説明

安定化フィルタ

【課題】所望信号に対する不要波を抑制すること。
【解決手段】基板外回路に接続された第1入出力パッド1aと、第1入出力パッド1aが接続された負荷と同じインピーダンスの負荷に接続された第2入出力パッド1bと、第1入出力パッド1a及び第2入出力パッド1bに入力された信号が入力された場合には、その2つの信号を一方の位相を反転した後に合成して回路部3に出力する逆相カプラ2とを有し、第1入出力パッド1a及び第2入出力パッド1bは、同じ大きさを有し、不要波として抑制したい信号の1/4波長よりも短い間隔で配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体基板上に形成される電子回路技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ICチップは、通常、パッケージに実装されて実用に供される。ここで、ICチップを実装する際に留意すべき項目として、不要波の抑制が挙げられる。図5に、ICチップ上、およびその付近に存在する不要波を示す。
【0003】
図5には、ICチップの断面が示されており、一端にICチップ4への信号入力部IN、他端に信号出力部OUTが具備されている。R1〜R3で示された矢印は、信号が伝搬又は到来する代表経路を示している。
【0004】
経路R1は、ICチップ上に形成された回路を通過する経路であり、所望する伝搬経路である。この経路R1を伝搬する信号の大きさは、設計時の数値解析等から見積ることができる。
【0005】
経路R2は、ICチップ4の信号入力部INと信号出力部OUTとの間を空間又は基板内を通って伝搬する経路であり、不要波である。この経路R2を伝搬する信号の大小を示す指標は入出力アイソレーションと呼ばれ、値が高ければ経路R2を伝搬する信号は小さいことを示し、低ければ大きいことを示す。また、経路R3は、ICチップ4の外部から到来する信号であり、これも不要波である。
【0006】
ICチップ上の回路を設計通りに動作させるには、経路R1の所望信号のみを伝搬させる必要がある。すなわち、実装技術においては、経路R2及び経路R3を伝搬する不要波の信号を抑制する工夫が求められる。
【0007】
これら不要波の抑制が十分でない場合、ICチップ4の入出力結果が所望の結果から乖離する可能性がある。例えば、ICチップ4の信号入力部INに大きな不要波が入力した場合、所望信号と不要波信号とが混ざった信号がICチップ上の回路への入力信号となるため、回路誤動作の要因となる。
【0008】
また、信号出力部OUTに不要波が入力された場合についても、やはり、回路から出力した所望信号と混ざってしまうため、正常な回路出力が得られない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−250938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、ICチップ4に回路を実装する際には、不要波がICチップ4に入力しないように接続部分の処理が課題となっている。
【0011】
ICチップ4と外部回路とを接続するには、ICチップ上にパッドと呼ばれる領域を設け、その領域に対してワイヤボンディングやボールボンディング等を実施する手法が一般的である。これらの処理を高い歩留まりで行うには、そのパッド領域は広いほど好ましい。
【0012】
そのため、ICチップ上に形成されている回路の線路幅の中で、パッド部分の線路幅が最も大きくなる場合が多くなる。
【0013】
また、ワイヤボンディングやボールボンディング実施後には、パッドに加えてワイヤの形状やボール型半田の形状が加えられるため、他に比べて非常に大きな幾何学形状を有することになる。
【0014】
さらに、パッドは入出力端子の役割を担うため、外部からの電気的な遮蔽をとることが困難である。
【0015】
ここで、ICチップ上に形成された入出力パッド1と、当該ICチップ上に実装された回路部3との関係を図6に示す。所望の信号は、外部回路から入出力パッド1に入力され、回路部3に供給される。また、所望の信号は、回路部3から入出力パッド1に入力され、外部回路に出力される。
【0016】
しかしながら、実際においては、前述したように、所望信号の他に不要波信号がICチップ4の基板内や周囲の空間中に存在している。これら不要波信号の起源は、例えば、ICチップ4の入出力パッド1から放射されるものや、無線信号のような外部から入出力パッド1に飛来するものが考えられる。
【0017】
不要波信号は、他に比べてサイズが大きく、かつ不要波信号に対して電気的な遮蔽をとることが困難な入出力パッド1において主に受信される場合が多く、入出力パッド1で受信された不要波信号は所望信号と共に回路部3へ供給されてしまう。
【0018】
ここで、所望信号とその平均電力をS(t)とP、入出力パッド1で受信された不要波信号とその平均電力をJ(t)とP、回路部3の帯域及び温度から求められる熱雑音とその平均電力をN(t)とPと定義する。
【0019】
その場合、回路部3に入力される信号R(t)と信号対雑音比(S/N)Circuitとは、以下の式(1)と式(2)とでそれぞれ表される。
【数1】

【数2】

【0020】
ここで、熱雑音電力Pは存在が既知であり、かつ回路部3の帯域及び温度から容易に計算可能である。よって、通常の回路設計では熱雑音電力Pの大きさを考慮した上で所望信号の電力を決定するため、回路動作の妨げの要因にはならない。
【0021】
しかしながら、不要波電力PはICチップ4の設置環境に依存するため、設置環境が不明な場合には事前に予測できない。
【0022】
さらに、設置環境が明らかな場合であっても、予測には電磁界計算など高度な解析が必要となり、定量的に不要波電力Pを求めることは非常に困難である。仮に不要波電力Pが熱雑音電力Pに比べて大きく、かつ所望信号電力Pと比較して有意な大きさである場合には、ICチップ設計時に予期していないS/N比で信号が回路部3に入力されることになり、正常動作の妨げとなる。
