説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】吐出部材から定着液吐出対象に吐出した泡状定着液によって定着を行う構成で、吐出圧が低い状態で泡状定着液が吐出されることに起因する定着不良の発生を防止することができる定着装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】定着液泡状化装置500と、塗布ローラ61に対して泡状定着液Fを吐出するダイコータヘッド601と、ダイコータヘッド601の内の吐出圧を検出するヘッド内圧力センサS5と、定着装置制御用CPU700とを有し、泡状定着液Fを付与してトナー像を転写紙Pに定着する定着装置60において、吐出圧が所望の圧力の範囲内となった後に、吐出圧が所定の圧力未満となったことをヘッド内圧力センサS5が検出した場合には、定着装置制御用CPU700は定着給紙モータM4の駆動を停止して塗布ニップNへの転写紙Pの給紙を停止して、定着液付与動作を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ及び複写装置のような画像形成装置は、紙、布、及びOHP用シートのような記録媒体に、画像情報に基づいて文字や記号を含む画像を形成する装置である。特に、電子写真方式の画像形成装置は、普通紙に高精細な画像を高速で形成することができるため、広くオフィスで使用されている。このような電子写真方式の画像形成装置においては、記録媒体上のトナーを加熱して溶融させ、溶融したトナーを加圧することによって、トナーを記録媒体上に定着させる熱定着方式が広く用いられている。この熱定着方式は、高い定着速度及び高い定着画像品質等を提供することができるため、好適に用いられている。
【0003】
しかし、このような電子写真方式の画像形成装置における消費電力の約半分以上は、熱定着方式においてトナーを加熱することに消費されている。一方、近年における環境問題対策の観点からは、低消費電力(省エネルギー)の定着装置が望まれている。即ち、トナーを定着するためにトナーを加熱する温度を今までよりも極端に低下させること、またはトナーを加熱することを必要としない定着方法が望まれている。特に、トナーを全く加熱することなくトナーを記録媒体に定着させる非加熱定着方法が低消費電力の点で理想的である。
【0004】
このような非加熱定着方法としては、特許文献1に記載のものが知られている。この特許文献1では、トナーを溶解または膨潤させることで樹脂を軟化させる軟化剤を少なくとも含有している液状定着液が用いられている。そして、特許文献1の非加熱定着方法では、表面が無端移動する塗布部材を用いて、未定着のトナー像を担持した記録媒体の表面に液状定着液を塗布し、液状定着液でトナーを溶解または膨潤させた後、記録媒体を乾燥させてトナーを記録媒体に定着させている。
【0005】
また、上記特許文献1の非加熱定着方法では、液状定着液を記録媒体に微量付与するために塗布部材上の定着液層の厚みを未定着トナー層の厚みよりも薄くしている。この場合、塗布部材が記録媒体に定着液を塗布する塗布位置で、塗布部材の表面が記録媒体に近接してから分離していく際に、塗布部材の表面に残った液状定着液の液膜によって生じる表面張力で未定着トナー粒子が引っ張られてしまう。これにより、塗布部材の表面にトナー粒子がオフセットし、記録媒体上の画像が大幅に乱れてしまう。逆に、塗布部材上の液状定着液層の厚みを未定着トナー層の厚みよりも十分厚くした場合、塗布部材が記録媒体に近接してから分離していく位置での液量が多くなる。そのため塗布部材の表面の液膜による表面張力が直接トナー粒子に作用しにくくなり、塗布部材側にトナーがオフセットしなくなる。
【0006】
しかし、塗布部材上の液状定着液層の厚みを十分厚くした場合、記録媒体面に多量の液状定着液が塗布されるため、トナー粒子が過剰な定着液により記録媒体上で流され画質劣化を生じる。また、液量が多いので乾燥時間が長くなり、定着応答性に問題が生じてしまう。更に、記録媒体に著しい残液感(記録媒体を手で触れたときの湿った感触)が発生する。また、液状定着液が水を含有する場合、紙等のセルロースを含有する記録媒体への塗布量が多いと、紙等の記録媒体が著しくカールし、画像形成装置などにおける装置内の紙等の記録媒体の排紙搬送時に紙ジャム発生の恐れがある。このような液状定着液で塗布部材を用いた塗布を行う構成では、定着応答性向上、残液感低減やカール防止ための記録媒体上のトナー層への液状定着液の微量塗布が望ましい反面、微量塗布であると塗布部材へのトナーオフセットを防止できない。このように、液状定着液の液量の調整だけでは、定着応答性向上、残液感低減やカール防止と、トナーオフセット防止とを両立することが極めて難しいという課題があった。
【0007】
このような液状定着液を用いた場合の課題を解消できる定着方式として、特許文献2〜4には、液状定着液を泡状にした泡状定着液を用いて定着を行う定着方法が提案されている。これら特許文献には、気泡を大量に含有した泡状定着液が極めて嵩密度が低いことに着目し、泡状定着液生成手段によって生成された泡状定着液を接触塗布手段である塗布部材を介して未定着トナー層に塗布する定着方法が記載されている。
また、特許文献4には、泡状定着液生成手段によって生成された泡状定着液を、吐出部材の内部に充填し、吐出部材の内部と外部との圧力差によって充填した泡状定着液を塗布部材の表面に向けて吐出する定着装置が記載されている。
特許文献4に記載の定着装置における吐出部材は、塗布部材と対向して吐出部材の内部と外部とを連通する吐出口と、この吐出口の開閉を行うシャッタ部材と、吐出部材の内部の圧力である吐出圧を検出する吐出圧検出センサとを備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献4に記載の定着装置が備える吐出部材では、シャッタ部材によって吐出口を閉鎖した状態で、その内部に泡状定着液を充填し、吐出圧が泡状定着液の吐出に適した所望の圧力の範囲内となったことを吐出圧検出センサが検出した後にシャッタ部材を開いて吐出口を開放する。このとき、吐出部材の内部の圧力が外部より圧力が高い状態で吐出口が開放されることで、開放した瞬間は、所望の吐出量よりも多くの泡状定着液が吐出されることがある。所望の吐出量よりも多く吐出されると、吐出圧が一気に低くなって吐出圧が不安定になり、吐出圧が安定するまで吐出される泡状定着液の量が少なくなったり、一時的に泡状定着液が吐出されない抜けが生じたりして、塗布部材の表面上に所望量の泡状定着液がされない領域が生じる。このような領域の塗布部材表面によって泡状定着液を記録媒体上の未定着のトナーに塗布した部分では、トナーを十分に溶解または膨潤させることできず、トナーの定着が不十分となるおそれがある。このように定着後のトナー画像の定着が不十分となると、トナー画像に外力が加わると画像が乱れるという不具合が生じる。
【0009】
上述のように、吐出圧が低い状態で泡状定着液が吐出されることに起因する定着不良の問題が発生する構成は、吐出部材から塗布部材に泡状定着液を吐出し、塗布部材が記録媒体に泡状定着液を塗布することによって定着を行う構成かぎるものではない。
トナー等の未定着の樹脂微粒子を担持し、泡状定着液を付与される定着液付与対象が記録媒体ではなく、中間転写体等の像担持体の表面に泡状定着液を付与し、軟化した樹脂微粒子を記録媒体に転写する構成における像担持体である場合であっても同様の問題が生じ得る。
また、塗布部材によって泡状定着液が吐出される定着液吐出対象が塗布部材ではなく、未定着の樹脂微粒子を担持する記録媒体や像担持体といった定着液付与対象に直接吐出する構成における定着液付与対象である場合であっても同様の問題が生じ得る。
【0010】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、吐出部材から定着液吐出対象に吐出した泡状定着液によって定着を行う構成で、吐出圧が低い状態で泡状定着液が吐出されることに起因する定着不良の発生を防止することができる定着装置及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂微粒子を軟化させる軟化剤を含有する液状定着液と気体とを混合して泡状定着液を生成する泡状定着液生成手段と、該泡状定着液生成手段が生成した該泡状定着液を内部に充填し、その内部の圧力が外部よりも高くなることによって定着液吐出対象に向けて該泡状定着液を吐出する定着液吐出部材と、該吐出部材の内部の圧力である吐出圧を検出する吐出圧検出手段と、該吐出部材が吐出した該泡状定着液を、表面に未定着の該樹脂微粒子を担持する定着液付与対象の表面に付与する定着液付与動作、及び、該定着液吐出部材の該定着液吐出対象に対する定着液吐出動作、を制御する定着制御手段とを有し、該泡状定着液を付与することで軟化した該樹脂微粒子を記録媒体に定着する定着装置において、上記定着制御手段は、上記吐出圧が該泡状定着液の吐出に適した所望の圧力の範囲内となったことを上記吐出圧検出手段が検出した後に、上記定着液吐出動作、及び、上記定着液付与動作を実行するものであって、該吐出圧が該所望の圧力の範囲内となった後に、該吐出圧が該所望の圧力の範囲内よりも低い所定の圧力未満となったことを該吐出圧検出手段が検出した場合には、該定着制御手段は該定着液付与動作を停止することを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の定着装置において、上記定着液付与対象は上記記録媒体であり、上記定着制御手段は、該記録媒体に上記泡状定着液を付与する定着液付与位置に向かう該記録媒体の搬送を停止することで上記定着液付与動作を停止することを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1または2の定着装置において、上記泡状定着液生成手段は、上記液状定着液と気体とを混合する気液混合部と、該気液混合部に該液状定着液を供給する定着液供給手段と、該気液混合部に該気体を供給する気体供給手段とを有し、上記定着制御手段は、該定着液供給手段による該液状定着液の供給量、及び、該気体供給手段による該気体の供給量を制御するものであって、上記吐出圧が上記所望の圧力の範囲内となった後に、上記所定の圧力未満となったことを上記吐出圧検出手段が検出した場合には、該定着制御手段は、該液状定着液と該気体との供給量の比率を保ったまま、供給量を増加させることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の定着装置において、上記定着液吐出対象は、表面移動する表面上に上記定着液吐出部材が上記泡状定着液を吐出することにより上記泡状定着液生成手段が生成した該泡状定着液の供給を受け、表面移動することによって、上記定着液付与対象の表面と対向して該泡状定着液を付与する定着液付与位置まで該泡状定着液を担持して搬送し、該定着液付与位置で該泡状定着液を該定着液付与対象の表面に塗布することで該泡状定着液の付与を行う塗布部材であること特徴とする定着装置。
また、請求項5の発明は、請求項4の定着装置において、上記塗布部材の表面上の上記泡状定着液の状態を検出する泡状態検出手段を有し、上記定着制御手段が該定着液付与動作を停止した後、上記吐出圧が上記所望の圧力の範囲内となったことを上記吐出圧検出手段が検出すると、該定着制御手段は、該泡状態検出手段によって該塗布部材の表面上の該泡状定着液の状態を検出する泡状態確認動作を実行することを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、樹脂と色剤を含有する樹脂微粒子を含むトナーを用いて記録媒体上にトナー像を形成するトナー像形成手段と、記録媒体に転写するトナー像を担持するトナー像担持体の表面、または、トナー像を担持する記録媒体の表面に泡状定着液を付与し、該記録媒体上に該トナー像を定着せしめる定着手段とを備える画像形成装置であって、該定着手段として、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の定着装置を用いることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項6の画像形成装置において、上記定着制御手段は、上記吐出圧が該所望の圧力の範囲内となった後に、上記所定の圧力未満となったことを上記吐出圧検出手段が検出した場合には、その検出結果を知らせる信号である吐出圧低下信号を、上記トナー像形成手段のトナー像を形成する画像形成動作を制御する画像形成制御手段に送信し、該画像形成制御手段は、該吐出圧低下信号を受信すると、該画像形成動作における上記記録媒体上にトナー像を形成するタイミングを遅らせる、または、該画像形成動作を停止する、ことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項7の画像形成装置において、上記画像形成制御手段が上記吐出圧低下信号を受信して、上記画像形成動作における上記記録媒体上にトナー像を形成するタイミングを遅らせた場合、または、該画像形成動作を停止した場合に、使用者にその理由を報知する報知手段を備えることを特徴とするものである。
【0012】
本発明においては、吐出圧が所望の圧力の範囲内となった後に、吐出圧が所望の圧力の範囲内よりも低い所定の圧力未満となったことを吐出圧検出手段が検出した場合には、定着制御手段が定着液付与動作を停止するため、吐出圧が所定の圧力未満となったときに吐出された泡状定着液が定着液付与対象に付与されることを防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のよれば、吐出圧が所定の圧力未満となったときに吐出された泡状定着液が定着液付与対象に付与されることを防止できるため、吐出圧が低い状態で泡状定着液が吐出されることに起因する定着不良の発生を防止することができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係る定着装置の概略構成図。
