安眠枕
【課題】頭頚部を効果的に刺激できる安眠枕を提供する。
【解決手段】上下方向に延びる空洞部11bが形成された、弾性材料からなる枕本体11と、振動体を収容し、振動体の振動が伝達されて振動する振動筐体13とを有し、安眠枕の使用状態において、枕本体に押下力が加わって下方に弾性変形すると、振動体が空洞部11b内を下方へ移動することを特徴とすることを安眠枕。
【解決手段】上下方向に延びる空洞部11bが形成された、弾性材料からなる枕本体11と、振動体を収容し、振動体の振動が伝達されて振動する振動筐体13とを有し、安眠枕の使用状態において、枕本体に押下力が加わって下方に弾性変形すると、振動体が空洞部11b内を下方へ移動することを特徴とすることを安眠枕。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、人体の頭頚部を刺激可能な振動体を備えた安眠枕に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、不眠状態を解消するために様々な提案がなされており、例えば、ストレスパターン、疲労パターン及び健康パターンのいずれかのパターンで振動する振動体をマットレスに内蔵した睡眠誘導装置が提案されている(特許文献1参照)。この睡眠誘導装置によれば、各個人の生体の状態に応じて、ストレスパターン、疲労パターン及び健康パターンのいずれかの刺激パターンを選択できるため、容易に睡眠に導くことができる。
【0003】
また、別の睡眠誘導装置として、ホワイトノイズ回路と、このホワイトノイズを入力としてパワースペクトルが1/f特性を有する音声フィルタと、音声出力を時間経過と共に変化させる制御回路とを備えた入眠装置が組み込まれた枕が提案されている。
【0004】
ところで、近年、生体に睡眠を誘発する部位として、頭部頚椎が注目されており、該頭部頚椎に対して刺激を与えることにより、入眠を誘発することができる(参考文献参照)。
【0005】
そこで、本願の発明者等は、振動体が収容された振動筐体を枕内に収容して、頭部頚椎を刺激できる安眠枕の開発を試みた。
【特許文献1】特許第2542334号明細書
【特許文献2】特開昭62−266076号公報
【特許文献3】特開2000−106998号公報
【非特許文献1】森田雄介著 、「THE BEST LIFE 眠りたい眠れない」、講談社、1993年10月30日、p58−62
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、枕内に振動体を配置した場合、振動体を収容した筐体が頭頚部に当接して、入眠が妨げられるおそれがある。
【0007】
また、振動体の振動音が異音となって直接聴覚に伝達されるため、高い入眠効果を得るためには、振動体の振動音を抑制する必要がある。ところが、特許文献1に記載の入眠装置は、マットレスの中に振動体を組み込み、腰や背中を刺激する構成であり、刺激部位が聴覚から離れた位置にあるため、そもそも聴覚に伝達される振動音を抑えるという設計思想に基づき製作されていない。
【0008】
さらに、特許文献3には、20HZ以下の周期で振動する機械的振動子を両耳の間の後頭部に位置するように装着した睡眠枕が開示されているが、振動音を抑える機械的構成について開示がない。
【0009】
そこで、本願発明は、睡眠誘発の妨げとならないような構成を有する安眠枕を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本願発明の安眠枕は、上下方向に延びる空洞部が形成された、弾性材料からなる枕本体と、振動体を収容し、該振動体の振動が伝達されて振動する振動筐体とを有し、該安眠枕の使用状態において、該枕本体に押下力が加わって下方に弾性変形すると、前記振動筐体が前記空洞部内を下方へ移動することを特徴とする。
【0011】
ここで、該安眠枕の使用状態において、前記振動筐体を前記空洞部内に配置してもよい。また、前記振動筐体を保持する弾性材料からなる筐体保持部材を有し、該筐体保持部材は、前記枕本体の上面に前記空洞部を覆うようにして載置するとよい。さらに、前記空洞部を、上端部が閉塞され、下端部が開口した形状に構成するとともに、前記振動筐体を該空洞部内における前記閉塞部に設けるとよい。
【0012】
前記振動体を、電磁式の振動体として構成するとよい。
【発明の効果】
【0013】
本願発明によれば、安眠枕の使用状態において、振動筐体は空洞部内に位置するため、振動筐体と頭部との接触を防止しながら、頭頚部を振動体の振動によって刺激できるため、睡眠を誘発することが期待できる。また、振動筐体が頭部やベッドのシートなどの枕載置面に対して非接触となるため、振動体による振動を効率良く、頭頚部に伝達することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下図面を参照しながら本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0015】
まず、図1、図2、図3及び図4を参照して、本発明の安眠枕の一実施例である安眠枕の構成及び使用方法を説明する。ここで、図1は枕の分解斜視図であり、図2及び図3は枕の長手方向の断面図であり、枕に頭が載置される前の状態を図示しており、図3は枕に頭が載置された状態を図示している。図4は、安眠枕の上面図である。
【0016】
11は直方体形状の枕本体であり、この枕本体11には上下方向に延びる複数の円形開口部11aが略等間隔に多数形成されており、枕上に載置される頭部の頭頚部の略直下に対応した領域には、矩形空洞部11b(開口部)が上下方向に延びて設けられている。枕本体11は高反発弾性材料によって構成されており、枕本体11は、頭部が載置されると下方に弾性変形する。
【0017】
12は略直方体形状の筐体保持部材であり、この筐体保持部材12には上下方向に延びる円形開口部12aが略等間隔に複数形成されており、その内側において振動筐体13を保持している。なお、筐体保持部材12の下面に振動筐体13を固定し、吊り下げ状態で保持してもよい。
【0018】
図2に図示するように、筐体保持部材12は、矩形空洞部11bを覆うようにして枕本体11上に載置されており、振動筐体13は矩形空洞部11bの上方に配置されている。すなわち、図4に図示するように、振動筐体13は、平面視において矩形空洞部11bの内側領域に配置された状態となっている。
【0019】
筐体保持部材12は、枕の使用状態において、押下げ力を受けると図3に図示するように、その一部が振動体筐体13とともに枕本体11の矩形空洞部11b内に進入するようになっている。
【0020】
14は、枕本体11の上面に載置される低反発枕シートであり、この低反発枕シートには、筐体保持部材12との干渉を避けるための凹形状部14aが形成されている。
【0021】
なお、筐体保持部材12の一部を矩形空洞部11b内に押し込み、枕の未使用時において、振動筐体13を予め矩形空洞部11b内に進入させた状態としてもよい。
【0022】
上述の構成において、枕に頭部を載置すると、頭部から押下力を受けて枕本体11及び筐体保持部材12における頭部との接触部分が頭部に沿った形状に弾性変形する。
【0023】
このとき、筐体保持部材12のうち振動筐体13を保持した保持部の下方には、上下方向に延びる矩形空洞部11bが設けられているため、この保持部は、大きく弾性変形することなく矩形空洞部11b内に進入する。その結果、頭部と振動筐体13との間に所定の厚みを持った筐体保持部材12が介在することになるため、振動筐体13と頭部との接触を防止することができる。また、安眠枕が載置されるベッドシートなどの載置面に対して、振動筐体13は、非接触状態となっているため、振動筐体13の振動を効率よく、頭頚部に伝達することができる。
【0024】
図3に図示するように、振動筐体13が空洞部11b内に位置する状態で、振動筐体13を振動させると、この振動が筐体保持部材12及び枕本体11を介して、頭頚部に伝達されるため、入眠効果を得ることが期待できる。
【0025】
次に、振動筐体13について、図6及び図7を参照して説明する。ここで、図6は、振動筐体13の斜視図であり、図7は振動筐体13の垂直方向の断面図である。
【0026】
筐体131の下面には、可動鉄片支持部材132が上方に延びて設けられており、この可動鉄片支持部材132の上端部には凸形状の可動鉄片支持部132aが形成されており、この可動鉄片支持部132aにおいて可動鉄片133が支持されている。
【0027】
この可動鉄片133の先端部にはウエイト134が取り付けられている。可動鉄片支持部材132にはリターンマグネット135が取り付けられており、リターンマグネット135の可動鉄片支持部材132を挟んだ反対側には、ボビン136が筐体131の下面に固定配置されている。
【0028】
ボビン136の外周面には、コイル136aが巻き回されており、このボビン136の径方向中央部には、鉄芯136bが上下方向に延びて設けられている。
【0029】
コイル136aには、不図示の制御回路から電源ケーブル136cを介して電力が供給されるようになっている。
【0030】
コイル136aに通電する前の状態において、可動鉄片133はリターンマグネット135に吸着しており、コイル136aに通電すると、可動鉄片133はリターンマグネット135の磁力に抗して鉄芯136bに吸引される。このように、コイル136aへの通電状態を切り替えることにより、可動鉄片133を駆動し、結果的に筐体131を振動させることができる。
