説明

害虫駆除用植物浸漬を行う水耕栽培方法及び装置

【課題】 害虫駆除のため植物を培養液中に浸漬したとき植物の根を安全に保護すると共に、培養液の量を従来よりも減らし、さらに植物の根による空気中の酸素吸収を活溌化させる。
【解決手段】
培養液入りの上面開口箱形の浸漬用外槽内に、底の浅い上面開口扁平箱形の栽培用内槽を上記培養液面上で昇降自在に支持し、
上記内槽の底板上に植物を、その根を該底板上に展延する状態で、植設し、
上記植物植設内槽を上記外槽内の培養液中に沈下及び培養液面上に浮上させる内槽浮沈駆動装置を備え、
上記内槽上の植物の根に培養液を供給する培養液供給装置を設けた、
害虫駆除用植物浸漬装置つき水耕栽培装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、栽培する植物に付着した害虫を駆除するための植物浸漬を行う水耕栽培方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
培養液を入れた栽培槽内の液面上に、植物を植えた定植パネル(以下植物植設パネルという)を支持すると共に、根を培養液に浸した水耕栽培において、本発明者は、さきに、植物に付着した害虫を駆除する方法として、水耕栽培の途上において植物植設パネルを所定濃度の培養液中に所定の長時間浸漬して害虫を窒息死させる方法、及び植物植設パネルを培養液中に短時間づつ繰り返し浸漬して植物から害虫を離脱させ、ついで培養液中に沈下し又は液面に浮遊する害虫を回収して処分する方法を提案し、それと共に水耕栽培を行っている植物植設パネルを必要に応じて培養液中に浸漬し、処理後は元の水耕栽培に戻すことができる害虫駆除用植物浸漬装置つき水耕栽培装置を数多く提案してきた。
【0003】
しかし、従来提案されたいずれの方法及び装置も、植物の根が培養液中に長く垂れ下っているため、害虫駆除のため植物植設パネルを培養液中に浸漬したとき、根を損傷する危険があり、これを防止するため栽培槽を深くし、培養液を栽培に必要な液量を超えて大量に注入しておく対策をとっているが、培養液が高価であるため経済的に不利益となる欠点があり、しかも植物の根群が培養液の流れを阻害する結果、培養液からの酸素吸収が不足するため、培養液中に酸素を補給する補助装置が別途必要となっていた。
【特許文献1】特許第3000446号
【特許文献2】特許第3235024号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願第1発明は、害虫駆除のため植物を培養液中に浸漬したときに植物の根を安全に保護すると共に、植物浸漬に使用される培養液の液量を従来よりも減らし、さらに植物の根による空気中の酸素吸収を活溌させる、害虫駆除用植物浸漬を行う水耕栽培方法を提供することを課題とし、
【0005】
本願第2発明は、上記第1発明の課題に加え、通常の培養液による水耕栽培において、必要に応じ植物の生長促進に有効な特別培養液を所要時間供給することもできる水耕栽培方法を提供することを課題とする。
【0006】
本願第3発明は、上記第1発明を有効に実施することのできる害虫駆除用植物浸漬装置つき水耕栽培装置を提供することを課題とし、
【0007】
本願第4発明は、上記第3発明の課題に加え、夏期の熱暑時に植物の冷涼化を可能にする水耕栽培装置を提供することを課題とする。
【0008】
本願第5発明は、上記第1発明の課題に加え、培養液のさらなる節減を実現することのできる水耕栽培方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本願第1発明は、
培養液を入れた外槽内に、底の浅い内槽を上記培養液面上で昇降自在に支持し、
上記内槽の底板上に植物を、その根を該底板上に展延した状態で、植えると共に、上記植物の根に上記外槽内の培養液を供給して栽培を行い、