【0023】
このような状況は、例えば、小さな入力信号を増幅して、大電力の信号を出力する高利得増幅器を集積したICチップ等において、出力信号の一部が入出力パッド1に向かって帰還するような場合に生じ得る。
【0024】
また、出力としての入出力パッド1は、ICチップ4からの出力の全てを外部回路へ供給することが好ましいが、実際には、出力信号の一部を空間又は基板内に放射してしまう。すなわち、入出力パッド1が不要波の発生源となってしまう。
【0025】
この放射量は、入出力パッド1が大きくなり、またその幾何学形状が設計時から乖離すると大きくなる傾向がある。さらにワイヤボンディングやボールボンディングは、パッドに対して金属を物理的に接着させる手法であるため、その仕上がりの形状のばらつきが大きく、放射が大きくなる要因となっている。
【0026】
このような課題を解決するため、特許文献1によれば、接続部周辺に存在する不要波を抑制する手法が開示されている。この特許文献1によれば、ICチップの信号入力部と信号出力部との間を伝搬する不要波を抑制できる。この技術は、上記背景技術で述べた経路R2の不要波を抑制することに相当している。
【0027】
しかしながら、経路R2の不要波の抑制についてのみ着目しているため、ICチップ4の外部から到来する経路R3には対応できない。
【0028】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、所望信号に対する不要波を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
請求項1記載の安定化フィルタは、回路を具備した基板上に配置される安定化フィルタにおいて、基板外回路に接続され、前記基板外回路から出力された基板内回路に対する所望の信号を入力する第1パッドと、前記第1パッドが接続された負荷と同じインピーダンスの負荷に接続された第2パッドと、前記第1パッドと前記第2パッドと前記基板内回路とに接続され、前記第1パッド及び前記第2パッドに入力された2つの信号を、一方の位相を反転した後に合成して前記基板内回路に出力する逆相回路と、を有し、前記第1パッド及び前記第2パッドは、同じ大きさを有し、不要波として抑制したい信号の波長よりも短い間隔で配置されている、又は、矩形の形状を有する前記基板の一辺に並行な中心線に対して線対称であることを特徴とする。
【0030】
本発明によれば、基板外回路に接続され、その基板外回路から出力された基板内回路に対する所望の信号を入力する第1パッドと、第1パッドが接続された負荷と同じインピーダンスの負荷に接続された第2パッドと、第1パッドと第2パッドと基板内回路とに接続され、第1パッド及び第2パッドに入力された2つの信号を、一方の位相を反転した後に合成して基板内回路に出力する逆相回路と、を有し、第1パッド及び第2パッドは、同じ大きさを有し、不要波として抑制したい信号の波長よりも短い間隔で配置されている、又は、矩形の形状を有する基板の一辺に並行な中心線に対して線対称であるため、第1パッドに入力された不要波を第2パッドに入力された不要波で相殺でき、結果として、パッドに入力した不要波を基板内回路に入力される前に抑制できる。
【0031】
請求項2記載の安定化フィルタは、回路を具備した基板上に配置される安定化フィルタにおいて、基板外回路に接続され、基板内回路から出力された前記基板外回路に対する所望の信号を出力する第1パッドと、前記第1パッドが接続された負荷と同じインピーダンスの負荷に接続された第2パッドと、前記第1パッドと前記第2パッドと前記基板内回路とに接続され、前記基板内回路から出力された1つの信号を2分配して、一方の位相を反転した後に前記第1パッドと前記第2パッドとにそれぞれ出力する逆相回路と、を有し、前記第1パッド及び前記第2パッドは、同じ大きさを有し、不要波として抑制したい信号の波長よりも短い間隔で配置されている、又は、矩形の形状を有する前記基板の一辺に並行な中心線に対して線対称であることを特徴とする。
【0032】
本発明によれば、基板外回路に接続され、その基板内回路から出力された基板外回路に対する所望の信号を出力する第1パッドと、第1パッドが接続された負荷と同じインピーダンスの負荷に接続された第2パッドと、第1パッドと第2パッドと基板内回路とに接続され、基板内回路から出力された1つの信号を2分配して、一方の位相を反転した後に第1パッドと第2パッドとにそれぞれ出力する逆相回路と、を有し、第1パッド及び第2パッドは、同じ大きさを有し、不要波として抑制したい信号の波長よりも短い間隔で配置されている、又は、矩形の形状を有する基板の一辺に並行な中心線に対して線対称であるため、第1パッドから外部に放射された不要波を第2パッドから外部に放射された不要波で相殺でき、結果として、パッドから放射されて当該パッドに帰還する不要波を抑制できる。
【0033】
請求項3記載の安定化フィルタは、請求項1又は2記載の安定化フィルタにおいて、前記第1パッドは、前記基板内回路に対する所望の信号を入力し、前記基板外回路に対する所望の信号を出力し、前記逆相回路は、前記第1パッド及び前記第2パッドに入力された信号が入力された場合には、当該2つの信号を一方の位相を反転した後に合成して前記基板内回路に出力し、前記基板内回路から出力された1つの信号が入力された場合には、当該1つの信号を2分配して一方の位相を反転した後に前記第1パッドと前記第2パッドとにそれぞれ出力することを特徴とする。
【0034】
本発明によれば、第1パッドは、基板内回路に対する所望の信号を入力し、基板外回路に対する所望の信号を出力し、逆相回路は、第1パッド及び第2パッドに入力された信号が入力された場合には、その2つの信号を一方の位相を反転した後に合成して基板内回路に出力するため、第1パッドに入力された不要波を第2パッドに入力された不要波で相殺でき、結果として、パッドに入力した不要波を基板内回路に入力される前に抑制できる。
