室内温度分布モデル作成装置及び室内温度分布モデル作成方法
【課題】 室内の精密なモデルを作成する室内温度分布モデル作成装置及び室内温度分布モデル作成方法を提供する。
【解決手段】 モデル化する対象のデータを入力するステップと、室内を複数のゾーンに分割し、上下温度分布を表現する温度成層化ゾーンAを作成するステップと、室内外を画成する外皮が外気に接することで外皮の内表面側に下降流や上昇流を生じる温度境界層ゾーンBを作成するステップと、発熱体ごとに発熱体ゾーンCを設定し、発熱体から発生する熱による上昇流からなる熱プルームを発熱体ゾーンCごとに作成するステップと、ゾーン底面の静圧とゾーン間の空気移動量を求める換気回路網2を作成するステップと、ゾーン間の熱の伝わりやすさを表す一般化熱コンダクタンス33,34を求め、熱回路網3を作成するステップと、モデル化した室内の温度分布を出力するステップと、を備えたことを特徴とする。
【解決手段】 モデル化する対象のデータを入力するステップと、室内を複数のゾーンに分割し、上下温度分布を表現する温度成層化ゾーンAを作成するステップと、室内外を画成する外皮が外気に接することで外皮の内表面側に下降流や上昇流を生じる温度境界層ゾーンBを作成するステップと、発熱体ごとに発熱体ゾーンCを設定し、発熱体から発生する熱による上昇流からなる熱プルームを発熱体ゾーンCごとに作成するステップと、ゾーン底面の静圧とゾーン間の空気移動量を求める換気回路網2を作成するステップと、ゾーン間の熱の伝わりやすさを表す一般化熱コンダクタンス33,34を求め、熱回路網3を作成するステップと、モデル化した室内の温度分布を出力するステップと、を備えたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の温度分布をモデル化し、熱負荷等を検討できる室内温度分布モデル作成装置及び室内温度分布モデル作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、室内の温度分布を予測する手段として、数値流体解析が用いられていた。しかしながら、数値流体解析は、計算負荷が大きく、数値的な安定性の問題等から長時間の現象を予測することが難しかった。
【0003】
一方、本発明者は、建築物の熱回路網及び換気回路網モデルを考案していた。これにより実用的に熱負荷計算や平均的室温の変化を計算することができた。しかし今までは、室内の温度は一様混合の1ゾーンモデルであった。
【0004】
そこで、本発明者は室内の上下温度分布を表現できるモデルとして、室空間を上下に複数に分割した温度成層化ゾーン、発熱体から上昇流が発生する部分を上下に複数に分割した熱プルームゾーン、及び外皮の内表面に接して冷却される下降流が発生する部分を上下に複数に分割した温度境界層ゾーンの複数のゾーンを設け、ゾーン間の空気の移動量や熱の伝わりやすさ等を求め、実測の温度を再現する室内の精密なモデルを作成した(特許文献1参照)。
【0005】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−53749号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】(変更?) 宇田川,石田,石野等,「熱負荷算法小委員会報告書-大空間の熱負荷計算法-」,1993年3月,空衛学会,空気調和設備委員会,熱負荷算法小委員会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記特許文献1に記載されたものは、熱プルームを1本に想定していたので、これを加熱する複数の日射吸熱の表面が1本の熱プルームを介して平均化され、一様に近い温度になってしまうことがあった。
【0009】
本発明は上記課題を解決し、室内の実用的なモデルを作成する室内温度分布モデル作成装置及び室内温度分布モデル作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するものであって、室内の温度分布をモデル化する室内温度分布モデル作成装置において、室内を複数のゾーンに分割し、上下温度分布を表現する温度成層化ゾーンを作成する温度成層化領域作成手段と、室内外を画成する外皮が外気に接することで前記外皮の内表面側に下降流や上昇流を生じる温度境界層ゾーンを作成する温度境界層領域作成手段と、発熱体ごとに発熱体ゾーンを設定し、前記発熱体から発生する熱による上昇流からなる熱プルームを発熱体ゾーンごとに作成する熱プルーム領域作成手段と、前記ゾーン底面の静圧と前記ゾーン間の空気移動量を求める換気回路網を作成する換気回路網作成手段と、前記ゾーン間の熱の伝わりやすさを表す一般化熱コンダクタンスを求め、熱回路網を作成する熱回路網作成手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、前記熱プルーム領域作成手段は、前記熱プルームの上部を束ねるヘッダーゾーンと、前記熱プルームの下部を束ねるフッターゾーンと、を作成することを特徴とする。
【0012】
また、前記温度成層化ゾーン間の混合流に関する一般化熱コンダクタンスと、前記換気回路網の流路の圧力損失係数とを、予測値と実測値との誤差の評価関数を最小にするように求めるパラメータ演算手段を有することを特徴とする。
【0013】
また、前記評価関数は、前記温度成層化ゾーンの各空気温度と前記発熱体の各表面温度に関して、予測値から実測値を差し引いた差の評価期間積分値を、これらの空気と表面温度それぞれで平均化し、さらに空気温度と表面温度の平均温度をとることを特徴とする。
【0014】
さらに、室内の温度分布をモデル化する室内温度分布モデル作成方法において、モデル化する対象のデータを入力するステップと、室内を複数のゾーンに分割し、上下温度分布を表現する温度成層化ゾーンを作成するステップと、室内外を画成する外皮が外気に接することで前記外皮の内表面側に下降流や上昇流を生じる温度境界層ゾーンを作成するステップと、発熱体ごとに発熱体ゾーンを設定し、前記発熱体から発生する熱による上昇流からなる熱プルームを発熱体ゾーンごとに作成するステップと、前記ゾーン底面の静圧とゾーン間の空気移動量を求める換気回路網を作成するステップと、前記ゾーン間の熱の伝わりやすさを表す一般化熱コンダクタンスを求め、熱回路網を作成するステップと、モデル化した室内の温度分布を出力するステップと、を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、前記熱プルームの上部をヘッダー領域で束ねるステップと、前記熱プルームの下部をフッター領域で束ねるステップと、を有することを特徴とする。
【0016】
また、前記温度成層化ゾーン間の混合流に関する一般化熱コンダクタンスと、前記換気回路網の流路の圧力損失係数とを、予測値と実測値との誤差の評価関数を最小にするように求めるステップを有することを特徴とする。
【0017】
また、前記評価関数は、前記温度成層化ゾーンの各空気温度と前記発熱体の各表面温度に関して、予測値から実測値を差し引いた差の評価期間積分値を、これらの空気と表面温度それぞれで平均化し、さらに空気温度と表面温度の平均温度をとるステップを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、室内の温度分布をモデル化する室内温度分布モデル作成装置において、室内を複数のゾーンに分割し、上下温度分布を表現する温度成層化ゾーンを作成する温度成層化領域作成手段と、室内外を画成する外皮が外気に接することで前記外皮の内表面側に下降流や上昇流を生じる温度境界層ゾーンを作成する温度境界層領域作成手段と、発熱体ごとに発熱体ゾーンを設定し、前記発熱体から発生する熱による上昇流からなる熱プルームを発熱体ゾーンごとに作成する熱プルーム領域作成手段と、前記ゾーン底面の静圧と前記ゾーン間の空気移動量を求める換気回路網を作成する換気回路網作成手段と、前記ゾーン間の熱の伝わりやすさを表す一般化熱コンダクタンスを求め、熱回路網を作成する熱回路網作成手段と、を備えたので、実用的なモデルを作成することができる。そして、実用的なモデルにより、冷暖房の定常・非定常の熱負荷の予測ができ、空調機器設定の目安が正確に計算できる。また、部材毎の伝熱量が概算できるので、熱負荷低減アイテムの効果が概算できる。さらに、個々の発熱体による温度変化を、対応する熱プルームが表現できる様になり、より実用的で正確なモデルを作成することができる。
