説明

家畜用膣内留置装置

【課題】家畜用膣内留置装置に関するものである。
【解決手段】膣内留置装置において、家畜の膣道を通過可能な細長い筒状容器と、筒状容器の長手方向の両端領域に配置され家畜の膣道を通過可能に曲げたたまれて膣内に挿入された後に前記筒状容器の長手方向軸線から外方へ延在するよう配置可能な、環状形状の複数の金属製ワイヤからなる翼部とを具えることを特徴とする。翼部は環状形状をしており、適切な係留力が得られ、且つ適度に膣壁の動きにより変形することによって、膣壁への過度の刺激を押さえることができ、膣壁を傷つけることがないため、膣炎の発生を防ぐこともできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、長期に亘り家畜の膣内に留め置かれる膣内留置装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家畜用膣内留置装置に関連した技術としては、例えば牛の分娩報知用の温度センサや、膣内に留置して発情周期同調剤を放出する膣内留置装置が提案されている(例えば特許出願文献1、特許出願文献2参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平7−313537
【0004】
【特許文献2】特表2004−522528(P2004−522528A)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
家畜の膣内留置装置は、その留置装置にセンサを取り付け家畜の生体情報をモニターして、飼料管理、疾病の早期発見、発情検知、分娩予測等を行ったり、発情周期同調剤を放出して発情を同期化する装置としては有用であるが、それらの技術では膣内留置装置の不測の脱落と膣炎の発生の両方を防止することが困難であり、数日間の連続留置が限界である。例えば、スカート状に広がった弾性薄板からなる固定式係留部を持つ特許文献1記載の温度センサと、樹脂の弾性力を利用してT字形またはY字形に変形可能な開閉式係留部を持つ特許文献2記載の膣内滞留装置の何れも係留期間は長くても5日程度で長期係留を目的としておらず、1ヶ月以上の長期に亘って家畜の膣内に留め置くのに充分な係留力は有していない。
【0006】
これらは係留部の外径や長さを大きくしたり、膣壁との接触面積を大きくしたりすることで、膣内留置装置の膣内からの脱落を防止することは可能であっても、膣壁に過度の刺激を与えたり、膣内体液の膣外への排出を妨げることに起因する膣炎の発生を防止することが出来ない。そのため短期的には膣内に留置することは出来ても、家畜の健康を損なわずに長期間家畜の膣内へ留置することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決した家畜用膣内留置装置を提供することを目的とするものであり、この発明の家畜用膣内留置装置は、家畜の膣道を通過可能な細長い筒状容器と、筒状容器の長手方向の両端領域に配置され家畜の膣道を通過可能に曲げたたまれて膣内に挿入された後に前記筒状容器の長手方向軸線から外方へ延在するよう配置可能な、環状形状の複数の金属製ワイヤからなる翼部とを具えることを特徴とするものである。
かかる家畜用膣内留置装置にあっては、翼部は自然状態では図4(a)に示すとおり展開された状態であるが挿入時に、翼部を曲げたたむことにより家畜の膣道を通過可能な細長い形状とされ、この状態で膣道の奥の膣内に該膣内留置装置が挿入された後は、その翼部が展開して膣壁と接触し膣内に係留される。
従って、この発明の家畜用膣内留置装置によれば、翼部は環状形状をしており、且つ適度に膣壁の動きにより変形することによって、膣壁への過度の刺激を押さえることが出来、膣壁を傷つけることがないため、膣炎の発生を防ぐことが出来る。また翼部は筒状容器の両端に配置されるため、膣内で展開すると前記筒状容器は膣壁に接触することなく宙に浮いた状態となり、更に翼部は金属製ワイヤからなるため、体液の自然排出を物理的に遮ることなくその通路を確実に確保することが出来るため、膣内体液の滞留に起因した膣炎の発生を防止できる。膣壁は膣内の体液により常に湿潤され、その体液の排出により雑菌や老廃物が洗い流されることが重要であり、膣内膣内留置装置と膣壁との接触面積は少ないほど、膣壁と体液との接触を可能とし、且つ体液の自然排出を可能とすることができる。しかも本発明の家畜用膣内膣内留置装置によれば翼部の枚数や線径を調整することにより容易に係留力を調整することが可能であるため、一種類のみあるいは僅かな種類で、膣サイズの個体差や怒責(きばること)による膣内圧の変化に応じて適切な係留力を得ることができる。
