説明

家庭用エネルギー管理装置及び家庭用エネルギー管理システム

【課題】日常生活において必要の都度、電力を消費するような機器の使用を制限して不便を感じることなく、電力消費を削減するとともに、電力削減の要請への対応、配電系統の不安定の兆候である周波数や電圧変動への対応を行って、配電系統の安定に寄与する。
【解決手段】配電系統からの電力供給がなされる差込口に接続されて不定期に稼働される非常設機器に関する情報を取得する接続機器検知手段と、配電系統に電気的に接続されている所定の常設機器の稼働条件を予め記憶する稼働条件記憶手段と、接続機器検知手段が取得した非常設機器に関する情報と稼働条件記憶手段に記憶された稼働条件とに基づいて、非常設機器の稼働時における常設機器の稼働状態を制御する稼働制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、家庭用エネルギー管理装置及び家庭用エネルギー管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家庭や店舗などの電力需要家内の複数の機器の消費エネルギー(消費電力量)を表示し、あるいは、制御することにより、省エネルギー、省コストあるいはCO排出量の削減を行うエネルギー管理システムが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
従来の家庭用のエネルギー管理システムは、需要家内の機器類および制御装置から構成され、機器類は家庭においては複数の家電機器から構成されることが多い。非特許文献1には、家庭エネルギー管理システムの動作とその効果が示されている。
既に多くのシステムの実証試験が行われており、代表的な制御として以下のようなものが挙げられる。
(1)エアコンの在不在制御:人が居ないときにはエアコンを切る、
(2)照明の在不在制御・明るさ制御:人が居ないときには照明を切るまたは暗くする、
(3)待機電力遮断。
また、消費エネルギーに関連した表示としては、家庭内の電力消費量やガス消費量の表示をはじめとして、複数世帯間の比較による省エネコンテスト、外気温などに応じたアドバイス、CO排出量の表示が挙げられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】住環境計画研究所、平成18年10月4日「HEMS実証試験における省エネルギー効果の評価解析」、[平成22年8月6日検索] URL:http://www.nedo.go.jp/informations/events/181004/juukankyou.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の家庭用エネルギー管理システムは、家庭の電力やガスなどの消費エネルギーを減らして家庭のエネルギーコストを削減することにより家庭に利益を分与しつつ、最終的には社会のCO排出量の削減を目指したものである。
しかしながら上述したように、家庭の消費エネルギーを削減することを目標にしても、居住者の不満を抑えつつ自動制御で削減できる割合は多くない。その結果、消費エネルギーの見える化(視覚化)による居住者自らの参加意識に頼った省エネとなり、10%程度の省エネが上限となっている。
【0005】
また、商用系統側(配電系統側)からの需要抑制要求があった場合に家庭内の消費電力を抑制するときには、予め設定された機器を停止あるいは省エネ側に設定変更することにより対応するが、通常の家庭では調理機器やアイロン、掃除機など、使用の都度、突発的に電力消費が発生する機器もあり、それらの機器の使用を制限すると日常生活に著しく不便をきたすことになる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、日常生活において必要の都度、電力を消費するような機器の使用を制限して不便を感じることなく、電力消費を削減するとともに、電力削減の要請への対応、配電系統の不安定の兆候である周波数や電圧変動への対応を行って、配電系統の安定に寄与する家庭用エネルギー管理装置及び家庭用エネルギー管理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の家庭用エネルギー管理装置の接続機器検知手段は、配電系統からの電力供給がなされる差込口に接続されて不定期に稼働される非常設機器に関する情報を取得する。
また、稼働条件記憶手段は、前記配電系統に電気的に接続されている所定の常設機器の稼働条件を予め記憶する。
