説明

完全燃焼再生装置用添加剤を用いる低CO部分燃焼運転でのNOXの低減

本発明は、再生装置を、NO低減触媒系を用いて部分CO燃焼方式で運転することによって、流動接触分解(FCC)再生装置からの窒素酸化物(NO)濃度を低減することに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生装置を、NO低減触媒系を用いて部分CO燃焼方式で運転することによって、流動接触分解(FCC)再生装置からの窒素酸化物(NO)濃度を低減することに関する。
【背景技術】
【0002】
窒素酸化物(主としてNOおよびNO)は、高温(炭化水素分解プロセスで用いられる触媒を、一酸化炭素燃焼促進剤の存在下に再生する温度など)で形成されることが見出されている。石油原料材などの炭化水素を分解すると、触媒粒子上にコークが析出する。粒子上にコークが形成することにより、触媒粒子の活性は次第に低減する。結局、触媒の活性は、コークを粒子から燃焼し尽くさなければならない点に低下する。この工程(通常「再生」と呼ばれる)は、触媒粒子を空気などの高温再生ガスと接触させることにより、バッチまたは連続ベースでなしうる。コークを燃焼し尽くし、これにより触媒活性が回復し、同時に触媒が加熱される。再生装置でコークを触媒から燃焼することによって形成された煙道ガスを処理して、粒子状物質を除去し、COをCOに転化してもよい。その後、煙道ガスは通常、大気中に放出される。
【0003】
殆どのFCC装置は、現在、高い活性および選択性を有するゼオライト含有触媒を用いる。再生後に触媒上のコークの量が少なければ、これらの触媒は最も良好に機能すると考えられる。通常用いられるFCC再生装置には二つのタイプが存在する。即ち、高効率再生装置およびバブル床タイプである。高効率再生装置は、リサイクルされる再生触媒を廃触媒と混合し、コークの多くを、高速流動床コーク燃焼装置において廃触媒から燃焼し、次いで触媒および煙道ガスを、希釈相移送ライザー上で放出する。その際、いくらか更なるコーク燃焼が生じ、殆どのCOがCOに後燃焼される。これらの再生装置は、COを完全に燃焼するように設計され、通常、比較的コークを含まない再生触媒、COを殆ど含まない煙道ガスおよびあまり多くない量のNOを製造する。バブル床再生装置は、触媒をバブル流動床として保持し、それに廃触媒が添加され、またそれから再生触媒が除去される。これらの再生装置は通常、高効率再生装置より多くの触媒在庫(inventory)を必要とする。これは、バブル流動床では、ガス/触媒の接触が高効率再生装置ほど効果的でないからである。多くのバブル床再生装置は、完全CO燃焼方式で運転される。即ち、CO/COモル比が少なくとも10である。製油所では、熱を保全し、空気汚染を最少化するため、COを触媒再生装置内で完全に燃焼することが試みられている。触媒再生装置においては、再生装置の煙道ガスと共にNOを放出することなく、全てのコークを完全に燃焼し、COを転化することが困難である。政府の排出規制基準が次第に厳しくなるにつれて、大気に放出される煙道ガス中に存在してもよいNO量が限定される。環境問題に関して、より多くの努力が、NO排出を低減する方法を見出すのに費やされている。
【0004】
再生装置からのNO排出量を減少するのに数種の方法が提案されている。これには、完全CO燃焼方式の再生装置において、NOの形成が抑制されるか、NOの減少が触媒される、FCC反応装置と適合性のある触媒または添加剤を用いることが含まれる。しかし本発明者らは、驚くべき事に、典型的には完全CO燃焼再生装置で用いられるNO低減触媒系が、低CO濃度での部分燃焼方式での再生装置運転を用いて、向上されたNO低減をもたらしうることを発見した。
【0005】
【特許文献1】米国特許第3,702,886号明細書
【特許文献2】米国特許第3,770,614号明細書
【特許文献3】米国特許第3,709,979号明細書
【特許文献4】米国特許第3,832,449号明細書
【特許文献5】米国特許第3,948,758号明細書
【特許文献6】米国特許第4,076,842号明細書
【特許文献7】米国特許第4,016,245号明細書
【特許文献8】米国特許第4,440,871号明細書
【特許文献9】米国特許第4,310,440号明細書
【特許文献10】欧州特許出願第229,295A号明細書
【特許文献11】米国特許第4,254,297号明細書
【特許文献12】米国特許第4,500,651号明細書
【特許文献13】米国特許第4,229,424号明細書