必要に応じ、上記植物植設内槽を上記外槽の培養液中に沈下し、上記植物を所要時間培養液中に浸漬して害虫駆除を行う、
害虫駆除用浸漬を行う水耕栽培方法を提案し、
【0010】
本願第2発明は、
上記第1発明において、アミノ酸、ビタミン等を含む特別培養液を予め用意し、
必要に応じ、上記内槽内の植物に、上記外槽内の培養液に代え、上記用意された特別培養液を供給し、所要時間特別培養液による栽培を継続した後、上記内槽内に残る特別培養液を取り出し、ついで元の外槽内培養液による栽培に戻す、
水耕栽培方法を提案する。
【0011】
また、本願第3発明は、
培養液入りの上面開口箱形の浸漬用外槽内に、底の浅い上面開口扁平箱形の栽培用内槽を上記培養液面上で昇降自在に支持し、
上記内槽の底板上に植物を、その根を該底板上に展延する状態で、植設し、
上記植物植設内槽を上記外槽内の培養液中に沈下及び培養液面上に浮上させる内槽浮沈駆動装置を備え、
上記内槽上の植物の根に培養液を供給する培養液供給装置を設けた、
害虫駆除用植物浸漬装置つき水耕栽培装置を提案し、
【0012】
本願第4発明は、
上記第3発明における内槽の底板に複数の孔を設けると共に、該内槽を、その底板と培養液面との間に小間隔をあけて、支持し、
上記外槽内の一側部に、上記培養液に波を生起させる造波装置を配設し、該造波装置により連続的に生起される波を上記小間隔内を通って他側部へ伝播させ、該伝播波を上記内槽底板の複数の孔から内槽内に流入させ、
上記内槽内における上記波と衝突する位置に、該波との衝突で飛沫を発生させる飛沫発生促進体を配置し、該飛沫の気化潜熱により冷却を行う、
水耕栽培装置を提案する。
【0013】
さらに、本願第5発明は、
水を入れた外槽内に、底の浅い内槽を上記水面上で昇降自在に支持し、上記内槽の底板上に植物を、その根を該底板上に展延した状態で、植えると共に、その根に別途用意した培養液を供給して水耕栽培を行う途上において、
害虫駆除の必要に応じ、上記内槽内の培養液を取り出して保管した後、上記植物植設内槽を上記外槽内の水中に沈下して植物を所要時間水中に浸漬し、
浸漬終了後上記植物植設内槽を浮上させて元の水耕栽培に戻すと共に、上記保管されていた培養液を内槽に供給する、
害虫駆除用植物浸漬を行う水耕栽培方法を提案する。
【発明の効果】
【0014】
本願第1発明によれば、植物植設内槽を培養液中に浸漬したとき、植物の根は栽培時の状態のままで内槽にカバーされて沈下するから、根が外槽内面に触れて損傷を受けることが全くなくなり、又底の浅い内槽内の植物が、その根を底板上に展塩した状態で、植設してあるから、根の垂下長が大幅に短縮され、それにより浸漬に要する培養液の深さが従来よりも浅くて足り、その分高価な培養液を節減できるのである。しかも内槽内にある植物は多くの根を空気中に露出するから、空気中の酸素を有効に吸収することができるのである。
【0015】
本願第2発明によれば、上記第1発明の効果に加え、通常の培養液による水耕栽培において、特に生長の必要な植物に対してアミノ酸、ビタミン等を含む特別培養液を供給してその生長を促進することができ、しかも供給する特別培養液を無駄なく有効に供給することができるのである。
【0016】
本願第3発明によれば、上記第1発明の方法を有効に実施することができるのである。
【0017】
本願第4発明によれば、上記第3発明の効果に加え、発生する飛沫の気化潜熱により内槽内を冷却し、それにより夏期の熱暑時に植物を冷涼に保つことができる。
【0018】
