説明

実験動物用飼育装置

【課題】実験動物用飼育装置において、ケージトップを各社が保有する既存のケージ本体に共用できるようにする。
【解決手段】上面が開口した箱状のケージ本体2とケージ本体2の上面開口部2aを覆う蓋状のケージトップ3とから成るケージ1をケージ棚18に多数並べて設置し、ケージトップ3に備える給気口7及び排気口8を、ケージ棚18の天井の給気用ダクト12a及び排気用ダクト12bに接続して、ケージ本体2内に清浄空気を導入する実験動物用飼育装置において、ケージトップ3の外周につば部5を外向きに張り出し、このつば部5を介して筒状の嵌合部6をケージトップ3に一体的に形成する。
さらに、ケージ本体2の上面開口部2aの口径に比較して、つば部5の外径を大きくまたその内径を小さく形成して、ケージ本体2をケージトップ3の嵌合部6に挿入し、その上面開口部2aをつば部5に押し当てて閉鎖する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実験用のマウス、ラットなどを飼育する実験動物用飼育装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
実験用のマウス、ラットなど(以下、「実験用小動物」という)は、単独又は小グループで飼育ケージに入れて、清浄な環境の下、飼育されている。
このケージは、大きく分けて、ケージ本体、ケージトップ、中網からなる(特許文献1)。
図12に示すように、ケージ本体2は上面が開口した透明な箱状の容器であり、破損せず繰り返しの使用に耐えるという点から、ポリカーボネート等の樹脂製である。
ケージトップ3は、ケージ本体2の上面開口部を覆う蓋状のものであり、ケージ1内に清浄空気を導入するための給気口7、ケージ1内の空気を排気するための排気口8を有する。
中網23は、給餌用の凹陥部(図示せず)、及び吸水用のボトル載置用の凹陥部24をそれぞれ有する金網状のものであり、ケージ本体2の上面開口部に被せる。
そして、ケージ本体2は、繰り返し使用しているうちに白濁してくるので、内部が見え難くなったら別のものに取り換えている。このためケージ本体2は、ケージトップ3に比べ交換頻度が大なので、製薬会社が大量に保有しているが、各社毎に寸法が異なる。
よって多種類あるケージ本体2に合わせケージトップ3を製造するのは煩雑であるので、従来は各社が大量に保有するケージ本体2を無駄にして、ケージ本体2も含め全て新たに所定の寸法に仕上げたものを購入し、使用していた。
【特許文献1】特開2006−311863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記欠点を解消して、実験動物用飼育装置においてケージトップを各社が保有する既存のケージ本体に共用できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、上面が開口した箱状のケージ本体とケージ本体の上面開口部を覆う蓋状のケージトップとから成るケージをケージ棚に多数並べて設置し、
ケージトップに備える給気口及び排気口を、ケージ棚の天井の給気用ダクト及び排気用ダクトに接続して、ケージ本体内に清浄空気を導入する実験動物用飼育装置において、
ケージトップの外周につば部を外向きに張り出し、このつば部を介して筒状の嵌合部をケージトップに一体的に形成し、
さらに、ケージ本体の上面開口部の口径に比較して、つば部の外径を大きくまたその内径を小さく形成して、
ケージ本体をケージトップの嵌合部に挿入し、その上面開口部をつば部に押し当てて閉鎖するようにしてなる。
請求項2の発明は、上面が開口した箱状のケージ本体とケージ本体の上面開口部を覆う蓋状のケージトップとから成るケージをケージ棚に多数並べて設置し、
ケージトップに備える給気口及び排気口を、ケージ棚の天井の給気用ダクト及び排気用ダクトに接続して、ケージ本体内に清浄空気を導入する実験動物用飼育装置において、
ケージトップの外周につば部を外向きに張り出し、このつば部を介して筒状の嵌合部をケージトップに一体的に形成し、
さらに、ケージ本体とケージトップとの間に、周縁にフランジ部を有する金属製の網板を載置し、
フランジ部の外周部がケージトップのつば部の内径より大きくまたその外径より小さく、フランジ部の内周部がケージ本体の上面開口部の口径より小であることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2のケージトップのつば部を外側に行くほど低くなるよう傾斜させることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1又は2の給気用及び排気用のダクトの口に、中央部が開口した弾性膜を取り付け、
ケージの給気口及び排気口をこの給気用及び排気用のダクトに臨む位置に配置すると共に、
ケージ棚に取り付けたケージ昇降手段により、ケージの給気口及び排気口を弾性膜に押し付けることを特徴とする。
【0005】
請求項1の発明では、ケージトップのつば部とケージ本体の上面開口部が密着する。
請求項2の発明では、網板のフランジ部を介しケージトップのつば部とケージ本体の上面開口部が密着する。
いずれの発明も、ケージ本体とケージトップとの間は、厳密には気密にならないが、ケージ内は陽圧であり、ケージ本体とケージトップ間の微小な隙間からは、ケージ内の空気が絶えず排出されている。よって、外気が進入することはない。
請求項3の発明では、前記請求項1に加え、ケージトップのつば部の復元力により、ケージ本体とケージトップがより密着する。
請求項4の発明では、弾性膜の復元力により、ケージトップがケージ本体に押し付けられる。よって、ケージ本体とケージトップがより密着する。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明では、ケージトップのつば部とケージ本体の上面開口部を密着できる。ケージトップのつば部とケージ本体の上面開口部との間は厳密には気密にならないが、ケージ内は陽圧であり、ケージ本体とケージトップ間の微小な隙間からは、ケージ内の空気が絶えず排出されている。よって、外気が進入せずケージ本体内は清浄に保持される。
請求項2の発明では、網板のフランジ部が、ケージトップのつば部とケージ本体の上面開口部に介在し、ケージ本体とケージトップを密着できる。よって、ケージ本体の上面開口部の口径が、つば部の内径より小さいものにも使用できる。
請求項3の発明では、ケージトップのつば部の復元力により、ケージ本体とケージトップをより密着する。
請求項4の発明では、弾性膜の復元力により、ケージトップがケージ本体に押し付けられ、ケージ本体とケージトップをより密着できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、ケージの正面図であり、図2はケージ本体の断面図、図3はケージトップの断面図である。ケージ1は、各種部材で構成されているが、ケージ本体2とケージトップ3との密閉に関する発明であるので、説明に必要な部材のみ記載し他は省略する。
【0008】
ケージ1は、大きく分けて、ケージ本体2,ケージトップ3,網板4,中網23からなる。
ケージ本体2は、上面が開口した透明な箱状の容器であり、製薬会社各社が保有する既存のものである。よって、上面開口部2aの寸法が各社毎に異なる。ただし、寸法の相違は最大数cm(大部分は1cm以内の相違)である。
また、ケージ本体の上面開口部2aの形状も、図2(a),(b)に示すとおり異なる。すなわち、上面開口部2aがフラットのもの(図2(a))と、下方に向け鉤状に折曲しているもの(図2(b))がある。
ケージ本体2は、汚濁した場合などに洗浄し繰り返し使用でき、また破損し難いという点から、ポリカーボネート等の樹脂製である。
しかし、洗浄後蒸気滅菌を繰り返すうちに壁面が白濁するので、このような場合には内部の小動物を観察できないので、実験途中であってもケージ本体2を廃棄し、新たなものと交換する。
【0009】
図3に示すように、ケージトップ3は、蓋状のものであり、上面部分に給気口7と排気口8を設ける。さらに、外周につば部5を外向きに張り出し、このつば部5を介して筒状の嵌合部6をケージトップに一体的に形成する。
ケージ本体の上面開口部2bの口径に比較し、このケージトップのつば部5の外径を大きくまたその内径を小さく形成する。すなわち、ケージ本体の開口部2aをケージトップのつば部5の内側に接触するよう形成する。
このケージトップ3は、ポリカーボネート等の樹脂製である。
ケージ本体2と違い、このケージトップ3は実験の途中で変えることはない。
【0010】