膣内留置の間、材料の保全性に対する生理学的影響を最小とするために本発明の家畜用膣内留置装置はコーティングされていてもよい。
【0008】
またこの発明においては、翼部の金属製ワイヤを超弾性特性を具える形状記憶合金にすることができる。形状記憶合金は、オーステナイト相からマルテンサイト相への変態が生じるような温度以下に冷却されたとき、元の形状から新たな形状に容易に変形し得る。変態が始まる温度は、通常Mと呼ばれ、変態が終わる温度は、Mと呼ばれる。このように変形した合金は、オーステナイト相にもどり始める温度Aまであたためられたとき、その元の形状にもどり始める。このオーステナイト相への変態過程、つまり形状回復過程が完了する温度は、Aと呼ばれる。形状記憶効果を示す多くの合金は、A以上の温度でオーステナイト相に外力を加えると応力誘起マルテンサイト相に変態し、外力を取り除くことにより直ちに元のオーステナイト相に戻り、超弾性と呼ばれるゴムのような弾力性を示す。このため、本発明の家畜用膣内留置装置の翼部を超弾性特性を示す形状記憶合金とすることにより、翼部は超弾性による変形回復力により、適切な係留力をえることができ、過度に膣壁を刺激することがなく、長期に渡り係留しても膣炎の発生を防ぐことが出来る。また、塑性変形をおこすことがないため、繰り返し使用することが出来る。
【0009】
さらに翼部に使用する前記形状記憶合金をニッケル−チタン合金にすることにより、マルテンサイト相からオーステナイト相への変態終了温度Aを体温付近に設定することが容易である。例えば、ニッケル濃度が56wt%のニッケル−チタン合金を480℃で熱処理するとマルテンサイト相からオーステナイト相への変態終了温度Aを30℃から35℃にすることが出来る。更に生体適合性が非常に良好であるため、長期間膣内に係留しても材料の生理学的影響がなく、膣炎の発生を防ぐことができる。
【0010】
また、オーステナイト相からマルテンサイト相への変態終了温度Mが0℃から25℃にあり、且つマルテンサイト相からオーステナイト相への変態終了温度Aが30℃から35℃にあれば、前記家畜用膣内留置装置の膣内への挿入作業が格段に向上し、挿入時に膣壁を傷つけるようなことを防止しつつ、上述と同じ効果を得ることが出来る。つまり、30℃から35℃以上の温度において前記翼部が前記筒状容器の長手方向軸線から外方へ延在するように形状記憶させた前記家畜用膣内留置留置装置を、膣道に挿入する前に室温または室温以下の温度(0℃から25℃)に調温してから膣道を通過可能に前記翼部を曲げたたむと、翼部は塑性変形してその状態を維持することが可能で、その状態の家畜用膣内留置装置が膣内に挿入された後は、家畜の体温により翼部が30℃から35℃以上になるため前記筒状容器の長手方向軸線から外方へ延在するように翼部が展開し、且つ超弾性状態になり膣内に安定して係留される。
【0011】
この発明の家畜用膣内留置装置はおいては、前記筒状容器内部に装着されて前記家畜の体外の信号受信装置と通信する送信装置と、前記筒状容器内または筒状容器外の前記膣内に配置されて所定種類の状態を検出し、その検出結果を前記送信装置に送る検出部とを具えることにより、膣内留置式センサとして利用できる。
これにより上記膣内膣内留置装置は膣道内に配置されて延在し、送信装置は、上記筒状容器内に装着されて、家畜の体外の信号受信装置と通信し、そして検出部は、筒状容器内または筒状容器外の膣内に配置されて、例えば膣内の温度や、膣内の体液の酸性度(pH)や、その体液の電導度等の所定種類の状態を検出し、その検出結果を送信装置に送る。
1ヶ月以上の長期間にわたり家畜の健康を害することなく膣内の生体情報を検出し、例えば図8に示されるようなシステムで検出結果をモニタすることが出来るため、適切な飼料管理、疾病の早期発見、発情検知、分娩予測といった管理が可能である。