これにより、稼働制御手段は、前記接続機器検知手段が取得した前記非常設機器に関する情報と前記稼働条件記憶手段に記憶された前記稼働条件とに基づいて、前記非常設機器の稼働時における前記常設機器の稼働状態を制御する。
【0008】
また、実施形態の家庭用エネルギー管理システムの差込口には、配電系統からの電力供給がなされ、不定期に稼働される非常設機器が接続される。
これにより、稼働制御装置の接続機器検知手段は、非常設機器に関する情報を取得する。
一方、稼働条件記憶手段は、前記配電系統に電気的に接続されている所定の常設機器の稼働条件を予め記憶する。
これらにより、稼働制御装置の稼働制御手段は、前記接続機器検知手段が取得した前記非常設機器に関する情報と前記稼働条件記憶手段に記憶された前記稼働条件とに基づいて、前記非常設機器の稼働時における前記常設機器の稼働状態を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、家庭用エネルギー管理システムの概要構成説明図である。
【図2】図2は、接続機器検知装置の概要構成説明図である。
【図3】図3は、負荷制御装置の機能構成ブロック図である。
【図4】図4は、削減要請レベルと常設機器の稼働設定状態との対応テーブルの説明図である。
【図5】図5は、電圧変動レベルと常設機器の稼働設定状態との対応テーブルの説明図である。
【図6】図6は、周波数変動レベルと常設機器の稼働設定状態との対応テーブルの説明図である。
【図7】図7は、非常設機器の稼働と常設機器の稼働設定状態との対応テーブルの説明図である。
【図8】図8は、実施形態の処理フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、家庭用エネルギー管理システムの概要構成説明図である。
家庭用エネルギー管理システム10は、大別すると、周波数計測装置11と、電圧計測装置12と、分電盤13と、電力計測装置14と、接続機器検知装置15と、負荷制御装置16と、受信装置17と、を備えている。
【0011】
周波数計測装置11は、商用系統20から供給される電力の周波数を計測し、周波数計測データDfを負荷制御装置16に出力する。
電圧計測装置12は、商用系統20から供給される電力の電圧を計測し、電圧計測データDvを負荷制御装置16に出力する。
分電盤13は、商用系統20から供給された電力を分配して、需要家内の各部へ供給する。
電力計測装置14は、需要家内の各部へ供給した全電力を計測し、電力計測データDpを負荷制御装置16に出力する。
【0012】
図2は、接続機器検知装置の概要構成説明図である。
接続機器検知装置15は、大別すると、一時的に差込口CS(コンセント;electric outlet)にコンセントプラグCPが差し込まれて使用される態様が採られる機器(以下、非常設機器という。例えば、ヘアドライヤ、掃除機、アイロン等)21−1〜21−3のコンセントプラグに組み込まれたICタグ(パッシブ型ICタグ)15Aと、差込口CSのパネル内に組み込まれ、商用系統からの電力供給を受けて、ICタグ15Aに通信用電力を供給するとともに、通信用電力が供給されたICタグ15Aと無線通信を行うICタグリーダ15Bと、を備えている。
【0013】
上記構成により、接続機器検知装置15は、差込口にコンセントプラグが差し込まれると、ICタグリーダ15Bは、コンセントプラグに組み込まれたICタグ15Aと通信を行い、ICタグのIDを読み取り、後述する負荷制御装置16の稼働機器判定部25(図3参照)に通知する。この場合において、ICタグリーダ15Bと負荷制御装置16との間の通信は、電力線通信等の有線通信、無線LANなどの無線通信等により行われる。
この結果、負荷制御装置16は、差込口に一時的にコンセントプラグが差し込まれて使用されている非常設機器21−1〜21−3を、予め設定されたICタグ15AのIDと非常設機器21−1〜21−3との対応関係テーブルに基づいて特定することが可能となっている。
【0014】
図3は、負荷制御装置の機能構成ブロック図である。
負荷制御装置16は、大別すると、電力削減要請判定部31と、電圧比較部32と、周波数比較部33と、電力状態取得部34と、稼働機器判定部35と、負荷稼働条件記憶部36と、稼働条件設定部37と、負荷調整部38と、負荷制御部39と、を備えている。
ここで、負荷調整部38及び負荷制御部39は、稼働制御手段として機能している。
