説明

定着装置

【課題】ニップ板が圧延によって形成される場合において、筒状部材のニップ板に対する摺動性を向上させることを主たる目的とする。
【解決手段】定着装置は、可撓性を有する筒状部材と、筒状部材の内周面に摺接する金属製のニップ板130と、ニップ板130との間で筒状部材を挟んだ状態で回転することで、当該筒状部材とともに記録シートを搬送するバックアップ部材と、を備える。ニップ板130と筒状部材との間には、潤滑剤が介在される。そして、ニップ板130は、圧延により形成された板材により構成され、圧延時に圧延ロールにより表面に形成されるロール目Rが記録シートの搬送方向に沿うように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状のニップ板を備える定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、赤外線ヒータと、当該赤外線ヒータによって加熱されるニップ板と、筒状の定着ベルトと、ニップ板との間で定着ベルトを挟む加圧ローラとを備える定着装置が知られている(特許文献1参照)。この定着装置では、加圧ローラの回転に従動して定着ベルトが回転するようになっており、加圧ローラと定着ベルト間で用紙が搬送されることで、用紙上のトナー像が熱定着されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−233886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、前述したニップ板を、一対の圧延ローラによって圧延して形成することが考えられている。この場合、ニップ板の表面には、圧延ローラの微小な凹凸が転写されることによって複数の筋、すなわちロール目が形成される。
【0005】
しかしながら、ロール目が用紙の搬送方向に直交するようにニップ板を配置すると、定着ベルトとニップ板との摺動抵抗が増すため、定着ベルトを良好に回転させることができなくなるおそれがある。また、摺動性を向上させるために、定着ベルトとニップ板との間に潤滑剤を介在させることも考えられるが、この場合も、搬送方向に直交したロール目によって潤滑剤が過度に堰き止められ、堰き止められた箇所よりも下流側における定着ベルトとニップ板との摺動抵抗が増すおそれもあった。
【0006】
そこで、本発明は、ニップ板が圧延によって形成される場合において、定着ベルト(筒状部材)のニップ板に対する摺動性を向上させることを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る定着装置は、可撓性を有する筒状部材と、前記筒状部材の内周面に摺接する金属製のニップ板と、前記ニップ板との間で前記筒状部材を挟んだ状態で回転することで、当該筒状部材とともに記録シートを搬送するバックアップ部材と、を備える。
前記ニップ板と前記筒状部材との間には、潤滑剤が介在される。
そして、前記ニップ板は、圧延により形成された板材により構成され、圧延時に圧延ロールにより表面に形成されるロール目が前記記録シートの搬送方向に沿うように配置されている。
【0008】
本発明によれば、ロール目が記録シートの搬送方向に沿うので、筒状部材のニップ板に対する摺動性を向上することができる。また、ロール目が記録シートの搬送方向に沿うので、潤滑剤のニップ板での過度な堰き止めを抑えることができる。
【0009】
また、本発明において、前記ニップ板のうち前記筒状部材に接する縁部は、プレス加工時に形成されるバリの向きが前記筒状部材の内側を向くように構成されているのが望ましい。
【0010】
これによれば、筒状部材がバリに引っ掛かるのを抑えることができるので、筒状部材の摺動性をより向上することができる。
【0011】
また、本発明では、前記ニップ板のうち前記搬送方向における端部が、前記筒状部材の内側に反るように構成されているのが望ましい。
【0012】
これによれば、ニップ板のうち搬送方向における端部が筒状部材の内側に反るので、筒状部材がニップ板の端縁と擦れて磨耗するのを抑えることができる。
【0013】
また、本発明において、前記筒状部材は、金属製であってもよい。
【0014】
これによれば、摺動抵抗の大きな金属製の筒状部材を用いる場合であっても、ロール目によって筒状部材の摺動性を向上することができる。
【0015】
なお、このように筒状部材が金属製の場合には、筒状部材の内周面に、筒状部材の回転方向に研磨された研磨目を形成するのが望ましい。
【0016】
これによれば、筒状部材の回転時に研磨目が抵抗とならないので、筒状部材の摺動性を向上することができる。
【0017】
また、本発明において、前記筒状部材は、樹脂製であってもよい。
