宝飾品用銀結晶の生成方法及び宝飾品
【課題】樹枝状の銀結晶を宝飾品用銀結晶として生成可能とする宝飾品用銀結晶の生成方法を提供する。
【解決手段】10重量%以上の濃度で飽和濃度よりも低い濃度を有する硝酸銀水溶液120を電解槽110に注入するとともに当該硝酸銀水溶液120に陽極130及び陰極140を浸漬させた状態とする第1工程と、硝酸銀水溶液120を電気分解することにより陰極140から樹枝状の銀結晶を成長させて宝飾品用銀結晶を生成する第2工程とを行う。このような工程を行うことによって、樹枝状の銀結晶を宝飾品用銀結晶として生成することができる。
【解決手段】10重量%以上の濃度で飽和濃度よりも低い濃度を有する硝酸銀水溶液120を電解槽110に注入するとともに当該硝酸銀水溶液120に陽極130及び陰極140を浸漬させた状態とする第1工程と、硝酸銀水溶液120を電気分解することにより陰極140から樹枝状の銀結晶を成長させて宝飾品用銀結晶を生成する第2工程とを行う。このような工程を行うことによって、樹枝状の銀結晶を宝飾品用銀結晶として生成することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹枝状の銀結晶からなる宝飾品用銀結晶の生成方法及び宝飾品に関する。
【背景技術】
【0002】
銀樹とも呼ばれている樹枝状の銀結晶を製造する方法は従来から知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載されている技術(従来技術という。)は、無電解湿式プロセスによって微細な樹枝状の銀結晶を生成するものであり、これによって生成された樹枝状の銀結晶は、銀ペーストへの加工を容易とすることにより電子回路などの用途として期待されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−146387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、樹枝状の銀結晶は、樹枝のように無数に枝分かれした銀結晶であり、自然界に存在する霜や雪の結晶と同様に、その形状は非常に美しく無二のものであるといえる。このため、樹枝状の銀結晶を仮に宝飾品として利用できれば、その宝飾品は価値の高い宝飾品となり得る。なお、本発明においては、宝飾品とは、置物などの鑑賞品だけではなく、ブローチ、イヤリング、ネックレスヘッドなどの装飾品をも含むものとする。
【0005】
しかしながら、従来技術によって得られる樹枝状の銀結晶は、上記したように、電子回路などに用いられるものであるため、より微細な樹枝状の銀結晶を得ることを主な目的としている。このため、従来技術によって得られる樹枝状の銀結晶は、ハンドリングの困難さなどから宝飾品として使用することは非現実的である。
【0006】
そこで、本発明は、樹枝状の銀結晶を宝飾品用銀結晶として生成可能とする宝飾品用銀結晶の生成方法を提供するとともに当該宝飾品用銀結晶を用いた価値の高い宝飾品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明の宝飾品用銀結晶の生成方法は、10重量%以上の濃度で飽和濃度よりも低い濃度を有する硝酸銀水溶液を電解槽に注入するとともに当該硝酸銀水溶液に陽極及び陰極を浸漬した状態とする第1工程と、前記硝酸銀水溶液を電気分解することにより前記陰極から樹枝状の銀結晶を成長させて宝飾品用銀結晶を生成する第2工程とを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の宝飾品用銀結晶の生成方法によれば、上記第1工程及び第2工程を行うことによって、樹枝状の銀結晶からなる宝飾品用銀結晶を生成することができる。樹枝状の銀結晶は全く同一に成長することはないため、生成される宝飾品用銀結晶は無二のものとなり、価値の高い宝飾品となる。また、当該宝飾品用銀結晶は純銀であるため、銀独特の落ち着いた色合いを有するとともに、宝飾品用銀結晶を構成する小さな銀の単結晶面が無数に存在し、個々の銀の単結晶面が光を乱反射してキラキラと輝くため、見た目にも豪華な宝飾品となる。
【0009】
[2]本発明の宝飾品用銀結晶の生成方法において、前記陽極は、前記電解槽における内部の底面に配置し、前記陰極は、前記硝酸銀水溶液の液面の上方側から前記硝酸銀水溶液に浸漬させるように配置することが好ましい。
【0010】
このような構成とすることによって、陰極から樹枝状の銀結晶を成長させて行くことができ、それによって、宝飾品用銀結晶を生成することができる。
【0011】
[3]本発明の宝飾品用銀結晶の生成方法において、前記陰極は、金属ワイヤーが用いられ、前記樹枝状の銀結晶が前記金属ワイヤーの先端部から立体的に成長して行くように前記金属ワイヤーの先端部を前記硝酸銀水溶液に浸漬させることが好ましい。
【0012】
このように、陰極を金属ワイヤーとし、かつ、当該金属ワイヤーをこのような配置として電気分解を行うことにより、金属ワイヤーの先端部から樹枝状の銀結晶が立体的に成長して行くため、生成される宝飾品用銀結晶は、金属ワイヤーの先端部から立体的に広がる樹枝状の銀結晶となる。
【0013】
[4]本発明の宝飾品用銀結晶の生成方法において、前記陰極は、先端部から後方側に向かって所定長さの直線部を有する金属ワイヤーが用いられ、前記樹枝状の銀結晶が前記金属ワイヤーの前記直線部から立体的に成長して行くように前記金属ワイヤーの直線部を前記硝酸銀水溶液に浸漬させることが好ましい。
【0014】
このように、陰極を金属ワイヤーとし、かつ、当該金属ワイヤーをこのような配置として電気分解を行うことにより、金属ワイヤーの直線部から樹枝状の銀結晶が成長して行くため、生成される宝飾品用銀結晶の全体的な外観形状は、金属ワイヤーの直線部が樹木の幹となり当該幹に沿って樹枝が立体的に張り出しているような樹木形状とすることができる。このような外観形状は、例えていうと「モミの木」のような形状である。
【0015】
[5]本発明の宝飾品用銀結晶の生成方法において、前記陰極は、所望とする形状を有する曲げ部が形成されている金属ワイヤーが用いられ、前記樹枝状の銀結晶が前記曲げ部から立体的に成長して行くように前記金属ワイヤーの曲げ部を前記硝酸銀水溶液に浸漬させることが好ましい。
【0016】
このように、陰極を金属ワイヤーとし、当該金属ワイヤーに所望とする形状を有する曲げ部を形成して、当該曲げ部を前記硝酸銀水溶液に浸漬させて電気分解を行うことにより、金属ワイヤーの曲げ部から樹枝状の銀結晶が立体的に成長して行くため、曲げ部を種々の形状(例えば、ハート型、星形、螺旋型、湾曲型など)とすることにより、生成される宝飾品用銀結晶の全体的な外観形状をハート型、星形、螺旋型、湾曲型など種々の形状とすることができる。
【0017】
[6]本発明の宝飾品用銀結晶の生成方法において、前記陰極は、所望とする形状を有する板状の金属が用いられ、前記樹枝状の銀結晶が前記板状の金属から立体的に成長して行くように前記板状の金属を前記硝酸銀水溶液に浸漬させることが好ましい。
【0018】
このように、陰極を所望とする形状を有する板状の金属として、当該板状の金属を硝酸銀水溶液に浸漬させて電気分解を行うことにより、樹枝状の銀結晶は板状の金属から立体的に成長して行くため、金属板を種々の形状(例えば、ハート型、星形、螺旋型、湾曲型など)とすることにより、生成される宝飾品用銀結晶の全体的な外観形状をハート型、星形、螺旋型、湾曲型など種々の形状とすることができる。なお、板状の金属には網目の金属板も含むものとする。
【0019】
[7]本発明の宝飾品用銀結晶の生成方法において、非導電性部材でなる台座を当該台座の上端面が前記硝酸銀水溶液の液面よりもわずかに下方向に位置するように前記電解槽の内部に配置し、前記陰極は、金属ワイヤーが用いられ、前記樹枝状の銀結晶が前記金属ワイヤーの先端部と前記台座の上端面との間で平面的に成長して行くように当該金属ワイヤーの先端部が前記台座の上端面に近接又は接触した状態に配置されていることが好ましい。
【0020】
このような構成とすることにより、樹枝状の銀結晶は、陰極としての金属ワイヤーの先端部からプレートの上端面と液面との間において平面的に成長して行くため、生成される宝飾品用銀結晶の全体的な外観形状は、樹枝状の銀結晶が平面的に広がるような形状となる。
【0021】
[8]本発明の宝飾品用銀結晶の生成方法において、非導電性部材でなる複数のプレートの各プレート間に隙間が形成されるように前記複数のプレートを対向させた状態で前記硝酸銀水溶液に浸漬させ、前記陰極は、前記樹枝状の銀結晶が前記隙間で平面的に成長して行くように前記隙間に配置されていることもまた好ましい。
【0022】
このような構成とすることによっても、樹枝状の銀結晶は、各プレート間に形成される隙間において平面的に成長して行くため、生成される宝飾品用銀結晶の全体的な外観形状は、樹枝状の銀結晶が平面的に広がるような形状となる。
【0023】
[9]本発明の宝飾品用銀結晶の生成方法において、前記陽極は、所定量の笹吹き銀によって構成されていることが好ましい。
【0024】
陽極としては銀が好ましいが、同じ銀であっても笹吹き銀は銀板などに比べて安価であるという利点がある。また、笹吹き銀は溶解しやすく樹枝状の銀結晶の成長をより速くすることができるといった利点もある。また、銀以外の金属として、例えば、白金などの不溶性金属を用いることもできるが、この場合、硝酸銀水溶液における銀濃度の管理を行う必要がある。
【0025】
[10]本発明の宝飾品用銀結晶の生成方法において、前記陰極は、銀、チタン、白金、金又はステンレスであることが好ましい。
【0026】
このように、陰極としては、種々の金属を使用することができる。このため、例えば、豪華さを重視した宝飾品とする場合には、銀、白金、金などを用い、耐久性やコストの低廉化を重視した宝飾品とする場合にはステンレスを用い、軽量化を重視した宝飾品とする場合にはチタンを用いるというように、宝飾品の用途に応じて選択することが好ましい。
【0027】
[11]本発明の宝飾品は、樹枝状の銀結晶を用いた宝飾品であって、前記[1]〜[10]のいずれかの宝飾品用銀結晶の生成方法によって製造された宝飾品用銀結晶を用いていることを特徴とする。
【0028】
本発明の宝飾品によれば、[1]〜[10]のいずれかの宝飾品用銀結晶の生成方法によって製造された宝飾品用銀結晶を用いているため、製造される宝飾品は無二のものとなり、価値のある宝飾品となる。なお、宝飾品用銀結晶が硫化することによって黒ずみが生じた場合には、300℃以上の温度、好ましくは、銀の融点よりもわずかに低い温度(例えば900度程度)で加熱処理を行うことによって硫化物を取り除くことができ、銀が持っている本来の色に復元することができる。また、加熱処理を行うことにより陰極との接続強度を大きくすることもできる。このような加熱処理を行ったのちに透明の合成樹脂又はガラスで覆う処理を施すようにしてもよい。また、必要に応じて、宝飾品用銀結晶に金めっき、ロジウムめっき、白金めっき、パラジウムめっきなどのめっき処理を施すようにしてもよい。
【0029】
[12]本発明の宝飾品においては、前記宝飾品用銀結晶は、透明の合成樹脂又はガラスで覆われていることが好ましい。
【0030】
このように、宝飾品用銀結晶が透明の合成樹脂又はガラスで覆われていることにより、生成された宝飾品用銀結晶を宝飾品として取り扱い易くすることができるとともに、宝飾品としての価値をより高めることができ、かつ、宝飾品用銀結晶の形状、色及び輝きを長期間保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法を説明するために示す図である。
