説明

定着ローラ、ベルト定着装置及び画像形成装置

【課題】定着ベルトの蛇行及び斜行を抑えることのできる定着ローラ、ベルト定着装置及び画像形成装置を提供すること。
【解決手段】一方の端部にジャーナル8を有する軸体2とこの軸体2の外周に形成された発泡弾性層3とを備え、下記試験における軸線方向の変位量(絶対値)が75mm以下である定着ローラ1、この定着ローラ1とこの定着ローラ1に巻回された定着ベルトと前記定着ベルトを介して前記定着ローラ1を圧接する加圧ローラとを備えて成るベルト定着装置、及び、このベルト定着装置を備えて成る画像形成装置。<試験>外径が80mmの金属製ローラ3本を正三角形となるように配置して23℃、50RH%の環境下で三方から前記定着ローラを狭圧し、前記金属製ローラそれぞれが前記発泡弾性層をその厚さに対して半径方向に20%圧縮した状態で12rpm/minの回転速度で3分間回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、定着ローラ、ベルト定着装置及び画像形成装置に関し、さらに詳しくは、定着ベルトの蛇行及び斜行を抑えることのできる定着ローラ、ベルト定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンタ、複写機、ビデオプリンタ、ファクシミリ、これらの複合機等には、電子写真方式を利用した各種の画像形成装置が採用されている。この画像形成装置は、現像剤を定着させる定着装置として、例えば、定着ローラに巻回された定着ベルトを備えて成るベルト定着装置等を備えている。
【0003】
このようなベルト定着装置において、定着ベルトは、常に張力がかけられた状態で、定着ローラ及び支持ローラに張架されて、無限軌道上を走行する。このとき、定着ベルトが蛇行すると、現像剤を所望のように記録体に定着させることができず、特に、定着ベルトが一方向に斜行すると、また、定着ベルトが激しく蛇行すると、定着ローラから脱離して破損することがある。したがって、ベルト定着装置においては、蛇行、斜行等することなく定着ベルトを走行させることが重要である。
【0004】
それ故、定着ベルトの蛇行、斜行を防止する技術が開発されている。例えば、「定着ベルトの斜行自体および弛みを防止することができる定着装置」(0005欄参照。)として、特許文献1において、「内部にヒータを有するヒートロールと、該ヒートロールと一定間隔をおいて設けられた分離ロールと、これらヒートロールと分離ロールとの間に巻装された定着ベルトと、該定着ベルトを介して前記ヒートロールと対向する加圧ロールとを備え、トナー粉画像を形成した被転写物を前記加圧ロールと定着ベルトとの間に走行させて前記トナー粉画像を定着する定着装置であって、前記加圧ロールは前記定着ベルトに、これを両側に引っ張る力を左右均等に付与しうる形状または構造のものであることを特徴とする定着装置。」(請求項1参照。)が提案されている。
【0005】
また、「定着ベルトの蛇行を確実に防止することができ・・る定着装置」(0007欄参照。)として、特許文献2において、「定着ローラと、前記定着ローラの外周面に張架された無端状の定着ベルトと、前記定着ベルトを前記定着ローラの外周面に押圧して前記定着ベルトとの間に定着ニップ部を形成する加圧ローラとを備え、シート表面に未定着トナー像を担持したシートを前記未定着トナー像が前記定着ベルトに接触するように前記定着ニップに挿通することで前記未定着トナー像を定着する定着装置において、前記定着ローラは、回転軸を基準とした外周面の直径が、前記回転軸方向に沿っての端部よりも中央部のほうが大きいクラウン形状に形成され、前記定着ベルトは、裏面が前記定着ローラの前記外周面に接触するように張設された状態において、前記回転軸を基準とした表面の直径が、前記回転軸方向に沿っての端部よりも中央部のほうが小さい逆クラウン形状となる、ことを特徴とする定着装置」(請求項1参照。)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−5783号公報
【特許文献2】特開2008−185855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、定着ベルトの蛇行及び斜行を抑えることのできる定着ローラ、ベルト定着装置及び画像形成装置を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、一方の端部にジャーナルを有する軸体と前記軸体の外周に形成された発泡弾性層とを備えて成り、下記試験における軸線方向の変位量(絶対値)が75mm以下であることを特徴とする定着ローラであり、
試験:外径が80mmの金属製ローラ3本をそれらの軸線が正三角形の頂点となるように配置し、23℃、50RH%の環境下、このように配置された前記金属製ローラで三方から前記定着ローラを狭圧し、前記金属製ローラそれぞれが前記発泡弾性層をその厚さに対して半径方向に20%圧縮した状態で、前記金属製ローラを12rpm/minの回転速度で3分間回転させる。
請求項2は、請求項1に記載の定着ローラと、前記定着ローラに巻回された定着ベルトと、前記定着ベルトを介して前記定着ローラを圧接する加圧ローラとを備えて成ることを特徴とするベルト定着装置であり、
請求項3は、請求項2に記載のベルト定着装置を備えて成ることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る定着ローラは、前記試験における軸線方向の変位量(絶対値)が75mm以下であるから、自身が回転することによって、蛇行及び斜行の程度を許容範囲内に抑えつつ自身に巻回された定着ベルトを走行させることができる。したがって、この発明によれば、定着ベルトの蛇行及び斜行を抑えることのできる定着ローラ、ベルト定着装置及び画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、この発明に係る定着ローラの一実施例である定着ローラを示す概略斜視図である。