【0035】
また、本発明によれば、第1パッドは、基板内回路に対する所望の信号を入力し、基板外回路に対する所望の信号を出力し、逆相回路は、基板内回路から出力された1つの信号が入力された場合には、その1つの信号を2分配して一方の位相を反転した後に第1パッドと第2パッドとにそれぞれ出力するため、第1パッドから外部に放射された不要波を第2パッドから外部に放射された不要波で相殺でき、結果として、パッドから放射されて当該パッドに帰還する不要波を抑制できる。
【0036】
請求項4記載の安定化フィルタは、請求項1又は3記載の安定化フィルタにおいて、前記第2パッドは、前記第1パッドが接続された負荷と同じインピーダンスの負荷を有する基板外回路に接続され、前記第1パッドに入力された所望の信号と同じ振幅かつ逆相である所望の信号を入力することを特徴とする。
【0037】
請求項5記載の安定化フィルタは、請求項2又は3記載の安定化フィルタにおいて、前記第2パッドは、前記第1パッドが接続された負荷と同じインピーダンスの負荷を有する基板外回路に接続され、前記逆相回路から出力された信号を当該基板外回路に出力することを特徴とする。
【0038】
請求項6記載の安定化フィルタは、請求項1乃至5のいずれかに記載の安定化フィルタにおいて、前記不要波として抑制したい信号の波長よりも短い間隔は、不要波として抑制したい信号の1/4波長よりも短い間隔であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、所望信号に対する不要波を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】安定化フィルタの構成を示す図である。
【図2】逆相カプラの入出力関係を示す図である。
【図3】逆相カプラの具体例を示す図である。
【図4】安定化フィルタの他の構成を示す図である。
【図5】ICチップの断面図である。
【図6】ICチップ上の入出力パッドと回路部との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明を実施する一実施の形態について図面を用いて説明する。但し、本発明は多くの異なる様態で実施することが可能であり、本実施の形態の記載内容に限定して解釈すべきではない。
【0042】
〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態に係る安定化フィルタの構成を示す図である。安定化フィルタ100は、第1入出力パッド1aと、第2入出力パッド1bと、逆相カプラ2とで主に構成され、任意の回路が集積される回路部3を具備したICチップ4の上に集積される。
【0043】
ここで、第1入出力パッド1aと第2入出力パッド1bとは同等の大きさであり、ICチップ4に対して不要波として抑制したい信号の1/4波長よりも短い距離(間隔)で配置される。以下、各構成要素の説明を記す。
【0044】
第1入出力パッド1aは、ICチップ外部の任意の回路(以下、基板外回路)に接続され、基板外回路との間で所望の信号を入出力する。すなわち、基板外回路から出力された回路部3に対する所望の信号を入力し、当該回路部3から出力された所望の信号を基板外回路に出力する。
【0045】
第2入出力パッド1bは、第1入出力パッド1aと同等の大きさであり、第1入出力パッド1aが接続される負荷と同じインピーダンスの負荷を持つ終端器5によって終端処理されている。
【0046】
逆相カプラ2は、3個の入出力端子を持つ。逆相カプラ2の入出力関係を図2に示す。逆相カプラ2の第1,第2入出力端子10a,10bに信号が入力される場合には、一方の位相を反転させた後に合成した結果を第3入出力端子10cに出力する。
【0047】
例えば、第1,第2入出力端子10a,10bに対して同相、同振幅の信号がそれぞれ入力された場合には、片方の位相を反転した結果は互いに逆相となるため、合成結果は0となり、第3入出力端子10cからは信号は出力されない。
【0048】
また、第1,第2入出力端子10a,10bに対して同振幅であるが互いに逆相である信号が入力された場合には、片方の位相を反転した結果は同相となるため、合成の結果、第3入出力端子10cからは入力信号の2倍の電力に相当する信号が出力される。
【0049】
一方、第3入出力端子10cに信号が入力される場合には、入力された1つの信号を2分配し、さらに一方の位相を反転させた後にそれぞれを第1入出力端子10aと第2入出力端子10bとから出力する。すなわち、第1入出力端子10aと第2入出力端子10bとからそれぞれ出力される2つの信号は、互いに逆相となる。
【0050】
上述したような逆相カプラ2の具体例を図3に示す。入力信号が正弦波、及び変調された正弦波である場合には、図3(a)に示すような、互いの電気長の違いが180°の位相に相当する第1伝送線路2a及び第2伝送線路2bと、合成分配器2cとで実現できる。また、図3(b)に示すような、方向性結合器である180°ハイブリッド回路2dを用いても実現できる。
【0051】
逆相カプラ2の第1入出力端子10aと第2入出力端子10bとはそれぞれ第1入出力パッド1aと第2入出力パッド1bとに接続され、第3入出力端子10cは回路部3に接続されている。
【0052】
なお、回路部3は、ICチップ4で所望の動作を行う任意の回路が搭載されており、逆相カプラ2から信号が入力された後に、所定の処理を実行する。又は、所定の処理を実行後、逆相カプラ2に信号を出力する。
【0053】
本実施の形態によれば、第1入出力パッド1aがICチップ4の入力部として使用される場合には、第1入出力パッド1aと第2入出力パッド1bとに対して入力される不要波を、回路部3に入力される前に抑制できる。
【0054】