【0012】
さらに、この発明においては、翼部が前記所定種類の状態を検出しその検出結果を前記信号送信装置に送る検出部を導電性電極として膣壁又は膣内粘液と接触させることができ、この場合、膣壁や膣内体液との接触状態が安定するため、膣内の温度や、膣内の体液の酸性度(pH)や、その体液の導電度等の所定種類の状態データを安定して検出することができる。
【0013】
また、前記筒状容器に生理学的に効果のある薬剤を含浸および/または貼付させることができる。例えば黄体ホルモン剤が筒状容器に含浸されている膣内留置装置を膣内に留置すると、家畜の発情を同期化する上で有用である。例えばCIDR(登録商標、米国、Pharmacia Animal Health社)のような現在入手しうる膣内挿入装置はその使用により膣炎や膣粘液の白濁化および漏出が認められるが、本発明の膣内留置装置の使用により、装置の膣内留置に起因する膣炎の発生を防ぐことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、家畜の膣内に留め置かれる留置装置において、前記家畜の膣道を通過可能な細長い筒状容器と、前記筒状容器の長手方向の両端領域に装着され、前記家畜の膣道を通過可能に曲げ畳まれて前記膣内に挿入された後に前記筒状容器の長手方向軸線から外方へ延在するよう配置可能な環状の複数の金属製ワイヤからなる翼部とを具えることを特徴とする。
本発明は、家畜用膣内留置装置において、前記翼部を超弾性特性を具える形状記憶合金により構成することを特徴とする。
本発明は、家畜用膣内留置装置において、前記形状記憶合金がニッケル−チタン合金であることを特徴とする。
本発明は、家畜の膣内に留め置かれる留置装置において、前記家畜の膣道を通過可能な細長い筒状容器と、前記筒状容器内部に装着され、家畜の体外に配設される信号受信装置に信号を伝送する信号送信装置と、前記家畜の膣内の温度などの所定種類の状態を検出し、その検出結果を前記信号送信装置に伝送する状態検出部と、前記筒状容器の長手方向の両端領域に装着され、前記家畜の膣道を通過可能に曲げ畳まれて前記膣内に挿入された後に前記筒状容器の長手方向軸線から外方へ延在するよう配置可能な環状の複数の金属製ワイヤからなる翼部とを具えることを特徴とする。
本発明は、家畜用膣内留置装置において、前記家畜の膣内の温度などの所定種類の状態を検出し、その検出結果を前記信号送信装置に伝送する状態検出部が、前記筒状容器内に配置されていることを特徴とする。
本発明は、家畜用膣内留置装置において、前記家畜の膣内の温度などの所定種類の状態を検出し、その検出結果を前記信号送信装置に伝送する状態検出部が、前記筒状容器内に配置されている信号送信装置にリード線で接続されて、前記筒状容器の外部の前記膣内に配設されていること特徴とする。
本発明は、家畜用膣内留置装置において、前記家畜の膣内の温度などの所定種類の状態を検出し、その検出結果を前記信号送信装置に伝送する状態検出部が、前記筒状容器内に配置されているとともに、さらに前記家畜の膣内の温度などの所定種類の状態を検出し、その検出結果を前記信号送信装置に伝送する状態検出部が、前記筒状容器内に配置されている信号送信装置にリード線で接続され、前記筒状容器の外部の前記膣内に配置されていること特徴とする。
本発明は、家畜の膣内に留め置かれる留置装置において、前記家畜の膣道を通過可能な細長い筒状容器と、前記筒状容器の長手方向の両端領域に装着され、前記家畜の膣道を通過可能に曲げ畳まれて前記膣内に挿入された後に前記筒状容器の長手方向軸線から外方へ延在するよう配置可能な環状の複数の金属製ワイヤからなる翼部と、前記筒状容器に貼付させる生理理学的に効果のある薬剤とを具えることを特徴とする。
本発明は、家畜の膣内に留め置かれる留置装置において、前記家畜の膣道を通過可能な細長く、含侵可能な筒状容器と、前記筒状容器の長手方向の両端領域に装着され、前記家畜の膣道を通過可能に曲げ畳まれて前記膣内に挿入された後に前記筒状容器の長手方向軸線から外方へ延在するよう配置可能な環状の複数の金属製ワイヤからなる翼部と、前記含侵可能な筒状容器に含侵させる生理理学的に効果のある薬剤とを具えることを特徴とする。
