説明

定着装置及びこれを備えた画像形成装置

【課題】回転する加熱部材と固定式の加圧部材の間のニップ部での記録材の搬送性を高めることができる定着装置を提供すること。
【解決手段】円筒状の定着ローラ(加熱部材)21を回転可能に配置し、該定着ローラ21に圧接されて定着ローラ21との間にニップを形成する加圧部材23を固定配置し、トナー像が転写された用紙(記録材)を定着ローラ21と加圧部材23との間に形成された前記ニップを通過させることによってトナー像を用紙上に定着させる定着装置18において、前記定着ローラ21に当接して回転する搬送ローラ24を前記加圧部材23の後(又は前の何れか一方又は両方)に配置し、該搬送ローラ24及び前記加圧部材23と前記定着ローラ21との間にそれぞれ形成されるにニップにシート状の送り部材25を架け渡す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転する定着ローラ等の加熱部材とこれに圧接される固定式の加圧部材を備える定着装置とこれを備えた複写機やプリンタ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式によって用紙等の記録材に画像を形成する複写機やプリンタ等の画像形成装置においては、感光ドラム等の像担持体上に形成された静電潜像を現像装置によって現像してトナー像として顕像化し、このトナー像を記録材上に転写することが行われる。そして、トナー像が転写された記録材は、定着装置へと搬送され、該定着装置によって加熱及び加圧されてトナー像の定着を受け後に機外に排出され、これによって一連の画像形成動作が完了する。
【0003】
ところで、斯かる画像形成装置における定着装置には、従来、図5に示す加熱ローラ方式を採用するものが専ら使用されていた。
【0004】
即ち、図5は加熱ローラ方式を採用する従来の定着装置の断面図であり、図示の定着装置118は、互いに当接して図示矢視方向に回転する定着ローラ121と加圧ローラ122を備えており、円筒状の定着ローラ121の内部には定着ヒータ123が配置されている。ここで、加圧ローラ122は、例えば外径φ12mmの芯金122aの外表面に、外径がφ25mmとなるようにシリコンゴム層122bを形成し、その外表面に離型層として厚み50μmのFPAチューブ122cを被覆し、全体の硬度が42°(Asker−C、1kgf)となるよう構成されている。そして、この加圧ローラ122を荷重7kgfで定着ローラ121に押圧配置した場合、定着ローラ121と加圧ローラ122間に形成されるニップの幅は5mm程度と比較的狭い。
【0005】
斯かる加熱ローラ方式を採用する定着装置118においては、加圧ローラ122の熱容量が大きいためにウォームアップタイム(定着可能な温度に達するまでに要する時間)が長く、部品コストが高いという問題がある。
【0006】
そこで、図6の断面図に示すような定着装置218が提案されている。図示の定着装置218は、従来の加圧ローラ122(図6参照)に代えて固定式の加圧部材222を使用するものであって、加圧部材222は、定着ローラ221と接触する表層部材224と、該表層部材224を定着ローラ221に押圧する押圧部材225及び該押圧部材225と前記表層部材224を支持する支持部材226で構成されている。
【0007】
斯かる定着装置218においては、定着ローラ221と加圧部材222との間に形成されるニップに記録材を通過させることによって、該記録材上に転写されたトナー像を加熱及び加圧して定着させることができる。このような定着方式によれば、所要のニップ幅を確保した上で、加圧部材222の熱容量を小さく抑えてウォームアップタイムを短縮することができるとともに、定着装置218のコストダウンと小型化を図ることができる。
【0008】
図5に示す加熱ローラ方式を採用する定着装置118では、加圧ローラ122は定着ローラ121と共に回転するため、記録材の搬送性が維持されるが、図6に示す固定式の加圧部材222を用いる定着装置218においては、ニップ部において記録材に加えられる搬送力は定着ローラと記録材間の摩擦力のみとなり、加圧部材222は逆に記録材がニップを通過する際の搬送負荷となる。このため、加圧部材の押圧部材の表面は摩擦が小さいことが望ましく、定着ローラの表面は逆に摩擦が大きいことが望ましい。
【0009】
ところで、固定式の加圧部材を備える定着装置に関して、例えば特許文献1には、定着ローラの離型層と記録材の間の摩擦係数μ1
と加圧部材の耐熱弾性圧接部材(押圧部材)表面と記録材の間の摩擦係数μ2 との間に、μ1 /μ2
≧5成る関係が成立する定着装置が提案されている。