また、本実施の形態によれば、第1入出力パッド1aがICチップ4の出力部として使用される場合には、ICチップ4と基板外回路との接続部分において放射される不要波を互いに相殺できる。以下にその原理を順番に説明する。
【0055】
まず、第1入出力パッド1aを入力部として使用する場合の原理を説明する。回路部3が所望する信号は第1入出力パッド1aから入力される。
【0056】
ここで、所望信号とその平均電力とをS(t)とPとする。また、背景技術の課題での説明と同様の原理で、第1入出力パッド1aで受信される不要波信号をJ(t)、第2入出力パッド1bで受信される不要波信号をJ(t)とする。さらに、回路部3の帯域及び温度から求められる熱雑音とその平均電力とをN(t)とPと定義する。
【0057】
逆相カプラ2では、第1,第2入出力パッド1a,1bからそれぞれ出力される2つの信号を受信し、片方の位相を反転させた後に合成する。ここでは、第2入出力パッド1bからの信号の位相を反転させるものとする。
【0058】
その結果、回路部3に入力される信号R(t)は以下の式(3)となり、背景技術の課題で述べた回路部3への入力信号R(t)(式(1)参照)と比較して、不要波信号の項のみが異なる形となる。なお、J(t)の上に付されたバーは、位相の反転を意味する。
【数3】

【0059】
式(3)の第2項と第3項に表されている不要波信号の合成電力PJ12は、式(4)である。
【数4】

【0060】
ここで、第1入出力パッド1aで受信される不要波信号J(t)と、第2入出力パッド1bで受信される不要波信号J(t)との関係に注目する。
【0061】
本実施の形態の構成では、第1入出力パッド1aと第2入出力パッド1bとは、不要波として抑制したい信号の1/4波長よりも短い距離で配置され、同等の大きさであり、各入出力パッドが接続されている負荷も等しいことを特徴としている。
【0062】
このような条件下においては、第1入出力パッド1a及び第2入出力パッド1bは、不要波信号に対して、同一の点に配置され、不要波信号を受信する効率も同一であると近似できる。
【0063】
すなわち、入力信号の周波数以下の周波数において、以下の式(5)及び式(6)
が成り立つ。
【数5】

【数6】

【0064】
上式より回路部3へ入力される信号のS/N比は式(7)となる。
【数7】

【0065】
式(7)で示されたように、本実施の形態により、不要波信号が回路部3に入力する前に相殺し、回路部3で得られるS/N比を所望信号の入力電力と熱雑音電力との比に近似できる。
【0066】
次に、第1入出力パッド1aを出力部として使用する場合の原理を説明する。回路部3が出力した所望信号は、逆相カプラ2を通過して第1入出力パッド1aと第2入出力パッド1bとから出力される。
【0067】
ここで、第1入出力パッド1aから所望の伝送路に出力されずに放射してしまい、不要波となった信号をS(t)とする。また、第2入出力パッド1bから終端器5で終端されずに放射してしまい、不要波となった信号をS(t)とする。
【0068】
ここで、不要波信号S(t)と不要波信号S(t)との関係に注目する。本実施の形態の構成では、第1入出力パッド1aと第2入出力パッド1bとは、不要波として抑制したい信号の1/4波長よりも短い距離で配置され、同等の大きさであり、パッドが接続されている負荷も等しいことを特徴としている。
【0069】
このような条件下においては、第1入出力パッド1a及び第2入出力パッド1bは、不要波信号に対して、同一の点に配置され、不要波信号を放射する効率も同一であると近似できる。さらに、不要波信号S(t)と不要波信号S(t)とは互いに逆相である。
【0070】
これらの条件より、任意の観測点で受信される不要波信号S(t)と不要波信号S(t)との関係は、回路部3からの出力信号の周波数以下の周波数おいて式(8)となる。
【数8】

【0071】
ここで、Δtは、第1入出力パッド1a及び第2入出力パッド1bから任意の観測点へ伝搬するために要した時間である。
【0072】
式(8)で示されたように、本実施の形態により、第1,第2入出力パッド1a,1bからそれぞれ放射された不要波信号が相殺し、他に与える影響を小さくできる。
【0073】
本実施の形態において、第1入出力パッド1aと第2入出力パッド1bの詳細な形状、及びそれらの周辺の詳細な形状の同一性については考慮していない。第1入出力パッド1aと第2入出力パッド1bの形状、及び周辺の形状が著しく異なる場合には、式(5)及び式(8)の近似精度が悪化する。
【0074】
また、実際においては、第1入出力パッド1aと第2入出力パッド1bの負荷インピーダンスの誤差や、逆相カプラ2の特性誤差など、作製に起因する誤差が存在し、それらも式(5)及び式(8)の近似精度を悪化させる要因である。
【0075】
しかしながら、式(5)及び式(8)の近似が悪化しても直ぐに本発明の効果が損なわれることはなく、従来手法に比べて不要波信号の電力を抑制できる。
【0076】
本実施の形態において、発明の動作と効果の説明では簡単化のために逆相カプラ2の伝送損失については説明していない。逆相カプラ2の伝送損失は小さいことが好ましいが、仮に伝送損失が大きい場合においても、本発明の効果を損なうことはない。
【0077】
本実施の形態において、説明の簡単化のために発明を実施する最低限の要素回路のみを挙げたが、実際には各回路間において信号を正確に伝送するためのインピーダンス整合回路や、S/N比を向上させるための増幅器を使用することは容易に想像でき、上記で説明した動作を妨げなければ、任意の回路を間に挿入してもよい。
【0078】