本願第5発明によれば、上記第1発明の効果に加え、植物植設内槽の害虫駆除用浸漬は、外槽内に入れた水により行うようにしたから、高価な培養液をさらに大幅に節減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本願各発明における「内槽の底板上に植物を植える」場合には、各種繊維の不織布マット、積層マット等の繊維マットに植物を植え、この植物植設繊維マットを内槽底面上に敷きつめる方法、その他種々の方法があり、又このように植設した植物が浸漬時に内槽底板から離脱しないように、これら植設マットを、フランジ、ネット、格子等の押え材で押えておくことがよい。
又、上記「内槽浮沈駆動装置」としては、エアシリンダ等の流体圧シリンダにより内槽を昇降させるもの、内槽にエアボックスを取りつけ、該エアボックス内に空気と流体を選択的に注入してエアボックスを内槽とともに沈下、浮上させるもの、その他種々の装置が使用される。
【0020】
本願請求項6、7における、内槽底板の「複数の孔」は、波の伝播方向と直交方向に、又は伝播方向と平行に延長する複数の長孔、底板に等間隔で設けられた丸孔等がある。又、内槽内に培養液を浅く留保するため、上記各孔に該孔縁をめぐる突条を内槽内に立ち上げることが好ましい。突条の高さは、一例として5〜100mmである。
【0021】
又「造波装置」には、造波盤を培養液面上に昇降させるもの、造波板を培養液中で揺動させるもの、その他種々の構造のものが使用される。
【実施例】
【0022】
第3発明の実施例1
図1、2、3、4は、大規模水耕栽培装置に実施した例で、上面開口の横長箱形の浸漬用外槽(1)内に培養液(2)を入れ、この外槽(1)の相対する長辺がわ側壁(3)、(3)の上端面に、ブラケット(4)‥、(4)‥により浮沈駆動用エアシリンダを3基(5)‥づつそれぞれ垂直に設置し、各シリンダ(5)‥、(5)‥のピストンロッド(6)‥、(6)‥の下端に栽培用内槽(7)を固定してある。
【0023】
上記内槽(7)は、本例ではステンレス鋼板でつくられ、上記外槽(1)よりも長、短両辺を若干短くした底の浅い上面開口の横長扁平箱形のもので、その長辺がわ及び短辺がわ側壁(8)、(8)及び(9)、(9)の上端にフランジ(10)、(10)及び(11)、(11)を延出し、その長辺がわフランジ(10)、(10)上に上記シリンダ(5)‥、(5)‥のピストンロッド(6)‥、(6)‥下端を固定してある。
【0024】
上記内槽(7)の底板(12)には、図3に示すように左右に等間隔をあけて長手方向に延長する3本の線上に、それぞれ長孔(13)…、(13)…、(13)…を断続的に開設すると共に、各孔(13)…の孔縁に該孔縁をめぐる突条(14)…を内槽内がわに突設してある。上記突条(14)…の高さは本例では35mmである。
【0025】
上記長孔(13)…における突条(14)…の左右長辺がわ上端に、外側へ張り出す押えフランジ(17)(17)、…を突設し、又内槽(7)の長辺がわ側壁(8)、(8)の内側面にも同高位置に押えフランジ(17’)、(17’)を突設してある。
【0026】
上記内槽(7)の底板(12)上におくべき繊維マット(15)は、本例では多数本の繊維を互に間隙をあけて絡ませ、各絡み点を接着剤で接合してなる不織布を図4(イ)のように厚さ35mm、左右幅が上記底板(12)上の長孔(13)、(13)間隔とほぼ同幅で適宜長に裁断したものである。各繊維間の間隙は、植物の根が自由に伸展できるように設計してある。
【0027】
上記の繊維マット(15)…を、同図(ロ)のように該繊維マットとほぼ同サイズの上面開口扁平箱形で、四周壁に通孔(19)…を開設したマットケース(18)…内にそれぞれ入れ、各繊維マット(15)…に植物苗を植えたものを、上記の互に押えフランジ(17)(17)、及び(17)(17’)、…を対向させる突条(14)(14)、…間及び突条(14)、(14)と側壁(8)、(8)間にそれぞれ挿入支持させる。
【0028】