【図2】図2は、この発明に係る定着ローラに用いられる軸体の一実施例である軸体を示す概略正面図である。
【図3】図3は、この発明に係る定着ローラの変位量を測定する測定装置の構成を示す概略正面図である。
【図4】図4は、この発明に係る定着ローラの変位量を測定する測定装置の構成を示す概略左側面図である。
【図5】図5は、この発明に係るベルト定着装置を備えた画像形成装置の一例を示す要部概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明に係る定着ローラは、前記試験における軸線方向の変位量(絶対値)が75mm以下である。前記変位量が前記範囲にある場合には、後述するように、この発明に係る定着ローラがベルト定着装置に装着されて回転すると、この定着ローラに巻回された定着ベルトを、蛇行及び斜行の程度を許容範囲内に抑えつつ走行させることができる。定着ベルトの蛇行及び斜行を許容範囲内で十分小さく抑えることができる点で、前記変位量(絶対値)は、60mm以下であるのが好ましく、50mm以下であるのが特に好ましい。
【0012】
この発明に係る定着ローラの前記変位量(絶対値)は下記試験によって測定される。
<試験>外径が80mmの金属製ローラ3本をそれらの軸線が正三角形の頂点となるように配置し、23℃、50RH%の環境下、このように配置された前記金属製ローラで三方から前記定着ローラを狭圧し、前記金属製ローラそれぞれが前記発泡弾性層をその厚さに対して半径方向に20%圧縮した状態で、前記金属製ローラを12rpm/minの回転速度で3分間回転させる。
【0013】
前記試験をより具体的に説明する。まず、図3及び図4に示されるように、実質的に同一の金属製ローラ20a、20b及び20cを3本準備する。これらの金属製ローラ20a、20b及び20cはそれぞれ、金属で形成された円柱体を成している。前記金属としては、例えば、炭素鋼(例えば、機械構造用炭素鋼「S45C」等)、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼、真鍮等が挙げられる。金属製ローラ20a、20b及び20cはその外周面がメッキ処理されていてもよく、例えば、クロムメッキ等が好適に施される。図3及び図4に示される金属製ローラ20a、20b及び20cはいずれも機械構造用炭素鋼「S45C」で形成され、その外周面がクロムメッキされている。これら金属製ローラ20a、20b及び20cは、その外径が80mmであり、軸線長さは測定対象、スペーサ及び変位量等を考慮して適宜の長さになっている。
【0014】
また、図3及び図4に示されるように、前記金属製ローラ20a、20b及び20cに狭圧されるスペーサ21a及び21bを準備する。これらのスペーサ21a及び21bは、前記金属、具体的にはアルミニウムで円柱状又は円盤状に形成されている。スペーサ21a及び21bの外径は、図3及び図4に示されるように、3本の金属製ローラ20a、20b及び20cそれぞれに狭圧された測定対象ローラ23の弾性層がその半径方向に20%圧縮される割合となるように、設定されている。
【0015】
次いで、準備した金属製ローラ20a、20b及び20cを、図3及び図4に示されるように、それらの軸線が正三角形の頂点となるように、配置する。この例では、金属製ローラ20cを固定し、金属製ローラ20bを金属製ローラ20cと同一平面上に、前記金属製ローラ20cに対して接近又は離間するように移動可能に配置すると共に、金属製ローラ20aを前記同一平面の垂直方向上部に、前記垂直方向に上下動可能に配置する。このとき、金属製ローラ20bと金属製ローラ20aとは、金属製ローラ20a、20b及び20cの軸線が正三角形の頂点に位置するように、同期して移動する。なお、金属製ローラ20b及び20cは図示しない駆動手段によって軸線を中心に回転駆動可能に軸支され、金属製ローラ20aは回転可能に軸支されている。図3に示されるように、このように配置された金属製ローラ20b及び20c上に測定対象ローラ23と、測定対象ローラ23の軸線方向両側に間隔をあけて前記スペーサ21a及び21bとをそれぞれ配置する。次いで、図4に示されるように金属製ローラ20aの外周面が両スペーサ21a及び21bに接触するまで、金属製ローラ20aを前記垂直方向下側すなわち金属製ローラ20b及び20c側に移動させて、この金属製ローラ20aと同期して金属製ローラ20a側に金属製ローラ20bを移動させ、金属製ローラ20a、20b及び20cで測定対象ローラ23を三方から狭圧する。このとき、金属製ローラ20a、20b及び20cの軸線は正三角形の頂点に位置し、金属製ローラ20a、20b及び20cそれぞれは測定対象ローラ23の弾性層を、その軸線全体にわたって弾性層の厚さに対して20%の割合で半径方向にそれぞれ圧縮している。この状態を保持しつつ、23℃、50RH%の環境下で、金属製ローラ20b及び20cを図示しない駆動手段で同方向例えば図4に示す矢印方向に12rpm/minの回転速度で3分間回転させる。そうすると、測定対象ローラ23及び金属製ローラ20aはそれぞれ逆方向及び同方向例えば図4に示す矢印方向に従動回転する。このようにして、金属製ローラ20a、20b及び20c並びに測定対象ローラ23を回転させた後、測定対象ローラ23の、軸線方向における変位方向と、測定対象ローラ23の試験前と試験後との前記軸線方向の変位量(差分)を求める。この試験を複数回例えば3回行い、その算術平均値を前記変位量(絶対値)とする。
【0016】