以上より、本実施の形態によれば、基板外回路に接続された第1入出力パッド1aと、第1入出力パッド1aが接続された負荷と同じインピーダンスの負荷に接続された第2入出力パッド1bと、第1入出力パッド1a及び第2入出力パッド1bに入力された信号が入力された場合には、その2つの信号を一方の位相を反転した後に合成して回路部3に出力する逆相カプラ2とを有し、第1入出力パッド1a及び第2入出力パッド1bは、同じ大きさを有し、不要波として抑制したい信号の1/4波長よりも短い間隔で配置されているので、第1入出力パッド1aに入力された不要波を第2入出力パッド1bに入力された不要波で相殺でき、結果として、入出力パッドに入力した不要波を回路部3に入力される前に回路上で抑制できる。
【0079】
また、本実施の形態によれば、逆相カプラ2は、回路部3から出力された1つの信号が入力された場合には、その1つの信号を2分配して一方の位相を反転した後に第1入出力パッド1aと第2入出力パッド1bとにそれぞれ出力するので、第1入出力パッド1aから外部に放射された不要波を第2入出力パッド1bから外部に放射された不要波で相殺でき、結果として、入出力パッドから放射されて当該入出力パッドに帰還する不要波を空間上で抑制できる。
【0080】
すなわち、本実施の形態によれば、背景技術で述べた不要波の経路R2,R3に対して同時に対応できる。
【0081】
なお、本実施の形態では、「不要波として抑制したい信号の1/4波長よりも短い距離」を一例に説明したが、「不要波として抑制したい信号の波長よりも十分短い距離」であれば同様の効果が得られる。
【0082】
〔第2の実施の形態〕
第2の実施の形態では、第1の実施の形態で用いた逆相カプラ2の代わりに、方向性を持つ逆相合成器(以下、方向性逆相合成器)2’を使用し、第1入出力パッド1aをICチップ4の入力部として用いる。
【0083】
第1の実施の形態と比較して、方向性逆相合成器2’を使用し、第1入出力パッド1aをICチップ4の入力部としてのみ用いる点が異なる。その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0084】
方向性逆相合成器2’は、3個の入出力端子を持つ。方向性逆相合成器2’の第1,第2入出力端子10a,10bに信号が入力される場合には、一方の位相を反転させた後に合成した結果を第3入出力端子10cに出力する。
【0085】
例えば、第1,第2入出力端子10a,10bに対して同相、同振幅の信号がそれぞれ入力された場合には、片方の位相を反転した結果は互いに逆相となるため、合成結果は0となり、第3入出力端子10cからは信号は出力されない。
【0086】
また、第1,第2入出力端子10a,10bに対して同振幅であるが互いに逆相である信号が入力された場合には、片方の位相を反転した結果は同相となるため、合成の結果、第3入出力端子10cからは入力信号の2倍の電力に相当する信号が出力される。
【0087】
しかしながら、第3入出力端子10cに信号が入力される場合は、方向性逆相合成器2’の持つ方向性により、第1入出力端子10a及び第2入出力端子10bには信号は出力されない。
【0088】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、第1入出力パッド1aと第2入出力パッド1bとに対して入力される不要波を、回路部3に入力される前に抑制できる。
【0089】
また、本実施の形態によれば、方向性逆相合成器2’の方向性により、回路部3の入力部で一部反射された所望信号が第1入出力パッド1a及び第2入出力パッド1bに帰還する現象を抑制でき、回路内のアイソレーションを向上できる。
【0090】
〔第3の実施の形態〕
第3の実施の形態では、第1の実施の形態で用いた逆相カプラ2の代わりに、方向性を持つ逆相分配器(以下、方向性逆相分配器)2’’を使用し、第1入出力パッド1aをICチップ4の出力部として用いる。
【0091】
第1の実施の形態と比較して、方向性逆相分配器2’’を使用し、第1入出力パッド1aをICチップ4の出力部としてのみ用いる点が異なる。その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0092】
方向性逆相分配器2’’は、3個の入出力端子を持つ。方向性逆相分配器2’’の第3入出力端子10cに信号が入力される場合には、入力された1つの信号を2分配し、さらに一方の位相を反転させた後にそれぞれを第1入出力端子10aと第2入出力端子10bとから出力する。
【0093】
しかしながら、第1入出力端子10a又は第2入出力端子10bに信号が入力される場合には、方向性逆相分配器2’’の持つ方向性により、第3入出力端子10cには信号は出力されない。
【0094】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、ICチップ4と基板外回路との接続部分において放射される信号を互いに相殺できる。
【0095】
また、本実施の形態によれば、方向性逆相分配器2’’の方向性により、第1入出力パッド1a又は第2入出力パッド1bに入力した不要波が回路部3へ到達することを防止できる。
【0096】
〔第4の実施の形態〕
第4の実施の形態では、第1の実施の形態又は第2の実施の形態において、第2入出力パッド1bに対して、第1入出力パッド1aが接続される負荷と同じインピーダンスの負荷を持つ基板外回路が接続される点と、第1入出力パッド1aと第2入出力パッド1bとが共に入力部として使用される点と、第1入出力パッド1aと第2入出力パッド1bとに、同振幅で互いに逆相の第1所望信号と第2所望信号とがそれぞれ入力される点が異なる。その他の構成は、第1,第2の実施の形態と同様である。
【0097】
本実施の形態によれば、第1,第2の実施の形態と同様に、第1入出力パッド1aと第2入出力パッド1bとに対して入力される不要波を、回路部3に入力される前に抑制できる。以下にその原理を説明する。
【0098】
