説明

家庭用の植物栽培装置

【課題】一般の住宅でも置き場所に困ることのない適当なサイズの家庭用の植物栽培装置を提供する。
【解決手段】ペルチェ素子29への通電が制御されて、熱交換室11内の空気が所定温度となる。そして、吸気ファン装置33が駆動することにより、熱交換室11内の空気が吸引され、この空気は送気管31を通り、穴31aから空間23、22、21へ送られる。これにより栽培室12内の温度がハーブの生育に適切な値となるように保たれる。また、光源体27から照射される光により、ハーブPは光合成を行い、生育する。植物保持体としてのロックウール37によってハーブPが保持されると共に、ロックウール37に養液が含浸しているので、純粋な水耕栽培と比べて装置を簡易なものとできる。従って、一般の住宅でも置き場所に困ることのない適当なサイズにできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は家庭用の植物栽培装置に係り、特に一般の住宅に備えることができるサイズの家庭用の植物栽培装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭で野菜等の種々の植物を栽培することが盛んに行われているが、住宅事情により家庭菜園をもつことができない場合もあり、また植物の種類によっては温度管理が必要で、ベランダ等の屋外では栽培が難しいものも少なくない。
そこで、特許文献1に記載された家庭用の植物栽培装置がある。この家庭用の植物栽培装置は水耕栽培を行うための養液を循環させるための装置や、冷却ユニット、栽培植物の成長に応じて上下に移動できる人工光源、冷却ユニット、水耕栽培を行うための装置等を備えており、全体として直方体形状を為している。そして、この家庭用の植物栽培装置のサイズは、幅940mm×奥行き500mm×高さ2100mm程度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−154791
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の家庭用の植物栽培装置は相当に大きく、一般の住宅では置き場所を確保するのは難しいという問題がある。
また、冷却ユニットだけを装備しているため、植物を加温したい場合には対応することができず、これに対処するためには更に加温ユニットを備える必要があり、上記した以上に大型化してしまうことになる。
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、一般の住宅でも置き場所に困ることのない適当なサイズの家庭用の植物栽培装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、箱状の本体と、前記本体に内部に設けられ多段に区分けされた複数の区分け空間から成る栽培室と、前記本体の前面に形成された開口と、前記本体に設けられ前記開口を閉鎖する状態と開放する状態に動作する開閉扉と、前記本体の内部の栽培室の複数の空間のそれぞれに備えられる容器と、前記容器に収容され植物を植えることができ、且つ養液が含浸可能な植物保持体と、前記栽培室に備えられた人工光源と、前記栽培室の温度を調整する温度調整手段とを備えることを特徴とする家庭用の植物栽培装置である。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載した家庭用の植物栽培装置において、温度調整手段は本体内部に栽培室とは別に設けられた熱交換室と、前記熱交換室内の空気を冷却または加温する冷却・加温手段と、前記熱交換室と前記栽培室との間で空気を還流させる空気還流手段とから成ることを特徴とする家庭用の植物栽培装置である。
【0007】
請求項3の発明は、請求項2に記載した家庭用の植物栽培装置において、空気還流手段は熱交換室と複数の区分け空間それぞれとを連通させる送気管と、熱交換室内の空気を前記送気管へ送るファン装置と、前記複数の区分け空間と前記熱交換室とを連通させる空気帰還路とから成ることを特徴とする家庭用の植物栽培装置である。
【0008】
請求項4の発明は、請求項2または3に記載した家庭用の植物栽培装置において、冷却・加温手段は熱交換室に備えられたペルチェ素子によって構成されていることを特徴とする家庭用の植物栽培装置である。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれかに記載した家庭用の植物栽培装置において、植物保持体は人工土壌またはロックウールであることを特徴とする家庭用の植物栽培装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の家庭用の植物栽培装置は、一般の住宅でも置き場所に困ることのない適当なサイズとすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る家庭用の植物栽培装置の斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】図1の家庭用の植物栽培装置の内部構造を説明するための斜視図である。
