045mmである、実施態様16に記載のコンタクトレンズ。
(18) 前記安定化ゾーン間の厚さの相違が少なくとも0.030mmである、実施態様17に記載のコンタクトレンズ。
(19) 各ゾーン内でさまざまな厚さの安定化ゾーンを有する、コンタクトレンズ。
(20) 前記ゾーンが、そのピーク寸法からその最も薄い寸法まで不均一な傾斜面を有している、実施態様19に記載のコンタクトレンズ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定化ゾーンパラメータの公称セットを伴ったレンズ設計を提供することによって作製された設計で安定化されたコンタクトレンズであって、前記レンズ設計パラメータを数学的構造体として特徴付けることと、前記設計を運動量モーメントのバランスをとるモデルを用いてモデル化することと、前記モデル化の結果に基づいて前記設計を選択することと、によって改善された、コンタクトレンズ。
【請求項2】
前記構造体がベジェ関数である、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項3】
安定化ゾーンの前記角度プロファイルが、低減した厚さ(negative thickness)を伴う1つ又は2つ以上の部分で画定される、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記安定化ゾーンの最大厚さを含む前記角度プロファイルに沿った最大の低減厚さ値が0.010mm〜0.060mmであり、好ましくは約0.025mmである、請求項3に記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記安定化ゾーンの最も厚い部分が、前記レンズの水平軸の下、15度〜35度に位置している、請求項4に記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
前記安定化ゾーンの最も厚い部分が、前記レンズの水平軸の下、少なくとも25度の間に位置している、請求項5に記載のコンタクトレンズ。
【請求項7】
厚さが互いに異なる安定化ゾーンを有している、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項8】
前記安定化ゾーン間の厚さの相違が0.020mm〜0.045mmである、請求項7に記載のコンタクトレンズ。
【請求項9】
前記安定化ゾーン間の厚さの相違が少なくとも0.030mmである、請求項8に記載のコンタクトレンズ。
【請求項10】
各ゾーン内でさまざまな厚さの安定化ゾーンを有する、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項11】
前記ゾーンが、そのピーク寸法からその最も薄い寸法まで不均一な傾斜面を有している、請求項10に記載のコンタクトレンズ。
【請求項12】
安定化ゾーンを含むコンタクトレンズであって、前記安定化ゾーンの前記角度プロファイルが、低減した厚さを備える1つ又は2つ以上の部分によって画定される、コンタクトレンズ。
【請求項13】
前記安定化ゾーンの最大厚さを含む前記角度プロファイルに沿った最大の低減厚さ値が0.010mm〜0.060mmであり、好ましくは約0.025mmである、請求項12に記載のコンタクトレンズ。
【請求項14】
前記安定化ゾーンの最も厚い部分が、前記レンズの水平軸の下、15度〜35度に位置している、請求項4に記載のコンタクトレンズ。
【請求項15】
前記安定化ゾーンの最も厚い部分が、前記レンズの水平軸の下、少なくとも25度の間に位置している、請求項5に記載のコンタクトレンズ。
【請求項16】
厚さが互いに異なる安定化ゾーンを有している、コンタクトレンズ。
【請求項17】
前記安定化ゾーン間の厚さの相違が0.020mm〜0.045mmである、請求項16に記載のコンタクトレンズ。
【請求項18】
前記安定化ゾーン間の厚さの相違が少なくとも0.030mmである、請求項17に記載のコンタクトレンズ。
【請求項19】
各ゾーン内でさまざまな厚さの安定化ゾーンを有する、コンタクトレンズ。
【請求項20】
前記ゾーンが、そのピーク寸法からその最も薄い寸法まで不均一な傾斜面を有している、請求項19に記載のコンタクトレンズ。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【公表番号】特表2013−515281(P2013−515281A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544886(P2012−544886)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/060999
【国際公開番号】WO2011/084681
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(510294139)ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド (48)
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
【住所又は居所原語表記】7500 Centurion Parkway, Jacksonville, FL 32256, United States of America
【Fターム(参考)】