まず、電力削減要請判定部31は、電力会社からの電力調整要請が電力調整信号として入力された場合に、当該電力調整信号に対応する電力調整要請のレベル(消費電力の削減要請レベル)を判定し、負荷調整部38に通知することとなる。
【0015】
電圧比較部32は、電圧計測装置12により計測され、入力された電圧計測データDvに対応する商用系統20から供給される電源(電力)の電圧と、所定の基準電圧と、を比較し、電圧変動レベルを判定し、判定した電圧変動レベルを負荷制御装置16に通知する。例えば、電圧比較部32は、公称電圧交流100Vの商用系統20の場合には、所定の基準電圧として、95V、96V、106V及び107Vを用い、96V超106V未満を電圧変動レベル=0とし、106V以上107V未満を電圧変動レベル=1とし、107V以上を電圧変動レベル=2とし、96V以下95V以上を電圧変動レベル=−1とし、95V未満を電圧変動レベル=−2とする判定を行い、判定した電圧変動レベルを負荷調整部38に通知することとなる。
【0016】
この場合において、電圧変動レベル=−2の状態は、商用系統20の電力供給能力が実際に供給され使用されている電力に対して最も余裕がない状態であり、電圧変動レベル=−1の状態は、商用系統20の電力供給能力が実際に供給され使用されている電力に対して余裕がない状態である。また、電圧変動レベル=0の状態は、商用系統20の電力供給能力が実際に供給され使用されている電力に対してバランスがとれている状態である。さらに電圧変動レベル=1の状態は、商用系統20の電力供給能力が実際に供給され使用されている電力に対して比較的余裕がある状態であり、電圧変動レベル=2の状態は、商用系統20の電力供給能力が実際に供給され使用されている電力に対して最も余裕がある状態である。
【0017】
周波数比較部33は、周波数計測装置11により計測され、入力された周波数計測データDfに対応する商用系統20から供給される電源の周波数と、所定の基準周波数と、を比較し、周波数変動レベルを判定し、判定した周波数レベルを負荷制御装置16に通知する。例えば、周波数比較部33は、公称周波数50Hzの商用系統20の場合には、所定の基準周波数として、49.0Hz、49.5Hz、50.5Hz及び51Hzを用い、49.5Hz超50.5Hz未満を周波数変動レベル=0とし、50.5Hz以上51Hz未満を周波数変動レベル=1とし、51Hz以上を周波数変動レベル=2とし、49.5Hz以下49.0Hz以上を周波数変動レベル=−1とし、49.0Hz未満を周波数変動レベル=−2とする判定を行い、判定した周波数変動レベルを負荷調整部38に通知することとなる。
【0018】
この場合において、周波数変動レベル=−2の状態は、商用系統20の電力供給能力が実際に供給され使用されている電力に対して最も余裕がない状態であり、周波数変動レベル=−1の状態は、商用系統20の電力供給能力が実際に供給され使用されている電力に対して余裕がない状態である。また、周波数変動レベル=0の状態は、商用系統20の電力供給能力が実際に供給され使用されている電力に対してバランスがとれている状態である。さらに周波数変動レベル=1の状態は、商用系統20の電力供給能力が実際に供給され使用されている電力に対して比較的余裕がある状態であり、周波数変動レベル=2の状態は、商用系統20の電力供給能力が実際に供給され使用されている電力に対して最も余裕がある状態である。
【0019】
電力状態取得部34は、需要家内で消費される電力の状態を電力計測装置14から取得し、負荷調整部38に出力する。
稼働機器判定部25は、実際に稼働している非常設機器21−1〜21−3を判定する。そして、差込プラグ(コンセント)に接続され稼働している各非常設機器21−1〜21−3を特定するための情報を取得し、負荷調整部38に通知する。
【0020】
負荷稼働条件記憶部36は、原則的に常時、商用系統20に接続されている負荷機器(以下、常設機器という。)22−1〜22−6を稼働させる際の条件(負荷稼働条件)を削減要請レベル毎、電圧変動レベル毎、周波数変動レベル毎、商用系統20に単発的に接続されて稼働される稼働非常設機器毎に記憶している。具体的には、常設機器22−1〜22−6の稼働/停止の設定、稼働時の稼働設定について記憶している。
【0021】