【0031】
なお、可動鉄片支持部132aの形状は、可動鉄片133の駆動範囲を制限できるような凸形状に構成されており、コイル136aへの通電時において、可動鉄片133は鉄芯136bに接触する手前で、可動鉄片支持部132aに当接して停止するようになっており、リターンマグネット135における可動鉄片133との当接部には、防音処理としての緩衝部材(例えば、ゴム)が施されている(不図示)。これにより、当接の際に発生する当接音が睡眠誘発を妨げる異音となって、聴覚に入るのを防止できる。
【0032】
なお、可動鉄片133が鉄芯136bに当接する構成としてもよいが、この構成とした場合には、鉄芯136bとの当接部に、防音処理としての緩衝部材(例えば、ゴム)が施すとよい。(不図示)
次に、図8を用いて、コイル136aへの通電状態を制御する制御回路141の構成について説明する。ここで、図8は、制御回路141の回路構成を図示したブロック図である。141aは制御回路全体の制御を司るCPUであり、141bは定周波数のクロック信号をCPU141aに供給する発振子である。141cはCPU141aからの制御信号に基づきボビン136bに巻き回されたコイル136aに電流を出力する出力回路である。
【0033】
141dはリセット回路であり、電源をオンする場合に、電源電圧が正常に立ち上がり更に周辺回路が安定するまでCPU141aをリセット状態に保持する。また、電源オフ時には瞬時にCPU141aや周辺ロジックを初期状態に戻す。141eは電源電圧をCPU141a、出力調整回路141f及び出力回路141cに分配する電源制御回路である。141fは出力調整回路であり、無段階ボリュームで出力の大きさを設定する。
【0034】
141gは動作モード選択スイッチであり、この動作モード選択スイッチ141gを操作することにより、振動筐体13の振動パターンを選択することができる。
【0035】
本実施例では、デルタ帯域に属する信号を出力するデルタモードと、母親が赤子を寝かしつける時のたたき振動を擬似的に表現したマザーモードと、列車に揺られている時の心地よいレールの響きを擬似的に表現したトレインモードとからなる3つの振動パターンを選択できるようにしている。なお、これらの3つの振動パターンのうちいずれか一つを削除してもよいし、振動パターンを一つだけにしてもよい。
【0036】
各振動パターンの波形を図9に示しており、(a)がデルタモードであり、(b)がマザーモードであり、(c)がトレインモードである。デルタモードに設定された場合、出力される信号が脳波のデルタ波帯域に属する3.5HZから0.75HZまで180秒の周期で漸減(第1の出力信号)するようになっており、マザーモードに設定された場合、0.75HZの固定周波数の信号を出力(第2の出力信号)するようになっている。
【0037】
トレインモードに設定された場合、コイル136aを150ms通電→300ms停止→コイル136aを150ms通電→1000ms停止、といった周期パターンで可動鉄片133を駆動し、振動筐体13を振動させる(第3の出力信号)。これにより、使用者は目的や体調に応じた最適な振動パターンを選択することができる。なお、上記信号に1/fゆらぎのパターンで振動する1/fゆらぎ信号を重畳してもよい。また、本明細書において、「脳波のデルタ波帯域」とは、0.5HZから4.0HZまでの帯域を意味する。
【0038】
141hはCPU141aに対して動作開始及び停止を指示する動作開始/停止スイッチである。141iは動作時間選択スイッチであり、振動筐体13を振動させる時間を、30分、15分の2段階に調整できるようにしている。
【0039】
141jはLEDであり、振動筐体13の振動パターンの選択に応じて発光及び消灯するようになっている。
【0040】
なお、筐体保持部材12として弾性材料からなる板材を採用し、該板材の下面に振動筐体13を固定するとともに、該板材を枕本体11上における空洞部11bに差し渡すように配置して、矩形空洞部11b内に振動筐体13を予め挿入し安眠枕を構成してもよい。
【0041】
さらに、図5に図示するように、枕本体11の内側に振動筐体13を格納する構成であってもよい。すなわち、図5に図示する安眠枕では、筐体保持部材12を省略するとともに、枕本体11の内側に空洞部11bを設けて、この空洞部11bの天井部(閉塞部)に振動筐体13を接着固定している。これにより、部品点数の削減によるコストの削減をはかることができる。
【実施例2】
【0042】
本実施例の枕には、実施例1の振動筐体13とは異なる振動筐体が組み込まれている。なお、実施例1と同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
図10を参照して、本実施例の振動筐体の構成について説明する。ここで、図10は、本実施例の振動筐体の分解斜視図である。
【0044】
21aは上側筐体であり、21bは下側筐体であり、上側筐体21a及び下側筐体21bにより筐体21が構成される。
【0045】
23は振動板であり、この振動板23の図中左右両端部には凸形状の腕部23aが設けられており、これらの腕部23aにはそれぞれ、図中左右方向に延びる2つの長穴部31が形成されている。
【0046】
下側筐体21bの上端部には、腕部23aを支持する支持部52が下側筐体21bの内側方向に突出して設けられている。
【0047】
振動板23の下面の中央部には、略直方体形状のウエイト24が取り付けられており、ウエイト24の左右両側には図中左右方向に延びる2つの長穴部23bがウエイト24からの距離を略等しくして形成されている。
【0048】
これらの長穴部23bの下側領域には、振動板23を駆動するためのソレノイド25が2つ設置されている。
【0049】
ソレノイド25を構成する上下方向に進退可能な可動鉄芯251の先端部には、ネジ溝部251aが形成されており、このネジ溝部251aは、振動板23の長穴部23bに対して下側から挿入されている。
【0050】
可動鉄芯251に形成されたネジ溝部251aには、振動板3の上側から半球形状の上側ユニバーサルナット261a及び下側から半球形状の下側ユニバーサルナット261bが振動板23を挟み込むようにして締結されており、これらのユニバーサルナット261の締結状態において、各ユニバーサルナット261の球面部分は、振動板23の長穴部23bに係合している。
【0051】
ソレノイド25の固定金具125には、ビス穴部125bが形成されており、このビス穴部125bに締結されるビスを通すための穴部212bが下側筐体21bに形成されている。ビス穴部125b及び穴部212bに不図示のビスを締結することにより、ソレノイド25は筐体21に対して固定される。
【0052】
27は振動板23を押さえるためのゴム板であり、上側筐体21a及び振動板23の間に配置されている。このゴム板27のうち、振動板23の長穴部23aに対応する領域にはビス穴部27aが形成されている。下側筐体21bの支持部52のうち、振動板23の長穴部31に対応した領域には、ビス穴部27aに対応するビス穴部52aが形成されている。
【0053】
次に、図11を参照して、ソレノイド25の構成について説明する。ここで、図11は、ソレノイド25の分解斜視図である。
【0054】
可動鉄芯251の先端部には、ネジ溝部251aが形成されており、可動鉄芯251の表面には、低摩擦部材としてのフッ素樹脂が施されている。
【0055】
252はボビンであり、このボビン252に巻き回したコイル253への通電状態を制御することにより、可動鉄芯251は上下方向に駆動される。なお、コイル253への通電状態は、実施例1と同様に制御回路141によって制御される。
【0056】
255は一対の永久磁石であり、磁石保持部材256によって保持されている。磁石保持部材256の中央部には、ボビン252の空洞部252aに対応した領域に開口部256aが形成されている。
【0057】
125は、コの字形状の固定金具であり、永久磁石255によって磁化されている。この固定金具125には、開口部125aが形成されており、この開口部125aから可動鉄芯251が上側に突出している。永久磁石255及び磁石保持部材256は、磁石支持部材257上に支持されており、この磁石支持部材257は、固定金具125にカシメられて固定されており、その略中央には開口部256aと同径の開口部257aが形成されている。
【0058】
次に、図12、図13を参照して、本実施例の振動体の動作について説明する。ここで、図12は、本実施例の振動体の動作を図示した動作説明図である。図13は、本実施例のソレノイド25の動作説明図であり、(a)は非通電時におけるソレノイドの断面図であり、(b)は通電時におけるソレノイドの断面図である。
【0059】
コイル253に通電する前の状態において、可動鉄芯251は、図13(a)に図示するように、ボビン252の空洞部252a内における下側駆動端(第2の駆動端)に位置している。この下側駆動端に位置する状態で、CPU141aを駆動してコイル253への通電動作を開始すると、可動鉄芯251は、ボビン252及びコイル253による電磁作用により、永久磁石255の吸引力に抗して下側駆動端から上方へ移動する。