この場合、上記マット入りケース(18)…を上記突条(14)(14)、…間及び突条(14)、(14)と側壁(8)、(8)間に挿入し易くするため、上記内槽(7)の短辺がわ側壁(9)、(9)の一方又は両方の下半部を図4(ハ)に示すように開口(60)とし、該開口(60)にヒンジ(61)により蓋(62)を開閉揺動自在に取りつけると共に、閉成時に締着バックル(63)により蓋(62)を開口(60)に液密に圧着させるようにしてある。
【0029】
上記内槽底板(12)の長孔(13)…における突条(14)は、その高さを変更できるようにすることもできる。図4(ニ)に示すように、突条(14)に、該突条(14)と同形で、上端に押えフランジ(17)、(17)を有する補助突条(70)を摺動自在に嵌合すると共に、該補助突条(70)に多数開設された長溝(71)…からボルト(72)…を突条(14)に螺合し、該長溝(71)…の長さ範囲で補助突条(70)の高さを調整可能としてある。
【0030】
本例によれば、植物の根が種類によって嵩が異なるが、上記補助突条(70)の高さを変更して、根の嵩に適した培養液の量を内槽(7)底部に保留することができる。
【0031】
なお、内槽(7)の側壁(8)、(8)内面に設けた押えフランジ(17’)、(17’)も、該押えフランジ(17’)から直角に延出された脚部(73)の長溝(74)…からボルト(75)…を側壁(8)に螺合し、高さ調整可能としてある。
【0032】
第1発明の実施例
上例の装置を使用した第1発明の方法の実施例について次に説明する。図1、2の水耕栽培の状態において、植物(P)…に外槽(1)内の培養液(2)を供給する場合は、浮沈駆動用エアシリンダ(5)…の伸長駆動により、内槽(7)を培養液(2)中に降下させ、培養液が長孔(13)…を通って突条(14)…を超える位置まで降下させると、培養液が内槽(7)内に流入し、各植物(P)…に供給される。
【0033】
エアシリンダ(5)…の縮小駆動により内槽(7)を上昇させると、内槽(7)内の培養液は長孔(13)…から外槽(1)内に流出し、外槽(1)内の液面が長孔の突条(14)…より低い位置まで上昇させると、内槽(7)内に突条(14)…の高さまでの浅い培養液が残り、植物に養分を供給し続ける。植物の根の多くが液中から露出し、空気中の酸素を吸収する。以下上記の培養液供給を短時間間隔をおいて繰り返す。
【0034】
次に、植物(P)…に付着した害虫を駆除する場合は、上記エアシリンダ(5)…の伸長駆動により内槽(7)を図2仮想線のように培養液(2)中に深く沈下させ、その植物(P)全体を培養液中に所定時間浸漬し、それにより植物に付着した害虫を駆除する。
【0035】
第2発明の実施例
予め、アミノ酸、ビタミン等を含む特別培養液を予備タンク内に用意しておく。
上記第1発明の実施例と同様の装置を使用して水耕栽培を行い、その途上において、植物に特別培養液を供給する必要が生じたときは、まず、上記内槽(7)内に残っている通常の培養液を吸引ポンプ等により吸い出して外槽(1)内に戻す。
【0036】
次に、上記予備タンクの特別培養液を内槽(7)内に上記突条(14)…の高さまで供給し、該特別培養液を適宜補給しながら1時間〜1時間30分間特別培養液による栽培を継続する。
【0037】
特別栽培終了後は内槽(7)内に残る特別培養液を吸引ポンプ等により吸い出して上記の予備タンクに戻し、ついで第1発明と同様に外槽(1)内の培養液の供給及び内槽(7)の害虫駆除用浸漬を行う。
【0038】
第3発明の実施例2
本例は、培養液供給に培養液濾過循環装置を利用した例である。まず、内槽(7a)は、その底板(12a)に孔をもたないものを使用する。