本発明は、家畜の膣内に留め置かれる留置装置において、前記家畜の膣道を通過可能な細長い筒状容器と、前記筒状容器の長手方向の両端領域に装着され、前記家畜の膣道を通過可能に曲げ畳まれて前記膣内に挿入された後に前記筒状容器の長手方向軸線から外方へ延在するよう配置可能な環状の複数の金属製ワイヤからなる導電性電極翼部と、膣壁又は膣内粘液と接触する前記導電性電極翼部により、前記家畜の膣内の温度などの所定種類の状態を検出し、その検出結果を前記信号送信装置に伝送する状態検出部と、前記筒状容器内部に装着され、家畜の体外に配設される信号受信装置に信号を伝送する信号送信装置とを具えることを特徴とする。
本発明は、家畜の膣内に留め置かれる留置装置において、前記家畜の膣道を通過可能な細長い筒状容器と、前記筒状容器の長手方向の両端領域に装着され、前記家畜の膣道を通過可能に曲げ畳まれて前記膣内に挿入された後に前記筒状容器の長手方向軸線から外方へ延在するよう配置可能な環状の複数の金属製ワイヤの導電性電極より成る翼部と、膣壁又は膣内粘液と接触する前記導電性電極翼部により、前記家畜の膣内の温度などの所定種類の状態を検出し、その検出結果を前記信号送信装置に伝送する状態検出部と、前記筒状容器内部に装着され、家畜の体外に配設される信号受信装置に信号を伝送する信号送信装置と前記筒状容器に貼付された生理理学的に効果のある薬剤とを具えることを特徴とする。
本発明は、家畜の膣内に留め置かれる留置装置において、前記家畜の膣道を通過可能な細長く、含侵可能な筒状容器と、前記筒状容器の長手方向の両端領域に装着され、前記家畜の膣道を通過可能に曲げ畳まれて前記膣内に挿入された後に前記筒状容器の長手方向軸線から外方へ延在するよう配置可能な環状の複数の金属製ワイヤの導電性電極より成る翼部と、膣壁又は膣内粘液と接触する前記導電性電極翼部により、前記家畜の膣内の温度などの所定種類の状態を検出し、その検出結果を前記信号送信装置に伝送する状態検出部と、
前記筒状容器内部に装着され、家畜の体外に配設される信号受信装置に信号を伝送する信号送信装置と前記含侵可能な筒状容器に含侵させる生理理学的に効果のある薬剤とを具えることを特徴とする。
本発明は、家畜の管理方法に係り、家畜の膣内に留め置かれる留置装置であって、前記家畜の膣道を通過可能な細長い筒状容器と、前記筒状容器内部に装着され、家畜の体外に配設される信号受信装置に信号を伝送する信号送信装置と、前記家畜の膣内の温度などの所定種類の状態を検出し、その検出結果を前記信号送信装置に伝送する膣内状態検出部と、前記筒状容器の長手方向の両端領域に装着され、前記家畜の膣道を通過可能に曲げ畳まれて前記膣内に挿入された後に前記筒状容器の長手方向軸線から外方へ延在するよう配置可能な環状の複数の金属製ワイヤからなる翼部とを具えた家畜用膣内留置装置により、前記家畜の膣内の温度などの所定種類の状態を検出し、その検出結果を前記信号送信装置に伝送し、前記信号送信装置からの信号を家畜体外で受信し、膣内の生体情報を検知することを特徴とする。
本発明は、家畜の管理方法に係り、家畜の膣内に留め置かれる留置装置であって、前記家畜の膣道を通過可能な細長い筒状容器と、前記筒状容器内部に装着され、家畜の体外に配設される信号受信装置に信号を伝送する信号送信装置と、前記家畜の膣内の温度などの所定種類の状態を検出し、その検出結果を前記信号送信装置に伝送する膣内状態検出部と、前記筒状容器の長手方向の両端領域に装着され、前記家畜の膣道を通過可能に曲げ畳まれて前記膣内に挿入された後に前記筒状容器の長手方向軸線から外方へ延在するよう配置可能な環状の複数の金属製ワイヤの導電性電極から成る翼部とを具えた家畜用膣内留置装置により、前記環状の複数の金属製ワイヤの導電性電極から成る翼部により、前記家畜の膣内の温度などの所定種類の状態を検出し、その検出結果を前記信号送信装置に伝送し、前記信号送信装置からの信号を家畜体外で受信し、膣内の生体情報を検知することを特徴とする。
【実施例】
【0015】
以下に、この発明の実施の形態を実施例を、図面に基づき詳細に説明する。