【0060】
なお、可動鉄芯251が下側駆動端に位置するとき、可動鉄芯251の先端部に連結された振動板23は下に凸の形状となっている。可動鉄芯251が上方に移動するのに連動して、可動鉄芯251に連結された振動板23は、両端が支持された状態で上側に押し込まれるため、下に凸の形状から平板形状に変形する。この平板形状に一旦戻った状態から、可動鉄芯251が更に上方へ移動すると、振動板23は可動鉄芯251によって更に上方に押し込まれ、平板形状から上に凸の形状に弾性変形する。そして、弾性変形した振動板23の曲げ応力により、可動鉄芯251は上側駆動端(第1の駆動端)に達して停止する。
【0061】
このように、両端が支持された状態で振動板23を振動させることにより、振動板23の両端に形成された腕部23aを介して、筐体21全体に振動を伝達することができる。この振動のタイミングを、実施例1と同様に図8に示す動作モード選択スイッチ141gを操作して、睡眠誘発に適した振動パターンに設定することにより、振動体による振動が筐体保持部材12及び枕本体11を介して頭頚部に伝達されるため、入眠効果を得ることが期待できる。
【0062】
また、本実施例では、可動鉄芯251を振動板23に対して吊り持ち支持しているユニバーサルナット261が、振動板23の振動動作に応じて振動板23の長穴部23b内を移動できる構成となっているため、振動板23を大きく揺らすことができる。さらに、長穴部23bに接触するユニバーサルナット261の接触部分の形状を球面とすることにより、摩擦抵抗を減らしているため、ユニバーサルナット261が長穴部23b内を摺動しながら移動するときに、睡眠誘発の妨げとなる異音が発生するのを抑制できる。
【0063】
また、振動板23の腕部23aに形成されたビス穴部31が長穴形状となっており、振動板23の振動動作に応じて、ビス穴部31内をビスが移動できる構成となっているため、振動板23を大きく振動させることができる。
【0064】
さらに、可動鉄芯251の表面には低摩擦部材としてのフッ素樹脂が施されているため、例えば、頭の向きなど睡眠姿勢を変える際に枕に衝撃が加わり、可動鉄芯251が固定金具125などに接触した場合に、睡眠の妨げとなる異音が発生するのを抑制することができる。
【0065】
振動体の動作説明に戻る。可動鉄芯251が上側駆動端に達した状態において、コイル253への通電が絶つと、可動鉄芯251は、その自重、ウエイト24及び永久磁石255の吸引力により下方へ移動する。そして、振動板23が所定量だけ下に凸の状態に弾性変形すると、この弾性変形した振動板23の曲げ応力により、可動鉄芯251の下方への移動が阻止され、可動鉄芯251は、図13(a)に図示するように磁石保持部材256の上方に位置する下側駆動端に停止する。
【0066】
このように、本実施例では、弾性変形する振動板23の曲げ応力により、永久磁石255に引き寄せられる可動鉄芯251の永久磁石255への吸着を防止している。これにより、可動鉄芯251が永久磁石255の磁力により磁石保持部材256に吸着して衝突音が生じるのを防止できるため、入眠の妨げとなる異音の発生を抑制することができる。
【実施例3】
【0067】
本実施例の枕には、実施例1の振動筐体13とは異なる振動筐体が組み込まれている。なお、実施例1と同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0068】
まず、図14、図15を用いて、本実施例の振動筐体の構成について説明する。ここで、図14は本実施例の振動筐体の組み立て完成図であり、図15は本実施例の振動筐体の分解斜視図である。161aは上側筐体であり、161bは下側筐体であり、上側筐体161a及び下側筐体161bによりソレノイド25や振動板163を収容する筐体161が構成される。なお、ソレノイド25の構成は、実施例2と略同様である。
【0069】
163は振動板であり、この振動板163の図中左右両端部は、下側筐体161bの上端部に形成された凹形状の支持部171に支持されている。支持部171に支持された振動板163は、支持部171に形成された不図示の穴部に挿入される振動板位置決めピン166により位置決め固定されており、さらに上筐体161aとの間には、板形状のゴム板164が介在している。
【0070】
振動板163の略中央部には、穴部163aが形成されており、この穴部163aにユニバーサルナット165を用いて実施例2と同様の方法によりソレノイド25の可動鉄芯11が連結されている。
【0071】
本実施例のボビン252、永久磁石253及び固定金具125は、磁力によってユニット化されており(以下「可動鉄芯駆動ユニット」という)、この可動鉄芯駆動ユニットは、永久磁石253及び可動鉄芯251の間に働く磁力によって、筐体161内の空間部における特定の停止位置に浮いた状態となっている。
【0072】
本実施例の振動体の動作は、実施例2と同様であるため、説明を省略する。
【0073】
本実施例では、ソレノイド25自体が振動板163を振動させるウエイトの役割を果たしているため、実施例2のウエイト24に相当する部材が不要となる。これにより、コストを削減することができる。
【0074】
実施例2及び3の安眠枕は、以下の発明を具体化したものでもあり、上記実施例に様々な変更が加えられて使用されるものである。
〔発明1〕
筐体と、前記筐体に組み込まれ、両端が支持された振動板と、コイルが巻き回されたボビンと、前記コイルへの通電状態を制御する制御回路と、
前記振動板に連結されるとともに、前記コイルへの通電状態に応じて、第1の駆動端と、この第1の駆動端の下方に位置する第2の駆動端との間で駆動され、前記振動板を弾性変形させる可動鉄芯と、前記可動鉄芯の下側に配置され、該可動鉄芯を引き寄せる永久磁石とを有し、前記可動鉄芯は、前記弾性変形した前記振動板により、前記第2の駆動端から下方への移動が阻止され、前記第2の駆動端は、前記永久磁石よりも上側に設定されていることを特徴とする安眠枕。
〔発明2〕
前記可動鉄芯の表面には、該可動鉄芯よりも摩擦抵抗が低い低摩擦部材が形成されていることを特徴とする発明1に記載の安眠枕。
〔発明3〕
前記振動板には長穴部が形成されており、前記可動鉄芯の先端部は、前記長穴部に締結手段を用いて連結されており、前記可動鉄芯は、前記振動板が弾性変形するのに応じて、前記長穴部内において移動可能であること特徴とする発明1又は2に記載の安眠枕。
〔発明4〕
前記ボビンは前記永久磁石に吸着しており、前記永久磁石には前記ボビン及び前記永久磁石を筐体に固定するための固定部材が取り付けられていることを特徴とする発明1乃至3のいずれか一つに記載の安眠枕。
〔発明5〕
前記振動板の略中央には、錘が取り付けられており、前記長穴部は、前記錘を挟んだ両側に該錘からの距離を略等しくして2つ形成されていることを特徴とする発明4に記載の安眠枕。
〔発明6〕
前記ボビン及び前記永久磁石は、前記永久磁石及び前記可動鉄芯の間に働く磁力により、前記筐体内の所定の位置に浮いていることを特徴とする発明1又は2に記載の安眠枕。
【実施例4】
【0075】
本実施例の枕には、実施例1の振動筐体13とは異なる振動筐体が組み込まれている。なお、実施例1と同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0076】
図16は本実施例の振動筐体の分解斜視図であり、図17は振動体の動作を説明した動作説明図である。
【0077】
筐体71の内側に、両端が支持された状態でリーフススプリング73を組み込み、このリーフススプリング73の下面に鉄片74を取り付ける。
【0078】
鉄片74の下方には、電磁石75が筐体71の底面に固定配置されており、この電磁石75に対する通電状態を制御することにより、リーフスプリング73が振動するようになっている。なお、電磁石75に対する通電状態は、実施例1と同様に、制御回路141によって行う。
【0079】
すなわち、電磁石75への通電状態をオンとオフとの間で切り替えることにより、リーフスプリング73及び鉄片74を、図17に点線で図示する下側駆動端X及び上側駆動端Yとの間で振動させるようにしている。リーフスプリング73を振動させることにより、筐体71が全体として振動し、この振動体による振動が筐体保持部材12及び枕本体11を介して頭頚部に伝達されるため、入眠効果を得ることが期待できる。
【0080】
また、図17に点線で示すように、リーフスプリング73の下側駆動端Xは、電磁石75よりも上側に設定されているため、下側駆動端Xに下動したときに、鉄片74が、電磁石75に吸着され、衝突音が発生することはない。これにより、睡眠の妨げとなる異音が発生するのを防止できるため、高い入眠効果を得ることができる。
【0081】
次に、本実施例の振動筐体の構成について詳細に説明する。71aは筐体蓋であり、71bは筐体本体であり、筐体蓋71a及び筐体本体71bによって振動体の筐体71が構成される。
【0082】
筐体蓋71aには、左右両端部が下方に折れ曲がった曲げ部81aが形成されており、この曲げ部71aが筐体本体7bの左右両端部に設けられた凹形状の筐体溝部81bに当接している。筐体蓋71aにおける曲げ部81aよりも内側には、先細り形状のスプリング板押さえ部82a(挟み込み部)が筐体下側方向に延びて形成されており、筐体本体71bにおける筐体溝部82bよりも内側には、先細り形状のスプリング板支持部81b(挟み込み部)が筐体上側方向に延びて設けられており、スプリング板73は、スプリング押さえ部82a及びスプリング板支持部81bによってその両端が挟みこまれている。
