説明

家庭用薄葉紙収納容器

【課題】家庭用薄葉紙の取り出しを容易に行う。
【解決手段】収納された家庭用薄葉紙Pを取り出す取出口が上部に形成された容器本体20と、容器本体の内部で回転可能に支持され、互いの外周部で前記家庭用薄葉紙を挟んで上方の取出口に向かって繰り出しを行う一対の繰り出し回転体30と、容器本体に対して上下動可能に支持されると共に少なくとも一方の繰り出し回転体の外周部との間に噛み合い構造部50を有する取り出し操作体40とを備え、噛み合い構造部50は、取り出し操作体の下降移動時に繰り出し回転体30を繰り出し方向に回転させるように噛み合うと共に当該繰り出し方向への回転動作のみを伝達可能なワンウェイクラッチ構造であることを特徴とする。これにより、簡単な家庭用薄葉紙Pの取出を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェットシートやウェットティッシュ等の家庭用薄葉紙を収納する家庭用薄葉紙収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
家屋の床やトイレ、或いは人体などを拭くための家庭用薄葉紙を収納する家庭用薄葉紙収納容器は、容器本体の上部に家庭用薄葉紙の取出口を有し、家庭用薄葉紙の紙端を摘んで上側に引っ張り出すように取り出して使用するものが一般的であった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−206055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような家庭用薄葉紙の取り出しの際には、引っ張り出すという作業が必須であり、家庭用薄葉紙のみ摘んで引っ張ると容器全体が引き寄せられて肝心の家庭用薄葉紙が取り出せなかったり、容器の形状によっては当該容器が転倒してしまったりする不都合があった。これは特に、容器内の家庭用薄葉紙が残り少なくなって、容器全体が軽くなると顕著に生じる現象であった。
これらは、一方の手で容器を押さえ、もう一方の手で家庭用薄葉紙を引っ張り出すという操作により防止することが可能であるが、家庭用薄葉紙の取り出しの際には両手が必要となって片手で簡単に取り出すことができなくなるという別の問題が生じていた。
【0005】
本発明は、家庭用薄葉紙の取り出し作業を容易に行うことができるようにすることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、内側に家庭用薄葉紙を収納すると共に、収納された前記家庭用薄葉紙を取り出す取出口が上部に形成された容器本体と、前記容器本体の内部で回転可能に支持され、互いの外周部で前記家庭用薄葉紙を挟んで上方の取出口に向かって繰り出しを行う一対の繰り出し回転体と、前記容器本体に対して上下動可能に支持されると共に少なくとも一方の前記繰り出し回転体の外周部との間に噛み合い構造部を有する取り出し操作体とを備え、前記噛み合い構造部は、前記取り出し操作体の下降移動時に前記繰り出し回転体を繰り出し方向に回転させるように噛み合うと共に当該繰り出し方向への回転動作のみを伝達可能なワンウェイクラッチ構造であることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記取出口には開閉可能な扉状の蓋体が設けられ、当該蓋体は弾性又は自重を利用した常閉式であり、前記取り出し操作体の下降移動時に前記蓋体を開かせる連動手段を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記噛み合い構造部は、前記繰り出し回転体の外周部に沿って形成された噛み合い歯と、前記取り出し操作体における前記繰り出し回転体の外周部との対向部位に上下方向に沿って形成されたラック状の噛み合い歯とを備え、前記取り出し操作体側の噛み合い歯は前記繰り出し回転体の外周部に対して接離可能に設けられ、前記各噛み合い歯の歯面が、前記取り出し操作体を下降移動させる場合に当該取り出し操作体を前記繰り出し回転体側に引き寄せる方向に接触圧を生じ、前記取り出し操作体を上昇移動させる場合に当該取り出し操作体を前記繰り出し回転体から離間させる方向に接触圧を生じる向きで形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明は、取り出し操作体と繰り出し回転体との間に形成された噛み合い構造部が、取り出し操作体の下降移動時に繰り出し回転体を繰り出し方向に回転させるように噛み合うと共に当該繰り出し方向への回転動作のみを伝達可能とするので、取り出し操作体を容器本体に対して下方に押し下げる操作で容器内部の家庭用薄葉紙を取出口から外部に繰り出すことが可能となり、取り出しの際に容器が引き寄せられたり転倒したりすることなく、家庭用薄葉紙の取り出し操作を容易に行うことが可能となる。このため、容器を押さえる必要がなくなり、片手で家庭用薄葉紙を取り出すことも可能となる。