【図2】生成された宝飾品用銀結晶310を電解槽から取り出して示す図である。
【図3】実施形態2に係る宝飾品用銀結晶の生成方法を説明するために示す図である。
【図4】電解槽110から取り出した宝飾品用銀結晶320を透明の合成樹脂又はガラスに埋め込んだ状態を示す図である。
【図5】実施形態2に係る宝飾品用銀結晶の生成方法の変形例を説明するために示す図である。
【図6】実施形態3に係る宝飾品用銀結晶の生成方法を説明するために示す図である。
【図7】電解槽110から取り出した宝飾品用銀結晶340を透明の合成樹脂又はガラスに埋め込んだ状態を示す図である。
【図8】曲げ部の形状に応じて生成される宝飾品用銀結晶350,360の例を説明するために示す図である。
【図9】実施形態4に係る宝飾品用銀結晶の生成方法を説明するために示す図である。
【図10】電解槽110から取り出した宝飾品用銀結晶370を透明の合成樹脂又はガラスに埋め込んだ状態を示す図である。
【図11】実施形態5に係る宝飾品用銀結晶の生成方法を説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0033】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法を説明するために示す図である。なお、図1(a)は電気分解を開始する前の状態を模式的に示す図であり、図1(b)は電気分解によって宝飾品用銀結晶310が生成された状態を模式的に示す図である。図2は、生成された宝飾品用銀結晶310を電解槽110から取り出して示す図である。
【0034】
実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法は、図1に示すように、10重量%以上の濃度で飽和濃度よりも低い濃度(以下、「10重量%濃度〜飽和濃度」と表記する。)を有する硝酸銀水溶液120を電解槽110に注入するとともに当該硝酸銀水溶液120に陽極130及び陰極140を浸漬させた状態とする工程(第1工程)を行い(図1(a)参照。)、当該硝酸銀水溶液120を電気分解することにより陰極140から樹枝状の銀結晶を成長させて宝飾品用銀結晶310を生成する工程(第2工程)を行う(図1(b)参照。)。なお、電解槽110は、例えば、1000mlの容量を有する耐食性の合成樹脂又はガラスなどからなり、硝酸銀水溶液120は電解槽110に800ml程度注入されているとする。
【0035】
実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法においては、陽極130としては笹吹き銀(以下、笹吹き銀130と表記する場合もある。)が用いられ、陰極140としては所定の径(1mmとする。)を有する銀ワイヤー(以下、銀ワイヤー140と表記する場合もある。)が用いられる。このように陽極130として笹吹き銀を用いる場合、電解槽110における内部側の底面に電極用の金属板150(電極板150という。)を敷設して、当該電極板150の上に笹吹き銀130を所定量敷き詰める。そして、電極板150にはリード線151を接続して、当該リード線151を電解槽110の開口側から外部に引き出す。このような構成とすることにより、陽極としての笹吹き銀130を図示しない電源装置に接続することができる。
【0036】
なお、リード線151は、電解槽110内において硝酸銀水溶液120に触れないようにするために、合成樹脂などからなるパイプ152の内部を通して電解槽110の外部に引き出すようにすることが好ましい。リード線151の材質は特に限定されるものではないが、リード線151として仮に銀線を使用するような場合は、銀線が硝酸銀水溶液に触れると溶解してしまうからである。
陽極130をこのような構成とすることは、後述する他の実施形態においても同様であるとする。
【0037】
なお、電極板150は、笹吹き銀130の個々の銀粒よりも細かい網目を有する網状の金属であってもよい。また、電極板150の材質は、特に限定されるものではないが、導電性に優れた不溶性の金属とし、例えば白金、白金で被覆したチタンなどが好ましい。また、電解槽110に投入する笹吹き銀130の量は、生成する宝飾品用銀結晶の種類や規模などに応じて適宜最適な量とする。
【0038】
一方、銀ワイヤー140は、先端部140aを硝酸銀水溶液120の液面から硝酸銀水溶液120内に所定量(先端部140aから5mm程度とする。)だけ浸漬させる。硝酸銀水溶液120のpHは中性から酸性であればよく、pHは4〜5程度が好ましい。なお、pHの調整には、硝酸、苛性ソーダを用いることができる。
【0039】
また、硝酸銀水溶液120の濃度は20重量%程度でもよいが、より高い濃度(例えば40重量%程度)である方が好結果を得ることができる。また、電気分解時における硝酸銀水溶液の温度は常温とするが、5℃程度の比較的低い温度であってもよく、また、60℃程度の比較的高い温度であってもよい。
【0040】
硝酸銀水溶液120の濃度を高めに設定すると、宝飾品用銀結晶の個々の銀結晶が大きめに成長する傾向にあり、逆に、硝酸銀水溶液120の濃度を低めに設定すると、宝飾品用銀結晶の個々の銀結晶が小さめに成長する傾向にある。また、硝酸銀水溶液120の温度を低めに設定すると、宝飾品用銀結晶の個々の銀結晶が大きめに成長する傾向にあり、逆に、硝酸銀水溶液120の温度を高めに設定すると、宝飾品用銀結晶の個々の銀結晶が小さめに成長する傾向にある。このような傾向が現れることは、後述する他の実施形態においても同様である。
【0041】
このようにして、陽極130(笹吹き銀130)と陰極140(銀ワイヤー140)との間に所定の電圧及び所定の電流を与えて電気分解を行う。例えば、硝酸銀水溶液120の濃度を20重量%、陽極130と陰極140との間に与える電圧を200mVとすると、電流は500mAを示し、この状態で電気分解を継続して行うと、銀ワイヤー140の先端部140aからは、樹枝状の銀結晶が立体的に成長して行き、所定時間経過すると、図1(b)に示すように、例えて言うなら「竹ほうき」の先端のような形状の宝飾品用銀結晶310が生成される。このようにして生成された宝飾品用銀結晶310は、当該宝飾品用銀結晶310を構成する小さな銀の単結晶面が無数に存在するものとなり、当該銀の単結晶面が光を乱反射してキラキラと輝くため、見た目に豪華なものとなる。
【0042】
実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法によって生成された宝飾品用銀結晶310は、銀ワイヤー140の先端部140aから宝飾品用銀結晶310の先端までの長さが50mm程度となったが、これは、硝酸銀水溶液120の濃度、陽極130と陰極140との間に与える電圧及び電流、電気分解の継続時間など、宝飾品用銀結晶を生成させるための条件(宝飾品用銀結晶生成条件という。)を適宜設定することによって、種々変化させることができる。
【0043】
なお、宝飾品用銀結晶生成条件は、生成しようとする宝飾品用銀結晶の種類や規模などによって最適な電圧、電流及び時間を設定することができる。このため、実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法においても、硝酸銀水溶液120の濃度は20%、電圧は200mV、電流は500mAというような値に限られるものではなく、状況に応じて宝飾品用銀結晶生成条件を適宜設定することができる。宝飾品用銀結晶生成条件を変えることによって、同じ形態の宝飾品用銀結晶を生成する場合であっても、個々の銀結晶の大きさや見た目の質感などが異なった宝飾品用銀結晶を生成することができる。ただし、硝酸銀水溶液の濃度は10重量%濃度〜飽和濃度の範囲内、電圧は数10mV〜1000mVの範囲内、電流は10mA〜700mAの範囲内で設定することが好ましい。このことは、実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法に限られるものではなく、後述する他の実施形態においても同様である。
【0044】
次に、上記第2工程によって生成された宝飾品用銀結晶310を電解槽110から取り出す。電解槽110から取り出した宝飾品用銀結晶310を図2に示す。なお、図2においては、宝飾品用銀結晶310は平面的に見えるが、実際には、銀ワイヤー140の先端部140aを中心として当該先端部140aから立体的に広がるものとなる。
【0045】
そして、電解槽110から取り出した宝飾品用銀結晶310に対して加工処理を行う。この加工処理は、生成された宝飾品用銀結晶310を宝飾品として取り扱い易くするとともに、宝飾品としての価値をより高めるために行うものである。ここでは、宝飾品用銀結晶310に対して行う加工処理は、宝飾品用銀結晶310を透明の合成樹脂又はガラスで覆う処理であるとする。
【0046】
なお、宝飾品用銀結晶310に対して行う加工処理は、必要に応じて行うものであり、電解槽110から取り出した宝飾品用銀結晶310は、加工処理を行わずに、そのままでも宝飾品として使用することができる。すなわち、宝飾品用銀結晶310は純銀であるため、銀独特の落ち着いた色合いを有するとともに、宝飾品用銀結晶310を構成する小さな銀の単結晶面が無数に存在して当該銀の単結晶面が光を乱反射してキラキラと輝くため、豪華な宝飾品となる。このように、宝飾品用銀結晶310をそのままの状態で宝飾品とすることができることは後述する他の実施形態においても同様である。
【0047】
ただし、宝飾品用銀結晶310をそのままとしておくと、宝飾品用銀結晶310が崩れたり、陰極140(銀ワイヤー140)から取れたりするといった不具合が生じる場合もある。また、銀は空気中に晒しておくと、硫化して黒ずみ易く、銀結晶の有する本来の色(銀色)が損なわれるといった不具合が生じる場合もある。
【0048】
これらの不具合が生じないようにするためには、宝飾品用銀結晶310を透明の合成樹脂又はガラスで覆うことが好ましい。宝飾品用銀結晶310を透明の合成樹脂又はガラスで覆うことによって、生成された宝飾品用銀結晶310を宝飾品として取り扱い易くすることができるとともに、宝飾品としての価値をより高めることができ、かつ、宝飾品用銀結晶310の形状、色及び輝きを長期間保持することができる。実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法においては、生成された宝飾品用銀結晶310を透明の合成樹脂又はガラスで覆った状態の図示は省略する。
【0049】
なお、宝飾品用銀結晶310を透明の合成樹脂又はガラスによってどのように覆うかは、当該宝飾品用銀結晶310をどのような用途の宝飾品とするかによって異なる。例えば、当該宝飾品用銀結晶310をブローチ、イヤリング、ネックレスヘッドなどの装飾品として用いる場合には、小型・軽量とすることが好ましいため、合成樹脂などにより比較的薄手のコーティング処理を施す程度であってもよい。また、当該宝飾品用銀結晶310を置物などの鑑賞品として用いる場合には、宝飾品用銀結晶310に重厚感を持たせることが好ましいため、例えば、円柱状、角柱状、円錐状など厚みのある合成樹脂又はガラスの中に宝飾品用銀結晶310を埋め込むようにすることが好ましい。
【0050】