回路部3が所望する信号は、第1入出力パッド1a及び第2入出力パッド1bから入力される。ここで、第1入出力パッド1aに入力される第1所望信号とその平均電力とをS(t)とPS1とし、第2入出力パッド1bに入力される第2所望信号とその平均電力とをS(t)とPS2とする。ここで第1所望信号S(t)と第2所望信号S(t)とは、以下の式(9)の関係がある。
【数9】

【0099】
また、背景技術の課題での説明と同様の原理で、第1入出力パッド1aで受信される不要波信号をJ(t)、第2入出力パッド1bで受信される不要波信号をJ(t)とする。さらに、回路部3の帯域及び温度か求められる熱雑音とその平均電力とをN(t)とPと定義する。
【0100】
逆相カプラ2では、第1,第2入出力パッド1a,1bからそれぞれ出力される2つの信号を受信し、片方の位相を反転させた後に合成する。ここでは、第2入出力パッド1bからの信号の位相を反転させるものとする。
【0101】
その結果、回路部3に入力される信号R(t)は以下の式(10)となり、第1の実施の形態で説明した回路部3への入力信号(式(3)参照)と比較して、S(t)が関連する項のみが異なる形となる。
【数10】

【0102】
ここで、式(9)を式(10)に適用することにより、式(10)は以下の式(11)に変形される。
【数11】

【0103】
以降は第1の実施の形態と同様の考え方で、回路部3へ入力される信号のS/N比を求めれば、不要波信号が回路部に入力する前に相殺し、回路部3で得られるS/N比を所望信号の入力電力と熱雑音電力との比に近似できる。
【0104】
〔第5の実施の形態〕
第5の実施の形態では、第1の実施の形態又は第3の実施の形態において、第2入出力パッド1bに対して、第1入出力パッド1aが接続される負荷と同じインピーダンスの負荷を持つ基板外回路が接続される点と、第1入出力パッド1aと第2入出力パッド1bとが共に出力部として使用される点とが異なる。その他の構成は、第1,第3の実施の形態と同様である。
【0105】
本実施の形態によれば、第2入出力パッド1bにより、逆相カプラ2又は方向性逆相分配器2’’から出力した信号が、接続された基板外回路に出力されるので、第2入出力パッド1bから出力される信号を基板外回路で受信し、活用できる。
【0106】
〔第6の実施の形態〕
図4は、第6の実施の形態に係る安定化フィルタの構成を示す図である。安定化フィルタ100は、第1入出力パッド1aと、第2入出力パッド1bと、逆相カプラ2とで主に構成され、任意の回路が集積される回路部3を具備したICチップ4の上に集積される。
【0107】
ここで、ICチップ4は直方体(矩形の形状を有する平面からなる六面体)であり、その短辺に沿って第1入出力パッド1aと第2入出力パッド1bとが形成されており、さらに第1入出力パッド1a及び第2入出力パッド1bの配置と形状とが、ICチップ4の長辺に並行な中心線AA’に対して線対称である。以下に各要素の説明を記す。
【0108】
第1入出力パッド1aは、基板外回路に接続され、回路部3に供給される所望の信号を入出力する。第2入出力パッド1bは、第1入出力パッド1aが接続される負荷と同じインピーダンスの負荷を持つ終端器5によって終端処理されている。逆相カプラ2及び回路部3の構成については、第1の実施の形態と同様である。
【0109】
本実施の形態によれば、第1入出力パッド1aがICチップ4の入力部として使用される場合には、第1入出力パッド1aと第2入出力パッド1bとから入力される不要波の中で、中心線AA’に対して線対称となる伝搬モードをもった不要波を、回路部3に入力される前に抑制できる。
【0110】
また、本実施の形態によれば、第1入出力パッド1aがICチップ4の出力部として使用される場合には、第1入出力パッド1aと第2入出力パッド1bとから放射される不要波を、中心線AA’上で相殺できる。以下にその原理を順番に説明する。
【0111】
まず、第1入出力パッド1aを入力部として使用する場合の原理を説明する。簡単化のため、第1入出力パッド1a及び第2入出力パッド1bに入力される不要波は、全て中心線AA’に対して線対称となる伝搬モードであるとする。
【0112】
また、所望信号とその平均電力とをS(t)とPとする。第1入出力パッド1aで受信される不要波信号をJ(t)、第2入出力パッド1bで受信される不要波信号をJ(t)とする。さらに、回路部3の帯域及び温度から求められる熱雑音とその平均電力とをN(t)とPと定義する。この時、回路部3に入力される信号R(t)は、式(3)と同じ形式となる。
【0113】
ここで、第1入出力パッド1aで受信される不要波信号J(t)と、第2入出力パッド1bで受信される不要波信号J(t)との関係に注目する。
【0114】
本実施の形態の構成では、第1入出力パッド1aと第2入出力パッド1bとは、その配置と形状とが中心線AA’に対して線対称であり、各入出力パッドが接続されている負荷も等しいことを特徴としている。
【0115】
このような条件下においては、中心線AA’に対して線対称の伝搬モードを持った不要波は、第1入出力パッド1a及び第2入出力パッド1bに対して、同じ電力と位相で入力されると近似できる。
【0116】
すなわち、式(5)が成り立つ。以降は第1の実施の形態と同様の考え方で式(7)が成り立つため、本実施の形態により、不要波信号が回路部3に入力する前に相殺し、回路部3で得られるS/N比を所望信号の入力電力と熱雑音電力との比に近似できる。
【0117】
次に、第1入出力パッド1aをICチップ4の出力部として使用する場合の原理を説明する。回路部3が出力した所望信号は、逆相カプラ2を通過して第1入出力パッド1aと第2入出力パッド1bとから出力される。
【0118】
ここで、第1入出力パッド1aから所望の伝送路に出力されずに放射してしまい、不要波となった信号をS(t)とする。また、第2入出力パッド1bから終端器5で終端されずに放射してしまい、不要波となった信号をS(t)とする。
【0119】