【特許文献14】米国特許第4,421,636号明細書
【特許文献15】米国特許第5,289,976号明細書
【特許文献16】米国特許第5,306,418号明細書
【特許文献17】米国特許第4,502,947号明細書
【特許文献18】米国特許第4,173,527号明細書
【特許文献19】米国特許第3,821,103号明細書
【特許文献20】米国特許第4,820,404号明細書
【非特許文献1】Atlas of Zeolite Structure Types(W.H.MeierおよびD.H.Olson編、Butterworth−Heineman、第3版、1992年)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、窒素含有重質炭化水素質原料を、NO排出を低減して、より軽質の生成物に接触分解する方法であって、
a)前記原料を流動接触分解(FCC)反応域で触媒系と接触させることによって、前記原料を分解する工程であって、
前記反応域は、分解生成物および廃分解触媒の混合物を製造するための接触分解条件で運転され、
前記廃分解触媒は、窒素化合物およびコークをその上に析出して有し、
前記触媒系は、(i)少なくとも一種の固体酸成分、(ii)元素周期律表第1および3族よりなる群から選択される一種以上の元素および元素周期律表第4〜15族よりなる群から選択される一種以上の元素からなる少なくとも一種の金属含有成分;並びに酸素および硫黄の少なくとも一種、および(iii)少なくとも一種の担体、充填材または結合材を含み、第1および3族よりなる群から選択される一種以上の元素、第4〜15族よりなる群から選択される一種以上の元素並びに酸素および硫黄の少なくとも一種は、族内および族間の両方で化学的に結合される
ことを特徴とする工程;
b)前記分解生成物を前記廃分解触媒から分離して、分解生成物の蒸気相ストリームを製造する工程であって、前記ストリームは分留域に供給され、窒素化合物および炭素をその上に析出して有する前記廃触媒は、ストリッピング域に供給される工程;
c)揮発性化合物を有する前記廃触媒を、前記ストリッピング域でストリッピングして、コークおよび窒素化合物をその上に析出して有する、ストリッピングされた廃触媒を製造する工程;
d)前記ストリッピングされた廃触媒を、再生域で酸素含有ガスを用いて再生する工程であって、
前記再生域は、再生触媒、並びにCO 0.5〜4vol%およびNO 90vppm超を含む煙道ガスストリームを製造するのに効果的な、部分CO燃焼条件で運転され、
前記煙道ガスストリーム中のNO含有量は減少する
ことを特徴とする工程;および
e)前記再生触媒を、再生域から反応域に導く工程
を含むことを特徴とする接触分解方法を提供する。
【0007】
本発明の他の実施形態は、窒素含有重質炭化水素質原料を、NO排出を低減して、より軽質の生成物に接触分解する方法であって、
a)前記原料を流動接触分解(FCC)反応域で触媒系と接触させることによって、前記原料を分解する工程であって、
前記反応域は、分解生成物および廃分解触媒の混合物を製造するための接触分解条件で運転され、
前記廃分解触媒は、窒素化合物およびコークをその上に析出して有し、
前記触媒系は、(i)少なくとも一種の固体酸成分、(ii)元素周期律表第1および3族よりなる群から選択される一種以上の元素および元素周期律表第4〜15族よりなる群から選択される一種以上の元素からなる少なくとも一種の金属含有成分;並びに酸素および硫黄の少なくとも一種、および(iii)少なくとも一種の担体、充填材または結合材を含み、第1および3族よりなる群から選択される一種以上の元素、第4〜15族よりなる群から選択される一種以上の元素並びに酸素および硫黄の少なくとも一種は、族内および族間の両方で化学的に結合される
ことを特徴とする工程;
b)前記分解生成物を前記廃分解触媒から分離して、分解生成物の蒸気相ストリームを製造する工程であって、前記ストリームは分留域に供給され、窒素化合物および炭素をその上に析出して有する前記廃触媒は、ストリッピング域に供給される工程;
c)揮発性化合物を有する前記廃触媒を、前記ストリッピング域でストリッピングして、コークおよび窒素化合物をその上に析出して有する、ストリッピングされた廃触媒を製造する工程;
d)前記ストリッピングされた廃触媒を、再生域で酸素含有ガスを用いて再生する工程であって、
前記再生域は、再生触媒、並びにCO 0.5〜1vol%およびNO 263vppm超を含む煙道ガスストリームを製造するのに効果的な、部分CO燃焼条件で運転され、
