説明

実質的にフッ素化された化合物を伝熱剤として使用する方法

【課題】オゾン層を破壊するクロルフルオルカーボンの代用品として、又は、難燃性伝熱剤若しくは冷却剤として使用することができる新規なフッ素化エーテルの提供。
【解決手段】次式:CmF2m+1−bHb−O−CpF2p+1−cHc
{式中、m+pは4又は5であり、そしてb+cは1〜(m+p+1)である}で表される少なくとも3個の炭素原子を有するアルカン及び/またはジアルキルエーテルの一連から得られる難燃性の、実質的にフッ素化された化合物が伝熱剤として、特に冷却剤及び絶縁材料として適当であるフッ素化エーテル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的にフッ素化された化合物を伝熱剤として使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーエレクトロニクスに係わる部品に、例えば高電圧/直流伝送または鉄道用装置のために電力用半導体を使用した場合に発生した熱は伝熱剤 (heat transfer agent) を用いて取り除かなければならない。これに関連して、単相対流によって、即ち冷却剤の凝集状態を変化させないで冷却すること、またはこれよりかなり効果的であり、“蒸発冷却" とも呼ばれる、気化冷却の原理に基づいた 2相冷却によって冷却することが可能である。これに関しては、熱が発生する部品を直接沸騰液体中、つまり中空冷却セル中で沸騰する液体中に置くことが可能である (浴またはセル蒸発冷却) 。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
液状のハロゲン化炭化水素、特にクロルフルオルカーボンが伝熱剤及び特に蒸発冷却液として有用であることが証明されている。特に、1,1,2-トリクロル-1,2,2-トリフルオルエタン (F113)が、その良好な熱安定性、難燃性、低粘度、比較的高い気化熱及び好ましい電気物理学的及び -生理学的性質のため、安価な蒸発冷却液としてこれまで広く使用されてきた。しかし、クロルフルオルカーボンは、成層圏中のオゾン層を破壊するものと考えられ、その為、他の物質で置き換える必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】

少なくとも3個の炭素原子を有するアルカン及び/またはジアルキルエーテルの一連から得られる難燃性の、実質的にフッ素化された化合物が伝熱剤として、特に冷却剤及び絶縁材料として適当であることが発見された。“実質的にフッ素化された-“という用語は、ここでは“難燃性“と関連して理解され、つまりDIN51755の方法によっては沸点に至るまで引火点を検出できないということである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
フッ素化された−アルカンまたはジアルキルエーテルはそれらの沸点に依存して選択する。それ故、F113 (沸点47.6℃) の適当な代用品には、例えば44℃の沸点を有する1,4-ジヒドロペルフルオルブタン、及びこれより高い沸点を有する液体、例えば70℃の沸点を有する1-ヒドロ-n-ペルフルオルヘキサンがある。
【0006】
適当な例は、式(1) CnF2n+2-aHa (1)
[式中、nは3〜6、好ましくは4〜6であり、そしてaは1〜(n+1)である]で表されるフルオルアルカン、及び、式(2)
CmF2m+1-bHb-O-CpF2p+1-cHc (2)
[式中、mとpは互いに独立して1〜4であるが、(m+p)は5を超えず、そして(b+c)は1〜(m+p+1)である]で表されるフッ素化エーテルである。
【0007】
それ故、高い水素含有率を有する化合物は概して可燃性であるため、一般に水素原子の数は多くともフッ素原子の数と同数である。しかし、本発明は純粋物質に限られず、それどころか、入手しやすく、その為安価であるという簡単な理由による好都合を度々有する適当な液体の混合物をも包含する。しかし、本発明は、沸点を低くするために混ぜ合わされた適当な液体の混合物にも関する。
【0008】
更に、可燃性液体、例えば使用する混合物が難燃性という上記の基準に適う限りは、水素原子よりもフッ素を少なく含有する低度にしかフッ素化されていないエーテルも適当な混合物に使用できることが発見された。好ましい混合物は、液状低級ジアルキルエーテル、炭化水素及び低級アルカノール、特にメタノール、エタノールまたはイソプロパノールと、実質的にフッ素化されたアルカンまたは実質的にフッ素化されたジアルキルエーテルとの混合物であり、共沸混合物または共沸するのに満たない量で加えた液体を含む混合物が好ましい。
【0009】
該混合物の成分として低級アルカノールが特に有利な所は、それらが、オクタフルオルイソブテン型の高度にフッ素化された分岐状オレフィンと反応して(Ho-uben-Weyl, Methoden der organischen Chemie( 有機化学方法), 第 4版、V/3巻、第 280頁) 、通常有毒な分岐状オレフィンを無毒なエーテルに転化するという事実であると考えられる。上述のオレフィンは、一方では工業製品中で不純物として存在し、しかしまた他方ではそれを使用する際に火花放電または他の極限のストレスの結果として形成し得る。それで本発明のこの好ましい実施態様は使用中に付加的な安全性を提供する。
【0010】
F113を他の物と代用した実施例によって、以下に本発明を詳細に説明する。しかし、本発明の範囲がまた、伝熱剤、特に冷却剤または絶縁材料として、または冷却機械、例えば自動車用空気調和装置系統中の作動媒質として他のハロゲン化炭化水素の取替え品にも及ぶことは自明である。
【実施例】
【0011】
以下の表にまとめた実施例中の百分率データは重量% を意味する。沸点は(b.p) は℃で表される。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式:C2m+1−b−O−C2p+1−c
{式中、m+pは4又は5であり、そしてb+cは1〜(m+p+1)である}で表されるフッ素化エーテル。

【公開番号】特開2008−69157(P2008−69157A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−242949(P2007−242949)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【分割の表示】特願平6−21468の分割
【原出願日】平成6年2月18日(1994.2.18)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ(ソシエテ アノニム) (252)
【Fターム(参考)】