説明

害虫忌避組成物

【課題】害虫忌避効果の持続性に優れており、不快臭やベタつきの低減された害虫忌避組成物を提供する。
【解決手段】(A)ネロリドールおよび/またはメチルウンデシルケトンと、(B)マグネシウム被覆非晶質シリカとを含有することを特徴とする害虫忌避組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫忌避組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、蚊、アブ、ブユ、ノミ等の吸血性昆虫などの害虫に対して、忌避作用や吸血阻害作用を有する多くの害虫忌避組成物が知られており、実用に供せられている。
従来、害虫忌避組成物の有効成分(害虫忌避成分)としては、害虫忌避効果が高く、比較的安価で、世界的に長年の使用実績があることから、N,N−ジエチル−m−トルアミド(以下、「DEET」と略する場合がある)が広く使用されている。
しかしながら、DEETは、特有の刺激臭を有しており、近年、世界各国にて幼児への使用規制などが行われている。安全性への関心が益々高まるなか、より安全性の高い害虫忌避組成物への要求が高まっている。
このような要求に対し、天然物由来の成分を害虫忌避成分として用いた害虫忌避組成物が提案されている(たとえば特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開平4−321613号公報
【特許文献2】特開2002−356404号公報
【特許文献3】特開平7−112907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、天然物由来の成分を害虫忌避成分として用いた従来の害虫忌避組成物は、害虫忌避効果の持続性が低く、短時間で害虫忌避効果が失われる問題がある。また、適用時に、害虫忌避成分に由来する不快臭やベタつきがある。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、害虫忌避効果の持続性に優れており、不快臭やベタつきの低減された害虫忌避組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決する本発明の害虫忌避組成物は、(A)ネロリドールおよび/またはメチルウンデシルケトンと、(B)マグネシウム被覆非晶質シリカとを含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、害虫忌避効果の持続性に優れており、不快臭やベタつきの低減された害虫忌避組成物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の害虫忌避組成物において、(A)ネロリドールおよび/またはメチルウンデシルケトン(以下、(A)成分ということがある。)と、(B)マグネシウム被覆非晶質シリカ(以下、(B)成分ということがある。)とを含有する。
本発明の害虫忌避組成物において、(A)成分は害虫忌避成分であり、(A)成分が忌避効果を発揮する害虫としては、蚊、アブ、ブユ、ノミなどの吸血性昆虫などが挙げられる。
この(A)成分に(B)成分を組み合わせることにより、(A)成分の害虫忌避効果の持続性が向上する。また、(A)成分に由来する不快臭やベタつきも改善される。
【0007】
ネロリドールは、非環式セスキテルペン類に属するアルコールの1つである。ネロリドールについては、これまで、蚊、ダニ、繊維害虫等に対する害虫忌避効果を有することが報告されている(特許文献1〜3等)。
メチルウンデシルケトン(2−トリデカノン)は、トリデカノン類に属するケトンの1つである。メチルウンデシルケトンについては、特開2001−348308号公報に、菌代謝抑制効果を有することが報告されているが、害虫忌避効果についてはこれまで確認されていない。
ネロリドールおよびメチルウンデシルケトンはいずれも天然物由来の成分であり、安全性に優れている。
【0008】
本発明の害虫忌避組成物において、(A)成分としては、ネロリドールおよびメチルウンデシルケトンのいずれか一方を単独で用いてもよく、両者を併用してもよい。
害虫忌避組成物中、(A)成分の配合量は、5〜15(質量(W)/体積(V))%が好ましく、8〜12(W/V)%がより好ましい。害虫忌避組成物中の(A)成分の配合量が5(W/V)%以上であると、害虫忌避効果が向上する。また、該配合量が15(W/V)%以下であると、(A)成分に由来するベタつきや不快臭が少なく、使用性に優れている。
【0009】
(B)成分は、非晶質シリカからなる核粒子がマグネシウム化合物により被覆されたものである。