前記煙道ガスストリーム中のNO含有量は減少する
ことを特徴とする工程;および
e)前記再生触媒を、再生域から反応域に導く工程
を含むことを特徴とする接触分解方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本明細書で用いられるNOまたは窒素酸化物との言及は、例えばFCC装置の再生装置オフガスなどのプロセスストリーム中に存在しうる種々の窒素酸化物を言う。従って本用語は、酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)、一酸化二窒素(NO)等およびそれらの混合物を含む全ての種々の窒素酸化物を云う。再生装置オフガス中に存在する窒素酸化物では、典型的にはNOが、存在する全NOの主成分を構成する。NOは通常、再生装置オフガス中で90%を示す。従って、ここでクレームする方法は、特にNOの低減および制御に関する。
【0009】
本発明は、窒素含有重質炭化水素質原料を、NO排出を低減して、より軽質の生成物に分解するためのFCCプロセスを提供する。重質炭化水素質原料は、少なくとも一つの反応域、ストリッピング域、触媒再生域および生成物分留域を含むFCCプロセス装置に送られる。原料は反応域において、425〜600℃、好ましくは460〜560℃でNO低減触媒系に接触する。炭化水素は分解し、コーク、硫黄、窒素化合物を触媒上に析出する。分解生成物は、コーク化または廃触媒から分離される。コーク化触媒は、ストリッピング域で、通常スチームを用いて、揮発性物質をストリッピングされる。好ましくは、熱分解を最少にする、苛酷度の低い条件下でストリッピングを行う。次いで、ストリッピングされた触媒は再生装置に送られ、そこでそれは、触媒上のコークを酸素含有ガス(好ましくは空気または酸素富化空気)の存在下に燃焼することによって再生される。この再生工程により、触媒の活性が回復され、同時に触媒が1202゜F(650℃)〜1382゜F(750℃)に加熱される。再生装置内の環境では、アンモニアなどの還元窒素化合物に転化されるコーク窒素量が減少され、再生域でコーク窒素から製造される窒素酸化物の量が増大される。再生域内の全酸素量は、再生装置が部分燃焼方式で運転されるように限定される。
【0010】
本発明では、通常のいかなるFCC原料を用いてもよい。そのような原料には、典型的には、430〜1050゜F(220〜565℃)の範囲で沸騰する重質炭化水素質原料が含まれる。軽油、1050゜F(565℃)超で沸騰する物質を含む重質炭化水素油、重質および抜頭石油原油、石油常圧蒸留ボトム、石油減圧蒸留ボトム、ピッチ、アスファルト、ビチューメン、他の重質炭化水素残渣、タールサンド油、シェール油、石炭液化プロセス由来の液体生成物およびそれらの混合物などである。そのような原料は、典型的には、望ましくない量の窒素化合物を含む。これが再生装置で窒素酸化物に転化される。FCC原料はまた、軽質または重質サイクル油などのリサイクル炭化水素を含んでいてもよい。このプロセスにおける好ましい原料は、650゜F(343℃)超で沸騰する減圧軽油である。
【0011】
本発明で用いられるNO低減触媒系は、(i)少なくとも一種の固体酸成分、(ii)元素周期律表第1および3族よりなる群から選択される一種以上の元素および元素周期律表第4〜15族よりなる群から選択される一種以上の元素からなる少なくとも一種の金属含有成分;並びに酸素および硫黄の少なくとも一種、および(iii)少なくとも一種の担体、充填材または結合材を含み、第1および3族よりなる群から選択される一種以上の元素、第4〜15族よりなる群から選択される一種以上の元素並びに酸素および硫黄の少なくとも一種は、族内および族間の両方で化学的に結合される。
【0012】
固体酸成分は、好ましくは通常のFCC触媒である。これにはUSY、REYなどの大細孔ゼオライトを含む触媒が含まれる。本発明で用いうる更なる触媒には、天然および合成の両ゼオライトが含まれる。大細孔ゼオライトには、グメリナイト、チャバザイト、ダチアルダイト、クリノプチロライト、フォージャサイト、ヒューランダイト、アナルサイト、レビナイト、エリオナイト、ソーダライト、カンクリナイト、ネフェリン、ラズライト、スコレサイト、ナトロライト、オフレタイト、メソライト、モルデナイト、ブリューステライトおよびフェリエライトが含まれる。合成ゼオライトには、ゼオライトX、Y、A、L、ZK−4、ZK−5、B、E、F、H、J、M、Q、T、W、Z、アルファおよびベータ、オメガ、並びにUSYゼオライトが含まれる。より好ましい大細孔ゼオライトは、フォージャサイト、特にゼオライトY、USYおよびREYである。