【0010】
特許文献2には、定着ローラと記録材の間の摩擦係数が記録材と加圧部材の間の摩擦係数よりも常に0.5以上大きな値に保たれる定着装置が提案されている。
【0011】
特許文献3には、定着ローラノ表面に、ガラス繊維、グラファイト、ブロンズ等の摩擦係数を上げる材料を含有し、且つ、水の接触角が90°以上の表面コート層を形成した定着装置が提案されている。
【0012】
特許文献4には、定着ローラの中央部外周にシリコン系のゴムから成るゴム部を設け、該定着ローラの中央部の摩擦係数をそれ以外の面の摩擦係数よりも大きくすることによって記録材の搬送性を向上させた定着装置が提案されている。
【0013】
特許文献5には、定着ローラの記録材幅又はそれ以上の範囲にサンドブラスト処理を施し、該定着ローラの表面の摩擦係数をそれ以外の摩擦係数よりも大きくすることによって記録材の搬送性を向上させた定着装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平8−110721号公報
【特許文献2】特開平8−123225号公報
【特許文献3】特開2003−091192号公報
【特許文献4】特開2002−055556号公報
【特許文献5】特開2002−082552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1において提案された定着装置によれば、記録材の搬送性確保の面で優位性があること明らかであるが、定着ローラの離型層として一般的に使用されるPFAやPTFEコーティングの静摩擦係数は充填材の有無も含めて0.05〜0.13であり、又、例えば加圧部材表面の低摩擦化が可能な材料の1つであるガラスクロスの静摩擦係数は0.08〜0.10(日東電工社製のニトフロン含有ガラスクロス)である等のデータから、μ1
/μ2 ≧5成る条件式の成立には定着ローラ表面の摩擦係数を前記の一般的な離型層の摩擦係数よりも大きくする必要があると考えられる。特許文献1の記載によれば、離型層として架橋密度を高めたシリコンゴムを用いており、定着ローラと記録材の間の摩擦係数μ1
は0.68(PTFEの摩擦係数は0.12〜0.54)であることを考慮すると、実際には離型性が悪化してトナーや紙粉等の付着の問題は発生する可能性がある。
【0016】
特許文献2において提案された定着装置においても、特許文献1において提案された定着装置の上記問題と同様に離型性の悪化が考えられる。
【0017】
特許文献3において対案された定着装置によれば、特許文献3の表1にも示されているように、充填材入りPTFEにおいても動摩擦係数は未充填のPTFEの動摩擦係数(0.13)のせいぜい2〜3倍(〜0.35)程度に過ぎず、又、特許文献3に記載された充填材の種類や量は一般的に使用されている範囲のものであり、この条件では高い搬送力を確保することができないことは実験により確認された。
【0018】
又、一般的なPFAやPTFEコーティングの水接触角は充填材の有無も含めて105°〜120°であるというデータがあり、水接触角が90°レベルでは離型性が十分確保されているとは言えず、トナーや紙粉等の付着の問題が考えられる。従って、特許文献3において提案された定着装置によっても、前記特許文献1,2において提案された定着装置と同様に搬送性と離型性が十分両立できているとは断定できない。
【0019】
特許文献4には、トナー等の付着に対する対策としてゴム材にPFAやPTFE等のフッ素系樹脂を被覆するという記載があるが、同時に発生する摩擦係数低下の対策として、ゴム部の面を一部に残したり、圧力を高くする等の対策が採られており、これらは根本的な対策とはなり得ず、前記特許文献1〜3において提案された定着装置と同様に離型性の問題が発生する可能性がある。
【0020】
特許文献5において提案された定着装置によれば、摩擦面を定着ローラ両端部の記録材搬送領域で、且つ、非画像領域に形成することによってトナーの付着の問題を解消し、搬送力を確保することができるが、摩擦面ヲ通過しない小サイズの記録材に対しては全く効果がないことは明らかである。尚、画像領域内に摩擦面を形成すると、離型製の問題が発生することが考えられる。