【図2】実施形態に係る複写機の概略構成図。
【図3】同複写機におけるプリンタ部の内部構成の一部を拡大して示す部分拡大構成図。
【図4】同複写機における四つの作像ユニットのうちの一つを示す部分拡大図。
【図5】定着液泡状化装置を三方向から見た断面説明図。
【図6】ダイコータヘッドの先端部の説明図、(a)は、ダイコータヘッドの先端部の拡大説明図、(b)は、ダイコータヘッド先端シャッタの説明図。
【図7】定着装置が備える制御回路を説明するブロック図。
【図8】CCDセンサを用いた泡状態検出装置の制御回路を説明するブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を、電子写真方式によって画像を形成する画像形成装置である複写機(以下、複写機100と呼ぶ)に適用した実施形態について説明する。なお、本実施形態では本発明の特徴部を備える画像形成装置が複写機である構成について説明するが、プリンタ、ファクシミリ等の他の画像形成装置であってもよい。
まず、実施形態に係る複写機100の基本的な構成について説明する。図2は、複写機100を示す概略構成図である。複写機100は、プリンタ部1と、給紙装置40と、原稿搬送読取ユニット50とを備えている。原稿搬送読取ユニット50は、プリンタ部1の上に固定された原稿読取装置であるスキャナ部150と、これに支持される自動原稿搬送装置であるADF51とを有している。
【0016】
給紙装置40は、ペーパーバンク41内に多段に配設された二つの給紙カセット42、給紙カセット42から転写紙Pを送り出す送出ローラ43を有する。さらに、給紙カセット42から送り出された転写紙Pの一番上にある一枚を他の転写紙Pから分離して給紙路44に供給する分離ローラ45を有する。また、プリンタ部1の紙搬送路37に転写紙Pを搬送する複数の搬送ローラ46等も有している。そして、給紙カセット42内の転写紙Pをプリンタ部1内の紙搬送路37内に給紙する。
【0017】
プリンタ部1の上方に固定されたスキャナ部150は、原稿MSの画像を読み取るための読取手段として、固定読取部151と、移動読取部152とを有している。光源、反射ミラー、CCD等の画像読取センサなどを有する固定読取部151は、原稿MSに接触するようにスキャナ部150のケーシング上壁に固定された図示しない第一コンタクトガラスの直下に配設されている。そして、ADF51によって搬送される原稿MSが第一コンタクトガラス上を通過する際に、光源から発した光を原稿面で順次反射させながら、複数の反射ミラーを経由させて画像読取センサ153で受光する。これにより、固定読取部151では光源や反射ミラー等からなる光学系を移動させることなく、原稿MSを走査する。
【0018】
一方、移動読取部152は、原稿MSに接触するようにスキャナ部150のケーシング上壁に固定された図示しない第二コンタクトガラスの直下であって、固定読取部151の図中右側に配設されている。この移動読取部152は、光源や、反射ミラーなどからなる光学系を図中左右方向に移動させることができる。そして、光学系を図中左側から右側に移動させていく過程で、光源から発した光を第二コンタクトガラス上に載置された図示しない原稿MSで反射させる。その後、原稿MSからの反射光を複数の反射ミラーを経由させて、スキャナ本体に固定された画像読取センサ153で受光する。これにより、移動読取部152では光学系を移動させながら、原稿MSを走査する。
このように、スキャナ部150において原稿MSを走査し、画像読取センサ153で画像情報を取得する。そして、得られた画像情報に基づいて、光書込装置2では光源を駆動してドラム状の四つの感光体4(K,Y,M,C)に向けてレーザー光Lを照射する。
【0019】
図3は、プリンタ部1の内部構成の一部を拡大して示す部分拡大構成図である。プリンタ部1は、光書込装置2、K,Y,M,Cの各色のトナー像を形成する四つの作像ユニット3(K,Y,M,C)、転写ユニット90、紙搬送ユニット28、レジストローラ対33、定着装置60等を備えている。そして、上述した画像情報に基づいて、光書込装置2内に配設された図示しないレーザーダイオードやLED等の光源を駆動し、ドラム状の四つの感光体4(K,Y,M,C)に向けてレーザー光Lを照射する。この照射により、潜像担持体である感光体4(K,Y,M,C)の表面には上述した画像情報に基づいた静電潜像が形成され、この潜像は所定の現像プロセスを経由してトナー像に現像される。なお、符号の後に付されたK,Y,M,Cという添字は、ブラック,イエロー,マゼンタ,シアン用の仕様であることを示している。
【0020】
作像ユニット3(K,Y,M,C)は、それぞれ、潜像担持体である感光体4と、その周囲に配設される各種装置とを一つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、複写機100本体に対して着脱可能になっている。ブラック用の作像ユニット3Kを例にすると、感光体4Kの他、この感光体4Kの表面に形成された静電潜像をブラックトナー像に現像するための現像装置6Kを有している。また、後述するK用の一次転写ニップを通過した後の感光体4K表面に付着している転写残トナーをクリーニングする感光体クリーニング装置15Kなども有している。複写機100では、四つの作像ユニット3(K,Y,M,C)を、後述する中間転写ベルト91に対してその無端移動方向に沿って並べるように対向配設した、いわゆるタンデム型の構成になっている。
【0021】
図4は、四つの作像ユニット3(K,Y,M,C)のうちの一つの作像ユニット3の拡大図である。なお、四つの作像ユニット3(K,Y,M,C)は、それぞれ使用するトナーの色が異なる他はほぼ同様の構成になっているので、図4においては各符号に付すK,Y,M,Cという添字を省略している。図4に示すように、作像ユニット3は、感光体4の周りに、帯電装置の帯電ローラ5、現像装置6、感光体クリーニング装置15、除電装置の除電ランプ22等を有している。
【0022】
複写機100では、感光体4として、アルミニウム等の素管に感光性を有する有機感光材の塗布による感光層を形成したドラム状のものを用いている。但し、感光体としては無端ベルト状のものを用いても良い。
【0023】
現像装置6は、図示しない磁性キャリアと非磁性トナーとを含有する二成分現像剤を現像剤担持体である現像ローラ12に担持する。そして、現像ローラ12と感光体4との対向部である現像領域で感光体4上の静電潜像にトナーを供給して、静電潜像を可視像化させる。また、現像装置6は、現像ローラ12の表面に供給する二成分現像剤を収容する現像剤収容部を備え、現像剤収容部には収容する二成分現像剤を攪拌しながら搬送する攪拌搬送部材が設けられている。
現像ローラ12は回転可能に配置された非磁性の筒状の現像スリーブと、これの内部に回転不能に設けられたマグネットローラとから構成される。マグネットローラは、現像スリーブの回転方向に向けて順次並ぶ複数の磁極を有している。この複数の磁極は、それぞれ現像スリーブ上の二成分現像剤に対して回転方向の所定位置で磁力を作用させる。このような複数の磁極それぞれの磁力の作用により、現像剤収容部内の二成分現像剤を現像スリーブ表面に引き寄せて担持させるとともに、現像スリーブ表面上で磁力線に沿った磁気ブラシを形成する。
磁気ブラシは、現像スリーブの回転に伴って不図示の現像剤規制部材との対向位置を通過する際に適正な層厚に規制されてから、現像領域に搬送される。そして、現像スリーブに印加される現像バイアスと、感光体4の静電潜像との電位差によってトナーを静電潜像上に転移させて現像を行う。更に、現像領域を通過した後、現像スリーブの回転に伴って再び現像装置6内に戻った磁気ブラシを構成する二成分現像剤は、マグネットローラの磁極間に形成される反発磁界の影響によって現像スリーブ表面から離脱する。現像スリーブ表面から離脱した二成分現像剤は、現像剤収容部内に戻される。現像剤収容部内には、トナー濃度センサが配置されている。このトナー濃度センサによる検知結果に基づいて、現像剤収容部内の二成分現像剤のトナー濃度が所定の範囲内となるように、不図示のトナー補給装置が制御され、二成分現像剤に適量のトナーが補給される。
【0024】
プリンタ部1では図3に示すように、四つの作像ユニット3(K,Y,M,C)を備え、各作像ユニット3(K,Y,M,C)の感光体4(K,Y,M,C)には、これまで説明してきた作像プロセスによってK,Y,M,Cトナー像が形成される。
【0025】
図3に示すように四つの作像ユニット3(K,Y,M,C)の下方には、転写ユニット90が配設されている。この転写ユニット90は、複数の張架ローラ(92、93、94)によって張架されたトナー像担持体としての中間転写ベルト91を備える。さらに、中間転写ベルト91を挟んで第一張架ローラ92に対向する位置には、ベルトクリーニング装置32が配置されている。ベルトクリーニング装置32は、後述する二次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト91上に残留するトナーを除去するために配置されている。
転写ユニット90では中間転写ベルト91を感光体4(K,Y,M,C)に当接させながら図中時計回り方向(図3中の矢印A方向)に無端移動させる。また、中間転写ベルト91を挟んで感光体4(K,Y,M,C)に当接するようにベルトループ内側には四つの一次転写ローラ95(K,Y,M,C)が配置されている。一次転写ローラ95(K,Y,M,C)は中間転写ベルト91を感光体4(K,Y,M,C)に向けて押圧し、感光体4(K,Y,M,C)と中間転写ベルト91とが当接する一次転写ニップを形成する。
【0026】
四つの一次転写ローラ95(K,Y,M,C)には、それぞれ図示しない電源によって一次転写バイアスが印加されている。これにより、K,Y,M,C用の一次転写ニップには、感光体4(K,Y,M,C)上のトナー像を転写体である中間転写ベルト91に向けて静電移動させる一次転写電界が形成される。
図2及び図3中の時計回り方向の無端移動に伴ってK,Y,M,C用の一次転写ニップを順次通過していく中間転写ベルト91の表面には、各一次転写ニップでトナー像が順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト91の表面には四色重ね合わせトナー像(以下、四色トナー像という)が形成される。
複写機100の一次転写装置は、一次転写部材として一次転写ローラ95を備えた構成を採用しているが、一次転写部材としては導電性ブラシ、非接触のコロナチャージャー等を採用することもできる。
【0027】
図4において、一次転写ニップを通過した後の感光体4の表面には、中間転写ベルト91に一次転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、作像ユニット3の感光体クリーニング装置15により、感光体4の表面から除去される。
【0028】
感光体クリーニング装置15は、感光体4に当接しているポリウレタンゴム製の感光体クリーニングブレード16を備え、転写残トナーを一次転写ニップ通過後の感光体4表面から掻き取って除去する。感光体クリーニングブレード16は、作像ユニット3のケーシングに固定された金属製の支持部材に接着(ホットメルト)されており、感光体4に対してカウンタ方向に当接するようになっている。カウンタ方向とは、支持部材によって片持ち支持される感光体クリーニングブレード16の先端側(自由端側)を、後端側(支持端側)よりも感光体4の表面移動方向の上流側に位置させるようなブレードの向きである。
ここで、感光体クリーニング装置15によって回収されたトナーは、図示しない回収スクリュ及びトナーリサイクル装置によって、現像装置6に回収され、再利用される。
【0029】
複写機100の作像ユニット3が備える除電装置は、除電ランプ22を備えた構成であり、光を照射して感光体4の表面電位を初期化する。除電ランプ22によって除電された感光体4の表面は、帯電バイアスの印加によって感光体4との間に放電を発生させる帯電ローラ5によって一様に帯電せしめられた後、光書込装置2による光書込処理がなされる。また、複写機100の作像ユニット3が備える帯電装置は、帯電ローラ5を採用した接触帯電方式の帯電装置である。この帯電装置は帯電ローラ5を感光体4の表面に接触させて、帯電ローラ5に電圧を印加することにより感光体4の表面を一様に帯電する。なお、感光体4を一様に帯電させる帯電装置としては、帯電ローラ方式のものに代えてスコロトロンチャージャ等を採用した非接触帯電方式の帯電装置を採用することもできる。
【0030】
図3に示すように、プリンタ部1における転写ユニット90の図中下方には、二次転写ユニットとしての紙搬送ユニット28が設けられている。この紙搬送ユニット28は、駆動ローラ30と二次転写ローラ31との間に、二次転写ベルトである無端状の紙搬送ベルト29を掛け渡して無端移動させる構成である。
複写機100では紙搬送ユニット28の二次転写ローラ31と、転写ユニット90の下部張架ローラ94との間に、中間転写ベルト91及び紙搬送ベルト29を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト91の表面と、紙搬送ベルト29の表面とが当接する二次転写ニップが形成されている。二次転写ローラ31には図示しない電源によって二次転写バイアスが印加されている。一方、転写ユニット90の下部張架ローラ94は接地されている。これにより、二次転写ニップに二次転写電界が形成されている。
【0031】
この二次転写ニップの図中右側には、レジストローラ対33が配設されている。レジストローラ対33はローラ間に挟み込んだ転写紙Pを中間転写ベルト91上の四色トナー像に同期させ得るタイミングで二次転写ニップに送り出す。二次転写ニップ内では、中間転写ベルト91上の四色トナー像が二次転写電界やニップ圧の影響によって転写紙Pに一括二次転写され、転写紙Pの白色と相まってフルカラー画像となる。二次転写ニップを通過し、表面にトナー像が転写された転写紙Pは、中間転写ベルト91から離間して、紙搬送ベルト29の表面に保持されながら、その無端移動に伴って定着装置60へと搬送される。