また、電解槽110から取り出した宝飾品用銀結晶310が硫化して黒ずみが生じてしまった場合には、300℃以上の温度、好ましくは、銀の融点よりもわずかに低い温度(例えば900度程度)で加熱処理を行うことによって硫化物を取り除くことができ、銀が持っている本来の色に復元することができる。また、このような加熱処理を行うことにより銀ワイヤー140との接続強度を大きくすることもできる。
【0051】
[実施形態2]
図3は、実施形態2に係る宝飾品用銀結晶の生成方法を説明するために示す図である。なお、図3(a)は電気分解を開始する前の状態を模式的に示す図であり、図3(b)は電気分解によって宝飾品用銀結晶320が生成された状態を模式的に示す図である。図4は、電解槽110から取り出した宝飾品用銀結晶を透明の合成樹脂又はガラスに埋め込んだ状態を示す図である。図5は、実施形態2に係る宝飾品用銀結晶の生成方法の変形例を説明するために示す図である。なお、図5(a)は電気分解を開始する前の状態を模式的に示す図であり、図5(b)は電気分解によって宝飾品用銀結晶330が生成された状態を模式的に示す図である。
【0052】
実施形態2に係る宝飾品用銀結晶の生成方法における基本的な工程は、実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法と同様であるが、実施形態2に係る宝飾品用銀結晶の生成方法においては、図3に示すように、銀ワイヤー140の直線部140bを当該銀ワイヤー140の先端部140aから所定長さL1だけ硝酸銀水溶液120に浸漬させる点が実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法と異なる。なお、実施形態2においては、外観形状が「モミの木」のような樹木形状の宝飾品用銀結晶320を生成するものであるとする。
【0053】
このような形状の宝飾品用銀結晶320を生成するために、図3(a)に示すように、銀ワイヤー140の直線部140bを当該銀ワイヤー140の先端部140aから所定の長さL1だけ硝酸銀水溶液120に浸漬させる。また、硝酸銀水溶液120に浸漬させる部分(長さL1)のうちの先端部140aから長さL2の部分は、シリコンチューブなどの非導電性部材160で被覆する。なお、硝酸銀水溶液120に浸漬させる部分(長さL1)のうちの非導電性部材160で被覆する部分を「被覆部141」とし、当該被覆部141以外の部分を「銀結晶生成部142」とする。
【0054】
このようにして実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法と同様に電気分解を行う。このときの宝飾品用銀結晶生成条件は、実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法において説明したように、生成する宝飾品用銀結晶に応じた最適な値を設定する。この場合も、硝酸銀水溶液の濃度は、10重量%濃度〜飽和濃度の範囲内、電圧は数10mV〜1000mVの範囲内、電流は10mA〜700mAの範囲内で設定することが好ましい。
【0055】
図3(a)の状態において電気分解を行うと、非導電性部材160で被覆した被覆部141においては、樹枝状の銀結晶が成長せずに、銀結晶生成部142のみにおいて樹枝状の銀結晶が立体的に成長して行く、そして、所定時間経過すると、図3(b)に示すように、所望とする宝飾品用銀結晶320が生成される(第2工程。)。ここで生成された宝飾品用銀結晶320は、被覆部141が樹木の根元に近い幹のようになり、被覆部141を含めた全体的な外観形状は、「モミの木」のような樹木形状となる。
【0056】
実施形態2に係る宝飾品用銀結晶の生成方法において生成される宝飾品用銀結晶320も、銀独特の落ち着いた色合いを有するとともに、宝飾品用銀結晶を構成する小さな銀の単結晶面が無数に存在して当該銀の単結晶面が光を乱反射してキラキラと輝くため、豪華な宝飾品となる。なお、実施形態2に係る宝飾品用銀結晶の製造方法によって製造された宝飾品用銀結晶320は、硝酸銀水溶液120に浸漬している銀ワイヤー140の長さL1は80mm程度であり、樹枝状の銀結晶が成長した部分(銀結晶生成部142)の長さは70mm程度となったが、これは、被覆部141及び銀結晶生成部142の長さを設定することによって所望とする寸法のものを生成することができる。また、樹枝状の銀結晶の成長度合いなどは、宝飾品用銀結晶生成条件を適宜設定することによって、種々変化させることができる。
【0057】
次に、上記第2工程によって生成された宝飾品用銀結晶を電解槽110から取り出し、銀ワイヤー140を所定の位置(先端部140aから長さL1の位置)で切断したのち、実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法と同様に、必要に応じて、例えば、生成された宝飾品用銀結晶310を透明の合成樹脂又はガラスで覆う処理を行う。
【0058】
図4は、宝飾品用銀結晶320を透明のガラス410に埋め込んだ状態を示す図であり、このようにすることによって、生成された宝飾品用銀結晶330を取り扱い易くすることができるとともに、宝飾品としての価値をより高めることができ、かつ、宝飾品用銀結晶320の形状、色及び輝きを長期間保持することができる。
【0059】
ところで、実施形態2に係る宝飾品用銀結晶の生成方法によって生成される宝飾品用銀結晶320をクリスマスツリーのように形の整った円錐状の宝飾品用銀結晶(クリスマスツリー状の宝飾品用銀結晶という。)とすることも可能である。
【0060】
このようなクリスマスツリー状の宝飾品用銀結晶を生成させる場合には、図5(a)に示すように、内部が空洞の非導電部材からなる円錐状の覆い210を電解槽110の開口部の側から吊り下げるように配置し、当該円錐状の覆い210の中心軸に沿うように銀ワイヤー140を配置した状態として、宝飾品用銀結晶生成条件を適切に設定して電気分解を行う。これにより、樹枝状の銀結晶の成長が円錐状の覆い210で規制されるため、図5(b)に示すように、クリスマスツリー状の宝飾品用銀結晶330を生成することができる。
【0061】
[実施形態3]
図6は、実施形態3に係る宝飾品用銀結晶の生成方法を説明するために示す図である。なお、図6(a)は電気分解を開始する前の状態を模式的に示す図であり、図6(b)は電気分解によって宝飾品用銀結晶340が生成された状態を模式的に示す図である。図7は、電解槽110から取り出した宝飾品用銀結晶340を透明の合成樹脂又はガラスに埋め込んだ状態を示す図である。図8は、曲げ部の形状に応じて生成される宝飾品用銀結晶の例を説明するために示す図である。
【0062】
実施形態3に係る宝飾品用銀結晶の生成方法における基本的な工程は、実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法と同様であるが、実施形態3に係る宝飾品用銀結晶の生成方法においては、銀ワイヤー140に所望の形状を有する曲げ部145を形成し、当該曲げ部145から樹枝状の銀結晶が成長して行くように、銀ワイヤー140の曲げ部145を硝酸銀水溶液120に浸漬させる点が実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法と異なる。
【0063】
具体的には、図6(a)に示すように、銀ワイヤー140の曲げ部145を硝酸銀水溶液120に浸漬させるように、銀ワイヤー140を硝酸銀水溶液120内に挿入する。なお、曲げ部145の形状はここではハート形とする。
【0064】
このようにして実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法と同様に電気分解を行う。このときの宝飾品用銀結晶生成条件は、実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法において説明したように、生成する宝飾品用銀結晶に応じた最適な値を設定する。この場合も、硝酸銀水溶液の濃度は10重量%濃度〜飽和濃度の範囲内、電圧は数10mV〜1000mVの範囲内、電流は10mA〜700mAの範囲内で設定することが好ましい。なお、硝酸銀水溶液120の濃度は前述したように40重量%と程度というように高めに設定した方が好結果を得ることができる。
【0065】
これにより、銀ワイヤー140の曲げ部145から樹枝状の銀結晶が成長して行き(図6(b)参照。)、所定時間経過すると、銀ワイヤー140の曲げ部145には宝飾品用銀結晶340が生成される(第2工程。)。実施形態3に係る宝飾品用銀結晶の生成方法において生成される宝飾品用銀結晶340も、銀独特の落ち着いた色合いを有するとともに、宝飾品用銀結晶340を構成する小さな銀の単結晶面が無数に存在して当該銀の単結晶面が光を乱反射してキラキラと輝くため、豪華な宝飾品となる。
【0066】
次に、上記第2工程によって生成された宝飾品用銀結晶340を電解槽110から取り出し、銀ワイヤー140を所定位置(宝飾品用銀結晶340との付け根の位置)で切断したのちに、実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法と同様に、必要に応じて、宝飾品用銀結晶340に生成された宝飾品用銀結晶340を透明の合成樹脂又はガラスで覆う工程を行う。
【0067】
図7は、宝飾品用銀結晶340を透明のガラス420に埋め込んだ状態を示す図であり、このようにすることによって、生成された宝飾品用銀結晶340を取り扱い易くすることができるとともに、宝飾品としての価値をより高めることができ、かつ、宝飾品用銀結晶340の形状、色及び輝きを長期間保持することができる。なお、実施形態3に係る宝飾品用銀結晶の生成方法によって製造された宝飾品用銀結晶340は、その形状などから、ネックレスヘッド、ブローチ、イヤリングなどの装飾品として最適なものとなる。このため、宝飾品用銀結晶340が小型で軽量となるように、合成樹脂などにより比較的薄手のコーティング処理を施すようにしてもよい。また、曲げ部145の大きは種々設定することが可能である。
【0068】
また、曲げ部145の形状はハート形に限られるものではなく、種々の形状とすることができる。例えば、曲げ部145を螺旋形とすることによって、図8(a)に示すような螺旋形の宝飾品用銀結晶350を生成することができ、また、曲げ部145を湾曲型とすることによって図8(b)に示すような湾曲型の宝飾品用銀結晶360を生成することができる。その他、図示は省略するが曲げ部145を様々な形状とすることによって様々な宝飾品用銀結晶を生成することができる。なお、図8(a),(b)に示すような形状の宝飾品用銀結晶350,360においても、図7に示すようにガラスに埋め込むことも可能であり、また、合成樹脂などにより比較的薄手のコーティング処理を施すことも可能である。
【0069】
[実施形態4]
図9は、実施形態4に係る宝飾品用銀結晶の生成方法を説明するために示す図である。なお、図9(a)は電気分解を開始する前の状態を模式的に示す図であり、図9(b)は電気分解によって宝飾品用銀結晶370が生成された状態を模式的に示す図である。図10は、電解槽110から取り出した宝飾品用銀結晶370を透明の合成樹脂又はガラスに埋め込んだ状態を示す図である。
【0070】
実施形態4に係る宝飾品用銀結晶の生成方法は、図9(a)に示すように、非導電性部材でなる台座230を設置する。台座230は、硝酸銀水溶液120よりも比重の大きい素材として、例えば、フッ素樹脂(テフロン(登録商標))によって形成されている。また、台座230は、所定の高さhを有するとともに電解槽110の内径d1よりも小さな径d2を有する円筒状をなしている。
【0071】