【0021】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、回転する加熱部材と固定式の加圧部材の間のニップ部での記録材の搬送性を高めることができる定着装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、円筒状の加熱部材を回転可能に配置し、該加熱部材に圧接されて加熱部材との間にニップを形成する加圧部材を固定配置し、トナー像が転写された記録材を加熱部材と加圧部材との間に形成された前記ニップを通過させることによってトナー像を記録材上に定着させる定着装置において、前記加熱部材に当接して回転する搬送ローラを前記加圧部材の前後の何れか一方又は両方に配置し、該搬送ローラ及び前記加圧部材と前記加熱部材との間にそれぞれ形成されるニップにシート状の送り部材を架け渡したことを特徴とする。
【0023】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記搬送ローラを前記加圧部材の後方に配置するとともに、前記送り部材に前記搬送ローラの一部が臨む開口部を形成し、該送り部材の前端を前記加圧部材に固定し、後端を前記搬送ローラ上に載置したことを特徴とする。
【0024】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記搬送ローラを前記加圧部材の前方に配置するとともに、前記送り部材に前記搬送ローラの一部が臨む開口部を形成し、該送り部材の前端を前記搬送ローラの前方に配された記録材搬送ガイドに固定し、後端を前記加圧部材に固定したことを特徴とする。
【0025】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記搬送ローラを前記加圧部材の前後にそれぞれ配置するとともに、前記送り部材に前後の前記搬送ローラの各一部が臨む開口部をそれぞれ形成し、該送り部材の前端を前側の搬送ローラの前方に配された記録材搬送ガイドに固定し、後端を後側の搬送ローラ上に載置したことを特徴とする。
【0026】
請求項5記載の発明は、請求項1〜5の何れかに記載の発明において、前記搬送ローラの前記送り部材の開口部に臨む部分の外径を他の部分の外径よりも送り部材の厚み分だけ大きく設定したことを特徴とする。
【0027】
請求項6記載の発明は、請求項3又は4記載の発明において、前記送り部材の前記前側の搬送ローラが臨む開口部の後端縁を記録材幅方向に傾斜させたことを特徴とする。
【0028】
請求項7記載の画像形成装置は、請求項1〜6の何れかに記載の定着装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
請求項1〜4記載の発明によれば、加圧部材の前後の何れか一方又は両方に配置された搬送ローラ及び加圧部材と加熱部材との間にそれぞれ形成されるにニップにシート状の送り部材を架け渡したため、トナー像が転写された記録材は送り部材によってガイドされながらニップへとスムーズに導入され、該記録材の搬送性が高められてトナー像の記録材への定着が安定的になされる。又、記録材の進入から分離までを1つの送り部材によってガイドするため、定着時間が長くなって定着性が高められる。
【0030】
請求項5記載の発明によれば、送り部材に形成された開口部に搬送ローラが臨んで該搬送ローラが加熱部材に直接接触する(加熱部材と搬送ローラとの間に送り部材が介在しない)ため、これらの搬送ローラと加熱部材の間の摩擦力が送り部材によって低下することがなく、搬送ローラの加熱部材へのタック性が高められ、搬送ローラと加熱部材の間に作用する大きな摩擦力によって記録材がニップ部を確実に搬送され、該記録材の搬送不良が防がれる。又、搬送ローラの送り部材の開口部に臨む部分の外径を他の部分の外径よりも送り部材の厚み分だけ大きく設定したため、送り部材と搬送ローラとの段差が送り部材の厚みによって埋められ、記録材は段差に引っ掛かることなくスムーズに且つ安定的に搬送されるとともに、記録材の加熱部材への押圧力が一定となって定着画像の光沢ムラの発生が抑えられる。
【0031】
請求項6記載の発明によれば、送り部材の前側の搬送ローラが臨む開口部の後端縁を記録材幅方向に傾斜させたため、記録材の先端が送り部材の開口部の後端縁に同時に当接することなく、開口部の後端縁の傾斜に沿って順次当接するために該記録材の引っ掛かりが抑えられ、記録材の搬送性が高められる。
【0032】
請求項7記載の発明によれば、定着装置での記録材の搬送性が高められてトナー像の定着不良や記録材の搬送不良が防がれる結果、高質画像を安定的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る画像形成装置の断面図である。
【図2】(a)は本発明の実施の形態1に係る定着装置の断面図、(b)は同定着装置の送り部材と搬送ローラの平面図である。
【図3】(a)は本発明の実施の形態2に係る定着装置の断面図、(b)は同定着装置の送り部材と搬送ローラの平面図である。
