説明

実験解析システム

【課題】解析処理装置を起動する毎にサンプル情報を入力する必要がない実験解析システムを提供することにある。
【解決手段】実験解析システムは、試薬を用いてサンプルの発現量を測定する測定機器と、該測定機器から送信された測定データを処理し実験結果ファイルを作成する実験処理装置と、該実験結果ファイルに基づいて実験結果を解析する複数の解析処理装置と、を有し、上記実験処理装置は、上記測定データと、上記複数の解析処理装置の1つを特定する識別記号と、上記サンプルに関するサンプル情報を有する実験結果ファイルを生成し、それを上記解析処理装置に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試薬を用いてサンプル中のタンパク質や核酸などの生体分子の発現量を測定し、それを解析する実験解析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
骨髄移植におけるHLA型判定やタンパク質の濃度測定等では、測定機器から出力された発現量等の測定データから実験結果を得る実験処理工程と、それを解析する解析工程からなる。即ち、発現量等の測定データを解読し実験結果を生成する実験処理プログラムと実験結果を解析する解析プログラムからなる。通常、1つの実験処理プログラムに対して複数の解析プログラムが用意され、実験毎に最適な解析プログラムが選択される。また、実験処理プログラムと解析プログラムは別個に独立に管理される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の実験解析システムでは、実験処理工程から解析工程へは、測定データのみが提供され、サンプル情報は提供されない。従って、解析工程では、サンプル情報を入力する必要がある。
【0004】
生物又は生化学実験では、同一の実験条件下にて同一の測定機器を使用しても、実験結果が異なることがある。そのような場合には、異なる解析プログラムを用いる。従って、解析プログラムに測定データを入力する毎にサンプル情報を入力しなけらばならない。即ち、サンプル情報は同一であっても、解析プログラムが異なる場合には、同一のサンプル情報を再度入力する必要がある。
【0005】
本発明の目的は、解析処理装置を起動する毎にサンプル情報を入力する必要がない実験解析システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、実験解析システムは、試薬を用いてサンプルの発現量を測定する測定機器と、該測定機器から送信された測定データを処理し実験結果ファイルを作成する実験処理装置と、該実験結果ファイルに基づいて実験結果を解析する複数の解析処理装置と、を有し、上記実験処理装置は、上記測定データと、上記複数の解析処理装置の1つを特定する識別記号と、上記サンプルに関するサンプル情報を有する実験結果ファイルを生成し、それを上記解析処理装置に送信する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、解析処理装置を起動する毎にサンプル情報を入力する必要がないから、処理が簡単である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1を参照して本発明による実験解析システムの例を説明する。本例の実験解析システムは、生物又は生化学実験等において試薬を用いてサンプルの発現量を測定する測定機器11、測定機器11から送信された測定データ21を処理し実験結果ファイル24を作成する実験処理装置12、及び、実験結果ファイル24に基づいて実験結果を解析する複数の解析処理装置13を有する。測定機器11と実験処理装置12は、全ての実験で使用されるが、複数の解析処理装置13のうちの1つが使用される。使用される解析処理装置13は、実験の種類、内容等によって異なる。しかしながら、実験の種類、内容等が決まると、使用する解析処理装置13は1つに決まる。測定機器11と実験処理装置12の管理と解析処理装置13の管理は通常別個に行われる。
【0009】
測定機器11から実験処理装置12に測定データ21が送られる。測定データ21は、測定機器11によって得られた電気信号であり、例えば、ケーブルを介して送信される。測定機器11を用いて様々な生化学実験が行われる。測定機器11は、例えば、測定データとして発現量を生成する。
【0010】
ユーザは、サンプル情報23を実験処理装置12に入力する。この入力処理は、解析処理装置13にて行ってもよい、解析処理装置13にて、入力処理を行った場合には、入力したサンプル情報を実験処理装置12に送信する。実験処理装置12及び解析処理装置13の動作は後に説明する。
【0011】
実験処理装置12、及び、複数の解析処理装置13は、ソフトウエアによって処理を行うように構成されてよい。
【0012】
図2を参照して実験処理装置12の構成を説明する。実験処理装置12は、測定機器11から送信された測定データ21を受信する測定データ受信処理部121、ユーザによって設定された実験結果フォーマット22を保存する実験結果フォーマット保存部122、実験結果フォーマット22にサンプル情報等を記入して実験結果ファイル24を作成する実験結果ファイル作成部123、及び、実験結果ファイル24を所定の解析処理装置13に送信する実験結果ファイル送信処理部124を有する。
【0013】
図3は、実験結果フォーマット22の例を示す。本例によると、実験結果フォーマット22は、測定データを格納する測定データ領域221と、解析処理装置(又は解析処理プログラム)の識別記号を格納する解析処理識別記号領域222と、サンプル情報を格納するサンプル情報領域223とを有する。サンプル情報は、サンプルの種類、本数、サンプルプレートの規格等である。上述のように、ユーザは、複数の解析処理装置から1つの解析処理装置(解析プログラム)を選択するが、実験の開始時にはどの解析処理装置を用いるかが決められる。
【0014】