【0013】
本発明で有用な触媒は、中細孔ゼオライト、または大細孔および中細孔ゼオライトの混合物でもありうる。本発明を実施する際に用いうる中細孔サイズのゼオライトは、非特許文献1に記載される。これは、本明細書に引用して含まれる。中細孔サイズのゼオライトは、一般には平均細孔直径0.7nm未満、典型的には0.5〜0.7nmを有する。これには、例えばMFI、MFS、MEL、MTW、EUO、MTT、HEU、FERおよびTON構造タイプのゼオライト(IUPACゼオライト命名委員会[IUPAC Commission of Zeolite Nomenclature])が含まれる。そのような中細孔サイズゼオライトの限定しない例には、ZSM−5、ZSM−12、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−34、ZSM−35、ZSM−38、ZSM−48、ZSM−50、シリカライトおよびシリカライト2が含まれる。最も好ましくは、ZSM−5である。これは、特許文献1および特許文献2に記載される。ZSM−11は特許文献3に、ZSM−12は特許文献4に、ZSM−21およびZSM−38は特許文献5に、ZSM−23は特許文献6に、ZSM−35は特許文献7に記載される。上記の特許は全て、本明細書に引用して含まれる。他の適切な中細孔サイズゼオライトには、SAPO−11、SAPO−34、SAPO−41、SAPO−42などのシリコアルミノホスフェート(SAPO)(特許文献8に記載される);クロモシリケート;ガリウムシリケート;鉄シリケート;ALPO−11などのアルミニウムホスフェート(ALPO)(特許文献9に記載される);TASO−45などのチタンアルミノシリケート(TASO)(特許文献10に記載される);ボロンシリケート(特許文献11に記載される);TAPO−11などのチタンアルミノホスフェート(TAPO)(特許文献12に記載される);および鉄アルミノシリケートが含まれる。本発明の一実施形態においては、前記ゼオライトのSi/Al比は、40超である。
【0014】
中細孔サイズのゼオライトは「結晶質混合物」を含んでいてもよい。これは、ゼオライトの合成中に、結晶または結晶質領域内に生じる欠陥の結果であると考えられる。ZSM−5およびZSM−11の結晶質混合物の例は、特許文献13に開示される。これは、本明細書に引用して含まれる。結晶質混合物は、それ自体、中細孔サイズのゼオライトであり、異なるゼオライトのクリスタライトの明確な結晶が、物理的に同じ触媒複合物または熱水反応混合物中に存在するゼオライトの物理的混合物と混同されるものではない。
【0015】
本発明の大細孔および中細孔触媒は、無機酸化物母材成分結合剤中に存在する。これは触媒成分を結合し、そのため触媒生成物は、粒子間および反応器壁との衝突に耐えるのに十分に堅い。無機酸化物母材は、無機酸化物ゾルまたはゲルから作製できる。これを乾燥して、触媒成分を「接着」する。好ましくは、無機酸化物母材は、触媒活性がなく、ケイ素およびアルミニウムの酸化物からなる。また、異なるアルミナ相が、無機酸化物母材中に組み込まれることが好ましい。酸水酸化アルミニウム−γ−アルミナ、ベーマイト、ダイアスポアおよび遷移アルミナ(α−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、δ−アルミナ、ε−アルミナ、κ−アルミナ、ρ−アルミナなど)の種を用いることができる。好ましくは、アルミナ種は、ギブサイト、バイエライト、ノルドストランダイト、ドイエライトなどの三水酸化アルミニウムである。母材物質はまた、リンまたはアルミニウムホスフェートを含んでいてもよい。前記無機酸化物母材中に、大細孔触媒および中細孔触媒が、同じまたは異なる触媒粒子で存在することは、本発明の範囲内である。
【0016】
担持酸物質は、結晶質または非晶質物質のいずれかであり、それ自体、酸性の、表面の酸性点を増大するように変性したものであってもなくてもよい。限定しない例証的な例は、シリカ、石英、砂、アルミナまたは珪藻土上に置かれたHSO、HPO、HBOおよびCH(COOH)や、シリカ、石英、砂、アルミナまたは珪藻土上に置かれたヘテロポリ酸である。結晶質担持酸物質の限定しない例証的な例は、酸処理モレキュラーシーブ、硫酸化ジルコニア、タングステン酸化ジルコニア、リン酸化ジルコニアおよびリン酸化ノビア(nobia)である。