図4(a)に示すように網板4は、金網部10の周縁にフランジ部11を有する金属製の網状の板であり、少なくともフランジ部11を可撓性にする。
また、フランジ部の外周部11aは、ケージトップのつば部5の内径より大きくまたその外径より小さくする。フランジ部の内周部11bは、ケージ本体の上面開口部2aの口径より小にする。
そして、この網板4は、図4(b)に示すように、中網23の上に載せ一体にして使用する。
中網23は、従来のものと同じであり、給餌用の凹陥部(図示せず)、及び吸水用のボトル載置用の凹陥部24をそれぞれ有する金網状のものであり、ケージ本体2の上面開口部に被せる。
この網板4、中網23も、実験の途中で変えることはない。
【0011】
以上のようにしてなるケージ1は、図6に示すように、ケージ本体2の上に中網23、網板4を載せ、さらにケージトップ3を被せる。この網板4のフランジ部11がケージトップのつば部5と接触し、またケージ本体の上面開口部2aとも密着し、ケージ1が密閉される。
【0012】
このケージ1の密閉状態を確保するため、ケージ棚18などを以下の構成にする。
すなわち、図7に示すようにケージ棚18には、ケージ1を収容するケージ収容部を上下左右に多数配列する。
そして、各ケージ収容部に、上面に設けたダクト12a,12bにケージ1を押し付けるレバー式の昇降機構13を設ける(図8参照)。
この昇降機構13は、下部に設けたケージ載置台14の後部をケージ棚18の背面部に回動自在に連結する。また、ケージ載置台14の前部に左右一対のロッド15を起立し、当該ロッド15の上部に横軸25を掛け渡すと共に、当該横軸25をケージ棚の上面部に穿設した逆L字状の溝26に挿入する。さらに、この横軸25の中央部にレバー16を取り付ける。
さらに、ケージトップ3の給気口7及び排気口8は、それぞれ給気用ダクト12a,排気用ダクト12bに対応した位置に設ける。また、給気用ダクト12a,排気用ダクト12bに、弾性を有し中央部に孔を有するゴム製の弾性膜17を取付ける。
また、給気口7及び排気口8の口径を、給気用ダクト12a,排気用ダクト12bより小にする。
【0013】
このようにしてなる昇降機構13により、ケージ1は以下のように動く。
図9(a)に示す状態で、ケージ載置台14は前側が低く傾斜する。図9(b)に示すように、レバー16を逆L字状の溝26に従い持ち上げて押し込むとケージ載置台14の前部が持ち上がり、ケージ載置台14は平坦な状態でケージ棚18に固定される。
図9(a)の状態でケージ載置台14にケージ1を載置し、図9(b)の状態に移行すると、ケージ1はダクト12a,12bの弾性膜17に押し付けられて固定される(図10)。
従って、ケージトップ3は、弾性膜17の反発力でケージ本体2に押し付けられた状態となり、ケージ本体2の上面開口部2aとケージトップ3のつば部5が密着する。
なお、9は給気口に取り付けたフィルタである。
【0014】
さらに、給気用ダクト12a,排気用ダクト12bの配置を以下のとおりにする(図11)。
ケージ棚18の各ケージ1を収容する区画の上部に、それぞれ給気用ダクト12a,排気用ダクト12bを設ける。
給気用ダクト12aと排気用ダクト12bとは別の配管に接続するが、配管の構成は同様であるので、以下給気用ダクト12aを例に説明する。
給気用ダクト12aは各横列毎に横配管19で連結すると共に、左右両端に設けた縦配管20に横配管19を連結する。この縦配管20の両上端部に上部横配管21を連結する。そして、この縦配管20にそれぞれ給気管22,22を連結し、さらに給気管22,22に給気装置10を接続して、各給気管22,22に均等に給気する。
このように構成することにより、各給気用ダクト12aの口径を揃えれば、各給気用ダクト12aからの給気量は略均等になる。
【0015】
次に、本発明の第2実施形態について図面を参照して説明する。
第1実施形態では、網板4を使用したが、ケージ本体の上面開口部2aが、ケージトップ下部の上面部9に接する場合は、網板4は使用しなくともよい。
この場合には、ケージ本体2の上に中網23を載せ、さらにケージトップ3を被せる。
ケージ本体2とケージトップ3とは、図5(a)の状態から、ケージトップ3をケージ本体2の上面開口部2aに押し付けることにより、図5(b)に示すようにケージトップ3が変形し、ケージ1が密閉される。
【0016】
各実施形態では、ケージ本体2とケージトップ3との接触部分(ケージ本体2、ケージトップ3及び網板4との接触部分)には、微細な隙間が生じることがあるが、ケージ内部を陽圧にすることにより、隙間から絶えず清浄空気が放出され、外気の侵入を防ぐので、実用上問題ない。
却って、接触部分を気密にするためゴム製のパッキンを取り付けると、パッキンを取り付けた部分の清掃がしづらく、雑菌発生の温床となり好ましくない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のケージの正面図である。
【図2】ケージ本体の断面図である。
【図3】ケージトップの断面図である。
【図4】網板の平面図である。
【図5】ケージ本体とケージトップとの密閉状態を示す要部拡大図である。
【図6】網板を使用しケージ本体とケージトップとを密閉する状態を示す要部拡大図である。
【図7】ケージ棚にケージを収容した状態の正面図である。
【図8】昇降機構の側面図である。
【図9】昇降機構にケージを載置した状態の側面図である。
【図10】給気口とダクトとの連結状態を示す図である。
【図11】給気用の配管の概略図である。
【図12】従来のケージの正面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 ケージ
2 ケージ本体
2a 上面開口部
3 ケージトップ
4 網板
5 つば部
6 嵌合部
7 給気口
8 排気口
13 昇降手段
18 ケージ棚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口した箱状のケージ本体とケージ本体の上面開口部を覆う蓋状のケージトップとから成るケージをケージ棚に多数並べて設置し、
ケージトップに備える給気口及び排気口を、ケージ棚の天井の給気用ダクト及び排気用ダクトに接続して、ケージ本体内に清浄空気を導入する実験動物用飼育装置において、
ケージトップの外周につば部を外向きに張り出し、このつば部を介して筒状の嵌合部をケージトップに一体的に形成し、
さらに、ケージ本体の上面開口部の口径に比較して、つば部の外径を大きくまたその内径を小さく形成して、
ケージ本体をケージトップの嵌合部に挿入し、その上面開口部をつば部に押し当てて閉鎖するようにしてなる実験動物用飼育装置。
【請求項2】
上面が開口した箱状のケージ本体とケージ本体の上面開口部を覆う蓋状のケージトップとから成るケージをケージ棚に多数並べて設置し、
ケージトップに備える給気口及び排気口を、ケージ棚の天井の給気用ダクト及び排気用ダクトに接続して、ケージ本体内に清浄空気を導入する実験動物用飼育装置において、
ケージトップの外周につば部を外向きに張り出し、このつば部を介して筒状の嵌合部をケージトップに一体的に形成し、
さらに、ケージ本体とケージトップとの間に、周縁にフランジ部を有する金属製の網板を載置し、
フランジ部の外周部がケージトップのつば部の内径より大きくまたその外径より小さく、フランジ部の内周部がケージ本体の上面開口部の口径より小であることを特徴とする実験動物用飼育装置。
【請求項3】
前記ケージトップのつば部を外側に行くほど低くなるよう傾斜させることを特徴とする請求項1又は2に記載の実験動物用飼育装置。
【請求項4】
前記給気用及び排気用のダクトの口に、中央部が開口した弾性膜を取り付け、
ケージの給気口及び排気口をこの給気用及び排気用のダクトに臨む位置に配置すると共に、
ケージ棚に取り付けたケージ昇降手段により、ケージの給気口及び排気口を弾性膜に押し付けることを特徴とする請求項1又は2に記載の実験動物用飼育装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−95261(P2009−95261A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268002(P2007−268002)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(396009344)ハムリー株式会社 (4)
【出願人】(592019327)川崎設備工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】