台座230は、当該台座230の外側面と電解槽110の内側面との間に全周に渡って所定の空間部が形成されるように電解槽110内に設置する。そして、台座230の外側面と電解槽110の内側面との間に形成される空間部には、陽極としての笹吹き銀130を電解槽110の底面から所定の高さとなるように投入するとともに、硝酸銀水溶液120を台座230の上端面230aよりも3mm程度高くなるように注入する。そして、硝酸銀水溶液120の上方から陰極としての銀ワイヤー140をその先端部140aが台座230の上端面230aに接触又は近接するように硝酸銀水溶液120内に挿入する。なお、銀ワイヤー140の径は1mmであるとする。
【0072】
このようにして実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法と同様に電気分解を行う。このときの宝飾品用銀結晶生成条件は、実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法において説明したように、生成する宝飾品用銀結晶に応じた最適な値を設定する。この場合も、硝酸銀水溶液の濃度は10重量%濃度〜飽和濃度の範囲内、電圧は数10mV〜1000mVの範囲内、電流は10mA〜700mAの範囲内で設定することが好ましい。なお、硝酸銀水溶液120の濃度は前述したように40重量%と程度というように高めに設定した方が好結果を得ることができる。
【0073】
これにより、銀ワイヤー140の先端部140aからは、樹枝状の銀結晶が台座230の上端面230aに沿って平面的に成長して行き、所定時間経過すると、図9(b)に示すように、台座230の上端面230aと液面との間で宝飾品用銀結晶370が生成される(第2工程。)。
【0074】
実施形態4に係る宝飾品用銀結晶の生成方法において生成される宝飾品用銀結晶370は、台座230の上端面230aと硝酸銀水溶液120の液面との3mm程度の間において生成されるものであるため、生成された宝飾品用銀結晶370は平面的なものとなる。なお、実施形態4に係る宝飾品用銀結晶の生成方法において生成される宝飾品用銀結晶370も、銀独特の落ち着いた色合いを有するとともに、宝飾品用銀結晶を構成する小さな銀の単結晶面が無数に存在して当該銀の単結晶面が光を乱反射してキラキラと輝くため、豪華な宝飾品となる。
【0075】
次に、上記第2工程によって生成された宝飾品用銀結晶370を電解槽110から取り出し、銀ワイヤー140を所定位置(宝飾品用銀結晶370との付け根の位置)で切断したのちに、実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法と同様に、例えば、生成された宝飾品用銀結晶370を透明の合成樹脂又はガラスで覆う工程を行う。
【0076】
図10は、宝飾品用銀結晶370を透明のガラス430に埋め込んだ状態を示す図であり、このようにすることによって、生成された宝飾品用銀結晶370を取り扱い易くすることができるとともに、宝飾品としての価値をより高めることができ、かつ、宝飾品用銀結晶370の形状、色及び輝きを長期間保持することができる。
【0077】
[実施形態5]
図11は、実施形態5に係る宝飾品用銀結晶の生成方法を説明するために示す図である。なお、図11(a)は電気分解を開始する前の状態を模式的に示す図であり、図11(b)は電気分解によって宝飾品用銀結晶380が生成された状態を模式的に示す図である。実施形態5に係る宝飾品用銀結晶の生成方法は、実施形態4と同様に、平面的な宝飾品用銀結晶を生成するものである。
【0078】
実施形態5に係る宝飾品用銀結晶の生成方法は、図11に示すように、所定間隔(例えば、3mmとする。)を有する隙間S1が形成されるように対向配置させた非導電性部材でなる2枚のプレート(ガラス板とする。)250,260を硝酸銀水溶液120に浸漬させ、当該ガラス板250,260の間に形成される隙間S1に陰極としての銀ワイヤー140を挿入する。
【0079】
このようにして、宝飾品用銀結晶生成条件を上記したように設定して電気分解することにより、2枚のガラス板250,260の間に形成される隙間S1において樹枝状の銀結晶が成長し、図11(b)に示すように、2枚のガラス板250,260の間において平面的な宝飾品用銀結晶380を生成することができる。
【0080】
なお、図11においては、陰極としては銀ワイヤー140を用いた場合を例示したが、これに限られるものではなく、例えば、網目状の銀板であってもよい。また、ガラス板は2枚ではなく、3枚以上のガラス板を各ガラス板間に隙間が形成されるように対向させ、各隙間ごとに陰極(例えば、銀ワイヤー)を挿入するような構成としてもよい。このような構成とすることによって、複数の宝飾品用銀結晶380を同時に生成することができる。
【0081】
なお、本発明は上記各実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能となるものである。たとえば、下記に示すような変形実施も可能である。
【0082】
(1)上記各実施形態では、陰極としての銀ワイヤーの径は1mmとして説明したが1mmに限られるものではなく、生成する宝飾品の種類などによって最適な径の銀ワイヤーを使用することができる。また、銀ワイヤーは1本でなく複数本の銀ワイヤーを並べて配置するようにしてもよい。
【0083】
(2)上記各実施形態では、陰極としては銀ワイヤーを用いたが、銀ワイヤーに限られることなく、例えば、平板状の銀板、網目状に形成されている銀板など様々な形態ものを陰極として用いることができる。
【0084】
(3)上記各実施形態においては、陰極としては銀を用いたが、銀に限られるものではなく、例えば、ステンレス、チタン、白金、金などを用いることも可能である。また、陽極としては、笹吹き銀を用いたが、笹吹き銀に限られるものではなく、銀板であってもよく、また、銀以外の白金など不溶性金属であってもよい。なお、銀以外の不溶性金属とする場合には、硝酸銀水溶液における銀濃度の管理を行う必要がある。
【0085】
(4)上記各実施形態においては、生成された宝飾品用銀結晶に透明の合成樹脂又はガラスで覆う処理を行うようにしたが、これらの処理だけではなく、生成された宝飾品用銀結晶に金めっき、ロジウムめっき、白金めっき、パラジウムめっきなどのめっき処理を施すようにしてもよい。このようなめっき処理を施した場合、めっき処理を施したままでもよいが、めっき処理を施した後に、各実施形態で説明したように、合成樹脂やガラスで覆う処理を施すようにしてもよい。
【0086】
(5)上記各実施形態において硝酸銀水溶液内にサッカリン、ホウ酸、チオ尿素又はポリエチレングリコールなどの添加剤を適量加えてもよい。これらの添加剤を適量加えると、添加剤を加えない場合に比べて、宝飾品用銀結晶の見た目の質感などを変化せることができる。
【0087】
(6)各実施形態において用いた電解槽110の形状及び容量などは各実施形態において用いたものに限られるものではなく、生成する宝飾品用銀結晶の種類や規模などに応じて最適な形状及び容量を有する電解槽を使用することができる。
【符号の説明】
【0088】
110・・・電解槽、120・・・硝酸銀水溶液、130・・・陽極(笹吹き銀)、140・・・陰極(銀ワイヤー)、140a・・・先端部、140b・・・直線部、141・・・被覆部、142・・・銀結晶生成部、150・・・電極板、151・・・リード線、152・・・パイプ、160・・・被覆材、210・・・円錐状の覆い、230・・・台座、230a・・・台座の上端面、250,260・・・プレート(ガラス板)、310〜380・・・宝飾品用銀結晶、410〜430・・・ガラス
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹枝状の銀結晶からなる宝飾品用銀結晶の生成方法及び宝飾品に関する。
【背景技術】
【0002】
銀樹とも呼ばれている樹枝状の銀結晶を製造する方法は従来から知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載されている技術(従来技術という。)は、無電解湿式プロセスによって微細な樹枝状の銀結晶を生成するものであり、これによって生成された樹枝状の銀結晶は、銀ペーストへの加工を容易とすることにより電子回路などの用途として期待されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−146387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、樹枝状の銀結晶は、樹枝のように無数に枝分かれした銀結晶であり、自然界に存在する霜や雪の結晶と同様に、その形状は非常に美しく無二のものであるといえる。このため、樹枝状の銀結晶を仮に宝飾品として利用できれば、その宝飾品は価値の高い宝飾品となり得る。なお、本発明においては、宝飾品とは、置物などの鑑賞品だけではなく、ブローチ、イヤリング、ネックレスヘッドなどの装飾品をも含むものとする。
【0005】
しかしながら、従来技術によって得られる樹枝状の銀結晶は、上記したように、電子回路などに用いられるものであるため、より微細な樹枝状の銀結晶を得ることを主な目的としている。このため、従来技術によって得られる樹枝状の銀結晶は、ハンドリングの困難さなどから宝飾品として使用することは非現実的である。
【0006】
そこで、本発明は、樹枝状の銀結晶を宝飾品用銀結晶として生成可能とする宝飾品用銀結晶の生成方法を提供するとともに当該宝飾品用銀結晶を用いた価値の高い宝飾品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明の宝飾品用銀結晶の生成方法は、10重量%以上の濃度で飽和濃度よりも低い濃度を有する硝酸銀水溶液を電解槽に注入するとともに当該硝酸銀水溶液に陽極及び陰極を浸漬した状態とする第1工程と、前記硝酸銀水溶液を電気分解することにより前記陰極から樹枝状の銀結晶を成長させて宝飾品用銀結晶を生成する第2工程とを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の宝飾品用銀結晶の生成方法によれば、上記第1工程及び第2工程を行うことによって、樹枝状の銀結晶からなる宝飾品用銀結晶を生成することができる。樹枝状の銀結晶は全く同一に成長することはないため、生成される宝飾品用銀結晶は無二のものとなり、価値の高い宝飾品となる。また、当該宝飾品用銀結晶は純銀であるため、銀独特の落ち着いた色合いを有するとともに、宝飾品用銀結晶を構成する小さな銀の単結晶面が無数に存在し、個々の銀の単結晶面が光を乱反射してキラキラと輝くため、見た目にも豪華な宝飾品となる。
【0009】
[2]本発明の宝飾品用銀結晶の生成方法において、前記陽極は、前記電解槽における内部の底面に配置し、前記陰極は、前記硝酸銀水溶液の液面の上方側から前記硝酸銀水溶液に浸漬させるように配置することが好ましい。
【0010】
このような構成とすることによって、陰極から樹枝状の銀結晶を成長させて行くことができ、それによって、宝飾品用銀結晶を生成することができる。
【0011】
[3]本発明の宝飾品用銀結晶の生成方法において、前記陰極は、金属ワイヤーが用いられ、前記樹枝状の銀結晶が前記金属ワイヤーの先端部から立体的に成長して行くように前記金属ワイヤーの先端部を前記硝酸銀水溶液に浸漬させることが好ましい。
【0012】