【0017】
固体酸成分は、元素周期律表第1および3族よりなる群から選択される一種以上の元素および元素周期律表第4〜15族よりなる群から選択される一種以上の元素からなる少なくとも一種の金属含有成分と共存する。本発明の触媒系の残り成分は、硫黄および酸素よりなる群から選択される少なくとも一種であってよい。酸素が好ましい。第1および3族よりなる群から選択される元素は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムおよびルテチウムから選択されるいずれかの金属、またはその組み合わせでありうる。好ましくは、第1および3族よりなる群から選択される元素は、ランタンおよびセリウムから選択されるいずれかの金属、またはその組み合わせでありうる。第4〜15族よりなる群から選択される元素は、元素周期律表の第4〜15族よりなる群から選択されるいずれかの元素、またはその混合物でありうる。好ましくは、第4〜15族よりなる群から選択される元素は、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、リン、ガリウム、ゲルマニウム、ジルコニウム、ニオビウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、インジウム、錫、アンチモン、ハフニウム、タングステン、レニウム、イリジウム、白金、金、鉛およびビスマスよりなる群から選択される少なくとも一種である。より好ましくは、第4〜15族よりなる群から選択される元素は、銅、パラジウムおよび銀よりなる群から選択される少なくとも一種である。
【0018】
本発明の触媒系は、金属含有成分との物理的混合または化学的反応によって調製することができる。これは任意に、結合剤(触媒粒子を形成するか、充填剤として機能し触媒活性を適度にする)と組み合わされる。固体酸成分/金属含有成分の全重量の重量比は、1000:1〜1:1000でありうる。好ましくは、この比は500:1〜1:500である。最も好ましくは、この比は100:1〜1:100である。金属含有成分/母材成分の重量比は、100:1〜1:100でありうる。
【0019】
触媒系の金属含有またはNO低減成分は、別個の添加剤粒子として用いてもよく、FCC触媒粒子の必須部分として用いてもよい。NO低減成分は、好ましくはNO低減機能に実質的に悪影響を及ぼさない、少量の他の物質を含んでいてよい。しかし、より好ましくは、NO低減成分は、本質的に上記項目(ii)〜(iii)からなる。NO低減成分を、別個の添加剤粒子として用いる場合、循環FCC触媒粒子の在庫に、NO低減有効量で加える。有効量とは、再生装置の煙道ガス中のNO含有量を、添加剤なしの場合に存在する量未満に減少するのに効果的な量である。NO低減成分を、少なくとも一種の担体、充填材または結合材と結合して、FCCプロセスで用いるのに適切な粒子を形成してもよい。粒子のNO低減成分がFCC触媒粒子の必須部分である場合、好ましくは、それは循環微粒子固体の在庫の0.001〜10wt%、より好ましくは0.01〜5wt%、最も好ましくは0.05〜1wt%を含む。
【0020】
本発明のNO低減触媒系は、FCC再生装置の煙道ガスのNO含有量を減少するのに有効であるが、FCCプロセス中に生じる炭化水素分解反応に関して有する効果は無視できるものである。更に、NO低減触媒系は、CO酸化促進剤(循環微粒子固体の在庫の一部でありうる)と親和性がある。加えて、本発明のNO低減触媒系は、SO低減をもたらす添加剤と共に用いてもよい。これらのSO添加剤はまた、NO低減をももたらすことがある。SO添加剤は、種々の形態のアルミナ、希土類酸化物、アルカリ土類酸化物またはスピネルであることが好ましい。より好ましくは、SO添加剤は、マグネシウム−アルミニウムスピネルである。SO添加剤は、いくつかの触媒供給業者から入手可能であり、Grace−Davison社のDESOXまたはSUPERDESOX、Intercat社のSOXGETTERまたはSuper−SOXGETTERなどである。
【0021】