この実験結果フォーマット22の各領域にデータ、記号、情報等を格納することによって実験結果ファイル24が生成される。
【0015】
本例では、複数の実験において、サンプル情報が同一の場合には、測定データと解析処理装置(又は解析処理プログラム)の識別記号のみを実験結果フォーマット22に記入することによって実験結果ファイルが生成される。従って、実験解析工程の処理が簡単である。
【0016】
図4を参照して、本発明による実験処理装置12の処理を説明する。ステップ401にて、サンプル情報を入力する。この入力処理は、上述のように、実験処理装置12を介して行ってもよいが、解析処理装置13を介して行ってもよい。ステップ402にて、実験結果ファイル作成部123は、実験結果フォーマット22の解析処理識別記号領域222に解析処理装置(又は解析プログラム)の識別記号を格納し、サンプル情報領域223にサンプル情報23を記入する。ステップ403にて、実験結果ファイル作成部123は、実験結果フォーマット22の測定データ領域221に測定データ21を格納する。こうして、実験結果ファイル24が生成される。ステップ404にて、実験結果ファイル送信処理部124は、実験結果フォーマット22の解析処理識別記号領域222に記載された解析処理識別記号に基づいて、解析処理装置13を特定し、特定した解析処理装置13に実験結果ファイル24を送信する。
【0017】
図5を参照して、本発明による解析処理装置13の処理を説明する。ステップ501にて、解析処理装置13は、実験結果ファイル24を受信し、ステップ502にて、実験結果ファイル24を読み込む。ステップ503にて、解析処理装置13は、実験結果ファイルに全てのデータが記入されているか否かを判定する。即ち、測定データ領域に測定データを格納され、解析処理識別記号領域に解析処理装置(解析プログラム)の識別記号を格納され、サンプル情報領域にサンプル情報が格納されているか否かを判定する。実験結果ファイルに全ての情報が格納されている場合には、ステップ504に進み、実験結果ファイルに全ての情報が格納されていない場合には、ステップ501に戻り、実験結果ファイルを受信する。ステップ504にて、解析処理装置13は、解析を実行し、解析結果を出力する。
【0018】
こうして本例では、解析処理装置が複数個ある場合でも、最初に設定したサンプル情報に対応した解析処理装置のみが実験結果を処理することができる。
【0019】
以上本発明の例を説明したが本発明は上述の例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲にて様々な変更が可能であることは当業者に容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による実験解析システムの例を示す図である。
【図2】本発明による実験解析システムの実験処理装置の構成例を示す図である。
【図3】本発明による実験解析システムにて使用する実験結果フォーマットの例を示す図である。
【図4】本発明による実験解析システムの実験処理装置の処理を説明する図である。
【図5】本発明による実験解析システムの解析処理装置の処理を説明する図である。
【符号の説明】
【0021】
11…測定機器、12…実験処理装置、13…解析処理装置、21…測定データ、22…実験結果フォーマット、23…サンプル情報、24…実験結果ファイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬を用いてサンプルの発現量を測定する測定機器と、該測定機器から送信された測定データを処理し実験結果ファイルを作成する実験処理装置と、該実験結果ファイルに基づいて実験結果を解析する複数の解析処理装置と、を有し、上記実験処理装置は、上記測定データと、上記複数の解析処理装置の1つを特定する識別記号と、上記サンプルに関するサンプル情報を有する実験結果ファイルを生成し、該実験結果ファイルを上記解析処理装置に送信することを特徴とする実験解析システム。
【請求項2】
請求項1記載の実験解析システムにおいて、上記実験処理装置は、上記測定機器から送信された測定データを受信する測定データ受信処理部と、ユーザによって設定された実験結果フォーマットを保存する実験結果フォーマット保存部と、上記実験結果フォーマットに上記測定データと上記識別記号と上記サンプル情報を記入して上記実験結果ファイルを作成する実験結果ファイル作成部と、該実験結果ファイルを上記識別記号によって特定された解析処理装置に送信する実験結果ファイル送信処理部とを有することを特徴とする実験解析システム。
【請求項3】
請求項1記載の実験解析システムにおいて、上記識別記号及び上記サンプル情報は、上記実験処理装置に入力されることを特徴とする実験解析システム。
【請求項4】
請求項1記載の実験解析システムにおいて、上記識別記号及び上記サンプル情報は、上記解析処理装置に入力され、上記解析処理装置を経由して上記実験処理装置に送信されることを特徴とする実験解析システム。
【請求項5】
請求項1記載の実験解析システムにおいて、上記実験結果フォーマットは、上記測定データを格納する測定データ領域と、上記識別記号を格納する解析処理識別番号領域と、上記サンプル情報を格納するサンプル情報領域とを有することを特徴とする実験解析システム。
【請求項6】
請求項1記載の実験解析システムにおいて、上記実験処理装置における処理及び上記解析処理装置における処理はソフトウエアによって実行されることを特徴とする実験解析システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−178416(P2007−178416A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−105821(P2006−105821)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】