また、噛み合い構造部は、取り出し操作体を上方に移動させても繰り出し回転体には回転動作が付与されないワンウェイクラッチ構造を有するので、取り出し操作体の一回の下降動作によって家庭用薄葉紙が取り出しきれない場合でも取り出し操作体の上下移動を繰り返し行えば良く、家庭用薄葉紙の取り出しをより確実に行うことが可能となる。
【0010】
請求項2記載の発明は、開閉可能な蓋体が設けられ、取り出し操作体の下降移動時に連動して蓋体が開くので、家庭用薄葉紙の取り出し作業の際に蓋体を開く作業を不要とし、取り出しの容易性を損なうことがない。その上、家庭用薄葉紙を取り出す必要がないときには取出口を蓋体で閉じておくことが可能であるため、容器本体内への塵芥等の侵入を防止することができ、また、家庭用薄葉紙が湿式のものである場合には容器内の乾燥を防止することが可能となる。
【0011】
請求項3記載の発明は、噛み合い構造部の取り出し操作体側の噛み合い歯と繰り出し回転体側の噛み合い歯の歯面が、取り出し操作体を上昇移動させる場合に当該取り出し操作体を繰り出し回転体から離間する方向に作用するので、噛み合い構造部のワンウェイクラッチ構造を容易に実現している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態としての家庭用薄葉紙収納容器の平面図である。
【図2】図1のW−W線に沿った断面図である。
【図3】図2のV−V線に沿った断面図である。
【図4】図2の状態から家庭用薄葉紙の繰り出し操作を行った状態を示す断面図である。
【図5】取り出し操作体の下降時における噛み合い構造部の作用を示す説明図である。
【図6】取り出し操作体の上昇時における噛み合い構造部の作用を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明の実施形態としての家庭用薄葉紙収納容器10の平面図、図2は図1のW−W線に沿った断面図、図3は図2のV−V線に沿った断面図、図4は図2の状態から家庭用薄葉紙Pの繰り出し操作を行った状態を示す断面図である。
なお、以下の説明において、鉛直上下方向をZ軸方向、所定の水平方向をX軸方向、水平であってX軸方向に直交する方向をY軸方向とする。また、以下に説明する家庭用薄葉紙収納容器10は水平面上に置かれた状態にあるものとして説明する。
【0014】
(家庭用薄葉紙収納容器の概略構成)
家庭用薄葉紙収納容器10は、図2に示すように、例えば、内側下部にロール状の家庭用薄葉紙P(例えば、ロール状に巻かれたウェットシートやウェットティッシュ等のロールペーパー)を収納するとともに、収納された家庭用薄葉紙Pを外側に取り出す取出口21が形成された容器本体20と、この容器本体20の取出口21の開閉を行う扉状の蓋体25,25と、容器本体20の内部で回転可能に支持され、互いの外周部で家庭用薄葉紙Pを挟んで上方の取出口21に向かって繰り出しを行う一対の繰り出し回転体としての繰り出しローラ30,30と、容器本体20に対して上下動可能に支持されると共にそれぞれの繰り出しローラ30,30に繰り出し動作方向の回転を付与する取り出し操作体40と、各繰り出しローラ30と取り出し操作体40との間に形成された噛み合い構造部50とを備えている。
【0015】
(家庭用薄葉紙)
この家庭用薄葉紙収納容器10に収納するロール状に巻かれた家庭用薄葉紙Pには、長さ方向に一定間隔をおいてミシン目P1が施されており、そのミシン目に沿って切り離したサイズの家庭用薄葉紙Pを、ユーザが使用するようになっている。
【0016】
(容器本体)
容器本体20は、図2に示すように、その中心線がZ軸方向に向けられた円筒状であって、その底面と上面とはいずれも閉塞され、内部に密閉空間を形成している。
また、容器本体20の外周面上であって、容器本体20を上方から見て直径方向両端部となる二箇所の位置にはZ軸方向に沿って取り出し操作体40の上下動を可能とする上下動ガイド部22,22が形成されている。かかる各上下動ガイド部22,22は、水平断面がコ字状となる保持部23,23が互いにその開口部が向かい合わせとした状態で上下方向に一様に形成されている。そして、これらコ字状の保持部23,23の間に取り出し操作体40の二つの長尺平板状の支柱42,42がそれぞれ挿入され、上下動ガイド部22に沿って上下に滑動可能となっている。