この発明において、細部に至るまで解明されているわけではないが、測定対象ローラ23としての他の特性及び物性が大きく相違しなくても、測定対象ローラ23の前記変位量(絶対値)が前記範囲内にある場合には、この測定対象ローラ23を実機のベルト定着装置に装着したときに、蛇行及び斜行の程度を許容範囲内に抑えつつ定着ベルトを走行させることができる。その結果、蛇行走行及び/又は斜行走行による定着ベルトの破損を低減することができる。
【0017】
この発明に係る定着ローラは、例えば図1に示されるように、その外径が軸線方向にそって略同一である所謂「ストレート形状」を有している。この発明に係る定着ローラは、前記変位量(絶対値)が前記範囲内にあれば、所謂「ストレート形状」であっても、この発明の目的をよく達成することができる。この発明に係る定着ローラの外径及び軸線長さ等は装着されるベルト定着装置に応じて適宜に設定される。
【0018】
この発明に係る定着ローラは、前記範囲の前記変位量(絶対値)を有していれば、定着ベルトの蛇行走行及び/又は斜行走行を防止して、定着ベルトが初期の機能を発揮することに大きく貢献することができる。この発明において、定着ベルトの初期の機能をより確実に発揮させることができる点で、この発明に係る定着ローラが20〜60、特に25〜45のアスカーC硬度を有しているのが好ましい。アスカーC硬度は、JIS K6253に準拠して、定着ローラ表面の複数箇所を測定し、測定値を算術平均した値とすることができる。
【0019】
次に、この発明に係る定着ローラの実施例を、図面を参照して、説明する。この発明に係る定着ローラの一実施例としての定着ローラ1は、例えば、図1に示されるように、軸体2と、軸体2の外周面に形成された発泡弾性層3とを備えて成り、前記試験における軸線方向の変位量(絶対値)が75mm以下である。
【0020】
軸体2は、良好な導電特性を有していればよく、通常、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等で構成された所謂「芯金」と称される軸体とされる。また、軸体2は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂等の絶縁性芯体にメッキを施して導電化した軸体であってもよく、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等に導電性付与剤としてカーボンブラック若しくは金属粉体等を配合した導電性樹脂で形成された軸体であってもよい。軸体2の外径は弾性ローラ1の用途等に応じて適宜の外径に調整される。
【0021】
軸体2は、図1及び特に図2に示されるように、略同一の外径を有する筒状の軸体胴部7と、軸体胴部7の一方の端部に同軸に延在する筒状のジャーナル部8とを有している。すなわち、軸体胴部7の他方の端部にはジャーナル部が形成されていない。軸体胴部7の外径及び軸線長さ等は装着されるベルト定着装置に応じて適宜に設定され、例えば、その外径は8〜50mm程度に設定される。ジャーナル部8は、前記軸体胴部7の外径よりも小さい略同一の外径例えば4〜20mmの外径を有している。ジャーナル部8の軸線長さは、装着されるベルト定着装置に応じて適宜に設定され、例えば、10〜80mmに設定されている。軸体胴部7とジャーナル部8とは一体に作製されても別々に作製された後接合されてもよい。
【0022】
前記発泡弾性層3は、後述する発泡ゴム組成物によって、軸体2の外周面に形成されている。発泡弾性層3は、その内部及び/又は外表面にセルを有する発泡弾性層とされる(図1において発泡弾性層3の外表面に開口したセルは図示しない。)。発泡弾性層3がセルを有していると、発泡弾性層3を低硬度化することができる。ここで、発泡弾性層3に形成されるセルは、発泡ゴム組成物に含有される発泡剤の発泡又は分解等によって生じる中空領域、及び、発泡ゴム組成物に含有される中空充填材等に由来する中空領域をいう。発泡弾性層3に形成される複数のセルは、他のセルに接することのない状態若しくは連通することのない状態(独立セル状態と称する。)、他のセルに接している状態若しくは連通している状態(連通セル状態と称する。)、又は、前記独立セル状態と前記連通セル状態とが共存する状態の何れの状態にあってもよい。なお、セルの形状は特に限定されず、独立セル状態にあるセルの形状は略球状、楕円球体状、不定形であってもよく、連通セル状態にあるセルの形状は複数のセルが連通して管状となっていてもよい。
【0023】
発泡弾性層3に形成されたセルは、200〜400μmの平均セル径、150〜250μmのセル径の標準偏差σ、及び/又は、200〜400μmの、周囲に存在する他のセルとの距離(以下、セル間距離と称することがある。)を有しているのが好ましい。前記セルが前記範囲の平均セル径、標準偏差σ及びセル間距離の少なくとも1つを有していると、ベルト定着装置に装着されたときに、長期間にわたって現像剤を記録体に所望のように定着させることに貢献できる。前記平均セル径は、発泡弾性層3の表面、又は、発泡弾性層3を任意の面で切断したときの切断面において、約20mmの領域を電子顕微鏡等で観察し、観察視野内に存在する各セルにおける開口部の最大長さを測定して、測定された最大長さ(セル径と称する。)を算術平均して得られた平均長さとして、求めることができる。セル径の標準偏差σは、前記のようにして測定されたセル径の標準偏差σを定法により求めることができる。セル間距離は、発泡弾性層3の前記観察視野内に存在する複数のセルにおいて、ある特定のセルと、その周囲に存在する複数のセルとの中心間距離を測定し、測定された中心間距離を算術平均して得られた値として、求めることができる。なお、セルの中心は、セル輪郭を基準とした四半円点によって判断することができる。前記平均セル径、前記標準偏差σ及び前記セル間距離は、発泡剤の配合量、硬化条件等により、調整することができる。