【図4】(a)は本発明の実施の形態3に係る定着装置の断面図、(b)は同定着装置の送り部材と搬送ローラの平面図である。
【図5】加熱ローラ方式を採用する従来の定着装置の断面図である。
【図6】固定式の加圧部材を有する従来の定着装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0035】
[画像形成装置]
図1は本発明に係る画像形成装置の断面図であり、図示の画像形成装置1はレーザープリンタであって、装置本体1Aの内部上方には、画像形成部2が配され、装置本体1A内の下半部には用紙収納部3が配されている。
【0036】
上記画像形成部2は、電子写真方式によって画像を形成するものであって、回転可能に配された像担持体としての感光ドラム4と、その周囲に配された帯電器5、現像装置6、転写ローラ7及びクリーニング装置8の他、現像装置6に現像剤であるトナーを補給するためのトナーホッパ9を備えている。そして、画像形成部2の横には、光走査装置であるレーザースキャナユニット(LSU)10が配置されている。
【0037】
前記用紙収納部3は、記録材である複数枚の用紙が積層収容された着脱可能な上下2段の給紙カセット11,12を備えており、各給紙カセット11,12の近傍には、各給紙カセット11,12内の用紙を上位のものから順次取り出すピックローラ13と、取り出された用紙を1枚ずつ分離して送り出すフィードローラ14とリタードローラ15がそれぞれ配設されている
又、装置本体1A内には、用紙収納部3から画像形成部2に至る第1搬送路S1と、画像形成部2から排紙トレイ16に至る第2搬送路S2が配置されており、第1搬送路S1にはレジストローラ17と前記転写ローラ7が設けられ、第2搬送路S2には本発明に係る定着装置18と搬送ローラ19及び排紙ローラ20が設けられている。尚、定着装置18の構成の詳細は後述する。
【0038】
次に、以上のように構成された画像形成装置1の画像形成動作について説明する。
【0039】
画像形成動作が開始されると、画像形成部2においては感光ドラム4が不図示の駆動手段によって図1の矢印方向(時計方向)に回転駆動され、その表面が帯電器5によって所定の電位に一様に帯電される。そして、パソコン等から送信される電気信号に基づくレーザービームがレーザースキャナユニット10から出力されて感光ドラム4の表面が露光走査されると、該感光ドラム4上に画像情報に応じた静電潜像が形成される。そして、この感光ドラム4上に形成された静電潜像は、現像装置6によって現像剤であるトナーを用いて現像されてトナー像として可視像化される。
【0040】
ところで、カセット給紙を行う場合、用紙収納部3の例えば上段の給紙カセット11内に収容されている用紙は、ピックローラ13によって最上位のものからピックアップされ、フィードローラ14とリタードローラ15によって1枚ずつ分離されて第1搬送経路S1をレジストローラ17へと搬送される。そして、レジストローラ17においては、用紙は、一時待機状態とされた後、感光ドラム4上のトナー像に同期する所定のタイミングで画像形成部2へと供給される。
【0041】
画像形成部2においては、感光ドラム4と転写ローラ7との間のニップへと供給された用紙は、転写ローラ7によって感光ドラム4に押し付けられながら搬送されることによって、その表面に感光ドラム4上のトナー像が転写される。そして、トナー像が転写された用紙は、定着装置18へと搬送され、この定着装置18のニップを通過する過程で加熱及び加圧されてトナー像の定着を受ける。尚、用紙へのトナー像の転写後に感光ドラム4の表面に残留するトナー(転写残トナー)はクリーニング装置8によって除去され、表面が清掃された感光ドラム4は次の画像形成動作に備えられる。
【0042】
而して、定着装置18にて表面にトナー像が定着された用紙は、第2搬送路S2を搬送ローラ19によって排紙ローラ20に向かって搬送され、排紙ローラ20によって排紙トレイ16へと排出され、これによって一連の画像形成動作が終了する。
【0043】
[定着装置]
次に、本発明に係る前記定着装置18の実施の形態について説明する。
【0044】
<実施の形態1>
図2(a)は本発明の実施の形態1に係る定着装置の断面図、図2(b)は同定着装置の送り部材と搬送ローラの平面図であり、本発明に係る定着装置18は、回転可能な円筒状の定着ローラ21を備えており、該定着ローラ21内の中心には定着ヒータ22が配置されている。そして、この定着ローラ21には加圧部材23が下方から圧接されて定着ローラ21との間にニップが形成されており、該定着ローラ21の加圧部材23の後方(用紙搬送方向において後方)には、定着ローラ21に当接して回転する搬送ローラ24が配置され、この搬送ローラ24と定着ローラ21との間にはニップが形成されている。
