説明

官能化ジエンエラストマーおよび該官能化ジエンエラストマーを含有するゴム組成物

本発明は、特定の官能化ジエンエラストマーに関する。この官能化エラストマーは、低減された低温流れを示すが、この官能化エラストマーが存在する強化ゴム組成物の性質、特に、加工特性およびヒステリシス特性を悪化させない。この官能化ジエンエラストマーは、鎖末端にシラノール官能基またはシラノール末端を有するポリシロキサンブロックを担持し、さらに、部分的にスズがカップリングしているかまたはスズによって星型枝分れさせている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の官能化ジエンエラストマーに関する。この官能化エラストマーは、低減した低温流れ(cold flow)を示すが、この官能化エラストマーが存在する補強ゴム組成物の性質、特に、そのヒステリシス特性を劣化させない。
【背景技術】
【0002】
燃料の節減および環境保護の必要性が優先事項となってきていることから、良好な機械的性質およびできる限り低いヒステリシスを有するポリマーを製造して、これらのポリマーを、例えば、下地層、異なる性質を有するゴム間の結合用ゴム、金属または繊維補強要素用のコーティーングゴム、側壁ゴムまたはトレッドのようなタイヤカバーの組成物に関連する各種半製品の製造において使用することのできるゴム組成物の形で使用すること、そして、改良された諸性質を有する、特に、低下した転がり抵抗性を有するタイヤを得ることができることが望ましい。
【0003】
上記混合物のヒステリシスの低下は、継続的な目的であるが、混合物の加工されるべき能力を保持しながら実施しなければならない。
ヒステリシスの低下目的を達成するための多くの解決策が既に試みられている。特に、重合終了時点での、官能化剤、カップリング剤または星型枝分れ化剤によるジエンポリマーおよびコポリマーの構造の改変(そのように改変したポリマーと充填剤(カーボンブラックまたは補強用無機充填剤いずれか)との間の良好な相互作用を得る目的でもっての)を挙げることができる。
【0004】
補強用無機充填剤を含む混合物に関しては、特に、アルコキシシラン誘導体によって官能化したジエンポリマーを使用する試みがなされている。
補強用無機充填剤に関するこの従来技術の例としては、例えば、米国特許 US‐A‐5 066 721号を挙げることができ、この米国特許は、少なくとも1個の非加水分解性アルコキシル残基を有するアルコキシシランによって官能化したジエンポリマーをシリカとの混合物として含むゴム組成物を記載している。また、特許出願 EP‐A‐0 299 074号およびEP‐A‐0 447 066号も挙げることができ、これらの特許出願は、アルコキシシラン官能基を含む官能化ポリマーを記載している。これらの官能化ポリマーは、従来技術において、ヒステリシスを低下させ且つ耐摩耗性を改良するに有効であると説明されている;しかしながら、その諸性質は、タイヤトレッドを形成させることを意図する組成物においてこれらのポリマーの使用を可能にするには不十分なままである。さらにまた、これらポリマーの構築は重合溶媒の除去中のマクロ構造の変化の問題をもたらし、この変化は、潜在的に有利な性質の重大な落ち込みを生じさせている。しかも、この変化は、極めて僅かにしか制御され得ていない。
【0005】
特許出願 EP 0 778 311号、EP 0 786 493号またはWO 9850462号は、シラノール官能基または少なくとも1個のシラノール末端を有するポリシロキサンブロックによって鎖末端において官能化したジエンエラストマーをベースとする強化ゴム組成物を記載している。この官能化エラストマーは、このエラストマーのタイヤにおけるその後の使用に関連する不利益な構造的変化に対する題材ではない。しかも、そのような官能化エラストマーを含む組成物は、良好なヒステリシス特性を示している。
【0006】
さらに最近、特許出願 WO 2009/077837号は、シラノール官能基または少なくとも1個のシラノール末端を有するポリシロキサンブロックによって1つの鎖末端において官能化し、また、他の鎖末端においても官能化したエラストマーを記載している。これらのエラストマーも、星型枝分れさせた、特に、シリコンによって星型枝分れさせたエラストマーと組合せることができると説明されている。しかしながら、例示された組合せは、加工性とヒステリシス特性との妥協点がタイヤにおける用途には満足し得ない強化ゴム組成物をもたらしている。
【0007】
シラノール官能基または少なくとも1個のシラノール末端を有するポリシロキサンブロックによって鎖末端において官能化したエラストマーを補強用充填剤としてのシリカとの混合物として使用する場合、その混合物は、剛性化することが観察されている。この剛性化は、組成物の製造および/または加工性の悪化に反映されており、生産量の低下をもたらしている。上記混合物のこの剛性化を克服するためには、特に、上記エラストマーのムーニー可塑度を再調整して、最終的には、特に、例えば、トレッドのようなタイヤにおいて意図する半製品を製造するための混合物の押出加工目的において許容し得る加工特性を有する混合物を得ることが可能である。しかしながら、上記エラストマーのムーニー可塑度の低下は、上記エラストマーの諸性質に対する影響を伴い、特に、上記エラストマーが高い低温流れを示す傾向をもたらす。この低温流れは、エラストマー自体の質量に等しい荷重下において、特に、これらエラストマーのサンプルまたはベール梱包物を貯蔵枠箱内で互いの上に積み重ねた場合に流動するエラストマーの能力を反映している。従って、上記低温流れは、エラストマーの輸送および貯蔵において極めて不利益であり得る。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、強化ゴム組成物に対してタイヤにおける使用目的において良好なヒステリシスおよび加工特性を付与すると共に、ゴムの貯蔵中の良好な挙動の観点から低減された低温流れを示すエラストマーを提供することである。このことは、エラストマーのサンプルまたはベール梱包物が枠箱に溢れ、枠箱の崩壊をもたらし、また、エラストマーの取出しを妨げるリスクを最低限にする。
【0009】
本発明者等は、調査研究中に、シラノール官能基またはシラノール末端を有するポリシロキサンブロックにより1鎖末端のみにおいて官能化したジエンエラストマーと、一定割合の、スズがカップリングしているかまたはスズによって星型枝分れさせたジエンエラストマーとからなる官能化ジエンエラストマーが、該官能化ジエンエラストマーが存在するゴム組成物に対して、タイヤにおいて使用するのに完全に満足且つ許容し得るゴム特性、特に、ヒステリシスおよび加工特性を付与すると共に、低温流れに対して有意に改良された抵抗性を示すことを正しく見出した。従って、この組成物のゴム特性は、シラノール官能基により鎖末端において官能化された単一エラストマーをベースとする従来技術の組成物のゴム特性と等価のレベルに維持される。このことは、ゴム組成物のヒステリシスおよび加工性の上昇が組成物中に存在する上記官能化ジエンエラストマーにおいて観察された低温流れに対する抵抗性の有意の増進の恩恵により予測されているので、なおさら予想外である。
【0010】
従って、本発明は、シラノール官能基またはシラノール末端を有するポリシロキサンブロックにより鎖末端において官能化したジエンエラストマーと、一定割合の、スズがカップリングしているかまたはスズによって星型枝分れさせたジエンエラストマーとに関する。
本発明のもう1つの主題は、そのような官能化ジエンエラストマーを含む、少なくとも1種の無機充填剤、例えば、シリカによって補強されたゴム組成物である。
本発明のもう1つの主題は、構成部品の少なくとも1つにおいて、本発明に従う強化ゴム組成物を取込んでいるタイヤである。
【0011】