【0024】
発泡弾性層3は、定着ローラ1の最外層であるから、定着ローラ1のアスカーC硬度とほぼ同範囲のアスカーC硬度を有しており、具体的には、20〜60、特に25〜45のアスカーC硬度を有しているのが好ましい。発泡弾性層3のアスカーC硬度は前記方法により算出される。発泡弾性層3のアスカーC硬度は、例えば、発泡剤の配合量及び硬化条件等により、調整することができる。
【0025】
発泡弾性層3の厚さは特に限定されないが、通常、2〜20mmに調整されるのが好ましく、3〜12mmに調整されるのが特に好ましい。
【0026】
この発明に係る定着ローラは、例えば、発泡弾性層3を形成する発泡ゴム組成物を軸体2の外周面に配置し、この発泡ゴム組成物を発泡硬化させることによって、製造することができる。この発明に係る定着ローラの製造方法(以下、この発明に係る製造方法と称することがある。)について具体的に説明する。この発明に係る製造方法においては、まず、軸体2を準備する。軸体2は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮若しくはこれらの合金等の金属、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の樹脂、及び前記樹脂等に導電性付与剤としてカーボンブラック又は金属粉体等を配合した導電性樹脂等の材料を用いて、公知の方法により所望の形状に調製される。軸体2に導電性が要求される場合には、前記金属及び前記導電性樹脂の他に、前記樹脂等で形成した絶縁性芯体の表面に定法によりメッキを施すことにより、軸体2を形成することができる。前記材料の中でも、容易に導電性を付与することができる点で、金属であるのが好ましく、快削鋼、アルミニウム又はステンレス鋼であるのが特に好ましい。
【0027】
軸体2は、所望により、その外周面にプライマー層が塗布されてもよい。プライマーとしては、特に制限はないが、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。プライマー層は、例えば、0.1〜10μmの厚さに形成される。
【0028】
次いで、発泡弾性層3を形成する発泡ゴム組成物を準備する。前記発泡ゴム組成物は、ゴムと、発泡剤と、所望により各種添加剤等とを含有する組成物であればよく、例えば、発泡ゴム組成物が好ましく挙げられる。この発泡シリコーンゴム系組成物としては、付加反応型発泡シリコーン発泡ゴム組成物が特に好ましい。前記付加反応型発泡シリコーンゴム組成物として、例えば、特開2008−076751号公報に記載されている付加反応型発泡シリコーンゴム組成物が挙げられる。
【0029】
この発明に係る製造方法においては、次いで、前記発泡ゴム組成物を軸体2の外周面に配置する。発泡ゴム組成物は、発泡弾性層3の軸線長さよりも長くなるように、軸体胴部7の外周面、所望によりジャーナル部8の外周面に、配置する。前記発泡ゴム組成物の配置は公知の方法、例えば、押出成形による連続加硫、プレス、インジェクションによる型成形等を採用することができるが、前記軸体2と前記発泡ゴム組成物とを押出機によって一体分出しする押出成形がよい。
【0030】
前記押出成形において、軸体2は、ジャーナル部8を移送方向前方に配して前記押出機内を移送されてもよく、また、ジャーナル部8を移送方向後方に配して前記押出機内を移送されてもよい。軸体2のジャーナル部8の配置位置は、後述するように、軸体2の外周面に配置された発泡ゴム組成物の除去量を考慮して適宜選択されると、前記変位量(絶対値)を前記範囲内に容易に調整することができる。
【0031】
また、前記押出成形において、軸体2の少なくとも一方の端部にコマ部材を装着すると、前記したジャーナル部8の配置位置、後述する静置及び後述する発泡ゴム組成物の除去量に大きくかかわらず、前記変位量(絶対値)を前記範囲内に容易に調整することができる。この効果により一層優れる点で、コマ部材は、軸体2の両端部に装着されることもでき、軸体2の移送方向後方に位置する軸体2の端部に装着されるのが好ましい。軸体2に装着されるコマ部材は、例えば、必要により軸体2のジャーナル部8が挿入される軸孔を有する、軸体2の外径と略同一の外径を有する円筒形を成している。コマ部材の外径は、軸線方向に略同一であり、軸体2の外周面に配置される発泡ゴム組成物の外径よりも小さいのが好ましく、例えば、8〜50mm程度に設定される。コマ部材の軸線長さは、軸体2の軸線長さ、軸体2の外周面に配置される発泡ゴム組成物の軸線長さ、及び、軸体2の端部形状等に応じて調整され、例えば、10〜100mm程度に設定される。このコマ部材は、例えば、ネジ止め、接着等により軸体2に装着される。
【0032】
この発明に係る製造方法において、前記発泡ゴム組成物が軸体2の外周面に配置された状態でしばらく静置されると、前記変位量(絶対値)を前記範囲内に容易に調整することができる。このように、そのままの状態で次工程に供されずに静置されると、前記したジャーナル部8の配置位置、後述する発泡ゴム組成物の除去量及び前記コマ部材の使用に大きくかかわらず、前記変位量(絶対値)を前記範囲内に容易に調整することができる。この静置は、例えば、15〜30℃、20〜80RH%の環境下に3〜60分程度実施されるとよい。
【0033】