典型的な部分燃焼方式条件下での再生装置運転においては、CO濃度は一般に4.0vol%超であり、存在するNOは実に少なく、一般にはNO50vppm未満である。そのような高CO濃度で再生装置を出る窒素含有種の大部分は、HCNおよびNHの形態である。これは、NO低減触媒系に対して用いるのに最適ではない。しかし、本発明のCO濃度は、部分燃焼方式で運転され、好ましくはCO0.5〜4.0vol%、より好ましくはCO0.75〜3.0vol%、最も好ましくはCO1.00〜2.0vol%である。更に、NO濃度は、好ましくは90vppm超、より好ましくは150vppm超、最も好ましくは200vppm超である。CO濃度が減少されるにつれて、より多くのNOが製造される。これにより、より多くのNOがCOによって低減され、それによりNO排出が減少される。循環NO低減触媒系が存在することにより、NO低減速度がCOによって増大され、それによりNO排出の更なる減少がもたらされる。
【0022】
高温の再生触媒は、FCC反応域にリサイクルされ、そこでそれは、注入されたFCC原料と接触する。
【0023】
反応器の運転は通常、従来の全ライザー分解FCCである。特許文献14に開示されるものなどである。これは、本明細書に引用して含まれる。典型的なライザー分解反応の条件には、0.5:1〜15:1、好ましくは3:1〜8:1の触媒/油比、0.1〜50秒、好ましくは0.5〜10秒、最も好ましくは0.75〜5秒の触媒接触時間および900〜1100°F、好ましくは950〜1050°Fのライザー頂部温度が含まれる。
【0024】
従来の技術(大量の噴霧スチームの添加、複数ノズルの使用、噴霧ノズルの使用およびその類似技術など)を用いて、ライザー反応器の基部で原料を触媒と十分に混合することが好ましい。M.W.Kellogg社から入手可能なAtomaxノズルが好ましい。適切なノズルの詳細は、特許文献15および特許文献16に開示される。これは、本明細書に引用して含まれる。必須ではないが、ライザー触媒加速域をライザーの基部に有することが好ましい。また、必須ではないが、ライザー反応器について、密閉型サイクロンシステム中に放出して、分解生成物を廃触媒から急速に分離することが好ましい。密閉型サイクロンシステムは、特許文献17(Haddadら)に開示される。これは、本明細書に引用して含まれる。また、必須ではないが、触媒ストリッパーの上流で触媒がライザーを出る際に、これを急速にストリッピングすることが好ましい。特許文献18(SchatzおよびHeffley)(本明細書に引用して含まれる)に開示されるストリッパーサイクロンを用いてもよい。必須ではないが、高温触媒ストリッパーを用いることが好ましい。高温ストリッパーは、高温の再生触媒を廃触媒に添加することによって、廃触媒を加熱する。高温ストリッパーは、特許文献19(Owenら)に示される。これは、本明細書に引用して含まれる。高温でストリッピングした後、加熱した触媒を、再生装置に送られる前に、触媒冷却槽により冷却してもよい。好ましい高温ストリッパーおよび触媒冷却装置は、特許文献20(Owen)に示される。これは本明細書に引用して含まれる。従来のFCCスチームストリッピング条件を用い、廃触媒は本質的にライザー出口と同じ温度を有し、廃触媒をストリッピングするために、0.5〜5%のストリッピングガス(好ましくはスチーム)を添加することができる。FCC反応器およびストリッパー条件は、本質的に従来のものであろう。
【0025】
本発明の方法では、二つのタイプのFCC再生装置を用いることができる。即ち、高効率再生装置およびバブル床タイプである。バブル床再生装置においては、殆どの再生ガス(通常は空気)は、気泡の形態で床を通って送られる。これらは、床を通って送られるが、それと十分には接触しない。これらの装置は、大量の触媒を用いて運転される。バブル床再生装置は、コークを燃焼するのにあまり有効ではなく、そのため清浄な燃焼触媒を製造するには、再生装置内における多量の触媒在庫および長い滞留時間が必要とされる。再生触媒上の炭素レベルは、通常のものであってよく、典型的にはコーク0.3wt%未満、好ましくはコーク0.15wt%未満、最も好ましくは更に少ない。コークとは、炭素だけを意味するのではなく、コークに付随する少量の水素、および恐らくは触媒上に残存するごく少量のストリッピングされない重質炭化水素をも意味する。炭素wt%として表すと、数字は本質的に同じであるが、5〜10%だけより少ない。
【0026】
煙道ガス中には、FCC再生装置が、部分CO燃焼に付随する制御技術を用いて確実に制御されうるように、十分なCOが存在すべきである。
【0027】
本発明の方法はまた、高効率再生装置(HER)、高速流動床コーク燃焼装置、希釈相移送ライザーおよび再生触媒を収集する第二の床と共に用いることもできる。これらを、部分CO燃焼方式で運転して、CO規格を満たすことが必要である。
【0028】
HERは本質的に、再生空気を非常にうまく利用する。完全CO燃焼方式では、多くの場合、煙道ガス中O 1または2モル%以上で運転される。部分CO燃焼方式では、多くの場合、過剰酸素殆どなし(通常ppm範囲、好ましくは1/10%未満)で運転される。HERでは、正確なCO/O比を有する煙道ガスを製造するのに、添加する空気量を実質的に低減することが必要な場合がある。酸素の2倍多いCOを有する煙道ガスを生成するのに、CO燃焼促進剤を低減または排除することが必要な場合がある。
【0029】
殆どの再生装置は、主として、添加される再生空気量を調整することによって制御されるが、空気量を一定に保ち、或る他の条件を変える、他の同等の制御図式が利用可能である。原料速度を変化させて(これがコーク収率を変える)、空気速度を一定とすることは、再生装置の運転を修飾するための許容可能な方法である。原料予熱を変動させるか、再生装置の空気予熱を変動させて、空気速度を一定とすることもまた、許容可能である。最後に、触媒冷却装置を用いて、熱を装置から除去することができる。装置を熱平衡に留めるのに十分なコークを生成し続けない場合には、トーチ油その他何らかの燃料油を、再生装置内で燃焼させてもよい。
【実施例】
【0030】
実施例1:
商業FCCプロセス装置を用いて、本発明の試験・開発を行った。実験では、FCC装置の再生装置出口における煙道ガス中のCO濃度を、約0.5vol%超〜約5.5vol%で変化させた。CO濃度のその範囲に亘って、NO濃度は、最大値266vppm〜最少値約31vppmで変化した(表1)。FCC装置の再生装置からのNO排出を最少化するための一般的な反応メカニズムでは、NOおよびCOの実質的な両濃度が存在する方式での運転が必要とされる。
【0031】
部分燃焼運転においては、非常に高いCO濃度で、COの還元に利用可能なNOは殆ど存在しない(窒素種は、主としてNHおよびHCNである)。更に、比較的高いNO排出が認められる。CO濃度が減少するにつれて、より多くのNOが製造された。これにより、より多くのNOがCOにより低減され、それによりNO排出が減少される。CO1%未満では、NO濃度は、一定の最大値に漸近し、NO排出は最低値であった。表1および図1を参照されたい。
【0032】
非常に低いCO濃度の領域では、低過剰Oでの完全CO燃焼運転で見られるCOおよびNO濃度が模擬される。そのような完全燃焼装置では、NO低減触媒系が効果的であると示された。典型的にはCO濃度が4vol%超である部分燃焼装置においては、これらのNO低減触媒系は比較的効果がない。本発明では、非常に低いCO運転においては、NO低減触媒系は、重要種(NOおよびCO)の両者が、実質的な濃度で存在することから、典型的な部分燃焼運転におけるよりずっと効果的であることが認められる。
【0033】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】CO濃度の減少に伴うNO濃度の増大を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素含有重質炭化水素質原料を、NO排出を低減して、より軽質の生成物に接触分解する方法であって、
a)前記原料を流動接触分解(FCC)反応域でNO低減触媒系と接触させることによって、前記原料を分解する工程であって、
前記反応域は、分解生成物および廃分解触媒の混合物を製造するための接触分解条件で運転され、
前記廃分解触媒は、窒素化合物およびコークをその上に析出して有し、
前記触媒系は、(i)少なくとも一種の固体酸成分、(ii)元素周期律表第1および3族よりなる群から選択される一種以上の元素および元素周期律表第4〜15族よりなる群から選択される一種以上の元素からなる少なくとも一種の金属含有成分;並びに酸素および硫黄の少なくとも一種、および(iii)少なくとも一種の担体、充填材または結合材を含み、第1および3族よりなる群から選択される一種以上の元素、第4〜15族よりなる群から選択される一種以上の元素並びに酸素および硫黄の少なくとも一種は、族内および族間の両方で化学的に結合される
ことを特徴とする工程;
b)前記分解生成物を前記廃分解触媒から分離して、分解生成物の蒸気相ストリームを製造する工程であって、前記ストリームは分留域に供給され、窒素化合物および炭素をその上に析出して有する前記廃触媒は、ストリッピング域に供給される工程;
c)揮発性化合物を有する前記廃触媒を、前記ストリッピング域でストリッピングして、コークおよび窒素化合物をその上に析出して有する、ストリッピングされた廃触媒を製造する工程;