【0017】
容器本体20は、その全体が、例えば、PE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)、或いはPET(ポリエチレンテレフタレート)、ABS樹脂等を用いて、射出成形、二色成形、ブロー成形等により一体的に形成されている。
そして、容器本体20の上面中央部には内部の家庭用薄葉紙Pを取り出すための四角い取出口21が形成されている。かかる取出口21には、両開きの扉状の蓋体25,25が容器本体20の上面と一体的に形成されている。即ち、各蓋体25,25はその回動端部と回動端部とを突き合わせるように向けられた片持ち梁構造を採っており、容器本体20と一体的に形成されることから、容器本体20の材質の有する可撓性に従ってその基端部が撓むことで回動可能とし、開閉を行うようになっている。また、各蓋体25,25は通常は容器本体20の上面と面一の状態(図2の状態)を維持し、取出口21を閉じた状態となっている。そして、蓋体25,25の材質による弾性に抗して蓋体25,25を押し込むことで、各蓋体25,25の基端部が撓んで回動端部が回動を行い、取出口21が開かれるようになっている。また、各蓋体25,25は押し込む外力から解放されると、その弾性により閉状態に戻るいわゆる常閉式となっている。
【0018】
(繰り出しローラ)
繰り出しローラ30,30は、容器本体20の内部で家庭用薄葉紙Pの上方において、X軸方向に沿った回転軸31,31に軸支されている。これらの繰り出しローラ30,30は、いずれもZ軸方向について同じ高さで且つY軸方向に並んで配置され、また、家庭用薄葉紙Pがローラ間で挟み込まれて繰り出しが行われるように互いの外周面を近接させるように配置されている。
また、かかる各繰り出しローラ30,30の外周面には噛み合い構造部50を構成するローラ側噛み合い歯52,52が形成されている。これについては後述する。
【0019】
(取り出し操作体)
取り出し操作体40は、その上部に位置するY軸方向に沿った長尺状の天板41と、当該天板41のY軸方向両端部から下方に垂下支持されている二つの支柱42,42と、各支柱42,42の内側に隣接して天板41から垂下支持されている二つのラック板43,43と、天板41のY軸方向中央に形成された開口部44と、天板41における開口部44のY軸方向両側となる位置から垂下支持されている二つの蓋開放部45,45とを備えている。
取り出し操作体40は、その全体が一体的に形成されており、例えば、PE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)、或いはPET(ポリエチレンテレフタレート)、ABS樹脂等を用いて、射出成形、二色成形、ブロー成形等により一体的に形成されている。
【0020】
天板41は、図1に示すように、平面視でY軸方向に沿った長尺な平板であり、その長手方向中央部には前述したように開口部44が形成されている。かかる開口部44は容器本体20の取出口21の真上に位置しており、取り出し操作体40が取出口21を塞いで家庭用薄葉紙Pの取り出しを妨げることがないようにするために形成されている。
【0021】
二つの支柱42,42は、Z−X平面に平行且つZ軸方向に沿った長尺の平板状に形成されており、前述したように、いずれもガイド部22の各保持部23の隙間に挿入されてZ軸方向に沿ってスライド可能に保持されるようになっている。
【0022】
各ラック板43,43は、Z−X平面に平行且つZ軸方向に沿った長尺の平板状に形成されており、それぞれ支柱42,42の内側に隣接して設けられている。これら各ラック板43,43は、容器本体20の上面に形成されたスリット26,26に挿入され、各ラック板43,43の内側の面が各に形成された各繰り出しローラ30,30の外周面に接する配置となっている。
【0023】
そして、これらラック板43,43のローラ側の平面と各繰り出しローラ30,30の外周面とにそれぞれ噛み合い構造部50が形成されており、また、各ラック板43,43のローラ側の平面と各繰り出しローラ30,30の外周面における他方の繰り出しローラとの近接部位とは逆側の部位(図2における左側のローラ30の外周左側部位と右側のローラの外周右側部位)とが当接している。これにより、取り出し操作体40を下降させることで各ラック板43,43が各繰り出しローラ30,30を転動させることを可能としている。
【0024】
各蓋開放部45,45は、それぞれ蓋体25,25の真上となる位置に設けられ、その下端部が取り出し操作体40の下降時に各蓋体25,25に当接して、取り出し操作体40の下降移動に伴い、各蓋体25,25を下方に押し開くことが可能となっている。つまり、これら各蓋開放部45,45は、取り出し操作体40の下降移動時に蓋体25,25を開かせる連動手段として機能するようになっている。
【0025】
(噛み合い構造部)
噛み合い構造部50は、前述したように、ラック板43,43のローラ側の平面と各繰り出しローラ30,30の外周面とに形成されている。
即ち、ラック板43,43側には、Z軸方向に並んだラック状の噛み合い歯51がそれぞれ形成されている。この噛み合い歯51は、いわゆる歯車の噛み合い歯に近似して、一定のピッチ間隔で凸状の噛み合い歯が並ぶ構造であるが、正面視での断面形状が図5に示すように鋸歯状であり、いずれのラック板43,43とも、歯先が下方に向けて傾斜した構造となっている。
【0026】
また、各繰り出しローラ30,30には、ラック板43,43の噛み合い歯51,51に嵌合する形状で、歯車の噛み合い歯に近似して、外周面に沿って一定のピッチ間隔で凸状の噛み合い歯52,52が並ぶ構造となっている。
そして、正面視での断面形状が図5に示すように鋸歯状であり、いずれの繰り出しローラ30,30とも、外周における各ラック板43,43と噛合する位置で、歯先が上方に向けて傾斜した構造となっている。
つまり、図2における左側の繰り出しローラ30の噛み合い歯52は外周における左部位でラック板43の噛み合い歯51に噛合するので、繰り出しローラ30の外周左側で噛み合い歯52の歯先が上方に傾斜した状態となり、噛み合い歯52の歯先は図2における時計回り方向に向かって傾斜していることとなる。
また、図2における右側の繰り出しローラ30の噛み合い歯52は外周における右部位でラック板43の噛み合い歯51に噛合するので、繰り出しローラ30の外周右側で噛み合い歯52の歯先が上方に傾斜した状態となり、噛み合い歯52の歯先は図2における反時計回り方向に向かって傾斜していることとなる。
【0027】
図5及び図6により噛み合い構造部50の作用を説明する。なお、これら図5及び図6はいずれも図2における左側のラック板43及び繰り出しローラ30についてのみ図示するものであるが、右側のラック板43及び繰り出しローラ30について対称的に同様の作用を生じるので図示及び説明は省略する。
ラック板43側の噛み合い歯51は、その上部と下部とにそれぞれ傾斜面51aと51bとが形成され、繰り出しローラ30側の噛み合い歯52は、その上部と下部とにそれぞれ傾斜面52aと52bとが形成されている。
【0028】
そして、取り出し操作体40を下方に押し下げると、ラック板43側の噛み合い歯51の下側の傾斜面51bと繰り出しローラ30側の噛み合い歯52の上側の傾斜面52aとが圧接することとなるが、ラック板43側の噛み合い歯51は先端が下方に傾斜しているので、繰り出しローラ30側の噛み合い歯52から図5に示す矢印方向に反力R1を受けることになる。かかる反力R1は傾斜面51b(52a)に垂直となり、当該反力R1はラック板43を繰り出しローラ30側に引き寄せる方向の成分を含んでいるため、噛み合い歯51と噛み合い歯52との噛み合い状態が効果的に維持される。従って、取り出し操作体40を下方に押し下げると、各ラック板43、43は、各繰り出しローラ30,30を回転させることが可能となる。このとき、各繰り出しローラ30,30は、外周における互いの近接部位が上方に移動する方向に回転を行う(図2で左側の繰り出しローラ30は反時計方向、右側の繰り出しローラ30は時計方向)。従って、各繰り出しローラ30、30の間に、図2のように、家庭用薄葉紙Pの始端部が挟まれている状態の場合、当該家庭用薄葉紙Pを上方に向かって送り出すことが可能となる。
【0029】
一方、取り出し操作体40を上方に引き上げると、ラック板43側の噛み合い歯51の上側の傾斜面51aと繰り出しローラ30側の噛み合い歯52の下側の傾斜面52bとが圧接することとなるが、ラック板43側の噛み合い歯51は先端が下方に傾斜しているので、繰り出しローラ30側の噛み合い歯52から図6に示す矢印方向に反力R2を受けることになる。かかる反力R2は傾斜面51a(52b)に垂直となり、当該反力R2はラック板43を繰り出しローラ30から引き離す方向の成分を含んでいる。そして、ラック板43は、その上端部のみで支持され、下端部は自由端となる片持ち梁と同じ構造であるため、取り出し操作体40の剛性に応じて、ラック板43の自由端となる下端部はY軸方向に沿って容易に揺動可能となっている。
このため、ラック板43は、反力R2を受けると、繰り出しローラ30から離間する方向に容易に撓みを生じ、噛み合い歯51と噛み合い歯52との噛み合い状態を維持することができず、繰り出しローラ30に回転を伝えることなくラック板43のみが上方に引き上げられることとなる。従って、各繰り出しローラ30、30の間に、図2のように、家庭用薄葉紙Pの始端部が挟まれている状態の場合、当該家庭用薄葉紙Pが下方に押し戻されることないようになっている。
このように、噛み合い構造部50は、取り出し操作体40の下方移動時には繰り出しローラ30に対して家庭用薄葉紙Pを上方に送り出す方向への回転を付与し、取り出し操作体40の上方移動時には繰り出しローラ30に対して回転力を伝えない、いわゆるワンウェイクラッチとして機能するようになっている。
【0030】
(家庭用薄葉紙の取出動作)
次に、家庭用薄葉紙収納容器10における家庭用薄葉紙Pの取出動作について図2,4に基づいて説明する。
まず、各繰り出しローラ30,30の間に、家庭用薄葉紙Pの上端部が差し込まれた状態において、取り出し操作体40を図2の状態から下方に押し込むと、各ラック板43,43から噛み合い構造部50を介して各繰り出しローラ30,30に対して繰り出し方向の回転動作が付与される。これにより、家庭用薄葉紙Pは上方に送り出される。
そして、取り出し操作体40の各蓋開放部45,45がそれぞれ蓋体25,25に当接して下方に押し開ける。これにより、上方に送り出される家庭用薄葉紙Pは取出口21を通過し、取り出し操作体40の開口部44も通過して容器本体20の外部に繰り出されることとなる。
また、取り出し操作体40を上方に引き戻すと、各ラック板43から各繰り出しローラ30,30に対して回転力は付与されず、取り出し操作体40のみが引き上げられる。従って、家庭用薄葉紙Pが繰り出しの途中であっても下方に引き戻されることはないようになっている。また、各蓋開放部45,45は蓋体25,25から上方に離れるので、各蓋体25,25は自らの弾性により元の閉塞状態に戻ることとなる。
なお、取り出し操作体40の一回の下降動作で家庭用薄葉紙Pを十分に繰り出せないときには取り出し操作体40の上下動を複数回繰り返すこととなるが、上記の各動作が交互に行われることとなり、円滑に家庭用薄葉紙Pの繰り出しが実現する。
【0031】
(家庭用薄葉紙収納容器の効果説明)
以上のように、家庭用薄葉紙収納容器10では取り出し操作体40と各繰り出しローラ30,30との間に形成された噛み合い構造部50が、取り出し操作体40の下降移動時に各繰り出しローラ30,30を繰り出し方向に回転させ、当該繰り出し方向への回転動作のみを伝達可能とするので、取り出し操作体40を押し下げる操作で容器本体20の内部の家庭用薄葉紙Pを取出口21から外部に繰り出すことが可能となり、取り出しの際に容器が引き寄せられたり転倒したりすることなく、容易に行うことが可能となる。
また、噛み合い構造部50は、取り出し操作体40を上方に移動させても各繰り出しローラ30,30には回転動作が付与されないワンウェイクラッチ構造を有するので、取り出し操作体40の一回の下降動作によって家庭用薄葉紙Pが取り出しきれない場合でも上下移動を繰り返し行えば良く、家庭用薄葉紙Pの取り出しをより確実に行うことが可能となる。
【0032】
また、取り出し操作体40には蓋開放部45,45が設けられているので、取り出し操作体40の下降移動時に連動して蓋体25,25を開くことができ、より容易に家庭用薄葉紙の取り出しを可能とする。
また、蓋体25,25は容器本体20内への塵芥等の侵入を防止することができ、また、家庭用薄葉紙が湿式のものである場合に容器内の乾燥を防止することが可能となる。
また、噛み合い構造部50の取り出し操作体側の噛み合い歯51と繰り出しローラ30体側の噛み合い歯52の歯がいずれも噛合位置で上方に向けて傾斜しているので、取り出し操作体40の下方移動時のみ各繰り出しローラ30,30に繰り出し回転を付与するという作用を容易に実現することを可能としている。
【0033】
(その他)