図5において、内槽(7a)における図5右側の短辺がわ側壁(9a)の上端部に、外槽(1a)の短辺がわ側壁(20a)との間に開通するオーバーフロー式流出口(21a)を開設し、図5左側には、外槽(1a)の側壁(20a)外側面に循環ポンプ(22a)を設置すると共に、フレーム上の高位置に濾過器(23a)を支持し、上記ポンプ(22a)の吸入口に接続された管(24a)の先端を外槽(1a)側壁(20a)近くの培養液中に挿入すると共に、ポンプ(22a)の吐出口に接続された管(25a)の先端を上記濾過器(23a)に接続し、該濾過器(23a)の濾過液排出管(26a)の先端を上記内槽(7a)の左側端の短辺がわ側壁(9a)内側に位置させている。他の構造は図1、2、3、4と実質的に同一である。
【0039】
培養液供給作用は次のようである。ポンプ(22a)の駆動により管(24a)からの培養液吸入を開始すると、外槽(1a)内の培養液全体に吸入がわ(左方)への流れが生じると共に、管(26a)から内槽(7a)内への濾過液流入が行われると、内槽(7a)内の培養液全体にオーバーフローがわ(右方)への流れが生じ、それにより内槽(7a)内に流入された培養液が上記流れにのって各植物の根に養分を供給しつつ流出口(21a)から外槽(1a)内の右側端部に流出し、ついで外槽(1a)内の流れにのって外槽(1a)内を左方へ流れ、そして濾過器(23a)により濾過されて内槽(7a)に流入する濾過循環を継続する。
【0040】
本例によれば、循環用の配管が節約できる。
【0041】
第3発明の実施例3
本例は、培養液供給に波動装置を利用した例である。
まず、内槽(7b)は、上記第3発明の実施例1における内槽(7)(図2、3)と同様に底板(12b)に長手方向3列の断続的長孔を開設したものを使用する。
【0042】
図6において、外槽(1b)の右側の短辺がわ側壁(20b)上端部にギヤボックス(30b)を固定し、該ギヤボックス(30b)の前面に固定されたスリーブ(31b)に、造波盤(32b)を垂直に有する昇降軸(33b)を垂直方向に摺動自在に支持させてある。造波盤の駆動は、モータ(34b)の出力軸に固定されたクランクの回転により、基端部を軸支されたレバーを上下揺動させ、該レバーの先端部を上記昇降軸(33b)に連結して造波盤(32b)を液面で上下動させる。
外槽(1b)内の左側端部には消波板(35b)を垂下して返し波を防止している。
【0043】
培養液供給作用は次のようである。まず内槽(7b)を、培養液(2b)面と小間隔をあけて支持する。上記造波盤(32b)の上下動を開始すると、それにより生起された波が順次上記小間隔を通って図6左方へ伝播していき、その間、各波が内槽底板(12b)の多数の長孔から内槽(7b)内に流入し、底板(12b)上の植物の根に養分を供給する。
【0044】
第4発明の実施例
本例は、上記第3発明の実施例3と同様の造波装置を使用して、水の気化潜熱による冷却装置を装備した例である。
【0045】
本例の内槽(7c)は、その底板(12c)に、図7に示すように長手方向と直交方向に延長する3本の断続長孔(13c)‥を長手方向に一定間隔をあけて多数列開設し、各長孔(13c)…の突条(14c)…における前後の長辺がわ上端の中央部に、外側に張り出す押えフランジ(17c)(17c)、…をそれぞれ突設すると共に、内槽(7c)の短辺がわ側壁(9c)、(9c)の内側面にも押えフランジ(17c’)、(17’c)を突設し、さらに各断続長孔(13c)‥、…の各突条(14c)…上面に目の荒い金属網等の飛沫発生促進材(40c)…を被着固定してある。他の構造は第3発明の実施例3(第6図)と実質的に同一である。
【0046】
冷却作用は次のようである。図6の例と同様に造波装置により生起された波が内槽(7c)下の小間隔を前方へ伝播しつつ内槽底板(12c)の長孔(13c)…から内槽(7c)内に流入する際、上記飛沫発生促進材(40c)…に衝突して飛沫を発生させ、この飛沫の気化潜熱により内槽(7c)内の植物を冷涼に保つこととなる。