【0083】
筐体蓋71aの長手直交方向の寸法は、筐体本体71bの長手直交方向の寸法よりも、筐体71の約厚み寸法の2倍だけ短く設定されており、筐体蓋71aは、筐体本体71bの内周面に設けられた、筐体本体71bの長手方向に延びる蓋支持部材81c上に、載置されるようになっている。
【0084】
スプリング板73には、スプリング板ビス穴部73aがスプリング板73の長手方向に3つ並んで形成されており、鉄片74には、スプリング板ビス穴部73aに対応する、鉄片ビス穴部74aが3つ並んで形成されており、スプリング板ビス穴部73a及び鉄片ビス穴部74aにビス83を締結することにより、鉄片74をスプリング板73に対して固定することができる。
【0085】
スプリング板73が上下に振動(弾性変形)すると、スプリング板73は、スプリング押さえ部82a及びスプリング板支持部81bに対して、摺動しながら、矢印L1又はL2方向に移動するようになっており、このスプリング板73の摺動領域には、防音処理としてのゴム84(ラテックスゴム)が配されている。これにより、スプリング板73がスプリング押さえ部82a及びスプリング板支持部81bに対して摺動するときの摺動音が抑制され、摺動音が睡眠の妨げとなって聴覚に入るのを防止できる。
【0086】
3つのビス穴部73aのうち左右両側に形成されたビス穴部73aに締結されるビス83とスプリング板73との間には、中央に開口部を有しこの開口部をビス83のネジ部に挿入させたスプリング板押えゴム85を介在させている。
【0087】
鉄片74は、錘としての役割も有しており、スプリング板3を大きく振動させるのに寄与している。
【0088】
電磁石75は、ボビン75aにコイル75bを巻き回した構成となっており、左右両側が上方に折れ曲がった曲げ部76aを有する電磁石固定部材76の凹部に固定されている。
【0089】
筐体本体71bに組み込まれた電磁石固定部材76は、筐体71の外側から不図示のビスをビス穴部81d、76bに締結することにより、筐体本体71bの底部に固定される。なお、本実施例では、鉄片及びスプリング板によって、振動体を構成したが、磁性及び弾性を有する一つの板状部材(例えば鉄板)を振動体としてもよい。
【0090】
次に、図17を参照して、振動体の動作について説明する。コイル75bに通電する前の状態において、スプリング板73は、スプリング押さえ部82a及びスプリング板支持部81bに挟み込まれた状態で、水平方向に延びており、この位置を振動の基準位置とする。
【0091】
基準位置にスプリング板73及び鉄片74が位置する状態で、コイル75bへの通電を開始すると、鉄片74が電磁石75に吸引され、スプリング板73は、スプリング押さえ部82a及びスプリング板支持部81bに摺動しながら矢印L1方向に移動し、下に凸に弾性変形する。スプリング板73の摺動領域には、防音処理としてのゴム84が施されているため、スプリング板73が、スプリング押さえ部82a及びスプリング板支持部81bに対して摺動するときに、入眠の妨げとなる異音が発生するのを防止できる。
【0092】
また、スプリング板73の下側駆動端Xは電磁石75の上方に設定されており、スプリング板73が下に凸に弾性変形しても、鉄片74がコイル75に当接することは無い。したがって、鉄片74がコイル75に吸着して、その衝突音が睡眠の妨げとなる異音となって聴覚に入るのを防止できる。
【0093】
再び、振動体の動作説明に戻る。スプリング板73が下側駆動端Xに位置する状態で、コイル57bへの通電を絶つと、弾性変形したスプリング板73の弾性力により、スプリング板73は、上に凸に弾性変形する。なお、スプリング板73の上側駆動端は、筐体蓋71aよりも下方に設定されているため、スプリング板73は、上に凸に弾性変形しても筐体蓋71aに衝突しない。そして、スプリング板73の弾性力により基準位置に戻る途中で、コイル75bに通電すると、電磁石75に鉄片74が吸引され、スプリング板73は、再び下方駆動端Xに移動する。
【0094】
このように、スプリング板73を上下方向(挟み込み方向)に振動させると、筐体71が全体として振動し、この振動体による振動が筐体保持部材12及び枕本体11を介して頭頚部に伝達されるため、入眠効果を得ることが期待できる。
【0095】
本実施例の安眠枕は、以下の発明を具体化したものでもあり、上記実施例に様々な変更が加えられて使用されるものである。
〔発明1〕
筐体と、
両端が前記筐体に挟み込まれた、弾性かつ磁性を有する振動体と、
前記振動体に対して前記挟み方向に並んで配置される、コイルを巻き回したボビンとを有し、
前記振動体は、前記コイルに対して通電すると、前記ボビンに吸引されて前記挟み方向のうち一方向に弾性変形し、該一方向に弾性変形した状態で前記コイルへの通電を絶つと、弾性力により前記一方向とは反対の他方向に弾性変形し、
前記振動体は、前記一方向に弾性変形した前記振動体の弾性力により、前記ボビンへの吸着が阻止されることを特徴とする安眠枕。
【0096】
〔発明2〕
前記振動体は、弾性板と、該弾性板のうち前記ボビンに対向する領域に取り付けられた鉄片と、から構成されており、
前記弾性板の両端は、前記筐体に挟み込まれていることを特徴とする発明1に記載の安眠枕。
【0097】
〔発明3〕
前記筐体は、前記振動体を挟み込むための挟み込み部を有し、
前記振動体は、前記弾性変形に応じて、前記挟み込み部に対して摺動しながら前記挟み込み方向に直交する方向へ移動可能であることを特徴とする発明1又は2に記載の安眠枕。
【0098】
〔発明4〕
前記挟み込み部に対して摺動する前記振動体の摺動領域には、摺動する際に発生する摺動音を抑制するための防音処理が施されていることを特徴とする発明3に記載の安眠枕。
【0099】
〔発明5〕
前記摺動領域には、前記防音処理としてゴムが施されていることを特徴とする発明4に記載の安眠枕。
【0100】
〔発明6〕
前記挟み込み部は、前記振動体に向かって先細り形状となる凸部を有することを特徴とする発明1乃至5に記載の安眠枕。
【0101】
なお、上述の実施例1乃至4では、振動筐体を頭頚部が当接する枕本体の当接部の略直下に配置したが、枕内における他の位置に配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】安眠枕の分解斜視図である。
【図2】安眠枕の長手方向の断面図であり、枕に頭が載置される前の状態を図示している。
【図3】安眠枕の長手方向の断面図であり、枕に頭が載置された状態を図示している。
【図4】安眠枕の上面図である。
【図5】図1とは異なる安眠枕の断面図である。
【図6】振動体の斜視図である。
【図7】振動体の垂直方向の断面図である。
【図8】制御回路の回路構成を図示したブロック図である。
【図9】各振動パターンの波形図であり、(a)がデルタモード、(b)がマザーモード、(c)がトレインモードを示している。
【図10】実施例2の振動体の分解斜視図である。
【図11】実施例2のソレノイドの分解斜視図である。
【図12】実施例2の振動体の動作を図示した動作説明図である。
【図13】実施例2のソレノイドの動作説明図であり、(a)は非通電時におけるソレノイドの断面図であり、(b)は通電時におけるソレノイドの断面図である。
【図14】実施例3の振動体の組み立て完成図である。
【図15】実施例3の振動体の分解斜視図である。
【図16】実施例4の振動体の分解斜視図である。
【図17】実施例4の振動体の動作説明図である。
【符号の説明】
【0103】
11 枕本体
12 筐体保持部材
13 振動筐体
14 低反発枕シート
131 21 筐体
132 可動鉄片支持部材
133 可動鉄片
134 ウエイト
135 リターンマグネット
136 ソレノイド
141 制御回路
【技術分野】
【0001】
本願発明は、人体の頭頚部を刺激可能な振動体を備えた安眠枕に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、不眠状態を解消するために様々な提案がなされており、例えば、ストレスパターン、疲労パターン及び健康パターンのいずれかのパターンで振動する振動体をマットレスに内蔵した睡眠誘導装置が提案されている(特許文献1参照)。この睡眠誘導装置によれば、各個人の生体の状態に応じて、ストレスパターン、疲労パターン及び健康パターンのいずれかの刺激パターンを選択できるため、容易に睡眠に導くことができる。
【0003】
また、別の睡眠誘導装置として、ホワイトノイズ回路と、このホワイトノイズを入力としてパワースペクトルが1/f特性を有する音声フィルタと、音声出力を時間経過と共に変化させる制御回路とを備えた入眠装置が組み込まれた枕が提案されている。
【0004】
ところで、近年、生体に睡眠を誘発する部位として、頭部頚椎が注目されており、該頭部頚椎に対して刺激を与えることにより、入眠を誘発することができる(参考文献参照)。
【0005】
そこで、本願の発明者等は、振動体が収容された振動筐体を枕内に収容して、頭部頚椎を刺激できる安眠枕の開発を試みた。
【特許文献1】特許第2542334号明細書