ここで、不要波信号S(t)と不要波信号S(t)との関係に注目する。本実施の形態の構成では、第1入出力パッド1aと第2入出力パッド1bとは、その配置と形状が中心線AA’に対して線対称であり、各入出力パッドが接続されている負荷も等しいことを特徴としている。
【0120】
このような条件下においては、第1入出力パッド1aから放射された不要波信号S(t)と第2入出力パッド1bから放射された不要波信号S(t)とは、互いに同振幅で逆相の関係となり、中心線AA’上で互いに相殺される。すなわち、中心線AA’上では式(8)が成り立つ。
【0121】
従い、本実施の形態により、各入出力パッドからそれぞれ放射された不要波信号が中心線AA’上で相殺し、他に与える影響を小さくできる。例えば、不要波を受信しやすい入出力パッドを中心線AA’上に配置すれば、入出力パッドから放射される不要波は、入出力パッドには受信されず、所望信号へ与える影響を抑制できる。
【0122】
本実施の形態において、第1入出力パッド1aと第2入出力パッド1bの詳細な形状、及びそれらの周辺の詳細な形状の同一性については考慮していない。第1入出力パッド1aと第2入出力パッド1bの形状、及び周辺の形状が著しく異なる場合には、式(5)及び式(8)の近似精度が悪化する。
【0123】
また、実際においては、第1入出力パッド1aと第2入出力パッド1bの負荷インピーダンスの誤差や、逆相カプラ2の特性誤差など、作製に起因する誤差が存在し、それらも式(5)及び式(8)の近似精度を悪化させる要因である。
【0124】
しかしながら、式(5)及び式(8)の近似が悪化しても直ちに本発明の効果が損なわれることはなく、従来手法に比べて不要波信号の電力を抑制することが可能である。
【0125】
本実施の形態において、発明の動作と効果の説明では簡単化のために逆相カプラ2の伝送損失については説明していない。逆相カプラ2の伝送損失は小さいことが好ましいが、仮に伝送損失が大きい場合においても、本発明の効果を損なうことはない。
【0126】
本実施の形態において、説明の簡単化のために発明を実施する最低限の要素回路のみを挙げたが、実際には各回路間において信号を正確に伝送するためのインピーダンス整合回路や、S/N比を向上させるための増幅器を使用することは容易に想像でき、上記で説明した動作を妨げなければ、任意の回路を間に挿入してもよい。
【0127】
本実施の形態において、第1入出力パッド1aを出力部として使用した時の効果を説明した際、説明の簡単化のために中心線AA’上の不要波の相殺について述べたが、不要波の相殺の効果は必ずしも中心線AA’の直上のみで生じるわけでなく、中心線AA’から乖離した距離が不要波の1/4波長よりも小さければ、同様の効果を発揮できる。
【0128】
以上より、本実施の形態によれば、基板外回路に接続された第1入出力パッド1aと、第1入出力パッド1aが接続された負荷と同じインピーダンスの負荷に接続された第2入出力パッド1bと、第1入出力パッド1a及び第2入出力パッド1bに入力された信号が入力された場合には、その2つの信号を一方の位相を反転した後に合成して回路部3に出力する逆相カプラ2とを有し、第1入出力パッド1a及び第2入出力パッド1bは、直方体であるICチップ4の長辺に並行な中心線AA’に対して線対称であるので、第1入出力パッド1aに入力された不要波(中心線AA’に対して線対称となる伝搬モードをもった不要波)を第2入出力パッド1bに入力された不要波(中心線AA’に対して線対称となる伝搬モードをもった不要波)で相殺でき、結果として、入出力パッドに入力した不要波を回路部3に入力される前に回路上で抑制できる。
【0129】
また、本実施の形態によれば、逆相カプラ2は、回路部3から出力された1つの信号が入力された場合には、その1つの信号を2分配して一方の位相を反転した後に第1入出力パッド1aと第2入出力パッド1bとにそれぞれ出力するので、第1入出力パッド1aから外部に放射された不要波(中心線AA’に対して線対称となる伝搬モードをもった不要波)を第2入出力パッド1bから外部に放射された不要波(中心線AA’に対して線対称となる伝搬モードをもった不要波)で相殺でき、結果として、入出力パッドから放射されて当該入出力パッドに帰還する不要波を空間上で抑制できる。
【0130】
すなわち、本実施の形態によれば、背景技術で述べた不要波の経路R2,R3に対して同時に対応できる。
【0131】
〔第7の実施の形態〕
第7の実施の形態では、第6の実施の形態で用いて逆相カプラ2の代わりに、方向性を持つ逆相合成器(以下、方向性逆相合成器)2’を使用し、第1入出力パッド1aをICチップ4の入力部として用いる。
【0132】
第6の実施の形態と比較して、方向性逆相合成器2’を使用し、第1入出力パッド1aをICチップ4の入力部としてのみ用いる点が異なる。その他の基本的構成は第6の実施の形態と同様であり、方向性逆相合成器2’については第2の実施の形態と同様である。
【0133】
本実施の形態によれば、第6の実施の形態と同様に、第1入出力パッド1aと第2入出力パッド1bとから入力される不要波の中で、中心線AA’に対して線対称となる伝搬モードをもった不要波を、回路部3に入力される前に抑制できる。
【0134】
また、本実施の形態によれば、第2の実施の形態と同様に、方向性逆相合成器2’の方向性により、回路部3の入力部で一部反射された所望信号が第1入出力パッド1a及び第2入出力パッド1bへ帰還する現象を抑制でき、回路内のアイソレーションを向上できる。
【0135】
〔第8の実施の形態〕
第8の実施の形態では、第6の実施の形態で用いた逆相カプラ2の代わりに、方向性を持つ逆相分配器(以下、方向性逆相分配器)2’’を使用し、第1入出力パッド1aをICチップの出力部として用いる。
【0136】
第6の実施の形態と比較して、方向性逆相分配器2’’を使用し、第1入出力パッド1aをICチップ4の出力部としてのみ用いる点が異なる。その他の基本的構成は第6の実施の形態と同様であり、方向性逆相分配器2’’については第3の実施の形態と同様である。