【0047】
第5発明の実施例
図8において、外槽(1d)内に水(50d)を入れ、内槽(7d)は図3と同様に底板(12d)に長孔、押えフランジを有し、繊維マット(15d)入りケース(18d)…を挿入したもので、上記繊維マット(15d)…に植えた植物(Pd)…の根に培養液(2d)を循環供給する装置は、上記外槽(1d)の左側端外側に設置された循環ポンプ(22d)の吸入口に接続された吸入管(24d)の先端を上記内槽(7d)内の左側端部に底面近くまで挿入すると共に、ポンプ(22d)の吐出口に接続された管(25d)を、高所に設置された濾過器(23d)に接続し、該濾過器(23d)の濾過液排出管(26d)を右側端がわに延長し、延長端を内槽(7d)内の右側端部に位置させてある。
【0048】
本例では、さらに上記管(25d)に3方弁(51d)を接続し、該3方弁(51d)を介して分岐接続された管(52d)を、上記濾過器(23d)上に設置された予備タンク(53d)に接続すると共に、該タンク(53d)に接続された排出管(54d)を上記内槽(7d)内の左側端部に位置させている。
【0049】
上記培養液供給装置により内槽(7d)内の植物の根に培養液を供給して通常の水耕栽培を行っている途上において、植物の害虫駆除が必要になったときは、濾過液排出管(26d)からの濾過液供給を停止し、ついで上記3方弁(51d)を切換えてポンプ(22d)による内槽(1d)からの吸入培養液を管(52d)を経て予備タンク(53d)内に注入し、ここに一旦保管する。内槽(7d)内の培養液を十分排出したらポンプ(22d)を停止する。
【0050】
次に、エアシリンダ(5d)…の駆動により内槽(7d)を外槽(1d)内の水(50d)中に沈下させ、植物(Pd)…の水中浸漬を行う。所要時間の浸漬により害虫を駆除し、ついでエアシリンダ(5d)…の駆動により内槽(7d)を浮上させ、ついで排出管(54d)を開いて予備タンク(53d)内に保管した培養液を内槽(7d)内に戻し、ついで3方弁(51d)を管(25d)がわに開き、濾過液排出管(26d)を開いた後ポンプ(22d)の駆動を再開し、内槽(7d)内への培養液循環供給を再開する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本願第3発明による水耕栽培装置の一部省略縦断面図である。
【図2】図1のII−II線一部省略拡大断面図である。
【図3】内槽の一部省略拡大平面図である。
【図4】(イ)繊維マットの拡大斜面図である。(ロ)マットケースの拡大斜面図である。(ハ)内槽の他の例の一部省略拡大縦断面図である。(ニ)突条の他の例の拡大縦断面図である。
【図5】本願第3発明の他の実施例の一部省略縦断面図である。
【図6】本願第3発明のさらに他の実施例の一部省略縦断面図である。
【図7】本願第4発明による水耕栽培装置における内槽の一部省略拡大平面図である。
【図8】本願第5発明に使用される水耕栽培の一部省略縦断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1、1a、1b、1d 浸漬用外槽
2、2a、2b、2d 培養液
5、5a、5b、5d 浮沈駆動用エアシリンダ
7、7a、7b、7c、7d 栽培用内槽
12、12a、12b、12c、12d 底板
13、13a 長孔
21a 流出口
23a、23d 濾過器
32c 造波盤
40c 飛沫発生促進材
50d 水
P、Pa、Pb、Pc、Pd 植物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養液を入れた外槽内に、底の浅い内槽を上記培養液面上で昇降自在に支持し、
上記内槽の底板上に植物を、その根を該底板上に展延した状態で、植えると共に、上記植物の根に上記外槽内の培養液を供給して栽培を行い、