ここで、常設機器22−1〜22−6とは、図1の例の場合、電子レンジ、洗濯機、照明、エアコン、蓄電池、給湯器などであり、差込口に常態的にコンセントプラグが差し込まれて、稼働操作等を行うことにより商用系統20から電力が供給されて、稼働可能な状態とされている機器である。また、以下の説明においては、常設機器22−3としての照明機器には、居間に設置された照明機器である常設機器22−3A、寝室に設置された照明機器である常設機器22−3Bが存在するものとし、常設機器22−4としてのエアコンには、居間に設置されたエアコンである常設機器22−4A、客間に設置されたエアコンである常設機器22−4B及び寝室に設置されたエアコンである常設機器22−4Cが存在するものとする。
【0022】
稼働条件設定部37は、ユーザやオペレータが、削減要請レベル毎の常設機器22−1〜22−6の稼働(運転)許容条件や、電圧変動レベル、周波数変動レベル毎の稼働(運転)許容条件を、負荷稼働条件記憶部36に入力するためのものである。具体的には、図示しない設定スイッチや、外部コンピュータ等を接続して、稼働(運転)許容条件に対応するデータをダウンロードするための外部インタフェース(例えば、USBインタフェース等)を備えている。
【0023】
負荷調整部38は、削減要請レベル、電圧変動レベル、周波数変動レベルに応じた稼働許容条件を負荷稼働条件記憶部36から読み取り、複数の負荷装置のうち、稼働可能ないずれかの負荷装置に対応する設定を判定し、負荷制御部39に出力する。接続機器検知装置15が取得し、一時的に差込口(コンセント;electric outlet)にコンセントプラグが差し込まれて稼働している非常設機器21−1〜21−3の機器情報と、負荷稼働条件記憶部36に記憶された負荷稼働条件に基づいて、実際に稼働させることが可能な常設機器22−1〜22−6とその運転条件を判定し、判定結果を負荷制御部39に通知する。
負荷制御部39は、負荷調整部38により通知された判定結果に基づいて、常設機器22−1〜22−6のいずれかを稼働停止したり、稼働状態を変更したりするための制御を行う。
【0024】
商用系統20側からの電力消費量の調整の要請である削減要請を受信する受信装置17は、専用回線、インターネットあるいは電力線通信などの有線もしくは無線通信によって電力供給者から送られてくる削減要請データDRQを受信し、負荷制御装置16の電力削減要請判定部31へ伝達する。この削減要請データDRQには、上述した削減要請レベル、当該削減要請に対応するべき時間帯や削減する電力量あるいは削減割合といった情報が含まれる。
ここで、削減要請レベルとしては、削減要請レベル=1〜3までの三つのレベルがあり、削減要請レベル=3が最も強い削減要請である場合(最も削減量が要求される場合)を例として以下、説明する。
【0025】
図4は、削減要請レベルと常設機器の稼働設定状態との対応テーブルの説明図である。
図4の削減要請レベル−稼働設定状態対応テーブルTB1に示すように、エアコンを例に採ると、削減要請レベル=1では、居間のエアコン及び客間のエアコンは、稼働状態に変更なし(そのまま稼働)、寝室のエアコンは、停止する。また、削減要請レベル=2では、居間や客間の冷房設定を2℃高くし、寝室のエアコンは、停止する。さらに、削減要請レベル=3では、居間、客間及び寝室のエアコンを停止する。同様に、その他の負荷機器としての家電機器(洗濯機、照明装置、蓄電池、給湯器等)についても同様に削減要請レベルに応じた稼働状態に設定する。
【0026】
図5は、電圧変動レベルと常設機器の稼働設定状態との対応テーブルの説明図である。
図5の電圧変動レベル−稼働設定状態対応テーブルTB2に示すように、常設機器22−4としてのエアコンを例に採ると、電圧変動レベル=0〜2では、常設機器22−4A〜22−4Cに相当する居間、客間及び寝室のエアコンは、稼働状態に変更なし(そのまま稼働)、電圧変動レベル=−1では、常設機器22−4A及び常設機器22−4Bに相当する居間や客間のエアコンの冷房設定を2℃高くし、常設機器22−4Cに相当する寝室のエアコンは、停止する。さらに、電圧変動レベル=−2では、居間、客間及び寝室のエアコンを停止する。
【0027】
同様に、常設機器22−2としての洗濯機を例に採ると、電圧変動レベル=2では、商用系統20の電力供給能力が実際に供給され使用されている電力に対して最も余裕がある状態であるので、タイマー運転などのように、運転スケジュールが予め組まれている場合には、運転スケジュールを早めて運転を開始するようにしている。図5では、このように運転スケジュールを早めて運転を行う場合を「起動」と表現している。
【0028】