【0018】
これによれば、樹脂製の筒状部材を用いることで、摺動抵抗を小さくすることができるので、筒状部材の摺動性をより向上することができる。
【0019】
また、本発明において、前記ニップ板は、アルミニウム製であってもよい。
【0020】
これによれば、ニップ板の熱伝導性を向上することができる。
【0021】
また、本発明において、前記ニップ板は、金属製の本体部と、前記本体部のうち少なくとも前記筒状部材と摺接する摺接面に形成され、かつ、前記筒状部材の内周面よりも硬い保護層とを有するように構成されるのが望ましい。
【0022】
これによれば、ロール目の形状を維持することができるので、前述した効果を長期間にわたって持続することができる。
【0023】
また、本発明において、前記保護層は、前記摺接面にめっき処理を行って形成した層であってもよい。
【0024】
また、本発明において、前記保護層は、前記摺接面にめっき処理を行った後に、ベーキング処理を行って形成した層であってもよい。
【0025】
これによれば、めっき処理のみよりも、ロール目の形状をより維持することができる。
【0026】
また、本発明において、前記保護層は、前記摺接面の硬度を前記筒状部材の内周面よりも硬く変質させた層であってもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ニップ板が圧延によって形成される場合において、筒状部材のニップ板に対する摺動性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の定着装置を備えたレーザプリンタの概略構成を示す図である。
【図2】定着装置の断面図である。
【図3】定着ベルトの内周面に形成された研磨目を示す斜視図である。
【図4】ニップ板、ハロゲンランプ、反射部材およびステイの斜視図である。
【図5】ニップ板に形成されたロール目やバリを誇張して示す説明図である。
【図6】ニップ板の表面に形成された保護層を誇張して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明では、まず、本発明の実施形態に係る定着装置100を備えたレーザプリンタ1(画像形成装置)の概略構成を簡単に説明した後、定着装置100の詳細な構成について説明する。
【0030】
また、以下の説明において、方向は、レーザプリンタ1を使用するユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、図1における右側を「前」、左側を「後」とし、手前側を「左」、奥側を「右」とする。また、図1における上下方向を「上下」とする。
【0031】
<レーザプリンタの概略構成>
図1に示すように、レーザプリンタ1は、本体筐体2内に、記録シートの一例としての用紙Sを供給する給紙部3と、露光装置4と、用紙S上にトナー像(現像剤像)を転写するプロセスカートリッジ5と、用紙S上に転写されたトナー像を熱定着する定着装置100とを主に備えている。
【0032】
給紙部3は、本体筐体2内の下部に設けられ、給紙トレイ31と、用紙押圧板32と、給紙機構33とを主に備えている。給紙トレイ31に収容された用紙Sは、用紙押圧板32によって上方に寄せられ、給紙機構33によってプロセスカートリッジ5(感光体ドラム61と転写ローラ63との間)に向けて供給される。
【0033】
露光装置4は、本体筐体2内の上部に配置され、図示しないレーザ発光部や、符号を省略して示すポリゴンミラー、レンズ、反射鏡などを備えている。この露光装置4では、レーザ発光部から出射される画像データに基づくレーザ光(鎖線参照)が、感光体ドラム61の表面で高速走査されることで、感光体ドラム61の表面を露光する。
【0034】
プロセスカートリッジ5は、露光装置4の下方に配置され、本体筐体2に設けられたフロントカバー21を開いたときにできる開口から本体筐体2に対して着脱可能に装着される構成となっている。このプロセスカートリッジ5は、ドラムユニット6と、現像ユニット7とから構成されている。
【0035】
ドラムユニット6は、感光体ドラム61と、帯電器62と、転写ローラ63とを主に備えている。また、現像ユニット7は、ドラムユニット6に対して着脱可能に装着される構成となっており、現像ローラ71と、供給ローラ72と、層厚規制ブレード73と、トナー(現像剤)を収容するトナー収容部74とを主に備えている。
【0036】
このプロセスカートリッジ5では、感光体ドラム61の表面が、帯電器62により一様に帯電された後、露光装置4からのレーザ光の高速走査によって露光されることで、感光体ドラム61上に画像データに基づく静電潜像が形成される。また、トナー収容部74内のトナーは、供給ローラ72を介して現像ローラ71に供給され、現像ローラ71と層厚規制ブレード73の間に進入して一定厚さの薄層として現像ローラ71上に担持される。
【0037】
現像ローラ71上に担持されたトナーは、現像ローラ71から感光体ドラム61上に形成された静電潜像に供給される。これにより、静電潜像が可視像化され、感光体ドラム61上にトナー像が形成される。その後、感光体ドラム61と転写ローラ63の間を用紙Sが搬送されることで感光体ドラム61上のトナー像が用紙S上に転写される。
【0038】
定着装置100は、プロセスカートリッジ5の後方に設けられている。用紙S上に転写されたトナー像は、定着装置100を通過することで用紙S上に熱定着される。その後、用紙Sは、搬送ローラ23,24によって排紙トレイ22上に排出される。
【0039】
<定着装置の詳細構成>
図2に示すように、定着装置100は、筒状部材の一例としての定着ベルト110と、ハロゲンランプ120と、ニップ板130と、バックアップ部材の一例としての加圧ローラ140と、反射部材150と、ステイ160とを主に備えている。
【0040】
定着ベルト110は、耐熱性と可撓性を有する無端状(筒状)のステンレス綱製のベルトであり、図3に示すように、その内周面111には、スピニング加工などによって定着ベルト110の回転方向に研磨された研磨目111Aが、当該回転方向に沿って筋状に形成されるようになっている。これにより、定着ベルト110の回転時に、内周面111の研磨目111Aが抵抗とならないので、定着ベルト110の内周面111と他部材との摺動性を向上することが可能となっている。
【0041】
そして、この定着ベルト110は、フレーム部材200に形成されたガイド部(ニップ上流ガイド310、ニップ下流ガイド320、上部ガイド330および前部ガイド340)により回転が案内されている。ここで、フレーム部材200は、第1フレーム210と、第2フレーム220とを主に備えて構成されている。
【0042】
第1フレーム210は、断面視略U形状をなして左右方向に長く延びるように形成されており、ステイ160を挟んでハロゲンランプ120とは反対側でステイ160を覆うように配置されている。第1フレーム210は、後側壁211と、前側壁212と、後側壁211および前側壁212の上端同士を連結するように延びる上壁213と、後側壁211の下端から後方に向けて延びる延出壁214とを主に有している。
【0043】
そして、前側壁212の右端側には、定着ベルト110の前部分を案内する前部ガイド340が形成され、前側壁212の下端には、定着ベルト110の前側下部を案内するニップ上流ガイド310が形成されている。また、延出壁214の後端には、定着ベルト110の後側下部を案内するニップ下流ガイド320が形成されている。
【0044】
第2フレーム220は、断面視略L形状をなして左右方向に長く延びるように形成されており、第1フレーム210の後側壁211と上壁213の一部を覆うように配置されている。第2フレーム220は、上壁221と、上壁221の後端から下方に向けて延びる後壁222と、後壁222の下端から後方に向けて延びる延出壁223とを主に有している。そして、上壁221には、定着ベルト110の上部を案内する上部ガイド330が形成されている。
【0045】
ハロゲンランプ120は、輻射熱を発してニップ板130および定着ベルト110(ニップ部N)を加熱することで用紙S上のトナーを加熱する部材であり、定着ベルト110の内側において定着ベルト110およびニップ板130の内面から所定の間隔をあけて配置されている。
【0046】
このハロゲンランプ120は、図4に示すように、細長い円筒状のガラス管121内に、図示しないフィラメントを配置し、ガラス管121の長手方向両端部を閉じてその内部にハロゲン元素を含む不活性ガスを封入することにより形成されている。このハロゲンランプ120の長手方向両端には、ガラス管121内のフィラメントの端部と電気的に接続された一対の電極122が設けられている。
【0047】
図2に戻り、ニップ板130は、ハロゲンランプ120からの輻射熱を受ける板状の部材であり、その下面が定着ベルト110の内周面111に摺接するように配置されている。本実施形態において、ニップ板130は、金属製であり、例えば、後述するスチール製のステイ160より熱伝導率が大きい、アルミニウム板などを折り曲げることで形成されている。なお、ニップ板130をアルミニウム製とした場合には、ニップ板130の熱伝導性を向上させることが可能となっている。
【0048】
ニップ板130は、圧延により形成された板材をプレス加工することで図に示す形状に形成されている。そして、このニップ板130は、図5に示すように、圧延時に圧延ロールにより表面に形成されるロール目Rが前後方向(用紙Sの搬送方向)に沿うように配置されている。なお、図5においては、ニップ板130の上面のみを図示しているが、下面(摺接面)も同様にロール目Rが形成されている。
【0049】
これによれば、ロール目Rが用紙Sの搬送方向に沿うので、定着ベルト110のニップ板130に対する摺動性を向上することが可能となっている。特に、本実施形態のように定着ベルト110とニップ板130がともに金属製である場合には、定着ベルト110とニップ板130との摺接抵抗が大きくなるが、ロール目Rを搬送方向に沿った向きにすることで、定着ベルト110の摺動性を向上することが可能となっている。
【0050】
また、ロール目Rが用紙Sの搬送方向に沿うことによって、ニップ板130と定着ベルト110との間に介在される潤滑剤G(図2参照)が、ニップ板130で過度に堰き止められるのを抑えることが可能となっている。
【0051】
また、ニップ板130の後縁部130A(定着ベルト110に接する縁部)は、プレス加工時に形成されるバリBの向きが上側(定着ベルト110の内側)を向くように構成されている。これにより、定着ベルト110がバリBに引っ掛かるのを抑えることができるので、定着ベルト110の摺動性をより向上することが可能となっている。
【0052】
また、図6に示すように、ニップ板130は、金属製の本体部130Bと、本体部130Bの表面全体を覆うように形成される保護層130Cとを有するように構成されている。保護層130Cは、定着ベルト110の内周面111よりも硬くなるように構成されている。
【0053】
より詳細に、保護層130Cは、その硬度が、ステンレス綱製の定着ベルト110の内周面111の硬度(例えば、SUS304製であればHv硬度でおよそ400)よりも高くなっている。これにより、保護層130Cによってロール目Rの形状を維持することができるので、前述したロール目Rによる効果を長期間にわたって持続することが可能となっている。
【0054】
本実施形態において、保護層130Cは、本体部130Bの表面に、定着ベルト110の内周面111よりも硬い(硬度が高い)材料であって、かつ、本体部130Bの材料とは別の材料の層を形成する処理を行って形成した層である。より具体的に、保護層130Cは、本体部130Bの表面に、公知の無電解のニッケル−リンめっき処理を行って形成した、ニッケル−リン合金のめっき層である。さらに、本実施形態において、保護層130Cは、本体部130Bの表面に無電解ニッケル−リンめっき処理を行った後に、ベーキング処理(一例として、200℃、1時間)を行って形成されている。これにより、保護層130Cの硬度(Hv硬度)は、およそ500〜700となっている。
【0055】
そして、このようにめっき処理の後ベーキング処理を行うことによって、めっき処理のみを行うものに比べ、ロール目Rの形状をより維持することが可能となっている。
【0056】
このような保護層130Cの厚さは、およそ5〜15μmであることが望ましい。5μm以上であれば十分な耐久性を得ることができ、また、15μm以下であれば生産性を保ちつつ安定した層(均一な層)を形成することができる。一例として、本体部130B(アルミニウム合金板)の厚さを0.6mmとしたとき、保護層130Cの厚さは10μmなどとすることができる。なお、図4では、保護層130Cを図示するために、その厚さDを強調して厚く示している。
【0057】
図4に示すように、ニップ板130は、ベース部131と、第1突出部132と、第2突出部133とを主に有している。
ベース部131は、定着ベルト110の内周面111と摺接する部分であり、ハロゲンランプ120からの熱を定着ベルト110を介して用紙S上のトナーに伝達する。そして、ベース部131の搬送方向上流側の端部131Aは、定着ベルト110の内側に向けて反った後、搬送方向上流側に向けて搬送方向と略平行に延び、その後上方へ向けて延びるような形状で形成されている。このように端部131Aが、上方に反るように曲面状に屈曲する部分を有することで、定着ベルト110がニップ板130の端縁と擦れて磨耗するのを抑えることが可能となっている。
【0058】
第1突出部132および第2突出部133は、平板状をなしており、ベース部131の後端から後方に向けて突出するように形成されている。第1突出部132は、ベース部131後端の左右方向における中央付近に1つ形成されており、その上面にサーモスタット170(図2参照)が対面して配置される。また、第2突出部133は、ベース部131後端の左右方向における中央付近と右端付近にそれぞれ1つずつ形成されており、それぞれの上面に図示せぬ2つのサーミスタが対面して配置される。
【0059】
図2に示すように、加圧ローラ140は、ニップ板130との間で定着ベルト110を挟むことで定着ベルト110との間にニップ部Nを形成する部材であり、ニップ板130の下方に配置されている。本実施形態においては、ニップ部Nを形成するために、ニップ板130および加圧ローラ140の一方を他方に向けて付勢している。そして、この加圧ローラ140は、ニップ板130との間で定着ベルト110を挟んだ状態で回転することで、当該定着ベルト110とともに用紙Sを搬送するようになっている。
【0060】
加圧ローラ140は、本体筐体2内に設けられた図示しないモータから駆動力が伝達されて回転駆動するように構成されており、回転駆動することで定着ベルト110(または用紙S)との摩擦力により定着ベルト110を従動回転させる。トナー像が転写された用紙Sは、加圧ローラ140と加熱された定着ベルト110の間(ニップ部N)を搬送されることでトナー像(トナー)が熱定着されることとなる。
【0061】
反射部材150は、ハロゲンランプ120からの輻射熱をニップ板130に向けて反射する部材であり、定着ベルト110の内側でハロゲンランプ120を取り囲む(覆う)ように、ハロゲンランプ120から所定の間隔をあけて配置されている。
【0062】
この反射部材150は、赤外線および遠赤外線の反射率が大きい、例えば、アルミニウム板などを断面視略U形状に湾曲させて形成されている。より詳細に、反射部材150は、湾曲形状をなす反射部151と、反射部151の前後方向における両端部から前後方向外側に向けて延びるフランジ部152とを主に有している。
【0063】
ステイ160は、ニップ板130(ベース部131)の前後の端部を反射部材150(フランジ部152)を介して支持することで加圧ローラ140からの荷重を受ける部材であり、定着ベルト110の内側で反射部材150を覆うように配置されている。なお、ここでいう荷重は、ニップ板130が加圧ローラ140を付勢する構成においては、ニップ板130が加圧ローラ140を付勢する力の反力をいうものとする。
【0064】
このようなステイ160は、比較的剛性が高い、例えば、鋼板などを反射部材150(反射部151)の外面形状に沿った断面視略U形状に折り曲げることで形成されている。図4に示すように、ステイ160は、右側に設けられた右側固定部161と、左側に設けられた左側固定部162とを有している。右側固定部161および左側固定部162は、いずれもステイ160の上壁から後方に向けて延びるように形成されており、それぞれ貫通したネジ穴(符号省略)が設けられている。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0066】
前記実施形態では、保護層130Cは、本体部130Bの表面にめっき処理を行った後に、ベーキング処理を行って形成した層であったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、保護層は、ベーキング処理を行わずに、本体部の表面にめっき処理だけを行って形成した層であってもよい。なお、例えば、無電解のニッケルめっきなどにおいては、ベーキング処理(熱処理)を行うことで、硬度が高くなるので、より硬い保護層を形成することができる。
【0067】
また、保護層の形成は、めっき処理(本体部の表面に本体部とは別の材料層を形成する処理)だけに限定されるものではない。例えば、保護層は、本体部の表面の硬度を定着ベルト(筒状部材)の内周面の硬度よりも硬く変質させた層(硬度を高めた層)であってもよい。なお、本体部の表面の硬度を筒状部材の内周面の硬度よりも硬く変質させる処理(硬度を高める処理)としては、例えば、酸化処理や窒化処理などを挙げることができる。一例として、本体部がアルミニウム合金製である場合、保護層は、本体部の表面にアルマイト処理(硬質アルマイト処理)を行って当該面の硬度を筒状部材の内周面よりも硬く変質させることで形成することができる。言い換えると、アルミニウム合金製の本体部の表面にアルマイト処理を行ってできた被膜層が保護層となる。
【0068】
前記実施形態では、保護層130Cが、本体部130Bの表面全体を覆うように形成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明において、保護層は、本体部の表面のうち少なくとも筒状部材の内周面と摺接する面に形成されていればよい。
【0069】
前記実施形態では、定着ベルト110(筒状部材)をステンレス綱製としたが、本発明はこれに限定されず、その他の金属で形成してもよいし、ポリイミド樹脂などの樹脂から形成されていてもよいし、ゴムなどの弾性を有する材料から形成されていてもよい。ただし、樹脂製とした場合には、定着ベルト110と金属製のニップ板130との摺動抵抗を小さくすることができるので、定着ベルト110の摺動性をより向上することができる。
【0070】
また、筒状部材は、多層構造であってもよい。具体的には、例えば、金属製ベルトの表面に摺動抵抗を低減するための樹脂層などを有する構造であってもよいし、金属製ベルトの表面にゴム層などの弾性層を有する構造であってもよい。
【0071】
前記実施形態では、ニップ板130の搬送方向上流側の端部131Aを定着ベルト110の内側に反らせたが、本発明はこれに限定されず、搬送方向下流側の端部を反らせてもよい。
【0072】
前記実施形態では、バックアップ部材として加圧ローラ140を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ベルト状の加圧部材などであってもよい。
【0073】
前記実施形態では、記録シートとして、普通紙やはがきなどの用紙Sを例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、OHPシートなどであってもよい。
【0074】
前記実施形態では、本発明の定着装置を備える画像形成装置として、モノクロの画像を形成するレーザプリンタ1を例示したが、これに限定されず、例えば、カラーの画像を形成するプリンタであってもよい。また、画像形成装置は、プリンタに限定されず、例えば、フラットベッドスキャナなどの原稿読取装置を備える複写機や複合機などであってもよい。
【符号の説明】
【0075】
100 定着装置
110 定着ベルト
130 ニップ板
140 加圧ローラ
G 潤滑剤
R ロール目
S 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する筒状部材と、
前記筒状部材の内周面に摺接する金属製のニップ板と、
前記ニップ板との間で前記筒状部材を挟んだ状態で回転することで、当該筒状部材とともに記録シートを搬送するバックアップ部材と、を備えた定着装置であって、
前記ニップ板と前記筒状部材との間には、潤滑剤が介在され、
前記ニップ板は、圧延により形成された板材により構成され、圧延時に圧延ロールにより表面に形成されるロール目が前記記録シートの搬送方向に沿うように配置されていることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記ニップ板のうち前記筒状部材に接する縁部は、プレス加工時に形成されるバリの向きが前記筒状部材の内側を向くように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記ニップ板のうち前記搬送方向における端部が、前記筒状部材の内側に反るように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記筒状部材は、金属製であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項5】
前記筒状部材の内周面には、当該筒状部材の回転方向に研磨された研磨目が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記筒状部材は、樹脂製であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項7】
前記ニップ板は、アルミニウム製であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項8】
前記ニップ板は、金属製の本体部と、前記本体部のうち少なくとも前記筒状部材と摺接する摺接面に形成され、かつ、前記筒状部材の内周面よりも硬い保護層とを有することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項9】
前記保護層は、前記摺接面にめっき処理を行って形成した層であることを特徴とする請求項8に記載の定着装置。
【請求項10】
前記保護層は、前記摺接面にめっき処理を行った後に、ベーキング処理を行って形成した層であることを特徴とする請求項9に記載の定着装置。
【請求項11】
前記保護層は、前記摺接面の硬度を前記筒状部材の内周面よりも硬く変質させた層であることを特徴とする請求項8に記載の定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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