説明

定着用部材

【課題】 フッ素樹脂離型層の熱伝導性が改善され、もって、複写機やプリンターのウォームアップ時間の短縮を可能とした定着用部材を提供すること。
【解決手段】 押出し直後に賦形、冷却されることにより得られた肉厚が20μm以下の超薄肉フッ素樹脂チューブを、芯金基材またはベルト基材上に溶融・固着することによって、熱伝導性の改善を実現し、ウォームアップ時間の短縮を可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンターなどに使用される定着用部材に関する。さらに詳しくは、本発明は、定着用のロール基材やベルト基材の表層に、離型層として薄肉のフッ素樹脂チューブの溶融体を配した定着用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
定着ロールや定着ベルトなどの定着用部材の表層には、一般にフッ素樹脂の離型層が配される。しかし、フッ素樹脂には熱伝導性に乏しい欠点がある。そのため、複写機やプリンターにおいては、ウォームアップに時間がかかり、その分無駄な電力が消費される。この不利益は、昨今とみに叫ばれている省エネルギー化の前に立ちはだかっている障壁とも言える。
とは言え、フッ素樹脂の優れた離型性は棄て難いことから、該樹脂固有の欠点である乏しい熱伝導性を何等かの手立てで解決せざるを得ないのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明の課題は、フッ素樹脂離型層の熱伝導性が改善され、もって、複写機やプリンターのウォームアップ時間の短縮を可能とした定着用部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、押出し直後に賦形、冷却することにより肉厚が20μm以下の超薄肉フッ素樹脂チューブを得ることに成功した。そして、この超薄肉チューブを芯金基材またはベルト基材上に溶融・固着することによって、“超薄肉“を利用した熱伝導性の改善を実現するに至った。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、以下のような顕著な効果が奏される。
a.離型層の肉厚が20μm以下という超薄肉であるので、該離型層の熱伝導性が向上し、その結果、上述のウォームアップタイムが短縮される。
b.上記aを受け、加熱ヒーターの加熱時間が短縮され、消費電力が節減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明における定着用部材とは、芯金基材上またはベルト基材上に離型層を配したものを言う。芯金基材は、アルミ、鉄、ステンレスなどの金属の中空または中実管であり他方、ベルト基材は、ポリイミド、ニッケル、鉄などからなるベルト体である。フッ素樹脂チューブはこれら基材上に被覆された状態で溶融され、該基材上に固着される。本発明で採用するフッ素樹脂チューブは20μm以下という超薄肉であるが故に、このままでは耐久性の面で難点がある。そこで、該チューブをフッ素樹脂の融点〜融点+50℃で溶融することにより、安定な離型層とする。この離型層の熱伝導性を改善するには、チューブ肉厚として20μm以下が必要である。この肉厚は、好ましくは18μm以下、更に好ましくは15μm以下である。
上記のチューブを構成するフッ素樹脂としては、PFA(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルコキシエチレン共重合体)が好ましく用いられるが、この他FEP(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体)などのフッ素樹脂も用いられる。
このようなフッ素樹脂に、後述する押出し成形法を適用することにより、肉厚が20μm以下の超薄肉チューブが容易に成形される。このチューブは芯金基材またはベルト基材への溶融・固着に先立ち、その内壁面に濡れ性ないし接着性を向上させるような接着剤(プライマー)を塗布するか、周知の化学的または物理的粗面化処理を施してもよい。特に、化学処理としてSA処理を採用した場合、フッ素樹脂の脱フッ素部位にさらに官能基を導入してもよい。官能基としてはビニール基やヒドロキシル基が好ましい。アクリル酸ないしメタクリル酸、およびビニールアルコールは、それぞれにビニール基およびヒドロキシル基を有する代表的な例である。
【0007】
次に、押出し成形の一態様について、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、薄肉チューブを製造する成形機の周辺を示す断面図である。
該図において、(1)は押出し口金部、(1a)はニップル、(1b)はダイス、(2)は押出されたフッ素樹脂チューブ、(3)は賦形装置、そして、(4)は冷却装置である。
フッ素樹脂は押出し口金部(1)からチューブ(2)として押出される。その際の溶融温度は350℃〜450℃、押出し速度は5m/秒〜10m/秒程度である。そして、押出し直後のチューブは、外径を所望のチューブ内径に仕上げた賦形装置(4)の外周に沿いながら賦形され、冷却装置によって冷却された後、ボビンに巻き取られる。
【実施例】
【0008】
以下、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
溶融押出機に、ニップル(1a)、ダイス(1b)を取り付け、溶融温度を400℃、押出し速度を7m/秒に設定して、フッ素樹脂「AP−230」(ダイキン工業株式会社製)を投入し、溶融押出した。
押出されたフッ素樹脂チューブを、外径30mm、全長100mmの賦形装置(3)の外周に沿わせ、冷却装置内で冷却しながら引き取り、最後にボビンに巻き取った。その際、得られたチューブの内径は29.5mm、肉厚は14μmであった。
次いで、カット長さが350mmのチューブ内壁面に、プライマー「MP902AL」(三井デュポンフロロケミカル株式会社製)を塗付した。さらに、このチューブを外径が30mmの鉄製の芯金基材に被覆した状態で、320℃で30分溶融して固着した。得られた定着用部材の表層は円滑な表面感触を呈し、離型層として支障なく機能することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0009】
本発明の定着用部材は、定着部のロールやベルトのみならず、搬送用のベルト等に対しても有効である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】フッ素チューブを製造する成形機の周辺を示す断面図である。
【符号の説明】
【0011】
1 押出し口金部
1a ニップル
1b ダイス
2 押出されたチューブ
3 賦形装置
4 冷却装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出し直後に賦形、冷却されることにより、膜厚が20μm以下に成形されたフッ素樹脂チューブが、芯金基材またはベルト基材上に溶融・固着されてなることを特徴とする定着用部材。
【請求項2】
該膜厚が18μm以下である、請求項1記載の定着用部材。
【請求項3】
該フッ素樹脂がポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニールエーテル樹脂である、請求項1または2に記載の定着用部材。


【図1】
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【公開番号】特開2006−221113(P2006−221113A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−36933(P2005−36933)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(000226932)日星電気株式会社 (98)
【Fターム(参考)】