必要に応じ、上記植物植設内槽を上記外槽の培養液中に沈下し、上記植物を所要時間培養液中に浸漬して害虫駆除を行う、
害虫駆除用植物浸漬を行う水耕栽培方法。
【請求項2】
アミノ酸、ビタミン等を含む特別培養液を予め用意し、
必要に応じ、上記内槽内の植物に、上記外槽内の培養液に代え、上記用意された特別培養液を供給し、所要時間特別培養液による栽培を継続した後、上記内槽内に残る特別培養液を取り出し、ついで元の外槽内培養液による栽培に戻す、
請求項1に記載の水耕栽培方法。
【請求項3】
培養液入りの上面開口箱形の浸漬用外槽内に、底の浅い上面開口扁平箱形の栽培用内槽を上記培養液面上で昇降自在に支持し、
上記内槽の底板上に植物を、その根を該底板上に展延する状態で、植設し、
上記植物植設内槽を上記外槽内の培養液中に沈下及び培養液面上に浮上させる内槽浮沈駆動装置を備え、
上記内槽上の植物の根に培養液を供給する培養液供給装置を設けた、
害虫駆除用植物浸漬装置つき水耕栽培装置。
【請求項4】
上記培養液供給装置は、
上記内槽の底板に複数の孔を設け、
上記内槽浮沈駆動装置により上記内槽を、少くともその底板の孔から流入した培養液が植物の根に供給される位置まで沈下させることを所要回数行うものである、
請求項3に記載の水耕栽培装置。
【請求項5】
上記培養液供給装置は、
上記内槽の一側壁に、上記外槽内の一側部に開通する培養液流出口を設けると共に、上記外槽内の他側部から培養液を取り出して濾過器へ送り、ついで濾過した培養液を上記内槽内の他側部に供給するものである、
請求項3に記載の水耕栽培装置。
【請求項6】
上記培養液供給装置は、
上記内槽の底板に複数の孔を設けると共に、該内槽を、その底板と培養液面との間に小間隔をあけて、支持し、
上記外槽内の一側部に、上記培養液に波を生起させる造波装置を配設し、該造波装置により連続的に生起される波を上記小間隔内を通って他側部へ伝播させ、該伝播波を上記内槽底板の複数の孔から内槽内に流入させて植物の根に供給するものである、
請求項3に記載の水耕栽培装置。
【請求項7】
上記内槽内における上記波と衝突する位置に、該波との衝突で飛沫を発生させる飛沫発生促進体を配置し、該飛沫の気化潜熱により冷却を行う、
請求項6に記載の害虫駆除用植物浸漬装置つき水耕栽培装置。
【請求項8】
上記内槽底板の複数の孔において、各孔の孔縁に、該孔縁をめぐって適宜高さの突条を内槽内がわに突設した、請求項4、6、7のいずれかに記載の害虫駆除用植物浸漬装置つき水耕栽培装置。
【請求項9】
上記突条が内槽内がわの高さを変更できるようにしたものである、
請求項8に記載の水耕栽培装置。
【請求項10】
水を入れた外槽内に、底の浅い内槽を上記水面上で昇降自在に支持し、上記内槽の底板上に植物を、その根を該底板上に展延した状態で、植えると共に、その根に別途用意した培養液を供給して水耕栽培を行う途上において、
害虫駆除の必要に応じ、上記内槽内の培養液を取り出して保管した後、上記植物植設内槽を上記外槽内の水中に沈下して植物を所要時間水中に浸漬し、
浸漬終了後上記植物植設内槽を浮上させて元の水耕栽培に戻すと共に、上記保管されていた培養液を内槽に供給する、
害虫駆除用植物浸漬を行う水耕栽培方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−271248(P2006−271248A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−94156(P2005−94156)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(395021239)株式会社生物機能工学研究所 (21)
【Fターム(参考)】