核粒子の材質が非晶質シリカであることにより、本発明の害虫忌避組成物を肌に適用した際の感触が良好なものとなる。核粒子の材質が結晶質のものであると、密度が高く、硬度が高いために、肌に適用した際にざらついた感触を与えてしまう。
また、核粒子の材質が非晶質シリカであることにより、核粒子の表面がマグネシウム化合物により良好に被覆されたものとなる。この理由は解明されていないが、非晶質粒子の場合にはマグネシウム化合物の一部が核粒子の微細構造内に浸透することにより、大量のマグネシウム化合物を核粒子が担持できるからではないかと考えられる。
(B)成分において、前記核粒子は球状であることが好ましい。核粒子の形状が球状であると、肌に適用した際の使用感(感触、白浮き)が特に良好である。
また、核粒子は、粒子径が0.3〜20μmであることが好ましい。核粒子の粒子径がこの範囲内であると、肌に使用した場合の使用感がよく、また、飛散などがなく取り扱い上好ましい。
核粒子の形状および粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)により確認できる。
非晶質シリカからなる核粒子の好適例としては、例えば特開平5−193927に記載されているように、ケイ酸アルカリ水溶液にアクリルアミド系重合体を添加し、該ケイ酸アルカリを酸を用いて部分中和させ、それを室温付近で熟成放置して粒子に凝集成長させて調製した球状非晶質シリカ粒子や、p−型ゼオライトを酸処理して調製したシルトンAMT−シリカ粒子等を挙げることができる。
【0010】
(B)成分において、核粒子を被覆するマグネシウム化合物としては、MgF、MgCl、KMgCl、MgBY等のマグネシウムハロゲン化物、MgO等の酸化マグネシウム、Mg(OH)等の水酸化マグネシウム、MgSO、MgSO・6HO、Mg(NO、Mg(NO・6HO、Mg(PO、MgHPO等のマグネシウム酸素酸塩、Mg(CHCOO)、Mg(CHCHCOO)、その他のマグネシウム有機酸塩等の他、ケイ酸マグネシウム或いはアルミノケイ酸マグネシウム等が挙げられる。
これらのなかでも、不快臭抑制効果に優れることから、水酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム又はこれらの混合物が好ましい。また、実質的に前記マグネシウム化合物の一種または二種以上からなり、ごく少量の他の物質、例えばアルミノケイ酸マグネシウム等を含有する混合物等でもよい。
特に、後述するマグネシウム被覆非晶質シリカの製造方法に示すように、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硝酸マグネシウム等のマグネシウム酸化物、水酸化物、塩を出発原料とし、核粒子表面で反応させて形成される、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸マグネシウム等を含有する混合物が最も好適である。
【0011】
(B)成分において、マグネシウム化合物の被覆量は、核粒子当たりMgO換算で1〜50質量%が好ましく、2〜35質量%がより好ましい。マグネシウム化合物の被覆量が上記範囲の下限値以上であると、粒子表面の全面形成される被覆の均質性が向上し、(B)成分による効果が向上する。また、上記範囲の上限値以下であると、被覆の密着性が良好で、被覆層の剥離や、粒子の凝集や脱離が生じにくい。
【0012】
(B)成分は、前記核粒子にマグネシウム化合物を被覆することにより調製される。
核粒子にマグネシウム化合物を被覆する方法(マグネシウム被覆非晶質シリカの製造方法)に関しては、特に限定されるものではなく、公知の被覆方法が採用できる。
具体例を挙げると、(B)成分は、たとえば以下のような方法で製造することができる。
まず、前記核粒子を、そのpHが10以下の条件下に水性スラリーとする。次いで、この水性スラリーに、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硝酸マグネシウム等のマグネシウム酸化物、水酸化物、マグネシウム塩の少なくとも一種以上を添加し、ミキサー等により攪拌、解砕し、非晶質粒子が分散相、添加マグネシウム塩又は水酸化物等の少なくとも一部が溶液相中に溶解して存在する分散液を調製する。
その後、この分散液を常圧もしくは加圧下に加熱処理して、核粒子と上記マグネシウム塩、又は水酸化物等とを反応させ、粒子表面に被覆層を形成させる。反応終了後、粒子固形分を濾過水洗し、乾燥した後300℃乃至800℃で焼成してマグネシウム被覆粒子を製造する。
この製造方法により得られるマグネシウム被覆非晶質シリカは、スラリー分散相として存在する核粒子の表面と、添加したマグネシウム化合物、例えばMg(OH)とが反応により部分的に結合した形態の被覆層が形成されていることが顕著な特徴である。
【0013】
上記製造方法において、水性スラリーの固形分濃度は特に臨界的ではないが、通常固形分濃度が2〜50質量%のものが使用され、好ましくは5〜30質量%である。
また、上記製造方法において、該スラリーのpHは10以下に保たれる。pHが10を越えると、分散媒中に溶解したMg(OH)等の粒子表面への沈着付着が十分に行なわれず良好な被覆層を形成することができない。スラリーのpHが10を越える場合は、酸等を加えてpHを10以下に調節する。
また、上記製造方法において、被覆形成反応は、常圧下においても又加圧下においても実施することができるが、常圧で実施する場合は、該スラリーに水酸化マグネシウムを添加後、ミキサー等により分散液を攪拌、解砕し、これを通常30分程度放置して熟成する。その後、分散液を攪拌下で50℃乃至200℃の温度に昇温し、反応を遂行させる。反応時間は、温度その他の条件にもよるが、通常1乃至10時間で終了する。反応終了後このようにして得た被覆粒子スラリーを取り出し、濾過水洗し、乾燥した後、前記した温度範囲で焼成して最終被覆粒子とする。
また、加圧下に反応を行なわせる場合は、オートクレーブ内等で150℃程度に昇温して反応を終了させる。通常加圧下の反応時間は0.5乃至5時間程度で終了する。以後は常圧法と同様に処理する。加圧下における反応の場合は、必ずしも熟成を必要としない。
【0014】
本発明において、(B)成分は、細孔容積が0.05ml/g以上であることが好ましく、0.05〜10ml/gであることがより好ましい。細孔容積が上記範囲内であると、(A)成分由来の不快臭の低減効果や使用感に特に優れ、しかも害虫忌避組成物中での分散性も良好である。
また、(B)成分は、平均粒子径が0.5〜40μmであることが好ましく、1〜20μmであることがより好ましい。平均粒子径が上記範囲内であると、肌に使用した際の感触が良好である。
また、(B)成分は、吸油量が40ml/100g以上であることが好ましく、40ml〜500ml/100gであることがより好ましい。吸油量が前記範囲内であると、(A)成分分由来の不快臭低減効果の持続性が特に良好である。
尚、本発明において、(B)成分の細孔容積は、カルロエルバ社製Sorptomatic Series 1800を使用し、BET法を用いることによって確認することができる。
平均粒子径は、コールターカウンター(コールターエレクトロニクス社製TA−II型)法によりアパチャーチューブ20μm、50μmを用いて測定することによって確認することができる。
吸油量は、JIS K−5101.19に準じて測定することによって確認することができる。
【0015】
本発明において好ましく用いられる(B)成分としては、特開平6−100795号公報に記載のマグネシウム化合物被覆粒子(例えば実施例7、11に記載の粒子等)、特開平7−138140号公報に記載のマグネシウム化合物被覆粒子等が挙げられる。
また、球形のマグネシア被覆非晶質シリカとして、ミズパールM-5015(製品名:水澤化学工業株式会社製)、ミズカライフP−1(製品名:水澤化学工業株式会社製)等が市販されており、好ましく使用することができる。
【0016】
害虫忌避組成物中、(B)成分の配合量は、3〜20(質量(W)/体積(V))%が好ましく、5〜15(W/V)%がより好ましい。害虫忌避組成物中の(B)成分の配合量が3(W/V)%以上であると、害虫忌避効果の持続性、(A)成分に由来する不快臭の低減効果が向上する。また、該配合量が20(W/V)%以下であると、当該害虫忌避組成物を肌に適用した際に白化等が生じにくく、使用感が良好である。
【0017】
また、害虫忌避組成物中、(A)成分と(B)成分との含有量の比(質量比)は、(A)成分/(B)成分=0.1/1〜1/0.1の範囲内であることが好ましく、0.5/1〜1/0.5の範囲内であることがより好ましい。(A)成分/(B)成分の値が0.1/1以上であると当該害虫忌避組成物を肌に適用した際に白化等が生じにくく、使用感が良好である。また、(A)成分/(B)成分の値が1/0.1以下であると、(A)成分に由来する不快臭の低減効果が向上し、ベタつきも生じにくい。
【0018】
本発明の害虫忌避組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、(A)成分および(B)成分以外の他の成分を含有してもよい。
該他の成分としては、特に限定されず、従来公知の添加剤であってよい。該添加剤としては、例えば、溶媒、分散剤、香料、パルミチン酸セチルやミリスチン酸イソプロピル、メチルポリシロキサンなどの潤滑剤、殺菌剤、色素、保湿剤、紫外線吸収剤、紫外線遮断剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの添加剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
本発明の害虫忌避組成物は、特に、分散剤を含有することが好ましい。これにより、(A)成分や(B)成分を害虫忌避組成物中に均一に分散させることができる。ただ、当該害虫忌避組成物について、長期間保存することを要しないような場合には、分散剤は必ずしも配合しなくてよい。
分散剤としては、各種の界面活性剤を用いることができ、例えば、トリイソステアリン酸POE(エチレンオキシド付加)グリセリル、POE(5モル〜40モル エチレンオキシド付加)セチルエーテル酸、POP(5モル〜20モル プロピレンオキシド付加)セチルエーテル酸、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(10モルから40モル)硬化ヒマシ油、トリポリオキシエチレンアルキルエーテル、1,3−ブチレングリコール、デカグリセリンモノオレエート、ジオレイン酸プロピレングリコール、ポリオキシエチレン(16モルから20モル)ステアリル酸アミド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸が例示でき、その他にもステアリルアルコール、ポリビニルピロリドン、ラノリン脂肪酸が例示できる。これらの分散剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
害虫忌避組成物中の分散剤の配合量は、0.2〜10(W/V)%が好ましく、0.5〜5(W/V)%がより好ましい。分散剤の配合量が上記範囲の下限値以上であると、(B)成分の分散性が向上し、下限値以下であると、ベタつきが生じにくい。
【0020】
本発明の害虫忌避組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)成分以外の害虫忌避成分を含有してもよい。該害虫忌避成分としては、蚊、アブ、ブユ、ノミなどの吸血性昆虫などの害虫に対して忌避作用あるいは吸血阻害作用を有するものとして従来公知の合成又は天然の各種化合物を任意に使用できる。具体的には、例えば、α−ピネン、ユーカリプト−ル、カンファ、リナロ−ル、p―メンテン−3,8−ジオール、テルペノール、DEET、2−エチル−1,3−ヘキサンジオ−ル等や、天然物では、桂皮、樟脳、シトロネラ、クロ−バ、月桂樹、松、アカモモ、ユ−カリなどから取られる精油、抽出液等が例示できる。これらは1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0021】
本発明の害虫忌避組成物は、常法によって製造することができ、通常、溶剤中に(A)成分、(B)成分および任意の成分を分散または溶解させて製造される。具体例としては、例えば、前記溶剤中に(A)成分を混合分散させた後、さらに分散剤や香料などの添加剤を加えて混合分散させ、その後、(B)成分を加えて混合分散させる方法などによって製造できる。
溶剤としては、当該液体外用剤の使用形態等に合わせて適宜選択すればよく、特に限定されないが、例えば、低級アルコール、低級アルコールを香料などで変性した変性アルコール、水などから選ばれる1種または2種以上が例示できる。
低級アルコールは、特にエタノールおよび/またはイソプロパノールが好ましい。
【0022】
本発明の害虫忌避組成物は、外用剤として肌に直接適用される。
該外用剤の剤型および使用方法は、特に限定されない。たとえば、害虫忌避組成物をそのまま液剤として用いてもよく、常法により液剤以外の剤型として用いてもよい。液剤以外の剤型としては、たとえば軟膏剤、ゲル剤、エアゾール剤、シート剤等が挙げられる。
【0023】
たとえば剤型としてエアゾール剤を採用する場合は、従来公知のエアゾール容器内に、当該害虫忌避組成物を、噴射ガスとともに充填することにより害虫忌避エアゾール剤を製造できる。
噴射ガスとしては、特に制限はなく、例えば、液化石油ガス(LPG)、プロパン、プロピレン、n−ブタン、イソブタン、n−ブチレン、イソブチレン、ブタジエン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、ジメチルエーテルなどが挙げられ、これらから選ばれた1種または2種以上の物を用いることができる。上記の中でもLPG、ジメチルエーテル、イソペンタンを用いることが好ましい。また、環境面および安全面から、炭酸ガスや窒素ガス等を使用することもできる。
害虫忌避組成物および噴射ガスは、噴射物中における(害虫忌避組成物/噴射ガス)の比(V/V)が5/95〜50/50となるように充填されることが好ましく、10/90〜40/60(V/V)となるように充填されることがより好ましい。
【0024】
図1に、害虫忌避エアゾール剤の一例を説明する概略断面図を示す。また、図2に、図1に示す害虫忌避エアゾール剤の上部の概略拡大断面図を示す。
本例のエアゾール剤1は、エアゾール容器2の円筒状の本体21に害虫忌避組成物10と噴射ガスとが充填されてなるものである。
エアゾール容器2には、図1に示すように、バルブ3が備えられている。バルブ3は、図2に示すように、ヘッド4とステム5とガスケット5aとハウジング6とチューブ7とを有しており、本体21の上部に設けられたカップ状の接続部材32によって本体21に取り付けられている。
図1および図2に示すように、ヘッド4は、本体21の上部から突出するようにステム5の上部に取り付けられており、使用者が図1および図2に示す状態からヘッド4を押下げる操作を行うことにより、バルブ3の操作部として機能するようにされている。ヘッド4の側面には、外部に向けて害虫忌避組成物10と噴射ガスとからなる噴射物を噴射する噴射ノズル41が備えられている。
ステム5は、図1および図2に示すように、筒状に形成されており、ヘッド4が押下げられるとともに押下げられ、ヘッド4の噴射ノズル41に噴射物を送り込むものである。ステム5は、内部に噴射物が通過する流路52を有し、ステム5の外周面から流路52に連通するように、少なくとも1つのステム孔51が形成されている。
ガスケット5aは、図2に示すように、ステム5の周囲を囲むようにして設けられている。また、図2においては、ガスケット5aは、ステム5の外周面のステム孔51を塞ぐように配置されている。しかし、ガスケット5aの位置は、ヘッド4を押下げるのに伴ってステム5が降下されることにより、ステム孔51の位置と上下方向にずらされて、ステム5の内部の流路52とハウジング6の内部とが連通されるようになっている。
ハウジング6は、図2に示すように、ステム5の下部に接続され、接続部材32に嵌め込まれるように取り付けられている。また、ハウジング6には、図2に示すように、横孔61と下孔62とが備えられている。横孔61は、ハウジング6の側面に開口して設けられ、下孔62は、ハウジング6の下端に開口して設けられている。
チューブ7は、ハウジング6の下孔62と連通するように取り付けられており、ハウジング6の内部と本体21内の液相部とを連通させるように配されている。
【0025】
また、たとえば剤型としてシート剤を採用する場合は、たとえば、当該害虫忌避組成物を、シート状基材に含浸させる方法、シート状基材上に展延する方法等により害虫忌避シート剤を製造できる。該シート剤を肌に接触させることにより、当該害虫忌避組成物を肌に塗布できる。
シート剤におけるシート状基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、天然繊維又は合成繊維の不織布又は織布、紙などが挙げられる。
前記天然繊維としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、綿、パルプ、麻等の天然セルロース系繊維、パルプより得られるビスコースレーヨン、銅アンモニウムレーヨン、溶剤紡糸されたレーヨンであるリヨセル、テンセル等の再生セルロース系繊維、キチン、アルギン酸繊維、コラーゲン繊維等の再生繊維などが挙げられる。
前記合成繊維としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリウレタン系繊維などが挙げられる。
前記天然繊維及び前記合成繊維は、それぞれ1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記シート状基材の製造方法としても、特に制限はなく、目的に応じて、例えば公知の製造方法を用いて製造することができる。また、前記シート状基材としては、市販品を使用することもできる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0027】
<実施例1〜9、比較例1〜5>
表1〜2に示す各成分を混合して害虫忌避組成物を調製した。
【0028】
得られた害虫忌避組成物を用いて以下の評価を行った。その結果を表1〜2に併記する。
[評価]
(1)忌避効果の持続性:
まず、以下の手順でエアゾール剤およびシート剤を製造した。
[エアゾール剤の製造]
害虫忌避組成物と噴射ガスとを、噴射物中における害虫忌避組成物と噴射ガスとの比(害虫忌避組成物/噴射ガス)は30/70(V/V)となるように充填してエアゾール剤を得た。
噴射ガスとしては、圧力0.15MPaのLPGを用いた。
エアゾール容器としては、バルブのステム孔が1個で内径が0.61mm、ハウジングの下孔の内径が1.58mm、ハウジングの横孔の内径が0.76mmのものを使用した。
[シート剤の製造]
害虫忌避組成物を不織布(コットン100%スパンレース不織布(60g/m)(ユニチカ(株)製)に含浸倍率3倍で含浸させてシート剤を得た。
【0029】
得られたエアゾール剤およびシート剤を用いて、忌避効果の持続性を下記に示す手順で評価した。
パネラー(ヒト)の前腕(100cm)に対して、エアゾール剤の場合は約15cmの距離から約1秒間ムラ無く噴射することにより、また、シート剤の場合は各シート剤を皮膚に直接貼り付けた後剥離して、各害虫忌避組成物を塗布した。
塗布後、下記試験条件で、所定の測定時間毎に、供試虫に対する忌避率(%)を、式:{(20頭−吸血数)/20頭}×100により算出し、下記判定基準で忌避効果の持続性を評価した。
<試験条件>
供試虫:ヒトスジシマカメス成虫 20頭/ケージ
測定時間:4、6、8、10時間
<判定基準>
◎:10時間後の忌避率が90%以上。
○:8時間後の忌避率が90%以上、10時間後の忌避率が90%未満。
△:6時間後の忌避率が90%以上、8時間後の忌避率が90%未満。
×:4時間後の忌避率が90%未満。
【0030】
(2)不快臭のなさ:
パネラーの手の甲にスポイトで害虫忌避組成物1滴を直接塗布し、以下に示す判定基準に基づいて官能評価した。
<判定基準>
◎:ほとんど不快臭がない。
○:やや不快臭がある。
△:不快臭がある。
×:著しい不快臭がある。
【0031】
(3)ベタつきのなさ:
5人のパネラーの手の甲にスポイトで害虫忌避組成物1滴を直接塗布して官能評価を行い、その結果から、以下に示す判定基準に基づいてベタつきのなさを評価した。
<判定基準>
◎:4人以上がベタつかないと評価した。
○:3人がベタつかないと評価した。
△:2人がベタつかないと評価した。
×:1人以下がベタつかないと評価した。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【0034】
表1〜2中、害虫忌避組成物の組成は、合計を100(W/V)%で示した。
マグネシウム被覆シリカとしては、ミズパールM−5015(水澤化学工業株式会社製、マグネシア被覆非晶質シリカ、球形粒子、被覆量(MgO換算):8%、細孔容積:0.86mL/g、吸油量:140mL/100g、平均粒子径:6.9μm)を用いた。
トリステアリン酸POEグリセリル(20EO)は、エチレンオキサイドの平均付加モル数が20のトリステアリン酸POEグリセリルである。
【0035】
表1に示すように、実施例1〜9の害虫忌避組成物は、いずれも、忌避効果の持続性、不快臭のなさ、ベタつきのなさの全ての評価結果が○または◎であった。
一方、表2に示すように、(B)成分を配合しなかった比較例1〜2は、忌避効果の持続性、不快臭のなさ、ベタつきのなさの全ての評価結果が×であった。
また、(A)成分を配合しなかった比較例3は、忌避効果の持続性が×であった。
また、(B)成分の代わりに無水ケイ酸を配合した比較例4は、不快臭とベタつきの評価が△であり、(B)成分の代わりに酸化マグネシウムを配合した比較例5は全ての評価結果が×であった。
【0036】
<実施例10>
実施例1において、ミリスチン酸イソプロピルをメチルポリシロキサンに変更した以外は同様にして害虫忌避組成物を調製した。
得られた害虫忌避組成物を用いて前記と同じ評価を行ったところ、実施例1と同様、全ての評価結果が◎であった。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】害虫忌避エアゾール製品の一例を説明するための図である概略図である。
【図2】図1に示す害虫忌避エアゾール製品の一部を説明するための拡大断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1…害虫忌避エアゾール剤、2…エアゾール容器、3…バルブ、4…ヘッド、5…ステム、5a…ガスケット、6…ハウジング、7…チューブ、10…害虫忌避組成物、21…本体、32…接続部材、41…噴射ノズル、51…ステム孔、52…流路、61…横孔、62…下孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ネロリドールおよび/またはメチルウンデシルケトンと、(B)マグネシウム被覆非晶質シリカとを含有することを特徴とする害虫忌避組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−132653(P2009−132653A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310929(P2007−310929)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】