説明

害虫防除装置

【課題】捕虫器を用いた害虫防除装置において、捕虫器の設置位置や天井面の高さに拘わらず、室内の下方を飛翔する虫も効果的に誘引・捕獲できるようにする。
【解決手段】害虫防除装置1は、虫2を誘引する光源3及び虫2を捕獲する捕獲部4を有する捕虫器5を備える。この捕虫器5は、光源3及び捕獲部4を収納する筐体50と、この筐体50に設けられ、光源3からの光を出射する開口部51と、を備える。また、害虫防除装置1は、開口部51の上端から前方へ突出した遮蔽部6を備え、この遮蔽部6は、開口部51から出射される光のうち、上方へ向かう光を遮蔽して、害虫防除装置1の下方向へ反射する。これにより、捕虫器5の設置位置等に拘わらず、室内の下方を飛翔する虫が効果的に誘引され捕虫器5で捕獲される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源により誘引された害虫を捕獲して、これらの虫による被害を防除する害虫防除装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物内に侵入した飛翔昆虫は、産業や生活において様々なトラブルの要因となる。例えば、食品工場や飲食店では、虫が商品等に混入したり、小売店では、虫が店舗内で飛びまわって買い物客等に不快感を与えることがある。
【0003】
そのため、従来から、建物内に侵入した飛翔昆虫を捕獲して、これらの虫による被害を防除するために、様々な捕虫器が提供されている。例えば、特許文献1及び特許文献2に示されるように、害虫を誘引する光を出射する光源を備え、光源にから出射される光に誘引された害虫を捕獲する捕虫器が知られている。
【0004】
上記特許文献1及び特許文献2に示される捕虫器は、例えば、図7に示されるように、壁面の比較的天井に近い位置に設置される。この種の捕虫器105は、一般的に、光源103からの光の多くが天井面方向に出射されるように配置される。ハエ類をはじめとする多くの飛翔昆虫は、上方に向かって飛ぶ習性があり、天井面に定位することが多いことから、捕虫器105を天井面近傍に設置することにより、これら天井面に定位する虫が効果的に捕獲されることが期待される。また、天井面方向に光が出射されるようにすると、光が天井面で反射して室内の下方にも届くようになり、下方を飛翔する虫も誘引することができるようになり、虫の誘引効果が高まる。
【特許文献1】特開2006−149252号公報
【特許文献2】特公平7−55121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1及び特許文献2に示される捕虫器は、光源のランプ交換や粘着シートのメンテナンス等のため、一般的には、人の手が届く高さに設置される。そのため、例えば、これらの捕虫器が天井の高い部屋に設置されたときは、光が天井面で反射され難くなるので、室内の下方には光が十分に届かなくなる。飛翔昆虫の中には、飛翔能力が低い又はその習性のため、床面の近くしか飛翔しない昆虫も一定数存在する。従って、上記の特許文献1及び特許文献2に示される捕虫器のように、高い位置に設置された捕虫器では、下方を飛翔する虫に対する誘引効果が低くなる。また、捕虫器が天井面の近傍に設置されると、天井面で光が反射して室内の下方にも光を向けることができるが、光が照射される天井面部分(図中の斜線部に示す)に集中的に虫が誘引されてしまい、これらの虫が天井面に衝突等することによって天井が汚れることがある。
【0006】
本発明は上記課題を解決するものであり、捕虫器の設置位置や天井面の高さに拘わらず、室内の上方及び下方を飛翔する虫を効果的に誘引して、捕獲することができ、かつ光に誘引された虫による天井の汚れが抑制される害虫防除装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、虫を誘引する光源と、前記光源により誘引された虫を捕獲する捕獲部と、前記光源及び捕獲部を収納する筐体と、前記筐体に設けられ、前記光源からの光を出射する開口部と、を備えた捕虫器を用いた害虫防除装置であって、前記開口部の上端から前方へ突出し、前記開口部から出射される光のうち、上方へ向かう光を遮蔽する遮蔽部を備えたものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の害虫防除装置において、前記遮蔽部の表面は、前記開口部から出射される光の一部又は全部を反射する反射特性を有するものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の害虫防除装置において、前記捕虫器は、室開口部上方に設置され、前記遮蔽部の横幅は、室開口部の横幅よりも大きく形成されているものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の害虫防除装置において、前記遮蔽部には、貫通孔が形成されているものである。