【0032】
二次転写ニップを通過した中間転写ベルト91の表面には、二次転写ニップで転写紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、中間転写ベルト91に当接するベルトクリーニング装置32によって掻き取り除去される。
【0033】
定着装置60に搬送された転写紙Pは、詳細は後述する定着装置60内で定着液が塗布されることによってフルカラー画像が定着された後、定着装置60から送り出され、転写紙Pの片面のみに画像を形成する場合には、そのまま排紙トレイ10上に排紙される。
【0034】
図2に示すように複写機100の紙搬送ユニット28と定着装置60との下方には、転写紙反転装置であるスイッチバック装置36が配設されている。転写紙Pの両面に画像を形成する場合には、片面に対する画像定着処理を終えた転写紙Pが、切換爪で進路をスイッチバック装置36に向かうよう切り換えられ、そこで反転されて再び二次転写ニップに進入する。そして、もう片面にも画像の二次転写処理と定着処理とが施された後、排紙トレイ10上に排紙される。
【0035】
次に、複写機100に適用可能な本発明の特徴部を備えた定着装置60について図面を用いて説明する。図1は定着装置60の概略説明図である。
以下では、便宜上、ほとんど気泡を含まない通常の液体状の定着液を「液状定着液TL」といい、気泡を含有し泡状となった定着液を「泡状定着液F」という。
【0036】
定着装置60は、液状定着液TLから泡状定着液Fを生成する泡状定着液生成部600と、未定着トナーTからなる未定着画像を担持する転写紙Pに、泡状定着液生成部600で生成された泡状定着液Fを付与する泡状定着液付与部70とを備える。
【0037】
泡状定着液生成部600は、液状定着液TLと空気とを混合して泡状定着液Fを生成する定着液泡状化装置500と、生成した泡状定着液Fを泡状定着液付与部70の塗布ローラ61の表面上に均一な薄膜状に塗布するダイコータヘッド601を有する。
また、泡状定着液生成部600は、液状定着液TLを保管収納する定着液ボトル210と、定着液泡状化装置500に液状定着液TLを供給する定着液供給手段である定着液供給ポンプ200とを備える。さらに、定着液泡状化装置500に空気を供給する気体供給手段であるエアポンプ300を備える。
ダイコータヘッド601は、内部の定着液の流路であるヘッド内搬送路611の圧力を測定するヘッド内圧力センサS5と、ヘッド内搬送路611の温度を測定するヘッド内温度センサS4とが配置されている。定着液ボトル210には、定着液ボトル210内の液状定着液TLの温度を測定するボトル内温度センサS3が配置されている。
【0038】
図5は、定着液泡状化装置500を三方向から見た断面説明図である。図5(a)は、定着液泡状化装置500を下方から見た断面説明図であり、図5(b)及び(c)におけるZ−Z´断面の説明図である。図5(b)は、図5(a)及び(c)におけるX−X´断面の側方断面説明図であり、図5(b)中の矢印E方向が図1中の下方となる。図5(c)は、図5(a)及び(b)におけるY−Y´断面の側方断面説明図であり、図5(c)中の矢印E方向が図1中の下方となる。
【0039】
図5に示すように、定着液泡状化装置500は、スリット状搬送路511が形成された吐出側ケーシング560と、定着液搬送管220及び空気搬送管320に接続される供給側ケーシング570とから構成される。供給側ケーシング570には、液状定着液供給路520aと空気供給路530aとが形成されている。また、供給側ケーシング570の吐出側ケーシング560と対向する面には、液状定着液マニホールド部520b及び空気マニホールド部530bとなる溝が形成されている。一方、吐出側ケーシング560の供給側ケーシング570と対向する面には、複数の液状定着液分岐流路520c及び空気分岐流路530cとなる溝がそれぞれ複数本形成されている。
そして、吐出側ケーシング560と供給側ケーシング570とを接着等により図5のように固定することで、液状定着液マニホールド部520b、空気マニホールド部530b、液状定着液分岐流路520c及び空気分岐流路530cが形成される。
このとき、液状定着液供給路520a、液状定着液マニホールド部520b及び液状定着液分岐流路520cが液状定着液流路520となり、空気供給路530a、空気マニホールド部530b及び空気分岐流路530cが空気流路530となる。
そして、複数の液状定着液分岐流路520cがスリット状搬送路511に接続される複数の開口部が定着液供給口521となり、複数の空気分岐流路530cがスリット状搬送路511に接続される複数の開口部が空気供給口531となる。
【0040】
定着液泡状化装置500は、スリット状搬送路511の泡状定着液排出口501とは反対側の端面は壁面となっている。そして、この壁面となった端面側の端部におけるスリット状搬送路511でスリット奥行きの方向で対向し合う二つの内壁面(511fと511b)のうちの一方(511f)に定着液供給口521を備え、他方(511b)に空気供給口531を備える。
定着液供給口521と空気供給口531とは、互いに対向する位置にあり、それぞれ、スリット幅の方向に沿って定着液供給口521と定着液供給口521との開口ピッチ幅P1が2[mm]未満である。なお、本実施形態では、定着液供給口521と定着液供給口521との開口ピッチ幅P1が180[μm]である。
定着液供給口521及び空気供給口531の配置としては、スリット状搬送路511の泡状定着液排出口501とは反対側の端面に、定着液供給口521と空気供給口531とを交互に備える構成であっても良い。
【0041】
定着液泡状化装置500では、定着液供給ポンプ200及びエアポンプ300から液状定着液TL及び空気が同時に供給されることにより、定着液供給口521からスリット状搬送路511内に向けて定着液が吐出し、空気供給口531からスリット状搬送路511内に向けて空気が吐出する。これにより、複数の定着液供給口521と空気供給口531とが対向するように位置する気液混合部502において液状定着液TLと空気とが混合して泡状定着液Fが生成される。気液混合部502で生成された泡状定着液Fは、スリット状搬送路511を通過して図中矢印Eで示すように泡状定着液排出口501からダイコータヘッド601に向けて排出される。
定着液泡状化装置500の泡状定着液排出口501から排出された泡状定着液Fは、ヘッド内搬送路611を通過し、ヘッド内搬送路611の途中に形成されたマニホールド601aへと供給される。
【0042】
図6は、ダイコータヘッド601の先端部の説明図である。図6(a)は、ダイコータヘッド601の先端部の拡大説明図であり、図6(b)は、ダイコータヘッド601の先端に配置されたダイコータヘッド先端シャッタ610の説明図である。
図1に示すように、ダイコータヘッド601内の泡状定着液Fが通過するヘッド内搬送路611には大気開放弁607が接続されている。また、ダイコータヘッド601の先端部には図6に示すように、ダイコータヘッド先端シャッタ610が配置されている。
【0043】
図6(b)に示すように、ダイコータヘッド先端シャッタ610は、円柱状のシャッタ部610aとシャッタ回転軸610bとを備え、シャッタ部610aは円柱の側面に直径方向に貫通するシャッタ孔部610cが設けられている。シャッタ回転軸610bには駆動源としてのシャッタ回転モータM5が接続されており、シャッタ回転モータM5からの駆動を伝達することによって円柱状のシャッタ部610aが図6中の矢印G方向に回転する構成である。図6(a)に示すようにダイコータヘッド601は、ダイコータヘッドケーシング612内に泡状定着液Fが通過するヘッド内搬送路611が形成されている。シャッタ孔部610cが形成された位置以外のシャッタ部610aの側面がヘッド内搬送路611と対向している状態では、ヘッド内搬送路611が遮蔽された状態となり、塗布ローラ61の表面上への泡状定着液Fの供給が停止される。ヘッド内搬送路611が遮蔽された状態からシャッタ回転モータM5を駆動して、シャッタ部610aを回転させ、図6(a)に示すようにシャッタ孔部610cがヘッド内搬送路611と対向する状態となると、ヘッド内搬送路611が外部と連通し、ヘッド内搬送路611内の泡状定着液Fが塗布ローラ61の表面上に向けて吐出される。
すなわち、シャッタ回転モータM5からの駆動の伝達を制御することによって、ダイコータヘッド先端シャッタ610の開閉を制御することができる。
また、ダイコータヘッド601は、ダイコータヘッドケーシング612とシャッタ部610aとの隙間から空気や定着液が漏れ出すことを防止するためのヘッド部シール部材613を備える。
【0044】
本実施形態では、ダイコータヘッド601の先端で内部と外部とを連通する連通路の開閉を行うダイコータヘッド先端のシャッタ機構として、円柱状のシャッタ部610aとシャッタ回転モータM5とを備える構成について説明した。ダイコータヘッド先端のシャッタ機構の構成としては、この構成に限るものではなく、所望のタイミングでダイコータヘッド601の先端の連通路の開閉を行うことができればよい。例えば、連通路を遮蔽または開放するように移動可能なシャッタ部材と、シャッタ部材が連通路を遮蔽するように付勢するシャッタスプリングと、シャッタ部材の移動を制御するソレノイドとを備える構成でもよい。この構成の場合、ソレノイドをOFFにすることで、スプリング部材の付勢力によってシャッタ部材が連通路を遮蔽し、ソレノイドをONにすることで、シャッタ部材をスプリングの付勢力に抗する方向に移動させ、連通路を開放した状態とすることができる。
【0045】
定着装置60を駆動しているときには、ダイコータヘッド601から泡状定着液を排出するためダイコータヘッド601内の気圧は大気圧よりも高くなっている。このため、定着液供給ポンプ200やエアポンプ300を停止しても、ダイコータヘッド601内及び搬送経路内の圧力が高まった状態となるため、定着液の搬送経路を形成する部材の継手の僅かな隙間やダイコータヘッド601の先端部の僅かな隙間から定着液が漏れ出るおそれがある。
そこで、本実施形態の定着装置60では、装置の駆動を停止しているときには大気開放弁607を解放し、ダイコータヘッド601内及び定着液の搬送経路内の気圧を大気圧と同じにしている。さらに、ダイコータヘッド先端シャッタ610がヘッド内搬送路611を遮蔽する状態とすることで、定着装置60を停止したときに定着液が塗布ローラ61の表面に漏れ出ることを防止する。
また、ダイコータヘッド601は、塗布ローラ61の表面に泡状定着液Fが薄層状態となるように供給する泡膜形成手段として機能する。
【0046】
定着液付与手段である泡状定着液付与部70は、泡状定着液生成部600で生成された泡状定着液Fを未定着トナーTによるトナー像が形成された転写紙Pの表面に塗布するための塗布ローラ61と、塗布ローラ61に当接して塗布ニップNを形成する加圧部材である加圧ローラ62とを有する。加圧ローラ62は、表面が弾性変形するスポンジローラからなり、泡状定着液Fが塗布された未定着トナーT内に泡状定着液Fを浸透させるための圧力をかける。
また、泡状定着液付与部70は、塗布ニップNを通過した後の塗布ローラ61上に残った泡状定着液F等の残留物を回収するための回収手段を構成する塗布ローラクリーニングブレード63を有する。さらに、泡状定着液付与部70は、塗布ローラ61と対向する塗布ニップNを通過した後の加圧ローラ62上に付着した泡状定着液F等の残留物を回収する回収手段である加圧ローラクリーニングブレード64を備える。塗布ローラクリーニングブレード63で回収された残留物は塗布ローラ定着液回収タンク63aに収容され、加圧ローラクリーニングブレード64で回収された残留物は加圧ローラ定着液回収タンク64aに収容される。
【0047】
塗布ローラ61が転写紙Pに泡状定着液Fを塗布する塗布ニップNよりも転写紙Pの搬送方向(図1中の矢印B方向)上流側には、未定着トナーTからなるトナー像を担持した転写紙Pの先端を検知する紙先端検知センサS1が配置されている。また、紙先端検知センサS1のさらに上流側には、定着給紙ローラ対67が配置されており、定着給紙ローラ対67には駆動源としての定着給紙モータM4が接続されている。定着給紙ローラ対67の上下二つのローラのうち、上側のローラは、転写紙P上の未定着トナー像を乱さないように、転写紙Pの幅方向(搬送方向に直交する方向)両端部の余白部のみに接触する構成となっている。
また、定着装置60は、塗布ローラ61の駆動源としての塗布ローラ駆動モータM1、及び、加圧ローラ62の駆動源としての加圧ローラ駆動モータM2を備える。さらに、詳細は後述するがこれらの部材を制御するための定着制御手段である定着装置制御用CPU700を備える。
【0048】
次に、定着液吐出部材であるダイコータヘッド601が定着液吐出対象である塗布ローラ61に向けて泡状定着液Fを吐出する定着装置60で起こり得る課題について説明する。
ダイコータヘッド601を用いて表面移動する塗布ローラ61の表面上に均一な泡状定着液Fの薄層を形成するためには、塗布ローラ61の表面上における表面移動方向に直交する幅方向について、所定の塗布量域幅(画像領域の幅+α)に対して一気に泡状定着液Fを吐出する必要がある。
このように、所定の塗布量域幅に対して対して一気に泡状定着液Fを吐出するためには、ダイコータヘッド601内の圧力(以下、「吐出圧」と呼ぶ)を大気圧よりも高くした状態で、吐出口を開放する必要がある。
【0049】
このため、定着装置制御用CPU700は次のような制御を行う。
泡状定着液Fの吐出を行うときには、先ず大気開放弁607を解放し、シャッタ機構によって吐出口を遮蔽した状態で定着液供給ポンプ200やエアポンプ300を駆動することでマニホールド601aを含むヘッド内搬送路611に泡状定着液Fを充填する。そして、ヘッド内搬送路611に泡状定着液Fを充填した状態で大気開放弁607を閉鎖し、さらに定着液供給ポンプ200やエアポンプ300を駆動することで吐出圧が大気圧よりも高い圧力の範囲で上昇し、定着装置制御用CPU700は、吐出圧が泡状定着液Fの吐出に適した所望の圧力の範囲内となったことをヘッド内圧力センサS5が検出した後に、定着液吐出動作及び定着液付与動作を実行する。すなわち、吐出圧が所望の圧力の範囲内となると、定着液吐出動作として、塗布ローラ駆動モータM1及び加圧ローラ駆動モータM2の駆動を開始し、シャッタ回転モータM5を駆動して、シャッタ部610aの側面がヘッド内搬送路611と対向する位置までシャッタ部610aを回転させて、シャッタ回転モータM5を停止する。これにより、表面移動する塗布ローラ61の表面に向けて泡状定着液Fを吐出する定着液吐出動作がなされる。また、塗布ローラ61の表面上に吐出された泡状定着液Fの薄層の先端の位置と、転写紙P上における定着液塗布領域(例えば、画像領域)の先端の位置とが塗布ニップNで一致するタイミングで、定着給紙モータM4を駆動する。これにより、転写紙Pに対する泡状定着液Fの塗布がなされ、表面に未定着のトナーを担持する定着液付与対象である転写紙Pの表面に泡状定着液F付与する定着液付与動作がなされる。
【0050】
ここで、定着液塗布動作の際に、シャッタ機構を駆動して、吐出口を開放すると吐出圧が一気に開放され、一時的に吐出圧が低下することがある。このとき、吐出圧が一気に開放された吐出開始当初に吐出口と対向した塗布ローラ61の表面上の位置では泡状定着液Fの量が必要量よりも多く過剰な状態なる。そして、その後、吐出圧が低下し、吐出圧が所望の圧力の範囲内に上昇するまでの間に吐出口と対向した塗布ローラ61の表面上の位置では、泡状定着液Fの量が必要量よりも少ない状態や部分的に泡状定着液Fが存在しない抜けが発生した状態となる。
このような状態の塗布ローラ61によって転写紙Pに泡状定着液Fが塗布されると、転写紙P上における定着液塗布領域の先端近傍は、過剰な量の泡状定着液Fが塗布され、塗布ローラ61に対する転写紙Pの張り付きの原因となり、ジャム発生の原因となる可能性がある。また、この領域に未定着トナー像が担持されていると、過剰な量の定着液により像流れや裏写りの原因となる可能性がある。
さらに、転写紙P上における定着液塗布領域の先端近傍以降は、泡状定着液Fの量が必要量よりも少ない状態または抜けが発生した状態で塗布されるため、泡状定着液Fの層厚が薄いことに起因するオフセットや、定着液の量が不足することに起因する未定着画像発生の原因となる可能性がある。
【0051】
このような課題に対して、本実施形態の定着装置60は、吐出圧が所望の圧力の範囲内となった後に、吐出圧が所望の圧力の範囲内よりも低い所定の圧力未満となったことをヘッド内圧力センサS5が検出した場合には、定着装置制御用CPU700が定着給紙モータM4を停止する。これにより、塗布ニップNへの転写紙Pの給紙が停止され、未定着トナーを担持した転写紙Pに対する泡状定着液Fの付与が行われなくなり、定着液付与動作を停止することができる。このように、定着液付与動作を停止した後、定着装置制御用CPU700は、吐出圧が所望の圧力の範囲内となったことをヘッド内圧力センサS5が検出した後に定着給紙モータM4の駆動を再開する。
【0052】
定着装置60では、吐出圧が所定の圧力未満となった場合には定着液付与動作を停止するため、吐出圧が所定の圧力未満となったときに吐出された泡状定着液Fが定着液付与対象である転写紙Pに付与されることを防止できる。よって、必要量よりも少ない状態または抜けが発生した状態の泡状定着液Fが転写紙Pに付与されることに起因するオフセットや未定着画像発生を防止することができる。
また、定着液付与動作を停止した後、吐出圧が所望の圧力の範囲内となった後に定着給紙モータM4の駆動を再開するため、吐出圧が所定の圧力未満となってから、所望の圧力の範囲内となるまでの定着に適さない泡膜を形成する泡状定着液Fを破棄し、定着に適した泡膜となった泡状定着液Fを転写紙Pに付与することができる。
【0053】
また、定着装置制御用CPU700は、吐出圧が所望の圧力の範囲内となった後に、所定の圧力未満となったことをヘッド内圧力センサS5で検出すると、定着給紙モータM4を停止するとともに、後述する複写機100本体の制御手段である複写機本体CPU750に吐出圧が所定の圧力未満となったことを伝達する信号を送信する。この信号を受信した複写機本体CPU750は、新たなトナー像を形成する動作を停止するとともに、オペレーションパネル751やネットワークを経由した他の装置のディスプレイなどの表示部において、停止理由を表示する。表示部に停止理由を表示することで、突然の装置の動作停止に対する使用者の不安を取り除くことができる。
そして、定着液付与動作を停止した後、吐出圧が所望の圧力の範囲内となったことをヘッド内圧力センサS5が検出すると、定着装置制御用CPU700は、吐出圧が再び所望の圧力の範囲内となったことを伝達する信号を複写機本体CPU750に送信する。
【0054】
さらに、定着装置制御用CPU700は、吐出圧が所望の圧力の範囲内となった後に、所定の圧力未満となったことをヘッド内圧力センサS5で検出すると、吐出圧が所望の圧力の範囲内となるまでダイコータヘッド601から塗布ローラ61の表面への泡状定着液Fの吐出を継続する。このように、泡状定着液Fの吐出を継続するともに、塗布ローラ61の回転駆動も継続することで、定着に適さない泡膜を形成する泡状定着液Fが塗布ニップNを通過し、塗布ローラ61に当接する塗布ローラクリーニングブレード63で回収され、塗布ローラ定着液回収タンク63aに集められ最終的には破棄される。また、塗布ニップNを通過するときに、加圧ローラ62に転写された泡状定着液Fは、加圧ローラ62に当接する加圧ローラクリーニングブレード64で回収され、加圧ローラ定着液回収タンク64aに集められ最終的には破棄される。
ここで、泡状定着液Fを泡状のままの状態で塗布ローラ定着液回収タンク63a及び加圧ローラ定着液回収タンク64aで回収すると、タンク内の容量がすぐにいっぱいになる。このため、塗布ローラクリーニングブレード63や加圧ローラクリーニングブレード64で回収した泡状定着液Fを消泡して液状定着液とする不図示の消泡装置を備える。泡状定着液Fは消泡装置で熱が加えられることで破泡し、液化する。液化した定着液は、廃液として塗布ローラ定着液回収タンク63a及び加圧ローラ定着液回収タンク64a内に集められ、最終的には使用者の手によって破棄されることになる。
【0055】
複写機本体CPU750は、定着装置制御用CPU700から吐出圧が再び所望の圧力の範囲内となったことを伝達する信号を受信すると、新たなトナー像を形成する動作を再開する。
複写機本体CPU750は、吐出圧が所定の圧力未満となったことを伝達する信号を受信すると,受け取った時のタイミング(発生時の未定着トナー像作製ページ相当するメモリの内容)を記憶しておき、その後、定着装置制御用CPU700から吐出圧が再び所望の圧力の範囲内となったことを伝達する信号を受信するまで、未定着トナー像形成待ちの状態で待機する。
そして、定着装置制御用CPU700から吐出圧が再び所望の圧力の範囲内となったことを伝達する信号を受信すると、吐出圧が所定の圧力未満となったことを伝達する信号を受信したタイミング(発生時の未定着トナー像作製ページ相当するメモリの内容)から再びトナー像の形成動作を開始する。
【0056】
吐出圧が所望の圧力の範囲内となった後に、所定の圧力未満となった場合は、出来るだけ短時間に吐出圧を所望の圧力の範囲内に戻すことが求められる。このため、定着装置制御用CPU700が行う制御としては、ヘッド内圧力センサS5によって吐出圧が所定の圧力未満となったことをで検出した後に、吐出圧が所望の圧力の範囲内となったことを検出するまでの間、定着液付与動作を停止するとともに、定着液供給ポンプ200及びエアポンプ300の回転数を通常の駆動時よりも速くするように制御しても良い。具体的には、定着液供給ポンプ200やエアポンプ300に印加する電圧値を制御することで、各ポンプの回転数を速くする。このとき、液状定着液TLと空気との混合割合(定着液供給ポンプ200及びエアポンプ300によって定着液泡状化装置500に供給される液状定着液TLと空気との供給量の割合)を一定に保ったまま、供給量を多くすることで、泡状定着液Fの密度や泡質を変化させること無く泡を生成することができる。
このように、定着液供給ポンプ200及びエアポンプ300の回転数を通常の駆動時よりも速くすることで、所定の圧力未満となった吐出圧を短時間に所望の圧力の範囲内に戻すことが可能となる。吐出圧を短時間に所望の圧力の範囲内に戻すことで、定着に寄与せずに破棄される定着液の量を低減することができる。さらに、吐出圧を短時間に所望の圧力の範囲内に戻すことで、定着装置60及び複写機100のシステムの停止時間を短縮することができる。
【0057】
また、定着装置60は、塗布ローラ61の表面上におけるダイコータヘッド601の吐出口が対向する位置と、塗布ニップNとの間の位置に対向するように、詳細は後述する泡状態検出装置S2を備えている。泡状態検出装置S2によって、塗布ローラ61の表面上の泡状定着液Fの泡膜の状態を監視することができるため、吐出圧が所定の圧力未満となった後に、泡状態検出装置S2によって泡状定着液Fの泡膜の状態を確認することで、より確実に吐出圧が所望の圧力の範囲内となったことを確認することができる。なお、泡状態検出装置S2を用いた泡状態の確認動作の詳細は後述する。
【0058】
吐出圧が所望の圧力の範囲内となった後に、吐出圧が所定の圧力未満となった場合に、定着液付与動作を停止し、吐出圧が所望の圧力の範囲内となった後に定着液付与動作を再開する制御で、泡状態検出装置S2による検出結果を用いる構成では、ヘッド内圧力センサS5によって吐出圧が所望の圧力の範囲内となった後に、泡状態検出装置S2によって塗布ローラ61の表面上の泡膜が所望の状態であることを確認した後に定着給紙モータM4の駆動を再開する。
【0059】
上述した構成では、定着給紙モータM4の駆動または停止を制御することで、定着給紙ローラ対67による塗布ニップNへの転写紙Pの給紙を制御し、定着液付与動作の継続または停止を制御する構成である。塗布ニップNへの転写紙Pの給紙を制御する構成としては、定着給紙モータM4から定着給紙ローラ対67に駆動を伝達する駆動伝達部に給紙クラッチを配置し、この給紙クラッチのON/OFFを定着装置制御用CPU700が制御することによって、塗布ニップNへの転写紙Pの給紙を制御してもよい。
【0060】
また、塗布ニップNへの転写紙Pの給紙を停止した後、給紙を再開するまでの時間が、紙間の間の時間よりも長くなると、定着給紙ローラ対67で停止している転写紙Pに次の転写紙Pが追い着いてしまうおそれがある。これに対して、本実施形態の複写機100では、吐出圧が所定の圧力未満となったことを伝達する信号を複写機本体CPU750が受信すると、新たなトナー像を形成する動作を停止する。このため、定着給紙ローラ対67で転写紙Pが停止している状態で、次の未定着トナー像を担持する転写紙Pが供給されることがなく、定着給紙ローラ対67で停止している転写紙Pに次の転写紙Pが追い着く不具合の発生を防止できる。
【0061】
吐出圧が所定の圧力未満となったことが検出され、定着装置制御用CPU700が塗布ニップNへの転写紙Pの給紙を停止し、複写機本体CPU750が新たなトナー像を形成する動作を停止した後に、吐出圧が所望の圧力の範囲内となったことが検出され、泡状態検出装置S2によって、塗布ローラ61の表面上の泡状定着液Fの泡膜の状態が所望の状態であることが確認されると、塗布ニップNへの転写紙Pの給紙及び新たなトナー像を形成する動作が再開される。
これにより、未定着トナー像を担持した転写紙Pは、正常な泡状態で待ち受ける定着装置60に搬送され正常に泡塗布及び定着がなさされ、排紙される。
【0062】
ここで、塗布ニップNへの転写紙Pの給紙及び新たなトナー像を形成する動作を停止した状態で、泡生成が継続され、予め定められた規定時間を経過しても、吐出圧が所望の圧力の範囲内となったことが検出されなかったり、塗布ローラ61の表面上の泡膜の状態が所望の状態であることが確認されなかったりすると、定着装置制御用CPU700は、泡状定着液生成部600になんらかの異常が生じたと判断する。このとき、定着装置制御用CPU700は、泡状定着液生成部600に異常が生じたことを伝達する信号を複写機本体CPU750に送信する。そして、この信号を受信した複写機本体CPU750は、表示部に、サービスマンコールや詳細は後述する「リフレッシュ動作」の実施を使用者に促す表示を行う。
【0063】
次に、泡状定着液を用いる定着装置で起こり得る他の課題について説明する。
泡状定着液生成部600を用いて生成した泡状定着液Fを転写紙Pに塗布する定着処理が一旦終了し、その後に定着処理を行おうとしたときに、液状定着液が通過する微小流路である液状定着液分岐流路520cを含む液状定着液流路520や気液混合部502を含むスリット状搬送路511といった定着液流路に目詰まりが発生している場合がある。この詰まりの原因としては次の二つが考えられる。第一の原因は、定着処理終了後に液状定着液TLが通過する液状定着液流路520や泡状定着液Fが通過するスリット状搬送路511内に残留した定着液に含まれる脂肪酸塩と脂肪族エステルとを混合することによって起こるゲル化である。このゲル化した定着液が、定着液流路の一部に堆積して目詰まりとなる。第二の原因は、液状定着液流路520やスリット状搬送路511内に残留した定着液の乾燥による固形化である。液状定着液流路520やスリット状搬送路511内で定着液が固形化することによって目詰まりとなる。
【0064】
また、ケミカル定着で使用している定着液の成分には、泡化するための気泡剤が含まれている。この気泡剤としては、一般的にアニオン系界面活性剤が適している。
このアニオン系界面活性剤は陰イオン性であるため、他のイオン性の部材と結合しやすく、使用環境温度の変化によって液状定着液の組成物の一部が水に不溶な状態となる固形化が進行し、その結果、液状定着液中で水と分離する場合がある。この固形化が生じた状態となった液状定着液にせん断力を加えたり、この液状定着液を攪拌したりしても、所定の泡径や所定の泡密度の泡状定着液を生成することは難しい。
【0065】
このような課題は、液状定着液分岐流路520cのような液状定着液を流す微細な複数の流路と、空気分岐流路530cのような気体の微細な複数の流路とから、液状定着液と気体とを気液混合部に同時に供給し、瞬時に合流して混合させる本実施形態の定着装置60のような構成に限るものではない。
例えば、液状定着液にせん断力を付与しながら空気を巻き込んで泡状にする構成や液状定着液を攪拌して空気を取り込んで泡状にする構成等でも同様の問題が生じ得る。
また、特に、本実施形態の定着装置60の液状定着液分岐流路520cのような液状定着液を流す微細な複数の流路を備える構成では、ゲル化または固形化した状態を含む液状定着液が定着液泡状化装置内に存在した場合、液状定着液の微細な流路をゲル化または固形化した組成物が塞ぐことが起こり得る。ゲル化または固形化した組成物が塞ぐことにより、液状定着液の微細な流路の一部に詰まりが生じると、液状定着液と空気との混合比が崩れ所定の泡密度や所定の泡径の泡状定着液を生成することが難しくなる。
【0066】
そして、所定の泡径や所定の泡密度ではない泡状定着液を記録媒体上の未定着のトナーに付与してもトナーを十分に溶解または膨潤させることができず、トナーの定着が不十分となる。また、液状定着液中のゲル化や固形化の状態が更に進行すると、生成される泡状定着液の定着液量が不足し、塗布部材の表面上では部分的に泡状定着液が付与されない領域が形成される。このように塗布部材の表面上に泡状定着液が付与されない領域が形成されると、この領域と塗布ニップで対向する記録媒体の領域は未定着のトナーに泡状定着液が付与されず、定着不良となる。
また、本実施形態の定着液泡状化装置500内の泡状定着液Fが通過する流路であるスリット状搬送路511はスリット奥行き方向の長さが300[μm]以下の流路である。このように泡状定着液が通過する流路が狭い流路で構成されていると、定着装置60を停止した状態で長時間放置されることで、定着液のゲル化や固形化の状態となった液状定着液の組成物が泡状定着液の流路の一部を塞ぎ、目詰まりとなって泡状定着液Fの通過を妨げるおそれがある。このように流路の一部で泡状定着液の通過が妨げられると、塗布ローラ61の表面上では部分的に泡状定着液Fが付与されない領域が形成される。このように塗布ローラ61の表面上に泡状定着液Fが付与されない領域が形成されると、この領域と塗布ニップNで対向する転写紙Pの領域は未定着のトナーに泡状定着液Fが付与されず、定着不良となる。
このように、定着液のゲル化や固形化が生じると、定着後のトナー画像の定着が不十分となったり、定着不良になったりしたトナー画像に、外力が加わると画像が乱れるという不具合が生じる。
【0067】
このような課題を解決可能な構成として、定着装置60は、泡状態検出装置S2と、第一面ヒータH1及び第二面ヒータH2と、加熱制御手段として機能する定着装置制御用CPU700とを備える。
泡状態検出装置S2は、光学センサやCCDカメラからなり、塗布ローラ61の表面上の泡状定着液Fの状態を検出する泡状態検出手段である。また、第一面ヒータH1及び第二面ヒータH2は、泡状定着液生成部600における定着液が通過する流路である定着液流路を加熱する液流路加熱手段である。特に、第一面ヒータH1は、液状定着液TLを収容する定着液ボトル210を加熱し、第二面ヒータH2は、ダイコータヘッド601を加熱する。また、定着装置制御用CPU700は、泡状態検出装置S2の検出結果に基づいて、第一面ヒータH1及び第二面ヒータH2による加熱を制御する。
このような構成により、定着装置60では、塗布ローラ61表面上の泡状定着液Fの状態を検出し、塗布ローラ61の表面上に所望の泡状定着液Fが形成されない泡状態に異常な状態が生じた場合、第一面ヒータH1や第二面ヒータH2で加熱することにより、定着液のゲル化や固形化に起因する目詰まりを解消する。これにより、定着液のゲル化や固形化に起因するダイコータヘッド601内の目詰まり等の不具合を解消することができ、定着品質を維持することができる。
【0068】
また、上述した目詰まり等に起因する課題の解決に寄与することができる構成として、定着装置60は、ヘッド内圧力センサS5と、第一面ヒータH1及び第二面ヒータH2と、定着装置制御用CPU700とを備える。すなわち、ヘッド内圧力センサS5の検出結果に基づいて、ダイコータヘッド601内に目詰まりが発生しているか否かを確認する詰まり確認動作を実施する。ダイコータヘッド601内に目詰まりが発生すると、各ポンプを駆動させたときのダイコータヘッド601内の圧力である吐出圧の圧力変化が、詰まりがない状態に比べて上昇する時間が短いなど、異常が発生することが考えられる。このような吐出圧の圧力変化の異常を検出することで、目詰まりが発生した可能性があることを検出することができる。
詳細は後述するが、本実施形態の定着装置60では、ダイコータヘッド601内に泡状定着液Fを充填させた後、ダイコータヘッド601に設けられた大気開放弁607をON(閉じた状態)にした状態で各ポンプを駆動し、吐出圧を高める。このときの圧力上昇についての詰まりがない正常な状態のときのデータを予め取得しておき、定着装置制御用CPU700は、正常なときのデータとヘッド内圧力センサS5の検出結果とを比較し、その比較した結果に基づいて、圧力の上昇時間が短いなどの目詰まりに起因する圧力変化の異常を検出した目詰まりが発生したと判断する。
このような詰まり確認動作で、目詰まりが発生したと判断した場合、定着装置制御用CPU700は、第一面ヒータH1及び第二面ヒータH2による加熱を制御する。
【0069】
このような詰まり確認動作を実施する構成により、定着装置60では、ダイコータヘッド601内の圧力を検出し、異常な圧力上昇を検出した場合、第一面ヒータH1や第二面ヒータH2で加熱することにより、ゲル化や固形化した定着液の流動性を高めることができる。これにより、定着液のゲル化や固形化に起因するダイコータヘッド601内の目詰まり等の不具合を解消することができ、定着品質を維持することができる。
【0070】
上述した塗布ローラ61表面上の泡状定着液Fの状態を検出する動作(以下、泡状態確認動作と呼ぶ)や詰まり確認動作は、紙間単位やプリントジョブ終了時、複写機100の電源投入したときのイニシャライズ動作時などに実施される。泡状態確認動作で泡状定着液Fの状態を検出した結果、塗布ローラ61の表面上の泡状定着液Fのムラや泡状定着液Fを担持していない領域など、塗布ローラ61の表面上の泡状定着液Fが所定の検出状態とは異なる状態であることが検出され、そのときの吐出圧が所定の圧力以上である場合には、第一面ヒータH1及び第二面ヒータH2による加熱を開始する。また、詰まり確認動作で吐出圧の異常な圧力上昇を検出した場合も第一面ヒータH1及び第二面ヒータH2による加熱を開始する。このような加熱と共に、定着装置60の動作は停止され、複写機100内の転写紙Pは排出される。
【0071】
次に、定着装置60の一連の定着動作について、制御回路のブロック図を用いて説明する。
図7は、定着装置60が備える制御回路を説明するブロック図である。
図7に示すように、定着装置60の制御回路はA/D、D/A端子とROM、RAMなどの記憶手段とを有した定着装置制御用CPU700、外付けのタイマー710、メモリ711及び不図示の枚数カウンタ等から構成される。定着装置制御用CPU700は、各センサ(S1〜S5等)からの入力信号に応じてローラ類や各駆動モータ(M1〜M5)、定着液供給ポンプ200及びエアポンプ300等の制御を行う。図7に示す泡状態検出装置S2は、光学センサを用いた例である。
また、定着装置60内に設けられた定着装置制御用CPU700と、複写機100本体に設けられた複写機本体CPU750とは、コマンドとステータスとのやり取りで通信を行うI/F(インターフェイス)通信接続部730によって接続されている。定着装置制御用CPU700では、このI/F通信接続部730を介して複写機100本体の電源のON/OFF信号、プリント開始信号、及び、非常停止信号等の信号が割り込み端子より入力される。
【0072】
複写機100に電源が投入されると定着装置60内に設けられた定着装置制御用CPU700と、複写機本体CPU750がI/F(インターフェイス)信号群を通じて通信を行い、複写機100の電源が投入されたことを定着装置制御用CPU700が認識する。
認識後、複写機本体CPU750はトナー像形成手段であるプリンタ部1のイニシャライズ動作を行い、定着装置制御用CPU700は、定着装置60のイニシャライズ動作を開始する。
【0073】
以下、定着装置60のイニシャライズ動作について説明する。
複写機100の電源がONされると、定着装置制御用CPU700は、大気開放弁607をON(大気開放を閉じる)にし、ダイコータヘッド601のヘッド内搬送路611を遮蔽した状態とする。ヘッド内搬送路611を遮蔽する構成としては、不図示の位置センサによって円柱状のシャッタ部610aの回転位置を検出し、シャッタ部610aのシャッタ孔部610cがヘッド内搬送路611と対向する位置の場合は、シャッタ回転モータM5を駆動して、シャッタ部610aの側面がヘッド内搬送路611と対向する位置までシャッタ部610aを回転させて、停止する。
【0074】
次に、ダイコータヘッド601の先端のダイコータヘッド先端シャッタ610は閉じた状態のまま、大気開放弁607はOFF(開放状態)とする。これにより、ヘッド内搬送路611の圧力を大気圧と同じにする。次に、エアポンプ300及び定着液供給ポンプ200を稼動させ、定着液泡状化装置500に空気と液状定着液TLとを送り込む。
空気と液状定着液TLとが送り込まれた定着液泡状化装置500では、液状定着液TLは液状定着液分岐流路520cを通過し、空気は空気分岐流路530cを通過して、液状定着液TLと空気とが気液混合部502に流れ込む。気液混合部502で液状定着液TLと空気とが混合して、泡状定着液Fが生成される。
生成された泡状定着液Fは、スリット状搬送路511を通過して、泡状定着液排出口501からヘッド内搬送路611に供給される。ヘッド内搬送路611に供給された泡状定着液Fは、ヘッド内搬送路611の他の部分よりも流路断面積が広いマニホールド601aに到達する。流路断面積が広いマニホールド601a内では、その上流側及び下流側のヘッド内搬送路611よりも流体抵抗が低くなるため、流入した泡状定着液Fはマニホールド601aよりも下流側のヘッド内搬送路611に流入するよりもマニホールド601a内に広がり易い。このため、泡状定着液Fは、マニホールド601a内に充填された後に、マニホールド601aよりも下流側のヘッド内搬送路611に流入し、ダイコータヘッド先端シャッタ610の位置まで充填される。
【0075】
このとき、定着装置制御用CPU700は、ヘッド内圧力センサS5の検知結果とタイマー710の計測機能とを利用し、単位時間当たりの吐出圧の変化を把握する。そして、この圧力変化に応じて、エアポンプ300や定着液供給ポンプ200の回転数可変データをモータドライバに送信することで各ポンプに印加する電圧を制御して、各ポンプの回転数を制御する。これにより、吐出圧をほぼ一定に保つように制御する。
その後も、定着装置制御用CPU700はタイマー710の計測機能を利用し、一定時間各ポンプを駆動させダイコータヘッド601内に泡が充填されるのに十分となる時間が経過するとダイコータヘッド601に設けられた大気開放弁607をON(閉じた状態)にする。そして、大気開放弁607をON(閉じた状態)にしたまま各ポンプを駆動し続け、吐出圧を高め、吐出圧が狙いの圧力(泡状定着液Fの吐出に適した所望の圧力の範囲内)となるまで各ポンプを駆動する。このとき、上述した詰まり確認動作が実行させる。
そして、吐出圧が狙いの圧力となったことをヘッド内圧力センサS5が検出すると、定着装置制御用CPU700は、塗布ローラ61及び加圧ローラ62のモータ(M1及びM2)のON信号を送信し、塗布ローラ61及び加圧ローラ62を駆動させる。
【0076】
塗布ローラ駆動モータM1及び加圧ローラ駆動モータM2が回転を開始し、ダイコータヘッド601内の圧力が高まると、定着装置制御用CPU700は、ダイコータヘッド先端シャッタ610を開放状態とするようにシャッタ回転モータM5を駆動させる。ダイコータヘッド先端シャッタ610が開放状態となるとシャッタ回転モータM5の駆動を停止し、メモリ711のROM内に予め設定された値と、タイマー710のカウント値とを比較し、一定時間、塗布ローラ61の表面上に泡状定着液Fを供給する。
【0077】
このように、塗布ローラ61の表面上に泡状定着液Fが供給されている間に、定着装置制御用CPU700は、塗布ローラ61表面上の泡状定着液Fの状態を検出する、泡状態確認動作を実行する。
泡状定着液Fは、塗布ローラ61の表面上におけるダイコータヘッド601が対向する位置と、塗布ニップNとの間の塗布ローラ61表面に対向するように配置された泡状態検出装置S2によってその状態を検出される。泡状態検出装置S2は、図7に示すように、複数の泡塗布状態センサ(図7中ではではセンサ1〜4)を用いて泡状定着液Fの状態を検出する。
本実施形態の泡状態検出装置S2が備える複数の泡塗布状態センサは反射型の光学センサ(泡塗布の有無確認センサ)であり、更に塗布ローラ61の軸方向に移動可能な構成である。
【0078】
泡塗布状態センサが軸方向に移動することで各センサに割り当てられた各検出領域内の泡状定着液Fの状態を塗布ローラ61上の反射型光学センサの発光側からの戻り光量を受光側素子でコンパレータの基準電位と比較する。そして、受光側素子からの戻り電圧が基準値を下回っていれば塗布ローラ61の地肌部が露出に近い状態にあると判断する。すなわち、塗布ローラ61の表面上の泡状定着液Fの担持状態にムラが発生していることを示す。一方、受光側素子からの戻り電圧が基準値を上回っているようであれば、塗布ローラ61上に泡状定着液Fは十分担持されており、塗布ローラ61の表面上の泡状定着液Fの担持状態にムラが発生していないと判断する。