この発明に係る製造方法においては、次いで、軸体2の外周面に配置された発泡ゴム組成物の軸線方向の両端部分を、残部が発泡弾性層3の軸線長さよりも長くなるように、除去する。このとき、除去する発泡ゴム組成物の除去量を調整すると、前記変位量(絶対値)を前記範囲内に容易に調整することができる。例えば、軸体2のジャーナル部8を軸体2の移送方向前方に配した場合には、ジャーナル部8の外周面及びジャーナル部8近傍の軸体胴部7に配置された発泡ゴム組成物を除去するのがよく、例えば、形成予定の発泡弾性層3の端部位置からジャーナル部8側に5mm程度の位置までの発泡ゴム組成物が残存するように、発泡ゴム組成物を除去し、ジャーナル部8が形成されていない軸体胴部7の端部の外周面に配置された発泡ゴム組成物を、例えば、軸体胴部7の端面から5mm程度の位置まで発泡ゴム組成物が残存するように、発泡ゴム組成物を除去するのがよい。一方、軸体2のジャーナル部8を軸体2の移送方向後方に配した場合には、ジャーナル部8の端面から5mm程度の位置まで発泡ゴム組成物が残存するように、発泡ゴム組成物を除去し、ジャーナル部8が形成されていない軸体胴部7の端部の外周面に配置された発泡ゴム組成物を、形成予定の発泡弾性層3の端部位置から軸体胴部7の端面側に5mm程度の位置までの発泡ゴム組成物が残存するように、発泡ゴム組成物を除去するのがよい。なお、軸体2のジャーナル部8の配置位置及び発泡ゴム組成物の除去方法はこのような方法に限定されることはなく、前記方法以外の除去方法であっても、前記した「静置」、「コマ部材の装着」等によって、前記変位量(絶対値)を前記範囲内に調整することができる。
【0034】
この発明に係る製造方法においては、次いで、発泡ゴム組成物を発泡硬化し、発泡弾性層3を形成する。
【0035】
発泡ゴム組成物の硬化条件は、軸体2の外周面に配置された発泡ゴム組成物が硬化し、発泡剤を含有する場合には、発泡剤が分解又は発泡するのに十分な硬化条件であればよく、発泡ゴム組成物の組成、発泡剤の種類等に応じて適宜調整される。例えば、発泡ゴム組成物が後述する付加反応型発泡シリコーンゴム組成物である場合には、硬化条件は、通常、100〜400℃、特に200〜400℃の加熱温度、数分以上1時間以下、特に5分以上30分以下の加熱時間であるのが好ましい。
【0036】
発泡ゴム組成物は、必要に応じて、二次加熱されることもできる。二次加熱は、例えば、前記の条件で架橋された発泡ゴム組成物を、さらに、押出成形された状態のままで、例えば、180〜250℃、好ましくは190〜230℃で、1〜24時間、好ましくは3〜10時間にわたって、又は、金型を用いて、例えば、130〜200℃、好ましくは150〜180℃で、5分以上24時間以下、好ましくは10分以上10時間以下にわたって、再度加熱されることによって、行われる。
【0037】
この発明に係る製造方法においては、次いで、所望により、発泡硬化された発泡弾性層3を所定の寸法に整える。例えば、所定の軸線長さとなるように、その両端部を切断する。また、所望の外径及び形状となるように、研削工程、研磨工程及び/又は切削工程等が施される。研削工程、研磨工程及び/又は切削工程は、従来から利用されている研削盤、円筒研削盤、やすり等により、定法に従って行うことができる。
【0038】
このようにして、前記変位量(絶対値)が前記範囲内にある、この発明に係る定着ローラを製造することができる。
【0039】
この発明に係る定着ローラは、前記変位量(絶対値)が75mm以下にあるから、前記したように、この発明に係る定着ローラの形状、及び、ベルト定着装置に装着されている加圧ローラの形状が共に所謂「ストレート形状」であっても、換言すると、この発明に係る定着ローラ及び前記加圧ローラの形状を特許文献1及び2等に記載されているような特定の形状に整形しなくても、ベルト定着装置に定着ベルトが巻回された状態に装着されると、蛇行及び斜行の程度を許容範囲内に抑えつつ定着ベルトを走行させることができる。したがって、この発明に係る定着ローラは、如何なる定着装置にも用いることができるが、ベルト定着装置に好適に用いることができる。前記した定着ベルトの蛇行及び斜行は定着ベルトの走行速度が速いとより顕著に発生するから、このような走行速度の早いベルト定着装置例えば高速化された画像形成装置用のベルト定着装置に特に好適に用いることができる。
【0040】
この発明に係る定着ローラは、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、定着ローラ1は発泡弾性層3が最外層となっているが、この発明において、定着ローラは、発泡弾性層の外周面に、他の層、例えば、弾性層、離型層、コート層、表面層及び/又は保護層等が形成されて、これらの他の層が最外層となっていてもよい。
【0041】
また、前記定着ローラ1の発泡弾性層3は単層構造とされているが、この発明において、発泡弾性層は複数層を積層した発泡弾性層としてもよい。
【0042】
また、定着ローラ1は、用途に応じて、軸体2内、発泡弾性層3内及び/又は軸体2と発泡弾性層3との間に、加熱体、例えば、電熱器、発熱コイル等を備えていてもよい。例えば、定着ローラ1が熱ローラ定着器の定着ローラとして使用される場合には、軸体2内に加熱体を備えている。
【0043】
さらに、定着ローラ1は、軸体2の外周面に発泡弾性層3が形成されているが、この発明において、発泡弾性層は、プライマー層又は接着剤層を介して、軸体の外周面に形成されてもよい。プライマー層を形成するプライマーとしては、特に限定されず、例えば、シランカップリング系プライマー等が挙げられる。また、接着剤層を形成する接着剤としては、特に制限されないが、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂及びこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、アミノ基及び/又は水酸基を有する接着剤が好適である。また、これらの樹脂を硬化させるための架橋剤として、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、過酸化物、フェノール化合物、ハイドロジェンシロキサン化合物等が用いられる。
【0044】