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の害虫防除装置において、前記遮蔽部の先端部は、該遮蔽部の基部よりも上方に位置するものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、捕虫器の開口部から出射される光のうち、上方へ向かう光が遮蔽部により遮蔽され、その一部は下方向へ反射する。そのため、捕虫器の設置位置や天井面の高さに拘わらず、害虫防除装置の下方にも光が届くので、室内の下方を飛翔するような虫も効果的に誘引される。また、天井面へ向かう光が遮蔽されているので、虫が天井面に誘引されて衝突するといったこともなく、天井面が汚れることもない。
【0013】
請求項2の発明によれば、害虫防除装置の下方にも多くの光が届くようになるので、下方を飛翔する虫に対する誘引効果が高まる。
【0014】
請求項3の発明によれば、室開口部から室内へ侵入した直後に、多くの虫を誘引して捕獲できる。また、捕虫器から上方に出射された光が、遮蔽部により反射されて、害虫防除装置の下方にも届き、虫の誘引効果が更に高まる。
【0015】
請求項4の発明によれば、遮蔽部に照射された光の一部が、遮蔽部を透過して、害虫防除装置の上方にも届くようになるので、害虫防除装置の直上を飛翔する虫を効果的に誘引することができる。
【0016】
請求項5の発明によれば、遮蔽部によって光が遮られる範囲が狭くなり、より広い範囲に光が照射されるようになり、虫の誘引効果が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の第1の実施形態に係る害虫防除装置について、図1及び図2を参照して説明する。本実施形態の害虫防除装置1は、虫2を誘引する光源3及び光源3により誘引された虫2を捕獲する捕獲部4を有する捕虫器5を備える。この捕虫器5は、光源3及び捕獲部4を収納する筐体50と、この筐体50に設けられ、光源3からの光を出射する開口部51と、を備える。また、本実施形態の害虫防除装置1は、捕虫器5の開口部51から出射される光のうち、上方へ向かう光を遮蔽する遮蔽部6を備える。なお、図中、光源3から出射される光を破線矢印で示している。
【0018】
捕虫器5は、汎用の捕虫器であり、光源3、捕獲部4及び筐体50を備え、筐体50には光源3の光を出射するための開口部51が形成されておれば、その構成や形状について、特に限定されるものではない。また、光源3は、汎用の捕虫器用蛍光灯(UV-Aランプ)等が用いられ、好ましくは誘虫効果の高い波長が略340〜380nmの光を出射する光源が用いられる。捕獲部4も、特に限定されないが、本実施形態の害虫防除装置1は、室内に適用されるため、電撃殺虫式等ではなく、光源3に誘引された害虫2を粘着シートにより捕獲するタイプの捕獲部が好ましい。
【0019】
遮蔽部6は、捕虫器5の開口部51の上端から前方へ突出するように配置された薄板材である。遮蔽部6は、捕虫器5の筺体50と一体的に形成されていてもよいが、メンテナンス等のために取り外し可能とされていることが望ましい。遮蔽部6に用いられる薄板材は、所定の強度を備え、光を透過しない材質から成るものであれば特に限定はなく、例えば、ステンレス板や樹脂材料から成る薄板が用いられる。
【0020】
本実施形態の害虫防除装置1は、前方へ突出した遮蔽部6が人の往来の妨げとならないように、少なくとも人の背丈よりも高い位置に設置されるが、光源3の交換や捕獲部4のメンテナンス等が可能なように、ユーザの手に届く高さ位置に設置されることが望ましい。また、害虫防除装置1は、好ましくは室開口部7の近傍に設置される。こうすると、室内に侵入した虫2が速やかに捕獲されるので、虫2が室内を飛翔して様々な害を与えることが予防される。
【0021】
本実施形態の害虫防除装置1は、捕虫器5の開口部51から出射される光のうち、上方へ向かう光が遮蔽部6により遮蔽され、その一部は下方向へ反射する。そのため、捕虫器5の設置位置や天井面の高さに拘わらず、光源3から出射された光が、室内の下方にも届き、これら室内の下方を飛翔する虫2が効果的に誘引される。また、遮蔽部6には光が多く照射されるので、上方へ向かう虫2は、遮蔽部6の周囲に定位し、捕獲部4により捕獲されやすくなる。更に、天井面へ向かう光が遮蔽されているので、虫が天井面に衝突等することによって天井が汚れることもない。
【0022】
遮蔽部6の表面は、好ましくは、開口部51から出射される光の一部又は全部を反射する反射特性を有するように形成されていることが望ましい。このように、遮蔽部6の表面が光の一部又は全部を反射するようにするためには、例えば、遮蔽部6がアルミ板により形成されてもよいし、樹脂材料等で形成された遮蔽部6の表面に、アルミ蒸着又は光反射率の高い白色塗料の塗布といった表面加工処理が施されてもよい。
【0023】
以下、本実施形態の害虫防除装置1による害虫防除効果を調べるために行われた捕虫実験について説明する。この捕虫実験は、室外から飛翔昆虫が侵入可能となっている室内で、その壁面の同じ高さ位置に、捕虫器5に光反射率の低い黒色の遮蔽部6を備えた害虫防除装置1(実施例1)、捕虫器5に光反射率の高い白色の遮蔽部6を備えた害虫防除装置1(実施例2)及び遮蔽部6を備えない捕虫器5(比較例1、比較例2)を夫々設置し、所定時間経過後、夫々の捕獲部4に捕獲された虫の捕虫数を係数した。なお、上記実施例1及び比較例1について、また、上記実施例2及び比較例2について同時期に実験が行われた。その結果を表1に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
表1に示される結果において、黒色の遮蔽部6を備えた害虫防除装置1(実施例1)及び白色の遮蔽部6を備えた害虫防除装置1(実施例2)は、遮蔽部6を備えない捕虫器5(比較例1、比較例2)に対して、夫々3倍以上の捕虫数を示しており、遮蔽部6を備えることにより、効果的に虫を捕獲できることが分かった。
【0026】
また、上記の結果により、白色の遮蔽部6を備えた害虫防除装置1(実施例2)が、黒色の遮蔽部6を備えた害虫防除装置1(実施例1)よりも捕虫数が多くなることが示された。白色の遮蔽部6は、黒色の遮蔽部6よりも、光源3から出射された光を多く反射することができる。そのため、害虫防除装置1に白色の遮蔽部6が備えられると、害虫防除装置1の下方にも多くの光が届くようになるので、下方に居る飛翔昆虫に対する誘引効果が高まる。
【0027】
本の実施形態では、壁面設置型の捕虫器5に遮蔽部6を設けた例を示したが、以下に本実施形態の変形例について図3を参照して説明する。この変形例は、上記の遮蔽部6を、据え置き型の捕虫器5の上部に設けたものである。この変形例による害虫防除装置1が、例えば、床面上といった低い位置に置かれると、遮蔽部6が上方へ出射される光を遮蔽するので、虫を誘引する光が、人の目に入らないようにしつつ、床面付近に居る虫2を効果的に捕獲することができる。
【0028】
次に、本発明の第2の実施形態に係る害虫防除装置について、図4を参照して説明する。本実施形態の害虫防除装置1は、捕虫器5が、室開口部7上方に設置され、遮蔽部6の横幅が、室開口部7の横幅よりも大きく形成されている。遮蔽部6は、好ましくは捕虫器5を取り囲むように形成されている。このように、捕虫器5が、室内への虫2の侵入経路である室開口部7の上方に設けられると、室開口部7から室内へ侵入した直後に多くの虫2を誘引して捕獲できる。また、虫2を遮蔽部6の周囲に定位させることができるので、虫2の捕獲効率が向上するだけでなく、虫2が室内を飛び回るのを抑制できる。更に、捕虫器5の上方に遮蔽部6が設けられることにより、捕虫器5から上方に出射された光が遮蔽部6により反射されて、捕虫器5の下方にも届き、虫2の誘引効果が更に高まる。
【0029】