また、常設機器22−5としての蓄電池を例に採ると、電圧変動レベル=1〜2では、商用系統20の電力供給能力が実際に供給され使用されている電力に対して余裕がある状態であるので、充電状態としている。また、電圧変動レベル=0では、稼働状態に変更なしとする(仮に充電状態であれば、充電を継続し、放電状態[電力供給状態]であれば、放電を継続する)。さらに電圧変動レベル=−1〜−2では、商用系統20の電力供給能力が実際に供給され使用されている電力に対して余裕がない状態であるので、蓄電池の電力を当該需要家の負荷機器などに電力を供給させるべく、放電状態としている。
【0029】
同様に、常設機器22−6としての給湯器の貯湯動作を例に採ると、電圧変動レベル=1〜2では、商用系統20の電力供給能力が実際に供給され使用されている電力に対して余裕がある状態であるので、貯湯スケジュールに対して早めに貯湯を開始する「起動」状態としている。また、電圧変動レベル=0では、稼働状態に変更なしとする(貯湯状態であれば、貯湯を継続し、非貯湯状態[給湯状態あるいは停止状態]であれば、非貯湯状態を継続する)。さらに電圧変動レベル=−1〜−2では、商用系統20の電力供給能力が実際に供給され使用されている電力に対して余裕がない状態であるので、貯湯を行わないように停止状態となる。
【0030】
図6は、周波数変動レベルと常設機器の稼働設定状態との対応テーブルの説明図である。
図6の周波数変動レベル−稼働設定状態対応テーブルTB3に示すように、常設機器22−4(22−4A〜22−4C)としてのエアコンを例に採ると、周波数変動レベル=0〜2では、常設機器22−4A〜22−4Bとしての居間、客間及び寝室のエアコンは、稼働状態に変更なし(そのまま稼働)、周波数変動レベル=−1では、常設機器22−4A及び22−4Cとしての居間や客間のエアコンは冷房設定を2℃高くし、常設機器22−4Cとしての寝室のエアコンは、停止する。さらに、周波数変動レベル=−2では、常設機器22−4A〜22−4Cとしての居間、客間及び寝室のエアコンを停止することとなる。
また、常設機器22−2としての洗濯機、常設機器22−5としての蓄電池及び常設機器22−6としての給湯器を例とする動作については、図5で説明した電圧変動レベルの場合と同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0031】
図7は、非常設機器の稼働と常設機器の稼働設定状態との対応テーブルの説明図である。
図7においては、一時的に差込口にコンセントプラグが差し込まれて稼働される非常設機器21−1〜21−3として、扇風機、掃除機、アイロンが挙げられている。
これらの非常設機器21−1〜21−3が稼働された場合には、一時的に消費電力が増加するため、その増加が予測される範囲で、常設機器22−1〜22−6の稼働を制御するようにしている。
具体的には、例えば、接続機器検知装置15により非常設機器21−3としてのアイロンのコンセントプラグCPが差込口CSに差し込まれたことが検知された場合には、常設機器22-4A及び22-Cとしての居間や客間のエアコンの冷房設定を2℃高くし、常設機器22−4Bとしての寝室のエアコンはオフ(停止)し、常設機器22−2としての洗濯機はオフ(停止)し、常設機器22−3Aとしての居間の照明機器は稼働状態に変更なし(そのまま稼働)とし、常設機器22−3Bとしての寝室の照明機器はオフ(消灯)とし、常設機器22−5としての蓄電池は電力供給のため放電状態とし、常設機器22−6としての給湯器は消費電力を低減するための貯湯をオフする。
【0032】
また、接続機器検知装置15により非常設機器21−2としての掃除機のコンセントプラグが差込口に差し込まれたことが検知された場合には、常設機器22−4A〜22−4Cとしての居間、客間及び寝室のエアコンはオフ(停止)し、洗濯機はオフ(停止)し、常設機器22−3Aとしての居間の照明機器は稼働状態に変更なし(そのまま稼働)とし、常設機器22−3Bとしての寝室の照明機器はオフ(消灯)とし、常設機器22−5としての蓄電池は電力供給のため放電状態とし、常設機器22−6としての給湯器は消費電力を低減するための貯湯をオフ(停止)する。
【0033】
以上の説明は、非常設機器21−1〜21−3がそれぞれ単体で接続された場合であるが、複数の非常設機器21−1〜21−3が接続された場合には、同一の常設機器22−1〜22−6に対して、より消費電力を低下させる側の設定が適用される。
【0034】
次に実施形態の動作を説明する。
以下の説明においては、図4のテーブル(優先順位低)→図5のテーブル→図6のテーブル→図7のテーブル(優先順位高)の順番で優先順位が定められており、設定が異なる場合には、より優先順位の高い設定で最終的な常設機器22−1〜22−6の稼働設定がなされるようになっている。