【図5】図1のC−C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係る家庭用の植物栽培装置1を図面にしたがって説明する。
符号3は箱状の本体を示し、この本体3は底板4、天板5、左右の側板7、8及び背板9を有しており、また内部に仕切り板10が設けられている。本体3のサイズは、幅700mm×奥行き450mm×高さ1100mm程度である。
仕切り板10の左端部のほぼ中央には矩形の穴10aが形成され、また右奥には三角形の穴10bが形成されている。
【0013】
仕切り板10と天板5との間に熱交換室11が設けられており、底板4と仕切り板10との間に栽培室12が設けられている。熱交換室11は前板16によって閉鎖されている。
栽培室12の左側壁(左側板7の内面)には支持部13、14が固定されており、支持部13と支持部14は前後方向へ間隔を開けて備えられている。また、栽培室12の右側壁(右側板8の内面)には支持部15が固定されており、支持部13、14と支持部15は互いに対向して、同じ高さ位置になるように配置されている。支持部13、14、15は二組設けられ、上下に間隔を開けて配置されている。
【0014】
符号17、19は載置板を示し、この載置板17、19はほぼ長方形で、栽培室12の幅寸法と奥行寸法よりも僅かに小さい幅寸法と奥行寸法に設定されている。載置板17、19の左側端部の中央には切り欠き20が形成され、また右奥の角部が除去された形状となっている(図4参照)。
【0015】
載置板17、19は二組の支持部13、14、15にそれぞれ設置されて栽培室12に備えられており、これにより図2、図3に示すように、栽培室12の内部は3つの空間21、22、23に区分けされている。すなわち、本体3の底板4の上面と載置板17の下面との間の空間21が形成され、載置板17の上面と載置板19の下面との間に空間22が形成され、更に載置板19の上面と本体3の仕切り板10の下面との間の空間23が形成されている。このように栽培室12は本体3の内部に設けられ、多段に区分けされた空間21、22、23から成る。
【0016】
載置板17、19を支持部13、14、15に設置した状態で、載置板17、19の左側端部の中央には切り欠き20が形成され、この切り欠き20は支持部13と支持部14との間に対向している。従って、図4に示すように栽培室12の左側壁(左側板7の内面)と載置板17、19との間には、切り欠き20によって構成される穴が形成される。また、載置板17、19の右奥の角部が除去された形状となっているので、載置板17、19と栽培室12の後壁(背板9側の内面)、右側壁(右側板8)との間に三角形の穴25が形成される。
切り欠き20は仕切り板10の矩形の穴10aに対向し、三角形の穴25は仕切り板10の三角形の穴10bに対向している。
載置板17、19の切り欠き20、仕切り板10の矩形の穴10aによって空気帰還路が構成されている。
【0017】
符号27は光源体を示し、光源体27は空間21、22、23にそれぞれ配置され、後壁(背板9側の内面)に取り付けられている。
熱交換室11には冷却・加温手段としてのペルチェ素子29が設けられている。また、また栽培室12には温度センサー30が備えられ、この温度センサー30はペルチェ素子29への通電を制御する図示しないコントローラに接続されている。
【0018】
符号31は送気管を示し、この送気管31は三角筒状で、仕切り板10の穴10b、載置板17、19の穴25に貫入され、熱交換室11に突出し、下端部は空間21に入り込んでいる。
送気管31の周面には多数の穴31aが形成され、送気管31は穴31aを介して空間21、22、23に連通している。また、送気管31の上端部には、吸気ファン装置33が取り付けられ、この吸気ファン装置33は熱交換室11に備えられている。
【0019】
上記空気帰還路としての切り欠き20、矩形の穴10a、送気管31及び吸気ファン装置33によって空気還流手段が構成されている。
上記空気還流手段、熱交換室11及び冷却・加温手段としてのペルチェ素子29によって、温度調整手段が構成されている。
本体3の前面には開口34が形成され、この開口34は栽培室12に対向している。また、本体3には観音開き式の開閉扉35が設けられており、開閉扉35は開口34を閉鎖する状態と開放する状態に動作するようになっている。
【0020】
符号36は容器としての栽培箱を示し、この栽培箱36は空間21、22、23にそれぞれ備えられている。空間21に備えられた栽培箱36は底板4に載置され、空間22、23に備えられた栽培箱36は載置板17、19にそれぞれ載置されている。
栽培箱36には植物保持体としてのロックウール37が収容されている(図5参照)。
【0021】
次に、この家庭用の植物栽培装置1の使用方法について説明する。
栽培箱36に収容されたロックウール37に例えばハーブの種を播き、ロックウール37には養液を注入して、開閉扉35を開いて開口34から栽培箱36を栽培室12に備える。
3つの栽培箱36は底板4、載置板17、19にそれぞれ載置される。
【0022】