この発明に係る定着ローラを備えたベルト定着装置(以下、この発明に係る定着装置と称することがある。)及び画像形成装置(以下、この発明に係る画像形成装置と称することがある。)の一例を、図5を参照して、説明する。
【0045】
図5に示されるように、この発明に係る画像形成装置30は、静電潜像が形成される回転可能な像担持体31例えば感光体と、前記像担持体31の周囲に配置された、帯電手段32例えば帯電ローラ、露光手段33、現像手段40、転写手段34例えば転写ローラ及びクリーニング手段37と、記録体の搬送方向下流側に定着手段35例えばベルト定着装置とを備えている。この現像手段40は、従来の現像手段と基本的に同様に形成され、具体的には、図5に示されるように、現像剤収納部41と、像担持体31に現像剤42を供給する現像剤担持体44と、現像剤担持体44に現像剤42を供給する現像剤供給手段43と、現像剤42を帯電させる現像剤規制部材45とを備えている。現像剤42は、一成分系の現像剤であれば、乾式現像剤であっても湿式現像剤であってもよく、また、非磁性現像剤であっても磁性現像剤であってもよい。
【0046】
前記定着手段35は、この発明に係る定着装置35であり、定着ローラ53としてこの発明に係る定着ローラを備えている。この定着手段35は、図5にその断面が示されるように、記録体36を通過させる開口52を有する筐体50内に、定着ローラ53と、定着ローラ53の近傍に配置された無端ベルト支持ローラ54と、定着ローラ53及び無端ベルト支持ローラ54に巻回された定着ベルト55と、定着ローラ53と対向配置された加圧ローラ56とを備え、定着ベルト55を介して定着ローラ53と加圧ローラ56とが、互いに当接又は圧接するように、回転自在に支持されて成るベルト定着装置である。この定着手段35において、定着ローラ53は加圧ローラ56に従動して回転するように軸支され、定着ローラ53及び加圧ローラ56は図5に示されるようにその外径が軸線方向にそって略同一である所謂「ストレート形状」を有している。無端ベルト支持ローラ54は、画像形成装置に通常用いられるローラであればよく、例えば、弾性ローラ等が用いられる。定着ベルト55は、例えば、ポリアミド、ポリアミドイミド等の樹脂により、無端状に形成されたベルトであればよく、その厚さ等も適宜定着手段35に適合するように調整することができる。定着ローラ53、無端ベルト支持ローラ54及び加圧ローラ56はそれぞれ、加熱体(図示しない。)が内蔵され、加圧ローラ56はスプリング等の付勢手段(図示しない。)によって、定着ベルト55を介して定着ローラ53に圧接している。定着ベルト55と加圧ローラ56との圧接された間を記録体36が通過することにより、加圧と同時に加熱され、記録体36に転写された現像剤42(静電潜像)を定着させることができる。
【0047】
この発明に係る画像形成装置30は、次のように作用する。まず、画像形成装置30において、帯電手段32により像担持体31が一様に帯電され、露光手段33により像担持体31の表面に静電潜像が形成される。次いで、現像手段40から現像剤42が像担持体31に供給され、静電潜像が現像される。次いで、現像剤像は像担持体31と転写手段34との間に搬送される記録体36上に転写される。この記録体36は定着手段35に搬送され、現像剤像が永久画像として記録体36に定着される。このようにして、記録体36に画像を形成することができる。
【0048】
この発明に係る画像形成装置30及び前記定着手段35は定着ローラ53としてこの発明に係る定着ローラを備えているから、定着ベルト55を介して定着ローラ53を加圧する前記加圧ローラ56の形状及び定着ローラ53の形状が共に所謂「ストレート形状」であっても、蛇行及び斜行の程度を許容範囲内に抑えつつ定着ベルト55を走行させることができる。したがって、この発明に係る画像形成装置30及びこの定着手段35は蛇行走行及び/又は斜行走行による定着ベルト55が高度に破損しにくく耐久性にも優れる。
【0049】
画像形成装置30は、電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置30は、現像手段40に単色の現像剤42のみを収容するモノクロ画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、モノクロ画像形成装置に限定されず、カラー画像形成装置であってもよい。カラー画像形成装置としては、例えば、像担持体上に担持された現像剤像を中間転写体に順次一次転写を繰り返す4サイクル型カラー画像形成装置、各色毎の現像手段を備えた複数の像担持体を中間転写体や転写搬送ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置等が挙げられる。画像形成装置30は、例えば、複写機、ファクシミリ、プリンター等の画像形成装置とされる。
【0050】
また、画像形成装置30において、現像剤42は、一成分系の現像剤が有利に用いられるが、トナーと、鉄、ニッケル等のキャリアとを含む二成分系の現像剤も使用することができる。
【実施例】
【0051】
(実施例1)
まず、軸体胴部7(直径14mm×長さ350mm、SUM22)と、この軸体胴部7の一方の端部に形成されたジャーナル部8(直径10mm×長さ23mm、SUM22)とを有する軸体2を準備した。この軸体2の軸体胴部7に無電解ニッケルメッキ処理を施した後、トルエンで洗浄し、プライマー「No.101A/B」(信越化学工業株式会社製:商品名)を塗布した。この軸体2を、ギアーオーブンを用いて、180℃の温度にて30分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、軸体胴部7の外周面にプライマー層を形成した。
【0052】