上述した削減要請レベルは、当該削減要請レベルが適用される要請期間の情報と組となって通知がなされることとなっているものとする。
【0035】
図8は、実施形態の処理フローチャートである。
まず負荷制御装置16の負荷調整部38は、電力削減要請判定部31を介して、電力会社から削減要請データDRQとして入力され、電力の削減要請(削減調整要請)がなされたか否かを判別する(ステップS11)。
ステップS11の判別において、電力の削減要請がなされていない場合には(ステップS11;No)、電力の削減(削減調整)を行う必要が無いので、負荷制御装置16は、待機状態となり(ステップS12)、再び処理をステップS11に移行する。
【0036】
ステップS11の判別において、電力の削減要請がなされている場合には(ステップS11;Yes)、現在の日時が当該電力の削減要請が有効となる要請期間に対して、期間外、期間中あるいは期間終了に至ったタイミングのいずれであるかを判別する(ステップS13)。
ステップS13の判別において、現在の日時が当該電力調整要請が有効となる調整要請期間に対して、期間外である場合には(ステップS13;期間外)、未だ電力調整を行う期間に至っていないので、待機状態となる(ステップS14)。
【0037】
ステップS13の判別において、現在の日時が期間終了に至ったタイミングである場合には(ステップS13;期間終了)、直前まで有効であった電力調整要請に対応する設定を解除して(ステップS15)、再び処理をステップS13に移行する。
ステップS13の判別において、現在の日時が調整要請期間の期間中である場合には(ステップS13;期間中)、負荷制御装置16の負荷調整部38は、電力削減要請判定部31の判別結果に基づく設定(削減要請レベルの設定)がなされているか否かを判別する(ステップS16)。
【0038】
ステップS16の判別において、電力削減要請判定部31の判定結果に基づく設定(削減要請レベルの設定)がなされていない場合には(ステップS16;未設定)、負荷調整部38は、電力削減要請判定部31の判定結果に基づく削減要請レベルに基づいて、常設機器22−1〜22−6の稼働設定を行い(ステップS17)、処理をステップS18に移行する。
ステップS16の判別において、既に電力削減要請判定部31の判定結果に基づく設定(削減要請レベルに対応する常設機器22−1〜22−6の稼働設定)がなされている場合には(ステップS16;設定済)、負荷調整部38は、周波数比較部33の比較結果に基づいて周波数変動レベルが変動(変化)したか否かを判別する(ステップS18)。
【0039】
ステップS18の判別において、周波数変動レベルが変動(変化)した場合には(ステップS18;変動あり)、変動後の周波数変動レベルに応じて、図6に示した周波数変動レベル−稼働設定状態対応テーブルTB3を参照し、周波数変動レベルに対応する常設機器22−1〜22−6の稼働設定を行い(ステップS19)、処理をステップS20に移行する。この場合において、同一の常設機器22−1〜22−6に対して既により消費電力を低減する設定がなされている場合には、当該設定をそのままとする。
ステップS18の判別において、周波数変動レベルが変動していない場合には(ステップS18;変動なし)、負荷調整部38は、電圧比較部32の比較結果に基づいて電圧変動レベルが変動したか否かを判別する(ステップS20)。
【0040】
ステップS20の判別において、電圧変動レベルが変動した場合には(ステップS20;変動あり)、変動後の電圧変動レベルに応じて、図5に示した電圧変動レベル−稼働設定状態対応テーブルTB2を参照し、電圧変動レベルに対応する常設機器22−1〜22−6の稼働設定を行い(ステップS21)、処理をステップS22に移行する。この場合においても、同一の常設機器22−1〜22−6に対して既により消費電力を低減する設定がなされている場合には、当該設定をそのままとする。
ステップS20の判別において、電圧変動レベルが変動していない場合には(ステップS20;変動なし)、負荷調整部38は、稼働機器判定部35の判定結果に基づいて、接続機器検知装置15により差込口CSにコンセントプラグCPが差し込まれた非常設機器21−1〜21−3が稼働したか否かを判別する(ステップS22)。
【0041】