栽培室12内の温度を温度センサー30が検知し、この検知結果はコントローラに伝達され、ペルチェ素子29への通電が制御されて、熱交換室11内の空気が所定温度となる。そして、吸気ファン装置33が駆動することにより、熱交換室11内の空気が吸引され、この空気は送気管31を通り、穴31aから空間23、22、21へ送られる。各空間23、22、21へ送られた空気は、切り欠き20、矩形の穴10aを通って、熱交換室11へ戻り、再び所定の温度となってから、上記のようにして空間23、22、21へ再び送られる。すなわち、熱交換室11と栽培室12の間で空気が循環させられる。これにより栽培室12内の温度がハーブの生育に適切な値となるように保たれる。
また、光源体27から照射される光により、ハーブPは光合成を行い、生育する。
【0023】
このように家庭用の植物栽培装置1は、植物保持体としてのロックウール37によってハーブPが保持されると共に、ロックウール37に養液が含浸しているので、純粋な水耕栽培と比べて装置を簡易なものとできる。更にペルチェ素子29を用いることで、冷却と加温に切り替えることが可能となり、冷却、加温を一つの装置で行うことができる。従って、家庭用の植物栽培装置1を小型化でき、一般の住宅でも置き場所に困ることのない適当なサイズ(幅700mm×奥行き450mm×高さ1100mm程度)の家庭用の植物栽培装置の提供することが可能となる。
【0024】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
例えば、植物保持体としてロックウールの代わりに、例えば、ピートモス(みずごけ)に、モンモリロナイト(ベントナイト)」をコーティングした人工土壌等を用いてもよい。
また、栽培箱36に養液を自動的に供給する養液供給装置を備えてもよい。
なお、本発明の家庭用の植物栽培装置によって栽培する植物は、上記したハーブに限らず、レタス、ワサビ等、他の植物でもよいのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の家庭用の植物栽培装置は、家庭用の植物栽培装置の製造業に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0026】
1…家庭用の植物栽培装置 3…本体
4…底板 5…天板
7…左側板 8…右側板
9…背板 10…仕切り板
10a…矩形の穴 10b…三角形の穴
11…熱交換室 12…栽培室
13、14、15…支持部 16…前板
17、19…載置板 20…切り欠き
21、22、23…空間 25…三角形の穴
27…光源体 29…ペルチェ素子
31…送気管 31a…送気管の穴
33…吸気ファン装置 34…開口
35…開閉扉 36…栽培箱
37…ロックウール ハーブ…P

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱状の本体と、前記本体に内部に設けられ多段に区分けされた複数の区分け空間から成る栽培室と、前記本体の前面に形成された開口と、前記本体に設けられ前記開口を閉鎖する状態と開放する状態に動作する開閉扉と、前記本体の内部の栽培室の複数の空間のそれぞれに備えられる容器と、前記容器に収容され植物を植えることができ、且つ養液が含浸可能な植物保持体と、前記栽培室に備えられた人工光源と、前記栽培室の温度を調整する温度調整手段とを備えることを特徴とする家庭用の植物栽培装置。
【請求項2】
請求項1に記載した家庭用の植物栽培装置において、温度調整手段は本体内部に栽培室とは別に設けられた熱交換室と、前記熱交換室内の空気を冷却または加温する冷却・加温手段と、前記熱交換室と前記栽培室との間で空気を還流させる空気還流手段とから成ることを特徴とする家庭用の植物栽培装置。
【請求項3】
請求項2に記載した家庭用の植物栽培装置において、空気還流手段は熱交換室と複数の区分け空間それぞれとを連通させる送気管と、熱交換室内の空気を前記送気管へ送るファン装置と、前記複数の区分け空間と前記熱交換室とを連通させる空気帰還路とから成ることを特徴とする家庭用の植物栽培装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載した家庭用の植物栽培装置において、冷却・加温手段は熱交換室に備えられたペルチェ素子によって構成されていることを特徴とする家庭用の植物栽培装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載した家庭用の植物栽培装置において、植物保持体は人工土壌またはロックウールであることを特徴とする家庭用の植物栽培装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−147730(P2012−147730A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9389(P2011−9389)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(302031812)株式会社ケイ・アイ・ディ (4)
【Fターム(参考)】