次いで、ビニル基含有シリコーン生ゴムとシリカ系充填材とを含むシリコーンゴム組成物「KE−904FU」(信越化学工業株式会社製:商品名)100質量部と、付加反応架橋剤「C−153A」(信越化学工業株式会社製:商品名)2.0質量部と、有機系発泡剤:アゾビス−イソブチロニトリル「KEP−13」(信越化学工業株式会社製:商品名)2.5質量部と、付加反応触媒としての白金触媒適量と、反応制御剤「R−153A」(信越化学工業株式会社製:商品名)0.5質量部と、有機過酸化物架橋剤「C−3」(信越化学工業株式会社製:商品名)適量と、耐熱性向上剤「KEP−12」(信越化学工業株式会社製:商品名)1.0質量部とを、二本ロールで十分に混練して、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を調製した。
【0053】
次いで、前記軸体2のジャーナル部8が移送方向前方になるように配置した軸体2と、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物とを押出成形機にて一体分出して、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を軸体胴部7及びジャーナル部8全体の外周面に配置した。その後、静置することなく、ジャーナル部8が形成された軸体胴部7の端部の外周面に配置された付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を形成予定の発泡弾性層3の端部位置からジャーナル部8側に5mmの位置までの付加反応型発泡シリコーンゴム組成物が残存するように除去し、ジャーナル部8が形成されていない軸体胴部7の端部の外周面に配置された付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を軸体胴部7の端面から5mmの位置まで付加反応型発泡シリコーンゴム組成物が残存するように除去した。以下、「形成予定の発泡弾性層3の端部位置から端面側に5mmの位置までの付加反応型発泡シリコーンゴム組成物が残存するように除去すること」を軸体2の移送方向にかかわらず「多量除去」と称し、「軸体端部の端面から5mmの位置まで付加反応型発泡シリコーンゴム組成物が残存するように除去すること」を軸体2の移送方向にかかわらず「少量除去」と称する。
【0054】
次いで、赤外線加熱炉(IR炉)を用いて、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を250℃で10分間加熱して、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を発泡架橋させた。その後、さらに、ギアーオーブンを用いて、200℃で7時間にわたって、発泡架橋後の付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を二次加熱し、常温にて1時間放置した。二次加熱してなる付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を、円筒研削盤にて30mmの外径を有する所謂「ストレート形状」に整形し、軸線長さが305mmになるように切断して、実施例1の定着ローラを製造した。
【0055】
(実施例2)
一体分出しにおいて軸体2のジャーナル部8を軸体2の移送方向後方に配して軸体2を移送し、その後、静置することなく、軸体2の移送方向後方側に(ジャーナル部8側)に配置された付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を小量除去し、前記移送方向前方側(ジャーナル部8が形成されていない軸体胴部7)に配置された付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を多量除去したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の定着ローラを製造した。
【0056】
(実施例3)
軸体2の外周面に付加反応型発泡シリコーンゴム組成物が配置された状態で押出成形機にて一体分出してから23℃、50RH%の環境下に60分静置した後、軸体2の移送方向後方側に配置された付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を多量除去したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の定着ローラを製造した。
(実施例4)
軸体2の外周面に付加反応型発泡シリコーンゴム組成物が配置された状態で押出成形機にて一体分出してから23℃、50RH%の環境下に30分静置した後、軸体2の移送方向後方側に配置された付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を多量除去したこと以外は、実施例2と同様にして、実施例4の定着ローラを製造した。
(実施例5)
前記静置時間を60分に変更した以外は、実施例4と同様にして、実施例5の定着ローラを製造した。
【0057】
(実施例6)
円筒形のコマ部材(外径14m×軸線長さ70mm)を準備した。このコマ部材を軸体2のジャーナル部8が形成されていない端部に、ネジ止めによりこれらが連接するように、装着して一体分出ししたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例6の定着ローラを製造した。
(実施例7)
前記コマ部材と、ジャーナル部8が挿入される軸孔を有する有孔コマ部材(外径14mm×軸線長さ70mm)とをそれぞれ準備した。これらのコマ部材それぞれを軸体2の両端部に、ネジ止めによりこれらが連接するように、装着して一体分出しし、その後静置することなく、軸体2の移送方向前方側に配置された付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を小量除去したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例7の定着ローラを製造した。