ステップS22の判別において、接続機器検知装置15により差込口CSにコンセントプラグCPが差し込まれた非常設機器21−1〜21−3が稼働した場合には(ステップS22;稼働あり)、稼働した非常設機器21−1〜21−3に応じて、図7に示した稼働機器−稼働設定状態対応テーブルTB4を参照し、稼働した非常設機器21−1〜21−3に対応させて、常設機器22−1〜22−6の稼働設定を行い(ステップS23)、処理をステップS24に移行する。
【0042】
ステップS22の判別において、接続機器検知装置15により差込口CSにコンセントプラグCPが差し込まれている非常設機器21−1〜21−3のいずれも稼働したことが検知されなかった場合には(ステップS22;稼働なし)、負荷調整部38は、ステップS17,ステップS19,ステップS21あるいはステップS23による設定に基づいて、負荷機器の稼働設定を負荷制御部39に出力し、常設機器22-1〜22−6の稼働、停止、稼働状態の変更(例えば、冷房温度設定、起動など)を行う(ステップS24)。この場合において、同一の常設機器22−1〜22−6に対して既により消費電力を低減する設定がなされている場合には、当該設定をそのままとする。
【0043】
この場合において、負荷制御部39は、ECHONET等の制御規格に対応した常設機器22−1〜21−6に対しては、直接的に起動、停止、設定変更等の切替を行い、直接的に制御を行えない常設機器22−1〜22−6に対しては、分電盤13に設けられた電力制御機器、例えば、リレーにより、電力供給/電力遮断の切替を行う。
【0044】
以上の説明のように本実施形態によれば、電力会社から電力の削減要請がなされた場合に、当該削減要請に対応する電力の削減要請レベルに応じて、常設機器22−1〜22−6の稼働状態を制御して、消費電力を抑制することができる。
このとき、扇風機、掃除機、アイロンなどの非常設機器21−1〜21−3の使用に対しては、制限を設けず、これらの機器の使用をも考慮して常設機器22−1〜22−6の稼働状態をさらに制御するので、日常生活の不便を感じさせることなく、省エネに確実に貢献することができる。
【0045】
すなわち、本実施形態によれば、日常生活において必要の都度、電力を消費するような機器(非常設機器)の使用を制限して不便を感じることなく、電力消費を削減するとともに、電力削減の要請への対応、配電系統の不安定の兆候である周波数や電圧変動への対応を行って、商用系統(配電系統)の安定に寄与することができる。
【0046】
以上の説明においては、電圧比較部32における所定の基準電圧あるいは周波数比較部33における所定の基準周波数は固定であるものとして説明したが、電力会社が削減要請データDRQに基準電圧あるいは基準周波数の変更後のデータを含めて配信し、これら配信された新たな基準電圧あるいは新たな基準周波数に基づいて同様の制御を動的に行うように構成することも可能である。
【0047】
以上の説明においては、各需要家が電力会社に対して売電を行う場合については述べなかったが、売電を行う場合であっても、売電状態に応じた電圧変動、周波数変動などに基づいて同様に適用が可能である。
以上の説明においては、配電系統として商用系統20の場合についてのみ説明したが、配電系統が当該需要家の発電系統である場合であっても同様に適用が可能である。
【0048】
上述した実施形態の負荷制御装置16は、ハードウェア的には、CPUなどの制御装置と、ROM(Read Only Memory)やRAMなどの記憶装置と、SSD、HDD、CDドライブ装置などの外部記憶装置と、液晶ディスプレイ装置などの表示装置と、キーボードなどの入力装置と、を備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
本実施形態の負荷制御装置16で実行される制御プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供されるように構成することも可能である。
【0049】
また、本実施形態の負荷制御装置16で実行される制御プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態の負荷制御装置で実行される制御プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
また、本実施形態の負荷制御装置16の制御プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
10 家庭用エネルギー管理システム
11 周波数計測装置(供給周波数計測手段)
12 電圧計測装置(供給電圧計測手段)
13 分電盤
14 電力計測装置