【特許文献2】特開昭62−266076号公報
【特許文献3】特開2000−106998号公報
【非特許文献1】森田雄介著 、「THE BEST LIFE 眠りたい眠れない」、講談社、1993年10月30日、p58−62
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、枕内に振動体を配置した場合、振動体を収容した筐体が頭頚部に当接して、入眠が妨げられるおそれがある。
【0007】
また、振動体の振動音が異音となって直接聴覚に伝達されるため、高い入眠効果を得るためには、振動体の振動音を抑制する必要がある。ところが、特許文献1に記載の入眠装置は、マットレスの中に振動体を組み込み、腰や背中を刺激する構成であり、刺激部位が聴覚から離れた位置にあるため、そもそも聴覚に伝達される振動音を抑えるという設計思想に基づき製作されていない。
【0008】
さらに、特許文献3には、20HZ以下の周期で振動する機械的振動子を両耳の間の後頭部に位置するように装着した睡眠枕が開示されているが、振動音を抑える機械的構成について開示がない。
【0009】
そこで、本願発明は、睡眠誘発の妨げとならないような構成を有する安眠枕を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本願発明の安眠枕は、上下方向に延びる空洞部が形成された、弾性材料からなる枕本体と、振動体を収容し、該振動体の振動が伝達されて振動する振動筐体とを有し、該安眠枕の使用状態において、該枕本体に押下力が加わって下方に弾性変形すると、前記振動筐体が前記空洞部内を下方へ移動することを特徴とする。
【0011】
ここで、該安眠枕の使用状態において、前記振動筐体を前記空洞部内に配置してもよい。また、前記振動筐体を保持する弾性材料からなる筐体保持部材を有し、該筐体保持部材は、前記枕本体の上面に前記空洞部を覆うようにして載置するとよい。さらに、前記空洞部を、上端部が閉塞され、下端部が開口した形状に構成するとともに、前記振動筐体を該空洞部内における前記閉塞部に設けるとよい。
【0012】
前記振動体を、電磁式の振動体として構成するとよい。
【発明の効果】
【0013】
本願発明によれば、安眠枕の使用状態において、振動筐体は空洞部内に位置するため、振動筐体と頭部との接触を防止しながら、頭頚部を振動体の振動によって刺激できるため、睡眠を誘発することが期待できる。また、振動筐体が頭部やベッドのシートなどの枕載置面に対して非接触となるため、振動体による振動を効率良く、頭頚部に伝達することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下図面を参照しながら本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0015】
まず、図1、図2、図3及び図4を参照して、本発明の安眠枕の一実施例である安眠枕の構成及び使用方法を説明する。ここで、図1は枕の分解斜視図であり、図2及び図3は枕の長手方向の断面図であり、枕に頭が載置される前の状態を図示しており、図3は枕に頭が載置された状態を図示している。図4は、安眠枕の上面図である。
【0016】
11は直方体形状の枕本体であり、この枕本体11には上下方向に延びる複数の円形開口部11aが略等間隔に多数形成されており、枕上に載置される頭部の頭頚部の略直下に対応した領域には、矩形空洞部11b(開口部)が上下方向に延びて設けられている。枕本体11は高反発弾性材料によって構成されており、枕本体11は、頭部が載置されると下方に弾性変形する。
【0017】
12は略直方体形状の筐体保持部材であり、この筐体保持部材12には上下方向に延びる円形開口部12aが略等間隔に複数形成されており、その内側において振動筐体13を保持している。なお、筐体保持部材12の下面に振動筐体13を固定し、吊り下げ状態で保持してもよい。
【0018】
図2に図示するように、筐体保持部材12は、矩形空洞部11bを覆うようにして枕本体11上に載置されており、振動筐体13は矩形空洞部11bの上方に配置されている。すなわち、図4に図示するように、振動筐体13は、平面視において矩形空洞部11bの内側領域に配置された状態となっている。
【0019】
筐体保持部材12は、枕の使用状態において、押下げ力を受けると図3に図示するように、その一部が振動体筐体13とともに枕本体11の矩形空洞部11b内に進入するようになっている。
【0020】
14は、枕本体11の上面に載置される低反発枕シートであり、この低反発枕シートには、筐体保持部材12との干渉を避けるための凹形状部14aが形成されている。
【0021】
なお、筐体保持部材12の一部を矩形空洞部11b内に押し込み、枕の未使用時において、振動筐体13を予め矩形空洞部11b内に進入させた状態としてもよい。
【0022】
上述の構成において、枕に頭部を載置すると、頭部から押下力を受けて枕本体11及び筐体保持部材12における頭部との接触部分が頭部に沿った形状に弾性変形する。
【0023】
このとき、筐体保持部材12のうち振動筐体13を保持した保持部の下方には、上下方向に延びる矩形空洞部11bが設けられているため、この保持部は、大きく弾性変形することなく矩形空洞部11b内に進入する。その結果、頭部と振動筐体13との間に所定の厚みを持った筐体保持部材12が介在することになるため、振動筐体13と頭部との接触を防止することができる。また、安眠枕が載置されるベッドシートなどの載置面に対して、振動筐体13は、非接触状態となっているため、振動筐体13の振動を効率よく、頭頚部に伝達することができる。
【0024】
図3に図示するように、振動筐体13が空洞部11b内に位置する状態で、振動筐体13を振動させると、この振動が筐体保持部材12及び枕本体11を介して、頭頚部に伝達されるため、入眠効果を得ることが期待できる。
【0025】
次に、振動筐体13について、図6及び図7を参照して説明する。ここで、図6は、振動筐体13の斜視図であり、図7は振動筐体13の垂直方向の断面図である。
【0026】
筐体131の下面には、可動鉄片支持部材132が上方に延びて設けられており、この可動鉄片支持部材132の上端部には凸形状の可動鉄片支持部132aが形成されており、この可動鉄片支持部132aにおいて可動鉄片133が支持されている。
【0027】
この可動鉄片133の先端部にはウエイト134が取り付けられている。可動鉄片支持部材132にはリターンマグネット135が取り付けられており、リターンマグネット135の可動鉄片支持部材132を挟んだ反対側には、ボビン136が筐体131の下面に固定配置されている。
【0028】
ボビン136の外周面には、コイル136aが巻き回されており、このボビン136の径方向中央部には、鉄芯136bが上下方向に延びて設けられている。
【0029】
コイル136aには、不図示の制御回路から電源ケーブル136cを介して電力が供給されるようになっている。
【0030】
コイル136aに通電する前の状態において、可動鉄片133はリターンマグネット135に吸着しており、コイル136aに通電すると、可動鉄片133はリターンマグネット135の磁力に抗して鉄芯136bに吸引される。このように、コイル136aへの通電状態を切り替えることにより、可動鉄片133を駆動し、結果的に筐体131を振動させることができる。
【0031】
なお、可動鉄片支持部132aの形状は、可動鉄片133の駆動範囲を制限できるような凸形状に構成されており、コイル136aへの通電時において、可動鉄片133は鉄芯136bに接触する手前で、可動鉄片支持部132aに当接して停止するようになっており、リターンマグネット135における可動鉄片133との当接部には、防音処理としての緩衝部材(例えば、ゴム)が施されている(不図示)。これにより、当接の際に発生する当接音が睡眠誘発を妨げる異音となって、聴覚に入るのを防止できる。
【0032】
なお、可動鉄片133が鉄芯136bに当接する構成としてもよいが、この構成とした場合には、鉄芯136bとの当接部に、防音処理としての緩衝部材(例えば、ゴム)が施すとよい。(不図示)
次に、図8を用いて、コイル136aへの通電状態を制御する制御回路141の構成について説明する。ここで、図8は、制御回路141の回路構成を図示したブロック図である。141aは制御回路全体の制御を司るCPUであり、141bは定周波数のクロック信号をCPU141aに供給する発振子である。141cはCPU141aからの制御信号に基づきボビン136bに巻き回されたコイル136aに電流を出力する出力回路である。
【0033】
141dはリセット回路であり、電源をオンする場合に、電源電圧が正常に立ち上がり更に周辺回路が安定するまでCPU141aをリセット状態に保持する。また、電源オフ時には瞬時にCPU141aや周辺ロジックを初期状態に戻す。141eは電源電圧をCPU141a、出力調整回路141f及び出力回路141cに分配する電源制御回路である。141fは出力調整回路であり、無段階ボリュームで出力の大きさを設定する。
【0034】
141gは動作モード選択スイッチであり、この動作モード選択スイッチ141gを操作することにより、振動筐体13の振動パターンを選択することができる。
【0035】