続いて、本発明の第3の実施形態に係る害虫防除装置について、図5(a)(b)を参照して説明する。本実施形態の害虫防除装置1において、遮蔽部6には、貫通孔61,62が形成されている。他の構成は上記第1の実施形態と同様である。貫通孔61,62は、図5(a)に示されるように、多数の円形孔が設けられてもよいし、図5(b)に示されるように、線状の切込みが複数設けられてもよい。その形状及び個数は、天井面への光の照射を遮蔽し、害虫防除装置1の下方へ光を反射する遮蔽部6の機能を損なわない程度に、害虫防除装置1の設置環境や遮蔽部6の大きさや等に応じて適宜に決定される。
【0030】
実施形態の害虫防除装置1によれば、遮蔽部6に照射された光の一部が、遮蔽部6を透過して、害虫防除装置1の上方にも届くようになるので、害虫防除装置1の直上を飛翔する虫2を効果的に誘引することができる。
【0031】
次に、本発明の第4の実施形態に係る害虫防除装置について、図6(a)(b)を参照して説明する。本実施形態の害虫防除装置1では、遮蔽部6の先端部63が、遮蔽部6の基部64よりも上方に位置するように配置されている。他の構成は上記第1の実施形態と同様である。本実施形態の害虫防除装置1は、遮蔽部6によって光が遮断される範囲が狭くなるので、より広い範囲に光が照射されるようになり、虫2の誘引効果が向上する。また、図6(b)に示されるように、遮蔽部6の先端部63が下方に折り曲げられるように形成されていてもよい。こうすると、遮蔽部6の下面に誘引された虫2がより効率的に捕獲されるようになる。
【0032】
なお、本発明は、上記の構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、開口部50の一部に、光源3から出射された光うち、特定の波長の光をカットする光フィルタ等が設けられ、誘虫光特有の光の青みを低減させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る害虫防除装置の斜視図。
【図2】同装置の設置例を示す斜視図。
【図3】同装置の変形例を示す斜視図。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る害虫防除装置の斜視図。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る害虫防除装置の斜視図。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る害虫防除装置の斜視図。
【図7】従来の捕虫器の設置例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0034】
1 害虫防除装置
2 虫
3 光源
4 捕獲部
5 捕虫器
50 筺体
51 開口部
6 遮蔽部
7 室開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
虫を誘引する光源と、前記光源により誘引された虫を捕獲する捕獲部と、前記光源及び捕獲部を収納する筐体と、前記筐体に設けられ、前記光源からの光を出射する開口部と、を備えた捕虫器を用いた害虫防除装置であって、
前記開口部の上端から前方へ突出し、前記開口部から出射される光のうち、上方へ向かう光を遮蔽する遮蔽部を備えたことを特徴とする害虫防除装置。
【請求項2】
前記遮蔽部の表面は、前記開口部から出射される光の一部又は全部を反射する反射特性を有することを特徴とする請求項1に記載の害虫防除装置。
【請求項3】
前記捕虫器は、室開口部上方に設置され、前記遮蔽部の横幅は、室開口部の横幅よりも大きく形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の害虫防除装置。
【請求項4】
前記遮蔽部には、貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の害虫防除装置。
【請求項5】
前記遮蔽部の先端部は、該遮蔽部の基部よりも上方に位置することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の害虫防除装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−154519(P2008−154519A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347391(P2006−347391)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】