15 接続機器検知装置(接続機器検知手段)
15A ICタグ
15B ICタグリーダ
16 負荷制御装置(家庭用エネルギー管理装置)
17 受信装置
20 商用系統
21−1〜21−3 非常設機器
22−1〜22−6 常設機器
25 稼働機器判定部
31 電力削減要請判定部
32 電圧比較部
33 周波数比較部
34 電力状態取得部
35 稼働機器判定部
36 負荷稼働条件記憶部(稼働条件記憶手段)
37 稼働条件設定部
38 負荷調整部(稼働制御手段)
39 負荷制御部(稼働制御手段)
CP コンセントプラグ
CS 差込口
DRQ 削減要請データ
Df 周波数計測データ
Dp 電力計測データ
Dv 電圧計測データ
TB1 削減要請レベル−稼働設定状態対応テーブル
TB2 電圧変動レベル−稼働設定状態対応テーブル
TB3 周波数変動レベル−稼働設定状態対応テーブル
TB4 稼働機器−稼働設定状態対応テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電系統からの電力供給がなされる差込口に接続されて不定期に稼働される非常設機器に関する情報を取得する接続機器検知手段と、
前記配電系統に電気的に接続されている所定の常設機器の稼働条件を予め記憶する稼働条件記憶手段と、
前記接続機器検知手段が取得した前記非常設機器に関する情報と前記稼働条件記憶手段に記憶された前記稼働条件とに基づいて、前記非常設機器の稼働時における前記常設機器の稼働状態を制御する稼働制御手段と、
を備えた家庭用エネルギー管理装置。
【請求項2】
前記配電系統側からの電力削減要請を受信する受信手段を備え、
前記稼働制御手段は、前記電力削減要請に対応する前記稼働条件に基づいて、前記非常設機器の稼働時における前記常設機器の稼働状態を制御する、
請求項1記載の家庭用エネルギー管理装置。
【請求項3】
前記配電系統から供給される電力の周波数を計測する供給周波数計測手段を備え、
前記稼働条件記憶手段は、所定の基準周波数に対する前記計測した電力の周波数の高低関係に対応する前記稼働条件を記憶し、
前記稼働制御手段は、前記所定の基準周波数に対する前記計測した周波数の高低関係に対応する前記稼働条件に基づいて、前記非常設機器の稼働時における前記常設機器の稼働状態を制御する、
請求項1または請求項2記載の家庭用エネルギー管理装置。
【請求項4】
前記所定の基準周波数を外部からの指示により変更可能とする基準周波数変更手段を備えた請求項3記載の家庭用エネルギー管理装置。
【請求項5】
前記配電系統から供給される電力の電圧を計測する供給電圧計測手段を備え、
前記稼働条件記憶手段は、所定の基準電圧に対する前記計測した電圧の高低関係に対応する前記稼働条件を記憶し、
前記稼働制御手段は、前記所定の基準電圧に対する前記計測した電圧の高低関係に対応する前記稼働条件に基づいて、前記非常設機器の稼働時における前記常設機器の稼働状態を制御する、
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の家庭用エネルギー管理装置。
【請求項6】
前記所定の基準電圧を外部からの指示により変更可能とする基準電圧変更手段を備えた請求項5記載の家庭用エネルギー管理装置。
【請求項7】
前記接続機器検知手段は、前記非常設機器のコンセントプラグに内蔵され、当該非常設機器を特定するための情報を記憶するICタグと、
前記差込口に併設され、前記ICタグと通信を行って前記非常設機器を特定するための情報を取得可能なICタグリーダと、
を備えている請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の家庭用エネルギー管理装置。
【請求項8】
配電系統からの電力供給がなされ、不定期に稼働される非常設機器が接続される差込口と、
前記非常設機器の稼働時において前記配電系統に電気的に接続されている所定の常設機器の稼働状態を制御する稼働制御装置と、を備え、
前記稼働制御装置は、
前記差込口に接続された前記非常設機器に関する情報を取得する接続機器検知手段と、
前記常設機器の稼働条件を予め記憶する稼働条件記憶手段と、
前記接続機器検知手段が取得した前記非常設機器に関する情報と前記稼働条件記憶手段に記憶された前記稼働条件とに基づいて、前記非常設機器の稼働時における前記常設機器の稼働状態を制御する稼働制御手段と、を備えた、
家庭用エネルギー管理システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate