定着器アセンブリの電力を制御する方法、装置およびシステム
【課題】定着器過熱部材の電力を制御する方法において、ピーク突入電流を最小限に抑え、温度制御を行う方法を提供する。
【解決手段】定着器アセンブリの段階的電力制御システムは、定着器アセンブリ内の個々のランプを独立して制御するために制御信号を出力するコントローラを含む。複数のランプは、突入電流を低減するために、各ランプの作動の間に遅延を有してオンにされる。制御信号は、コントローラによって温度誤差の関数として出力される。
【解決手段】定着器アセンブリの段階的電力制御システムは、定着器アセンブリ内の個々のランプを独立して制御するために制御信号を出力するコントローラを含む。複数のランプは、突入電流を低減するために、各ランプの作動の間に遅延を有してオンにされる。制御信号は、コントローラによって温度誤差の関数として出力される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、定着器加熱部材の電力を制御するための方法、装置およびシステムに関する。本開示はさらに、ピーク突入電流を最小限に抑えかつ定着器アセンブリの温度制御を提供するように定着器ランプの電力を制御することに関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の定着器アセンブリ温度制御は、典型的には、セットポイントおよびデッドバンドを基礎とする伝統的なON/OFFランプ制御によって実行される。ランプのON/OFFサイクルは、特定の時間にアセンブリへ送出される電力量を制限することによって制御され得る。より優れた温度制御は、ランプのON/OFFサイクルをより頻繁にすることによって達成され得る。定着器アセンブリへ送出される電力量を制御する関連技術方法は、PWM
ACチョッパ、サイクルスティーリングおよび位相制御を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
関連技術による電力制御方法およびシステムは、典型的には、納得のいくフリッカおよび高調波対策を効率的に行っていない。例えば、サイクルスティーリングは低高調波に対応するが、フリッカに繋がる可能性のある高いピーク突入電流に悩まされる。位相角制御は低いフリッカに対応し得るが、コスト高でありかつ高調波要件を満たさない場合がある。PWM ACチョッパ方法はフリッカおよび高調波要件に対処し得るが、このような方法は追加のコンポーネントを必要としてコスト高になる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書に開示する方法、装置およびシステムは、追加コストを最小限に抑えながらピーク突入電流を低下し、かつ低減された温度変動に対応する。コストの低減は、例えば定着器ランプのターンオン時間遅延を動的に変えて定着器へ向けられる平均電力量を制御することにより達成され得る。ランプのターンオン時間遅延は、温度誤差に依存して、比例積分微分(「PID」)コントローラの関数として、または予め設定された遅延時間の関数として変更されてもよい。これは、例えば複数のランプからの特定数のランプの作動をコントローラ出力の関数として制御することにより達成され得る。
【0005】
ベルトロール定着器の段階的電力制御方法の実施形態において、ベルトロール定着器アセンブリは、第1の定着器加熱部材と、第2の定着器加熱部材と、第3の定着器加熱部材とを有してもよい。定着器加熱部材は、石英灯または加熱ロッドであってもよい。定着器の合計電力は、ベルトロール定着器アセンブリへ割り当てられてもよい。本方法は、総割当電力の3分の1に略等しい、またはこれを超える電力信号に応答して第1の定着器加熱部材へ電力を印加することと、総割当電力の3分の2に略等しい、またはこれを超える電力信号に応答して第2の定着器加熱部材へ電力を印加することと、総割当電力に略等しい電力信号に応答して第3の定着器加熱部材へ電力を印加することを含んでもよい。
【0006】
実施形態において、離散電力レベルを用いて定着器アセンブリの電力を制御するための段階的定着器電力制御方法は、コントローラによって出力される第1の電力レベル信号に応答して第1の定着器加熱部材をオンにすることと、第2の電力レベル信号に応答して第2の定着器加熱部材をオンにすることを含んでもよい。さらなる実施形態は、コントローラによって出力される第3の電力レベル信号を基礎として第3の定着器加熱部材をオンにすることを含んでもよい。
【0007】
システムおよび装置の実施形態は、定着器アセンブリのコントローラを含んでもよい。このコントローラはPIDコントローラであっても、既知の、または今後開発される他の適切なコントローラであってもよい。コントローラは、定着器アセンブリの1コンポーネントの温度を検出するセンサからの検出された温度データまたは上記検出された温度データを基礎とする温度誤差等の入力を受信してもよい。コントローラは、1つ以上の電力レベルに相当する電力信号を出力してもよい。
【0008】
定着器アセンブリは、各々が離散的に制御されるように配置される少なくとも2つの定着器加熱部材を含んでもよい。コントローラは、2つの定着器加熱部材の各々を独立して制御するために電力制御信号を定着器アセンブリへ伝達するように構成されてもよい。電力制御信号は、検出された定着器アセンブリの温度誤差および媒体タイプのうちの少なくとも一方の関数として出力される。
【0009】
代替実施形態において、各々が電力レベル信号を出力するコントローラへ接続されている少なくとも1つの第1の定着器加熱部材と、第2の定着器加熱部材と、第3の定着器加熱部材とを有する定着器アセンブリを制御する場合の方法は、予め規定された、または標的定着器コンポーネント温度を実際の定着器アセンブリコンポーネント温度と比較することによって温度誤差を決定することと、決定された温度誤差が第1の温度しきい値未満である場合には電力レベル信号を出力しないことと、決定された温度誤差が第1の温度しきい値に略等しい、またはこれより大きくかつ第2の温度しきい値未満である場合には第1の電力レベル信号を出力することと、決定された温度誤差が第2の温度しきい値に略等しい、またはこれより大きくかつ第3の温度しきい値未満である場合には第2の電力レベル信号を出力することと、決定された温度誤差が第3の温度しきい値に略等しい、またはこれより大きい場合には第3の電力レベル信号を出力することを含んでもよい。さらなる実施形態は、温度変動を最小限に抑えかつ/または定着器平均電力を制御するために上記温度データの入力および電力制御信号の出力を繰り返すことを含んでもよい。
【0010】
さらなる実施形態における方法は、第1の電力レベル信号に応答して定着器加熱部材をオンにしないことと、第2の電力レベル信号に応答して第1、第2および第3の定着器加熱部材のうちの1つをオンにすることと、第3の電力レベル信号に応答して第1、第2および第3の定着器加熱部材のうちの2つをオンにすることと、第4の電力レベル信号に応答して第1、第2および第3の定着器加熱部材のうちの3つをオンにすることを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】例示的な一実施形態によるシステムの定着器アセンブリにおけるベルトロール定着器ランプの例示的なデルタ接続配置を示す図である。
【図2】ランプが100msの遅延でオンになるときの線電流を時間の関数として示すグラフである。
【図3】ランプが200msの遅延でオンになるときの線電流を時間の関数として示すグラフである。
【図4】ランプが300msの遅延でオンになるときの線電流を時間の関数として示すグラフである。
【図5】例示的な一実施形態に従って構成されたコントローラへ接続される定着器アセンブリを示す図である。
【図6】例示的な一実施形態による電力制御のパフォーマンスを示すグラフである
【図7】例示的な一実施形態による温度制御を用いる場合の定着器ベルトの温度変動を示す図である。
【図8】ランプスイッチの回数を達成された温度変動の関数として示すグラフである。
【図9】ランプスイッチおよび定常状態の温度変動を温度センサ時定数の関数として示すグラフである。
【図10】力率制御、ON/OFF制御およびデッドバンドによるON/OFFについて、温度変動を温度センサ時定数の関数として示すグラフである。
【図11】フリッカ感度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
例示的な実施形態は、全ての代替例、修正および同等物を本明細書に開示される方法、装置およびシステムの精神および範囲に含まれ得るものとして包含するものとする。
【0013】
以下、諸図面を参照して、温度誤差を低減しかつ高調波およびフリッカ要件を満たすために定着器アセンブリ電力を制御する方法、装置およびシステムの理解を図る。諸図面を通じて、類似の参照数字は類似の、または同一のエレメントを示すために用いられる。これらの図面は、定着器アセンブリの電力を制御するための例示的な方法、装置およびシステムの様々な実施形態および実施形態関連データを示している。
【0014】
ベルトロール定着器は、1つ以上の定着器加熱部材を含んでもよい。定着器加熱部材は、例えば、石英灯および/または加熱ロッドであってもよい。あるいは、定着器加熱部材は画像を基材へ定着することに適する別のシステムまたはデバイスであってもよい。
【0015】
ベルトロール定着器アセンブリ等の定着器アセンブリは、例えばランプである3つの定着器加熱部材を含んでもよい。定着器加熱部材は各々、離散的に制御されてもよい。例えば、3つのランプを有する定着器アセンブリにおいて、各ランプは互いに独立してオンまたはオフにされてもよい。これらのランプは、図1に示されているように、3相のデルタ接続で配置されてもよい。
【0016】
ランプは、例えば線間電圧が60Hzで187VACである3相のデルタ接続で配置されてもよい。このような配置では、3つの定着器加熱部材が同時に冷態起動からオンにされる場合、図1の線A、BまたはCにおける線突入電流は約85アンペアであってもよい。しかしながら、これらのランプが遅延してオンにされれば、線突入電流は著しく低減され得る。例えば、少なくとも100msの遅延の場合、線突入電流は約64アンペアになり得るが、これは、3つの定着器加熱部材の全てが略同時に冷態起動からオンにされる場合に達成される線突入電流の約25%減である。ターンオン遅延の優位点は、図2に示されている例示的なシミュレーション結果によって証明される。具体的には、図2は、ターンオン遅延0msに対するターンオン遅延100msの効果を示し、即ち、この遅延が最大線電流の低減に対応し得ることを示している。
【0017】
さらに、定着器加熱部材またはランプのターンオン遅延が100msを超えて200msまで増大されれば、最大線電流のより大幅な縮小が達成され得ることが観察される場合もある。例えば、図3は、線電流を時間の関数として示している。その結果は、ランプが遅延200msでオンにされるシミュレーションからもたらされている。図3に示されているように、遅延200msの場合の最大線電流は約61アンペアであり得る。
【0018】
同様に、図4は、定着器加熱部材のターンオン遅延300msが最大線電流をさらに低減し得ることを示している。具体的には、図4は、ランプが遅延300msでオンにされた場合の線電流を時間の関数として示している。遅延300msの最大線電流は、約59アンペアであり得る。概して、最大線電流の低減は、下記の表1に示されているように、定着器加熱部材ターンオン遅延の関数であり得る。
【表1】
表1は、ランプターンオン遅延が200msを超えるまで増大されると、電気応力がさらに低減され得ることを示している。例えば、600msのターンオン遅延を適用すれば、約58アンペアの突入電流が達成され得る。
【0019】
定着器加熱部材の離散的制御は、定着器のターンオン遅延をコントローラ出力の関数として制御することによって達成されてもよい。遅延は、定着器アセンブリの定着器加熱部材へ印加される電力を制御することによって提供されてもよい。具体的には、定着器アセンブリはコントローラへ接続されてもよい。コントローラは、定着器アセンブリの定着器加熱部材がいつオンおよび/またはオフにされるかを制御するように構成されてもよい。例えば、3つの定着器加熱部材、例えばランプまたは加熱ロールを有するアセンブリにおいて、コントローラは、予め設定された遅延を基礎として、または温度誤差および/または媒体タイプの関数として1つ以上のランプのターンオンを、電力信号を出力することによって遅延してもよい。電力信号は、1つ以上の定着器加熱部材へ割り当てられる既定値または値範囲であり得る離散電力レベルに対応するものであってもよい。
【0020】
実施形態において、定着器アセンブリの定着器加熱部材は、コントローラ出力の関数として制御されてもよい。コントローラとしては、PIDコントローラ等の任意の適切なものが実装されてもよい。コントローラは温度センサにも接続されてもよく、かつ温度誤差を決定または受信するように構成されてもよい。例えば、温度センサは、定着器アセンブリコンポーネントの温度を検出するように構成されてもよい。監視される定着器アセンブリコンポーネントは、例えば定着器ベルトであってもよい。検出される温度または実際の温度は、温度誤差の値または値範囲を生み出すために、予め設定された、または標的温度値または値範囲と比較されてもよい。コントローラは、温度誤差を基礎として1つ以上の定着器加熱部材を制御するために電力レベル信号を出力してもよい。このプロセスは、例えば温度誤差を低減するために、または低減された温度誤差を保持するために連続的に繰り返されてもよい。
【0021】
ある実施形態において、ベルトロール定着器は、図5に示されているように3つの定着器加熱部材を有してもよい。ベルトロール定着器の段階的電力制御システム500では、ランプ501、505および508がコントローラ515へ接続されてもよい。コントローラ515はPIDコントローラであっても、他の適切な任意のコントローラであってもよい。コントローラ515は、電力信号をランプ501、505および508のうちの1つまたはそれ以上へ伝達するように構成されてもよい。コントローラ515は、例えば定着器システム512の定着器アセンブリコンポーネントの温度等のパラメータを基礎とする誤差入力を受信するように構成されてもよい。誤差入力は、コントローラ515が制御信号を送信するかどうか、またはコントローラ515がランプ501、505および508へどのタイプの制御信号を送信するかを決定するために用いられてもよい。
【0022】
コントローラ515によって送信される制御信号のタイプは、コントローラ515によってランプ501、505および508の制御信号として出力される電力範囲または電力量に対応する離散的な電力レベルであってもよい。例えば、ランプ501、505および508の各々は定着器総電力の3分の1を割り当てられてもよい。定着器アセンブリが必要とする電力が定着器総電力の3分の1のみであれば、制御システム500は、熱制御または他の任意の機能を危うくすることなく3つのランプ501、505および508のうちの任意の1つを作動してもよい。同様に、定着器アセンブリは、ランプ501、505および508のうちの任意の2つを用いて、割り当てられる定着器総電力の3分の2で動作してもよい。定着器総電力が必要であれば、定着器アセンブリの総割当電力の100%を印加することによって3つのランプ501、505および508の全てがオンにされてもよい。
【0023】
従って、使用される定着器電力は、例えば離散的な4レベル、即ち0%、33.3%、66.6%および100%で制御されてもよい。さらに、定着器の平均電力は連続式に制御されてもよい。例えば、図5に示されているベルトロール定着器の制御システム500は、温度誤差入力をコントローラ515へ連続的に供給するように構成されてもよい。誤差入力は、温度センサ517から受信されてもよく、または温度センサ517から受信されるデータを基礎とするものであってもよい。温度センサ517は、生データまたは操作されたデータを生成しかつ送信するように構成されてもよい。温度センサ517は、定着器システム512のコンポーネントの監視に関するデータを監視し、受信し、操作しかつ/または収集するように構成されてもよい。コントローラ515は、受信される誤差入力に関連する電力制御信号を出力するように構成されてもよい。ランプ501、505および508は、出力される電力制御信号に依存して各々が離散的にターンオンするように構成されてもよい。例えば、0%である第1の電力レベルにおいて、制御出力が約33.3%未満であれば、使用される定着器総電力はゼロである可能性があり、よってどのランプもオンにならない。制御出力が約33.3%でありかつ66%未満であれば、第2の電力レベルにおいて定着器電力の33%が使用され、よってランプ501、505および508のうちの1つがオンにされてもよい。約66.6%および100%未満の制御出力に応答して電力の66.6%が使用される第3の電力レベルでは、ランプ501、505および508のうちの2つがオンにされてもよい。約100%またはこれを超える制御出力に応答して定着器総割当電力の約100%が使用される第4の電力レベルでは、3つのランプ501、505および508の全てが作動されてもよい。本システムは、開示される実施形態の精神および範囲を逸脱することなく、より多いランプを包含しかつ適宜修正されるように拡大されてもよい。
【0024】
図5に示されている実施形態による方法およびシステムを試験した。図6に示す結果は、ランプ501、505および508へ接続されているコントローラ515が電力傾向に従って各ランプの遅延およびデューティサイクルの双方を動的に制御するように構成され得ることを示している。定着器電力は、コントローラが要求する電力出力の関数として効果的に制御され得る。
【0025】
コントローラおよびシステムは、温度誤差が受容可能な温度変動でほぼ定常状態へ収束するように構成されてもよい。例えば、図7は、例えば図5の例えばベルトロール定着器の段階的電力制御によって極めて厳密な温度制御が達成され得ることを示している。具体的には、図7は、本明細書に開示されている実施形態によるシステムを使用する場合の定着器ベルトの温度変動を示している。
【0026】
実施形態において、コントローラおよび段階的電力制御を有するシステムは、低減された回数のランプスイッチで低い温度変動を達成し得る。図8は、電力100%のPIDコントローラを実装するシステムと段階的電力を有するPIDコントローラを実装するシステムとの試験結果を比較して示している。図8は、段階的電力のアプローチが5回未満のスイッチ使用により温度変動を摂氏1度未満に減らし得ることを示している。100%電力のアプローチは、摂氏1度の温度変動をかろうじて達成するのに100秒間に30回を超えるランプスイッチを必要とする。
【0027】
さらに、PID段階的電力制御のアプローチは、図9のグラフに描かれているシミュレーション結果が示すように、3.5秒までの温度センサ時定数に対して著しく不感受性である。例えば、ベルトロール定着器には、温度センサとして時定数3.5秒を有する一方と、時定数15秒を有する他方との2つの選択肢が存在し得る。より速い3.5秒センサは、摂氏約1度以下の温度変動を生み出し得る。遅い方のセンサは、摂氏約3.5度の温度変動を生み出し得る。
【0028】
図10に示されているように、例示的な実施形態に従って構成されるPIDコントローラ等のコントローラを有するシステムは、力率制御を用いる場合よりも優れたパフォーマンスを達成し得る。温度制御が厳密であるという優位点とは別に、PID段階的電力制御は、サイクルスティーリングまたは他の電力制御方法を用いて達成される、総電力の低減を許容する追加的なハードウェアを必要としない。
【0029】
実施形態において、電力制御は、接続されるコントローラの電力信号出力により伝達される電力レベルに依存して1つ、2つまたは3つのランプを作動することにより、3つの離散的な電力レベルを用いて対応されてもよい。3つのランプは互いに独立して使用されることが可能であることから、これらのランプは、例えば33.3%の電力、66.6%の電力および100%の電力を用いて制御されてもよい。0%である第4の電力レベルでは、どのランプも作動されない。電力制御は、例えば温度誤差の関数としてのこのような電力レベルに従ってもよい。温度誤差は、定着器アセンブリコンポーネントの設定温度とセンサを用いて入手され得るコンポーネントの実際温度との差であってもよい。
【0030】
ランプターンオン遅延を有するPID段階的電力制御は、フリッカ制御のためのより好ましい態様を可能にし得る。フリッカは、突入電流の量が制限されることを必要とする。突入電流は、線間電圧を降下させ、かつ図11に示されているように、システムが例えば1Hzから35Hzまでの周波数範囲以外で理想的に動作することを必要とする場合がある。例示的な一実施形態による電力制御は、100秒間に付き5回のスイッチを包含してもよく、これは、コスト高の電力制御ハードウェアを必要とすることなく、1Hz未満の周波数を生み出し、かつ突入電流を制限し得る。
【0031】
定着器アセンブリの電力を制御するための方法、装置およびシステムを例示的な実施形態に関連して説明しているが、当業者には、多くの代替例、修正および変形例が明らかとなるであろう。従って、本明細書に記述された方法、装置およびシステムの実施形態は例示を目的とするものであって、限定を意図するものではない。これらの例示的な実施形態の精神および範囲を逸脱することなく実行され得る変更は存在する。
【0032】
これまでに開示した、および他の様々な特徴および機能またはこれらの代替例が、望ましくは他の多くの異なるシステムまたはアプリケーションへと組み合わされてもよいことを理解されたい。また、この場合、現時点で不測である、または予期されていない様々な代替例、修正、変形例または改良も引き続き当業者によって行うことも可能である。
【技術分野】
【0001】
本開示は、定着器加熱部材の電力を制御するための方法、装置およびシステムに関する。本開示はさらに、ピーク突入電流を最小限に抑えかつ定着器アセンブリの温度制御を提供するように定着器ランプの電力を制御することに関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の定着器アセンブリ温度制御は、典型的には、セットポイントおよびデッドバンドを基礎とする伝統的なON/OFFランプ制御によって実行される。ランプのON/OFFサイクルは、特定の時間にアセンブリへ送出される電力量を制限することによって制御され得る。より優れた温度制御は、ランプのON/OFFサイクルをより頻繁にすることによって達成され得る。定着器アセンブリへ送出される電力量を制御する関連技術方法は、PWM
ACチョッパ、サイクルスティーリングおよび位相制御を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
関連技術による電力制御方法およびシステムは、典型的には、納得のいくフリッカおよび高調波対策を効率的に行っていない。例えば、サイクルスティーリングは低高調波に対応するが、フリッカに繋がる可能性のある高いピーク突入電流に悩まされる。位相角制御は低いフリッカに対応し得るが、コスト高でありかつ高調波要件を満たさない場合がある。PWM ACチョッパ方法はフリッカおよび高調波要件に対処し得るが、このような方法は追加のコンポーネントを必要としてコスト高になる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書に開示する方法、装置およびシステムは、追加コストを最小限に抑えながらピーク突入電流を低下し、かつ低減された温度変動に対応する。コストの低減は、例えば定着器ランプのターンオン時間遅延を動的に変えて定着器へ向けられる平均電力量を制御することにより達成され得る。ランプのターンオン時間遅延は、温度誤差に依存して、比例積分微分(「PID」)コントローラの関数として、または予め設定された遅延時間の関数として変更されてもよい。これは、例えば複数のランプからの特定数のランプの作動をコントローラ出力の関数として制御することにより達成され得る。
【0005】
ベルトロール定着器の段階的電力制御方法の実施形態において、ベルトロール定着器アセンブリは、第1の定着器加熱部材と、第2の定着器加熱部材と、第3の定着器加熱部材とを有してもよい。定着器加熱部材は、石英灯または加熱ロッドであってもよい。定着器の合計電力は、ベルトロール定着器アセンブリへ割り当てられてもよい。本方法は、総割当電力の3分の1に略等しい、またはこれを超える電力信号に応答して第1の定着器加熱部材へ電力を印加することと、総割当電力の3分の2に略等しい、またはこれを超える電力信号に応答して第2の定着器加熱部材へ電力を印加することと、総割当電力に略等しい電力信号に応答して第3の定着器加熱部材へ電力を印加することを含んでもよい。
【0006】
実施形態において、離散電力レベルを用いて定着器アセンブリの電力を制御するための段階的定着器電力制御方法は、コントローラによって出力される第1の電力レベル信号に応答して第1の定着器加熱部材をオンにすることと、第2の電力レベル信号に応答して第2の定着器加熱部材をオンにすることを含んでもよい。さらなる実施形態は、コントローラによって出力される第3の電力レベル信号を基礎として第3の定着器加熱部材をオンにすることを含んでもよい。
【0007】
システムおよび装置の実施形態は、定着器アセンブリのコントローラを含んでもよい。このコントローラはPIDコントローラであっても、既知の、または今後開発される他の適切なコントローラであってもよい。コントローラは、定着器アセンブリの1コンポーネントの温度を検出するセンサからの検出された温度データまたは上記検出された温度データを基礎とする温度誤差等の入力を受信してもよい。コントローラは、1つ以上の電力レベルに相当する電力信号を出力してもよい。
【0008】
定着器アセンブリは、各々が離散的に制御されるように配置される少なくとも2つの定着器加熱部材を含んでもよい。コントローラは、2つの定着器加熱部材の各々を独立して制御するために電力制御信号を定着器アセンブリへ伝達するように構成されてもよい。電力制御信号は、検出された定着器アセンブリの温度誤差および媒体タイプのうちの少なくとも一方の関数として出力される。
【0009】
代替実施形態において、各々が電力レベル信号を出力するコントローラへ接続されている少なくとも1つの第1の定着器加熱部材と、第2の定着器加熱部材と、第3の定着器加熱部材とを有する定着器アセンブリを制御する場合の方法は、予め規定された、または標的定着器コンポーネント温度を実際の定着器アセンブリコンポーネント温度と比較することによって温度誤差を決定することと、決定された温度誤差が第1の温度しきい値未満である場合には電力レベル信号を出力しないことと、決定された温度誤差が第1の温度しきい値に略等しい、またはこれより大きくかつ第2の温度しきい値未満である場合には第1の電力レベル信号を出力することと、決定された温度誤差が第2の温度しきい値に略等しい、またはこれより大きくかつ第3の温度しきい値未満である場合には第2の電力レベル信号を出力することと、決定された温度誤差が第3の温度しきい値に略等しい、またはこれより大きい場合には第3の電力レベル信号を出力することを含んでもよい。さらなる実施形態は、温度変動を最小限に抑えかつ/または定着器平均電力を制御するために上記温度データの入力および電力制御信号の出力を繰り返すことを含んでもよい。
【0010】
さらなる実施形態における方法は、第1の電力レベル信号に応答して定着器加熱部材をオンにしないことと、第2の電力レベル信号に応答して第1、第2および第3の定着器加熱部材のうちの1つをオンにすることと、第3の電力レベル信号に応答して第1、第2および第3の定着器加熱部材のうちの2つをオンにすることと、第4の電力レベル信号に応答して第1、第2および第3の定着器加熱部材のうちの3つをオンにすることを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】例示的な一実施形態によるシステムの定着器アセンブリにおけるベルトロール定着器ランプの例示的なデルタ接続配置を示す図である。
【図2】ランプが100msの遅延でオンになるときの線電流を時間の関数として示すグラフである。
【図3】ランプが200msの遅延でオンになるときの線電流を時間の関数として示すグラフである。
【図4】ランプが300msの遅延でオンになるときの線電流を時間の関数として示すグラフである。
【図5】例示的な一実施形態に従って構成されたコントローラへ接続される定着器アセンブリを示す図である。
【図6】例示的な一実施形態による電力制御のパフォーマンスを示すグラフである
【図7】例示的な一実施形態による温度制御を用いる場合の定着器ベルトの温度変動を示す図である。
【図8】ランプスイッチの回数を達成された温度変動の関数として示すグラフである。
【図9】ランプスイッチおよび定常状態の温度変動を温度センサ時定数の関数として示すグラフである。
【図10】力率制御、ON/OFF制御およびデッドバンドによるON/OFFについて、温度変動を温度センサ時定数の関数として示すグラフである。
【図11】フリッカ感度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
例示的な実施形態は、全ての代替例、修正および同等物を本明細書に開示される方法、装置およびシステムの精神および範囲に含まれ得るものとして包含するものとする。
【0013】
以下、諸図面を参照して、温度誤差を低減しかつ高調波およびフリッカ要件を満たすために定着器アセンブリ電力を制御する方法、装置およびシステムの理解を図る。諸図面を通じて、類似の参照数字は類似の、または同一のエレメントを示すために用いられる。これらの図面は、定着器アセンブリの電力を制御するための例示的な方法、装置およびシステムの様々な実施形態および実施形態関連データを示している。
【0014】
ベルトロール定着器は、1つ以上の定着器加熱部材を含んでもよい。定着器加熱部材は、例えば、石英灯および/または加熱ロッドであってもよい。あるいは、定着器加熱部材は画像を基材へ定着することに適する別のシステムまたはデバイスであってもよい。
【0015】
ベルトロール定着器アセンブリ等の定着器アセンブリは、例えばランプである3つの定着器加熱部材を含んでもよい。定着器加熱部材は各々、離散的に制御されてもよい。例えば、3つのランプを有する定着器アセンブリにおいて、各ランプは互いに独立してオンまたはオフにされてもよい。これらのランプは、図1に示されているように、3相のデルタ接続で配置されてもよい。
【0016】
ランプは、例えば線間電圧が60Hzで187VACである3相のデルタ接続で配置されてもよい。このような配置では、3つの定着器加熱部材が同時に冷態起動からオンにされる場合、図1の線A、BまたはCにおける線突入電流は約85アンペアであってもよい。しかしながら、これらのランプが遅延してオンにされれば、線突入電流は著しく低減され得る。例えば、少なくとも100msの遅延の場合、線突入電流は約64アンペアになり得るが、これは、3つの定着器加熱部材の全てが略同時に冷態起動からオンにされる場合に達成される線突入電流の約25%減である。ターンオン遅延の優位点は、図2に示されている例示的なシミュレーション結果によって証明される。具体的には、図2は、ターンオン遅延0msに対するターンオン遅延100msの効果を示し、即ち、この遅延が最大線電流の低減に対応し得ることを示している。
【0017】
さらに、定着器加熱部材またはランプのターンオン遅延が100msを超えて200msまで増大されれば、最大線電流のより大幅な縮小が達成され得ることが観察される場合もある。例えば、図3は、線電流を時間の関数として示している。その結果は、ランプが遅延200msでオンにされるシミュレーションからもたらされている。図3に示されているように、遅延200msの場合の最大線電流は約61アンペアであり得る。
【0018】
同様に、図4は、定着器加熱部材のターンオン遅延300msが最大線電流をさらに低減し得ることを示している。具体的には、図4は、ランプが遅延300msでオンにされた場合の線電流を時間の関数として示している。遅延300msの最大線電流は、約59アンペアであり得る。概して、最大線電流の低減は、下記の表1に示されているように、定着器加熱部材ターンオン遅延の関数であり得る。
【表1】
表1は、ランプターンオン遅延が200msを超えるまで増大されると、電気応力がさらに低減され得ることを示している。例えば、600msのターンオン遅延を適用すれば、約58アンペアの突入電流が達成され得る。
【0019】
定着器加熱部材の離散的制御は、定着器のターンオン遅延をコントローラ出力の関数として制御することによって達成されてもよい。遅延は、定着器アセンブリの定着器加熱部材へ印加される電力を制御することによって提供されてもよい。具体的には、定着器アセンブリはコントローラへ接続されてもよい。コントローラは、定着器アセンブリの定着器加熱部材がいつオンおよび/またはオフにされるかを制御するように構成されてもよい。例えば、3つの定着器加熱部材、例えばランプまたは加熱ロールを有するアセンブリにおいて、コントローラは、予め設定された遅延を基礎として、または温度誤差および/または媒体タイプの関数として1つ以上のランプのターンオンを、電力信号を出力することによって遅延してもよい。電力信号は、1つ以上の定着器加熱部材へ割り当てられる既定値または値範囲であり得る離散電力レベルに対応するものであってもよい。
【0020】
実施形態において、定着器アセンブリの定着器加熱部材は、コントローラ出力の関数として制御されてもよい。コントローラとしては、PIDコントローラ等の任意の適切なものが実装されてもよい。コントローラは温度センサにも接続されてもよく、かつ温度誤差を決定または受信するように構成されてもよい。例えば、温度センサは、定着器アセンブリコンポーネントの温度を検出するように構成されてもよい。監視される定着器アセンブリコンポーネントは、例えば定着器ベルトであってもよい。検出される温度または実際の温度は、温度誤差の値または値範囲を生み出すために、予め設定された、または標的温度値または値範囲と比較されてもよい。コントローラは、温度誤差を基礎として1つ以上の定着器加熱部材を制御するために電力レベル信号を出力してもよい。このプロセスは、例えば温度誤差を低減するために、または低減された温度誤差を保持するために連続的に繰り返されてもよい。
【0021】
ある実施形態において、ベルトロール定着器は、図5に示されているように3つの定着器加熱部材を有してもよい。ベルトロール定着器の段階的電力制御システム500では、ランプ501、505および508がコントローラ515へ接続されてもよい。コントローラ515はPIDコントローラであっても、他の適切な任意のコントローラであってもよい。コントローラ515は、電力信号をランプ501、505および508のうちの1つまたはそれ以上へ伝達するように構成されてもよい。コントローラ515は、例えば定着器システム512の定着器アセンブリコンポーネントの温度等のパラメータを基礎とする誤差入力を受信するように構成されてもよい。誤差入力は、コントローラ515が制御信号を送信するかどうか、またはコントローラ515がランプ501、505および508へどのタイプの制御信号を送信するかを決定するために用いられてもよい。
【0022】
コントローラ515によって送信される制御信号のタイプは、コントローラ515によってランプ501、505および508の制御信号として出力される電力範囲または電力量に対応する離散的な電力レベルであってもよい。例えば、ランプ501、505および508の各々は定着器総電力の3分の1を割り当てられてもよい。定着器アセンブリが必要とする電力が定着器総電力の3分の1のみであれば、制御システム500は、熱制御または他の任意の機能を危うくすることなく3つのランプ501、505および508のうちの任意の1つを作動してもよい。同様に、定着器アセンブリは、ランプ501、505および508のうちの任意の2つを用いて、割り当てられる定着器総電力の3分の2で動作してもよい。定着器総電力が必要であれば、定着器アセンブリの総割当電力の100%を印加することによって3つのランプ501、505および508の全てがオンにされてもよい。
【0023】
従って、使用される定着器電力は、例えば離散的な4レベル、即ち0%、33.3%、66.6%および100%で制御されてもよい。さらに、定着器の平均電力は連続式に制御されてもよい。例えば、図5に示されているベルトロール定着器の制御システム500は、温度誤差入力をコントローラ515へ連続的に供給するように構成されてもよい。誤差入力は、温度センサ517から受信されてもよく、または温度センサ517から受信されるデータを基礎とするものであってもよい。温度センサ517は、生データまたは操作されたデータを生成しかつ送信するように構成されてもよい。温度センサ517は、定着器システム512のコンポーネントの監視に関するデータを監視し、受信し、操作しかつ/または収集するように構成されてもよい。コントローラ515は、受信される誤差入力に関連する電力制御信号を出力するように構成されてもよい。ランプ501、505および508は、出力される電力制御信号に依存して各々が離散的にターンオンするように構成されてもよい。例えば、0%である第1の電力レベルにおいて、制御出力が約33.3%未満であれば、使用される定着器総電力はゼロである可能性があり、よってどのランプもオンにならない。制御出力が約33.3%でありかつ66%未満であれば、第2の電力レベルにおいて定着器電力の33%が使用され、よってランプ501、505および508のうちの1つがオンにされてもよい。約66.6%および100%未満の制御出力に応答して電力の66.6%が使用される第3の電力レベルでは、ランプ501、505および508のうちの2つがオンにされてもよい。約100%またはこれを超える制御出力に応答して定着器総割当電力の約100%が使用される第4の電力レベルでは、3つのランプ501、505および508の全てが作動されてもよい。本システムは、開示される実施形態の精神および範囲を逸脱することなく、より多いランプを包含しかつ適宜修正されるように拡大されてもよい。
【0024】
図5に示されている実施形態による方法およびシステムを試験した。図6に示す結果は、ランプ501、505および508へ接続されているコントローラ515が電力傾向に従って各ランプの遅延およびデューティサイクルの双方を動的に制御するように構成され得ることを示している。定着器電力は、コントローラが要求する電力出力の関数として効果的に制御され得る。
【0025】
コントローラおよびシステムは、温度誤差が受容可能な温度変動でほぼ定常状態へ収束するように構成されてもよい。例えば、図7は、例えば図5の例えばベルトロール定着器の段階的電力制御によって極めて厳密な温度制御が達成され得ることを示している。具体的には、図7は、本明細書に開示されている実施形態によるシステムを使用する場合の定着器ベルトの温度変動を示している。
【0026】
実施形態において、コントローラおよび段階的電力制御を有するシステムは、低減された回数のランプスイッチで低い温度変動を達成し得る。図8は、電力100%のPIDコントローラを実装するシステムと段階的電力を有するPIDコントローラを実装するシステムとの試験結果を比較して示している。図8は、段階的電力のアプローチが5回未満のスイッチ使用により温度変動を摂氏1度未満に減らし得ることを示している。100%電力のアプローチは、摂氏1度の温度変動をかろうじて達成するのに100秒間に30回を超えるランプスイッチを必要とする。
【0027】
さらに、PID段階的電力制御のアプローチは、図9のグラフに描かれているシミュレーション結果が示すように、3.5秒までの温度センサ時定数に対して著しく不感受性である。例えば、ベルトロール定着器には、温度センサとして時定数3.5秒を有する一方と、時定数15秒を有する他方との2つの選択肢が存在し得る。より速い3.5秒センサは、摂氏約1度以下の温度変動を生み出し得る。遅い方のセンサは、摂氏約3.5度の温度変動を生み出し得る。
【0028】
図10に示されているように、例示的な実施形態に従って構成されるPIDコントローラ等のコントローラを有するシステムは、力率制御を用いる場合よりも優れたパフォーマンスを達成し得る。温度制御が厳密であるという優位点とは別に、PID段階的電力制御は、サイクルスティーリングまたは他の電力制御方法を用いて達成される、総電力の低減を許容する追加的なハードウェアを必要としない。
【0029】
実施形態において、電力制御は、接続されるコントローラの電力信号出力により伝達される電力レベルに依存して1つ、2つまたは3つのランプを作動することにより、3つの離散的な電力レベルを用いて対応されてもよい。3つのランプは互いに独立して使用されることが可能であることから、これらのランプは、例えば33.3%の電力、66.6%の電力および100%の電力を用いて制御されてもよい。0%である第4の電力レベルでは、どのランプも作動されない。電力制御は、例えば温度誤差の関数としてのこのような電力レベルに従ってもよい。温度誤差は、定着器アセンブリコンポーネントの設定温度とセンサを用いて入手され得るコンポーネントの実際温度との差であってもよい。
【0030】
ランプターンオン遅延を有するPID段階的電力制御は、フリッカ制御のためのより好ましい態様を可能にし得る。フリッカは、突入電流の量が制限されることを必要とする。突入電流は、線間電圧を降下させ、かつ図11に示されているように、システムが例えば1Hzから35Hzまでの周波数範囲以外で理想的に動作することを必要とする場合がある。例示的な一実施形態による電力制御は、100秒間に付き5回のスイッチを包含してもよく、これは、コスト高の電力制御ハードウェアを必要とすることなく、1Hz未満の周波数を生み出し、かつ突入電流を制限し得る。
【0031】
定着器アセンブリの電力を制御するための方法、装置およびシステムを例示的な実施形態に関連して説明しているが、当業者には、多くの代替例、修正および変形例が明らかとなるであろう。従って、本明細書に記述された方法、装置およびシステムの実施形態は例示を目的とするものであって、限定を意図するものではない。これらの例示的な実施形態の精神および範囲を逸脱することなく実行され得る変更は存在する。
【0032】
これまでに開示した、および他の様々な特徴および機能またはこれらの代替例が、望ましくは他の多くの異なるシステムまたはアプリケーションへと組み合わされてもよいことを理解されたい。また、この場合、現時点で不測である、または予期されていない様々な代替例、修正、変形例または改良も引き続き当業者によって行うことも可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトロール定着器アセンブリの段階的電力制御方法であって、前記ベルトロール定着器アセンブリは第1の定着器加熱部材と、第2の定着器加熱部材と、第3の定着器加熱部材とを有し、前記ベルトロール定着器アセンブリへは定着器総電力が割り当てられ、前記方法は、
前記総割当電力の3分の1に等しい、またはこれを超える電力信号に応答して前記第1の定着器加熱部材へ電力を印加することと、
前記総割当電力の3分の2に等しい、またはこれを超える電力信号に応答して前記第2の部材へ電力を印加することと、
前記総割当電力に略等しい電力信号に応答して前記第3の部材へ電力を印加することと、を含む方法。
【請求項2】
前記第3の部材へ電力を印加することは、予め決められた第2の時間遅延の後である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予め決められた第1の時間遅延および予め決められた第2の時間遅延のうちの少なくとも一方は温度誤差および媒体タイプのうちの少なくとも一方の関数である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
離散的な電力レベルを用いて定着器アセンブリの電力を制御するための段階的定着器電力制御方法であって、
コントローラによって出力される第1の電力レベル信号に応答して第1の定着器加熱部材をオンにすることと、
第2の電力レベル信号に応答して第2の定着器加熱部材をオンにすることと、を含む方法。
【請求項5】
前記コントローラによって出力される第3の電力レベル信号を基礎として第3の定着器加熱部材をオンにすることをさらに含む、請求項4に記載の段階的定着器電力制御方法。
【請求項6】
定着器アセンブリコンポーネントの実際温度を決定することと、
前記決定された実際温度を標的温度と比較して温度誤差を決定することと、
前記決定された温度誤差を基礎として、第1の電力レベル信号、第2の電力レベル信号および第3の電力レベル信号のうちの少なくとも1つを出力することと、をさらに含む、請求項5に記載の段階的定着器電力制御方法。
【請求項7】
第2または第1の電力レベル信号に応答して前記第3の定着器加熱部材をオフにすることと、
第1の電力レベル信号に応答して前記第2の定着器加熱部材をオフにすることと、
電力レベル信号が出力されなければ、前記第1の定着器加熱部材、前記第2の定着器加熱部材および前記第3の定着器加熱部材をオフにすることと、をさらに含む、請求項5に記載の段階的定着器電力制御方法。
【請求項8】
定着器アセンブリの電力制御システムであって、
コントローラと、
少なくとも2つの定着器加熱部材を備える定着器アセンブリと、を備え、前記コントローラは前記2つの定着器加熱部材の各々を離散的に制御するために電力制御信号を前記定着器アセンブリへ伝達するように構築されかつ配置され、前記電力制御信号は検出される定着器アセンブリの温度誤差および媒体タイプのうちの少なくとも一方の関数である定着器アセンブリ電力制御システム。
【請求項9】
定着器アセンブリの温度制御方法であって、前記定着器アセンブリは、各々が電力レベル信号を出力するコントローラへ接続されている少なくとも1つの第1の定着器加熱部材と、第2の定着器加熱部材と、第3の定着器加熱部材とを有し、前記方法は、
標的定着器コンポーネント温度を実際の定着器アセンブリコンポーネント温度と比較することによって温度誤差を決定することと、
前記決定された温度誤差が第1の温度しきい値に略等しい、またはこれより大きくかつ第2の温度しきい値未満である場合には第1の電力レベル信号を出力することと、
前記決定された温度誤差が第2の温度しきい値に略等しい、またはこれより大きくかつ第3の温度しきい値未満である場合には第2の電力レベル信号を出力することと、
前記決定された温度誤差が第3の温度しきい値に略等しい、またはこれより大きい場合には第3の電力レベル信号を出力することと、を含む定着器アセンブリの温度制御方法。
【請求項10】
前記第1の電力レベル信号に応答して前記第1、第2および第3の定着器加熱部材のうちの1つをオンにすることと、前記第2の電力レベル信号に応答して前記第1、第2および第3の定着器加熱部材のうちの2つをオンにすることと、前記第3の電力レベル信号に応答して前記第1、第2および第3の定着器加熱部材のうちの3つをオンにすることをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項1】
ベルトロール定着器アセンブリの段階的電力制御方法であって、前記ベルトロール定着器アセンブリは第1の定着器加熱部材と、第2の定着器加熱部材と、第3の定着器加熱部材とを有し、前記ベルトロール定着器アセンブリへは定着器総電力が割り当てられ、前記方法は、
前記総割当電力の3分の1に等しい、またはこれを超える電力信号に応答して前記第1の定着器加熱部材へ電力を印加することと、
前記総割当電力の3分の2に等しい、またはこれを超える電力信号に応答して前記第2の部材へ電力を印加することと、
前記総割当電力に略等しい電力信号に応答して前記第3の部材へ電力を印加することと、を含む方法。
【請求項2】
前記第3の部材へ電力を印加することは、予め決められた第2の時間遅延の後である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予め決められた第1の時間遅延および予め決められた第2の時間遅延のうちの少なくとも一方は温度誤差および媒体タイプのうちの少なくとも一方の関数である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
離散的な電力レベルを用いて定着器アセンブリの電力を制御するための段階的定着器電力制御方法であって、
コントローラによって出力される第1の電力レベル信号に応答して第1の定着器加熱部材をオンにすることと、
第2の電力レベル信号に応答して第2の定着器加熱部材をオンにすることと、を含む方法。
【請求項5】
前記コントローラによって出力される第3の電力レベル信号を基礎として第3の定着器加熱部材をオンにすることをさらに含む、請求項4に記載の段階的定着器電力制御方法。
【請求項6】
定着器アセンブリコンポーネントの実際温度を決定することと、
前記決定された実際温度を標的温度と比較して温度誤差を決定することと、
前記決定された温度誤差を基礎として、第1の電力レベル信号、第2の電力レベル信号および第3の電力レベル信号のうちの少なくとも1つを出力することと、をさらに含む、請求項5に記載の段階的定着器電力制御方法。
【請求項7】
第2または第1の電力レベル信号に応答して前記第3の定着器加熱部材をオフにすることと、
第1の電力レベル信号に応答して前記第2の定着器加熱部材をオフにすることと、
電力レベル信号が出力されなければ、前記第1の定着器加熱部材、前記第2の定着器加熱部材および前記第3の定着器加熱部材をオフにすることと、をさらに含む、請求項5に記載の段階的定着器電力制御方法。
【請求項8】
定着器アセンブリの電力制御システムであって、
コントローラと、
少なくとも2つの定着器加熱部材を備える定着器アセンブリと、を備え、前記コントローラは前記2つの定着器加熱部材の各々を離散的に制御するために電力制御信号を前記定着器アセンブリへ伝達するように構築されかつ配置され、前記電力制御信号は検出される定着器アセンブリの温度誤差および媒体タイプのうちの少なくとも一方の関数である定着器アセンブリ電力制御システム。
【請求項9】
定着器アセンブリの温度制御方法であって、前記定着器アセンブリは、各々が電力レベル信号を出力するコントローラへ接続されている少なくとも1つの第1の定着器加熱部材と、第2の定着器加熱部材と、第3の定着器加熱部材とを有し、前記方法は、
標的定着器コンポーネント温度を実際の定着器アセンブリコンポーネント温度と比較することによって温度誤差を決定することと、
前記決定された温度誤差が第1の温度しきい値に略等しい、またはこれより大きくかつ第2の温度しきい値未満である場合には第1の電力レベル信号を出力することと、
前記決定された温度誤差が第2の温度しきい値に略等しい、またはこれより大きくかつ第3の温度しきい値未満である場合には第2の電力レベル信号を出力することと、
前記決定された温度誤差が第3の温度しきい値に略等しい、またはこれより大きい場合には第3の電力レベル信号を出力することと、を含む定着器アセンブリの温度制御方法。
【請求項10】
前記第1の電力レベル信号に応答して前記第1、第2および第3の定着器加熱部材のうちの1つをオンにすることと、前記第2の電力レベル信号に応答して前記第1、第2および第3の定着器加熱部材のうちの2つをオンにすることと、前記第3の電力レベル信号に応答して前記第1、第2および第3の定着器加熱部材のうちの3つをオンにすることをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−108506(P2012−108506A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242829(P2011−242829)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]