【0137】
本実施の形態によれば、第6の実施の形態と同様に、第1入出力パッド1aと第2入出力パッド1bとから放射される不要波を、中心線AA’上で相殺できる。
【0138】
また、本実施の形態によれば、第3の実施の形態と同様に、方向性逆相分配器2’’の方向性により、第1入出力パッド1a又は第2入出力パッド1bに入力した不要波が回路部3へ到達することを防止できる。
【0139】
〔第9の実施の形態〕
第9の実施の形態では、第6の実施の形態又は第7の実施の形態において、第2入出力パッド1bに対して、第1入出力パッド1aが接続される負荷と同じインピーダンスの負荷を持つ基板外回路が接続される点と、第1入出力パッド1aと第2入出力パッド1bとが共に入力部として使用される点と、第1入出力パッド1aと第2入出力パッド1bに、同振幅で互いに逆相の第1所望信号と第2所望信号とがそれぞれ入力される点が異なる。その他の基本的構成は、第6,第7の実施の形態及び第4の実施の形態と同様である。
【0140】
本実施の形態によれば、第4の実施の形態と同様に、第1入出力パッド1aと第2入出力パッド1bとに対して入力される不要波を、回路部3に入力される前に抑制できる。
【0141】
〔第10の実施の形態〕
第10の実施の形態では、第6の実施の形態又は第8の実施形態において、第2入出力パッド1bに対して、第1入出力パッド1aが接続される負荷と同じインピーダンスの負荷を持つ基板外回路が接続される点と、第1入出力パッド1aと第2入出力パッド1bとが共に出力部として使用される点とが異なる。その他の構成は、第1,第3の実施の形態及び第5の実施の形態と同様である。
【0142】
本実施の形態によれば、第5の実施の形態と同様に、第2入出力パッド1bにより、逆相カプラ2又は方向性逆相分配器2’’から出力した信号が、接続された基板外回路に出力されるので、第2入出力パッド1bから出力される信号を基板外回路で受信し、活用できる。
【符号の説明】
【0143】
1…入出力パッド
1a…第1入出力パッド(第1パッド)
1b…第2入出力パッド(第2パッド)
2…逆相カプラ(逆相回路)
2’…方向性逆相合成器(逆相回路)
2’’…方向性逆相分配器(逆相回路)
3…回路部(基板内回路)
4…ICチップ(誘電体基板)
5…終端器
100…安定化フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路を具備した基板上に配置される安定化フィルタにおいて、
基板外回路に接続され、前記基板外回路から出力された基板内回路に対する所望の信号を入力する第1パッドと、
前記第1パッドが接続された負荷と同じインピーダンスの負荷に接続された第2パッドと、
前記第1パッドと前記第2パッドと前記基板内回路とに接続され、前記第1パッド及び前記第2パッドに入力された2つの信号を、一方の位相を反転した後に合成して前記基板内回路に出力する逆相回路と、を有し、
前記第1パッド及び前記第2パッドは、
同じ大きさを有し、不要波として抑制したい信号の波長よりも短い間隔で配置されている、又は、矩形の形状を有する前記基板の一辺に並行な中心線に対して線対称であることを特徴とする安定化フィルタ。
【請求項2】
回路を具備した基板上に配置される安定化フィルタにおいて、
基板外回路に接続され、基板内回路から出力された前記基板外回路に対する所望の信号を出力する第1パッドと、
前記第1パッドが接続された負荷と同じインピーダンスの負荷に接続された第2パッドと、
前記第1パッドと前記第2パッドと前記基板内回路とに接続され、前記基板内回路から出力された1つの信号を2分配して、一方の位相を反転した後に前記第1パッドと前記第2パッドとにそれぞれ出力する逆相回路と、を有し、
前記第1パッド及び前記第2パッドは、
同じ大きさを有し、不要波として抑制したい信号の波長よりも短い間隔で配置されている、又は、矩形の形状を有する前記基板の一辺に並行な中心線に対して線対称であることを特徴とする安定化フィルタ。
【請求項3】
前記第1パッドは、前記基板内回路に対する所望の信号を入力し、前記基板外回路に対する所望の信号を出力し、
前記逆相回路は、
前記第1パッド及び前記第2パッドに入力された信号が入力された場合には、当該2つの信号を一方の位相を反転した後に合成して前記基板内回路に出力し、前記基板内回路から出力された1つの信号が入力された場合には、当該1つの信号を2分配して一方の位相を反転した後に前記第1パッドと前記第2パッドとにそれぞれ出力することを特徴とする請求項1又は2記載の安定化フィルタ。
【請求項4】
前記第2パッドは、
前記第1パッドが接続された負荷と同じインピーダンスの負荷を有する基板外回路に接続され、前記第1パッドに入力された所望の信号と同じ振幅かつ逆相である所望の信号を入力することを特徴とする請求項1又は3記載の安定化フィルタ。
【請求項5】
前記第2パッドは、
前記第1パッドが接続された負荷と同じインピーダンスの負荷を有する基板外回路に接続され、前記逆相回路から出力された信号を当該基板外回路に出力することを特徴とする請求項2又は3記載の安定化フィルタ。
【請求項6】
前記不要波として抑制したい信号の波長よりも短い間隔は、
不要波として抑制したい信号の1/4波長よりも短い間隔であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の安定化フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−222103(P2012−222103A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85383(P2011−85383)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】