【0019】
また、前記熱プルーム領域作成手段は、前記熱プルームの上部を束ねるヘッダーゾーンと、前記熱プルームの下部を束ねるフッターゾーンと、を作成するので、プルーム間での循環流を抑制し、より実用的なモデルを作成することができる。
【0020】
また、前記温度成層化ゾーン間の混合流に関する一般化熱コンダクタンスと、前記換気回路網の流路の圧力損失係数とを、予測値と実測値との誤差の評価関数を最小にするように求めるパラメータ演算手段を有するので、最適なパラメータを求めることができ、より正確なモデルができる。
【0021】
また、前記評価関数は、前記温度成層化ゾーンの各空気温度と前記発熱体の各表面温度に関して、予測値から実測値を差し引いた差の評価期間積分値を、これらの空気と表面温度それぞれで平均化し、さらに空気温度と表面温度の平均温度をとるので、より正確な評価をすることが可能となる。
【0022】
さらに、本発明は上記課題を解決する方法であって、室内の温度分布をモデル化する室内温度分布モデル作成方法において、モデル化する対象のデータを入力するステップと、室内を複数のゾーンに分割し、上下温度分布を表現する温度成層化ゾーンを作成するステップと、室内外を画成する外皮が外気に接することで前記外皮の内表面側に下降流や上昇流を生じる温度境界層ゾーンを作成するステップと、発熱体ごとに発熱体ゾーンを設定し、前記発熱体から発生する熱による上昇流からなる熱プルームを発熱体ゾーンごとに作成するステップと、前記ゾーン底面の静圧とゾーン間の空気移動量を求める換気回路網を作成するステップと、前記ゾーン間の熱の伝わりやすさを表す一般化熱コンダクタンスを求め、熱回路網を作成するステップと、モデル化した室内の温度分布を出力するステップと、を備えたので、実用的にモデルを作成することができる。そして、精密なモデルにより、冷暖房の定常・非定常の熱負荷の予測ができ、空調機器設定の目安が正確に計算できる。また、部材毎の伝熱量が概算できるので、熱負荷低減アイテムの効果が概算できる。さらに、個々の発熱体による温度変化を、対応する熱プルームが表現できる様になり、より正確なモデルを実用的に作成することができる。
【0023】
また、前記熱プルームの上部をヘッダー領域で束ねるステップと、前記熱プルームの下部をフッター領域で束ねるステップと、を有するので、プルーム間での循環流を抑制し、より適切なモデルを作成することができる。
【0024】
また、前記温度成層化ゾーン間の混合流に関する一般化熱コンダクタンスと、前記換気回路網の流路の圧力損失係数とを、予測値と実測値との誤差の評価関数を最小にするように求めるステップを有するので、最適なパラメータを求めることができ、より正確なモデルができる。
【0025】
また、前記評価関数は、前記温度成層化ゾーンの各空気温度と前記発熱体の各表面温度に関して、予測値から実測値を差し引いた差の評価期間積分値を、これらの空気と表面温度それぞれで平均化し、さらに空気温度と表面温度の平均温度をとるステップを有するので、より正確な評価をすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態の室内温度分布作成装置が作成するモデルの概要を示す図である。
【図2】本実施形態の装置構成を示す図である。
【図3】車両を図1に示す領域に分割する例を示す図である。
【図4】図3に示す車両に換気回路網を構築しモデル化した図である。
【図5】熱プルーム領域の拡大図である。
【図6】図3に示す車両に熱回路網を構築しモデル化した図である。
【図7】実測時の外気温度と相対湿度を示すグラフである。
【図8】法線面直達日射量と水平面天空拡散日射量を示すグラフである。
【図9】頭部のモデルによる計算値と実測値のグラフである。
【図10】胸部のモデルによる計算値と実測値のグラフである。
【図11】膝先のモデルによる計算値と実測値のグラフである。
【図12】足元のモデルによる計算値と実測値のグラフである。
【図13】ルーフ中央部のモデルによる計算値と実測値のグラフである。
【図14】ドア後左部のモデルによる計算値と実測値のグラフである。
【図15】右シート背面のモデルによる計算値と実測値のグラフである。
【図16】右シート座面のモデルによる計算値と実測値のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明にかかる実施形態の室内温度分布作成装置1について説明する。
【0028】
図1は、本実施形態の室内温度分布作成装置1が作成するモデルの概要を示す図である。図1において、Aは温度成層化領域、Bは温度境界層領域、Cは熱プルーム領域を示す。また、換気回路網2では、矢印21は空気の移動を表す換気回路網の流路を示す。さらに、熱回路網3では、節点31は例えば外気温度等の既知の温度を表す与条件温度節点、節点32は温度が未知な未知数温度節点を示し、第1熱コンダクタンス33は伝導・伝達・貫流・放射等の一般化熱コンダクタンス、第2熱コンダクタンス34は移流・対流による一般化熱コンダクタンスを示し、太矢印35は節点への発熱量を示す。なお、一般化コンダクタンスとは、伝導、伝達、放射、貫流、移流等すべての伝熱形態の熱の伝わりやすさを表す。
【0029】
本実施形態では、温度成層化領域A、温度境界層領域B及び熱プルーム領域Cに区分する。また、温度成層化領域A及び温度境界層領域Bをそれぞれ上下に層状のゾーンA1,A2・・・B3,B4に分割して、換気回路網2と熱回路網3を構築する。熱プルーム領域Cは、発熱体ごとに熱プルームC1,C2,C3を構築し、複数の熱プルームC1,C2,C3の上下端を束ね、上端にヘッダーゾーンCh、下端にフッターゾーンCfを設けた。
【0030】
温度成層化領域Aは、室内の上下温度分布を複数の層に分割し、離散的に表現したものであり、各層内での温度は一様である。温度成層化領域A間の平均的な流れは上向きまたは下向きの押し出し流れであり、こうしたピストン流れとすることが温度成層化を模擬する要件となる。また、自然対流(熱対流のみ)と強制対流(ファン作動時など)の両状態は、温度成層化領域A内の各ゾーン間の混合流の一般化熱コンダクタンス33,34の数値を,小さくまたは大きくすることでモデル化する。
【0031】
温度境界層領域Bは、室内外を画成する外皮が外気に接することで外皮の内表面側に下降流や上昇流を生じるゾーンである。例えば、車両の外気温度が外皮を通じて車内を冷却すると、温度境界層領域Bを冷却し、温度境界層領域B内で下降流が生じ,この下降流が温度成層化領域Aに入り込み、循環流を引き起こす。
【0032】
熱プルーム領域Cは、発熱体から発生する熱による上昇流を生じるゾーンである。例えば、日射を受けた車室内の物体から発生する上昇流を表現するものであり、熱プルーム領域Cは、発熱体ごとに熱プルームC1,C2,C3を構築し、複数の熱プルームC1,C2,C3の上下端を束ね、上端にヘッダーゾーンCh、下端にフッターゾーンCfを設けた。また、上下方向を位置を設定することで,発熱体との接触位置が高い場合、低い場合の熱上昇力の違いを考慮できる様にした。
【0033】
なお、ファンなどで強制対流加熱した場合には,室内は空気的に混合状態になることから,温度成層化領域Aの全てのゾーンに発熱量は均等に分散して与えられる。これでも上下温度分布が生成されるのは押し出し上昇流が生じるからである。また、この強制対流加熱状態では熱プルーム領域C内には加熱源がなく、また熱プルーム流路の断面積が小さいことから熱プルームの流の影響はなくなる。こうして強制対流と自然対流の両状態は同じモデル構造で表現できる。
【0034】
ここで、換気回路網2と熱回路網3について説明する(詳細については、非特許文献1を参照)。
【0035】
換気回路網2は、各ゾーン底面の静圧と複数ゾーン間の流量を示すものである。
【0036】
前提として、各ゾーンでは風量の収支が成り立つとする。また、各ゾーン底面に静圧p(Pa)を持ち、ゾーンの空気密度をρ(kg/m3)とすると、この底面から上方へh(m)上がった点での静圧はp−ρ・h・g(Pa)とする。空気密度はそのゾーンの空気温度の関数である。流路は、圧力損失係数、指数及び流路面積、さらに基準面からの高さの属性を持ち、流路の通過風量は,前後の静圧差と圧力損失係数、指数および流路面積の関数である。そして、ゾーン数分の静圧に関する非線形連立方程式を修正ニュートンラプソン法で解くことで風量が求められる。
【0037】