本実施例では、デルタ帯域に属する信号を出力するデルタモードと、母親が赤子を寝かしつける時のたたき振動を擬似的に表現したマザーモードと、列車に揺られている時の心地よいレールの響きを擬似的に表現したトレインモードとからなる3つの振動パターンを選択できるようにしている。なお、これらの3つの振動パターンのうちいずれか一つを削除してもよいし、振動パターンを一つだけにしてもよい。
【0036】
各振動パターンの波形を図9に示しており、(a)がデルタモードであり、(b)がマザーモードであり、(c)がトレインモードである。デルタモードに設定された場合、出力される信号が脳波のデルタ波帯域に属する3.5HZから0.75HZまで180秒の周期で漸減(第1の出力信号)するようになっており、マザーモードに設定された場合、0.75HZの固定周波数の信号を出力(第2の出力信号)するようになっている。
【0037】
トレインモードに設定された場合、コイル136aを150ms通電→300ms停止→コイル136aを150ms通電→1000ms停止、といった周期パターンで可動鉄片133を駆動し、振動筐体13を振動させる(第3の出力信号)。これにより、使用者は目的や体調に応じた最適な振動パターンを選択することができる。なお、上記信号に1/fゆらぎのパターンで振動する1/fゆらぎ信号を重畳してもよい。また、本明細書において、「脳波のデルタ波帯域」とは、0.5HZから4.0HZまでの帯域を意味する。
【0038】
141hはCPU141aに対して動作開始及び停止を指示する動作開始/停止スイッチである。141iは動作時間選択スイッチであり、振動筐体13を振動させる時間を、30分、15分の2段階に調整できるようにしている。
【0039】
141jはLEDであり、振動筐体13の振動パターンの選択に応じて発光及び消灯するようになっている。
【0040】
なお、筐体保持部材12として弾性材料からなる板材を採用し、該板材の下面に振動筐体13を固定するとともに、該板材を枕本体11上における空洞部11bに差し渡すように配置して、矩形空洞部11b内に振動筐体13を予め挿入し安眠枕を構成してもよい。
【0041】
さらに、図5に図示するように、枕本体11の内側に振動筐体13を格納する構成であってもよい。すなわち、図5に図示する安眠枕では、筐体保持部材12を省略するとともに、枕本体11の内側に空洞部11bを設けて、この空洞部11bの天井部(閉塞部)に振動筐体13を接着固定している。これにより、部品点数の削減によるコストの削減をはかることができる。
【実施例2】
【0042】
本実施例の枕には、実施例1の振動筐体13とは異なる振動筐体が組み込まれている。なお、実施例1と同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
図10を参照して、本実施例の振動筐体の構成について説明する。ここで、図10は、本実施例の振動筐体の分解斜視図である。
【0044】
21aは上側筐体であり、21bは下側筐体であり、上側筐体21a及び下側筐体21bにより筐体21が構成される。
【0045】
23は振動板であり、この振動板23の図中左右両端部には凸形状の腕部23aが設けられており、これらの腕部23aにはそれぞれ、図中左右方向に延びる2つの長穴部31が形成されている。
【0046】
下側筐体21bの上端部には、腕部23aを支持する支持部52が下側筐体21bの内側方向に突出して設けられている。
【0047】
振動板23の下面の中央部には、略直方体形状のウエイト24が取り付けられており、ウエイト24の左右両側には図中左右方向に延びる2つの長穴部23bがウエイト24からの距離を略等しくして形成されている。
【0048】
これらの長穴部23bの下側領域には、振動板23を駆動するためのソレノイド25が2つ設置されている。
【0049】
ソレノイド25を構成する上下方向に進退可能な可動鉄芯251の先端部には、ネジ溝部251aが形成されており、このネジ溝部251aは、振動板23の長穴部23bに対して下側から挿入されている。
【0050】
可動鉄芯251に形成されたネジ溝部251aには、振動板3の上側から半球形状の上側ユニバーサルナット261a及び下側から半球形状の下側ユニバーサルナット261bが振動板23を挟み込むようにして締結されており、これらのユニバーサルナット261の締結状態において、各ユニバーサルナット261の球面部分は、振動板23の長穴部23bに係合している。
【0051】
ソレノイド25の固定金具125には、ビス穴部125bが形成されており、このビス穴部125bに締結されるビスを通すための穴部212bが下側筐体21bに形成されている。ビス穴部125b及び穴部212bに不図示のビスを締結することにより、ソレノイド25は筐体21に対して固定される。
【0052】
27は振動板23を押さえるためのゴム板であり、上側筐体21a及び振動板23の間に配置されている。このゴム板27のうち、振動板23の長穴部23aに対応する領域にはビス穴部27aが形成されている。下側筐体21bの支持部52のうち、振動板23の長穴部31に対応した領域には、ビス穴部27aに対応するビス穴部52aが形成されている。
【0053】
次に、図11を参照して、ソレノイド25の構成について説明する。ここで、図11は、ソレノイド25の分解斜視図である。
【0054】
可動鉄芯251の先端部には、ネジ溝部251aが形成されており、可動鉄芯251の表面には、低摩擦部材としてのフッ素樹脂が施されている。
【0055】
252はボビンであり、このボビン252に巻き回したコイル253への通電状態を制御することにより、可動鉄芯251は上下方向に駆動される。なお、コイル253への通電状態は、実施例1と同様に制御回路141によって制御される。
【0056】
255は一対の永久磁石であり、磁石保持部材256によって保持されている。磁石保持部材256の中央部には、ボビン252の空洞部252aに対応した領域に開口部256aが形成されている。
【0057】
125は、コの字形状の固定金具であり、永久磁石255によって磁化されている。この固定金具125には、開口部125aが形成されており、この開口部125aから可動鉄芯251が上側に突出している。永久磁石255及び磁石保持部材256は、磁石支持部材257上に支持されており、この磁石支持部材257は、固定金具125にカシメられて固定されており、その略中央には開口部256aと同径の開口部257aが形成されている。
【0058】
次に、図12、図13を参照して、本実施例の振動体の動作について説明する。ここで、図12は、本実施例の振動体の動作を図示した動作説明図である。図13は、本実施例のソレノイド25の動作説明図であり、(a)は非通電時におけるソレノイドの断面図であり、(b)は通電時におけるソレノイドの断面図である。
【0059】
コイル253に通電する前の状態において、可動鉄芯251は、図13(a)に図示するように、ボビン252の空洞部252a内における下側駆動端(第2の駆動端)に位置している。この下側駆動端に位置する状態で、CPU141aを駆動してコイル253への通電動作を開始すると、可動鉄芯251は、ボビン252及びコイル253による電磁作用により、永久磁石255の吸引力に抗して下側駆動端から上方へ移動する。
【0060】
なお、可動鉄芯251が下側駆動端に位置するとき、可動鉄芯251の先端部に連結された振動板23は下に凸の形状となっている。可動鉄芯251が上方に移動するのに連動して、可動鉄芯251に連結された振動板23は、両端が支持された状態で上側に押し込まれるため、下に凸の形状から平板形状に変形する。この平板形状に一旦戻った状態から、可動鉄芯251が更に上方へ移動すると、振動板23は可動鉄芯251によって更に上方に押し込まれ、平板形状から上に凸の形状に弾性変形する。そして、弾性変形した振動板23の曲げ応力により、可動鉄芯251は上側駆動端(第1の駆動端)に達して停止する。
【0061】
このように、両端が支持された状態で振動板23を振動させることにより、振動板23の両端に形成された腕部23aを介して、筐体21全体に振動を伝達することができる。この振動のタイミングを、実施例1と同様に図8に示す動作モード選択スイッチ141gを操作して、睡眠誘発に適した振動パターンに設定することにより、振動体による振動が筐体保持部材12及び枕本体11を介して頭頚部に伝達されるため、入眠効果を得ることが期待できる。
【0062】
また、本実施例では、可動鉄芯251を振動板23に対して吊り持ち支持しているユニバーサルナット261が、振動板23の振動動作に応じて振動板23の長穴部23b内を移動できる構成となっているため、振動板23を大きく揺らすことができる。さらに、長穴部23bに接触するユニバーサルナット261の接触部分の形状を球面とすることにより、摩擦抵抗を減らしているため、ユニバーサルナット261が長穴部23b内を摺動しながら移動するときに、睡眠誘発の妨げとなる異音が発生するのを抑制できる。
【0063】
また、振動板23の腕部23aに形成されたビス穴部31が長穴形状となっており、振動板23の振動動作に応じて、ビス穴部31内をビスが移動できる構成となっているため、振動板23を大きく振動させることができる。
【0064】