(実施例8)
前記コマ部材と前記有孔コマ部材とを軸体2の両端部に、ネジ止めによりこれらが連接するように、装着して一体分出ししたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例8の定着ローラを製造した。
【0058】
(比較例1)
軸体2の移送方向前方側に配置された付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を小量除去したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の定着ローラを製造した。
(比較例2)
軸体2の移送方向前方側に配置された付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を小量除去し、軸体2の移送方向後方側に配置された付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を多量除去したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の定着ローラを製造した。
(比較例3)
軸体2の移送方向後方側に配置された付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を多量除去したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3の定着ローラを製造した。
【0059】
(比較例4)
軸体2の移送方向後方側に配置された付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を小量除去したこと以外は、実施例2と同様にして、比較例4の定着ローラを製造した。
(比較例5)
軸体2の移送方向前方側に配置された付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を多量除去し、軸体2の移送方向後方側に配置された付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を小量除去したこと以外は、実施例2と同様にして、比較例5の定着ローラを製造した。
(比較例6)
軸体2の移送方向前方側に配置された付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を多量除去したこと以外は、実施例2と同様にして、比較例6の定着ローラを製造した。
【0060】
このようにして製造した実施例1〜8及び比較例1〜6の定着ローラにおいて、アスカーC硬度、前記変位量をそれぞれ測定した。その結果を第1表に示す。第1表において、変位量は、軸体2のジャーナル部8側前方に向かって変位したときの値を「正」とし、その逆方向に向かって変位したときの値を「負」として示す。なお、図3及び図4に示される、変位量を測定する測定装置において、スペーサ21a及び21bの外径は26.8mmであり、金属製ローラ20a、20b及び20cはそれらの軸線が一辺約90.8mmの正三角形の頂点に位置し、各定着ローラの弾性層を三方からそれぞれ1.6mmずつ圧縮していた。
【0061】
【表1】

【0062】
前記定着ローラのうち実施例1〜8の定着ローラを画像形成装置(商品名「CX7500」、株式会社リコー製)のベルト定着装置に定着ローラとして装着した(この装置において加圧ローラ56は所謂「ストレート形状」をなしている。)。その後、この画像形成装置を、23℃、50RH%の環境下で、稼動させ、定着ローラを7000mm/minの速度で走行させた。このとき、定着ベルトの走行状態を目視て確認したところ、蛇行及び斜行はなかった。一方、比較例1〜6の定着ローラを前記画像形成装置に装着して同様に定着ベルトの走行状態を目視て確認したところ、蛇行又は斜行が認められ、定着ベルトが定着ローラから脱離した場合もあった。
【符号の説明】
【0063】
1、53 定着ローラ
2 軸体
3 発泡弾性層
7 軸体胴部
8 ジャーナル部
30 画像形成装置
31 像担持体
32 帯電手段
33 露光手段
34 転写手段
35 定着手段
36 被転写体
37 クリーニング手段
40 現像手段
41 現像剤収納部
42 現像剤
43 現像剤供給手段
44 現像剤担持体
45 現像剤規制部材
50 筐体
52 開口
54 無端ベルト支持ローラ
55 定着ベルト
56 加圧ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部にジャーナルを有する軸体と前記軸体の外周に形成された発泡弾性層とを備えて成り、下記試験における軸線方向の変位量(絶対値)が75mm以下であることを特徴とする定着ローラ。
試験:外径が80mmの金属製ローラ3本をそれらの軸線が正三角形の頂点となるように配置し、23℃、50RH%の環境下、このように配置された前記金属製ローラで三方から前記定着ローラを狭圧し、前記金属製ローラそれぞれが前記発泡弾性層をその厚さに対して半径方向に20%圧縮した状態で、前記金属製ローラを12rpm/minの回転速度で3分間回転させる。
【請求項2】
請求項1に記載の定着ローラと、
前記定着ローラに巻回された定着ベルトと、
前記定着ベルトを介して前記定着ローラを圧接する加圧ローラとを備えて成ることを特徴とするベルト定着装置。
【請求項3】
請求項2に記載のベルト定着装置を備えて成ることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate