説明

定着方法、画像形成方法及び画像形成装置

【課題】トナーの樹脂成分の少なくとも一部を溶解または膨潤させることでトナーを軟化させる軟化剤を含有する定着液を記録媒体表面上のトナー像に付与してトナー像を定着させる定着方法において、定着液のコストを抑えながらトナーを軟化させる能力を向上させて、安定した定着特性や色再現性が得る。
【解決手段】結着樹脂を含有するトナー中の結着樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させることでトナーを軟化させる軟化剤を含有した定着液を記録媒体上のトナーに付与してトナーを記録媒体に定着させる定着方法で、トナーの結着樹脂として少なくともポリエステル樹脂を用い、定着液に有機スルホン酸、有機カルボン酸、または、これらの金属塩の何れかを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は定着方法、画像形成方法及び画像形成装置に関し、詳細には樹脂を含有した微粒子を媒体に定着させる定着液を用いて樹脂を含有した微粒子であるトナーを定着する定着方法、画像形成方法及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ及び複写装置のような画像形成装置は、紙、布、及びOHP用シートのような記録媒体に、画像情報に基づいて文字や記号を含む画像を形成する装置である。特に、電子写真方式の画像形成装置は、普通紙に高精細な画像を高速で形成することができるため、広くオフィスで使用されている。このような電子写真方式の画像形成装置においては、記録媒体上のトナーを加熱して溶融させ、溶融したトナーを加圧することによって、トナーを記録媒体上に定着させる熱定着方式が広く用いられている。この熱定着方式は、高い定着速度及び高い定着画像品質等を提供することができるため、好適に用いられている。
【0003】
しかし、このような電子写真方式の画像形成装置における消費電力の約半分以上は、熱定着方式においてトナーを加熱することに消費されている。一方、近年における環境問題対策の観点からは、低消費電力(省エネルギー)の定着装置が望まれている。即ち、トナーを定着するためにトナーを加熱する温度を今までよりも極端に低下させること、又はトナーを加熱することを必要としない定着方法が望まれている。特に、トナーを全く加熱することなくトナーを記録媒体に定着させる非加熱定着方法が低消費電力の点で理想的である。
【0004】
このような非加熱定着方法としては、トナーの樹脂成分の少なくとも一部を溶解または膨潤させることでトナーを軟化させる軟化剤を含有する定着液を記録媒体表面上のトナー像に付与してトナー像を定着させる定着装置が既に知られている。
【0005】
その一つとして、塗布部材表面に液状の定着液を担持させて塗布する構成の定着装置が知られている。しかしながら、定着液を液状のまま塗布する構成では、定着液の塗布量が多すぎると、トナー粒子が流されることによる画質劣化、定着応答性の低下、記録媒体によっては紙詰まりが発生しやすくなる、といった問題が生じる。一方、これらの問題を防止するために定着液を微量付与すると、塗布部材表面上の定着液による表面張力により、塗布部材の表面にトナー粒子がオフセットしてしまう。このように、液状の定着液を塗布する構成では、記録媒体上に定着液の微量付与と、トナーオフセットの抑制とを両立することが難しい。
【0006】
定着液の微量塗布とトナーオフセットの抑制とを両立することができる定着装置として、特許文献1に記載の定着装置がある。この定着装置は、定着液を液中に気泡が分散した泡状定着液とし、この泡状定着液を塗布部材によって記録媒体上のトナー像に塗布する構成である。定着液を泡状とすることにより定着液の密度を下げることができるため、従来よりも少量の定着液で塗布部材表面上の定着液の膜厚を厚くすることができる。よって、微量塗布であっても、塗布部材表面上の定着液による表面張力の記録媒体上のトナー粒子に対する影響を軽減することができる。また、定着液の密度を低くすることで、所望の膜厚を形成するために要する定着液を少量とすることができるため、定着後の記録媒体上の残液感を抑制することができる。さらに、泡状の定着液は液状の定着液よりも流れ難いため、定着液によってトナー粒子が流されることによる画像劣化も防止することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記泡状定着液膜を塗布する定着装置は、定着液の微量塗布とトナーオフセットの抑制とを両立できる。しかしながら、定着液を微量塗布すると、ハーフトーン画像や白黒文字画像といったトナー層の薄い部分と、カラー写真画像やベタ画像といったトナー層が厚い部分とで、定着特性や色再現性に差を生じる場合があった。これは、塗布される定着液量が抑えられているため、トナー粒子を軟化させる能力に余裕がなく、塗布量のバラツキやトナー層の厚みのバラツキに対応しきれないために生じるものと考えられる。このため、微量塗布を行う定着装置では、定着液自体のトナーを軟化させる能力を、従来に比べて向上させることが望まれる。
【0008】
以上、泡状定着液を用いて微量塗布をおこなう定着装置を用いて、定着液のトナーを軟化させる能力を向上させる課題について説明した。しかし、泡状定着液を塗布する構成に限らず、定着液を液状のまま塗布する構成でも、他の定着液付与手段で定着液を付与する構成でも、定着液のトナーを軟化させる能力を向上させることは、定着特性や色再現性の安定化や高速対応等に有効であり、望まれる課題である。
【0009】
従来よりも、定着液自体のトナーを軟化させる能力を向上させる方法としては、定着液中の軟化剤の濃度を上げることが考えられえる。しかし、本発明者らの検討により、定着液中の軟化剤の濃度を大きくしてトナーを軟化させる能力を向上させる方法では、多量の軟化剤を加えて、軟化剤の濃度を大きく上げる必要があることが解った。多量の軟化剤を加えることは、定着液の大幅なコストアップを招いてしまう。
【0010】
本発明は以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、トナーの樹脂成分の少なくとも一部を溶解または膨潤させることでトナーを軟化させる軟化剤を含有する定着液を記録媒体表面上のトナー像に付与してトナー像を定着させる定着方法において、定着液のコストを抑えながらトナーを軟化させる能力を向上させて、安定した定着特性や色再現性が得られる定着方法、画像形成方法及び画像形成装置を提供することである。
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、結着樹脂を含有するトナー中の結着樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させることでトナーを軟化させる軟化剤を含有した定着液を記録媒体上のトナーに付与して該トナーを該記録媒体に定着させる定着方法において、上記トナーの結着樹脂として少なくともポリエステル樹脂を用い、且つ、該定着液に有機スルホン酸、有機カルボン酸、または、これらの金属塩の何れかを含有したものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の定着方法において、上記定着液は、液状の定着液を泡状とする起泡剤と、水を含む希釈剤とを含み、該定着液に含有した有機スルホン酸、有機カルボン酸化合物、または、これらの金属塩が該希釈液に可溶でその溶液がアルカリ性であることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の定着方法において、少なくとも軟化剤を含む軟化剤液を酸性を示すpHに調整し、少なくとも起泡剤と希釈剤と有機スルホン酸、有機カルボン酸化合物、または、これらの金属塩とを含む起泡剤液をアルカリ性を示すpHに調整してそれぞれ独立に収容し、該軟化剤液と該起泡剤液とを混合して、上記記録媒体上のトナーに付与する定着液を生成することを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1、2または3の何れかの定着方法において、上記定着液を泡状化して泡状定着液を生成する泡状定着液生成工程と、該泡状定着液を泡状定着液付与手段の接触面上に所望の厚みに形成する膜厚調整工程と、該所望の厚みに形成された泡状定着液を記録媒体上に形成されたトナーに付与する泡状定着液付与工程とを有することを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、該静電潜像を、少なくとも樹脂微粒子を含有するトナーにより現像してトナー像を形成する現像工程と、該トナー像を記録媒体上に転写する転写工程と、該記録媒体に転写されたトナー像を定着させる定着工程とを有する画像形成方法において、上記定着工程が請求項1、2、3または4の何れかの定着方法により行われることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、潜像担持体上の静電潜像をトナー像化する現像手段と、該潜像担持体上のトナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、該記録媒体上に転写されたトナー像を定着させる定着手段とを有する画像形成装置において、上記定着手段は請求項1、2、3または4の何れかの定着方法により行われることを特徴とするものである。
本発明においては、定着液に含有した有機スルホン酸、有機カルボン酸、または、これらの金属塩が、トナーの結着樹脂を軟化剤に溶解または膨潤し易くする、いわゆる、軟化助剤として作用する。詳しくは、有機スルホン酸、有機カルボン酸、または、これらの金属塩が、トナーの結着樹脂であるポリエステル樹脂のエステル結合を攻撃して切断することで、結着樹脂を短分子化すると考えられる。結着樹脂は短分子化するほど軟化剤に溶解または膨潤し易くなるため、定着液のトナーを軟化させる能力が向上する。このような有機スルホン酸、有機カルボン酸、または、これらの金属塩は、それ自体でトナーの結着樹脂であるポリエステル樹脂を軟化させる能力は低いが、ポリエステル樹脂を短分子化して軟化剤の作用を助ける軟化助剤としての機能を有する。また、後述する実験で示すように、有機スルホン酸、有機カルボン酸、または、これらの金属塩は、少量の添加でトナーを軟化させる能力を向上させることができる。これは、軟化剤自体を多量に加えてトナーを軟化させる能力が向上させるものに比べて、定着液としてのコストを抑えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、トナーの樹脂成分の少なくとも一部を溶解または膨潤させることでトナーを軟化させる軟化剤を含有する定着液を記録媒体表面上のトナー像に付与してトナー像を定着させる定着方法において、定着液のコストを抑えながらトナーを軟化させる能力を向上させて、安定した定着特性や色再現性が得られるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の画像形成装置に採用される定着方法の原理説明図。
【図2】泡状定着液の拡大断面図。
【図3】本実施形態の画像形成装置における定着装置の概略構成図。
【図4】本実施形態の画像形成装置の一例の構成を示す概略図。
【図5】画像形成装置の画像形成ユニットの構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の定着方法を採用した画像形成装置の一実施形態について説明する。
先ず、本実施形態の画像形成装置に採用される定着方法の原理について説明する。図1は、定着方法の原理説明図である。この定着方法は、トナーの樹脂成分の少なくとも一部を溶解または膨潤させることでトナーを軟化させる軟化剤を含有する定着液を記録媒体P上のトナー像22に付与してトナー像22を定着するものである。この際、定着液の液中に気泡が分散した泡状定着液24を生成し、塗布部材としての塗布ローラ21により泡状定着液24を記録媒体P上に塗布することにより、定着液を記録媒体P上のトナー像22に付与する。
【0015】
図2は、泡状定着液24の拡大断面図である。泡状定着液24は、液中に気泡24bを多数含み、それぞれの気泡24bは液膜境界(以下、プラトー境界と称することがある)24aにより仕切られている。このような泡状定着液24を用いることにより、定着液の嵩密度を低くできると共に、塗布ローラ21上の定着液膜を厚くすることができ、定着液の表面張力による影響が抑えられる。よって、塗布ローラ21へのトナーオフセットを防止し、トナー像の乱れのない良好な画像が得られる。
【0016】
本実施形態の定着方式に用いられる定着液組成について説明する。
本実施形態の定着方式を採用する定着装置では、少なくとも軟化剤と起泡剤とを含有する液状定着液から、液中に気泡を分散させて泡を多く含んだ泡状定着液を生成する。泡状定着液に適する起泡剤としては、一般にアニオン系界面活性剤が適している。このアニオン系界面活性剤の起泡性を最大限に発揮するのは液のpHが7以上の弱アルカリ性領域である。一方、定着液中のトナー等の樹脂を軟化する軟化剤は、エステル基を有している場合が大半で、pHが7以上のアルカリ性領域ではエステル基が加水分解を起こし、軟化剤が化学的に分解してしまい、軟化剤としての能力が失われる。このため、定着液の起泡性を重視して液のpHを7以上とすると、定着液の長期保存において、保存容器内で軟化剤が化学的に分解し、定着性能がなくなり、定着装置としての信頼性が得られなくなる問題がある。pHを6以下の弱酸性とすると軟化剤の化学的分解は抑制されるが、起泡剤の能力が低下し、定着液の泡化がうまくいかなくなり、泡膜の形成が劣化し、定着不良を発生させてしまう。
【0017】
この相反する問題を解決するため、定着液中の起泡剤と水を含有し弱アルカリ性とした液(以下、起泡剤液という)と、水を含まない又は水を含んでもpHが6〜7に保たれた状態で軟化剤を含有する液(以下、軟化剤液という)とを分離独立した状態で収容する。そして、定着稼動時には、2つの液を混合し、直後又は同時に泡化を行って泡状定着液を生成して、記録媒体P上に塗布する構成とする。これにより、起泡性を損なうことなく、定着液の保存安定性を向上させることができる。
【0018】
起泡剤液は、起泡剤と、増泡剤と、希釈媒としての水と、pH調整剤と、本発明の特徴部である軟化助剤とを含有することが望ましい。
起泡剤としては、アニオン系界面活性剤、特に脂肪酸塩が望ましく、更に脂肪酸塩としては、脂肪酸アミン塩が望ましい。脂肪酸はアルキル基の炭素数12、14、16、18であるラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸の中から最適な組合せを選ぶ。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩やアミン塩がよく、特にトリエタノールアミン塩やジエタノールアミン塩が望ましい。
増泡剤としては、脂肪酸アルカノールアミド、特に脂肪酸アルカノールアミドには(1:1)型と(1:2)型があるが、本発明における泡沫安定性には(1:1)型が適する。更に、増泡剤として多価アルコール類、特にプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール及びグリセリンなどを単独もしくは混合することが適する。
液のpHを7〜10の弱アルカリ性に維持するためのpH調整剤としてはアミン類が適する。
軟化助剤としては、有機スルホン酸化合物、有機カルボン酸化合物、及びこれらの金属塩が適する。
また、軟化剤液と同等の粘度となるよう、粘度調整として固体軟化剤を含むことも好ましい。
【0019】
軟化剤液は、液体軟化剤単独でもよいが、可塑化能力向上とタック防止機能のため固体軟化剤を含有することが望ましい。さらに、加水分解をより抑制するため増泡剤成分である多価アルコール類、特にプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール及びグリセリンを単独又は複数含有することも望ましい。また、若干の水を含有しておくと引火性が低減し危険物扱いにならずに済む利点がある。水を含有する場合、軟化剤液のpHは6〜7の弱酸に設定することが望ましい。但し、起泡剤液と軟化剤液を混合した際、混合液全体のpHは7以下とならない程度に弱酸とするためのpH調整剤の濃度を設定することが望ましい。軟化液中のpH調整剤としては、有機酸が望ましく、乳酸、クエン酸、リンゴ酸などが適する。
【0020】
以下、軟化剤液、起泡剤液の各成分について詳しく説明する。
【0021】
(液体軟化剤)
液体軟化剤は、樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂を含有する微粒子を軟化させる機能を有する。
液体軟化剤としては、エステル化合物であることが好ましい。エステル化合物は、トナー等の樹脂微粒子に含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させる溶解性または膨潤性に優れている。エステル化合物の中でも、脂肪族エステル、炭酸エステルが、樹脂の軟化能力が優れている点で特に好ましい。また、後述する起泡剤としてのアニオン系界面活性剤による起泡性を阻害しない点からも好ましい。
【0022】
液体軟化剤は、人体に対する安全性の観点から、その急性経口毒性LD50が3g/kgよりも大きいことが好ましく、5g/kg以上であることがより好ましい。脂肪酸エステルは、化粧品原料として多用されているように、人体に対する安全性が高いものである。
【0023】
また、記録媒体に対する樹脂微粒子としてのトナーの定着は、密封された環境において頻繁に使用される機器で行われ、液体軟化剤はトナーの記録媒体への定着後にもトナー中に残留するため、記録媒体に対するトナーの定着は揮発性有機化合物(VOC)及び不快臭の発生を伴わないことが好ましい。即ち、液体軟化剤は揮発性有機化合物(VOC)及び不快臭の原因となる物質を含まないことが好ましい。脂肪族エステルは、一般に汎用される有機溶剤(トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチルなど)と比較して、高い沸点及び低い揮発性を有し、刺激臭を持たない。
なお、オフィス環境等における臭気を高い精度で測定することができる実用的な臭気の測定尺度として、官能測定である三点比較式臭袋法による臭気指数〔10×log(物質の臭気が感じられなくなるまでの物質の希釈倍率)〕を臭気の指標とすることができる。また、液体軟化剤に含まれる脂肪族エステルの臭気指数は、10以下であることが好ましい。この場合、通常のオフィス環境では、不快臭を感じなくなる。更に、液体軟化剤のみならず、定着液に含まれる他の液剤も同様に、不快臭及び刺激臭を有さないことが好ましい。
【0024】
脂肪族エステルは、飽和脂肪族エステルを含む。脂肪族エステルが、飽和脂肪族エステルを含む場合には、液体軟化剤の保存安定性(酸化、加水分解などに対する耐性)を向上させることができる。また、飽和脂肪族エステルは、人体に対する安全性が高く、多くの飽和脂肪族エステルは、トナーに含まれる樹脂を1秒以内などで溶解または膨潤させることができる。更に、飽和脂肪族エステルは、記録媒体に提供されたトナーの粘着感を低下させることができる。これは、飽和脂肪族エステルが、溶解または膨潤したトナーの表面に油膜を形成するためであると考えられる。
【0025】
よって、本実施形態の液体軟化剤において、好ましくは、飽和脂肪族エステルの一般式は、R1COOR2で表される化合物を含み、R1は、炭素数が11以上14以下のアルキル基であり、R2は、炭素数が1以上6以下の直鎖型もしくは分岐型アルキル基である。R1及びR2の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂可塑化能力が低下する。
即ち、飽和脂肪族エステルが、一般式R1COOR2で表される化合物を含み、R1は、炭素数が11以上14以下のアルキル基であり、R2は、炭素数が1以上6以下の直鎖型もしくは分岐型のアルキル基である場合には、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性または膨潤性を向上させることができる。また、前記一般式R1COOR2で表される化合物の臭気指数は、10以下であり、該化合物は、不快臭及び刺激臭を有さない。
【0026】
脂肪族モノカルボン酸エステルとしては、例えばラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、トリデシル酸エチル、トリデシル酸イソプロピル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、などが挙げられる。これらの脂肪族モノカルボン酸エステルの多くは、油性溶媒に溶解するが、水には溶解しない。よって、脂肪族モノカルボン酸エステルの多くについて、水性溶媒では、グリコール類を溶解助剤として定着液に含有し、溶解又はマイクロエマルジョンの形態とする。
【0027】
脂肪族エステルは、脂肪族ジカルボン酸エステルを含むことが好ましい。脂肪族エステルが、脂肪族ジカルボン酸エステルを含む場合には、より短い時間でトナーに含まれる樹脂を溶解または膨潤させることができる。例えば、60ppm程度の高速印字では、記録媒体における未定着のトナーに定着液を付与し、トナーが記録媒体に定着するまでの時間は、1秒以内であることが好ましい。脂肪族エステルが、脂肪族ジカルボン酸エステルを含む場合には、記録媒体における未定着のトナー等に定着液を付与し、トナーが記録媒体に定着するのに要する時間を、0.1秒以内などにすることが可能となる。
【0028】
よって、本実施形態の液体軟化剤において、好ましくは、脂肪族ジカルボン酸エステルの一般式は、R3(COOR4)で表される化合物を含み、R3は、炭素数が3以上8以下のアルキレン基であり、R4は、炭素数が3以上5以下の直鎖型又は分岐型アルキル基である。R3及びR4の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。
即ち、脂肪族ジカルボン酸エステルが、一般式R3(COOR4)で表される化合物を含み、R3は、炭素数が3以上8以下のアルキレン基であり、R4は、炭素数が3以上5以下の直鎖型又は分岐型アルキル基である場合には、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性又は膨潤性を向上させることができる。また、前記一般式R3(COOR4)で表される化合物の臭気指数は、10以下であり、該化合物は、不快臭及び刺激臭を有さない。
【0029】
脂肪族ジカルボン酸エステルとしては、例えばコハク酸2エチルヘキシル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソデシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。これらの脂肪族ジカルボン酸エステルの多くは、油性溶媒に溶解するが、水には溶解しない。よって、水性溶媒では、グリコール類を溶解助剤として定着液に含有し、溶解又はマイクロエマルジョンの形態とする。
【0030】
さらに、本実施形態の液体軟化剤において、好ましくは、脂肪族エステルは、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含む。脂肪族エステルが、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含む場合には、記録媒体に対するトナーの定着性を向上させることができる。
【0031】
本実施形態の液体軟化剤において、好ましくは、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルの一般式は、R5(COOR6−O−R7)で表される化合物を含み、R5は、炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、R6は、炭素数が2以上4以下のアルキレン基であり、R7は、炭素数が1以上4以下のアルキル基である。R5、R6及びR7の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂可塑化能力が低下する。
即ち、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルは、一般式R5(COOR6−O−R7)で表される化合物を含み、R5は、炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、R6は、炭素数が2以上4以下のアルキレン基であり、R7は、炭素数が1以上4以下のアルキル基である場合には、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性または膨潤性を向上させることができる。また、前記一般式R5(COOR6−O−R7)で表される化合物の臭気指数は、10以下であり、化合物は、不快臭及び刺激臭を有さない。
【0032】
脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルとしては、例えばコハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジブトキシエチル、コハク酸ジカルビトール、アジピン酸ジメトキシエチル、アジピン酸ジエトキシエチル、アジピン酸ジブトキシエチル、セバシン酸ジエトキシエチル等が挙げられる。これらの脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを水性溶媒で用いる場合、必要に応じてグリコール類を溶解助剤として定着液に含有させ、溶解又はマイクロエマルジョンの形態とする。
【0033】
炭酸エステルとしては、例えば炭酸エチレン、炭酸プロピレン(プロピレンカーボネート)、グリセロール1,2−カルボナート、4−メトキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンなどが挙げられる。
【0034】
また、前記以外のエステル化合物としては、例えばクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸エステル;エチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールジアセタート、トリエチレングリコールジアセタート等のグリコールをエステル化した化合物;モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン等のグリセリンをエステル化した化合物などが挙げられる。
【0035】
液体軟化剤の含有量は、0.5質量%〜50質量%が好ましく、5質量%〜30質量%がより好ましい。前記含有量が、0.5質量%未満であると、トナーに含まれる樹脂を溶解または膨潤させる効果が不十分になることがあり、50質量%を超えると、長時間に亘りトナーに含まれる樹脂の流動性を低下させることができず、定着トナー層が粘着性を有する可能性がある。
【0036】
(固体軟化剤)
固体軟化剤は、常温で固体であり、かつ、後述する水などの希釈剤に可溶であって、この希釈剤に溶解している状態でトナーなどの樹脂微粒子を軟化させ得る限り特に制限はない。ここで、「常温」とは、熱したり冷やしたりせずに達成される温度のことをいい、例えば、JIS Z8703にて定義されている、5℃〜35℃であることが好ましい。この常温の範囲内であると、固体軟化剤は固体状態となる。すなわち、泡状態の定着液においては水を含むために固体軟化剤は溶融している状態にあるが、未定着のトナーに付与され、トナーに浸透し、さらにトナーに浸透した定着液の水分が気化などにより量が低下した場合には、固体軟化剤は固体の状態に変化する。固体軟化剤を含む定着液を用いた場合には、このように、固体軟化剤が固体の状態に変化する点に注目し、この特性を利用することで定着液付与後のトナー固さを高めることができる。また、常温における適当な条件下で固体軟化剤が樹脂微粒子に対する可塑能力を発揮するとともに、可塑能力を失い固体の状態となると、それ自体が硬化し、タックの防止に寄与することとなる点で、好ましい。
【0037】
固体軟化剤としては、例えば、被定着物である樹脂微粒子と一定の相溶性を有するなどの親和性を有する官能基を有することが好ましい。ここでいう親和性を有する官能基とは、好ましくは、樹脂微粒子を構成する分子に含まれる官能基と、固体軟化剤に含まれる官能基とが同一である場合に加え、これらの官能基間で一定の相互作用をし得る官能基を有することを意味する。固体軟化剤に含まれる官能基が樹脂微粒子を構成する分子と一定の相互作用をし得る官能基を有すると、これらの官能基の相互作用により樹脂微粒子を構成する分子間に固体軟化剤が進入するきっかけとなり、結果として、固体軟化剤と樹脂微粒子との間でいわゆるポリマーブレンドの状態を形成し、固体軟化剤がトナーなどの樹脂微粒子の少なくとも一部を軟化または膨潤させる際に効果的であるためである。
【0038】
具体的な例を挙げると、固体軟化剤がポリエチレングリコールであって、ポリエチレングリコールにエチレンオキサイド基が含まれる。そして、対応する樹脂微粒子には、樹脂分子中にエチレンオキサイド基を含む組合せがそれに相当する。このような場合、固体軟化剤と樹脂微粒子の両者にエチレンオキサイド基が含まれ、これにより親和性を高めることで、両者の相溶性を高める効果が奏するものである。一方、この考え方は、固体軟化剤と樹脂微粒子の両者に親和性を有する官能基を有することで成り立つため、エチレンオキサイド基に限定されることはなく、他の例としては、プロピレンオキサイド基を利用してもよく、さらには、公知のトナーに含まれる官能基を固体軟化剤内に含ませる場合も有効に作用する。
【0039】
固体軟化剤としてポリエチレングリコールを用いる場合、その分子量は特に制限はないが、1000から10000が好ましい。分子量が1000未満ではタック防止機能が低下し、10000を超えると可塑能力の低下と定着液の泡状化阻害が生じる可能性がある。
固体軟化剤の含有量としては、特に制限はないが、定着液の質量に対して、1質量%〜20質量%であることが好ましい。含有量が、1質量%未満であると、定着が困難となるためであり、20質量%を超えると、定着液及び泡状定着液としての粘度が高くなり、加えて泡立ちの悪さや、泡としての安定性に欠け、品質上問題が生じる。
【0040】
(溶解助剤)
定着液中の液体軟化剤の濃度が高くなると希釈溶媒である水に液体軟化剤が溶解しにくくなる場合がある。そこで、溶解助剤として、多価のアルコール類、具体的にはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンなどを定着液中に含有させることで、液体軟化剤が高濃度でも溶解し、かつ脂肪酸塩による起泡性を劣化させず、むしろ起泡性が向上することがわかった。また、多価のアルコール類の含有量は、0.1質量%〜30質量%の範囲が好ましい。含有量が、30質量%を超えると、起泡性がむしろ劣化するため適さない。
【0041】
(起泡剤)
起泡剤としては、アニオン系界面活性剤が優れた起泡性と泡沫安定性を実現することができ、好ましい。
アニオン系界面活性剤のなかでも、脂肪酸塩は、最も泡沫安定性に優れ、定着液の起泡剤として最も適する。一方、軟化剤は、消泡作用が強く、定着液中で軟化剤の濃度上昇と共に、定着液の起泡性及び泡沫安定性が悪くなり、なかなか起泡しなくなり、泡が直ぐに破泡するため泡密度の低い泡状定着液を得ることができなくなる。そこで、この定着液中の軟化剤濃度を高めたときの起泡性劣化問題を解決するため、アニオン系界面活性剤の種類や濃度を因子として多種の試作を行ったところ、起泡剤として炭素数12〜18の脂肪酸塩を用い、更に炭素数12〜18の脂肪酸を定着液中に含有することにより、軟化剤の濃度が高くなっても、定着液の起泡性が劣化しない泡状定着液を提供できる。
【0042】
ここで、軟化剤を含有した定着液において、単に水を起泡する場合に比較して、脂肪酸塩の炭素数としては、12〜18が起泡性に優れている。具体的には、ラウリン酸塩(炭素数12)、ミリスチン酸塩(炭素数14)、パルミチン酸塩(炭素数16)、ステアリン酸塩(炭素数18)が適する。また、ペンタデシル酸(炭素数15)、マルガリン酸(炭素数17)なども適する。一方、脂肪酸と軟化剤との作用について説明すると、軟化剤はエステル基を化学構造中に有しており、脂肪酸はカルボニル基を化学構造中に有している。この点から、軟化剤のエステル基と脂肪酸のカルボニル基が定着液の系内で、電気的な作用を示し、またそれが分子間の結合作用を生じさせ、定着液の特性として起泡性及び泡沫安定性を向上させている。
【0043】
また、炭素数12〜18の範囲においても、炭素数が少ないほうが起泡性に優れているが泡沫安定性が悪く、炭素数が多いほうが起泡性にあまりよくないが泡沫安定性に極めて優れている。そこで、定着液中で、単独の脂肪酸塩でもよいが、炭素数12〜18の脂肪酸塩を混合する方が更に優れている。混合比率としては、ミリスチン酸塩(炭素数14)を最も多く含み、ラウリン酸塩(炭素数12)、ステアリン酸塩の割合を低くすることが好ましい。より具体的な脂肪酸塩の比率としては、ラウリン酸塩:ミリスチン酸塩:パルミチン酸塩:ステアリン酸塩の質量比で、0:6:3:1、1:5:3:1、1:4:4:1などが適する。
【0044】
アニオン系界面活性剤の含有量は、0.1質量%〜20質量%が好ましく、0.5質量%〜10質量%がより好ましい。前記含有量が、0.1質量%未満であると、起泡性が不十分になることがあり、20質量%を超えると、定着液の粘度が高くなり、起泡性が低下する可能性がある。
【0045】
定着液中に起泡剤である脂肪酸塩と同じ炭素数の脂肪酸を含有することで軟化剤の濃度が高くなっても起泡性及び泡沫安定性を維持することができる。軟化剤の濃度として、10質量%未満であると、脂肪酸を含有しなくても起泡性は問題ない。しかし、軟化剤の濃度が10質量%以上、特に軟化剤の濃度が30質量%以上になると、脂肪酸塩だけでは、ほとんど起泡しなくなり起泡性が悪くなる。このような軟化剤の含有量が30質量%において、脂肪酸塩と同じ炭素数の脂肪酸を含有させると、起泡性を維持できる。
ただし、脂肪酸の含有量が多くなりすぎると、起泡剤である脂肪酸塩の比率が下がり、起泡性が再び悪くなる。そこで、後述する具体例からわかるように、脂肪酸塩のモル数を、脂肪酸のモル数と同じに、又は大きくするほうがよい。あるいは、脂肪酸と脂肪酸塩の比率を、5:5〜1:9の範囲とした場合起泡性が優れている。
なお、同じ炭素数の脂肪酸と脂肪酸塩の組合せだけでなく、例えば、脂肪酸塩がミリスチン酸アミンで、脂肪酸がステアリン酸の組合せや脂肪酸塩がパルミチン酸カリウムで脂肪酸がステアリン酸のような炭素数が12〜18の範囲で異なる組合せであってもよい。要は、炭素数12〜18の範囲の脂肪酸を定着液に含有することで、高濃度の軟化剤を含有しても、起泡性が悪くならず、泡沫安定性に優れ、密度の極めて低い泡化を可能とする。
【0046】
また、他のアニオン系界面活性剤、例えばアルキルエーテル硫酸塩(AES)を起泡剤として、炭素数12〜18の脂肪酸を含有した定着液であっても、軟化剤濃度の増加による起泡性が悪くなるのを防止する効果があることがわかった。ただし、最も組合せとして優れているのは脂肪酸塩との組合せである。
【0047】
更に、脂肪酸塩としては、脂肪酸ナトリウム塩、脂肪酸カリウム塩、脂肪酸アミン塩が適している。更に、最も適している脂肪酸アミンは、具体的には、水を加熱し、脂肪酸を添加し、その後トリエタノールアミンを添加して、一定時間撹拌しながら加熱してケン化反応させることで作製することができる。このとき、脂肪酸とトリエタノールアミンとのモル比を、1:0.5〜1:0.9の範囲と脂肪酸比率を高くすることで、ケン化後、未反応の脂肪酸が残留し、定着液中に脂肪酸と脂肪酸アミン塩を混合させることができる。同じことは、ナトリウム塩やカリウム塩でも可能である。
なお、定着液中で、不飽和脂肪酸塩を用いてもよく、炭素数18で2重結合数が1〜3の不飽和脂肪酸が好ましい。具体的には、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸が適する。2重結合が4以上では反応性が強いため、定着液の放置安定性が劣ってしまう。これらの不飽和飽和脂肪酸による不飽和脂肪酸塩を単独もしくは混合して起泡剤として用いる。また、上記飽和脂肪酸塩と不飽和脂肪酸塩を混合して起泡剤として用いても構わない。
【0048】
泡状定着液において、塗布接触ニップ部にてトナー等の微粒子層に泡状定着液を押し込みながら浸透させる際に泡が破泡すると浸透阻害となる。そこで泡沫安定性に優れる泡が求められる。このため、定着液中に脂肪酸アルカノールアミド(1:1)型を含有することが好ましい。脂肪酸アルカノールアミドには(1:1)型と(1:2)型があるが、本実施形態における泡沫安定性には(1:1)型が好適である。
【0049】
(軟化助剤)
本実施形態の定着液には軟化助剤が含まれる。軟化助剤は、それ自体ではトナーなどの樹脂微粒子を軟化させる能力は低いが、樹脂を短分子化して、短分子化した樹脂に軟化剤が作用することにより、樹脂微粒子を軟化やすくさせるものである。軟化助剤としては、有機スルホン酸、有機カルボン、及びこれらの金属塩であり、且つ、後述の水などの希釈剤に可溶であり、アルカリ性を示すものならば、特に制限されるものではない。可溶化時のpHがアルカリ性であることで、後述するアニオン系界面活性剤の起泡性を阻害することなく、定着液を泡状化することが出来る。
【0050】
有機スルホン酸としては、脂肪族スルホン酸、芳香族スルホン酸が挙げられる。
脂肪族スルホン酸は、一般式:R8−SOHで表されるものとし、R8は炭素鎖で構成されている化合物を示す。R8は直鎖構造、分岐鎖を有する構造、環状構造、ヒドロキシ基を含む構造のいずれであってもよい。具体的には、カンファースルホン酸を含むモノテルペン類のスルホン酸、およびそのナトリウム塩、もしくはカリウム塩が好適に用いられるが、他のメタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、オクタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸も適用できる。
芳香族スルホン酸は、ベンゼン環を含むスルホン酸である。具体的に、ドデシルベンゼンスルホン酸以外のアルキルベンゼンスルホン酸、およびそのナトリウム塩、もしくはカリウム塩が適用できる。また、クロロベンゼンスルホン酸、ジクロロベンゼンスルホン酸、トリクロロベンゼンスルホン酸、アミノベンゼンスルホン酸、ジアミノベンゼンスルホン酸、ニトロベンゼンスルホン酸、ジニトロベンゼンスルホン酸、ヒドラジノベンゼンスルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ラウリルベンゼンスルホン酸、ホルミルベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の芳香族スルホン酸も適用できる。
【0051】
有機カルボン酸としては、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸のいずれも適用できる。
脂肪族カルボン酸は、一般式:R9−COOHで表わされるものとし、R9は炭素鎖で構成されている化合物を示す。例えば、炭素鎖が単結合のみの飽和脂肪酸、炭素鎖に二重結合または三重結合が含まれる不飽和脂肪酸、およびそのナトリウム塩、もしくはカリウム塩が挙げられる。また、R9は直鎖構造のみならず、分岐鎖を持つ分岐脂肪酸、環状構造を持つ環状脂肪酸、ヒドロキシ基を含むヒドロキシル脂肪酸等であってもよい。
芳香族カルボン酸は、ベンゼン環を含むカルボン酸である。本発明においては、例えば、安息香酸、メチル安息香酸、ジメチル安息香酸、トリメチル安息香酸、イソプロピル安息香酸、フタル酸、メチルイソフタル酸、フェニル酢酸、フェニルプロパン酸、フェニルアクリル酸、サリチル酸、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシメチル安息香酸、ジヒドロキシ安息香酸、メトキシ安息香酸、ジメトキシ安息香酸、トリヒドロキシ安息香酸、ジヒドロキシメトキシ安息香酸、ヒドロキシジフェニル酢酸、ヒドロキシフェニルプロパン酸等の芳香族カルボン酸、およびそのナトリウム塩、もしくはカリウム塩を適用できる。
【0052】
(希釈溶媒)
希釈溶媒としては、水、水にアルコール類等を添加した水性溶媒、などが好ましい。
水としては、例えばイオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水を用いることができる。
水性溶媒を用いる場合には、界面活性剤を添加することで、表面張力を20mN/m〜30mN/mとすることが好ましい。アルコール類としては、泡状の定着液における気泡の安定性を高め、破泡しにくくする利点から、例えばセタノール等の単価アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールが好ましい。また、これらの単価又は多価のアルコール類を含有することで紙等の媒体のカール防止に効果を有する。
【0053】
また、定着液中に浸透性改善や紙等媒体のカール防止のために油性成分を含有してO/WエマルジョンやW/Oエマルジョンを形成する構成も好ましい。その場合、具体的な分散剤としては、ソルビタンモノオレエートやソルビタンモノステレートやソルビタンセスキオレートなどのソルビタン脂肪酸エステルやショ糖ラウリン酸エステルやショ糖ステアリン酸エステルなどのショ糖エステルなどが好ましい。
なお、定着中での軟化剤を溶解もしくはマイクロエマルジョン分散させるため方法としては、例えば、回転羽根によるホモミキサーやホモジナイザーのような機械的に攪拌する手段、及び超音波ホモジナイザーのような振動を与える手段が挙げられる。いずれにしても、強いせん断応力を定着液中の軟化剤に加えることで溶解もしくはマイクロエマルジョン分散させる。
【0054】
次に、本実施形態の定着方式で上記定着液を塗布するトナーについて説明する。
トナーは、プリンタ、ファクシミリ及び複写装置のような画像形成装置などに用いられているもので結着樹脂にポリエステル樹脂を含んでいれば特に制限はなく、結着樹脂と、必要に応じて帯電制御剤、着色剤、離型剤、無機微粒子、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料を含んでも良い。以下、トナー組成について詳しく説明する。
【0055】
(結着樹脂)
結着樹脂としては、ポリエステル樹脂を含んでいれば特に制限はないが、エチレンオキサイド基やプロピレンオキサイド基などを含むとより好ましい。
【0056】
(帯電制御剤)
本実施形態によるトナーは、トナーの帯電性を制御することを目的として、帯電制御剤をトナー中に含有させることができる。帯電制御剤としては、特に制限はなく、下記の各材料が挙げられる。
例えば、ニグロシン、炭素数2〜16のアルキル基を含むアジン系染料(特公昭42−1627号公報)、塩基性染料、例えばC.I.Basic Yello 2(C.I.41000)、C.I.Basic Yello 3、C.I.Basic Red 1(C.I.45160)、C.I.Basic Red 9(C.I.42500)、C.I.Basic Violet 1(C.I.42535)、C.I.Basic Violet 3(C.I.42555)、C.I.Basic Violet 10(C.I.45170)、C.I.Basic Violet 14(C.I.42510)、C.I.Basic Blue 1(C.I.42025)、C.I.Basic Bile 3(C.I.51005)、C.I.Basic Blue 5(C.I.42140)、C.I.Basic Blue 7(C.I.42595)、C.I.Basic Blue 9(C.I.52015)、C.I.Basic Blue 24(C.I.52030)、C.I.Basic Blue 25(C.I.52025)、C.I.Basic Blue 26(C.I.44045)、C.I.Basic Green 1(C.I.42040)、C.I.Basic Green 4(C.I.42000)など及びこれらの塩基性染料のレーキ顔料、C.I.Solvent Bkack 8(C.I.26150)、ベンゾイルメチルヘキサデシルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルクロライド等の4級アンモニウム塩、ジブチル若しくはジオクチルなどのジアルキルスズ化合物、ジアルキルスズボレート化合物、グアニジン誘導体、アミノ基を含有するビニル系ポリマー、アミノ基を含有する縮合系ポリマー等のポリアミン樹脂、特公昭41−20153号公報、特公昭43−27596号公報、特公昭44−6397号公報、特公昭45−26478号公報に記載されているモノアゾ染料の金属錯塩、特公昭55−42752号公報、特公昭59−7385号公報に記載されているサルチル酸、ジアルキルサルチル酸、ナフトエ酸、ジカルボン酸のZn、Al、Co、Cr、Fe等の金属錯体、スルホン化した銅フタロシアニン顔料、有機ホウ素塩類、含フッ素四級アンモニウム塩、又はカリックスアレン系化合物等が挙げられる。ブラック以外のカラートナーは、当然目的の色を損なう帯電制御剤の使用は避けるべきであり、白色のサリチル酸誘導体の金属塩等が好適に使用される。
帯電制御剤の含有量は、結着樹脂の100質量部に対して、0.01質量部〜2質量部が好ましく、0.02質量部〜1質量部がより好ましい。含有量が、0.01質量部以上であると、帯電制御性が得られ、2質量部以下であると、トナーの帯電性が大きくなりすぎることがなく、主帯電制御剤の効果を減退させることもなく、現像ローラとの静電的吸引力が増大してトナーの流動性低下や画像濃度の低下を招くということもない。
【0057】
(着色剤)
本実施形態において、着色剤としては、特に制限はなく、公知の着色剤から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
トナーの着色剤の色としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ブラックトナー、シアントナー、マゼンタトナー、及び、イエロートナーから選択される少なくとも1種とすることができ、各色のトナーは着色剤の種類を適宜選択することにより得ることができるが、カラートナーであるのが好ましい。
黒色用のものとしては、例えばファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料、などが挙げられる。
マゼンタ用着色顔料としては、例えばC.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、48:1、49、50、51、52、53、53:1、54、55、57、57:1、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、163、177、179、202、206、207、209、211;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35、などが挙げられる。
シアン用着色顔料としては、例えばC.I.ピグメントブルー2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、60;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45又フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料、グリーン7、グリーン36、などが挙げられる。
イエロー用着色顔料としては、例えばC.I.ピグメントイエロー0−16、1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、55、65、73、74、83、97、110、151、154、180;C.I.バットイエロー1、3、20、オレンジ36、などが挙げられる。
トナー中における着色剤の含有量は、トナー質量に対して、1質量%〜15質量%が好ましく、3質量%〜10質量%がより好ましい。含有量が、1質量%未満であると、トナーの着色力が低下することがあり、15質量%を超えると、トナー中での顔料の分散不良が起こり、着色力の低下及びトナーの電気特性の低下を招くことがある。
【0059】
(離型剤)
離型剤としては、例えば、カルボニル基含有ワックス、ポリオレフィンワックス、長鎖炭化水素、等を用いてもよいが、離型剤を用いない方が好ましい。従来の加熱加圧定着方式で用いられるトナーには、定着時のホットオフセット等を防止することを目的に、トナー材料として、離型剤とよばれる、熱ローラー定着を行う際に溶融し、ローラと被定着材上のトナーとの付着を防止する効果を有する物質(低分子量ポリオレフィン・ワックス等)が用いられてきた。しかしながらこれら離型剤はトナーのバインダー樹脂中への均一分散は困難であり、離型剤がトナー表面などに多く存在する場合には、耐ブロッキング性の低下、感光体、キャリア等へのフィルミング、スペント化、経時での部材汚染等の問題を生ずる原因ともなりうる。
本実施形態で示すようなトナーを軟化させる軟化剤を含む定着液を用いて記録媒体にトナーを定着させる方法に用いられるトナーは、非加熱の定着方法に用いられるものである。このため、熱ローラー定着を行う際に溶融し、ローラと被定着材上のトナーとの付着を防止する効果を有する物質を有する必要がなく、離型剤を用いなくてもよい。
【0060】
(無機微粒子)
本実施形態によるトナーは、トナー粒子に流動性、現像性、帯電性等を付与するための外添剤として無機微粒子を有してもよい。
無機微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のもののなかから適宜選択することができ、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。無機微粒子の一次粒子径としては、5nm〜2μmが好ましく、5nm〜500nmがより好ましい。無機微粒子のトナーにおける含有量としては、0.01質量%〜5.0質量%が好ましく、0.01質量%〜2.0質量%がより好ましい。この範囲であると、トナーの流動性、現像性、帯電性が向上する。
【0061】
(流動性向上剤)
流動性向上剤は、表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止可能なものを意味し、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、などが挙げられる。なかでも、シリカ及び酸化チタンは、このような流動性向上剤により表面処理行い、疎水性シリカ、疎水性酸化チタンとして使用するのが好ましい。
【0062】
(クリーニング性向上剤)
クリーニング性向上剤は、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためにトナーに添加され、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子、などが挙げられる。このポリマー微粒子は、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01μm〜1μmのものが好適である。
【0063】
(磁性材料)
磁性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のもののなかから適宜選択することができ、例えば、鉄粉、マグネタイト、フェライト、等が挙げられる。これらの中でも、色調の点で白色のものが好ましい。
【0064】
このようなトナーを用いて記録媒体P上に形成したトナー像に、定着液を塗布し、トナーの結着樹脂を溶解または膨潤させることでトナーを軟化させてトナー像22を記録媒体P上に定着する。記録媒体Pとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紙、布、及び液体透過層を有するOHP用シートのようなプラスチックフィルムなど蛾用いられる。さらに、金属、樹脂、セラミックス等を用いてもよい。ただし、記録媒体Pは定着液に対し浸透性を有することが好ましく、記録媒体基板が液浸透性を持たない場合は、記録基板上に液浸透層を有する記録媒体が好ましい。記録媒体の形態もシート状に限定されず、平面及び曲面を有する立体物でもよい。例えば、紙等の記録媒体に透明樹脂微粒子を均一に定着させ紙面を保護する(所謂、ニスコート)用途においても、本発明は適用できる。
【0065】
次に、上記定着方式を採用する定着装置20について説明する。
図3は、定着装置の一例の構成を示す概略構成図である。この定着装置20は、定着液を生成する軟化剤液と起泡剤液とをそれぞれ独立に収容する軟化剤液密封容器31および起泡剤液密封容器32と、軟化剤液密封容器31、起泡剤液密封容器32から軟化剤液と起泡剤液とをそれぞれ搬送する液搬送ポンプ33a、bと、搬送された軟化剤液と起泡剤液を混合する液混合部34と、混合した液状定着液から、液中に気泡を分散させ泡を多く含む泡状定着液24を生成する泡状定着液生成手段と、生成された泡状定着液24を担持してトナー像を形成された記録媒体P上に塗布する塗布部材としての塗布ローラ21等を備えている。また、塗布ローラ21に担持された泡状定着液24の膜が所定の膜厚になるよう制御する膜厚制御用手段としての膜厚制御ブレード39と、塗布ローラ21に対向して所定の加圧力で加圧する加圧部材としての加圧ローラ23を備えている。
【0066】
ここで、トナー像を形成するトナー粒子の平均粒径が5μm〜10μm程度の場合、記録媒体P上のトナー像22を乱すことなく泡状定着液24をトナー像22に付与するために、泡状定着液24の泡径は5μm〜50μm程度が好ましい。一般的に、0.5mm〜1mm程度の大きな泡の場合、単なる撹拌等により比較的容易に泡を生成可能であり、大きな泡の生成には数秒以下の時間(0.1秒もかからない)で生成することができる。そこで、本発明者は、所望の泡径よりも大きな泡であって、目視で観察できる程度の大きさの泡の生成が容易で、且つ、すばやく得ることができる点に着目し、大きな泡から素早く5μm〜50μm程度の微小な泡を生成する方法を鋭意検討した。この結果、大きな泡にせん断力を加えることで大きな泡を分泡すると、液状態から微小な泡を起泡させる方法に比べ、極めて素早く所望の大きさの微小な泡を生成することができることを見出した。本実施形態の泡状定着液生成手段はこのような泡状定着液生成工程で、所望の大きさの微小な泡の生成を行っている。
【0067】
具体的には、定着装置20では、定着液を生成する軟化剤液は軟化剤液密封容器31に、起泡剤液は起泡剤液密封容器32にそれぞれ独立した状態で分離して保存されている。定着装置20の稼動時に、液搬送ポンプ33aにより軟化剤液密封容器31からの軟化剤液が、液体搬送ポンプ33bにより起泡剤液密封容器32からの起泡剤液が、所望の混合比となるように、それぞれ供給され、液混合部34にて混合される。液混合部34で混合された混合液はバブリング槽36では、混合液が到達するタイミングで空気ポンプ35を作動させ、混合液をバブリングし、大きな泡径の泡状定着液を生成する。このときの泡は目視でもわかるくらいの大きな泡である。生成した大きな泡は、泡にせん断力を加えて細かな泡とする小径泡状定着液生成手段37に送られて小さな泡径の泡状定着液を形成する。この小径泡状定着液生成手段37は2重の円筒部材を有し、内部の円筒部材が軸回転することで内部の円筒部材における外周面と外部の円筒部材における内周面とに発生するせん断力によって大きな泡から所望の泡径の小さな泡を生成するものである。このように、液体定着液から大きな泡径の泡状定着液を生成するバブリング槽36と、大きな泡径の泡状定着液から小さな泡径の泡状定着液を生成する小径泡状定着液生成手段37が、泡状定着液生成手段を構成している。
【0068】
生成された泡状定着液24は泡状定着液供給口38から、塗布ローラ21に密接した泡膜制御ブレード39と塗布ローラ21との密接部に供給され、塗布ローラ21上に所望の泡膜を形成する。塗布ローラ21とそれに対峙する加圧ローラ23との間を未定着トナー画像が形成された記録媒体Pの紙を通すことで、泡状定着液24の泡膜を未定着トナーに付与し、定着液中の軟化剤によりトナー樹脂が軟化し、加熱することなくトナー画像を記録媒体Pに定着する。
【0069】
泡状定着液24の嵩密度としては、0.01g/cm〜0.1g/cm程度の範囲が好ましい。更に、定着液塗布時に記録媒体面に残液感を生じないようにするためには、泡の密度として、0.01g/cm〜0.02g/cmが好ましく、0.02g/cm以下がより好ましい。これは、図3の塗布ローラ21のように、接触付与手段面の定着液の泡膜は、記録媒体P上のトナー層の厚み以上であることが必須条件で(微粒子層の隙間を泡状定着液で埋めるため)、おおよそ、泡膜厚みは、50μm〜80μmが好ましい。一方、記録媒体P面への定着液付着における残液感(ぬれたような感触)がないためには、定着液付着量として、0.1mg/cm以下が好ましい。このことから、泡の密度としては、0.01g/cm〜0.02g/cmの範囲が好ましく、0.02g/cm以下の泡の密度がより好ましい。
【0070】
なお、本構成の液搬送部、バブリング槽36や小径泡状定着液生成手段37では、起泡剤液と軟化剤液は混合しており、長期放置において軟化剤の化学的分解が起こる。従って、定着終了時もしくは定着開始時に、軟化剤液密封容器31および起泡剤液密封容器32から泡状定着液供給口38までの流路内の定着液は廃棄しておくことが望ましい。更に、廃棄により定着液が無駄に消費されるため、軟化剤液密封容器31および起泡剤液密封容器32から泡状定着液供給口38までの流路内の容積は極力小さいことが望ましい。
【0071】
また、起泡剤液と軟化剤液は、十分均一に混合されないと混合後の泡化の際に起泡性が悪くなり、泡状定着液の密度が所望の値よりも高くなり、泡膜形成ができなくなる恐れがある。更には、軟化剤が泡のプラトー境界にて不均一に分布し、定着が不均一になる恐れがある。混合時の液同士の均一性を高めるため、図3に示すように、液同士を混合する際に液混合部34で撹拌機構を別に設けることが望ましい。図3では、回転する撹拌羽根を混合容器内に組み込み、泡化バブリングを行う前に十分に起泡剤液と軟化剤液を撹拌して均一に混合する構成とした。そのほかの撹拌の仕方としては、超音波振動、流路だけの液混合部を設けることもなどが望ましい。また、バブリング槽36で攪拌とバブリングの振動で起泡剤液と軟化剤液を混合する構成もよい。つまり、起泡剤液と軟化剤液の混合液部34と泡化バブリングを発生させる泡化バブリング部を共通とし、その混合泡化バブリング部に回転する撹拌羽根などの撹拌機構を設けている。まず、液同士を撹拌羽根で撹拌し、撹拌しながら空気ポンプより空気を送りこむことで液をバブリングして定着液を泡化する。こうすることで、起泡性を損なうことなく、泡化しながら泡のプラトー境界で軟化剤を均一にすることができる。
【0072】
また、大きな泡を生成した後大きな泡を分割して2つ以上に分泡化するために、大きな泡にせん断力を加えるための小径泡状定着液生成手段37は、閉じた二重円筒で、内側円筒が回可能な構成である。この外部円筒の一部より、大きな泡状定着液を供給し、内部の回転する円筒と外部円筒の隙間(ここが流路となる)を通過しながら、回転円筒によりせん断力を受ける。このせん断力により、大きな泡は微小な泡へと変化し、外側円筒に設けられた泡の出口より、所望の微小な泡径を有する泡状定着液を得ることができる。また、内側円筒にらせん状の溝を設けて、円筒内での液搬送能力を高くしてもよい。
【0073】
このように、液状定着液を大きな泡径を有する液へと変化させるバブリング槽36と、大きな泡にせん断力を加えて微小な泡を生成する小径泡状定着液生成手段37を組み合わせることで、液状定着液を極めて短時間に5μm〜50μmの微小な泡径を有する泡状定着液24を生成させることができる。
【0074】
そして、泡膜厚制御ブレード39の位置で制御され、泡状起泡剤液24の気泡の大きさ、泡粘度及び塗布加圧力並びに未定着トナーの層厚に応じた泡状定着液の未定着トナー層での浸透時間に対して最適化した泡状定着液の膜厚となる。
【0075】
軟化剤液密封容器31または起泡剤液密封容器32から軟化剤液または起泡剤液を泡化する機構に搬送する手段としては、図3では液搬送ポンプ33a,bを用いている。搬送ポンプ33a、bとしては、ギヤポンプ、ベローズポンプ等があるが、チューブポンプが好ましい。ギヤポンプ等ごとく定着液中で振動機構や回転機構があると、ポンプ内で液が起泡し、液に圧縮性が出て、搬送能力が低下する恐れがある。また、上記の機構部品等が定着液を汚染したり、逆に機構部品を劣化したりさせる恐れがある。一方、チューブポンプは、チューブ内の液を、チューブを変形させながら押し出す機構であるため、定着液と接する部材はチューブだけであり、定着液に対し耐液性を有する部材を用いることで、液の汚染やポンプ系部品の劣化がない。また、チューブを変形させるだけなので、液が起泡せず、搬送能力の低下を防止できる。
【0076】
また、加圧ローラ23は弾性層としてスポンジ素材を用いて構成した。ここで、泡状定着液24がトナー等の樹脂微粒子層を浸透して紙等の記録媒体Pまで到達した後に塗布ローラ21と樹脂微粒子層が剥離するようにニップ時間のタイミングを取る必要がある。このため、ニップ時間として50ミリ秒〜300ミリ秒の範囲を確保するため、弱い加圧力で大きく変形可能なスポンジ部材を用いた。
【0077】
なお、ニップ時間は、ニップ時間=ニップ幅/紙の搬送速度により算出される。記録媒体Pの搬送速度は、紙搬送駆動機構の設計データにより求めることができる。ニップ幅は、塗布ローラ21全面に乾燥しない着色塗料を薄くつけて、記録媒体Pを塗布ローラ21及び対峙する加圧ローラ23に挟んで加圧(ローラは回転させない状態で)し、記録媒体に着色塗料を付着させ、着色部(通常長方形の形に着色)における紙搬送方向の長さをニップ幅として測定することで求めることができる。
【0078】
記録媒体Pの搬送速度に応じて、ニップ幅を調製することでニップ時間を泡状定着液のトナー層浸透時間と同じかそれ以上にする必要がある。図3に示す例では、加圧ローラ23を弾性層として弾性多孔質体(以下、スポンジと称することがある)とすることで、記録媒体Pの搬送速度に応じて、塗布ローラ21と加圧ローラ23の軸間距離を変更しニップ幅を変えることが容易となる。加圧ローラ23をスポンジの代わりに弾性ゴムも適するが、スポンジは弾性ゴムよりも弱い力で変形させることが可能であり、塗布ローラ21の加圧力を過剰に高くすることなく長いニップ幅を確保することができる。
【0079】
なお、定着液中には樹脂軟化又は膨潤剤が含有されており、スポンジ素材で形成された加圧ローラ23に定着液が万が一付着した場合、スポンジ素材が軟化等の不具合が発生する恐れがあるため、スポンジ素材の樹脂材は、軟化又は膨潤剤に対し軟化や膨潤を示さない素材が好ましい。また、スポンジ素材を用いた加圧ローラは、可とう性フィルムで覆った構成であってもよい。スポンジ素材が軟化又は膨潤剤で劣化する素材であっても、軟化又は膨潤剤により軟化や膨潤を示さない可とう性フィルムで覆うことでスポンジローラの劣化を防止することができる。スポンジ素材としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドなどの樹脂の多孔質体などが適する。また、スポンジを覆う可とう性フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、四フッ化エチレン・パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などが適する。塗布ローラ21とスポンジ素材を用いた加圧ローラ23が常時接触している構成の場合、記録媒体が搬送されていない時に塗布ローラ21上の泡状定着液が加圧ローラ23に付着し汚す恐れがあり、その防止のため、紙先端検知手段を塗布ローラ21へ記録媒体が搬送される手前に設け、先端検知信号に応じて、記録媒体の先端から後方にのみ泡状定着液が塗布されるようなタイミングで塗布ローラ21に泡状定着液を形成することが好ましい。また、待機時は塗布ローラ21とスポンジ素材を用いた加圧ローラ23はそれぞれ離れており、図示していない駆動機構により、塗布時のみ、記録媒体の先端検知手段に応じて塗布ローラ21とスポンジ素材を用いた加圧ローラ23を接触させる構成も好ましい。更に、記録媒体の後端検知も行い、記録媒体の後端検知信号に応じて塗布ローラ21とスポンジ素材を用いた加圧ローラ23を離すことが好ましい。
【0080】
加圧ローラ23の代わりに加圧ベルトを用いることもでき、加圧ベルトとしては、例えばシームレスニッケルベルト、シームレスPETファイルなどの基体にPFAのような離型性フッ素樹脂をコートした部材を用いることが好ましい。塗布ローラ21の代わりに塗布ベルトを用いることもでき、従って、ベルトを用いる構成は、塗布ローラはベルトで、加圧手段をベルトではなく、ローラとする構成も好ましい。また、塗布側又は加圧側の少なくとも一方をベルトとする構成とすることもできる。これらベルトで構成されることでニップ幅を容易に広くすることが可能となり、紙にしわが発生するような無理な力をかけることもなく、ニップ時間が同じだとすると紙の搬送速度を速くすることが可能となり、高速定着が可能となる。
【0081】
また、定着装置20は、本実施形態における定着液をトナーに供給した後、トナーに含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させる軟化剤によって溶解または膨潤したトナーを加圧する、一対の平滑化ローラ(ハードローラ)を有してもよい。一対の平滑化ローラ(ハードローラ)によって、溶解または膨潤したトナーを加圧することによって、溶解または膨潤したトナーの層の表面を平滑化して、トナーに光沢を付与することが可能となる。更に、記録媒体P内へ溶解または膨潤したトナーを押し込むことによって、記録媒体Pに対するトナーの定着性を向上させることができる。
【0082】
次に、上記定着方式を用いる画像形成方法、および、これに用いた画像形成装置について説明する。
本実施形態の画像形成方法は、静電潜像形成工程と、現像工程と、転写工程と、定着工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、除電工程、クリーニング工程、リサイクル工程、制御工程等を含む。
また、本実施形態の画像形成装置は、静電潜像担持体と、静電潜像形成手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段、クリーニング手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなる。
本実施形態の画像形成方法は、本実施形態の画像形成装置により好適に実施することができ、静電潜像形成工程は静電潜像形成手段により行うことができ、現像工程は現像手段により行うことができ、転写工程は転写手段により行うことができ、定着工程は定着手段により行うことができ、再帯電工程は再帯電手段により行うことができ、その他の工程はその他の手段により行うことができる。
【0083】
静電潜像形成工程は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程である。静電潜像担持体(以下、「電子写真感光体」、「感光体」、「像担持体」と称することがある)としては、その材質、形状、構造、大きさ、等について特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、その形状としてはドラム状が好適に挙げられ、その材質としては、例えばアモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体、などが挙げられる。これらの中でも、長寿命性の点でアモルファスシリコン等が好ましい。
【0084】
静電潜像の形成は、例えば、静電潜像担持体の表面を一様に帯電させた後、像様に露光することにより行うことができ、静電潜像形成手段により行うことができる。静電潜像形成手段は、例えば、静電潜像担持体の表面を一様に帯電させる帯電器と、静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光器とを少なくとも備える。帯電は、例えば、帯電器を用いて静電潜像担持体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。帯電器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器、などが挙げられる。露光は、例えば、露光器を用いて静電潜像担持体の表面を像様に露光することにより行うことができる。露光器としては、帯電器により帯電された静電潜像担持体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、液晶シャッタ光学系、などの各種露光器が挙げられる。
なお、静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0085】
現像工程は、静電潜像を、トナーを用いて現像して可視像を形成する工程である。可視像の形成は、例えば、静電潜像をトナーを用いて現像することにより行うことができ、現像手段により行うことができる。現像手段は、例えば、トナーを用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、トナーを収容し、静電潜像に該トナーを接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適に挙げられ、トナー入り容器を備えた現像器などがより好ましい。現像器は、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよく、また、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよく、例えば、トナーを摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラとを有してなるもの、などが好適に挙げられる。現像器内では、例えば、トナーとキャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦によりトナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。マグネットローラは、静電潜像担持体(感光体)近傍に配置されているため、マグネットローラの表面に形成された磁気ブラシを構成するトナーの一部は、電気的な吸引力によって静電潜像担持体(感光体)の表面に移動する。その結果、静電潜像が該トナーにより現像されて静電潜像担持体(感光体)の表面にトナーによる可視像が形成される。
【0086】
転写工程は、可視像を記録媒体に転写する工程であるが、中間転写体を用い、中間転写体上に可視像を一次転写した後、可視像を記録媒体上に二次転写する態様が好ましく、トナーとして二色以上、好ましくはフルカラートナーを用い、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写工程と、複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写工程とを含む態様がより好ましい。転写は、例えば、可視像を転写帯電器を用いて静電潜像担持体(感光体)を帯電することにより行うことができ、転写手段により行うことができる。転写手段としては、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。なお、中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルト等が好適に挙げられる。転写手段(第一次転写手段、第二次転写手段)は、静電潜像担持体(感光体)上に形成された可視像を記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。転写手段は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、などが挙げられる。
なお、記録媒体としては、特に制限はなく、公知の記録媒体(記録紙)の中から適宜選択することができる。
【0087】
定着工程は、記録媒体に転写された転写像を定着させる工程であり、本実施形態の定着方法により行われる。定着手段は、記録媒体に転写された転写像を定着させる手段であり、本実施形態の定着装置を用いて行われる。
【0088】
除電工程は、静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加して除電を行う工程であり、除電手段により好適に行うことができる。除電手段としては、特に制限はなく、静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が好適に挙げられる。
【0089】
クリーニング工程は、静電潜像担持体上に残留するトナーを除去する工程であり、クリーニング手段により好適に行うことができる。クリーニング手段としては、特に制限はなく、静電潜像担持体上に残留する電子写真トナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が好適に挙げられる。
【0090】
リサイクル工程は、クリーニング工程により除去したトナーを現像手段にリサイクルさせる工程であり、リサイクル手段により好適に行うことができる。リサイクル手段としては、特に制限はなく、公知の搬送手段等が挙げられる。
【0091】
制御工程は、各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。制御手段としては、各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0092】
このような画像形成方法を用いて、樹脂微粒子からなるトナーの画像を記録媒体に形成する。以下、具体的な画像形成装置の構成例を図4、5に基づき説明する。
【0093】
図4は、本実施形態に係る画像形成装置の一例である、タンデム式のカラー画像形成装置の全体概略構成図である。画像形成装置は、イエロー(Y)、シアン(M)、マゼンタ(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成するための4つの画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kを備える。尚、Y、M、C、Kの色順は、図1に限るものでなく、他の並び順であっても構わない。画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kは、それぞれ、像担持体としての感光体ドラム2Y、2M、2C、2Kを備えている。また、各画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kの配置は、各感光体ドラムの回転軸が平行になるように且つ記録媒体移動方向に所定のピッチで配列するように、設定されている。
【0094】
画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kの上方には、画像データに基づいて各感光体ドラム2Y、2M、2C、2Kの表面にレーザー光を走査しながら照射する光書込ユニット(不図示)が配置されている。また、画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kの下方には各画像形成ユニットのトナー像を重ね合わせて転写するように搬送する中間転写ベルト4を有する一次転写ユニット5が配置されている。中間転写ベルト4は、3つの支持ローラ8,9,10に張架されており、図中の矢印Aの方向に回転する。中間転写ベルト4の内周部には、各感光体ドラム2Y、2M、2C、2Kと対向するよう一次転写ローラ17Y、17M、17C、17Kが配置されている。また、1次転写ローラ17Y、17M、17C、17Kより下流の中間転写ベルト4の外周面には、ベルトクリーニング手段6が接触するように配置されている。このベルトクリーニング装置6により中間転写ベルト4上に付着したトナー等の異物が除去される。一次転写ユニット5の下方には、記録媒体Pにトナー像を転写する二次転写手段7が配置されている。二次転写手段7は、2つの支持ローラの間に張架された二次転写ベルトで構成されている。なお、二次転写手段7としては、転写ベルト以外に転写ローラを用いてもよい。二次転写手段7の左方には上述の定着装置20が配置されている。また、画像形成装置下部には、記録媒体Pが載置された給紙カセット(不図示)を備えている。
【0095】
図5は、画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kの一つの画像形成ユニット1の概略構成図である。4つの画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kは、使用するトナーの色が異なる点以外は、ほぼ同一の構成であるため、各符号の色を示す添え字Y、M、C、Kは省略して説明する。図5に示すように、画像形成ユニット2は、感光体2の周囲に、帯電手段13、現像手段12、クリーニング手段14、除電手段11等を備えている。帯電手段13は、帯電ローラを採用した接触帯電方式の帯電手段である。帯電ローラを感光体ドラム2に接触させて電圧を印加することにより、感光体ドラム2の表面を一様に帯電する。現像手段12は、各色に対応するトナーが収容されており、図示しない攪拌部及び現像部を有している。なお、現像手段12は、現像に使用されなかった現像剤を、攪拌部に戻し、再利用する。攪拌部におけるトナーの濃度は、トナー濃度センサによって検出され、トナーの濃度が、一定であるように制御されている。クリーニング手段14は、感光体ドラム2に押し当てられる先端を備えたブレードを備えている。クリーニング手段14によって回収されたトナーは、図示しない回収スクリュー及びトナーリサイクル装置によって、現像手段12に回収され、再利用してもよい。除電手段11は、ランプで構成されており、光を照射して感光体ドラム2の表面電位を初期化する。
【0096】
次に、画像形成装置の動作について説明する。
先ず、帯電手段13により感光体ドラム2表面を帯電する。所定の電位に帯電した感光体ドラム2表面には、引き続いて光書込ユニット(不図示)により画像データに基づくレーザー光Lが走査され、静電潜像が書き込まれる。静電潜像を担持した感光体ドラム2表面が現像手段12に到達すると、各感光体ドラム2表面の静電潜像にトナーが供給されて、トナー像が形成される。
【0097】
上記の動作が各画像形成ユニット1Y、1M、1C、1K、全てに同様にして所定のタイミングで行われ、感光体ドラム2Y、2M、2C、2K表面にはそれぞれ所定の色のトナー像が形成される。画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kの画像形成動作タイミングで中間転写ベルト4上に、各感光体ドラム2上のトナー像を順次転写していく。このトナー像の転写は、中間転写ベルト4を挟んで各感光体ドラム2Y、2M、2C、2Kと対向配置されている一次転写ローラ17Y、17M、17C、17Kにより行われる。
【0098】
記録媒体Pは、給紙カセット(不図示)から搬送され、レジストローラ15に到達したところで一端停止する。前述の画像形成動作タイミングに合せて、記録媒体Pはレジストローラ15より二次転写手段7へ搬送される。
【0099】
二次転写手段7は中間転写ベルト4に接触して一次転写ユニット5に対向配置されている。二次転写手段の二次転写ベルトは、搬送された記録媒体Pを中間転写ベルト4に押し当てることによって、トナー像の転写を行う。トナー像が転写された記録媒体Pは、二次転写ベルトによって定着装置20へ搬送される。
【0100】
定着装置20は、上述のように、収容した軟化剤液、起泡剤液から泡状定着液を生成し、トナー像が転写された記録媒体P上に塗布して、トナー像の定着を行う。すなわち、記録媒体Pに転写された未定着のトナー像は、塗布される泡状定着液に含まれる、トナーに含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させる軟化剤によって、未定着のトナー像を、記録媒体Pに定着させる。トナー像が定着された記録媒体Pは機外に排出される。
【0101】
次に、本実施形態の定着液処方、及び、その定着液を用いた定着特性について具体例に基づき説明する。
【0102】
泡状定着液を生成するために、下記2種類の処方の軟化剤液を作成した。
【0103】
(軟化剤液1の作製)
液体軟化剤:コハク酸ジエトキシエトキシエチル 50wt%
pH調整剤:乳酸ナトリウム 0.15wt%
pH調整剤:乳酸 0.08wt%
溶解助剤 :トリプロピレングリコール 5wt%
希釈液 :イオン交換水 44.8wt%
ここで、コハク酸ジエトキシエトキシエチルはクローダジャパン株式会社製を、乳酸ナトリウムは関東化学株式会社製を、乳酸は関東化学株式会社製を、トリプロピレングリコールは旭硝子株式会社製を用いた。
【0104】
(軟化剤液2の作製)
液体軟化剤:トリエチレングリコールジアセタート 50wt%
pH調整剤:乳酸Na 0.15wt%
pH調整剤:乳酸 0.08wt%
溶解助剤 :トリプロピレングリコール 5wt%
希釈液 :イオン交換水 44.8wt%
ここで、トリエチレングリコールジアセタートは東京化成株式会社製を、乳酸ナトリウムは関東化学株式会社製を、乳酸は関東化学株式会社製を、トリプロピレングリコールは旭硝子株式会社製を用いた。
【0105】
泡状定着液を生成するために、下記5種類の処方の起泡剤液を作成した。
【0106】
(起泡剤液1の作製)
増泡剤 :ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型 0.5wt%
起泡剤 :パルミチン酸アミン 2.5wt%
:ミリスチン酸アミン 1.5wt%
:ステアリン酸アミン 0.5wt%
固体軟化剤:ポリエチレングリコール 10wt%
軟化助剤 :カンファースルホン酸ナトリウム 5wt%
希釈媒 :イオン交換水 79wt%
上記の液を混合し、ジエタノ−ルアミンをごく少量添加してpHが9となるように調整した。
ここで、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型は松本油脂製マーポンMMを、パルミチン酸は関東化学株式会社製を、ミリスチン酸は関東化学株式会社製を、ステアリン酸は関東化学株式会社製を、ポリエチレングリコールは関東化学株式会社製PEG4000を、カンファースルホン酸ナトリウムは和光純薬工業株式会社製を用いた。
【0107】
(起泡剤液2の作製)
増泡剤 :ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型 0.5wt%
起泡剤 :パルミチン酸アミン 2.5wt%
:ミリスチン酸アミン 1.5wt%
:ステアリン酸アミン 0.5wt%
固体軟化剤:ポリエチレングリコール 10wt%
軟化助剤 :p-アミノベンゼンスルホン酸ナトリウム 5wt%
希釈媒 :イオン交換水 79wt%
上記の液を混合し、ジエタノ−ルアミンをごく少量添加してpHが9となるように調整した。
ここで、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型は松本油脂製マーポンMMを、パルミチン酸は関東化学株式会社製を、ミリスチン酸は関東化学株式会社製を、ステアリン酸は関東化学株式会社製を、ポリエチレングリコールは関東化学株式会社製PEG4000を、p-アミノベンゼンスルホン酸ナトリウムは和光純薬工業株式会社製を用いた。
【0108】
(起泡剤液3の作製)
増泡剤 :ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型 0.5wt%
起泡剤 :パルミチン酸アミン 2.5wt%
:ミリスチン酸アミン 1.5wt%
:ステアリン酸アミン 0.5wt%
固体軟化剤:ポリエチレングリコール 10wt%
軟化助剤 :酢酸ナトリウム 5wt%
希釈媒 :イオン交換水 79wt%
上記の液を混合し、ジエタノ−ルアミンをごく少量添加してpHが9となるように調整した。
ここで、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型は松本油脂製マーポンMMを、パルミチン酸は関東化学株式会社製を、ミリスチン酸は関東化学株式会社製を、ステアリン酸は関東化学株式会社製を、ポリエチレングリコールは関東化学株式会社製PEG4000を、酢酸ナトリウムは和光純薬工業株式会社製を用いた。
【0109】
(起泡剤液4の作製)
増泡剤 :ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型 0.5wt%
起泡剤 :パルミチン酸アミン 2.5wt%
:ミリスチン酸アミン 1.5wt%
:ステアリン酸アミン 0.5wt%
固体軟化剤:ポリエチレングリコール 10wt%
軟化助剤 :安息香酸ナトリウム 5wt%
希釈媒 :イオン交換水 79wt%
上記の液を混合し、ジエタノ−ルアミンをごく少量添加してpHが9となるように調整した。
ここで、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型は松本油脂製マーポンMMを、パルミチン酸は関東化学株式会社製を、ミリスチン酸は関東化学株式会社製を、ステアリン酸は関東化学株式会社製を、ポリエチレングリコールは関東化学株式会社製PEG4000を、安息香酸ナトリウムは和光純薬工業株式会社製を用いた。
【0110】
(起泡剤液5の作製)
増泡剤 :ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型 0.5wt%
起泡剤 :パルミチン酸アミン 2.5wt%
:ミリスチン酸アミン 1.5wt%
:ステアリン酸アミン 0.5wt%
固体軟化剤:ポリエチレングリコール 10wt%
希釈媒 :イオン交換水 84wt%
上記の液を混合し、ジエタノ−ルアミンをごく少量添加してpHが9となるように調整した。
ここで、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型は松本油脂製マーポンMMを、パルミチン酸は関東化学株式会社製を、ミリスチン酸は関東化学株式会社製を、ステアリン酸は関東化学株式会社製を、ポリエチレングリコールは関東化学株式会社製PEG4000を用いた。
【0111】
上記軟化剤液1,2、および、起泡剤液1,2,3,4,5をそれぞれアルミ蒸着ポリエチレン樹脂製の容器に入れて保管した。
【0112】
なお、上記具体例では、固体軟化剤としてのポリエチレングリコールは水溶性であり、溶媒に溶解しやすくするため、起泡剤液側に含有している。また、軟化助剤は、軟化剤液側に含有させると、液体軟化剤の加水分解を促進し軟化剤液の保存安定性が低下してしまう虞があるため、起泡剤液側に含有している。
【0113】
(軟化剤液と起泡剤液の混合及び泡状定着液生成)
次に、上記軟化剤液1,2、および、起泡剤液1,2,3,4,5を用いて、図3に示す泡状定着液生成手段により、泡状定着液を生成した。具体的には、軟化剤液入りの容器、起泡剤液入りの容器それぞれにシリコーンゴム製の供給パイプをつなぎ、各々の供給パイプを液搬送ポンプ33a、bに接続して、バブリング槽36へと接続した。各々の液搬送ポンプ33a、bの流量を、軟化剤液は2mL/分、起泡剤液は3mL/分と設定し、6秒間ポンプを駆動して、バブリング槽36へ供給した。この動作によりバブリング槽36内に軟化剤を約20wt%含有した定着液0.5mLが供給されたことになる。6秒間チューブポンプを作動後停止し、ダイヤフラム型エアーポンプを作動して、バブリング槽36内でバブリングにより軟化剤液と起泡剤液を撹拌しながら泡化して大泡の定着液とした。
【0114】
図3に図示した2重円筒の内側円筒は、回転軸に固定され、図示していない回転駆動モーターにより回転する。2重円筒の材質は、PET樹脂とした。外側円筒内径:10mm・長さ120mm、内側円筒外形:8mm・長さ100mmとした。回転数は、1000rpmから2000rpmの範囲で可変とした。この円筒内に大泡状態の定着液を供給し、フォーム状定着液を作製した。
【0115】
(泡状定着液の付与)
図3にしめす定着装置20で、作製した泡状定着液24を塗布ローラ21に供給する。塗布ローラ21は、PFA樹脂を焼付け塗装したSUS製ローラ(直径30mm)で、線速300mm/sで回転する。膜厚制御ブレードは、アルミ合金製支持板に厚み1mmの並板ガラスを接着したもので、ガラス面を塗布ローラ21側に向け、10μmから100μmの範囲で塗布ローラとガラス面の隙間を制御できるようにした。加圧ローラ23は、アルミ合金製ローラ(直径10mm)を芯金とし、外径50mmのポリウレタンフォーム材(イノアック社商品名「カラーフォームEMO」)を形成したスポンジローラを用いた。そして、紙搬送速度が300mm/sとなるように回転駆動した。
【0116】
(未定着トナー画像の作成)
電子写真方式のカラー複写機(リコー社製 CX2500)を用い、シアン色トナー層とイエロー色トナー層からなる全面ベタ画像(シアントナー層の上にイエロートナー層)の未定着トナーのカラー画像が形成されたPPC用紙(リコーT−6200)を作製した。トナー付着量はそれぞれ0.45mg/cmと設定した。
【0117】
以下、上記軟化剤液1,2、および、起泡剤液1,2,3,4,5を用いて作成した定着液実施例1〜10、比較例1〜3を用いて、上述のように形成された未定着トナー画像に定着させる実験をおこない、その定着画像の定着特性について検討した。
【0118】
実施例1:軟化剤液1と起泡剤液1を用いて泡密度を0.01g/cmとなるよう調整した。
実施例2:軟化剤液1と起泡剤液1を用いて泡密度を0.02g/cmとなるよう調整した。
実施例3:軟化剤液1と起泡剤液1を用いて泡密度を0.1g/cmとなるよう調整した。
実施例4:軟化剤液1と起泡剤液2を用いて泡密度を0.02g/cmとなるよう調整した。
実施例5:軟化剤液1と起泡剤液3を用いて泡密度を0.02g/cmとなるよう調整した。
実施例6:軟化剤液1と起泡剤液4を用いて泡密度を0.02g/cmとなるよう調整した。
実施例7:軟化剤液2と起泡剤液1を用いて泡密度を0.02g/cmとなるよう調整した。実施例8:軟化剤液2と起泡剤液2を用いて泡密度を0.02g/cmとなるよう調整した。実施例9:軟化剤液2と起泡剤液3を用いて泡密度を0.02g/cmとなるよう調整した。実施例10:軟化剤液2と起泡剤液4を用いて泡密度を0.02g/cmとなるよう調整した。
【0119】
比較例1〜3として、軟化剤液と、軟化助剤を含まない起泡剤液5とを用いて泡状定着液を作製した。
比較例1:軟化剤液1と起泡剤液5を用いて泡密度を0.01g/cmとなるよう調整した。
比較例2:軟化剤液1と起泡剤液5を用いて泡密度を0.1g/cmとなるよう調整した。
比較例3:軟化剤液2と起泡剤液5を用いて泡密度を0.01g/cmとなるよう調整した。
【0120】
定着液塗布量は、定着液塗布後の重量増加分を電子天秤で測定した。
【0121】
定着画像の定着性を下記基準で評価した。
〔評価基準〕
定着後のトナーを布で擦り、大部分のトナーが紙から取れる状態 :××
定着後のトナーを布で擦り、一部のトナーが紙から取れる状態 :×
定着後のトナーを布で擦り、布がほとんど汚れない状態 :○(定着性良好)
【0122】
定着画像の色再現性を下記基準で評価した。
画像の色再現性を分光測色計(X−Rite社製 938 Spectrodensitometer)を用いて評価した。140℃熱定着画像をリファレンスとし、下記ΔEを基準として評価した。
〔評価基準〕
L*a*b*表色系において、 ΔEa*b*>5 : ××
L*a*b*表色系において、3<ΔEa*b*≦5 : ×
L*a*b*表色系において、 ΔEa*b*≦3 : ○
【0123】
定着画像の記録媒体上トナーのタック性をタッキネステスタ(株式会社レスカ製)を用いて評価した。定着性評価と同様のサンプルにおいて、泡状定着液塗布後の画像部(記録媒体上トナー)に円柱形ステンレスプローブ(φ8.0mm)を圧縮荷重100gfで20sec押付けた後、120mm/minの速度で引抜き、引抜き時にかかる応力を測定し、下記評価基準で評価した。
〔評価基準〕
0.0 〜 4.0 kPa :○(非画像部と同等、又はタックほぼ無し)
4.1 〜10.0 kPa :×(タック小)
10.1 kPa 以上 :××(タック大)
【0124】
上記実施例1〜10、比較例1〜3の定着液塗布量と、定着画像の定着性、色再現性、タック性の評価結果を表1に示す。
【表1】

【0125】
表1より、実施例1〜10で示した結果は定着性、色再現性、タック性全てを満足する結果が得られた。一方、比較例1〜3で示した結果はいずれかの結果が基準を満たしていないことがわかる。これは、本実施形態の定着液に含まれる軟化助剤により、少量の定着液塗布量であっても安定して良好な定着性及び色再現性を示し、多めの定着液塗布量であってもタック性の発生を抑えていることを示している。すなわち、本実施形態の定着液の構成を用いれば、トナー画像を乱すことなく極微量の定着液を均一に塗布しつつ、定着性と色再現性が良好な画像を得る定着方法及び画像形成装置を提供することが可能であることを示している。
【0126】
以上、本実施形態においては、泡状定着液を塗布する構成の定着装置を用いて、本発明を説明した。しかし、泡状定着液膜を塗布する構成に限らず、定着液を液状のまま塗布する構成でも、他の定着液付与手段で定着液を付与する構成でも、適用可能であり、定着液のトナーを軟化させる能力を向上させる効果が得られ、定着特性や色再現性の安定化や高速対応等に有効である。
【0127】
以上、本実施形態によれば、結着樹脂を含有するトナー中の結着樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させることでトナーを軟化させる軟化剤を含有した定着液を記録媒体P上のトナーに付与してトナーを記録媒体Pに定着させる定着方法において、トナーの結着樹脂として少なくともポリエステル樹脂を用い、且つ、定着液に有機スルホン酸、有機カルボン酸、または、これらの金属塩の何れかを含有したものを用いる。定着液に含有した有機スルホン酸、有機カルボン酸、または、これらの金属塩が、トナーの結着樹脂を軟化剤に溶解または膨潤し易くする、いわゆる、軟化助剤として作用する。詳しくは、有機スルホン酸、有機カルボン酸、または、これらの金属塩が、トナーの結着樹脂であるポリエステル樹脂のエステル結合を攻撃して切断することで、結着樹脂を短分子化すると考えられる。結着樹脂は短分子化するほど軟化剤に溶解または膨潤し易くなるため、定着液のトナーを軟化させる能力が向上する。このような有機スルホン酸、有機カルボン酸、または、これらの金属塩は、それ自体でトナーの結着樹脂であるポリエステル樹脂を軟化させる能力は低いが、ポリエステル樹脂を短分子化して軟化剤の作用を助ける軟化助剤としての機能を有する。また、後述する実験で示すように、有機スルホン酸、有機カルボン酸、または、これらの金属塩は、少量の添加でトナーを軟化させる能力を向上させることができた。これは、軟化剤自体を多量に加えてトナーを軟化させる能力が向上させるものに比べて、定着液としてのコストを抑えることができる。
また、本実施形態によれば、定着液は、液状の定着液を泡状とする起泡剤と、水を含む希釈剤とを含み、定着液に含有した有機スルホン酸、有機カルボン酸化合物、または、これらの金属塩が希釈液に可溶でその溶液がアルカリ性である。定着液が起泡剤を含むことにより、泡状定着液を生成することが可能となり、泡状定着液を用いて、定着液の微量塗布とトナーオフセットの抑制の両立が可能となる。また、有機スルホン酸、有機カルボン酸化合物、または、これらの金属塩が希釈剤に可溶であることで、定着液への混合が容易であり、その溶液がアルカリ性であるため、起泡剤による定着液の泡状化を阻害する虞がない。
また、本実施形態によれば、少なくとも軟化剤を含む軟化剤液を酸性を示すpHに調整し、少なくとも起泡剤と希釈剤と有機スルホン酸、有機カルボン酸化合物、または、これらの金属塩とを含む起泡剤液をアルカリ性を示すpHに調整してそれぞれ独立に収容し、軟化剤液と起泡剤液とを混合して、記録媒体P上のトナーに付与する定着液を生成する。これにより、起泡性を損なうことなく、定着液の保存安定性を向上させることができる。
また、本実施形態によれば、上記定着液を泡状化して泡状定着液を生成する泡状定着液生成工程と、泡状定着液を泡状定着液付与手段の接触面上に所望の厚みに形成する膜厚調整工程と、所望の厚みに形成された泡状定着液を記録媒体上に形成されたトナーに付与する泡状定着液付与工程とを有する。これにより、定着液の微量塗布とトナーオフセットの抑制の両立が可能で、良好な定着特性や色再現性を得ることができる。
また、本実施形態によれば、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、該静電潜像を、少なくとも樹脂微粒子を含有するトナーにより現像してトナー像を形成する現像工程と、トナー像を記録媒体上に転写する転写工程と、記録媒体に転写されたトナー像を定着させる定着工程とを有する画像形成方法であって、上記定着工程を上記定着方法によりおこなう。これにより、定着応答性が良く、安定して定着特性による画質劣化のない良好な画像が得られる。
また、感光体2上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、潜像担持体上の静電潜像をトナー像化する現像手段12と、感光体2上のトナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、記録媒体上に転写されたトナー像を定着させる定着手段とを有する画像形成装置であって、定着手段は上記定着装置20を用いる。これにより、定着応答性が良く、安定して定着特性による画質劣化のない良好な画像が得られる。
【符号の説明】
【0128】
1(1Y,1C,1M,1K) 画像形成ユニット
2(2Y,2C,2M,2K) 感光体
4 中間転写ベルト
5 1次転写手段
7 二次転写装置
12 現像手段
13 帯電手段
17 1次転写手段
20 定着装置
21 塗布ローラ
22 トナー像
23 加圧ローラ
24 泡状定着液
31 軟化剤液密封容器、
32 起泡剤液密封容器
33a,b 液搬送ポンプ
34 液混合部
35 空気ポンプ、
36 バブリング槽
37 小径泡状定着液生成手段
38 泡状定着液供給口
39 膜厚制御ブレード
P 記録媒体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0129】
【特許文献1】特許第4302700号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂を含有するトナー中の結着樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させることでトナーを軟化させる軟化剤を含有した定着液を記録媒体上のトナーに付与して該トナーを該記録媒体に定着させる定着方法において、
上記トナーの結着樹脂として少なくともポリエステル樹脂を用い、且つ、該定着液に有機スルホン酸、有機カルボン酸、または、これらの金属塩の何れかを含有したものを用いたことを特徴とする定着方法。
【請求項2】
請求項1の定着方法において、上記定着液は、液状の定着液を泡状とする起泡剤と、水を含む希釈剤とを含み、該定着液に含有した有機スルホン酸、有機カルボン酸化合物、または、これらの金属塩が該希釈液に可溶でその溶液がアルカリ性であることを特徴とする定着方法。
【請求項3】
請求項2の定着方法において、少なくとも軟化剤を含む軟化剤液を酸性を示すpHに調整し、少なくとも起泡剤と希釈剤と有機スルホン酸、有機カルボン酸化合物、または、これらの金属塩とを含む起泡剤液をアルカリ性を示すpHに調整してそれぞれ独立に収容し、該軟化剤液と該起泡剤液とを混合して、上記記録媒体上のトナーに付与する定着液を生成することを特徴とする定着方法。
【請求項4】
請求項1、2または3の何れかの定着方法において、上記定着液を泡状化して泡状定着液を生成する泡状定着液生成工程と、該泡状定着液を泡状定着液付与手段の接触面上に所望の厚みに形成する膜厚調整工程と、該所望の厚みに形成された泡状定着液を記録媒体上に形成されたトナーに付与する泡状定着液付与工程とを有することを特徴とする定着方法。
【請求項5】
静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、該静電潜像を、少なくとも樹脂微粒子を含有するトナーにより現像してトナー像を形成する現像工程と、該トナー像を記録媒体上に転写する転写工程と、該記録媒体に転写されたトナー像を定着させる定着工程とを有する画像形成方法において、上記定着工程が請求項1、2、3または4の何れかの定着方法により行われることを特徴とする画像形成方法。
【請求項6】
静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、潜像担持体上の静電潜像をトナー像化する現像手段と、該潜像担持体上のトナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、該記録媒体上に転写されたトナー像を定着させる定着手段とを有する画像形成装置において、上記定着手段は請求項1、2、3または4の何れかの定着方法により行われることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−42644(P2012−42644A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182888(P2010−182888)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】