さらに、可動鉄芯251の表面には低摩擦部材としてのフッ素樹脂が施されているため、例えば、頭の向きなど睡眠姿勢を変える際に枕に衝撃が加わり、可動鉄芯251が固定金具125などに接触した場合に、睡眠の妨げとなる異音が発生するのを抑制することができる。
【0065】
振動体の動作説明に戻る。可動鉄芯251が上側駆動端に達した状態において、コイル253への通電が絶つと、可動鉄芯251は、その自重、ウエイト24及び永久磁石255の吸引力により下方へ移動する。そして、振動板23が所定量だけ下に凸の状態に弾性変形すると、この弾性変形した振動板23の曲げ応力により、可動鉄芯251の下方への移動が阻止され、可動鉄芯251は、図13(a)に図示するように磁石保持部材256の上方に位置する下側駆動端に停止する。
【0066】
このように、本実施例では、弾性変形する振動板23の曲げ応力により、永久磁石255に引き寄せられる可動鉄芯251の永久磁石255への吸着を防止している。これにより、可動鉄芯251が永久磁石255の磁力により磁石保持部材256に吸着して衝突音が生じるのを防止できるため、入眠の妨げとなる異音の発生を抑制することができる。
【実施例3】
【0067】
本実施例の枕には、実施例1の振動筐体13とは異なる振動筐体が組み込まれている。なお、実施例1と同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0068】
まず、図14、図15を用いて、本実施例の振動筐体の構成について説明する。ここで、図14は本実施例の振動筐体の組み立て完成図であり、図15は本実施例の振動筐体の分解斜視図である。161aは上側筐体であり、161bは下側筐体であり、上側筐体161a及び下側筐体161bによりソレノイド25や振動板163を収容する筐体161が構成される。なお、ソレノイド25の構成は、実施例2と略同様である。
【0069】
163は振動板であり、この振動板163の図中左右両端部は、下側筐体161bの上端部に形成された凹形状の支持部171に支持されている。支持部171に支持された振動板163は、支持部171に形成された不図示の穴部に挿入される振動板位置決めピン166により位置決め固定されており、さらに上筐体161aとの間には、板形状のゴム板164が介在している。
【0070】
振動板163の略中央部には、穴部163aが形成されており、この穴部163aにユニバーサルナット165を用いて実施例2と同様の方法によりソレノイド25の可動鉄芯11が連結されている。
【0071】
本実施例のボビン252、永久磁石253及び固定金具125は、磁力によってユニット化されており(以下「可動鉄芯駆動ユニット」という)、この可動鉄芯駆動ユニットは、永久磁石253及び可動鉄芯251の間に働く磁力によって、筐体161内の空間部における特定の停止位置に浮いた状態となっている。
【0072】
本実施例の振動体の動作は、実施例2と同様であるため、説明を省略する。
【0073】
本実施例では、ソレノイド25自体が振動板163を振動させるウエイトの役割を果たしているため、実施例2のウエイト24に相当する部材が不要となる。これにより、コストを削減することができる。
【0074】
実施例2及び3の安眠枕は、以下の発明を具体化したものでもあり、上記実施例に様々な変更が加えられて使用されるものである。
〔発明1〕
筐体と、前記筐体に組み込まれ、両端が支持された振動板と、コイルが巻き回されたボビンと、前記コイルへの通電状態を制御する制御回路と、
前記振動板に連結されるとともに、前記コイルへの通電状態に応じて、第1の駆動端と、この第1の駆動端の下方に位置する第2の駆動端との間で駆動され、前記振動板を弾性変形させる可動鉄芯と、前記可動鉄芯の下側に配置され、該可動鉄芯を引き寄せる永久磁石とを有し、前記可動鉄芯は、前記弾性変形した前記振動板により、前記第2の駆動端から下方への移動が阻止され、前記第2の駆動端は、前記永久磁石よりも上側に設定されていることを特徴とする安眠枕。
〔発明2〕
前記可動鉄芯の表面には、該可動鉄芯よりも摩擦抵抗が低い低摩擦部材が形成されていることを特徴とする発明1に記載の安眠枕。
〔発明3〕
前記振動板には長穴部が形成されており、前記可動鉄芯の先端部は、前記長穴部に締結手段を用いて連結されており、前記可動鉄芯は、前記振動板が弾性変形するのに応じて、前記長穴部内において移動可能であること特徴とする発明1又は2に記載の安眠枕。
〔発明4〕
前記ボビンは前記永久磁石に吸着しており、前記永久磁石には前記ボビン及び前記永久磁石を筐体に固定するための固定部材が取り付けられていることを特徴とする発明1乃至3のいずれか一つに記載の安眠枕。
〔発明5〕
前記振動板の略中央には、錘が取り付けられており、前記長穴部は、前記錘を挟んだ両側に該錘からの距離を略等しくして2つ形成されていることを特徴とする発明4に記載の安眠枕。
〔発明6〕
前記ボビン及び前記永久磁石は、前記永久磁石及び前記可動鉄芯の間に働く磁力により、前記筐体内の所定の位置に浮いていることを特徴とする発明1又は2に記載の安眠枕。
【実施例4】
【0075】
本実施例の枕には、実施例1の振動筐体13とは異なる振動筐体が組み込まれている。なお、実施例1と同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0076】
図16は本実施例の振動筐体の分解斜視図であり、図17は振動体の動作を説明した動作説明図である。
【0077】
筐体71の内側に、両端が支持された状態でリーフススプリング73を組み込み、このリーフススプリング73の下面に鉄片74を取り付ける。
【0078】
鉄片74の下方には、電磁石75が筐体71の底面に固定配置されており、この電磁石75に対する通電状態を制御することにより、リーフスプリング73が振動するようになっている。なお、電磁石75に対する通電状態は、実施例1と同様に、制御回路141によって行う。
【0079】
すなわち、電磁石75への通電状態をオンとオフとの間で切り替えることにより、リーフスプリング73及び鉄片74を、図17に点線で図示する下側駆動端X及び上側駆動端Yとの間で振動させるようにしている。リーフスプリング73を振動させることにより、筐体71が全体として振動し、この振動体による振動が筐体保持部材12及び枕本体11を介して頭頚部に伝達されるため、入眠効果を得ることが期待できる。
【0080】
また、図17に点線で示すように、リーフスプリング73の下側駆動端Xは、電磁石75よりも上側に設定されているため、下側駆動端Xに下動したときに、鉄片74が、電磁石75に吸着され、衝突音が発生することはない。これにより、睡眠の妨げとなる異音が発生するのを防止できるため、高い入眠効果を得ることができる。
【0081】
次に、本実施例の振動筐体の構成について詳細に説明する。71aは筐体蓋であり、71bは筐体本体であり、筐体蓋71a及び筐体本体71bによって振動体の筐体71が構成される。
【0082】
筐体蓋71aには、左右両端部が下方に折れ曲がった曲げ部81aが形成されており、この曲げ部71aが筐体本体7bの左右両端部に設けられた凹形状の筐体溝部81bに当接している。筐体蓋71aにおける曲げ部81aよりも内側には、先細り形状のスプリング板押さえ部82a(挟み込み部)が筐体下側方向に延びて形成されており、筐体本体71bにおける筐体溝部82bよりも内側には、先細り形状のスプリング板支持部81b(挟み込み部)が筐体上側方向に延びて設けられており、スプリング板73は、スプリング押さえ部82a及びスプリング板支持部81bによってその両端が挟みこまれている。
【0083】
筐体蓋71aの長手直交方向の寸法は、筐体本体71bの長手直交方向の寸法よりも、筐体71の約厚み寸法の2倍だけ短く設定されており、筐体蓋71aは、筐体本体71bの内周面に設けられた、筐体本体71bの長手方向に延びる蓋支持部材81c上に、載置されるようになっている。
【0084】
スプリング板73には、スプリング板ビス穴部73aがスプリング板73の長手方向に3つ並んで形成されており、鉄片74には、スプリング板ビス穴部73aに対応する、鉄片ビス穴部74aが3つ並んで形成されており、スプリング板ビス穴部73a及び鉄片ビス穴部74aにビス83を締結することにより、鉄片74をスプリング板73に対して固定することができる。
【0085】
スプリング板73が上下に振動(弾性変形)すると、スプリング板73は、スプリング押さえ部82a及びスプリング板支持部81bに対して、摺動しながら、矢印L1又はL2方向に移動するようになっており、このスプリング板73の摺動領域には、防音処理としてのゴム84(ラテックスゴム)が配されている。これにより、スプリング板73がスプリング押さえ部82a及びスプリング板支持部81bに対して摺動するときの摺動音が抑制され、摺動音が睡眠の妨げとなって聴覚に入るのを防止できる。
【0086】
3つのビス穴部73aのうち左右両側に形成されたビス穴部73aに締結されるビス83とスプリング板73との間には、中央に開口部を有しこの開口部をビス83のネジ部に挿入させたスプリング板押えゴム85を介在させている。
【0087】
鉄片74は、錘としての役割も有しており、スプリング板3を大きく振動させるのに寄与している。
【0088】
電磁石75は、ボビン75aにコイル75bを巻き回した構成となっており、左右両側が上方に折れ曲がった曲げ部76aを有する電磁石固定部材76の凹部に固定されている。
【0089】