d)前記ストリッピングされた廃触媒を、再生域で酸素含有ガスを用いて再生する工程であって、
前記再生域は、再生触媒、並びにCO 0.5〜4vol%およびNO 90vppm超を含む煙道ガスストリームを製造するのに効果的な、部分CO燃焼条件で運転され、
前記煙道ガスストリーム中のNO含有量は減少する
ことを特徴とする工程;および
e)前記再生触媒を、再生域から反応域に導く工程
を含むことを特徴とする接触分解方法。
【請求項2】
前記固体酸成分は、前記金属含有成分との物理的混合物であることを特徴とする請求項1に記載の接触分解方法。
【請求項3】
前記固体酸成分および金属基成分は、化学的に結合されることを特徴とする請求項1に記載の接触分解方法。
【請求項4】
前記固体酸成分は、一種以上の結晶質固体酸、一種以上の担持酸およびそれらの混合物よりなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の接触分解方法。
【請求項5】
酸素は、金属含有成分の一部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の接触分解方法。
【請求項6】
前記第1および3族から選択される一種以上の元素は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホロミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムおよびルテチウムよりなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の接触分解方法。
【請求項7】
前記第4〜15族から選択される一種以上の元素は、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、リン、ガリウム、ゲルマニウム、ジルコニウム、ニオビウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、インジウム、錫、アンチモン、ハフニウム、タングステン、レニウム、イリジウム、白金、金、鉛またはビスマスであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の接触分解方法。
【請求項8】
固体酸成分/金属含有成分の全重量の重量比は、1000:1〜1:1000であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の接触分解方法。
【請求項9】
前記NO低減触媒系は、結晶質シリケート、結晶質置換シリケート、結晶質アルミノシリケート、結晶質置換アルミノシリケート、結晶質アルミノホスフェート、結晶質置換アルミノホスフェートおよびゼオライト結合ゼオライトよりなる群から選択される少なくとも一種を含む分解成分を含み、8員以上の酸素環を骨格構造中に有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の接触分解方法。
【請求項10】
NO低減触媒系の前記分解成分は、大細孔ゼオライト、中細孔ゼオライトおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の接触分解方法。
【請求項11】
前記大細孔ゼオライトは、フォージャサイトであることを特徴とする請求項10に記載の接触分解方法。
【請求項12】
前記中細孔ゼオライトは、ZSMシリーズから選択されることを特徴とする請求項11に記載の接触分解方法。
【請求項13】
前記固体酸成分および金属含有成分は、少なくとも一種の担体、充填材または結合材を更に含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の接触分解方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−523217(P2007−523217A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517206(P2006−517206)
【出願日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/018242
【国際公開番号】WO2005/005578
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】