【0045】
而して、本実施の形態では、搬送ローラ24及び加圧部材23と定着ローラ21との間にそれぞれ形成されるニップにシート状の送り部材25が架け渡されている。
【0046】
本実施の形態では、上記定着ローラ21は、外径φ23mm、肉厚0.65mmのアルミニウム製の芯金の外表面に、導電材や耐摩耗材が充填されたPFAやPTFE等のフッ素樹脂を、プライマ層を含めて25μmの厚みでコーティングすることによって構成されている。又、この定着ローラ21の内部に配置された前記定着ヒータ22は、電圧100V、出力800Wのハロゲンランプで構成されており、この定着ヒータ22によって定着ローラ21が所定の定着温度に加熱される。尚、定着ローラ21の表面温度は不図示の温度センサによって常時検出され、その検出信号が不図示のコントローラにフィードバックされることによって定着ローラ21の表面温度が所定の定着温度に制御される。
【0047】
前記加圧部材23は、幅10mm、厚み6mm、硬度25°(Asker−C、1kgf)のシリコンスポンジ等の耐熱性弾性部材によって構成されており、該加圧部材23と定着ローラ21との間には幅8mmのニップが形成されている。
【0048】
前記搬送ローラ24は、用紙幅方向(図2(a)の紙面垂直方向)に配された外径φ6mmの鉄製の芯金の外周に、外径がφ8mmとなるようにシリコンゴム層を形成することによって構成されており、その軸方向には、前記送り部材25を介さないで定着ローラ21の外周面に直接接触する大径部24aが用紙幅方向中心を境としてこれの左右に各2つずつ計4つ形成されている。そして、この搬送ローラ24は、不図示のバネ等の付勢手段によって定着ローラ21に押圧されている。
【0049】
前記送り部材25は、厚み100μmのPFAやPTFE等のフッ素系樹脂によって構成され、その後端部の用紙幅方向には搬送ローラ24の4つの大径部24aが臨む2つのスリット状開口部25aが形成されており、後端部の開口部25aを除く部分は搬送ローラ24の大径部24a以外の部分に載置されている。尚、送り部材25を、PIを基材とし、その表面にフッ素系樹脂をコートすることによって構成しても良い。例えば、厚み90μmの基材の表面にPTFEの厚み30μmのコート層を形成することによって送り部材25を構成しても良い。又、本実施の形態では送り部材25にスリット状の開口部25aを形成したが、開口部25aの形状は任意である。
【0050】
ここで、搬送ローラ24の大径部24aの外径は、他の部分の外径φ8mmよりも送り部材25の厚み100μm(0.1mm)分だけ大きな値φ8.2mmに設定されており、従って、送り部材25の開口部25aに臨む搬送ローラ24の大径部25aと送り部材25の開口部25a以外の部分との間に段差が生じない。尚、搬送ローラ24を、固定された芯金と、該芯金に回転可能に支持されたコロとで構成し、コロを送り部材25の開口部25aに臨ませるようにしても良い。例えば、外径φ7.95mmの鉄製の芯金に内径φ8mm、外径8.2mmのPFA製のコロを回転可能に支承させることによって搬送ローラ24を構成しても良い。
【0051】
以上のように構成された定着装置18において、定着ローラ21が不図示の駆動手段によって図2の矢印方向(時計方向)に所定の速度で回転駆動されると、前述のようにトナー像が転写された用紙が送り部材25に案内されてニップへと導かれ、このニップを通過する過程で加熱及び加圧され、トナー像が用紙上に定着される。尚、このとき、送り部材25は、用紙との間に発生する摩擦力を低減するとともに、加圧部材23へのトナーや紙粉等の汚れの付着を防ぐ機能を果たす。
【0052】
而して、本実施の形態では、加圧部材23の後方に配置された搬送ローラ24及び加圧部材23と定着ローラ21との間にそれぞれ形成されるにニップにシート状の送り部材25を架け渡したため、トナー像が転写された用紙は送り部材25によってガイドされながらニップへとスムーズに導入され、該用紙の搬送性が高められてトナー像の用紙への定着が安定的になされる。そして、用紙の進入から分離までを1つの送り部材25によってガイドするため、定着時間が長くなって定着性が高められる。
【0053】
又、本実施の形態では、送り部材25に形成されたスリット状の開口部25aに搬送ローラ24の大径部24aが臨んで該大径部24aが定着ローラ21に直接接触する(大径部24aと定着ローラ21との間に送り部材25が介在しない)ため、搬送ローラ24と定着ローラ21の間の摩擦力が送り部材25によって低下することがなく、搬送ローラ24の定着ローラ21へのタック性が高められ、搬送ローラ24と定着ローラ21の間に作用する大きな摩擦力によって用紙がニップ部を確実に搬送され、該用紙の搬送不良が防がれる。
【0054】
更に、本実施の形態では、搬送ローラ24の大径部24aの外径を他の部分の外径よりも送り部材25の厚み分だけ大きく設定したため、送り部材25と搬送ローラ24の大径部24aとの段差が送り部材25の厚みによって埋められ、用紙は段差に引っ掛かることなくスムーズに且つ安定的に搬送されるとともに、用紙の定着ローラ21への押圧力が一定となって定着画像の光沢ムラの発生が抑えられる。
【0055】
そして、以上のように定着装置18での用紙の搬送性が高められてトナー像の定着不良や用紙の搬送不良が防がれる結果、図1に示す画像形成装置(レーザープリンタ)1において高質画像を安定的に得ることができる。
【0056】
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2を図3に基づいて説明する。
【0057】
図3(a)は本発明の実施の形態2に係る定着装置の断面図、図3(b)は同定着装置の送り部材都搬送ローラの平面図であり、本図においては図2に示したものと同一要素には同一符号を付しており、以下、それらについての再度の説明は省略する。
【0058】
本実施の形態においては、搬送ローラ26を加圧部材23の前方に配置するとともに、送り部材25に搬送ローラ26の4つの大径部26aが臨む台形状の開口部25bを用紙幅方向に4つ形成し、該送り部材25の前端を搬送ローラ26の前方に配された記録材搬送ガイド27に固定し、後端を加圧部材23に固定している。ここで、送り部材25に形成された各開口部25bは、図3(b)に示すように、その後端縁が用紙幅方向に傾斜している。又、本実施の形態においても、搬送ローラ26の大径部26aの外径は、他の部分の外径よりも送り部材25の厚み分だけ大きく設定されており、送り部材25の開口部25bに臨む搬送ローラ26の大径部26aと送り部材25の開口部25b以外の部分との間に段差が生じないよう考慮されている。尚、他の構成は前記実施の形態1のそれと同じである。
【0059】
而して、本実施の形態においても、加圧部材23の前方に配置された搬送ローラ26及び加圧部材23と定着ローラ21との間にそれぞれ形成されるにニップにシート状の送り部材25を架け渡したため、トナー像が転写された用紙は送り部材25によってガイドされながらニップへとスムーズに導入され、該用紙の搬送性が高められてトナー像の用紙への定着が安定的になされるという前記実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0060】
又、本実施の形態では、送り部材25に形成された各開口部25bの後端縁を用紙幅方向に傾斜させたため、用紙の先端が送り部材25の開口部25bの後端縁に同時に当接することなく、開口部25bの後端縁の傾斜に沿って順次当接するために該用紙の引っ掛かりが抑えられ、用紙の搬送性が高められる。
【0061】
<実施の形態3>
次に、本発明の実施の形態3を図4に基づいて説明する。
【0062】
図4(a)は本発明の実施の形態3に係る定着装置の断面図、図4(b)は同定着装置の送り部材と搬送ローラの平面図であり、本図においては図2及び図3に示したものと同一要素には同一符号を付しており、以下、それらについての再度の説明は省略する。
【0063】
本実施の形態においては、搬送ローラ26,24を加圧部材23の前後にそれぞれ配置するとともに、送り部材25に前後の搬送ローラ26,24の各4つずつの大径部26a,24aが臨む開口部25b,25aを前後にそれぞれ4つずつ形成し、該送り部材25の前端を前側の搬送ローラ26の前方に配された記録材搬送ガイド27に固定し、後端を後側の搬送ローラ24の大径部24a以外の部分に載置する構成が採用されている。又、本実施の形態においても、前後の各搬送ローラ26,24の大径部26a,24aの外径は、他の部分の外径よりも送り部材25の厚み分だけ大きく設定されており、送り部材25の前後の開口部25b,25aに臨む前後の搬送ローラ26,24の大径部26a,24aと送り部材25の開口部25b,25a以外の部分との間に段差が生じないよう考慮されている。尚、他の構成は前記実施の形態1,2のそれと同じである。
【0064】
而して、本実施の形態においても、加圧部材23の前後にそれぞれ配置された搬送ローラ26.24及び加圧部材23と定着ローラ21との間にそれぞれ形成されるニップにシート状の送り部材25を架け渡したため、トナー像が転写された用紙は送り部材25によってガイドされながらニップへとスムーズに導入され、該用紙の搬送性が高められてトナー像の用紙への定着が安定的になされるという前記実施の形態1,2と同様の効果が得られる。
【0065】
又、本実施の形態では、送り部材25に形成された前側の矩形の各開口部25bの後端縁を用紙幅方向に傾斜させたため、用紙の先端が送り部材25の開口部25bの後端縁に同時に当接することなく、開口部25bの後端縁の傾斜に沿って順次当接するために該用紙の引っ掛かりが抑えられ、用紙の搬送性が高められる。
【0066】
尚、以上は加熱部材として定着ローラを使用する加熱ローラ方式の定着装置に対して本発明を適用した形態について説明したが、本発明は、加熱部材として定着ベルトを使用するベルト定着方式の定着装置に対しても同様に適当可能である。
【0067】
又、以上は本発明をモノクロのレーザープリンタとこれに備えられた定着装置に対して適用した形態について説明したが、本発明は、カラーレザープリンタやモノクロ・カラーを問わず、複写機や複合機等の他の任意の画像形成装置及びこれに備えられた定着装置に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0068】
1 画像形成装置
1A 画像形成装置本体
2 画像形成部
3 用紙収納部
4 感光ドラム
5 帯電器
6 現像装置
7 転写ローラ
8 クリーニング装置
9 トナーホッパ
10 レーザースキャナユニット(LSU)
11,12 給紙カセット
13 ピックローラ
14 フィードローラ
15 リタードローラ
16 排紙トレイ
17 レジストローラ
18 定着装置
19 搬送ローラ
20 排紙ローラ
21 定着ローラ(加熱部材)
22 定着ヒータ
23 加圧部材
24 搬送ローラ
24a 搬送ローラの大径部
25 送り部材
25a,25b 送り部材の開口部
26 搬送ローラ
26a 搬送ローラの大径部
27 記録材搬送ガイド
S1 第1搬送路
S2 第2搬送路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱部材を回転可能に配置し、該加熱部材に圧接されて加熱部材との間にニップを形成する加圧部材を固定配置し、トナー像が転写された記録材を加熱部材と加圧部材との間に形成された前記ニップを通過させることによってトナー像を記録材上に定着させる定着装置において、
前記加熱部材に当接して回転する搬送ローラを前記加圧部材の前後の何れか一方又は両方に配置し、該搬送ローラ及び前記加圧部材と前記加熱部材との間にそれぞれ形成されるニップにシート状の送り部材を架け渡したことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記搬送ローラを前記加圧部材の後方に配置するとともに、前記送り部材に前記搬送ローラの一部が臨む開口部を形成し、該送り部材の前端を前記加圧部材に固定し、後端を前記搬送ローラ上に載置したことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記搬送ローラを前記加圧部材の前方に配置するとともに、前記送り部材に前記搬送ローラの一部が臨む開口部を形成し、該送り部材の前端を前記搬送ローラの前方に配された記録材搬送ガイドに固定し、後端を前記加圧部材に固定したことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項4】
前記搬送ローラを前記加圧部材の前後にそれぞれ配置するとともに、前記送り部材に前後の前記搬送ローラの各一部が臨む開口部をそれぞれ形成し、該送り部材の前端を前側の搬送ローラの前方に配された記録材搬送ガイドに固定し、後端を後側の搬送ローラ上に載置したことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項5】
前記搬送ローラの前記送り部材の開口部に臨む部分の外径を他の部分の外径よりも前記送り部材の厚み分だけ大きく設定したことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の定着装置。
【請求項6】
前記送り部材の前記前側の搬送ローラが臨む開口部の後端縁を記録材幅方向に傾斜させたことを特徴とする請求項3又は4記載の定着装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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