容器本体20は例えば上下方向の中間でネジ構造などにより上下二つに分離可能とすることがより望ましい。その場合、分離された下部には家庭用薄葉紙Pのロールが収容され、分離された上部には各繰り出しローラ30,30や取出口21、取り出し操作体40が設けられるようにすること望ましい。かかる構成とすることで、内部の家庭用薄葉紙Pを補充したり、当初の家庭用薄葉紙Pの始端部を各繰り出しローラ30,30の間に挟み込ませる作業を容易に行うことが可能となる。
【0034】
なお、上記取り出し操作体40の二つの支柱42,42が挿入されるスリット26,26には、各支柱42,42の滑動を許容しつつも密閉性を確保するパッキングを設けても良い。
また、蓋体25,25もその周囲には隙間が生じやすいが、これらも蓋体25,25の回動を許容しつつも閉時には密閉性を生じるシール部材を設けても良い。
【0035】
なお、上記取り出し操作体40は二つの繰り出しローラ30,30の両方に対して回転力の付与を行っているが、片側だけに回転力を付与するよう噛み合い構造部50を構成しても良い。その場合でも、取り出し操作体40の下降により片方の繰り出しローラ30のみに回転力が付与されても、各繰り出しローラ30,30間に挟まれた家庭用薄葉紙Pがもう一方の繰り出しローラ30に回転力を伝達することとなり、両方の繰り出しローラ30,30により繰り出しを行うことが可能である。
【0036】
また、上記家庭用薄葉紙収納容器10ではロール状の家庭用薄葉紙Pを収納する場合を例示したが、例えば、一枚ずつカットされた家庭用薄葉紙Pを略二つ折りにして、互い違いに重ねて収納する場合にも、上記家庭用薄葉紙収納容器10は適用可能である。なお、その場合、容器本体20は直方体形状とすることがより望ましい。
【0037】
また、蓋体25は弾性により閉じた状態を維持する構造を採っているが、例えば、シーソーのように回動可能に支持され、一方の錘を設け、その自重により閉じた状態を維持する構造としても良い。
【符号の説明】
【0038】
10 家庭用薄葉紙収納容器
20 容器本体
21 取出口
25 蓋体
30 繰り出しローラ(繰り出し回転体)
40 取り出し操作体
43 ラック板
45 蓋開放部(連動手段)
50 噛み合い構造部
51,52 噛み合い歯
51a,51b,52a,52b 傾斜面
P 家庭用薄葉紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に家庭用薄葉紙を収納すると共に、収納された前記家庭用薄葉紙を取り出す取出口が上部に形成された容器本体と、
前記容器本体の内部で回転可能に支持され、互いの外周部で前記家庭用薄葉紙を挟んで上方の取出口に向かって繰り出しを行う一対の繰り出し回転体と、
前記容器本体に対して上下動可能に支持されると共に少なくとも一方の前記繰り出し回転体の外周部との間に噛み合い構造部を有する取り出し操作体とを備え、
前記噛み合い構造部は、前記取り出し操作体の下降移動時に前記繰り出し回転体を繰り出し方向に回転させるように噛み合うと共に当該繰り出し方向への回転動作のみを伝達可能なワンウェイクラッチ構造であることを特徴とする家庭用薄葉紙収納容器。
【請求項2】
前記取出口には開閉可能な扉状の蓋体が設けられ、
当該蓋体は弾性又は自重を利用した常閉式であり、
前記取り出し操作体の下降移動時に前記蓋体を開かせる連動手段を備えることを特徴とする請求項1記載の家庭用薄葉紙収納容器。
【請求項3】
前記噛み合い構造部は、前記繰り出し回転体の外周部に沿って形成された噛み合い歯と、前記取り出し操作体における前記繰り出し回転体の外周部との対向部位に上下方向に沿って形成されたラック状の噛み合い歯とを備え、
前記取り出し操作体側の噛み合い歯は前記繰り出し回転体の外周部に対して接離可能に設けられ、
前記各噛み合い歯の歯面が、前記取り出し操作体を上昇移動させる場合に当該取り出し操作体を前記繰り出し回転体から離間させる方向に接触圧を生じる向きで形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の家庭用薄葉紙収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−195166(P2011−195166A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63510(P2010−63510)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】