熱回路網3は、熱の移動を示すものである。前提として、各節点では、流入熱流から流出熱流を引いたものが、熱容量に温度変化を乗じたものに等しくなるという熱流収支が成り立つものとする。これを完全連結システムの節点方程式とする。また、伝導、表面伝達、長波長放射、移流など全ての伝熱形態の熱の伝わりやすさを一般化熱コンダクタンス33,34という一種類の係数で表現する。従って空気流動による一般化熱コンダクタンス33,34も数式記号上は同じ係数となる。
【0038】
そして、全節点の温度に関する連立常微分方程式が前述の節点方程式から構成され、連立常微分方程式を後退差分などの時間積分法によって解き、毎時間ステップの温度の解を算出する。
【0039】
次に、換気回路網2と熱回路網3の連成について説明する。換気回路網2の駆動条件となる各ゾーンの密度は熱回路網3の解の温度によって計算される。熱回路網3の係数となる風量は換気回路網2の解から得られる。非定常の時間ステップ毎に、一方の回路網への条件はもう一方の回路網の前時間ステップでの結果をもとにつくる。こうして両モデルの連成がとられる。
【0040】
図2は本実施形態の室内温度分布作成装置1を用いたシステム構成図である。
【0041】
入力手段101は、モデル化する対象のデータを入力するものである。記憶手段102は、演算式等の不変のデータを記憶するものである。入力手段101から入力されたデータ及び記憶手段102に記憶されたデータは、制御手段110に入力される。
【0042】
室内温度分布作成装置1の制御手段110は、温度成層化領域作成手段111、温度境界層領域作成手段112、熱プルーム領域作成手段113、換気回路網作成手段114及び熱回路網作成手段115、パラメータ演算手段116を有する。
【0043】
温度成層化領域作成手段111は、室内を複数のゾーンに分割し、上下温度分布を離散的に表現する温度成層化ゾーンを作成する。温度境界層領域作成手段112は、室内外を画成する外皮が外気に接することで外皮の内表面側に下降流や上昇流を生じるゾーンを作成する。なお、温度境界層ゾーンは、複数のゾーンに分割し作成されてもよい。熱プルーム領域作成手段113は、発熱体から発生する熱による上昇流を生じるゾーンを作成する。なお、熱プルームゾーンは、複数のゾーンに分割し作成されてもよい。換気回路網作成手段114は、ゾーン底面の静圧とゾーン間の空気移動量を求める換気回路網を作成する。熱回路網作成手段115は、ゾーン間の熱の移動を求める熱回路網を作成する。パラメータ演算手段116については後述する。
【0044】
制御手段110により作成されたモデルは、表示装置等の出力手段121に出力される。
【0045】
図3は、車両50を図1に示す領域に分割する例を示す図である。車両50の車室51内を上下4段の温度成層化領域Aに区分し、温度境界層領域Bとして、屋根温度境界層B1、窓温度境界層B2、ドア温度境界層B3及び床温度境界層B4を設定したものである。
【0046】
図4は車両50に換気回路網2を構築しモデル化した図、図5は熱プルーム領域Cの換気回路網2の拡大図である。
【0047】
図5に示すように、本実施例では、熱プルームを合計14本有し、各熱プルームは各日射発熱体に対応している。C1aは左後部ピラー、C1bは右後部ピラー、C2aはインスツルメントパネル、C2bは左ドア内側、C2cは右ドア内側、C2dはリアトレイ、C2eは後席左側背面、C2fは後席右側背面、C2gは左前席背面、C2hは右前席背面、C3aは後席左側座面、C3bは後席右側座面、C3cは左前席座面、C3dは右前席座面となっている。
【0048】
各発熱体に接する空気の発熱ゾーンの高さは発熱体の高さに対応し、熱プルームの上昇力は発熱ゾーンの高さに関係する。なお、発熱ゾーンの高さとはゾーンの底面高さである。これらには発熱体の実際の高さを設定している。また、流路の高さとは,その流路の出口側のゾーンに流れ込む位置での高さを意味する。流路内の空気温度は風上側のゾーンの温度に近いと考えるからである。
【0049】
次に、作成するモデルのパラメータについて説明する。作成するモデルは、工学モデルなので、実験的に定めなければならない特性値がある。これらは、換気回路網2の圧力損失係数ζ及び熱回路網3の層間混合流一般化熱コンダクタンスcijからなる二種のパラメータである。
【0050】
これらパラメータをパラメータ演算手段116により最適化する方法について説明する。まず、パラメータを最適化するために評価関数を設定する。式(1)は、上下の平均温度は、室空気が持つ熱エネルギーに比例するので、室内の総エネルギーが一致すべきという観点から導かれる評価関数である。
【0051】
【数1】
ただし、pθjは頭部又は足元の予測計算温度、
mθjは実測温度、
Tは検討期間
である。
【0052】
ここにjは成層化ゾーンの上下方向の位置番号を示し,一般に2以上あるものとする.
【0053】
次に、頭部と足元それぞれで温度が近ければ良いという各層での温度が一致するかの評価を式(2)で行う。
【0054】
【数2】
【0055】
これら式(1)と式(2)の両方を平均し、総合的に考慮する式(3)の誤差評価関数Jを定める。
【0056】
【数3】
【0057】
次に、日射発熱体の表面温度が一致することの評価関数は式(4)で定める。日射発熱面は14面存在するので、これらの表面温度は受熱体表面積で重み付け平均した面積加重平均として評価関数とするのが妥当である。
【0058】
【数4】
ただし、Sjは受熱体の表面積である。
【0059】
以上の空気温度と表面温度の誤差評価関数の平均の温度である式(5)を最終的な評価関数とする。
【0060】
【数5】
【0061】
次に、未定パラメータである換気回路網の圧力損失係数ζと温度成層化ゾーン間の混合流熱コンダクタンスcijを求める。まず、空気温度についての評価関数である式(3)を調べる。
【0062】
圧力損失係数ζは1,12,100の3通りについて、層間混合流一般化熱コンダクタンスcijは0.035,0.35,3.5の3通りについて計算した。
【0063】
【表1】
【0064】
次に、同様なパラメータの組み合わせにより、発熱体表面温度の評価関数式(4)を計算する。
【0065】
【表2】
【0066】
そして、空気温度と表面温度の平均値を表す式(5)について計算する。
【0067】
【表3】
【0068】
以上のような検討により、最適なパラメータを表(4)の様に定める。ここに、対流熱伝達率は予測表面温度が実測値に近付く様に調整したものである。
【0069】
【表4】
【0070】
図6は、車両50に熱回路網3を構築しモデル化した図である。本実施例のモデルについては、室内表面の放射伝達と表面対流伝達を分離したモデルなので、総合伝達率のモデルと比較して、室内部位間の長波長放射伝達の様子を描いた分だけ複雑になっている。
【0071】
次に、このような室内温度分布作成装置1により作成したモデルによる計算値と実測値との比較結果について説明する。図7は実測時の外気温度と相対湿度を示すグラフ、図8は法線面直達日射量と水平面天空拡散日射量を示すグラフである。
【0072】
図7において、薄線は外気温度、濃線は相対湿度である。1日目及び2日目は、日中に、高温且つ低湿度であり、3日目及び4日目は、日中に、気温が上がらず、高湿度であった。
【0073】
また、図8において、濃線は法線面直達日射量、薄線は水平面天空拡散日射量を示す。1日目及び2日目は、日中に、法線面直達日射量が多く、3日目及び4日目は、日中に、法線面直達日射量が少ない。
【0074】
図7及び図8から、1日目及び2日目は、日中に晴天であり、3日目及び4日目は、日中に曇天又は雨天であったことがわかる。
【0075】
図9から図12は、4日分の室内の空気についてモデルによる計算値と実測値とで比較したものである。
【0076】
図9は頭部のモデルによる計算値と実測値のグラフ、図10は胸部のモデルによる計算値と実測値のグラフ、図11は膝先のモデルによる計算値と実測値のグラフ、図12は足元のモデルによる計算値と実測値のグラフである。
【0077】
図9から図12のグラフをみると、4日間の全期間について、頭部、胸部、膝先、足元の4層での空気温度に対して、モデルによる計算値は、実測値に近い結果が得られている。
【0078】
図13から図16は、1日分の表面温度についてモデルによる計算値と実測値とで比較したものである。
【0079】
図13はルーフ中央部のモデルによる計算値と実測値のグラフ、図14はドア後左部のモデルによる計算値と実測値のグラフ、図15は右シート背面のモデルによる計算値と実測値のグラフ、図16は右シート座面のモデルによる計算値と実測値のグラフである。
【0080】
図13から図16のグラフをみると、1日間の全期間について、ルーフ、ドア、シート背面、シート座面の表面温度に対して、モデルによる計算値は、実測値に近い結果が得られている。これは、熱プルームを発熱体ごとに複数設けたことにより、個々の発熱体による温度変化を、対応する熱プルームが表現できる様になったからであると考えられる。
【0081】
このように、本実施形態によれば、室内の温度分布をモデル化する室内温度分布モデル作成装置1において、室内を複数のゾーンに分割し、上下温度分布を表現する温度成層化ゾーンA1,A2,A3,A4を作成する温度成層化領域作成手段111と、室内外を画成する外皮が外気に接することで外皮の内表面側に下降流や上昇流を生じる温度境界層ゾーンB1,B2,B3,B4を作成する温度境界層領域作成手段112と、発熱体ごとに発熱体ゾーンC1,C2,C3を設定し、発熱体から発生する熱による上昇流からなる熱プルームを発熱体ゾーンC1,C2,C3ごとに作成する熱プルーム領域作成手段113と、ゾーン底面の静圧とゾーン間の空気移動量を求める換気回路網2を作成する換気回路網作成手段114と、ゾーン間の熱の伝わりやすさを表す一般化熱コンダクタンス33,34を求め、熱回路網3を作成する熱回路網作成手段115と、を備えたので、実用的なモデルを作成することができる。そして、実用的なモデルにより、冷暖房の定常・非定常の熱負荷の予測ができ、空調機器設定の目安が正確に計算できる。また、部材毎の伝熱量が概算できるので、熱負荷低減アイテムの効果が概算できる。さらに、個々の発熱体による温度変化を、対応する熱プルームが表現できる様になり、実用的で正確なモデルを作成することができる。
【0082】
また、熱プルーム領域作成手段113は、熱プルームの上部を束ねるヘッダーゾーンChと、熱プルームの下部を束ねるフッターゾーンCfと、を作成するので、プルーム間での循環流を抑制し、より実用的なモデルを作成することができる。
【0083】
また、温度成層化ゾーンA1,A2,A3,A4間の一般化熱コンダクタンス33,34と、換気回路網2の流路の圧力損失係数ζとを、予測値と実測値との誤差の評価関数を最小にするように求めるパラメータ演算手段116を有するので、最適なパラメータを求めることができ、より正確なモデルができる。
【0084】
さらに、本実施形態は、室内の温度分布をモデル化する室内温度分布モデル作成方法において、モデル化する対象のデータを入力するステップと、室内を複数のゾーンに分割し、上下温度分布を表現する温度成層化ゾーンA1,A2,A3,A4を作成するステップと、室内外を画成する外皮が外気に接することで外皮の内表面側に下降流や上昇流を生じる温度境界層ゾーンB1,B2,B3,B4を作成するステップと、発熱体ごとに発熱体ゾーンC1,C2,C3を設定し、発熱体から発生する熱による上昇流からなる熱プルームを発熱体ゾーンC1,C2,C3ごとに作成するステップと、ゾーン底面の静圧とゾーン間の空気移動量を求める換気回路網2を作成するステップと、ゾーン間の熱の伝わりやすさを表す一般化熱コンダクタンス33,34を求め、熱回路網3を作成するステップと、モデル化した室内の温度分布を出力するステップと、を備えたので、実用的にモデルを作成することができる。そして、精密なモデルにより、冷暖房の定常・非定常の熱負荷の予測ができ、空調機器設定の目安が正確に計算できる。また、部材毎の伝熱量が概算できるので、熱負荷低減アイテムの効果が概算できる。さらに、個々の発熱体による温度変化を、対応する熱プルームが表現できる様になり、より正確なモデルを実用的に作成することができる。
【0085】
また、熱プルームの上部をヘッダー領域Chで束ねるステップと、熱プルームの下部をフッター領域Cfで束ねるステップと、を有するので、プルーム間での循環流を抑制し、より適切なモデルを作成することができる。
【0086】
また、温度成層化ゾーンA1,A2,A3,A4間の一般化熱コンダクタンス33,34と、換気回路網2の流路の圧力損失係数ζとを、予測値と実測値との誤差の評価関数を最小にするように求めるステップを有するので、最適なパラメータを求めることができ、より正確なモデルができる。
【0087】
なお、本実施形態では、車両50のモデル作成について説明したが、これに限らず、建築物や構造物等の室内に適用してもよい。
【符号の説明】
【0088】
1…室内温度分布作成装置、2…換気回路網、21…流路、3…熱回路網、31…与条件温度節点、32…未知数温度節点、33…第1熱コンダクタンス、34…第2熱コンダクタンス、35…節点への発熱量、36…熱橋熱コンダクタンス、50…車両、51…車室、52…熱橋、101…入力手段、110…制御手段、111…温度成層化領域作成手段、112…温度境界層領域作成手段、113…熱プルーム領域作成手段、114…換気回路網作成手段、115…熱回路網作成手段、116…パラメータ演算手段、121出力手段、A…温度成層化領域、B…温度境界層領域、C…熱プルーム領域、Ch…ヘッダーゾーン、Cf…フッターゾーン、C1,C2,C3…発熱体ゾーン
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の温度分布をモデル化し、熱負荷等を検討できる室内温度分布モデル作成装置及び室内温度分布モデル作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、室内の温度分布を予測する手段として、数値流体解析が用いられていた。しかしながら、数値流体解析は、計算負荷が大きく、数値的な安定性の問題等から長時間の現象を予測することが難しかった。
【0003】
一方、本発明者は、建築物の熱回路網及び換気回路網モデルを考案していた。これにより実用的に熱負荷計算や平均的室温の変化を計算することができた。しかし今までは、室内の温度は一様混合の1ゾーンモデルであった。
【0004】
そこで、本発明者は室内の上下温度分布を表現できるモデルとして、室空間を上下に複数に分割した温度成層化ゾーン、発熱体から上昇流が発生する部分を上下に複数に分割した熱プルームゾーン、及び外皮の内表面に接して冷却される下降流が発生する部分を上下に複数に分割した温度境界層ゾーンの複数のゾーンを設け、ゾーン間の空気の移動量や熱の伝わりやすさ等を求め、実測の温度を再現する室内の精密なモデルを作成した(特許文献1参照)。
【0005】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−53749号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】(変更?) 宇田川,石田,石野等,「熱負荷算法小委員会報告書-大空間の熱負荷計算法-」,1993年3月,空衛学会,空気調和設備委員会,熱負荷算法小委員会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記特許文献1に記載されたものは、熱プルームを1本に想定していたので、これを加熱する複数の日射吸熱の表面が1本の熱プルームを介して平均化され、一様に近い温度になってしまうことがあった。
【0009】
本発明は上記課題を解決し、室内の実用的なモデルを作成する室内温度分布モデル作成装置及び室内温度分布モデル作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するものであって、室内の温度分布をモデル化する室内温度分布モデル作成装置において、室内を複数のゾーンに分割し、上下温度分布を表現する温度成層化ゾーンを作成する温度成層化領域作成手段と、室内外を画成する外皮が外気に接することで前記外皮の内表面側に下降流や上昇流を生じる温度境界層ゾーンを作成する温度境界層領域作成手段と、発熱体ごとに発熱体ゾーンを設定し、前記発熱体から発生する熱による上昇流からなる熱プルームを発熱体ゾーンごとに作成する熱プルーム領域作成手段と、前記ゾーン底面の静圧と前記ゾーン間の空気移動量を求める換気回路網を作成する換気回路網作成手段と、前記ゾーン間の熱の伝わりやすさを表す一般化熱コンダクタンスを求め、熱回路網を作成する熱回路網作成手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、前記熱プルーム領域作成手段は、前記熱プルームの上部を束ねるヘッダーゾーンと、前記熱プルームの下部を束ねるフッターゾーンと、を作成することを特徴とする。