この時、環境や紙種に応じて塗布ローラ61上の狙いの泡膜の厚みを変化させる必要がある。本実施形態の定着装置60では定着装置制御用CPU700からD/A変換を介することで基準電圧値(CONT信号)を変化させることで実現している。
また、塗布ローラ61としては、用いる材料によってその表面の色が異なり、茶色や黒などがあり得る。このため、使用する塗布ローラ61の色に応じて受光側素子からの戻り電圧の基準値を設定する必要がある。
【0079】
図7に示す例では、泡状態検出装置S2として、4個の光学センサを使用した例を示しているが、多くの光学センサを使用することで一つのセンサによる走査範囲を狭くすることができ、検出スピードもアップすることができる。
このように、本実施形態の定着装置60では、光学センサを用いて泡状態の確認動作を行う。
【0080】
また、泡状態検出装置S2の他の例としては、CCDセンサを使用する方式も考えられる。
図8は、CCDセンサを用いた泡状態検出装置S2の制御回路を説明するブロック図である。図8に示すように、CCDセンサからなる泡状態検出装置S2の戻り値をA/D変換器を介することでデジタル化し、定着装置制御用CPU700が設定された基準DATA値とコンパレータで比較し、比較結果が上述した光学センサで述べた構成と同様に基準DATA値を超えているかどうかで、塗布ローラ61表面上の泡状定着液Fの状態を確認している。
図8に示す構成のように、泡状態検出装置S2にCCDセンサを使用することで塗布ローラ61の表面上の多くの領域における泡状定着液Fの状態を同時に確認することが可能となる。このため、光学センサを用いる方式より、更に分解能を上げることが可能であり、泡状定着液Fの細かい変化も確認可能となる。また、デジタル化することでデータの取り扱いにおいてノイズに強くすることが可能となり、より細かい泡状定着液Fの変化も確認可能となる。
【0081】
このように、イニシャライズ動作時の確認動作に用いられた塗布ローラ61の表面上の泡状定着液Fは、塗布ローラクリーニングブレード63で回収され、塗布ローラ定着液回収タンク63aに集められ最終的には破棄される。また、塗布ニップNにおいて加圧ローラ62が塗布ローラ61に接触している場合は、塗布ローラ61の表面上の泡状定着液Fの一部が加圧ローラ62に付着する。このように、加圧ローラ62の表面上に付着した泡状定着液Fは加圧ローラクリーニングブレード64で回収され、加圧ローラ定着液回収タンク64aに集められ最終的には破棄される。
【0082】
泡状態確認動作に必要な泡状定着液Fの塗布ローラ61への供給動作が終了するとエアポンプ300及び定着液供給ポンプ200の駆動を停止し、次に、ダイコータヘッド601の先端に設けられたダイコータヘッド先端シャッタ610を閉じ、大気開放弁607を開放する。
各ポンプの駆動を停止し、ダイコータヘッド先端シャッタ610を閉じることで、塗布ローラ61の表面への泡状定着液Fの供給は停止するが、塗布ローラ61や加圧ローラ62の表面上には泡状定着液Fが残留している。このため、大気開放弁607を開放した後も、各ローラの表面上に残った泡状定着液Fを全て回収できる時間(メモリ711内のROMデータに設定された値とタイマー710のカウント値を比較しながら実行する)だけ、塗布ローラ61と加圧ローラ62とを回転駆動させた後、これらのローラを停止する。
【0083】
上述の詰まり確認動作でダイコータヘッド601内の圧力変化が正常であることを確認し、泡状態確認動作で塗布ローラ61上の泡状定着液Fの状態が正常であることを確認すれば、定着装置制御用CPU700は、I/Fを介して複写機本体CPU750に対し、異常が無いことを示すレディ信号を送信する。
一方、詰まり確認動作でダイコータヘッド601内の圧力の異常上昇が確認された場合や泡状態確認動作で塗布ローラ61の表面上における泡状定着液Fの担持状態にムラが確認された場合は、後述する「リフレッシュ動作」を実施して、目詰まりを解消する。「リフレッシュ動作」によって目詰まりを解消して、その後の詰まり確認動作及び泡状態確認動作で各確認結果が正常であれば、定着装置制御用CPU700は、I/Fを介して複写機本体CPU750に対し、異常が無いことを示すレディ信号を送信する。
以上で、定着装置60の一連のイニシャライズ動作は終了となる。
【0084】
また、上述したイニシャライズ動作における詰まり確認動作や泡状態確認動作を行う前に、ダイコータヘッド601から塗布ローラ61への泡状定着液Fの供給を一定時間行い、その後、各確認動作を行う。これは、イニシャライズ動作開始時に、すでにスリット状搬送路511やヘッド内搬送路611内に蓄えられた泡状定着液Fや、泡状定着液Fが破泡して液状となった定着液を排出するためである。このため、スリット状搬送路511やヘッド内搬送路611内に蓄えられた定着液を排出するまでに要する一定時間、塗布ローラ61への泡状定着液Fの供給を行い、その後、詰まり確認動作や泡状態確認動作を行う。
【0085】
上述したように、本実施形態の定着装置60では、ダイコータヘッド先端シャッタ610を閉じた状態での大気開放弁607のON/OFF制御により、ダイコータヘッド601内の泡状定着液Fの充填を行っている。ダイコータヘッド601内への泡状定着液Fの充填方法としては、大気開放弁607を使用しない方法もある。詳しくは、ダイコータヘッド先端シャッタ610を開いた状態で、定着液供給ポンプ200及びエアポンプ300を稼動させ、スリット状搬送路511内で泡状定着液Fを発生させ、ヘッド内搬送路611へ送る。ヘッド内搬送路611内への泡状定着液Fの充填が終了した時点でダイコータヘッド先端シャッタ610を閉じることで泡状定着液Fの充填は可能である。
【0086】
次に、上述した詰まり確認動作でダイコータヘッド601内の圧力変化に異常な上昇が確認された場合や、上述した泡状態確認動作で塗布ローラ61の表面上における泡状定着液Fの担持状態にムラが確認された場合に実施する「リフレッシュ動作」について説明する。
詰まり確認動作での圧力変化の異常上昇や泡状態確認動作での塗布ローラ61の表面上における泡状定着液Fの担持状態にムラが検出されると、泡状定着液生成部600の定着液の流路内で定着液のゲル化や固形化に起因する目詰まりが発生しているとして、定着装置制御用CPU700は、図1に示す第一面ヒータH1及び第二面ヒータH2をONとする。これにより、定着液ボトル210やダイコータヘッド601が40[℃]〜50[℃]の範囲となるように、定着装置制御用CPU700は、ボトル内温度センサS3及びヘッド内温度センサS4からの戻り値をA/D変換用端子で確認し、各面ヒータのON/OFF時間、または、印加する電圧値を変化させて制御を行う。
【0087】
このように、定着液の流路を形成する部材を加熱して、その内部の定着液が所定の温度範囲となるように制御することで、ゲル化または固形化して目詰まりを起こしていた定着液の流動性が向上し、この状態で定着液流路内に新たな定着液を供給することで、目詰まりを起こしていた定着液を外部に排出することができる。本実施形態の定着装置60のダイコータヘッド601では、その先端から塗布ローラ61の表面上に排出し、塗布ローラクリーニングブレード63で回収することで、定着液流路内に発生した目詰まりが解消される。このように、定着液がゲル化または固形化した状態となってダイコータヘッド601内の定着液流路に目詰まりが生じても、目詰まりに起因する塗布ローラ61の表面上の泡状定着液Fの状態の変化を泡状態検出装置S2によって検出し、第一面ヒータH1及び第二面ヒータH2で加熱することによって目詰まりを解消することができる。
各面ヒータをONにして、定着液ボトル210やダイコータヘッド601が40[℃]〜50[℃]の範囲となると、上述した詰まり確認動作と泡状態確認動作とを再度実施し、ダイコータヘッド601内の圧力変化が正常で、塗布ローラ61の表面上に狙いの泡膜が形成されることを確認すると、リフレッシュ動作は終了となる。
【0088】
上述した説明では、複写機100の電源投入時に詰まり確認動作と泡状態確認動作とを実行する構成について説明を行った。しかし、定着装置60の定着動作終了後(=複写機100のプリント動作終了後)次のプリントまでに時間を要し、ダイコータヘッド601内に残留した泡状定着液F及び液状定着液TLが残った状態で放置された場合、プリント動作終了時に既に発生していた定着液のゲル化や固形化が、次のプリントまでの待機時間の間に進行する危険性がある。
このため、プリントジョブが終了して待機モードとなるときに、詰まり確認動作と泡状態確認動作とを実行するようにしてもよい。この場合、複写機本体CPU750からI/Fを介して待機コマンド(又は信号)を定着装置制御用CPU700が受け取ると、上述した詰まり確認動作と泡状態確認動作とを実行する。
【0089】
上述のように、イニシャライズ動作時や待機モードに入る際に、詰まり確認動作と泡状態確認動作とを実行することで、定着装置60が定着動作を実行する前後では、定着液のゲル化や固形化が発生することに起因する目詰まりの発生を確認できる。しかし、定着動作中に定着液のゲル化や固形化に起因する目詰まりが発生しても、次回の詰まり確認動作や泡状態確認動作が実行されるまで、この目詰まりを発見することができない。特に、ゲル化や固形化に起因してダイコータヘッド601内の定着液の流路に目詰まりが発生した場合、目詰まりが発生したままの状態で泡状定着液Fの生成を継続すると、詰まった箇所にさらに、ゲル化や固形化した定着液の組成物が引っかかり、目詰まりが進行するおそれがある。
よって、イニシャライズ動作時や待機モードに入る際に限らず、プリント開始時や所定枚数のプリント終了時、一定時間経過時など、頻繁に詰まり確認動作や泡状態確認動作を実行してもよい。これにより、塗布ローラ61の表面上の泡状定着液Fの担持状態にムラが発生した場合、異常画像が生じる恐れのある状態を早期に発見することが可能となる。
【0090】
塗布ローラ61の表面上の泡状定着液Fにムラが発生するなど、泡状定着液Fの状態が所望の状態ではなくなった場合、上述したように、定着液にゲル化や固形化が生じたことに起因することが考えられる。しかし、ダイコータヘッド601内で圧力漏れが発生しても、ダイコータヘッド601から塗布ローラ61の表面に所望の泡状定着液Fの供給を行うことができず、塗布ローラ61の表面上の泡状定着液Fの状態が所望の状態とは異なる状態となることがある。
本実施形態の定着装置60では、ダイコータヘッド601にヘッド内圧力センサS5を備え、ヘッド内搬送路611の圧力を測定することで、ダイコータヘッド601の内部の流路の圧力を監視している。これにより、泡状態検出装置S2の検知結果に基づいて泡状定着液Fの状態が所望の状態ではなくなったことを検出したときに、ヘッド内圧力センサS5の測定値が所望の圧力を下回っていた場合は、泡状態の異常がダイコータヘッド601内での圧力漏れに起因すると判断することができる。
【0091】
圧力漏れの確認動作では、複写機100の電源投入時のイニシャライズ動作実行時や待機モードに入る際に、大気開放弁607とダイコータヘッド先端シャッタ610とを閉じた状態でエアポンプ300と定着液供給ポンプ200とを稼動させる。このときに、ヘッド内圧力センサS5を使用し、ダイコータヘッド601内の圧力変化を確認する。
塗布ローラ61表面上の泡状定着液Fの状態に異常が確認されたときに、大気開放弁607とダイコータヘッド先端シャッタ610とを閉じた状態でエアポンプ300と定着液供給ポンプ200とを稼動させているにも係わらず、ヘッド内圧力センサS5による測定値が経時で上昇しない場合、定着装置制御用CPU700は圧力漏れが発生しているものと判断する。このとき、定着装置制御用CPU700は、I/Fを介して複写機本体CPU750に圧力漏れが発生したことを知らせる信号を送信する。この信号を受信した複写機本体CPU750は、画像形成装置としてのシステムを停止するとともに、オペレーションパネル751や外部装置であるパーソナルコンピュータの画面にサービスマンコールによるシステム停止理由の表示を実施し、使用者にシステムが停止したことを報知する。
【0092】
一方、塗布ローラ61表面上の泡状定着液Fの状態に異常が確認されたときに、大気開放弁607とダイコータヘッド先端シャッタ610とを閉じた状態でエアポンプ300と定着液供給ポンプ200とを稼動させることで、ヘッド内圧力センサS5による測定値が経時で上昇した場合、定着装置制御用CPU700は定着液にゲル化または固形化が生じたと判断する。このとき、定着装置制御用CPU700は、第一面ヒータH1や第二面ヒータH2で加熱することにより、各流路内の液状定着液TLを加温し、ゲル化または固形化に起因する目詰まりを解消する。
このとき、定着装置制御用CPU700は、I/Fを介して複写機本体CPU750にリフレッシュ動作を開始したことを知らせる信号を送信する。この信号を受信した複写機本体CPU750は、画像形成装置としてのシステムを待機状態にするとともに、オペレーションパネル751やパーソナルコンピュータの画面にウォームアップ中であることを表示し、使用者にシステムが待機中であることを報知する。ウォームアップ中は、目詰まりが解消されると判断される所定時間、第一面ヒータH1や第二面ヒータH2による加熱が行われ、その間は、複写機100のシステムを待機状態とする。
ウォームアップが所定時間達したと判断された場合は、再び詰まり確認動作と泡状態の確認動作とを実行し、塗布ローラ61表面上に正常な泡膜が形成されていることを確認すると確認動作を終了する。
【0093】
また、定着装置60で使用する定着液には多くの水が含まれているために冬場などの低温時には凍結する可能性は十分に考えられる。泡状定着液生成部600内の定着液が凍結すると、定着液中の固形化した組成物が流路内で目詰まった状態となるのと同様に、所望の泡状定着液Fを生成できなくなり、塗布ローラ61の表面上の泡状定着液Fが所望の状態ではなくなり、泡状態の異常が発生する。このとき、ゲル化や固形化ではなく、凍結に起因して流路内に詰まりが生じている場合、ゲル化や固形化を解消するほどに温度を上昇させなくても、凍結を解消できる程度に温度を上昇させれば、詰まりを解消できることがある。
このため、定着装置60の使用環境温度を測定する不図示の温度センサを設け、定着装置制御用CPU700は、温度センサの測定結果に基づいて、泡状定着液生成部600内の詰まりが凍結に起因するものか、定着液のゲル化や固形化に起因するものかの判断を行う。塗布ローラ61表面上の泡状定着液Fの状態に異常が確認されたときに、温度センサの測定結果が所定の温度よりも低い場合は、凍結によって詰まりが発生しているとして、ゲル化や固形化を解消するときの温度よりも低い温度で加熱を停止し、各確認動作を実行する。これにより、塗布ローラ61表面上の泡状定着液Fの状態が正常であると判断されれば、リフレッシュ動作を終了し、泡状定着液Fの状態が異常であると判断されたり、ダイコータヘッド601内に目詰まりが発生していると判断されたり、すれば、一部固形化を解消できる温度までさらに加熱する。このように温度センサを設けることで、泡状定着液生成部600内の詰まりが凍結に起因するものか、定着液のゲル化や固形化に起因するものかのを判断することができ、凍結に起因する場合のリフレッシュ動作におけるウォームアップ動作の時間短縮や消費電力の適正化が可能となる。
【0094】
温度センサを備える構成では次のような制御が成される。
塗布ローラ61表面上の泡状定着液Fの状態に異常が確認されたときに、大気開放弁607とダイコータヘッド先端シャッタ610とを閉じた状態でエアポンプ300と定着液供給ポンプ200とを稼動させることで、ヘッド内圧力センサS5による測定値が経時で上昇した場合、定着装置制御用CPU700は定着液にゲル化や固形化による目詰まりか、凍結か、が生じたと判断する。
このとき、定着装置制御用CPU700は温度センサの測定結果を確認し、測定温度が0[℃]以下である場合は、凍結に起因する詰まりが発生している可能性があるものと判断し、目詰まりを解消するときの温度よりも低く、凍結が解消できる程度の温度まで加熱した後、加熱を停止し、各確認動作を実行する。これにより、凍結に起因する詰まりを解消することができる。
このように凍結を解消する加熱動作を行うときには、定着装置制御用CPU700は、I/Fを介して複写機本体CPU750にリフレッシュ動作を開始したことを知らせる信号を送信する。この信号を受信した複写機本体CPU750は、画像形成装置としてのシステムを待機状態にするとともに、オペレーションパネル751やパーソナルコンピュータの画面に、システム低温化に伴うウォームアップ中であることを表示し、使用者にシステムが待機中であることを報知する。ウォームアップ中、定着装置制御用CPU700は、ボトル内温度センサS3及びヘッド内温度センサS4の検出結果に基づいて流路内の温度を監視し、凍結を解除できる温度に達したと判断された場合は、再び詰まり確認動作と泡状態確認動作とを実行する。これにより、ダイコータヘッド601内の圧力変化が正常であることを確認し、塗布ローラ61表面上に正常な泡膜が形成されていることを確認すると確認動作を終了する。
【0095】
一方、定着装置制御用CPU700が定着液にゲル化や固形化による目詰まりか、凍結が生じたと判断したときに、温度センサの測定温度が15[℃]以上である場合は、目詰まりに起因して所望の泡生成が出来なかったものと判断する。また、測定温度が0[℃]以上で、15[℃]以下の場合は、定着液の粘性が高まったために、ダイコータヘッド601内の流路を通過しにくい状態にあると判断する。定着装置制御用CPU700は、定着液の目詰まりに起因して所望の泡生成が出来なかったものと判断した場合は、定着液ボトル210やダイコータヘッド601が定着液の一部固形化を解消できる温度(40[℃]〜50[℃])の範囲となるように、ボトル内温度センサS3及びヘッド内温度センサS4の測定結果に基づいて第一面ヒータH1及び第二面ヒータH2による加熱を制御する。これにより、定着液のゲル化や固形化に起因する目詰まりを解消することができる。また、定着液の粘性が高まったために、ダイコータヘッド601内の流路を通過しにくい状態にあると判断した場合は、ゲル化や固形化に起因する目詰まりを解消できる温度よりも低く、定着液の粘性を抑制できる温度まで加熱した後、加熱を停止し、各確認動作を実行する。これにより、定着液の粘性の上昇に起因する詰まりを解消することができる。
このように定着液の粘性が高まった状態を解消する加熱動作を行うときには、定着装置制御用CPU700は、I/Fを介して複写機本体CPU750にリフレッシュ動作を開始したことを知らせる信号を送信する。この信号を受信した複写機本体CPU750は、画像形成装置としてのシステムを待機状態にするとともに、オペレーションパネル751やパーソナルコンピュータの画面に、システム低温化に伴うウォームアップ中であることを表示し、使用者にシステムが待機中であることを報知する。
ウォームアップ中、定着装置制御用CPU700は、ボトル内温度センサS3及びヘッド内温度センサS4の検出結果に基づいて流路内の温度を監視し、定着液の低粘度化を図れる狙いの温度(15[℃]以上)に達したと判断された場合は、再び詰まり確認動作と泡状態確認動作とを実行し、ダイコータヘッド601内の圧力変化が正常であることを確認し、塗布ローラ61表面上に正常な泡膜が形成されていることを確認すると確認動作を終了する。このように、定着液の低粘度化を図れる狙いの温度までで加熱を停止するため、定着液の目詰まりを解消できる温度(40[℃]〜50[℃])まで加熱する必要がなく、リフレッシュ動作におけるウォームアップ動作の時間短縮や消費電力の適正化が可能となる。
【0096】
上述した構成では、複写機100の電源投入時のイニシャライズ動作や待機モードに入る際に詰まり確認動作と泡状態確認動作が実施され目詰まりが生じた場合に対応を行っている。しかし、定着液の温度を監視する構成としては、複写機100の電源のON/OFFに無関係に常時温度を監視してもよい。常時温度を監視することで、定着液の温度が凍結する危険性が有る場合は各面ヒータをONし、定着液の凍結や粘性アップ予防につなげることが可能となる。
【0097】
上述したように、プリント開始時や所定枚数のプリント終了時、一定時間経過時など、頻繁に詰まり確認動作と泡状態確認動作とを実行する構成では、イニシャライズ動作時や待機モードに入る際のみに確認動作を行う構成よりも異常画像が生じる恐れのある状態を早期に発見することが可能となる。
しかし、このような構成であっても、目詰まりに起因して発生した異常画像は、所定枚数のプリント終了時、一定時間経過時などの次回の詰まり確認動作と泡状態確認動作とが実行されるまで発見することができないという問題がある。
このような問題に対して、定着動作時の紙間に泡状態確認動作のみを実行しても良い。詳しくは、連続プリント時に連続して定着動作を行っている間であっても、紙間には塗布ニップNに泡状定着液Fを供給する必要がないため、紙間に対応する塗布ローラ61の表面がダイコータヘッド601との対向部を通過するタイミングでは、ダイコータヘッド先端シャッタ610を閉じて塗布ローラ61への泡状定着液Fの供給を停止している。これに対して、紙間の前の転写紙Pと対応する塗布ローラ61の表面がダイコータヘッド601との対向部を通過した後、紙間でダイコータヘッド先端シャッタ610を閉鎖するタイミングを遅延させる。これにより、紙間に対応する塗布ローラ61の表面上に泡状定着液Fの泡膜を形成し、泡状態検出装置S2で泡状態を確認することができる。また、ダイコータヘッド先端シャッタ610を閉鎖するタイミングを遅延させる構成に限らず、一度閉鎖したダイコータヘッド先端シャッタ610を紙間で開放しても良い。このように、紙間で泡状態を確認することで、詰まり確認動作を必要とせず、一枚単位で泡状態を確認できることから、塗布ローラ61表面上の泡膜のムラ等、泡状態に異常が発生したとしても、異常画像は最小限に抑えることが可能となる。
ただし、紙間で泡状態確認動作を実施する場合、紙間を広くとる必要があり、頻繁に確認動作を実施しようとすると、高速で殆ど紙間が無い高速の画像形成装置には不向きである。しかし、紙間の泡状態確認動作を複数枚印刷単位で実施すれば、異常画像の発見は一枚毎に確認する構成に比べて遅延するが、紙間の狭い高速の画像形成装置でも高速性能をあまり落とす必要が無く実現が可能である。紙間の泡状態確認動作を複数枚印刷単位で実施する場合の、確認動作の周期は、画像形成装置の設計時に適宜設定される。
なお、紙間で実行される泡状態確認動作は、上述したイニシャライズ動作で実行される泡状態確認動作と同様の動作が実行される。
【0098】
また、本実施形態の泡状態検出装置S2では、光学センサやCCDセンサのように非接触型のセンサを用いて塗布ローラ61の表面上の泡状態を検知している。このように、非接触型のセンサであれば、検知対象の泡状定着液Fに影響を与えることがないため、紙間や非画像形成時に限らず未定着画像定着時の未定着画像に塗布される泡状定着液Fの泡状態を塗布ローラ61の表面上で確認しても良い。この構成では、定着装置制御用CPU700は塗布ローラ61上に泡膜が形成されている間、泡状態を確認し続ける。このように、未定着画像に塗布される泡状定着液Fの泡状態を塗布ローラ61の表面上で確認する構成であれば、常に泡状態を確認できることから、塗布ローラ61表面上の泡膜のムラ等、泡状態に異常が発生したとしても、異常画像は最小限に抑えることが可能となる。さらに、紙間で泡状態確認動作を実施する構成と異なり、紙間を広くとる必要がないため、高速の画像形成装置にも適用可能である。
【0099】
紙間の泡状定着液Fの泡状態を確認する構成や、転写紙Pに塗布する泡状定着液Fの泡状態を確認する構成のように、定着動作中に泡状態確認動作を行ったときに、泡状態の異常が確認された場合、定着装置制御用CPU700は次のような制御を行う。
定着装置制御用CPU700は、泡状態検出装置S2の検出結果に基づいて泡状態に異常が発生していると判断すると、I/Fを介して複写機本体CPU750に対して、泡状態に異常が発生したこと示す泡状態異常信号を送信する。この信号を受信した複写機本体CPU750は、給紙や作像などの複写機100の画像形成装置としてのシステムを待機状態にするとともに、定着装置制御用CPU700から泡状態が正常に行われるようにとなったことを知らせる信号(=レディ信号)が送信されるまでシステムを待機状態にする。
一方、複写機本体CPU750に対して泡状態異常信号を送信した定着装置制御用CPU700は、上述したイニシャライズ動作時と同様の「リフレッシュ動作」を実施して、詰まりを解消する。「リフレッシュ動作」によって詰まりを解消して、その後の確認動作で、塗布ローラ61上の泡状定着液Fの状態の確認結果が正常であれば、定着装置制御用CPU700は、I/Fを介して複写機本体CPU750に対し、泡状態に異常が無くなったことを示すレディ信号を送信する。
レディ信号を受信した複写機本体CPU750は、給紙や作像などの複写機100の画像形成装置としてのシステムを再開させる。その後、未定着トナー像が形成された転写紙Pが定着装置60に搬送され、未定着トナー像は定着され、印刷動作は通常通りに実施される。
【0100】
上述した本実施形態の定着装置60では、塗布ローラ61上の泡膜の泡状態の異常を検出して、泡状定着液生成部600内の流路に詰まりが発生していると判断すると、各面ヒータによる加熱を行うことで詰まりを解消しようとしている。しかし、泡状定着液F内に不純物が混入したことにより、泡膜のムラ等の泡状態の異常が発生することも考えられる。このような泡状態の異常は、不純物が混入した位置のみで発生するため、リフレッシュ動作を行う必要がない。そして、リフレッシュ動作の必要がないに係わらず、定着液が所望の温度に到達するまで各ヒータによる加熱を行うことは、消費電力の無駄となる。さらに、定着液が所望の温度に到達するまでの間、ある程度の時間を要し、その間、プリント動作は停止させるため、稼動効率の低下に繋がる。しかし、泡状態を検出するのみでは、不純物に起因するものか、詰まりに起因するものかを判別することは困難である。
このような問題に対して、泡状態に異常がない状態から一回目の泡状態の異常が検出されたときにはリフレッシュ動作を行わず、二回目の泡状態の異常が検出されたときにリフレッシュ動作を実行するように制御してもよい。
不純物に起因する泡状態の異常は、不純物が混入した部分の泡状定着液Fが泡状態検出装置S2による検知位置を通過すると、解消されるため、二回目の泡状態の異常は検出されない。一方、詰まりに起因する泡状態の異常は、詰まりが解消されない限り再発するため二回目の泡異常が検出される。よって、二回目以降の泡異常が検出されたときに加熱を含むリフレッシュ動作を実行することによって詰まりに起因する泡状態の異常を解消しつつ、不純物に起因する泡異常が発生したときに不要な加熱を行わず、消費電力の無駄や稼動効率の低下を防止することができる。
【0101】
本実施形態の定着装置60では、定着液泡状化装置500として、マイクロミキサと同様の構成を備えた装置を用いる構成である。定着液泡状化装置500としてはこのような構成に限るものではなく、液状定着液にせん断力を付与しながら空気を巻き込んで泡状にする構成や、液状定着を攪拌して空気を取り込んで泡状にする構成等でも、本実施形態と同様に、吐出圧が所望の圧力の範囲内となった後に、所定の圧力未満となったことを検出した場合には、定着液付与動作を停止する構成は適用可能である。さらに、本実施形態では液状定着液TLに空気を混合させて泡化しているが、定着液の成分に影響しない気体であれば空気に限るものではない。
【0102】
以上、本実施形態の定着装置60は、定着液泡状化装置500及びダイコータヘッド601を備える泡状定着液生成部600と、塗布ローラ61を備えた泡状定着液付与部70と、定着装置制御用CPU700とを備える。定着液泡状化装置500は、トナーを形成する樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂微粒子であるトナーを軟化させる軟化剤を含有する液状定着液TLと気体である空気とを混合して泡状定着液Fを生成する泡状定着液生成手段である。ダイコータヘッド601は、定着液泡状化装置500が生成した泡状定着液Fを内部に充填し、その内部の圧力が外部よりも高くなることによって定着液吐出対象である塗布ローラ61に向けて泡状定着液Fを吐出する定着液吐出部材である。ダイコータヘッド601には、その内部の圧力である吐出圧を検出する吐出圧検出手段であるヘッド内圧力センサS5が配置されている。定着装置制御用CPU700は、ダイコータヘッド601が吐出した泡状定着液Fを塗布ローラ61で塗布することで、表面に未定着のトナー像を担持する定着液付与対象である転写紙Pの表面に泡状定着液Fを付与する定着液付与動作、及び、ダイコータヘッド601の塗布ローラ61に対する定着液吐出動作、を制御する定着制御手段である。そして、定着装置60では、泡状定着液Fを塗布することで軟化した未定着トナーTを記録媒体である転写紙Pに定着する装置である。このような定着装置60において、定着装置制御用CPU700は、吐出圧が泡状定着液Fの吐出に適した所望の圧力の範囲内となったことをヘッド内圧力センサS5が検出した後に、定着液吐出動作、及び、定着液付与動作を実行するものであって、吐出圧が所望の圧力の範囲内となった後に、吐出圧が所望の圧力の範囲内よりも低い所定の圧力未満となったことをヘッド内圧力センサS5が検出した場合には、定着装置制御用CPU700は定着給紙モータM4の駆動を停止して塗布ニップNへの転写紙Pの給紙を停止して、定着液付与動作を停止する。このように、吐出圧が所望の圧力の範囲内となった後に、所定の圧力未満となったことをヘッド内圧力センサS5が検出した場合には、定着装置制御用CPU700が定着給紙モータM4の駆動を停止して定着液付与動作を停止するため、吐出圧が所定の圧力未満となったときに吐出された泡状定着液Fが定着液付与対象である転写紙Pに付与されることを防止できる。これにより、吐出圧が低い状態で泡状定着液Fが吐出されることに起因する定着不良の発生を防止することができるという優れた効果がある。
また、本実施形態の定着装置60では、定着液付与対象が記録媒体である転写紙Pであるが、定着液付与対象としては、未定着のトナーを担持する中間転写体等のトナー像担持体に定着液を付与して、軟化した状態のトナーを記録媒体に転写する構成におけるトナー像担持体であってもよい。さらに、本実施形態の定着装置60では、定着液吐出対象が塗布ローラ61であるが、吐出部材が吐出した泡状定着液を、塗布部材を介して定着液付与対象に塗布することで付与する構成に限らず、吐出部材から定着液付与対象に向けて泡状定着液を吐出することで、定着液付与対象に泡状定着液を付与する構成であってもよい。
【0103】
また、定着装置60では、定着液付与対象は転写紙Pであり、定着装置制御用CPU700は、転写紙Pに泡状定着液Fを付与する定着液付与位置である塗布ニップNに向かう転写紙Pの搬送を停止することで定着液付与動作を停止する。このように、塗布ニップNに向かう転写紙Pの搬送を停止することで、転写紙Pに対して泡状定着液Fを付与されることを確実に停止することができる。
【0104】
また、定着装置60の定着液泡状化装置500は、液状定着液TLと空気とを混合する気液混合部502を含むスリット状搬送路511と、スリット状搬送路511に液状定着液TLを供給する定着液供給手段である定着液供給ポンプ200と、スリット状搬送路511に空気を供給する気体供給手段であるエアポンプ300とを有する。また、定着装置制御用CPU700は、定着液供給ポンプ200による液状定着液TLの供給量、及び、エアポンプ300による空気の供給量を制御するものであって、吐出圧が所望の圧力の範囲内となった後に、所定の圧力未満となったことをヘッド内圧力センサS5が検出した場合には、定着装置制御用CPU700は、液状定着液TLと空気との供給量の比率を保ったまま、供給量を増加させる。これにより、所定の圧力未満となった吐出圧を短時間に所望の圧力の範囲内に戻すこと可能となり、定着に寄与せずに破棄される定着液の量を低減することができ、さらに、定着装置60及び複写機100のシステムの停止時間を短縮することができる。
【0105】
また、定着装置60の定着液吐出対象は、表面移動する表面上にダイコータヘッド601が泡状定着液Fを吐出することにより定着液泡状化装置500が生成した泡状定着液Fの供給を受け、表面移動することによって、定着液付与対象である転写紙Pの表面と対向して泡状定着液Fを付与する定着液付与位置である塗布ニップNまで泡状定着液Fを担持して搬送し、塗布ニップNで泡状定着液Fを転写紙Pの表面に塗布することで泡状定着液Fの付与を行う塗布部材としての塗布ローラ61である。このような構成により、吐出部材であるダイコータヘッド601から吐出される泡状定着液Fを未定着トナーTを担持した転写紙Pに付与する構成が実現可能となる。
【0106】
また、定着装置60は、塗布部材である塗布ローラ61の表面上の泡状定着液Fの状態を検出する泡状態検出手段である泡状態検出装置S2を有し、定着装置制御用CPU700が定着液付与動作を停止した後、吐出圧が所望の圧力の範囲内となったことをヘッド内圧力センサS5が検出すると、定着装置制御用CPU700は、泡状態検出装置S2によって塗布ローラ61の表面上の泡状定着液Fの状態を検出する泡状態確認動作を実行する。このように泡状態確認動作を実施し、塗布ローラ61の表面上の泡状定着液Fが所望の状態であることを確認した後に定着液付与動作を再開することで、より確実に適切な定着を行うことができる。
【0107】
また、本実施形態の複写機100は、樹脂と色剤を含有する樹脂微粒子を含むトナーを用いて記録媒体である転写紙P上にトナー像を形成するトナー像形成手段であるプリンタ部1と、トナー像を担持する転写紙Pの表面に泡状定着液Fを付与し、転写紙P上にトナー像を定着せしめる定着手段とを備え、定着手段として、本実施形態の定着装置60を用いることにより、吐出圧が低い状態で泡状定着液Fが吐出されることに起因する定着不良を防止し、画像品質を維持することができる。
【0108】
また、複写機100では、定着装置制御用CPU700は、吐出圧が所望の圧力の範囲内となった後に、所定の圧力未満となったことをヘッド内圧力センサS5が検出した場合には、その検出結果を知らせる信号である吐出圧低下信号を、プリンタ部1のトナー像を形成する画像形成動作を制御する画像形成制御手段である複写機本体CPU750に送信する。そして、複写機本体CPU750は、吐出圧低下信号を受信すると、画像形成動作における転写紙P上にトナー像を形成するタイミングを遅らせる、または、画像形成動作を停止する制御を行う。これにより、定着給紙ローラ対67で停止している転写紙Pに次の転写紙Pが追い着く不具合の発生を防止できる。
【0109】
また、複写機100では、複写機本体CPU750が吐出圧低下信号を受信して、画像形成動作における転写紙P上にトナー像を形成するタイミングを遅らせた場合、または、画像形成動作を停止した場合に、使用者にその理由を報知する報知手段である不図示の表示部を備える。表示部に停止理由を表示することで、突然の装置の動作の遅延や動作停止に対する使用者の不安を取り除くことができる。
【符号の説明】
【0110】
1 プリンタ部
3 作像ユニット
28 紙搬送ユニット
40 給紙装置
50 原稿搬送読取ユニット
60 定着装置
61 塗布ローラ
62 加圧ローラ
67 定着給紙ローラ対
70 泡状定着液付与部
90 転写ユニット
100 複写機
150 スキャナ部
200 定着液供給ポンプ
210 定着液ボトル
220 定着液搬送管
300 エアポンプ
500 定着液泡状化装置
600 泡状定着液生成部
601 ダイコータヘッド
607 大気開放弁
610 ダイコータヘッド先端シャッタ
611 ヘッド内搬送路
700 定着装置制御用CPU
750 複写機本体CPU
751 オペレーションパネル
【先行技術文献】
【特許文献】
【0111】
【特許文献1】特開2006−78573号公報
【特許文献2】特開2007−219105号公報
【特許文献3】特開2010−286816号公報
【特許文献4】特開2010−169947号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂微粒子を軟化させる軟化剤を含有する液状定着液と気体とを混合して泡状定着液を生成する泡状定着液生成手段と、
該泡状定着液生成手段が生成した該泡状定着液を内部に充填し、その内部の圧力が外部よりも高くなることによって定着液吐出対象に向けて該泡状定着液を吐出する定着液吐出部材と、
該吐出部材の内部の圧力である吐出圧を検出する吐出圧検出手段と、
該吐出部材が吐出した該泡状定着液を、表面に未定着の該樹脂微粒子を担持する定着液付与対象の表面に付与する定着液付与動作、及び、該定着液吐出部材の該定着液吐出対象に対する定着液吐出動作、を制御する定着制御手段とを有し、
該泡状定着液を付与することで軟化した該樹脂微粒子を記録媒体に定着する定着装置において、
上記定着制御手段は、上記吐出圧が該泡状定着液の吐出に適した所望の圧力の範囲内となったことを上記吐出圧検出手段が検出した後に、上記定着液吐出動作、及び、上記定着液付与動作を実行するものであって、
該吐出圧が該所望の圧力の範囲内となった後に、該吐出圧が該所望の圧力の範囲内よりも低い所定の圧力未満となったことを該吐出圧検出手段が検出した場合には、
該定着制御手段は該定着液付与動作を停止することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1の定着装置において、
上記定着液付与対象は上記記録媒体であり、
上記定着制御手段は、該記録媒体に上記泡状定着液を付与する定着液付与位置に向かう該記録媒体の搬送を停止することで上記定着液付与動作を停止することを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1または2の定着装置において、
上記泡状定着液生成手段は、上記液状定着液と気体とを混合する気液混合部と、
該気液混合部に該液状定着液を供給する定着液供給手段と、
該気液混合部に該気体を供給する気体供給手段とを有し、
上記定着制御手段は、該定着液供給手段による該液状定着液の供給量、及び、該気体供給手段による該気体の供給量を制御するものであって、
上記吐出圧が上記所望の圧力の範囲内となった後に、上記所定の圧力未満となったことを上記吐出圧検出手段が検出した場合には、
該定着制御手段は、該液状定着液と該気体との供給量の比率を保ったまま、供給量を増加させることを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の定着装置において、
上記定着液吐出対象は、表面移動する表面上に上記定着液吐出部材が上記泡状定着液を吐出することにより上記泡状定着液生成手段が生成した該泡状定着液の供給を受け、表面移動することによって、上記定着液付与対象の表面と対向して該泡状定着液を付与する定着液付与位置まで該泡状定着液を担持して搬送し、該定着液付与位置で該泡状定着液を該定着液付与対象の表面に塗布することで該泡状定着液の付与を行う塗布部材であること特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項4の定着装置において、
上記塗布部材の表面上の上記泡状定着液の状態を検出する泡状態検出手段を有し、
上記定着制御手段が該定着液付与動作を停止した後、
上記吐出圧が上記所望の圧力の範囲内となったことを上記吐出圧検出手段が検出すると、該定着制御手段は、該泡状態検出手段によって該塗布部材の表面上の該泡状定着液の状態を検出する泡状態確認動作を実行することを特徴とする定着装置。
【請求項6】
樹脂と色剤を含有する樹脂微粒子を含むトナーを用いて記録媒体上にトナー像を形成するトナー像形成手段と、
記録媒体に転写するトナー像を担持するトナー像担持体の表面、または、トナー像を担持する記録媒体の表面に泡状定着液を付与し、
該記録媒体上に該トナー像を定着せしめる定着手段とを備える画像形成装置であって、
該定着手段として、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の定着装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項6の画像形成装置において、
上記定着制御手段は、上記吐出圧が該所望の圧力の範囲内となった後に、上記所定の圧力未満となったことを上記吐出圧検出手段が検出した場合には、その検出結果を知らせる信号である吐出圧低下信号を、上記トナー像形成手段のトナー像を形成する画像形成動作を制御する画像形成制御手段に送信し、
該画像形成制御手段は、該吐出圧低下信号を受信すると、該画像形成動作における上記記録媒体上にトナー像を形成するタイミングを遅らせる、または、該画像形成動作を停止する、ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項7の画像形成装置において、
上記画像形成制御手段が上記吐出圧低下信号を受信して、上記画像形成動作における上記記録媒体上にトナー像を形成するタイミングを遅らせた場合、または、該画像形成動作を停止した場合に、
使用者にその理由を報知する報知手段を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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