本発明のもう1つの主題は、1鎖末端のみにシラノール官能基またはシラノール末端を有するポリシロキサンブロックを担持し、他の末端は何らの官能化も有していない単官能性ジエンエラストマーの低温流れを低減する方法である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
“ベースとする”組成物なる表現は、使用する各種構成成分の混合物および/または反応生成物を含む組成物意味するものと理解すべきである;これらのベース成分の幾つかは、上記組成物の種々の製造段階において、特に、上記組成物の架橋または加硫中に少なくとも部分的に互いに反応し得るか或いは反応するように意図し得る。
【0013】
本説明においては、他で明確に断らない限り、示す全ての百分率(%)は、質量%である。さらにまた、“aとbの間”なる表現によって示される値の間隔は、いずれも、aよりも大きくからbよりも小さいまでに至る値の範囲を示し(即ち、限界値aとbを除く)、一方、“a〜b”なる表現によって示される値の間隔は、いずれも、aからbまでに至る値の範囲を意味する(即ち、厳格な限定値aおよびbを含む)。
【0014】
本説明においては、官能化ジエンエラストマーとは、1個以上もヘテロ原子を含む基を含むジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。
この基は、鎖末端に位置し得る。その場合、ジエンエラストマーは鎖末端において官能化されていると言われる。この官能化ジエンエラストマーは、一般に、リビングエラストマーと官能化剤、即ち、任意の少なくとも単官能性の分子との反応によって得られるエラストマーであり、官能基は、リビング鎖末端と反応する当業者にとって既知の任意のタイプの化学基である。
【0015】
この基は、線状の主エラストマー鎖中に位置し得る。その場合、ジエンエラストマーは、“鎖末端”での位置とは対照的に、鎖中央においてカップリングさせている或いは官能化されているといわれる;但し、この基は、エラストマー鎖の正確に中央には位置しない。この官能化ジエンエラストマーは、一般に、リビングエラストマーとカップリング剤、即ち、任意の少なくとも二官能性の分子との反応によって得られるエラストマーであり、官能基は、リビング鎖末端と反応する当業者にとって既知の任意のタイプの化学基である。
【0016】
この基は、n本のエラストマー鎖(n>2)を結合させて星型枝分れ構造のエラストマーを形成する中央であり得る。その場合、ジエンエラストマーは星型枝分れさせていると言われる。この官能化エラストマーは、一般に、リビングエラストマーと星型枝分れ化剤、即ち、任意の多官能性の分子との反応によって得られるエラストマーであり、官能基は、リビング鎖末端と反応する当業者にとって既知の任意のタイプの化学基である。
【0017】
従って、本発明の第1の主題は、75質量%〜95質量%の、シラノール官能基またはシラノール末端を有するポリシロキサンブロックにより鎖末端において官能化したジエンエラストマーと、5質量%〜25質量%の、スズがカップリングしているかまたはスズによって星型枝分れさせているジエンエラストマーからなることを特徴とする官能化ジエンエラストマーである。これらのパーセントは、官能化ジエンエラストマーの総質量に対するものと理解すべきである。
【0018】
本発明によれば、シラノール官能基またはシラノール末端を有するポリシロキサンブロックを鎖末端において担持する上記官能化ジエンエラストマーは、官能化ジエンエラストマー中に、官能化エラストマーの総質量の75質量%〜95質量%、好ましくは75質量%〜90質量%、さらにより好ましくは75質量%〜85質量%、例えば、80質量%〜85質量%の範囲の割合に従って存在する。
【0019】
好ましくは、シラノール末端を有するポリシロキサンブロックとしては、下記の一般式に相応するポリシロキサンブロックが適する:
【化1】

(式中、R1およびR2は、同一または異なるものであって、1〜10個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリル、アラルキルまたはビニル基を、好ましくは1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を示し;さらに好ましくは、R1およびR2は、各々、メチル基を示し;
xは、1〜1500、好ましくは1〜50の範囲の整数を示し;さらに好ましくは、xは、値1を有する)。
【0020】
本発明の好ましい代替形によれば、シラノール官能基またはシラノール末端を有するポリシロキサンブロックを鎖末端において担持する上記官能化ジエンエラストマーは、単官能性である。換言すれば、この代替形によれば、上記ジエンエラストマーは、1鎖末端のみにおいて官能化されている。他の鎖末端は、空位であり、何らの官能基も担持していない。
【0021】
本発明によれば、スズがカップリングしているかまたはスズによって星型枝分れさせている上記ジエンエラストマーは、上記官能化エラストマー中に、官能化エラストマーの総質量の5質量%〜25質量%の量、好ましくは10質量%〜25質量%、さらにより好ましくは15質量%〜25質量%、例えば、15質量%〜20質量%の範囲の量に従って存在する。このことは、本発明に従う官能化ジエンエラストマーの貯蔵時の挙動における有意の改良がスズがカップリングしているかまたはスズによって星型枝分れさせているジエンエラストマーの少なくとも5質量%の割合において観察されていることによる。25質量%よりも多いスズがカップリングしているかまたはスズによって星型枝分れさせているジエンエラストマーにおいては、ゴム組成物のエラストマー/ゴム諸性質の妥協点のうちの低温流れが、ヒステリシスの上昇の結果として不利益を受ける。
【0022】
本発明の好ましい代替形によれば、また、より良好な低温流れ抵抗性のためには、上記ジエンエラストマーは、有利には、スズによって星型枝分れさせているエラストマーである、即ち、スズ原子をn本のエラストマー鎖(n>2)に結合させて星型枝分れ構造のエラストマーを形成させる。さらに好ましくは、4本のエラストマー鎖をスズに結合させて、4本の分岐を含む星型枝分れエラストマーを生じさせる。
【0023】
本発明に従って使用することのできるジエンエラストマーは、4〜12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーの重合によって得られる任意のホモポリマー或いは1種以上の共役ジエンともう1種のジエンまたは8〜20個の炭素原子を有する1種以上のビニル芳香族化合物との共重合によって得られる任意のコポリマーを意味するものと理解されたい。
【0024】
以下は、特に共役ジエンとして適している: 1,3‐ブタジエン;2‐メチル‐1,3‐ブタジエン;例えば、2,3‐ジメチル‐1,3‐ブタジエン、2,3‐ジエチル‐1,3‐ブタジエン、2‐メチル‐3‐エチル‐1,3‐ブタジエンまたは2‐メチル‐3‐イソプロピル‐1,3‐ブタジエンのような2,3‐ジ(C1〜C5アルキル)‐1,3‐ブタジエン;フェニル‐1,3‐ブタジエン;1,3‐ペンタジエン、2,4‐ヘキサジエン等。
【0025】
以下は、特にビニル芳香族化合物として適している:スチレン;オルソ‐、メタ‐およびパラ‐メチルスチレン;市販の“ビニルトルエン”混合物;パラ-tert-ブチルスチレン;メトキシスチレン;ビニルメシチレン;ジビニルベンゼンおよびビニルナフタレン等。
上記コポリマーは、99質量%と20質量%の間の量のジエン単位と、1質量%〜80質量%のビニル芳香族単位を含み得る。
【0026】
本発明に従う官能化ジエンエラストマーは、好ましくは、ポリブタジエン(BR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる高不飽和ジエンエラストマーの群から選ばれる。そのようなコポリマーは、さらに好ましくは、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)から選ばれる。
【0027】
上記官能化ジエンエラストマーは、使用する重合条件に依存する任意のミクロ構造を有し得る。上記エラストマーは、ブロック、ランダム、序列または微細序列エラストマー等であり得、分散液中または溶液中で調製し得る。アニオン重合が関与する場合、これらのエラストマーのミクロ構造は、変性剤および/またはランダム化剤の存在または不存在並びに使用する変性剤および/またはランダム化剤の量によって決定され得る。シラノール官能基またはシラノール末端を有するポリシロキサンブロックを鎖末端において担持する上記官能化ジエンエラストマーおよびスズがカップリングしているまたはスズによって星型枝分れさせている上記ジエンエラストマーは、同じミクロ構造または異なるミクロ構造を有し得る。
【0028】
以下は、特に適している:4%と80%の間の1,2‐単位含有量(モル%)を有するポリブタジエン、または80%よりも多いシス‐1,4‐単位含有量(モル%)を有するポリブタジエン;ポリイソプレン;ブタジエン/スチレンコポリマー、特に、−80℃と0℃の間、特に−70℃と−10℃の間のTg (ガラス転移温度、規格ASTM D3418に従って測定)、5質量%と60質量%の間特に20質量%と50質量%の間のスチレン含有量、4%と75%の間のブタジエン成分1,2‐結合含有量(モル%)および10%と80%の間のトランス‐1,4‐結合含有量(モル%)を有するコポリマー;ブタジエン/イソプレンコポリマー、特に、5質量%と90質量%の間のイソプレン含有量および−80℃〜−40℃のTgを有するコポリマー;または、イソプレン/スチレンコポリマー、特に、5質量%と50質量%の間のスチレン含有量および−50℃と0℃の間のTgを有するコポリマー。
【0029】
ブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーの場合、5質量%と50質量%の間特に10質量%と40質量%の間のスチレン含有量、15質量%と60質量%の間特に20質量%と50質量%の間のイソプレン含有量、5質量%と50質量%の間特に20質量%と40質量%の間のブタジエン含有量、4%と85%の間のブタジエン成分1,2‐単位含有量(モル%)、6%と80%の間のブタジエン成分トランス‐1,4‐単位含有量(モル%)、5%と70%の間のイソプレン成分1,2‐+3,4‐単位含有量(モル%)および10%と50%の間のイソプレン成分トランス‐1,4‐単位含有量(モル%)を有するコポリマー、さらに一般的には、−70℃と0℃の間のTgを有する任意のブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーが、特に適している。
【0030】
本発明によれば、鎖末端において官能化した上記ジエンエラストマーおよびスズがカップリングしているまたはスズによって星型枝分れさせている上記ジエンエラストマーは、これらのジエンエラストマーを官能化する前は、同じ性質を有し得る。しかしながら、同一ではないが、タイヤ分野においては、匹敵する技術的効果の結果として同様なエラストマーとみなすエラストマーも本発明の範囲内に属することに留意すべきである。
【0031】
ジエンモノマーの重合は、開始剤によって開始する。重合開始剤としては、任意の既知の単官能性アニオン開始剤を使用し得る。しかしながら、好ましくは、リチウムのようなアルカリ金属の塩を含む開始剤を使用する。
有機リチウム開始剤のうちでは、炭素‐リチウム結合を含む開始剤が特に適している。好ましくは、ヘテロ原子を含まない炭化水素有機リチウム開始剤を使用する。代表的な化合物は、エチルリチウム、n‐ブチルリチウム(n‐BuLi)、イソブチルリチウムのような脂肪族有機リチウム化合物;1,4‐ジリチオブタンのようなポリメチレンジリチウム化合物等である。
【0032】
重合は、それ自体知られている通り、不活性溶媒の存在下に実施する;不活性溶媒は、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタンまたはシクロヘキサンのような脂肪族または脂環式炭化水素;または、ベンゼン、トルエンまたはキシレンのような芳香族炭化水素であり得る。
重合は、連続またはバッチ方式により実施し得る。重合は、一般に20℃と120℃の間の温度で、好ましくは30℃〜90℃近くで実施する。勿論、重合の終了時に、金属交換剤を添加して、リビング鎖末端の反応性を改変することも可能である。
【0033】
上記重合から得られるリビングジエンエラストマーは、その後、官能化して、本発明に従う官能化ジエンエラストマーを調製する。
本発明に従う官能化ジエンエラストマー調製の第1の代替形によれば、シラノール官能基またはシラノール末端を有するポリシロキサンブロックにより鎖末端において官能化した上記ジエンエラストマーと、スズがカップリングしているかまたはスズによって星型枝分れさせている上記ジエンエラストマーとを上記適切な割合で混合する。
【0034】
シラノール官能基またはシラノール末端を有するポリシロキサンブロックにより鎖末端において官能化した上記ジエンエラストマーは、有利には、特許出願 EP‐A‐0 778 311号に記載されている手順に従って得ることができる;この特許出願の記載は、参考として本明細書に合体する。
スズがカップリングしているかまたはスズによって星型枝分れさせている上記ジエンエラストマーは、それ自体既知の方法で、スズ誘導体を上記重合から得られるリビングジエンエラストマーと反応させることによって得ることができる。そのような星型枝分れジエンエラストマーの調製は、例えば、特許 US 3 393 182号に記載されている。
【0035】
上記2つのエラストマーの混合は、不活性溶媒、例えば、重合溶媒と同じであり得る、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタンまたはシクロヘキサンのような脂肪族または脂環式炭化水素;または、ベンゼン、トルエンまたはキシレンのような芳香族炭化水素中で実施し得る。混合は、その場合、20℃と120℃の間、好ましくは30℃〜90℃近くの温度で実施する。
【0036】
本発明に従う官能化ジエンエラストマー調製の第2の代替形によれば、重合段階から得られるリビングジエンエラストマーを、スズ系カップリングまたは星型枝分れ化剤の反応およびポリマー鎖末端にシラノール官能基またはシラノール末端を有するポリシロキサンブロックを導入することのできる官能化剤の反応に供する。
【0037】
ポリマー鎖末端にシラノール官能基またはシラノール末端を有するポリシロキサンブロックを導入することのできる官能化剤としては、SiO‐末端を有するエラストマーを得るための環状ポリシロキサンタイプの薬剤を挙げることができる;この官能化は、上記シクロポリシロキサンの重合を可能にしない媒体中で実施する。環状ポリシロキサンとしては、下記の式に相応するポリシロキサンを挙げることができる:
【化2】

(式中、R1およびR2は、同一または異なるものであって、1〜10個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリル、アラルキルまたはビニル基を示し;
mは、3〜8の値を有する整数である)。
【0038】
好ましい環状ポリシロキサン化合物としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、トリメチルトリエチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンおよびこれらの混合物を挙げることができる。
【0039】
スズ系カップリングまたは星型枝分れ化剤としては、式SnRxX4-xのスズ誘導体を挙げることができ、式中、xは、0〜2の値を有する整数を示し;Rは、1〜10個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリル、アラルキルまたはビニル基、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を示し;Xは、ハロゲン原子、好ましくは塩素である。好ましいスズ誘導体としては、二塩化ジブチルスズまたは四塩化スズをあげることができ、後者は、特に好ましい。同様に、上記官能化は、一般式 (X11R12Sn)‐O‐(SnR13-yX1y)または(X11 R12Sn)‐O‐(CH2)n‐O‐(SnR13-yX1y)に相応し得るスズ誘導化官能化剤によっても達成し得る;式中、yは、値1または0を有する整数であり、R1は、1〜12個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリルまたはビニル基、好ましくはブチルを示し、X1は、ハロゲン原子、好ましくは塩素を示し、nは、1〜20の整数、好ましくは4を示す。
【0040】
従って、例えば、重合段階から得られるリビングジエンエラストマーの官能化は、第1工程において、30〜120℃で変動する温度で、適切な量のスズ系剤の存在下に、5質量%〜25質量%の上記リビングジエンエラストマーを星型枝分れさせるかまたはそれにカップリングするために実施し得る。その後、第2工程において、上記第1段階後に得られたジエンエラストマーの残りのリビング鎖を、鎖末端にシラノール官能基またはシラノール末端を有するポリシロキサンブロックを導入することのできる官能化剤を添加し、この剤と反応させることによって官能化する。上記ジエンエラストマーの官能化反応を、その後、残りのリビング鎖の失活およびSiO-鎖末端のプロトン供与化合物との反応によって停止して、本発明に従う官能化ジエンエラストマーを生じさせる。
【0041】
本発明に従う官能化ジエンエラストマーは、改良された低温流れ抵抗性を示し、この低温流れ抵抗性は、このゴムの貯蔵および輸送中により良好な挙動をもたらす。
本発明に従う官能化ジエンエラストマーは、有利には、少なくとも1種の無機充填剤、例えば、シリカによって補強したゴム組成物において使用することができ、動的および加工特性をタイヤにおいて使用するのに満足し得るレベルに維持する。また、このゴム組成物も、本発明の主題を構成する。
【0042】
本発明によれば、上記ゴム組成物は、無機充填剤を含む少なくとも1種の補強用充填剤と、上記の官能化ジエンエラストマーを含むエラストマーマトリックスとをベースとする。
本発明に従う官能化ジエンエラストマーは、上記ゴム組成物中に、10〜100phr (エラストマー100質量部当りの質量部)の範囲の割合で存在する。
本発明の代替形によれば、上記官能化ジエンエラストマーは、上記エラストマーマトリックス中に、主要質量画分で存在する。本発明の関連においては、主要質量画分とは、上記マトリックスの最大質量画分、好ましくは少なくとも50%の質量画分を意味するものと理解されたい。質量画分は、エラストマーマトリックスの総質量に対するものと理解されたい。本発明に従う官能化ジエンエラストマーは、その場合、エラストマーマトリックス中に、50〜100phr、好ましくは60〜100phrの範囲の量に従って存在する。
【0043】
また、上記エラストマーマトリックスは、上記で定義した官能化ジエンエラストマー以外に、天然ゴムまたは合成エラストマーのようなタイヤにおいて通常使用する少なくとも1種のジエンエラストマー或いは他のカップリングしたまたは星型枝分れした、官能化したジエンエラストマーをも含み得る。このまたはこれらの他のジエンエラストマーは、上記マトリックス中に、0〜90phrの割合で、さらに実際には、上記代替形によれば、0〜50phrの割合で存在する。
【0044】
本発明に従うゴム組成物は、上記エラストマーマトリックス以外に、無機充填剤を含む少なくとも1種の補強用充填剤を含む。用語“無機充填剤”は、本特許出願においては、定義によれば、カーボンブラックに対比して“白色充填剤”、“透明充填剤”、さらに実際には“非黒色充填剤”としても知られており、それ自体単独で、中間カップリング剤以外の手段によることなく、タイヤの製造を意図するゴム組成物を補強し得る、換言すれば、通常のタイヤ級カーボンブラックとその補強役割において置換わり得る任意の無機または鉱質充填剤(その色合およびその起原(天然または合成)の如何にかかわらない)を意味するものと理解すべきである;そのような充填剤は、一般に、知られている通り、その表面でのヒドロキシル(‐OH)基の存在に特徴を有する。また、用語“無機充填剤”は、これらの充填剤の任意の混合物を意味することも理解されたい。
【0045】
好ましくは、上記補強用無機充填剤は、全体としてまたは少なくとも主としてシリカ(SiO2)である。使用するシリカは、当業者にとって既知の任意の補強用シリカ、特に、共に450m2/g未満のBET比表面積とCTAB比表面積を示す任意の沈降または焼成シリカであり得るが、高分散性沈降シリカが好ましい。また、補強用無機充填剤としては、アルミニウムタイプの鉱質充填剤、特に、アルミナ(Al2O3)または(酸化)水酸化アルミニウム、或いは補強用酸化チタンも挙げることができる。
上記補強用無機充填剤を使用する物理的状態は、粉末、マイクロビーズ、顆粒またはビーズ形のいずれであれ重要ではない。勿論、補強用無機充填剤は、種々の補強用無機充填剤、特に、上述したような高分散性シリカ類の混合物を意味することも理解されたい。
【0046】
上記補強用無機充填剤は、カーボンブラックのような有機充填剤とブレンド(混合)し、それによって本発明に従う組成物の補強用充填剤を構成し得ることも留意すべきである。
本発明の好ましい実施態様によれば、この補強用充填剤は、主として、補強用無機充填剤からなる、即ち、無機充填剤の割合は、充填剤総質量の50質量%よりも多く、最高は100%である。好ましくは、上記補強用充填剤は、70質量%〜100質量%の無機充填剤からなる。
【0047】
タイヤゴム組成物において通常使用される全てのカーボンブラック類、特に、HAF、ISAF、SAF、FF、FEE、GPFおよびSRFタイプのブラック類(“タイヤ級”ブラック類)が、カーボンブラックとして適している。さらに詳細には、後者のうちでは、例えば、N115、N134、N234、N326、N330、N339、N347またはN375ブラック類のような100、200または300シリーズの補強用カーボンブラック類(ASTM級)が、さらにまた、例えば、N550またはN683ブラック類のような粗めのブラック類も挙げられる。カーボンブラックは、例えば、マスターバッチの形で、ゴム中に既に混入させていてもよい。
【0048】
カーボンブラック以外の有機充填剤の例としては、出願 WO‐A‐2006/069792号およびWO‐A‐2006/069793号に記載されているような官能化ポリビニル芳香族有機充填剤を、或いは出願WO‐A‐2008/003434号およびWO‐A‐2008/003435号に記載されているような官能化非芳香族ポリビニル有機充填剤も挙げることができる。
【0049】
上記補強用充填剤が補強用無機充填剤とカーボンブラックを含む場合、上記補強用充填剤中のこのカーボンブラックの質量画分は、好ましくは、上記補強用充填剤の総質量に対して30%以下、より好ましくは20%未満であるように選定する。
【0050】
当業者であれば、もう1つの性質、特に、有機性を有する補強用充填剤を、この補強用充填剤がシリカのような無機層によって完全にまたは部分的に被覆されているか或いはその表面に、官能部位、特に、ヒドロキシル部位を含み、該充填剤と上記エラストマー間の結合を確立するためのカップリング剤の使用を必要とすることを条件として、この項で説明する補強用無機充填剤と等価の充填剤として使用し得ることを理解されたい。限定するものではないが、Cabot社から品名“CRX 2000”として販売されている充填剤および国際特許文書WO‐A‐96/37547号に記載されている充填剤のような、シリカにより変性したカーボンブラックも適している。
【0051】
有利には、本発明に従う組成物は、35〜200phrの補強用充填剤を含む。好ましくは、補強用充填剤の含有量は、40phrと140phrの間、より好ましくは50phrと130phrの間であり、最適量は、知られている通り、目的とする特定の用途によって異なる;特にタイヤにおいては、例えば、自転車タイヤに関して期待される補強レベルは、勿論、高速で継続的に走行することのできるタイヤ、例えば、オートバイタイヤ、乗用車用のタイヤまたは重量物車両のような実用車両用のタイヤに関して必要とするレベルより低い。
【0052】
知られている通り、補強用無機充填剤をジエンエラストマーにカップリングさせるためには、無機充填剤とジエンエラストマー間に化学的および/または物理的性質の満足し得る結合を付与することを意図する少なくとも二官能性のカップリング剤(または結合剤)、特に、二官能性のオルガノシランまたはポリオルガノシロキサン類を使用する。
特に、例えば、出願 WO 03/002648号(またはUS 2005/016651号)およびWO 03/002649号(またはUS 2005/016650号)に記載されているような、その特定の構造によって“対称形”または“非対称形”として知られているシランポリスルフィド類を使用する。
【0053】
“対称形”として知られており、下記の一般式(I)に相応するシランポリスルフィド類は、下記の定義に限定されることなく、特に適している:

(I) Z−A'−Sx−A'−Z

[式中、xは、2〜8 (好ましくは2〜5)の整数であり;
A'は、2価の炭化水素基(好ましくはC1〜C18アルキレン基またはC6〜C12アリーレン基、特にC1〜C10、特にC1〜C4アルキレン基、特にプロピレン)であり;
Zは、下記の式の1つに相応する:
【化3】

(式中、R'1は、置換されているかまたは置換されてなく、互いに同一かまたは異なるものであって、C1〜C18アルキル、C5〜C18シクロアルキル基またはC6〜C18アリール基(好ましくはC1〜C6アルキル、シクロヘキシルまたはフェニル基、特にC1〜C4アルキル基、特にメチルおよび/またはエチル)を示し;
R'2は、置換されているかまたは置換されてなく、互いに同一かまたは異なるものであって、C1〜C18アルコキシル基またはC5〜C18シクロアルコキシル基(好ましくは、C1〜C8アルコキシルおよびC5〜C8シクロアルコキシルから選ばれた基、より好ましくはC1〜C4アルコキシル、特にメトキシルおよびエトキシルから選ばれた基)を示す)]。
【0054】
さらに詳細には、シランポリスルフィドの例としては、例えば、ビス(3‐トリメトキシシリルプロピル)またはビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド類が挙げられる。特に、これらの化合物のうちでは、TESPTと略称されるビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、またはTESPDと略称されるビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドを使用する。また、好ましい例としては、特許出願WO 02/083782号(または、US 2004/132880号)に記載されているような、ビス(モノ(C1〜C4)アルコキシルジ(C1〜C4)アルキルシリルプロピル)ポリスルフィド類(特に、ジスルフィド、トリスルフィドまたはテトラスルフィド類)、特に、ビス(モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィドも挙げられる。
【0055】
アルコキシシランポリスルフィド以外のカップリング剤としては、二官能性POS (ポリオルガノシロキサン)類、または特許出願WO 02/30939号(またはUS 6 774 255号)およびWO 02/31041号(またはUS 2004/051210号)に記載されているようなヒドロキシシランポリスルフィド、または、例えば、特許出願WO 2006/125532号、WO 2006/125533号およびWO 2006/125534号に記載されているような、アゾジカルボニル官能基を担持するシランまたはPOS類が挙げられる。
【0056】
本発明に従う組成物においては、カップリング剤の含有量は、有利には、20phr未満である;カップリング剤は、できる限り少なく使用することが一般に望ましいことを理解されたい。カップリング剤の含有量は、好ましくは0.5phrと12phrの間、より好ましくは3〜10phrである。典型的には、カップリング剤の含有量は、無機充填剤の量に対して少なくとも0.5質量%、多くても15質量%、好ましくは多くても12質量%、より好ましくは多くても10質量%を示す。
【0057】
また、本発明に従う組成物は、カップリング剤以外に、カップリング活性化剤、無機充填剤の被覆用薬剤、或いはゴムマトリックス中での充填剤の分散性の改善および組成物の粘度の低下のために、知られている通り、生状態における組成物の加工特性を改善することのできるより一般的な加工助剤も含み得る。
【0058】
また、本発明に従うゴム組成物は、例えば、顔料;非補強用充填剤;オゾン劣化防止ワックス、化学オゾン劣化防止剤または酸化防止剤のような保護剤;疲労防止剤;可塑剤;補強用または可塑化用樹脂;例えば、出願WO 02/10269号に記載されているようなメチレン受容体(例えば、フェノール・ノボラック樹脂)またはメチレン供与体(例えば、HMTまたはH3M);イオウまたはイオウ供与体および/または過酸化物および/またはビスマレイミドのいずれかをベースとする架橋系;加硫促進剤または加硫活性化剤のような、タイヤの製造を意図するエラストマー組成物において一般的に使用する通常の添加剤の全部または一部も含み得る。
【0059】
また、本発明の組成物は、非芳香族または極めて僅かに芳香族系の好ましい可塑剤として、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、MESオイル、TDAEオイル、エステル可塑剤(例えば、グリセリントリオレアート);例えば、出願WO 2005/087859号、WO 2006/061064号およびWO 2007/017060号に記載されているような、好ましくは30℃よりも高い高Tgを示す炭化水素樹脂;およびそのような化合物の混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物も含み得る。可塑剤の前提的な含有量は、好ましくは少なくとも10phrで多くとも100phr、より好ましくは多くとも80phr、さらに実際には多くとも70phrである。もう1つの好ましい局面によれば、上記組成物は、少なくとも1種のMESまたはTDAEオイルと高Tgを示す少なくとも1種の樹脂とからなる可塑化系を含み、これら成分の各々は、例えば、5〜35phr範囲の量で存在する。
【0060】
本発明に従うゴム組成物は、少なくとも下記の段階を含む方法に従って製造し得る:
(i) 130℃と200℃の間の最高温度において、上記エラストマーマトリックスと補強用充填剤を含む上記組成物の、架橋系を除いた必須ベース構成成分の熱機械的加工の第1工程を実施する段階(“非生産段階”とも称する);その後の、
(ii) 上記第1工程の上記最高温度よりも低い、好ましくは120℃未満の温度において、機械的加工の第2工程を実施し、その間に、上記架橋系を混入する段階。
【0061】
その後、そのようにして得られたゴム組成物は、有利には、それ自体既知の方法で、所望形状に押出またはカレンダー加工して、トレッドのような半製品を製造し得る。
また、この方法は、上記の段階(i)および(ii)を実施する前に、上記エラストマーマトリックスの調製段階、さらに詳細には、本発明に従う官能化ジエンエラストマーの調製段階も含み得る。
【0062】
本発明のもう1つの主題は、その構成部品の少なくとも1つ中に、本発明に従う強化ゴム組成物を取込んでいるタイヤであり、本発明の主題は、さらに詳細には、この組成物を含むタイヤの半製品である。
本発明に従う官能化ジエンエラストマーを特徴付けする低温流れ抵抗性故に、このエラストマー貯蔵および輸送は、星型枝分れしていないエラストマーと比較して実質的に改良されていることに注目すべきである。
【0063】
さらに、ゴム諸特性の良好な妥協点故に、さらに詳細には、満足し得る加工性および満足し得るヒステリシス故に、本発明に従う官能化ジエンエラストマーを含むゴム組成物のトレッド製造における使用は、上記官能化ジエンエラストマーを含むタイヤに適切なレベルの転がり抵抗性を付与している。従って、本発明の主題は、さらに詳細には、本発明に従う強化ゴム組成物を含むような或いは専らこの組成物からなるようなタイヤトレッドである。
本発明のもう1つの主題は、1鎖末端のみにシラノール官能基またはシラノール末端を有するポリシロキサンブロックを担持し、他の末端は何らの官能化も有していない単官能性ジエンエラストマーの低温流れの低減方法である。この方法は、上記エラストマーの状態調節前に、上記エラストマーを、スズがカップリングしているかまたはスズによって星型枝分れさせているジエンエラストマーを上記単官能性ジエンエラストマーの質量に対して5〜35質量%の割合で添加することによって変性して、75質量%〜95質量%が1鎖末端のみにシラノール官能基またはシラノール末端を有するポリシロキサンブロックを担持し、他の末端は何らの官能化も有してなく、5質量%〜25質量%が、スズがカップリングしているかまたはスズによって星型枝分れさせている単官能性ジエンエラストマーを得ることからなる。
【0064】
本発明のもう1つの主題は、1鎖末端のみにシラノール官能基またはシラノール末端を有するポリシロキサンブロックを担持し、他の末端は何らの官能化も有していない単官能性ジエンエラストマーの低温流れの低減方法である。この方法は、上記ジエンエラストマーの合成過程における、重合段階の終了時に、5〜25質量%のリビングポリマーを、スズ系化合物をカップリングさせるかまたはスズ系化合物によって星型枝分れさせ、そして、その後、75〜95質量%の残りのリビングポリマーを、シラノール官能基またはシラノール末端を有するポリシロキサンブロックを導入することのできる官能化剤によって官能化することからなる。
【0065】
本発明の上記および他の特徴は、例示のために示し限定するものではない以下の本発明の幾つかの実施例の説明を読むことでより一層良好に理解し得るであろう。
実施例
I. 本発明に従うエラストマーマトリックスの調製
1) 使用する測定および試験方法(得られたポリマーの予備硬化特性決定において使用する試験方法)
(a) 立体排除クロマトグラフィー(通常のSEC)による分子量分布の測定
SEC (サイズ排除クロマトグラフィー)法を使用して、これらのポリマーのサンプルに関する分子量の分布を測定した。この方法は、ヨーロッパ特許 EP‐A‐692 493号の文書の実施例1に記載されている特性を有する標準生成物から出発して、サンプルについて、浸透圧法によって測定した値とは異なり、相対値を有する数平均分子量(Mn)を、さらにまた、質量平均分子量(Mw)も評価すること可能にする。このサンプルの多分散性指数(PI = Mw/Mn)は、“ムーア(Moore)”較正により算出し、その後、“演繹”した。
【0066】
この方法によれば、高分子は、多孔質静置相を充填したカラム内で、高分子それぞれの膨潤状態のサイズに応じて、物理的に分離する。この分離を実施する前に、ポリマーのサンプルを、テトラヒドロフラン中に、およそ1g/lの濃度で溶解する。その後、溶液を、注入前に、0.45μmの有孔度を有するフィルターにより濾過する。
品名“Waters Alliance 2690”として販売されており、インライン脱ガス装置を備えたクロマトグラフを、上記の分離において使用する。溶出溶媒はテトラヒドロフランであり、流量は1ml/分であり、系の温度は35℃であり、分析時間は30分である。2本の“Waters”カラムセット、即ち、直列に配置した“Styragel HT6E”タイプを使用する。
【0067】

【0068】
ポリマーサンプル溶液の注入容量は、100μlである。検出器は、“Waters”モデル“2410”示差屈折計である。商標名“Waters Empower”を有するクロマトグラフィーデータ用のシステムズソフトウェアを使用する。
算出平均モル質量は、以下のミクロ構造を有するSBRについて描いた較正曲線と対比する:25質量%のスチレンタイプ単位、23質量%の1,2‐タイプ単位および50質量%のトランス‐1,4‐タイプ単位。
【0069】
(b) ポリマーおよびゴム組成物について、100℃でのムーニー粘度 ML (1+4)を規格ASTM D‐1646に従って測定する。
規格ASTM D‐1646に記載されているような振動(oscillating)稠度計を使用する。ムーニー可塑度測定は、次の原理に従って実施する:生状態(即ち、硬化前)の組成物を100℃に加熱した円筒状チャンバー内で成形する。1分間の予熱後、ローターが試験標本内で2回転/分で回転し、この運動を維持するための仕事トルクを4分間の回転後に測定する。ムーニー可塑度(ML 1 + 4)は、“ムーニー単位”(MU、1MU = 0.83ニュートン.メートル)で表す。
(c) ポリマーのガラス転移温度Tgは、示差走査熱量計を使用して測定する。
【0070】
(d) 鎖中央のCH3Si(SBR)2OH官能化および鎖末端でのSBR(CH3)2SiOHの官能化を、2D 1H‐29Si NMRによって特性決定し、1H NMRによって定量する。
2D 1H‐29Si NMRスペクトルは、上記官能基の性質を2J近辺内のシリコン核およびプロトンの化学シフト値(2つの結合による)によって確認することを可能にする。上記スペクトルは、8Hzの2J1H-29Si結合定数を使用する。鎖末端の存在物SBR(CH3)2SiOHのシリコンの化学シフトは、およそ11〜12ppmである。
【0071】
1H NMRスペクトルは、上記官能基の定量を、δ= 0ppmの近辺に位置するシリコンCH3Siが担持するメチル基のプロトンのシグナル特性の統合(integration)によって可能にする。サンプルを二硫化炭素(CS2)中に溶解する。100μLの重水素化シクロヘキサン(C6D12)をロックシグナルのために添加する。NMR分析は、5mm“ブロードバンド”BBIプローブを備えた500MHz Bruker分光計で実施する。定量的1H NMR試験においては、シーケンスは、30 パルスおよび2秒の繰返し時間を使用する。
【0072】
(e) 13C NMR法(Beebe, D. H., Polymer, 1978, 19, 231‐33、またはBradbury, J. H., Elix, J. A. and Perera, M. C. S., Journal of Polymer Science, 1988, 26, 615‐26)を使用して、得られたエラストマーのミクロ構造を測定する。13C NMR分析は、10mm 13C‐1Hデュアルプローブを備えた250MHz Bruker分光計で実施する。エラストマーを、CDCl3中におよそ75g/lの濃度で溶解する。定量13C NMR試験は、オーバーハウザー効果の1Hデカップリングおよび抑制(逆ゲート1Hデカップリング)によるシーケンス、90 パルスおよび繰返し時間 = 6秒を使用する。スペクトル幅は200ppmであり、スキャン数は8192である。スペクトルを、77ppmでのCDCl3の三重項の中央ピークに対して較正する。
【0073】
(f) ポリマーについて、トルエン中0.1g/dlのポリマー溶液の25℃での固有粘度を、乾燥ポリマーの溶液から出発して測定する。
原理
上記固有粘度は、毛細管中での上記ポリマー溶液の流動時間tおよびトルエンの流動時間t0を測定することによって判定する。
トルエンの流動時間および上記0.1g/dlポリマー溶液の流動時間を、25±0.1℃のサーモスタット制御浴内に置いたウベローデチューブ(毛管直径0.46mm、18〜22mlの容量)中で測定する。
【0074】
固有粘度は、下記の関係から得られる:



(式中、Cは、g/dlでのポリマートルエン溶液の濃度であり;
tは、秒でのポリマートルエン溶液の流動時間であり;
t0は、秒でのトルエンの流動時間であり;
ηintは、dl/gで表す固有粘度である。
【0075】
(g) ポリマーについて、低温流れ:CF100 (1+6)は、下記の測定方法から得られる:
目盛り付きダイにより所定時間(6時間に亘って一定条件(100℃)下に押出したゴムの質量を測定する。ダイは、0.5mmの厚さに対して6.35mmの直径を有する。
低温流れ装置は、底部に穴を開けた円筒状カップである。ペレット形状(厚さ2cmおよび直径52mm)に前以って製造したおよそ40g±4gのゴムをこの装置内に入れる。秤量1kg(±5g)の目盛り付きピストンを上記ゴムペレット上に置く。その後、アッセンブリを100℃±0.5℃で熱的に安定したオーブン内に入れる。
【0076】
オーブン内での最初の1時間の間は、測定条件は安定していない。従って、1時間後、押出された生成物を排除し廃棄する。
測定は、その後、6時間±5分間続き、その間、生成物はオーブン内に残存する。上記6時間の終了時に、押出された生成物サンプルは、底部表面と同一平面でカットすることによって回収しなければならない。試験の結果は、グラムで秤量したゴム質量である。
【0077】
2) SiOHによって鎖末端において官能化したコポリマーAの調製
シクロヘキサン、ブタジエン、スチレンおよびテトラヒドロフルフリルエチルエーテルを、100/11/3.2/0.037のそれぞれの質量による流量に従い、タービンタイプの撹拌機を備えた32.5Lの反応器内に連続して導入する。モノマー100g当り200マイクロモルのn‐ブチルリチウム(n‐BuLi)をライン入口に導入して、ライン入口に存在する各種構成成分によって持ち込まれたプロトン性不純物を中和する。モノマー100g当り530μモルのn‐BuLiを反応器の入口に導入する。
【0078】
各流量は、反応器内の平均滞留時間が40分であるように調整する。温度は、80℃に維持する。
反応器出口で取出サンプルについて測定した転換度合は、98%である。
最後に、モノマー100g当り265マイクロモルのヘキサメチルシクロトリシロキサン(シクロヘキサン中溶液中)を、リビングポリマー溶液(インライン静的ミキサーにおいて)に添加する。その後、コポリマーを、0.8phrの2,2'‐メチレンビス(4‐メチル‐6‐(tert‐ブチル)フェノールおよび0.2phrのN‐(1,3‐ジメチルブチル)‐N'‐フェニル‐p‐フェニレンジアミンを使用して、酸化防止処理に供した。
そのようにして処理したコポリマーを、その溶液から、水蒸気ストリッピング操作によって分離し、次いで、開放ミル上で100℃にて20分間乾燥させて、SiOHによって鎖末端において官能化したコポリマーを得る。
【0079】
このコポリマーAのML粘度は53である。通常のSECによって測定した上記コポリマーの分子量は123 000g/モルであり、PIは2.0である。
このコポリマーAのミクロ構造は、13C NMRによって測定する。
このコポリマーAのSBRブロックは、25%のスチレン(質量による)を、また、そのブタジエン成分においては、58%のビニル単位、21%のシス‐1,4‐単位および21%のトランス‐1,4‐単位を含む。
2D 1H‐29Si NMR分析は、鎖末端官能基 SBR(CH3)2SiOHが存在することを結論付けすることを可能にする。コポリマーAについて1H NMRによって測定した(CH3)2Si官能基の含有量は、5.85ミリモル/kgである。
【0080】
3) スズによって星型枝分れさせたコポリマーBの調製
コポリマーBの合成に関しては、この合成を試験1において説明した操作条件に従って実施するが、四塩化スズを、ヘキサメチルシクロトリシロキサンの代りに、モノマー100g当り265マイクロモルの四塩化スズ(シクロヘキサン中溶液中)で添加する。
【0081】
このコポリマーBのML粘度は104である。通常のSECによって測定した上記コポリマーの分子量は209 000g/モルであり、PIは2.1である。
このコポリマーBのミクロ構造は、13C NMRによって測定する。
このコポリマーBのSBRブロックは、25%のスチレン(質量による)を、また、そのブタジエン成分においては、58%のビニル単位、21%のシス‐1,4‐単位および21%のトランス‐1,4‐単位を含む。
【0082】
4) エラストマーマトリックス、即ち、コポリマーAとコポリマーBとの混合物の調製
5kgのシクロヘキサン、285gのポリマーAおよび15gのポリマーBを10リットルの反応器に加え、この混合物を60℃に5時間置く。そのように処理したコポリマーを、その溶液から、水蒸気ストリッピング操作によって分離し、次いで、開放ミル上で100℃にて20分間乾燥させて、コポリマーCを得る。
【0083】

【0084】
II. ゴム組成物の比較例
1) 使用する測定および試験法
(h) 100℃でのムーニー粘度ML (大)およびMS (小) (1+4):表に“Mooney”と題した規格ASTM: D‐1646に従って測定。結果は、相対的データで示す:100の対照に対する増大が粘度の上昇、ひいては悪影響を受けた加工性を示す。
(i) ショアA硬度:規格 DIN 53505に従って実施した測定。結果は、相対的データで示す。100の対照に対する増大が剛性の増大を示す。
【0085】
(j) 動的特性ΔG*およびtan(δ)maxは、規格ASTM D 5992‐96に従って、粘度アナライザー(Metravib VA4000)において測定する。単純な交互正弦剪断応力に10Hzの周波数で規格ASTM D 1349‐99に従う標準の温度条件(23℃)下に供した加硫組成物のサンプル(厚さ2mmおよび79mm2の断面積を有する円筒状試験標本)の応答を記録する。頂点間歪み振幅掃引を、0.1%から50%まで(外向きサイクル)、次いで50%から0.1%まで(戻りサイクル)で実施する。使用する結果は、複素動的剪断モジュラス(G*)および損失係数tanδである。観察されたtanδの最高値(tan(δ)max)および0.1%歪みでの値と50%歪みでの値間の複素モジュラスの差(ΔG*) (パイネ効果)は、戻りサイクルにおいて示される。結果は、相対的データで示す:100の対照に対する増大がヒステリシスの上昇を示す。
【実施例1】
【0086】
Tg = −25℃
エラストマーSBR C、SBR D、SBR EおよびSBR Fを、トレッドタイプの、各々が補強用充填剤としてシリカを含むゴム組成物C、D、EおよびFを製造するのに使用した。
これらの組成物C、D、EおよびFのの各々は、下記の配合(phr:エラストマー100部当りの部として表す)を示す。
【0087】

(1) = 4.3%の1,2単位、2.7%のトランス‐1,4‐単位、93%のシス‐1,4‐単位を含むBR (Tg = −106℃);
(2) = Rhodia社からの“Zeosil 1165MP”シリカ;
(3) = N234;
(4) = MESオイル (Shell社からの“Catenex SNR”);
(5) = ポリリモネン樹脂(DRT社からの“Dercolyte L120”);
(6) = TESPTカップリング剤(Degussa社からの“Si69”);
(7) = ジフェニルグアニジン (Flexsys社からのPerkacit DPG);
(8) = N‐(1,3‐ジメチルブチル)‐N‐フェニル‐パラ‐フェニレンジアミン (Flexsys社からの“Santoflex 6‐PPD”);
(9) = CBS (Flexsys社からの“Santocure”)。
【0088】
以下の組成物の各々を、第1工程においては、熱機械的加工により、その後、第2の仕上げ工程においては、機械的加工により製造する。
以下の成分を、容量が400cm3であり、70%満たし、約90℃の出発温度を有する‘バンバリー’タイプの実験室密閉ミキサー内に導入する:エラストマー、2/3のシリカ、ブラック、カップリング剤およびジフェニルグアニジン;その後、およそ1分後の、補強用充填剤の残り、MESオイル、樹脂、酸化防止剤、ステアリン酸およびオゾン劣化防止ワックス;そして、その後、およそ2分後の、酸化亜鉛。
【0089】
上記熱機械的加工の段階は、約160℃の最高落下温度まで、4〜5分間実施する。
上記熱機械的加工の第1工程はそのようにして実施し、この第1工程におけるブレードの平均速度が50回転/分であることを明確にする。
そのようにして得られた混合物を回収し、冷却し、その後、開放ミキサー(ホモ・フィニッシャー)内で、イオウおよび促進剤を30℃で添加し、混ぜ合せた混合物を3〜4分間さらに混合する(第2の上記機械的加工工程)。
【0090】
そのようにして得られた組成物を、その後、その物理的または機械的性質の測定のためのゴムのプラーク(2〜3mmの範囲の厚さを有する)または微細シートの形に、或いは、所望の形に切断および/または組立てた後、例えば、タイヤ用、特に、トレッド用の半製品として直接使用することのできる形状要素の形にカレンダー加工する。
架橋は、150℃で40分間実施する。
【0091】
表1

【0092】
官能化ジエンエラストマーの低温流れ抵抗性は、ゴム組成物中のスズによって星型枝分れさせたコポリマーの含有量を増大させることにより、上記星型枝分れさせたコポリマーが存在しない組成物Bと対比して有意に改良されていることが判明している。さらに、組成物C、DおよびEにおいては、tan (δ) maxは、シラノール官能基によって鎖末端において官能化したコポリマーを犠牲にしてのスズによって星型枝分れさせたコポリマーの含有量の増大にもかかわらず、許容し得る値に維持されていることも判明している。
エラストマーの低温流れ・組成物のヒステリシスの妥協点は、それぞれ、そのエラストマーマトリックス中に、5%、10%および20%のスズによって星型枝分れさせたコポリマーを含む本発明に従う組成物C、DおよびEにおいては、全く満足し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能化ジエンエラストマーであって、以下、
・該エラストマーの75質量%〜95質量%が、単官能性であって、1鎖末端のみに、シラノール官能基またはシラノール末端を有するポリシロキサンブロックを担持し、他の末端は何らの官能化も有していないこと、かつ
・該エラストマーの5質量%〜25質量%が、スズがカップリングしているかまたはスズによって星型枝分れさせていること、
を特徴とする官能化ジエンエラストマー。
【請求項2】
シラノール末端を有する前記ポリシロキサンブロックが、下記の式に相応する、請求項1記載のエラストマー:
【化1】


(式中、R1およびR2は、同一または異なるものであって、1〜10個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリル、アラルキルまたはビニル基を示し、
xは、1〜1500の範囲の整数を示す)。
【請求項3】
R1およびR2が、同一または異なるものであって、1〜5個の炭素原子を有するアルキルを示す、請求項2記載のエラストマー。
【請求項4】
前記官能化ジエンエラストマーが、スズがカップリングしているかまたはスズによって星型枝分れさせている10質量%〜25質量%のジエンエラストマーからなる、請求項1記載のエラストマー。
【請求項5】
スズがカップリングしているかまたはスズによって星型枝分れさせている前記ジエンエラストマーが、スズによって星型枝分れさせているエラストマーである、請求項1〜4のいずれか1項記載のエラストマー。
【請求項6】
スズによって星型枝分れさせている前記エラストマーが、4本の分岐を含むエラストマーである、請求項5記載のエラストマー。
【請求項7】
前記ジエンエラストマーが、ブタジエン/スチレンコポリマーである、請求項1〜6のいずれか1項記載のエラストマー。
【請求項8】
無機充填剤を含む少なくとも1種の補強用充填剤とエラストマーマトリックスとをベースとする強化ゴム組成物であって、前記エラストマーマトリックスが、請求項1〜7に記載したような少なくとも1種の官能化ジエンエラストマーを含むことを特徴とする強化ゴム組成物。
【請求項9】
前記エラストマーマトリックスが、少なくとも1種の通常のジエンエラストマーも含む、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
前記補強用充填剤中の無機充填剤の割合が、前記補強用充填剤の総質量に対して50質量%よりも多い、請求項8または9記載の組成物。
【請求項11】
前記補強用無機充填剤が、シリカからなる、請求項8〜10のいずれか1項記載の組成物。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか1項記載の架橋性または架橋ゴム組成物を含むことを特徴とする、タイヤ用のゴムから製造した半製品。
【請求項13】
前記半製品が、トレッドである、請求項12記載の半製品。
【請求項14】
請求項12または13記載の半製品を含むことを特徴とするタイヤ。
【請求項15】
1鎖末端のみにシラノール官能基またはシラノール末端を有するポリシロキサンブロックを担持し、他の末端は何らの官能化も有していない単官能性ジエンエラストマーの低温流れの低減方法であって、前記単官能性ジエンエラストマーを、その状態調節前に、スズがカップリングしているかまたはスズによって星型枝分れさせているジエンエラストマーを前記単官能性ジエンエラストマーの質量に対して5〜35質量%の割合で添加することによって変性することを特徴とする前記低温流れの低減方法。
【請求項16】
1鎖末端のみにシラノール官能基またはシラノール末端を有するポリシロキサンブロックを担持し、他の末端は何らの官能化も有していない単官能性ジエンエラストマーの低温流れの低減方法であって、その合成過程における、重合段階の終了時に、5〜25質量%のリビングエラストマーを、スズ系化合物をカップリングさせるかまたはスズ系化合物によって星型枝分れさせ、そして、その後、前記過程を、75〜95質量%の残りのリビングエラストマーの、シラノール官能基またはシラノール末端を有するポリシロキサンブロックを導入することのできる官能化剤による官能化によって続行することを特徴とする前記低温流れの低減方法。

【公表番号】特表2013−507468(P2013−507468A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532597(P2012−532597)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065030
【国際公開番号】WO2011/042507
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(512068547)コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン (169)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】