筐体本体71bに組み込まれた電磁石固定部材76は、筐体71の外側から不図示のビスをビス穴部81d、76bに締結することにより、筐体本体71bの底部に固定される。なお、本実施例では、鉄片及びスプリング板によって、振動体を構成したが、磁性及び弾性を有する一つの板状部材(例えば鉄板)を振動体としてもよい。
【0090】
次に、図17を参照して、振動体の動作について説明する。コイル75bに通電する前の状態において、スプリング板73は、スプリング押さえ部82a及びスプリング板支持部81bに挟み込まれた状態で、水平方向に延びており、この位置を振動の基準位置とする。
【0091】
基準位置にスプリング板73及び鉄片74が位置する状態で、コイル75bへの通電を開始すると、鉄片74が電磁石75に吸引され、スプリング板73は、スプリング押さえ部82a及びスプリング板支持部81bに摺動しながら矢印L1方向に移動し、下に凸に弾性変形する。スプリング板73の摺動領域には、防音処理としてのゴム84が施されているため、スプリング板73が、スプリング押さえ部82a及びスプリング板支持部81bに対して摺動するときに、入眠の妨げとなる異音が発生するのを防止できる。
【0092】
また、スプリング板73の下側駆動端Xは電磁石75の上方に設定されており、スプリング板73が下に凸に弾性変形しても、鉄片74がコイル75に当接することは無い。したがって、鉄片74がコイル75に吸着して、その衝突音が睡眠の妨げとなる異音となって聴覚に入るのを防止できる。
【0093】
再び、振動体の動作説明に戻る。スプリング板73が下側駆動端Xに位置する状態で、コイル57bへの通電を絶つと、弾性変形したスプリング板73の弾性力により、スプリング板73は、上に凸に弾性変形する。なお、スプリング板73の上側駆動端は、筐体蓋71aよりも下方に設定されているため、スプリング板73は、上に凸に弾性変形しても筐体蓋71aに衝突しない。そして、スプリング板73の弾性力により基準位置に戻る途中で、コイル75bに通電すると、電磁石75に鉄片74が吸引され、スプリング板73は、再び下方駆動端Xに移動する。
【0094】
このように、スプリング板73を上下方向(挟み込み方向)に振動させると、筐体71が全体として振動し、この振動体による振動が筐体保持部材12及び枕本体11を介して頭頚部に伝達されるため、入眠効果を得ることが期待できる。
【0095】
本実施例の安眠枕は、以下の発明を具体化したものでもあり、上記実施例に様々な変更が加えられて使用されるものである。
〔発明1〕
筐体と、
両端が前記筐体に挟み込まれた、弾性かつ磁性を有する振動体と、
前記振動体に対して前記挟み方向に並んで配置される、コイルを巻き回したボビンとを有し、
前記振動体は、前記コイルに対して通電すると、前記ボビンに吸引されて前記挟み方向のうち一方向に弾性変形し、該一方向に弾性変形した状態で前記コイルへの通電を絶つと、弾性力により前記一方向とは反対の他方向に弾性変形し、
前記振動体は、前記一方向に弾性変形した前記振動体の弾性力により、前記ボビンへの吸着が阻止されることを特徴とする安眠枕。
【0096】
〔発明2〕
前記振動体は、弾性板と、該弾性板のうち前記ボビンに対向する領域に取り付けられた鉄片と、から構成されており、
前記弾性板の両端は、前記筐体に挟み込まれていることを特徴とする発明1に記載の安眠枕。
【0097】
〔発明3〕
前記筐体は、前記振動体を挟み込むための挟み込み部を有し、
前記振動体は、前記弾性変形に応じて、前記挟み込み部に対して摺動しながら前記挟み込み方向に直交する方向へ移動可能であることを特徴とする発明1又は2に記載の安眠枕。
【0098】
〔発明4〕
前記挟み込み部に対して摺動する前記振動体の摺動領域には、摺動する際に発生する摺動音を抑制するための防音処理が施されていることを特徴とする発明3に記載の安眠枕。
【0099】
〔発明5〕
前記摺動領域には、前記防音処理としてゴムが施されていることを特徴とする発明4に記載の安眠枕。
【0100】
〔発明6〕
前記挟み込み部は、前記振動体に向かって先細り形状となる凸部を有することを特徴とする発明1乃至5に記載の安眠枕。
【0101】
なお、上述の実施例1乃至4では、振動筐体を頭頚部が当接する枕本体の当接部の略直下に配置したが、枕内における他の位置に配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】安眠枕の分解斜視図である。
【図2】安眠枕の長手方向の断面図であり、枕に頭が載置される前の状態を図示している。
【図3】安眠枕の長手方向の断面図であり、枕に頭が載置された状態を図示している。
【図4】安眠枕の上面図である。
【図5】図1とは異なる安眠枕の断面図である。
【図6】振動体の斜視図である。
【図7】振動体の垂直方向の断面図である。
【図8】制御回路の回路構成を図示したブロック図である。
【図9】各振動パターンの波形図であり、(a)がデルタモード、(b)がマザーモード、(c)がトレインモードを示している。
【図10】実施例2の振動体の分解斜視図である。
【図11】実施例2のソレノイドの分解斜視図である。
【図12】実施例2の振動体の動作を図示した動作説明図である。
【図13】実施例2のソレノイドの動作説明図であり、(a)は非通電時におけるソレノイドの断面図であり、(b)は通電時におけるソレノイドの断面図である。
【図14】実施例3の振動体の組み立て完成図である。
【図15】実施例3の振動体の分解斜視図である。
【図16】実施例4の振動体の分解斜視図である。
【図17】実施例4の振動体の動作説明図である。
【符号の説明】
【0103】
11 枕本体
12 筐体保持部材
13 振動筐体
14 低反発枕シート
131 21 筐体
132 可動鉄片支持部材
133 可動鉄片
134 ウエイト
135 リターンマグネット
136 ソレノイド
141 制御回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる空洞部が形成された、弾性材料からなる枕本体と、
振動体を収容し、該振動体の振動が伝達されて振動する振動筐体とを有し、
該安眠枕の使用状態において、該枕本体に押下力が加わって下方に弾性変形すると、前記振動筐体が前記空洞部内を下方へ移動することを特徴とすることを安眠枕。
【請求項2】
該安眠枕の使用状態において、前記振動筐体は前記空洞部内に位置していることを特徴とする請求項1に記載の安眠枕。
【請求項3】
前記振動筐体を保持する弾性材料からなる筐体保持部材を有し、該筐体保持部材は、前記枕本体の上面に前記空洞部を覆うようにして載置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の安眠枕。
【請求項4】
前記空洞部は、上端部が閉塞され、下端部が開口した形状に構成されており、前記振動筐体は該空洞部内における前記閉塞部に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の安眠枕。
【請求項5】
前記振動体は、電磁式の振動体を有することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載の安眠枕。
【請求項1】
上下方向に延びる空洞部が形成された、弾性材料からなる枕本体と、
振動体を収容し、該振動体の振動が伝達されて振動する振動筐体とを有し、
該安眠枕の使用状態において、該枕本体に押下力が加わって下方に弾性変形すると、前記振動筐体が前記空洞部内を下方へ移動することを特徴とすることを安眠枕。
【請求項2】
該安眠枕の使用状態において、前記振動筐体は前記空洞部内に位置していることを特徴とする請求項1に記載の安眠枕。
【請求項3】
前記振動筐体を保持する弾性材料からなる筐体保持部材を有し、該筐体保持部材は、前記枕本体の上面に前記空洞部を覆うようにして載置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の安眠枕。
【請求項4】
前記空洞部は、上端部が閉塞され、下端部が開口した形状に構成されており、前記振動筐体は該空洞部内における前記閉塞部に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の安眠枕。
【請求項5】
前記振動体は、電磁式の振動体を有することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載の安眠枕。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−289054(P2006−289054A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−344391(P2005−344391)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(390018913)株式会社ホーマーイオン研究所 (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(390018913)株式会社ホーマーイオン研究所 (10)
【Fターム(参考)】
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