【0012】
また、前記温度成層化ゾーン間の混合流に関する一般化熱コンダクタンスと、前記換気回路網の流路の圧力損失係数とを、予測値と実測値との誤差の評価関数を最小にするように求めるパラメータ演算手段を有することを特徴とする。
【0013】
また、前記評価関数は、前記温度成層化ゾーンの各空気温度と前記発熱体の各表面温度に関して、予測値から実測値を差し引いた差の評価期間積分値を、これらの空気と表面温度それぞれで平均化し、さらに空気温度と表面温度の平均温度をとることを特徴とする。
【0014】
さらに、室内の温度分布をモデル化する室内温度分布モデル作成方法において、モデル化する対象のデータを入力するステップと、室内を複数のゾーンに分割し、上下温度分布を表現する温度成層化ゾーンを作成するステップと、室内外を画成する外皮が外気に接することで前記外皮の内表面側に下降流や上昇流を生じる温度境界層ゾーンを作成するステップと、発熱体ごとに発熱体ゾーンを設定し、前記発熱体から発生する熱による上昇流からなる熱プルームを発熱体ゾーンごとに作成するステップと、前記ゾーン底面の静圧とゾーン間の空気移動量を求める換気回路網を作成するステップと、前記ゾーン間の熱の伝わりやすさを表す一般化熱コンダクタンスを求め、熱回路網を作成するステップと、モデル化した室内の温度分布を出力するステップと、を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、前記熱プルームの上部をヘッダー領域で束ねるステップと、前記熱プルームの下部をフッター領域で束ねるステップと、を有することを特徴とする。
【0016】
また、前記温度成層化ゾーン間の混合流に関する一般化熱コンダクタンスと、前記換気回路網の流路の圧力損失係数とを、予測値と実測値との誤差の評価関数を最小にするように求めるステップを有することを特徴とする。
【0017】
また、前記評価関数は、前記温度成層化ゾーンの各空気温度と前記発熱体の各表面温度に関して、予測値から実測値を差し引いた差の評価期間積分値を、これらの空気と表面温度それぞれで平均化し、さらに空気温度と表面温度の平均温度をとるステップを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、室内の温度分布をモデル化する室内温度分布モデル作成装置において、室内を複数のゾーンに分割し、上下温度分布を表現する温度成層化ゾーンを作成する温度成層化領域作成手段と、室内外を画成する外皮が外気に接することで前記外皮の内表面側に下降流や上昇流を生じる温度境界層ゾーンを作成する温度境界層領域作成手段と、発熱体ごとに発熱体ゾーンを設定し、前記発熱体から発生する熱による上昇流からなる熱プルームを発熱体ゾーンごとに作成する熱プルーム領域作成手段と、前記ゾーン底面の静圧と前記ゾーン間の空気移動量を求める換気回路網を作成する換気回路網作成手段と、前記ゾーン間の熱の伝わりやすさを表す一般化熱コンダクタンスを求め、熱回路網を作成する熱回路網作成手段と、を備えたので、実用的なモデルを作成することができる。そして、実用的なモデルにより、冷暖房の定常・非定常の熱負荷の予測ができ、空調機器設定の目安が正確に計算できる。また、部材毎の伝熱量が概算できるので、熱負荷低減アイテムの効果が概算できる。さらに、個々の発熱体による温度変化を、対応する熱プルームが表現できる様になり、より実用的で正確なモデルを作成することができる。
【0019】
また、前記熱プルーム領域作成手段は、前記熱プルームの上部を束ねるヘッダーゾーンと、前記熱プルームの下部を束ねるフッターゾーンと、を作成するので、プルーム間での循環流を抑制し、より実用的なモデルを作成することができる。
【0020】
また、前記温度成層化ゾーン間の混合流に関する一般化熱コンダクタンスと、前記換気回路網の流路の圧力損失係数とを、予測値と実測値との誤差の評価関数を最小にするように求めるパラメータ演算手段を有するので、最適なパラメータを求めることができ、より正確なモデルができる。
【0021】
また、前記評価関数は、前記温度成層化ゾーンの各空気温度と前記発熱体の各表面温度に関して、予測値から実測値を差し引いた差の評価期間積分値を、これらの空気と表面温度それぞれで平均化し、さらに空気温度と表面温度の平均温度をとるので、より正確な評価をすることが可能となる。
【0022】
さらに、本発明は上記課題を解決する方法であって、室内の温度分布をモデル化する室内温度分布モデル作成方法において、モデル化する対象のデータを入力するステップと、室内を複数のゾーンに分割し、上下温度分布を表現する温度成層化ゾーンを作成するステップと、室内外を画成する外皮が外気に接することで前記外皮の内表面側に下降流や上昇流を生じる温度境界層ゾーンを作成するステップと、発熱体ごとに発熱体ゾーンを設定し、前記発熱体から発生する熱による上昇流からなる熱プルームを発熱体ゾーンごとに作成するステップと、前記ゾーン底面の静圧とゾーン間の空気移動量を求める換気回路網を作成するステップと、前記ゾーン間の熱の伝わりやすさを表す一般化熱コンダクタンスを求め、熱回路網を作成するステップと、モデル化した室内の温度分布を出力するステップと、を備えたので、実用的にモデルを作成することができる。そして、精密なモデルにより、冷暖房の定常・非定常の熱負荷の予測ができ、空調機器設定の目安が正確に計算できる。また、部材毎の伝熱量が概算できるので、熱負荷低減アイテムの効果が概算できる。さらに、個々の発熱体による温度変化を、対応する熱プルームが表現できる様になり、より正確なモデルを実用的に作成することができる。
【0023】
また、前記熱プルームの上部をヘッダー領域で束ねるステップと、前記熱プルームの下部をフッター領域で束ねるステップと、を有するので、プルーム間での循環流を抑制し、より適切なモデルを作成することができる。
【0024】
また、前記温度成層化ゾーン間の混合流に関する一般化熱コンダクタンスと、前記換気回路網の流路の圧力損失係数とを、予測値と実測値との誤差の評価関数を最小にするように求めるステップを有するので、最適なパラメータを求めることができ、より正確なモデルができる。
【0025】
また、前記評価関数は、前記温度成層化ゾーンの各空気温度と前記発熱体の各表面温度に関して、予測値から実測値を差し引いた差の評価期間積分値を、これらの空気と表面温度それぞれで平均化し、さらに空気温度と表面温度の平均温度をとるステップを有するので、より正確な評価をすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態の室内温度分布作成装置が作成するモデルの概要を示す図である。
【図2】本実施形態の装置構成を示す図である。
【図3】車両を図1に示す領域に分割する例を示す図である。
【図4】図3に示す車両に換気回路網を構築しモデル化した図である。
【図5】熱プルーム領域の拡大図である。
【図6】図3に示す車両に熱回路網を構築しモデル化した図である。
【図7】実測時の外気温度と相対湿度を示すグラフである。
【図8】法線面直達日射量と水平面天空拡散日射量を示すグラフである。
【図9】頭部のモデルによる計算値と実測値のグラフである。
【図10】胸部のモデルによる計算値と実測値のグラフである。
【図11】膝先のモデルによる計算値と実測値のグラフである。
【図12】足元のモデルによる計算値と実測値のグラフである。
【図13】ルーフ中央部のモデルによる計算値と実測値のグラフである。
【図14】ドア後左部のモデルによる計算値と実測値のグラフである。
【図15】右シート背面のモデルによる計算値と実測値のグラフである。
【図16】右シート座面のモデルによる計算値と実測値のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明にかかる実施形態の室内温度分布作成装置1について説明する。
【0028】
図1は、本実施形態の室内温度分布作成装置1が作成するモデルの概要を示す図である。図1において、Aは温度成層化領域、Bは温度境界層領域、Cは熱プルーム領域を示す。また、換気回路網2では、矢印21は空気の移動を表す換気回路網の流路を示す。さらに、熱回路網3では、節点31は例えば外気温度等の既知の温度を表す与条件温度節点、節点32は温度が未知な未知数温度節点を示し、第1熱コンダクタンス33は伝導・伝達・貫流・放射等の一般化熱コンダクタンス、第2熱コンダクタンス34は移流・対流による一般化熱コンダクタンスを示し、太矢印35は節点への発熱量を示す。なお、一般化コンダクタンスとは、伝導、伝達、放射、貫流、移流等すべての伝熱形態の熱の伝わりやすさを表す。
【0029】
本実施形態では、温度成層化領域A、温度境界層領域B及び熱プルーム領域Cに区分する。また、温度成層化領域A及び温度境界層領域Bをそれぞれ上下に層状のゾーンA1,A2・・・B3,B4に分割して、換気回路網2と熱回路網3を構築する。熱プルーム領域Cは、発熱体ごとに熱プルームC1,C2,C3を構築し、複数の熱プルームC1,C2,C3の上下端を束ね、上端にヘッダーゾーンCh、下端にフッターゾーンCfを設けた。
【0030】
温度成層化領域Aは、室内の上下温度分布を複数の層に分割し、離散的に表現したものであり、各層内での温度は一様である。温度成層化領域A間の平均的な流れは上向きまたは下向きの押し出し流れであり、こうしたピストン流れとすることが温度成層化を模擬する要件となる。また、自然対流(熱対流のみ)と強制対流(ファン作動時など)の両状態は、温度成層化領域A内の各ゾーン間の混合流の一般化熱コンダクタンス33,34の数値を,小さくまたは大きくすることでモデル化する。
【0031】
温度境界層領域Bは、室内外を画成する外皮が外気に接することで外皮の内表面側に下降流や上昇流を生じるゾーンである。例えば、車両の外気温度が外皮を通じて車内を冷却すると、温度境界層領域Bを冷却し、温度境界層領域B内で下降流が生じ,この下降流が温度成層化領域Aに入り込み、循環流を引き起こす。
【0032】
熱プルーム領域Cは、発熱体から発生する熱による上昇流を生じるゾーンである。例えば、日射を受けた車室内の物体から発生する上昇流を表現するものであり、熱プルーム領域Cは、発熱体ごとに熱プルームC1,C2,C3を構築し、複数の熱プルームC1,C2,C3の上下端を束ね、上端にヘッダーゾーンCh、下端にフッターゾーンCfを設けた。また、上下方向を位置を設定することで,発熱体との接触位置が高い場合、低い場合の熱上昇力の違いを考慮できる様にした。
【0033】
なお、ファンなどで強制対流加熱した場合には,室内は空気的に混合状態になることから,温度成層化領域Aの全てのゾーンに発熱量は均等に分散して与えられる。これでも上下温度分布が生成されるのは押し出し上昇流が生じるからである。また、この強制対流加熱状態では熱プルーム領域C内には加熱源がなく、また熱プルーム流路の断面積が小さいことから熱プルームの流の影響はなくなる。こうして強制対流と自然対流の両状態は同じモデル構造で表現できる。
【0034】
ここで、換気回路網2と熱回路網3について説明する(詳細については、非特許文献1を参照)。
【0035】
換気回路網2は、各ゾーン底面の静圧と複数ゾーン間の流量を示すものである。
【0036】
前提として、各ゾーンでは風量の収支が成り立つとする。また、各ゾーン底面に静圧p(Pa)を持ち、ゾーンの空気密度をρ(kg/m3)とすると、この底面から上方へh(m)上がった点での静圧はp−ρ・h・g(Pa)とする。空気密度はそのゾーンの空気温度の関数である。流路は、圧力損失係数、指数及び流路面積、さらに基準面からの高さの属性を持ち、流路の通過風量は,前後の静圧差と圧力損失係数、指数および流路面積の関数である。そして、ゾーン数分の静圧に関する非線形連立方程式を修正ニュートンラプソン法で解くことで風量が求められる。
【0037】
熱回路網3は、熱の移動を示すものである。前提として、各節点では、流入熱流から流出熱流を引いたものが、熱容量に温度変化を乗じたものに等しくなるという熱流収支が成り立つものとする。これを完全連結システムの節点方程式とする。また、伝導、表面伝達、長波長放射、移流など全ての伝熱形態の熱の伝わりやすさを一般化熱コンダクタンス33,34という一種類の係数で表現する。従って空気流動による一般化熱コンダクタンス33,34も数式記号上は同じ係数となる。
【0038】
そして、全節点の温度に関する連立常微分方程式が前述の節点方程式から構成され、連立常微分方程式を後退差分などの時間積分法によって解き、毎時間ステップの温度の解を算出する。
【0039】
次に、換気回路網2と熱回路網3の連成について説明する。換気回路網2の駆動条件となる各ゾーンの密度は熱回路網3の解の温度によって計算される。熱回路網3の係数となる風量は換気回路網2の解から得られる。非定常の時間ステップ毎に、一方の回路網への条件はもう一方の回路網の前時間ステップでの結果をもとにつくる。こうして両モデルの連成がとられる。
【0040】
図2は本実施形態の室内温度分布作成装置1を用いたシステム構成図である。
【0041】
入力手段101は、モデル化する対象のデータを入力するものである。記憶手段102は、演算式等の不変のデータを記憶するものである。入力手段101から入力されたデータ及び記憶手段102に記憶されたデータは、制御手段110に入力される。
【0042】
室内温度分布作成装置1の制御手段110は、温度成層化領域作成手段111、温度境界層領域作成手段112、熱プルーム領域作成手段113、換気回路網作成手段114及び熱回路網作成手段115、パラメータ演算手段116を有する。
【0043】
温度成層化領域作成手段111は、室内を複数のゾーンに分割し、上下温度分布を離散的に表現する温度成層化ゾーンを作成する。温度境界層領域作成手段112は、室内外を画成する外皮が外気に接することで外皮の内表面側に下降流や上昇流を生じるゾーンを作成する。なお、温度境界層ゾーンは、複数のゾーンに分割し作成されてもよい。熱プルーム領域作成手段113は、発熱体から発生する熱による上昇流を生じるゾーンを作成する。なお、熱プルームゾーンは、複数のゾーンに分割し作成されてもよい。換気回路網作成手段114は、ゾーン底面の静圧とゾーン間の空気移動量を求める換気回路網を作成する。熱回路網作成手段115は、ゾーン間の熱の移動を求める熱回路網を作成する。パラメータ演算手段116については後述する。
【0044】
制御手段110により作成されたモデルは、表示装置等の出力手段121に出力される。
【0045】
図3は、車両50を図1に示す領域に分割する例を示す図である。車両50の車室51内を上下4段の温度成層化領域Aに区分し、温度境界層領域Bとして、屋根温度境界層B1、窓温度境界層B2、ドア温度境界層B3及び床温度境界層B4を設定したものである。
【0046】
図4は車両50に換気回路網2を構築しモデル化した図、図5は熱プルーム領域Cの換気回路網2の拡大図である。
【0047】
図5に示すように、本実施例では、熱プルームを合計14本有し、各熱プルームは各日射発熱体に対応している。C1aは左後部ピラー、C1bは右後部ピラー、C2aはインスツルメントパネル、C2bは左ドア内側、C2cは右ドア内側、C2dはリアトレイ、C2eは後席左側背面、C2fは後席右側背面、C2gは左前席背面、C2hは右前席背面、C3aは後席左側座面、C3bは後席右側座面、C3cは左前席座面、C3dは右前席座面となっている。
【0048】
各発熱体に接する空気の発熱ゾーンの高さは発熱体の高さに対応し、熱プルームの上昇力は発熱ゾーンの高さに関係する。なお、発熱ゾーンの高さとはゾーンの底面高さである。これらには発熱体の実際の高さを設定している。また、流路の高さとは,その流路の出口側のゾーンに流れ込む位置での高さを意味する。流路内の空気温度は風上側のゾーンの温度に近いと考えるからである。
【0049】
次に、作成するモデルのパラメータについて説明する。作成するモデルは、工学モデルなので、実験的に定めなければならない特性値がある。これらは、換気回路網2の圧力損失係数ζ及び熱回路網3の層間混合流一般化熱コンダクタンスcijからなる二種のパラメータである。
【0050】
これらパラメータをパラメータ演算手段116により最適化する方法について説明する。まず、パラメータを最適化するために評価関数を設定する。式(1)は、上下の平均温度は、室空気が持つ熱エネルギーに比例するので、室内の総エネルギーが一致すべきという観点から導かれる評価関数である。
【0051】
【数1】
ただし、pθjは頭部又は足元の予測計算温度、
mθjは実測温度、
Tは検討期間
である。
【0052】
ここにjは成層化ゾーンの上下方向の位置番号を示し,一般に2以上あるものとする.
【0053】
次に、頭部と足元それぞれで温度が近ければ良いという各層での温度が一致するかの評価を式(2)で行う。
【0054】
【数2】
【0055】
これら式(1)と式(2)の両方を平均し、総合的に考慮する式(3)の誤差評価関数Jを定める。
【0056】
【数3】
【0057】
次に、日射発熱体の表面温度が一致することの評価関数は式(4)で定める。日射発熱面は14面存在するので、これらの表面温度は受熱体表面積で重み付け平均した面積加重平均として評価関数とするのが妥当である。
【0058】
【数4】
ただし、Sjは受熱体の表面積である。
【0059】
以上の空気温度と表面温度の誤差評価関数の平均の温度である式(5)を最終的な評価関数とする。
【0060】
【数5】
【0061】
次に、未定パラメータである換気回路網の圧力損失係数ζと温度成層化ゾーン間の混合流熱コンダクタンスcijを求める。まず、空気温度についての評価関数である式(3)を調べる。
【0062】
圧力損失係数ζは1,12,100の3通りについて、層間混合流一般化熱コンダクタンスcijは0.035,0.35,3.5の3通りについて計算した。
【0063】
【表1】
【0064】
次に、同様なパラメータの組み合わせにより、発熱体表面温度の評価関数式(4)を計算する。
【0065】
【表2】
【0066】
そして、空気温度と表面温度の平均値を表す式(5)について計算する。
【0067】
【表3】
【0068】
以上のような検討により、最適なパラメータを表(4)の様に定める。ここに、対流熱伝達率は予測表面温度が実測値に近付く様に調整したものである。
【0069】
【表4】
【0070】
図6は、車両50に熱回路網3を構築しモデル化した図である。本実施例のモデルについては、室内表面の放射伝達と表面対流伝達を分離したモデルなので、総合伝達率のモデルと比較して、室内部位間の長波長放射伝達の様子を描いた分だけ複雑になっている。
【0071】
次に、このような室内温度分布作成装置1により作成したモデルによる計算値と実測値との比較結果について説明する。図7は実測時の外気温度と相対湿度を示すグラフ、図8は法線面直達日射量と水平面天空拡散日射量を示すグラフである。
【0072】
図7において、薄線は外気温度、濃線は相対湿度である。1日目及び2日目は、日中に、高温且つ低湿度であり、3日目及び4日目は、日中に、気温が上がらず、高湿度であった。
【0073】
また、図8において、濃線は法線面直達日射量、薄線は水平面天空拡散日射量を示す。1日目及び2日目は、日中に、法線面直達日射量が多く、3日目及び4日目は、日中に、法線面直達日射量が少ない。
【0074】
図7及び図8から、1日目及び2日目は、日中に晴天であり、3日目及び4日目は、日中に曇天又は雨天であったことがわかる。
【0075】
図9から図12は、4日分の室内の空気についてモデルによる計算値と実測値とで比較したものである。
【0076】
図9は頭部のモデルによる計算値と実測値のグラフ、図10は胸部のモデルによる計算値と実測値のグラフ、図11は膝先のモデルによる計算値と実測値のグラフ、図12は足元のモデルによる計算値と実測値のグラフである。
【0077】
図9から図12のグラフをみると、4日間の全期間について、頭部、胸部、膝先、足元の4層での空気温度に対して、モデルによる計算値は、実測値に近い結果が得られている。
【0078】
図13から図16は、1日分の表面温度についてモデルによる計算値と実測値とで比較したものである。
【0079】
図13はルーフ中央部のモデルによる計算値と実測値のグラフ、図14はドア後左部のモデルによる計算値と実測値のグラフ、図15は右シート背面のモデルによる計算値と実測値のグラフ、図16は右シート座面のモデルによる計算値と実測値のグラフである。
【0080】
図13から図16のグラフをみると、1日間の全期間について、ルーフ、ドア、シート背面、シート座面の表面温度に対して、モデルによる計算値は、実測値に近い結果が得られている。これは、熱プルームを発熱体ごとに複数設けたことにより、個々の発熱体による温度変化を、対応する熱プルームが表現できる様になったからであると考えられる。
【0081】
このように、本実施形態によれば、室内の温度分布をモデル化する室内温度分布モデル作成装置1において、室内を複数のゾーンに分割し、上下温度分布を表現する温度成層化ゾーンA1,A2,A3,A4を作成する温度成層化領域作成手段111と、室内外を画成する外皮が外気に接することで外皮の内表面側に下降流や上昇流を生じる温度境界層ゾーンB1,B2,B3,B4を作成する温度境界層領域作成手段112と、発熱体ごとに発熱体ゾーンC1,C2,C3を設定し、発熱体から発生する熱による上昇流からなる熱プルームを発熱体ゾーンC1,C2,C3ごとに作成する熱プルーム領域作成手段113と、ゾーン底面の静圧とゾーン間の空気移動量を求める換気回路網2を作成する換気回路網作成手段114と、ゾーン間の熱の伝わりやすさを表す一般化熱コンダクタンス33,34を求め、熱回路網3を作成する熱回路網作成手段115と、を備えたので、実用的なモデルを作成することができる。そして、実用的なモデルにより、冷暖房の定常・非定常の熱負荷の予測ができ、空調機器設定の目安が正確に計算できる。また、部材毎の伝熱量が概算できるので、熱負荷低減アイテムの効果が概算できる。さらに、個々の発熱体による温度変化を、対応する熱プルームが表現できる様になり、実用的で正確なモデルを作成することができる。
【0082】
また、熱プルーム領域作成手段113は、熱プルームの上部を束ねるヘッダーゾーンChと、熱プルームの下部を束ねるフッターゾーンCfと、を作成するので、プルーム間での循環流を抑制し、より実用的なモデルを作成することができる。
【0083】
また、温度成層化ゾーンA1,A2,A3,A4間の一般化熱コンダクタンス33,34と、換気回路網2の流路の圧力損失係数ζとを、予測値と実測値との誤差の評価関数を最小にするように求めるパラメータ演算手段116を有するので、最適なパラメータを求めることができ、より正確なモデルができる。
【0084】
さらに、本実施形態は、室内の温度分布をモデル化する室内温度分布モデル作成方法において、モデル化する対象のデータを入力するステップと、室内を複数のゾーンに分割し、上下温度分布を表現する温度成層化ゾーンA1,A2,A3,A4を作成するステップと、室内外を画成する外皮が外気に接することで外皮の内表面側に下降流や上昇流を生じる温度境界層ゾーンB1,B2,B3,B4を作成するステップと、発熱体ごとに発熱体ゾーンC1,C2,C3を設定し、発熱体から発生する熱による上昇流からなる熱プルームを発熱体ゾーンC1,C2,C3ごとに作成するステップと、ゾーン底面の静圧とゾーン間の空気移動量を求める換気回路網2を作成するステップと、ゾーン間の熱の伝わりやすさを表す一般化熱コンダクタンス33,34を求め、熱回路網3を作成するステップと、モデル化した室内の温度分布を出力するステップと、を備えたので、実用的にモデルを作成することができる。そして、精密なモデルにより、冷暖房の定常・非定常の熱負荷の予測ができ、空調機器設定の目安が正確に計算できる。また、部材毎の伝熱量が概算できるので、熱負荷低減アイテムの効果が概算できる。さらに、個々の発熱体による温度変化を、対応する熱プルームが表現できる様になり、より正確なモデルを実用的に作成することができる。
【0085】
また、熱プルームの上部をヘッダー領域Chで束ねるステップと、熱プルームの下部をフッター領域Cfで束ねるステップと、を有するので、プルーム間での循環流を抑制し、より適切なモデルを作成することができる。
【0086】
また、温度成層化ゾーンA1,A2,A3,A4間の一般化熱コンダクタンス33,34と、換気回路網2の流路の圧力損失係数ζとを、予測値と実測値との誤差の評価関数を最小にするように求めるステップを有するので、最適なパラメータを求めることができ、より正確なモデルができる。
【0087】
なお、本実施形態では、車両50のモデル作成について説明したが、これに限らず、建築物や構造物等の室内に適用してもよい。
【符号の説明】
【0088】
1…室内温度分布作成装置、2…換気回路網、21…流路、3…熱回路網、31…与条件温度節点、32…未知数温度節点、33…第1熱コンダクタンス、34…第2熱コンダクタンス、35…節点への発熱量、36…熱橋熱コンダクタンス、50…車両、51…車室、52…熱橋、101…入力手段、110…制御手段、111…温度成層化領域作成手段、112…温度境界層領域作成手段、113…熱プルーム領域作成手段、114…換気回路網作成手段、115…熱回路網作成手段、116…パラメータ演算手段、121出力手段、A…温度成層化領域、B…温度境界層領域、C…熱プルーム領域、Ch…ヘッダーゾーン、Cf…フッターゾーン、C1,C2,C3…発熱体ゾーン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の温度分布をモデル化する室内温度分布モデル作成装置において、
室内を複数のゾーンに分割し、上下温度分布を表現する温度成層化ゾーンを作成する温度成層化領域作成手段と、
室内外を画成する外皮が外気に接することで前記外皮の内表面側に下降流や上昇流を生じる温度境界層ゾーンを作成する温度境界層領域作成手段と、
発熱体ごとに発熱体ゾーンを設定し、前記発熱体から発生する熱による上昇流からなる熱プルームを発熱体ゾーンごとに作成する熱プルーム領域作成手段と、
前記ゾーン底面の静圧と前記ゾーン間の空気移動量を求める換気回路網を作成する換気回路網作成手段と、
前記ゾーン間の熱の伝わりやすさを表す一般化熱コンダクタンスを求め、熱回路網を作成する熱回路網作成手段と、
を備えたことを特徴とする室内温度分布モデル作成装置。
【請求項2】
前記熱プルーム領域作成手段は、
前記熱プルームの上部を束ねるヘッダーゾーンと、
前記熱プルームの下部を束ねるフッターゾーンと、
を作成することを特徴とする請求項1に記載の室内温度分布モデル作成装置。
【請求項3】
前記温度成層化ゾーン間の混合流に関する一般化熱コンダクタンスと、前記換気回路網の流路の圧力損失係数とを、予測値と実測値との誤差の評価関数を最小にするように求めるパラメータ演算手段を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の室内温度分布モデル作成装置。
【請求項4】
前記評価関数は、前記温度成層化ゾーンの各空気温度と前記発熱体の各表面温度に関して、予測値から実測値を差し引いた差の評価期間積分値を、これらの空気と表面温度それぞれで平均化し、さらに空気温度と表面温度の平均温度をとることを特徴とする請求項3に記載の室内温度分布モデル作成装置。
【請求項5】
室内の温度分布をモデル化する室内温度分布モデル作成方法において、
モデル化する対象のデータを入力するステップと、
室内を複数のゾーンに分割し、上下温度分布を表現する温度成層化ゾーンを作成するステップと、
室内外を画成する外皮が外気に接することで前記外皮の内表面側に下降流や上昇流を生じる温度境界層ゾーンを作成するステップと、
発熱体ごとに発熱体ゾーンを設定し、前記発熱体から発生する熱による上昇流からなる熱プルームを発熱体ゾーンごとに作成するステップと、
前記ゾーン底面の静圧とゾーン間の空気移動量を求める換気回路網を作成するステップと、
前記ゾーン間の熱の伝わりやすさを表す一般化熱コンダクタンスを求め、熱回路網を作成するステップと、
モデル化した室内の温度分布を出力するステップと、
を備えたことを特徴とする室内温度分布モデル作成方法。
【請求項6】
前記熱プルームの上部をヘッダー領域で束ねるステップと、
前記熱プルームの下部をフッター領域で束ねるステップと、
を有することを特徴とする請求項5に記載の室内温度分布モデル作成方法。
【請求項7】
前記温度成層化ゾーン間の混合流に関する一般化熱コンダクタンスと、前記換気回路網の流路の圧力損失係数とを、予測値と実測値との誤差の評価関数を最小にするように求めるステップを有することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の室内温度分布モデル作成方法。
【請求項8】
前記評価関数は、前記温度成層化ゾーンの各空気温度と前記発熱体の各表面温度に関して、予測値から実測値を差し引いた差の評価期間積分値を、これらの空気と表面温度それぞれで平均化し、さらに空気温度と表面温度の平均温度をとるステップを有することを特徴とする請求項7に記載の室内温度分布モデル作成方法。
【請求項1】
室内の温度分布をモデル化する室内温度分布モデル作成装置において、
室内を複数のゾーンに分割し、上下温度分布を表現する温度成層化ゾーンを作成する温度成層化領域作成手段と、
室内外を画成する外皮が外気に接することで前記外皮の内表面側に下降流や上昇流を生じる温度境界層ゾーンを作成する温度境界層領域作成手段と、
発熱体ごとに発熱体ゾーンを設定し、前記発熱体から発生する熱による上昇流からなる熱プルームを発熱体ゾーンごとに作成する熱プルーム領域作成手段と、
前記ゾーン底面の静圧と前記ゾーン間の空気移動量を求める換気回路網を作成する換気回路網作成手段と、
前記ゾーン間の熱の伝わりやすさを表す一般化熱コンダクタンスを求め、熱回路網を作成する熱回路網作成手段と、
を備えたことを特徴とする室内温度分布モデル作成装置。
【請求項2】
前記熱プルーム領域作成手段は、
前記熱プルームの上部を束ねるヘッダーゾーンと、
前記熱プルームの下部を束ねるフッターゾーンと、
を作成することを特徴とする請求項1に記載の室内温度分布モデル作成装置。
【請求項3】
前記温度成層化ゾーン間の混合流に関する一般化熱コンダクタンスと、前記換気回路網の流路の圧力損失係数とを、予測値と実測値との誤差の評価関数を最小にするように求めるパラメータ演算手段を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の室内温度分布モデル作成装置。
【請求項4】
前記評価関数は、前記温度成層化ゾーンの各空気温度と前記発熱体の各表面温度に関して、予測値から実測値を差し引いた差の評価期間積分値を、これらの空気と表面温度それぞれで平均化し、さらに空気温度と表面温度の平均温度をとることを特徴とする請求項3に記載の室内温度分布モデル作成装置。
【請求項5】
室内の温度分布をモデル化する室内温度分布モデル作成方法において、
モデル化する対象のデータを入力するステップと、
室内を複数のゾーンに分割し、上下温度分布を表現する温度成層化ゾーンを作成するステップと、
室内外を画成する外皮が外気に接することで前記外皮の内表面側に下降流や上昇流を生じる温度境界層ゾーンを作成するステップと、
発熱体ごとに発熱体ゾーンを設定し、前記発熱体から発生する熱による上昇流からなる熱プルームを発熱体ゾーンごとに作成するステップと、
前記ゾーン底面の静圧とゾーン間の空気移動量を求める換気回路網を作成するステップと、
前記ゾーン間の熱の伝わりやすさを表す一般化熱コンダクタンスを求め、熱回路網を作成するステップと、
モデル化した室内の温度分布を出力するステップと、
を備えたことを特徴とする室内温度分布モデル作成方法。
【請求項6】
前記熱プルームの上部をヘッダー領域で束ねるステップと、
前記熱プルームの下部をフッター領域で束ねるステップと、
を有することを特徴とする請求項5に記載の室内温度分布モデル作成方法。
【請求項7】
前記温度成層化ゾーン間の混合流に関する一般化熱コンダクタンスと、前記換気回路網の流路の圧力損失係数とを、予測値と実測値との誤差の評価関数を最小にするように求めるステップを有することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の室内温度分布モデル作成方法。
【請求項8】
前記評価関数は、前記温度成層化ゾーンの各空気温度と前記発熱体の各表面温度に関して、予測値から実測値を差し引いた差の評価期間積分値を、これらの空気と表面温度それぞれで平均化し、さらに空気温度と表面温度の平均温度をとるステップを有することを特徴とする請求項7に記載の室内温度分布モデル作成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−22686(P2011−22686A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165430(P2009−165430)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
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