このように、陰極を金属ワイヤーとし、かつ、当該金属ワイヤーをこのような配置として電気分解を行うことにより、金属ワイヤーの先端部から樹枝状の銀結晶が立体的に成長して行くため、生成される宝飾品用銀結晶は、金属ワイヤーの先端部から立体的に広がる樹枝状の銀結晶となる。
【0013】
[4]本発明の宝飾品用銀結晶の生成方法において、前記陰極は、先端部から後方側に向かって所定長さの直線部を有する金属ワイヤーが用いられ、前記樹枝状の銀結晶が前記金属ワイヤーの前記直線部から立体的に成長して行くように前記金属ワイヤーの直線部を前記硝酸銀水溶液に浸漬させることが好ましい。
【0014】
このように、陰極を金属ワイヤーとし、かつ、当該金属ワイヤーをこのような配置として電気分解を行うことにより、金属ワイヤーの直線部から樹枝状の銀結晶が成長して行くため、生成される宝飾品用銀結晶の全体的な外観形状は、金属ワイヤーの直線部が樹木の幹となり当該幹に沿って樹枝が立体的に張り出しているような樹木形状とすることができる。このような外観形状は、例えていうと「モミの木」のような形状である。
【0015】
[5]本発明の宝飾品用銀結晶の生成方法において、前記陰極は、所望とする形状を有する曲げ部が形成されている金属ワイヤーが用いられ、前記樹枝状の銀結晶が前記曲げ部から立体的に成長して行くように前記金属ワイヤーの曲げ部を前記硝酸銀水溶液に浸漬させることが好ましい。
【0016】
このように、陰極を金属ワイヤーとし、当該金属ワイヤーに所望とする形状を有する曲げ部を形成して、当該曲げ部を前記硝酸銀水溶液に浸漬させて電気分解を行うことにより、金属ワイヤーの曲げ部から樹枝状の銀結晶が立体的に成長して行くため、曲げ部を種々の形状(例えば、ハート型、星形、螺旋型、湾曲型など)とすることにより、生成される宝飾品用銀結晶の全体的な外観形状をハート型、星形、螺旋型、湾曲型など種々の形状とすることができる。
【0017】
[6]本発明の宝飾品用銀結晶の生成方法において、前記陰極は、所望とする形状を有する板状の金属が用いられ、前記樹枝状の銀結晶が前記板状の金属から立体的に成長して行くように前記板状の金属を前記硝酸銀水溶液に浸漬させることが好ましい。
【0018】
このように、陰極を所望とする形状を有する板状の金属として、当該板状の金属を硝酸銀水溶液に浸漬させて電気分解を行うことにより、樹枝状の銀結晶は板状の金属から立体的に成長して行くため、金属板を種々の形状(例えば、ハート型、星形、螺旋型、湾曲型など)とすることにより、生成される宝飾品用銀結晶の全体的な外観形状をハート型、星形、螺旋型、湾曲型など種々の形状とすることができる。なお、板状の金属には網目の金属板も含むものとする。
【0019】
[7]本発明の宝飾品用銀結晶の生成方法において、非導電性部材でなる台座を当該台座の上端面が前記硝酸銀水溶液の液面よりもわずかに下方向に位置するように前記電解槽の内部に配置し、前記陰極は、金属ワイヤーが用いられ、前記樹枝状の銀結晶が前記金属ワイヤーの先端部と前記台座の上端面との間で平面的に成長して行くように当該金属ワイヤーの先端部が前記台座の上端面に近接又は接触した状態に配置されていることが好ましい。
【0020】
このような構成とすることにより、樹枝状の銀結晶は、陰極としての金属ワイヤーの先端部からプレートの上端面と液面との間において平面的に成長して行くため、生成される宝飾品用銀結晶の全体的な外観形状は、樹枝状の銀結晶が平面的に広がるような形状となる。
【0021】
[8]本発明の宝飾品用銀結晶の生成方法において、非導電性部材でなる複数のプレートの各プレート間に隙間が形成されるように前記複数のプレートを対向させた状態で前記硝酸銀水溶液に浸漬させ、前記陰極は、前記樹枝状の銀結晶が前記隙間で平面的に成長して行くように前記隙間に配置されていることもまた好ましい。
【0022】
このような構成とすることによっても、樹枝状の銀結晶は、各プレート間に形成される隙間において平面的に成長して行くため、生成される宝飾品用銀結晶の全体的な外観形状は、樹枝状の銀結晶が平面的に広がるような形状となる。
【0023】
[9]本発明の宝飾品用銀結晶の生成方法において、前記陽極は、所定量の笹吹き銀によって構成されていることが好ましい。
【0024】
陽極としては銀が好ましいが、同じ銀であっても笹吹き銀は銀板などに比べて安価であるという利点がある。また、笹吹き銀は溶解しやすく樹枝状の銀結晶の成長をより速くすることができるといった利点もある。また、銀以外の金属として、例えば、白金などの不溶性金属を用いることもできるが、この場合、硝酸銀水溶液における銀濃度の管理を行う必要がある。
【0025】
[10]本発明の宝飾品用銀結晶の生成方法において、前記陰極は、銀、チタン、白金、金又はステンレスであることが好ましい。
【0026】
このように、陰極としては、種々の金属を使用することができる。このため、例えば、豪華さを重視した宝飾品とする場合には、銀、白金、金などを用い、耐久性やコストの低廉化を重視した宝飾品とする場合にはステンレスを用い、軽量化を重視した宝飾品とする場合にはチタンを用いるというように、宝飾品の用途に応じて選択することが好ましい。
【0027】
[11]本発明の宝飾品は、樹枝状の銀結晶を用いた宝飾品であって、前記[1]〜[10]のいずれかの宝飾品用銀結晶の生成方法によって製造された宝飾品用銀結晶を用いていることを特徴とする。
【0028】
本発明の宝飾品によれば、[1]〜[10]のいずれかの宝飾品用銀結晶の生成方法によって製造された宝飾品用銀結晶を用いているため、製造される宝飾品は無二のものとなり、価値のある宝飾品となる。なお、宝飾品用銀結晶が硫化することによって黒ずみが生じた場合には、300℃以上の温度、好ましくは、銀の融点よりもわずかに低い温度(例えば900度程度)で加熱処理を行うことによって硫化物を取り除くことができ、銀が持っている本来の色に復元することができる。また、加熱処理を行うことにより陰極との接続強度を大きくすることもできる。このような加熱処理を行ったのちに透明の合成樹脂又はガラスで覆う処理を施すようにしてもよい。また、必要に応じて、宝飾品用銀結晶に金めっき、ロジウムめっき、白金めっき、パラジウムめっきなどのめっき処理を施すようにしてもよい。
【0029】
[12]本発明の宝飾品においては、前記宝飾品用銀結晶は、透明の合成樹脂又はガラスで覆われていることが好ましい。
【0030】
このように、宝飾品用銀結晶が透明の合成樹脂又はガラスで覆われていることにより、生成された宝飾品用銀結晶を宝飾品として取り扱い易くすることができるとともに、宝飾品としての価値をより高めることができ、かつ、宝飾品用銀結晶の形状、色及び輝きを長期間保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法を説明するために示す図である。
【図2】生成された宝飾品用銀結晶310を電解槽から取り出して示す図である。
【図3】実施形態2に係る宝飾品用銀結晶の生成方法を説明するために示す図である。
【図4】電解槽110から取り出した宝飾品用銀結晶320を透明の合成樹脂又はガラスに埋め込んだ状態を示す図である。
【図5】実施形態2に係る宝飾品用銀結晶の生成方法の変形例を説明するために示す図である。
【図6】実施形態3に係る宝飾品用銀結晶の生成方法を説明するために示す図である。
【図7】電解槽110から取り出した宝飾品用銀結晶340を透明の合成樹脂又はガラスに埋め込んだ状態を示す図である。
【図8】曲げ部の形状に応じて生成される宝飾品用銀結晶350,360の例を説明するために示す図である。
【図9】実施形態4に係る宝飾品用銀結晶の生成方法を説明するために示す図である。
【図10】電解槽110から取り出した宝飾品用銀結晶370を透明の合成樹脂又はガラスに埋め込んだ状態を示す図である。
【図11】実施形態5に係る宝飾品用銀結晶の生成方法を説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0033】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法を説明するために示す図である。なお、図1(a)は電気分解を開始する前の状態を模式的に示す図であり、図1(b)は電気分解によって宝飾品用銀結晶310が生成された状態を模式的に示す図である。図2は、生成された宝飾品用銀結晶310を電解槽110から取り出して示す図である。
【0034】
実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法は、図1に示すように、10重量%以上の濃度で飽和濃度よりも低い濃度(以下、「10重量%濃度〜飽和濃度」と表記する。)を有する硝酸銀水溶液120を電解槽110に注入するとともに当該硝酸銀水溶液120に陽極130及び陰極140を浸漬させた状態とする工程(第1工程)を行い(図1(a)参照。)、当該硝酸銀水溶液120を電気分解することにより陰極140から樹枝状の銀結晶を成長させて宝飾品用銀結晶310を生成する工程(第2工程)を行う(図1(b)参照。)。なお、電解槽110は、例えば、1000mlの容量を有する耐食性の合成樹脂又はガラスなどからなり、硝酸銀水溶液120は電解槽110に800ml程度注入されているとする。
【0035】
実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法においては、陽極130としては笹吹き銀(以下、笹吹き銀130と表記する場合もある。)が用いられ、陰極140としては所定の径(1mmとする。)を有する銀ワイヤー(以下、銀ワイヤー140と表記する場合もある。)が用いられる。このように陽極130として笹吹き銀を用いる場合、電解槽110における内部側の底面に電極用の金属板150(電極板150という。)を敷設して、当該電極板150の上に笹吹き銀130を所定量敷き詰める。そして、電極板150にはリード線151を接続して、当該リード線151を電解槽110の開口側から外部に引き出す。このような構成とすることにより、陽極としての笹吹き銀130を図示しない電源装置に接続することができる。
【0036】
なお、リード線151は、電解槽110内において硝酸銀水溶液120に触れないようにするために、合成樹脂などからなるパイプ152の内部を通して電解槽110の外部に引き出すようにすることが好ましい。リード線151の材質は特に限定されるものではないが、リード線151として仮に銀線を使用するような場合は、銀線が硝酸銀水溶液に触れると溶解してしまうからである。
陽極130をこのような構成とすることは、後述する他の実施形態においても同様であるとする。
【0037】
なお、電極板150は、笹吹き銀130の個々の銀粒よりも細かい網目を有する網状の金属であってもよい。また、電極板150の材質は、特に限定されるものではないが、導電性に優れた不溶性の金属とし、例えば白金、白金で被覆したチタンなどが好ましい。また、電解槽110に投入する笹吹き銀130の量は、生成する宝飾品用銀結晶の種類や規模などに応じて適宜最適な量とする。
【0038】
一方、銀ワイヤー140は、先端部140aを硝酸銀水溶液120の液面から硝酸銀水溶液120内に所定量(先端部140aから5mm程度とする。)だけ浸漬させる。硝酸銀水溶液120のpHは中性から酸性であればよく、pHは4〜5程度が好ましい。なお、pHの調整には、硝酸、苛性ソーダを用いることができる。
【0039】
また、硝酸銀水溶液120の濃度は20重量%程度でもよいが、より高い濃度(例えば40重量%程度)である方が好結果を得ることができる。また、電気分解時における硝酸銀水溶液の温度は常温とするが、5℃程度の比較的低い温度であってもよく、また、60℃程度の比較的高い温度であってもよい。
【0040】
硝酸銀水溶液120の濃度を高めに設定すると、宝飾品用銀結晶の個々の銀結晶が大きめに成長する傾向にあり、逆に、硝酸銀水溶液120の濃度を低めに設定すると、宝飾品用銀結晶の個々の銀結晶が小さめに成長する傾向にある。また、硝酸銀水溶液120の温度を低めに設定すると、宝飾品用銀結晶の個々の銀結晶が大きめに成長する傾向にあり、逆に、硝酸銀水溶液120の温度を高めに設定すると、宝飾品用銀結晶の個々の銀結晶が小さめに成長する傾向にある。このような傾向が現れることは、後述する他の実施形態においても同様である。
【0041】
このようにして、陽極130(笹吹き銀130)と陰極140(銀ワイヤー140)との間に所定の電圧及び所定の電流を与えて電気分解を行う。例えば、硝酸銀水溶液120の濃度を20重量%、陽極130と陰極140との間に与える電圧を200mVとすると、電流は500mAを示し、この状態で電気分解を継続して行うと、銀ワイヤー140の先端部140aからは、樹枝状の銀結晶が立体的に成長して行き、所定時間経過すると、図1(b)に示すように、例えて言うなら「竹ほうき」の先端のような形状の宝飾品用銀結晶310が生成される。このようにして生成された宝飾品用銀結晶310は、当該宝飾品用銀結晶310を構成する小さな銀の単結晶面が無数に存在するものとなり、当該銀の単結晶面が光を乱反射してキラキラと輝くため、見た目に豪華なものとなる。
【0042】
実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法によって生成された宝飾品用銀結晶310は、銀ワイヤー140の先端部140aから宝飾品用銀結晶310の先端までの長さが50mm程度となったが、これは、硝酸銀水溶液120の濃度、陽極130と陰極140との間に与える電圧及び電流、電気分解の継続時間など、宝飾品用銀結晶を生成させるための条件(宝飾品用銀結晶生成条件という。)を適宜設定することによって、種々変化させることができる。
【0043】
なお、宝飾品用銀結晶生成条件は、生成しようとする宝飾品用銀結晶の種類や規模などによって最適な電圧、電流及び時間を設定することができる。このため、実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法においても、硝酸銀水溶液120の濃度は20%、電圧は200mV、電流は500mAというような値に限られるものではなく、状況に応じて宝飾品用銀結晶生成条件を適宜設定することができる。宝飾品用銀結晶生成条件を変えることによって、同じ形態の宝飾品用銀結晶を生成する場合であっても、個々の銀結晶の大きさや見た目の質感などが異なった宝飾品用銀結晶を生成することができる。ただし、硝酸銀水溶液の濃度は10重量%濃度〜飽和濃度の範囲内、電圧は数10mV〜1000mVの範囲内、電流は10mA〜700mAの範囲内で設定することが好ましい。このことは、実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法に限られるものではなく、後述する他の実施形態においても同様である。
【0044】
次に、上記第2工程によって生成された宝飾品用銀結晶310を電解槽110から取り出す。電解槽110から取り出した宝飾品用銀結晶310を図2に示す。なお、図2においては、宝飾品用銀結晶310は平面的に見えるが、実際には、銀ワイヤー140の先端部140aを中心として当該先端部140aから立体的に広がるものとなる。
【0045】
そして、電解槽110から取り出した宝飾品用銀結晶310に対して加工処理を行う。この加工処理は、生成された宝飾品用銀結晶310を宝飾品として取り扱い易くするとともに、宝飾品としての価値をより高めるために行うものである。ここでは、宝飾品用銀結晶310に対して行う加工処理は、宝飾品用銀結晶310を透明の合成樹脂又はガラスで覆う処理であるとする。
【0046】
なお、宝飾品用銀結晶310に対して行う加工処理は、必要に応じて行うものであり、電解槽110から取り出した宝飾品用銀結晶310は、加工処理を行わずに、そのままでも宝飾品として使用することができる。すなわち、宝飾品用銀結晶310は純銀であるため、銀独特の落ち着いた色合いを有するとともに、宝飾品用銀結晶310を構成する小さな銀の単結晶面が無数に存在して当該銀の単結晶面が光を乱反射してキラキラと輝くため、豪華な宝飾品となる。このように、宝飾品用銀結晶310をそのままの状態で宝飾品とすることができることは後述する他の実施形態においても同様である。
【0047】
ただし、宝飾品用銀結晶310をそのままとしておくと、宝飾品用銀結晶310が崩れたり、陰極140(銀ワイヤー140)から取れたりするといった不具合が生じる場合もある。また、銀は空気中に晒しておくと、硫化して黒ずみ易く、銀結晶の有する本来の色(銀色)が損なわれるといった不具合が生じる場合もある。
【0048】
これらの不具合が生じないようにするためには、宝飾品用銀結晶310を透明の合成樹脂又はガラスで覆うことが好ましい。宝飾品用銀結晶310を透明の合成樹脂又はガラスで覆うことによって、生成された宝飾品用銀結晶310を宝飾品として取り扱い易くすることができるとともに、宝飾品としての価値をより高めることができ、かつ、宝飾品用銀結晶310の形状、色及び輝きを長期間保持することができる。実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法においては、生成された宝飾品用銀結晶310を透明の合成樹脂又はガラスで覆った状態の図示は省略する。
【0049】
なお、宝飾品用銀結晶310を透明の合成樹脂又はガラスによってどのように覆うかは、当該宝飾品用銀結晶310をどのような用途の宝飾品とするかによって異なる。例えば、当該宝飾品用銀結晶310をブローチ、イヤリング、ネックレスヘッドなどの装飾品として用いる場合には、小型・軽量とすることが好ましいため、合成樹脂などにより比較的薄手のコーティング処理を施す程度であってもよい。また、当該宝飾品用銀結晶310を置物などの鑑賞品として用いる場合には、宝飾品用銀結晶310に重厚感を持たせることが好ましいため、例えば、円柱状、角柱状、円錐状など厚みのある合成樹脂又はガラスの中に宝飾品用銀結晶310を埋め込むようにすることが好ましい。
【0050】
また、電解槽110から取り出した宝飾品用銀結晶310が硫化して黒ずみが生じてしまった場合には、300℃以上の温度、好ましくは、銀の融点よりもわずかに低い温度(例えば900度程度)で加熱処理を行うことによって硫化物を取り除くことができ、銀が持っている本来の色に復元することができる。また、このような加熱処理を行うことにより銀ワイヤー140との接続強度を大きくすることもできる。
【0051】
[実施形態2]
図3は、実施形態2に係る宝飾品用銀結晶の生成方法を説明するために示す図である。なお、図3(a)は電気分解を開始する前の状態を模式的に示す図であり、図3(b)は電気分解によって宝飾品用銀結晶320が生成された状態を模式的に示す図である。図4は、電解槽110から取り出した宝飾品用銀結晶を透明の合成樹脂又はガラスに埋め込んだ状態を示す図である。図5は、実施形態2に係る宝飾品用銀結晶の生成方法の変形例を説明するために示す図である。なお、図5(a)は電気分解を開始する前の状態を模式的に示す図であり、図5(b)は電気分解によって宝飾品用銀結晶330が生成された状態を模式的に示す図である。
【0052】
実施形態2に係る宝飾品用銀結晶の生成方法における基本的な工程は、実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法と同様であるが、実施形態2に係る宝飾品用銀結晶の生成方法においては、図3に示すように、銀ワイヤー140の直線部140bを当該銀ワイヤー140の先端部140aから所定長さL1だけ硝酸銀水溶液120に浸漬させる点が実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法と異なる。なお、実施形態2においては、外観形状が「モミの木」のような樹木形状の宝飾品用銀結晶320を生成するものであるとする。
【0053】
このような形状の宝飾品用銀結晶320を生成するために、図3(a)に示すように、銀ワイヤー140の直線部140bを当該銀ワイヤー140の先端部140aから所定の長さL1だけ硝酸銀水溶液120に浸漬させる。また、硝酸銀水溶液120に浸漬させる部分(長さL1)のうちの先端部140aから長さL2の部分は、シリコンチューブなどの非導電性部材160で被覆する。なお、硝酸銀水溶液120に浸漬させる部分(長さL1)のうちの非導電性部材160で被覆する部分を「被覆部141」とし、当該被覆部141以外の部分を「銀結晶生成部142」とする。
【0054】
このようにして実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法と同様に電気分解を行う。このときの宝飾品用銀結晶生成条件は、実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法において説明したように、生成する宝飾品用銀結晶に応じた最適な値を設定する。この場合も、硝酸銀水溶液の濃度は、10重量%濃度〜飽和濃度の範囲内、電圧は数10mV〜1000mVの範囲内、電流は10mA〜700mAの範囲内で設定することが好ましい。
【0055】
図3(a)の状態において電気分解を行うと、非導電性部材160で被覆した被覆部141においては、樹枝状の銀結晶が成長せずに、銀結晶生成部142のみにおいて樹枝状の銀結晶が立体的に成長して行く、そして、所定時間経過すると、図3(b)に示すように、所望とする宝飾品用銀結晶320が生成される(第2工程。)。ここで生成された宝飾品用銀結晶320は、被覆部141が樹木の根元に近い幹のようになり、被覆部141を含めた全体的な外観形状は、「モミの木」のような樹木形状となる。
【0056】
実施形態2に係る宝飾品用銀結晶の生成方法において生成される宝飾品用銀結晶320も、銀独特の落ち着いた色合いを有するとともに、宝飾品用銀結晶を構成する小さな銀の単結晶面が無数に存在して当該銀の単結晶面が光を乱反射してキラキラと輝くため、豪華な宝飾品となる。なお、実施形態2に係る宝飾品用銀結晶の製造方法によって製造された宝飾品用銀結晶320は、硝酸銀水溶液120に浸漬している銀ワイヤー140の長さL1は80mm程度であり、樹枝状の銀結晶が成長した部分(銀結晶生成部142)の長さは70mm程度となったが、これは、被覆部141及び銀結晶生成部142の長さを設定することによって所望とする寸法のものを生成することができる。また、樹枝状の銀結晶の成長度合いなどは、宝飾品用銀結晶生成条件を適宜設定することによって、種々変化させることができる。
【0057】
次に、上記第2工程によって生成された宝飾品用銀結晶を電解槽110から取り出し、銀ワイヤー140を所定の位置(先端部140aから長さL1の位置)で切断したのち、実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法と同様に、必要に応じて、例えば、生成された宝飾品用銀結晶310を透明の合成樹脂又はガラスで覆う処理を行う。
【0058】
図4は、宝飾品用銀結晶320を透明のガラス410に埋め込んだ状態を示す図であり、このようにすることによって、生成された宝飾品用銀結晶330を取り扱い易くすることができるとともに、宝飾品としての価値をより高めることができ、かつ、宝飾品用銀結晶320の形状、色及び輝きを長期間保持することができる。
【0059】
ところで、実施形態2に係る宝飾品用銀結晶の生成方法によって生成される宝飾品用銀結晶320をクリスマスツリーのように形の整った円錐状の宝飾品用銀結晶(クリスマスツリー状の宝飾品用銀結晶という。)とすることも可能である。
【0060】
このようなクリスマスツリー状の宝飾品用銀結晶を生成させる場合には、図5(a)に示すように、内部が空洞の非導電部材からなる円錐状の覆い210を電解槽110の開口部の側から吊り下げるように配置し、当該円錐状の覆い210の中心軸に沿うように銀ワイヤー140を配置した状態として、宝飾品用銀結晶生成条件を適切に設定して電気分解を行う。これにより、樹枝状の銀結晶の成長が円錐状の覆い210で規制されるため、図5(b)に示すように、クリスマスツリー状の宝飾品用銀結晶330を生成することができる。
【0061】
[実施形態3]
図6は、実施形態3に係る宝飾品用銀結晶の生成方法を説明するために示す図である。なお、図6(a)は電気分解を開始する前の状態を模式的に示す図であり、図6(b)は電気分解によって宝飾品用銀結晶340が生成された状態を模式的に示す図である。図7は、電解槽110から取り出した宝飾品用銀結晶340を透明の合成樹脂又はガラスに埋め込んだ状態を示す図である。図8は、曲げ部の形状に応じて生成される宝飾品用銀結晶の例を説明するために示す図である。
【0062】
実施形態3に係る宝飾品用銀結晶の生成方法における基本的な工程は、実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法と同様であるが、実施形態3に係る宝飾品用銀結晶の生成方法においては、銀ワイヤー140に所望の形状を有する曲げ部145を形成し、当該曲げ部145から樹枝状の銀結晶が成長して行くように、銀ワイヤー140の曲げ部145を硝酸銀水溶液120に浸漬させる点が実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法と異なる。
【0063】
具体的には、図6(a)に示すように、銀ワイヤー140の曲げ部145を硝酸銀水溶液120に浸漬させるように、銀ワイヤー140を硝酸銀水溶液120内に挿入する。なお、曲げ部145の形状はここではハート形とする。
【0064】
このようにして実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法と同様に電気分解を行う。このときの宝飾品用銀結晶生成条件は、実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法において説明したように、生成する宝飾品用銀結晶に応じた最適な値を設定する。この場合も、硝酸銀水溶液の濃度は10重量%濃度〜飽和濃度の範囲内、電圧は数10mV〜1000mVの範囲内、電流は10mA〜700mAの範囲内で設定することが好ましい。なお、硝酸銀水溶液120の濃度は前述したように40重量%と程度というように高めに設定した方が好結果を得ることができる。
【0065】
これにより、銀ワイヤー140の曲げ部145から樹枝状の銀結晶が成長して行き(図6(b)参照。)、所定時間経過すると、銀ワイヤー140の曲げ部145には宝飾品用銀結晶340が生成される(第2工程。)。実施形態3に係る宝飾品用銀結晶の生成方法において生成される宝飾品用銀結晶340も、銀独特の落ち着いた色合いを有するとともに、宝飾品用銀結晶340を構成する小さな銀の単結晶面が無数に存在して当該銀の単結晶面が光を乱反射してキラキラと輝くため、豪華な宝飾品となる。
【0066】
次に、上記第2工程によって生成された宝飾品用銀結晶340を電解槽110から取り出し、銀ワイヤー140を所定位置(宝飾品用銀結晶340との付け根の位置)で切断したのちに、実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法と同様に、必要に応じて、宝飾品用銀結晶340に生成された宝飾品用銀結晶340を透明の合成樹脂又はガラスで覆う工程を行う。
【0067】
図7は、宝飾品用銀結晶340を透明のガラス420に埋め込んだ状態を示す図であり、このようにすることによって、生成された宝飾品用銀結晶340を取り扱い易くすることができるとともに、宝飾品としての価値をより高めることができ、かつ、宝飾品用銀結晶340の形状、色及び輝きを長期間保持することができる。なお、実施形態3に係る宝飾品用銀結晶の生成方法によって製造された宝飾品用銀結晶340は、その形状などから、ネックレスヘッド、ブローチ、イヤリングなどの装飾品として最適なものとなる。このため、宝飾品用銀結晶340が小型で軽量となるように、合成樹脂などにより比較的薄手のコーティング処理を施すようにしてもよい。また、曲げ部145の大きは種々設定することが可能である。
【0068】
また、曲げ部145の形状はハート形に限られるものではなく、種々の形状とすることができる。例えば、曲げ部145を螺旋形とすることによって、図8(a)に示すような螺旋形の宝飾品用銀結晶350を生成することができ、また、曲げ部145を湾曲型とすることによって図8(b)に示すような湾曲型の宝飾品用銀結晶360を生成することができる。その他、図示は省略するが曲げ部145を様々な形状とすることによって様々な宝飾品用銀結晶を生成することができる。なお、図8(a),(b)に示すような形状の宝飾品用銀結晶350,360においても、図7に示すようにガラスに埋め込むことも可能であり、また、合成樹脂などにより比較的薄手のコーティング処理を施すことも可能である。
【0069】
[実施形態4]
図9は、実施形態4に係る宝飾品用銀結晶の生成方法を説明するために示す図である。なお、図9(a)は電気分解を開始する前の状態を模式的に示す図であり、図9(b)は電気分解によって宝飾品用銀結晶370が生成された状態を模式的に示す図である。図10は、電解槽110から取り出した宝飾品用銀結晶370を透明の合成樹脂又はガラスに埋め込んだ状態を示す図である。
【0070】
実施形態4に係る宝飾品用銀結晶の生成方法は、図9(a)に示すように、非導電性部材でなる台座230を設置する。台座230は、硝酸銀水溶液120よりも比重の大きい素材として、例えば、フッ素樹脂(テフロン(登録商標))によって形成されている。また、台座230は、所定の高さhを有するとともに電解槽110の内径d1よりも小さな径d2を有する円筒状をなしている。
【0071】
台座230は、当該台座230の外側面と電解槽110の内側面との間に全周に渡って所定の空間部が形成されるように電解槽110内に設置する。そして、台座230の外側面と電解槽110の内側面との間に形成される空間部には、陽極としての笹吹き銀130を電解槽110の底面から所定の高さとなるように投入するとともに、硝酸銀水溶液120を台座230の上端面230aよりも3mm程度高くなるように注入する。そして、硝酸銀水溶液120の上方から陰極としての銀ワイヤー140をその先端部140aが台座230の上端面230aに接触又は近接するように硝酸銀水溶液120内に挿入する。なお、銀ワイヤー140の径は1mmであるとする。
【0072】
このようにして実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法と同様に電気分解を行う。このときの宝飾品用銀結晶生成条件は、実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法において説明したように、生成する宝飾品用銀結晶に応じた最適な値を設定する。この場合も、硝酸銀水溶液の濃度は10重量%濃度〜飽和濃度の範囲内、電圧は数10mV〜1000mVの範囲内、電流は10mA〜700mAの範囲内で設定することが好ましい。なお、硝酸銀水溶液120の濃度は前述したように40重量%と程度というように高めに設定した方が好結果を得ることができる。
【0073】
これにより、銀ワイヤー140の先端部140aからは、樹枝状の銀結晶が台座230の上端面230aに沿って平面的に成長して行き、所定時間経過すると、図9(b)に示すように、台座230の上端面230aと液面との間で宝飾品用銀結晶370が生成される(第2工程。)。
【0074】
実施形態4に係る宝飾品用銀結晶の生成方法において生成される宝飾品用銀結晶370は、台座230の上端面230aと硝酸銀水溶液120の液面との3mm程度の間において生成されるものであるため、生成された宝飾品用銀結晶370は平面的なものとなる。なお、実施形態4に係る宝飾品用銀結晶の生成方法において生成される宝飾品用銀結晶370も、銀独特の落ち着いた色合いを有するとともに、宝飾品用銀結晶を構成する小さな銀の単結晶面が無数に存在して当該銀の単結晶面が光を乱反射してキラキラと輝くため、豪華な宝飾品となる。
【0075】
次に、上記第2工程によって生成された宝飾品用銀結晶370を電解槽110から取り出し、銀ワイヤー140を所定位置(宝飾品用銀結晶370との付け根の位置)で切断したのちに、実施形態1に係る宝飾品用銀結晶の生成方法と同様に、例えば、生成された宝飾品用銀結晶370を透明の合成樹脂又はガラスで覆う工程を行う。
【0076】
図10は、宝飾品用銀結晶370を透明のガラス430に埋め込んだ状態を示す図であり、このようにすることによって、生成された宝飾品用銀結晶370を取り扱い易くすることができるとともに、宝飾品としての価値をより高めることができ、かつ、宝飾品用銀結晶370の形状、色及び輝きを長期間保持することができる。
【0077】
[実施形態5]
図11は、実施形態5に係る宝飾品用銀結晶の生成方法を説明するために示す図である。なお、図11(a)は電気分解を開始する前の状態を模式的に示す図であり、図11(b)は電気分解によって宝飾品用銀結晶380が生成された状態を模式的に示す図である。実施形態5に係る宝飾品用銀結晶の生成方法は、実施形態4と同様に、平面的な宝飾品用銀結晶を生成するものである。
【0078】
実施形態5に係る宝飾品用銀結晶の生成方法は、図11に示すように、所定間隔(例えば、3mmとする。)を有する隙間S1が形成されるように対向配置させた非導電性部材でなる2枚のプレート(ガラス板とする。)250,260を硝酸銀水溶液120に浸漬させ、当該ガラス板250,260の間に形成される隙間S1に陰極としての銀ワイヤー140を挿入する。
【0079】
このようにして、宝飾品用銀結晶生成条件を上記したように設定して電気分解することにより、2枚のガラス板250,260の間に形成される隙間S1において樹枝状の銀結晶が成長し、図11(b)に示すように、2枚のガラス板250,260の間において平面的な宝飾品用銀結晶380を生成することができる。
【0080】
なお、図11においては、陰極としては銀ワイヤー140を用いた場合を例示したが、これに限られるものではなく、例えば、網目状の銀板であってもよい。また、ガラス板は2枚ではなく、3枚以上のガラス板を各ガラス板間に隙間が形成されるように対向させ、各隙間ごとに陰極(例えば、銀ワイヤー)を挿入するような構成としてもよい。このような構成とすることによって、複数の宝飾品用銀結晶380を同時に生成することができる。
【0081】
なお、本発明は上記各実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能となるものである。たとえば、下記に示すような変形実施も可能である。
【0082】
(1)上記各実施形態では、陰極としての銀ワイヤーの径は1mmとして説明したが1mmに限られるものではなく、生成する宝飾品の種類などによって最適な径の銀ワイヤーを使用することができる。また、銀ワイヤーは1本でなく複数本の銀ワイヤーを並べて配置するようにしてもよい。
【0083】
(2)上記各実施形態では、陰極としては銀ワイヤーを用いたが、銀ワイヤーに限られることなく、例えば、平板状の銀板、網目状に形成されている銀板など様々な形態ものを陰極として用いることができる。
【0084】
(3)上記各実施形態においては、陰極としては銀を用いたが、銀に限られるものではなく、例えば、ステンレス、チタン、白金、金などを用いることも可能である。また、陽極としては、笹吹き銀を用いたが、笹吹き銀に限られるものではなく、銀板であってもよく、また、銀以外の白金など不溶性金属であってもよい。なお、銀以外の不溶性金属とする場合には、硝酸銀水溶液における銀濃度の管理を行う必要がある。
【0085】
(4)上記各実施形態においては、生成された宝飾品用銀結晶に透明の合成樹脂又はガラスで覆う処理を行うようにしたが、これらの処理だけではなく、生成された宝飾品用銀結晶に金めっき、ロジウムめっき、白金めっき、パラジウムめっきなどのめっき処理を施すようにしてもよい。このようなめっき処理を施した場合、めっき処理を施したままでもよいが、めっき処理を施した後に、各実施形態で説明したように、合成樹脂やガラスで覆う処理を施すようにしてもよい。
【0086】
(5)上記各実施形態において硝酸銀水溶液内にサッカリン、ホウ酸、チオ尿素又はポリエチレングリコールなどの添加剤を適量加えてもよい。これらの添加剤を適量加えると、添加剤を加えない場合に比べて、宝飾品用銀結晶の見た目の質感などを変化せることができる。
【0087】
(6)各実施形態において用いた電解槽110の形状及び容量などは各実施形態において用いたものに限られるものではなく、生成する宝飾品用銀結晶の種類や規模などに応じて最適な形状及び容量を有する電解槽を使用することができる。
【符号の説明】
【0088】
110・・・電解槽、120・・・硝酸銀水溶液、130・・・陽極(笹吹き銀)、140・・・陰極(銀ワイヤー)、140a・・・先端部、140b・・・直線部、141・・・被覆部、142・・・銀結晶生成部、150・・・電極板、151・・・リード線、152・・・パイプ、160・・・被覆材、210・・・円錐状の覆い、230・・・台座、230a・・・台座の上端面、250,260・・・プレート(ガラス板)、310〜380・・・宝飾品用銀結晶、410〜430・・・ガラス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
10重量%以上の濃度で飽和濃度よりも低い濃度を有する硝酸銀水溶液を電解槽に注入するとともに当該硝酸銀水溶液に陽極及び陰極を浸漬させた状態とする第1工程と、
前記硝酸銀水溶液を電気分解することにより前記陰極から樹枝状の銀結晶を成長させて宝飾品用銀結晶を生成する第2工程と、
を含むことを特徴とする宝飾品用銀結晶の生成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の宝飾品用銀結晶の生成方法において、
前記陽極は、前記電解槽における内部の底面に配置し、前記陰極は、前記硝酸銀水溶液の液面の上方側から前記硝酸銀水溶液に浸漬させるように配置することを特徴とする宝飾品用銀結晶の生成方法。
【請求項3】
請求項2に記載の宝飾品用銀結晶の生成方法において、
前記陰極は、金属ワイヤーが用いられ、前記樹枝状の銀結晶が前記金属ワイヤーの先端部から立体的に成長して行くように前記金属ワイヤーの先端部を前記硝酸銀水溶液に浸漬させることを特徴とする宝飾品用銀結晶の生成方法。
【請求項4】
請求項2に記載の宝飾品用銀結晶の生成方法において、
前記陰極は、先端部から後方側に向かって所定長さの直線部を有する金属ワイヤーが用いられ、前記樹枝状の銀結晶が前記金属ワイヤーの前記直線部から立体的に成長して行くように前記金属ワイヤーの直線部を前記硝酸銀水溶液に浸漬させることを特徴とする宝飾品用銀結晶の生成方法。
【請求項5】
請求項2に記載の宝飾品用銀結晶の生成方法において、
前記陰極は、所望とする形状を有する曲げ部が形成されている金属ワイヤーが用いられ、前記樹枝状の銀結晶が前記曲げ部から立体的に成長して行くように前記金属ワイヤーの曲げ部を前記硝酸銀水溶液に浸漬させることを特徴とする宝飾品用銀結晶の生成方法。
【請求項6】
請求項2に記載の宝飾品用銀結晶の生成方法において、
前記陰極は、所望とする形状を有する板状の金属が用いられ、前記樹枝状の銀結晶が前記板状の金属から立体的に成長して行くように前記板状の金属を前記硝酸銀水溶液に浸漬させることを特徴とする宝飾品用銀結晶の生成方法。
【請求項7】
請求項2に記載の宝飾品用銀結晶の生成方法において、
非導電性部材でなる台座を当該台座の上端面が前記硝酸銀水溶液の液面よりもわずかに下方向に位置するように前記電解槽の内部に配置し、
前記陰極は、金属ワイヤーが用いられ、前記樹枝状の銀結晶が前記金属ワイヤーの先端部と前記台座の上端面との間で平面的に成長して行くように当該金属ワイヤーの先端部が前記台座の上端面に近接又は接触した状態に配置されていることを特徴とする宝飾品用銀結晶の生成方法。
【請求項8】
請求項2に記載の宝飾品用銀結晶の生成方法において、
非導電性部材でなる複数のプレートの各プレート間に隙間が形成されるように前記複数のプレートを対向させた状態で前記硝酸銀水溶液に浸漬させ、
前記陰極は、前記樹枝状の銀結晶が前記隙間で平面的に成長して行くように前記隙間に配置されていることを特徴とする宝飾品用銀結晶の生成方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の宝飾品用銀結晶の生成方法において、
前記陽極は、所定量の笹吹き銀によって構成されていることを特徴とする宝飾品用銀結晶の生成方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の宝飾品用銀結晶の生成方法において、
前記陰極は、銀、チタン、白金、金又はステンレスであることを特徴とする宝飾品用銀結晶の生成方法。
【請求項11】
樹枝状の銀結晶を用いた宝飾品であって、
請求項1〜10のいずれかの宝飾品用銀結晶の生成方法によって生成された宝飾品用銀結晶を用いていることを特徴とする宝飾品。
【請求項12】
請求項11に記載の宝飾品において、
前記宝飾品用銀結晶は、透明の樹脂又はガラスで覆われていることを特徴とする宝飾品。
【請求項1】
10重量%以上の濃度で飽和濃度よりも低い濃度を有する硝酸銀水溶液を電解槽に注入するとともに当該硝酸銀水溶液に陽極及び陰極を浸漬させた状態とする第1工程と、
前記硝酸銀水溶液を電気分解することにより前記陰極から樹枝状の銀結晶を成長させて宝飾品用銀結晶を生成する第2工程と、
を含むことを特徴とする宝飾品用銀結晶の生成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の宝飾品用銀結晶の生成方法において、
前記陽極は、前記電解槽における内部の底面に配置し、前記陰極は、前記硝酸銀水溶液の液面の上方側から前記硝酸銀水溶液に浸漬させるように配置することを特徴とする宝飾品用銀結晶の生成方法。
【請求項3】
請求項2に記載の宝飾品用銀結晶の生成方法において、
前記陰極は、金属ワイヤーが用いられ、前記樹枝状の銀結晶が前記金属ワイヤーの先端部から立体的に成長して行くように前記金属ワイヤーの先端部を前記硝酸銀水溶液に浸漬させることを特徴とする宝飾品用銀結晶の生成方法。
【請求項4】
請求項2に記載の宝飾品用銀結晶の生成方法において、
前記陰極は、先端部から後方側に向かって所定長さの直線部を有する金属ワイヤーが用いられ、前記樹枝状の銀結晶が前記金属ワイヤーの前記直線部から立体的に成長して行くように前記金属ワイヤーの直線部を前記硝酸銀水溶液に浸漬させることを特徴とする宝飾品用銀結晶の生成方法。
【請求項5】
請求項2に記載の宝飾品用銀結晶の生成方法において、
前記陰極は、所望とする形状を有する曲げ部が形成されている金属ワイヤーが用いられ、前記樹枝状の銀結晶が前記曲げ部から立体的に成長して行くように前記金属ワイヤーの曲げ部を前記硝酸銀水溶液に浸漬させることを特徴とする宝飾品用銀結晶の生成方法。
【請求項6】
請求項2に記載の宝飾品用銀結晶の生成方法において、
前記陰極は、所望とする形状を有する板状の金属が用いられ、前記樹枝状の銀結晶が前記板状の金属から立体的に成長して行くように前記板状の金属を前記硝酸銀水溶液に浸漬させることを特徴とする宝飾品用銀結晶の生成方法。
【請求項7】
請求項2に記載の宝飾品用銀結晶の生成方法において、
非導電性部材でなる台座を当該台座の上端面が前記硝酸銀水溶液の液面よりもわずかに下方向に位置するように前記電解槽の内部に配置し、
前記陰極は、金属ワイヤーが用いられ、前記樹枝状の銀結晶が前記金属ワイヤーの先端部と前記台座の上端面との間で平面的に成長して行くように当該金属ワイヤーの先端部が前記台座の上端面に近接又は接触した状態に配置されていることを特徴とする宝飾品用銀結晶の生成方法。
【請求項8】
請求項2に記載の宝飾品用銀結晶の生成方法において、
非導電性部材でなる複数のプレートの各プレート間に隙間が形成されるように前記複数のプレートを対向させた状態で前記硝酸銀水溶液に浸漬させ、
前記陰極は、前記樹枝状の銀結晶が前記隙間で平面的に成長して行くように前記隙間に配置されていることを特徴とする宝飾品用銀結晶の生成方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の宝飾品用銀結晶の生成方法において、
前記陽極は、所定量の笹吹き銀によって構成されていることを特徴とする宝飾品用銀結晶の生成方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の宝飾品用銀結晶の生成方法において、
前記陰極は、銀、チタン、白金、金又はステンレスであることを特徴とする宝飾品用銀結晶の生成方法。
【請求項11】
樹枝状の銀結晶を用いた宝飾品であって、
請求項1〜10のいずれかの宝飾品用銀結晶の生成方法によって生成された宝飾品用銀結晶を用いていることを特徴とする宝飾品。
【請求項12】
請求項11に記載の宝飾品において、
前記宝飾品用銀結晶は、透明の樹脂又はガラスで覆われていることを特徴とする宝飾品。
【図1】
【図3】
【図5】
【図6】
【図9】
【図11】
【図2】
【図4】
【図7】
【図8】
【図10】
【図3】
【図5】
【図6】
【図9】
【図11】
【図2】
【図4】
【図7】
【図8】
【図10】
【公開番号】特開2012−241228(P2012−241228A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111876(P2011−111876)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(304023994)国立大学法人山梨大学 (223)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(304023994)国立大学法人山梨大学 (223)
【Fターム(参考)】
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