図1(a)、(b)に示されるように、この発明の家畜用膣内留置装置の第1実施例の牛用膣内留置装置のステンレスワイヤからなる片側4枚の翼部1が筒状容器2の両端領域3から曲げ畳まれた状態と翼部1が筒状容器2の長手方向軸線から外方へ延在するよう配置されている。図4(a)、(b)は、その第1実施例の牛用膣内留置装置の外観を翼部1が筒状容器2の長手方向軸線から外方へ延在するよう配置した状態で示す斜視図およびその図中の矢印P方向から見た端面図であり、そして図4(c)に示されるようにその第1実施例の牛用膣内留置装置の外観を翼部1が曲げ畳まれる。
【0016】
第1実施例における筒状容器の大きさは、直径18mm、長手方向の長さが100mmで両端部を面取り加工してある。翼部1には直径0.8mmのステンレスワイヤを用い、1枚の翼部の長径方向の長さは35mmの大きさに調整した。
【0017】
この第1実施例の牛用膣内留置装置は、家畜としての牛の膣内に留め置かれて、その膣内の温度や体液の酸性度(pH)や電導度等の所定種類の状態を検出し、その検出した状態をその牛の体外に出力するものであって、図1(a)および図4(c)に示すように、環状形状の片側4枚のステンレスワイヤからなる翼部1が筒状容器の長手方向の両端領域3に配置され、牛の膣道を通過可能に曲げ畳まれた形状により膣道の奥に挿入され、図1(b)および図4(a),(b)に示すように翼部1が筒状容器2の長手方向軸線から外方へ延在するよう配置した形状をとることにより、膣内に留置される。筒状容器2内部に家畜の体外の信号受信装置と通信する信号送信装置4と、膣内の温度や体液の酸性度(pH)や導電度等の所定種類の状状態を検出しその検出結果の電気信号を信号送信装置4に送る状態検出部5cとを具えている。
【0018】
さらにこの第1実施例の牛用膣内留置装置は、上記筒状容器2内に収容されたバッテリー6からの給電により作動し、図8に示されるように牛の体外の信号受信装置と無線通信する。第1実施例では、状態検出部5cに温度センサを配置し、膣内の体温を検出し、牛の体外の信号受信装置と無線通信し、得られたデータをデータ判別部で判断し、牛の発情時期の判定や健康状態の善し悪しの判定を行い、パソコンまたは携帯電話等の表示部に表示する。
【0019】
この第1実施例の牛用膣内留置装置によれば、片側4枚のステンレスワイヤ製の翼部1が環状形状となることで膣内に係留されるので、膣内を傷つけることがなく、膣外方向に当該留置装置が排出されようとする力に対して翼部の弾性力により抵抗するため、膣内からの当該留置装置の不測の脱落を防止するのに充分な大きな係留力を得ることができる。
翼部1の線径または枚数または大きさを調節することにより、一種類のみあるいは僅かな種類で、牛の個体差に応じて常に大きな係留力を得ることができる。
さらにこの第1実施例の牛用膣内留置装置によれば、翼部1はステンレスワイヤからなるため、膣内の体液の自然排出を物理的に遮ることなく、膣内体液の滞留に起因した腱炎の発生も防止できる。
【0020】
図2(a)、(b)に示す第2実施例の牛用膣内留置装置は、筒状容器2内に配置されて上記膣内の所定種類の状態を検出し、その検出結果の電気信号を信号送信装置4に送る前記状態検出部5cの代わりに、膣内に配置されて温度や体液の酸性度(pH)や導電度等の、前記状態検出部5cと異なるかまたは同一の所定種類の状態を検出し、その検出結果を筒状容器2内の信号送信装置4に送る外部状態検出部5aを具えている。
ここで、外部検出部5aを筒状容器2内の信号送信装置4に繋ぐリード線5bは、翼部1が筒状容器2の長手方向軸線から外方へ延在するよう配置した形状の状態でも外部検出部5aが膣内の底壁に接触できる程度の長さを有しており、また外部検出部5aは牛の姿勢に拘らず自重でぶら下がって膣内の子宮前庭部等の体液に接触できる程度の重さを有している。
かかる第2実施例の牛用膣内留置装置によれば、先の第1実施例と同様の作用効果が得られるのに加えて、外部状態検出部5aが膣内の状態を直接的に検出するので、その状態の変化をより高感度に検出することができる。
【0021】
図3(a)、(b)に示す第3実施例の牛用膣内留置装置は、筒状容器2内に配置されて上記膣内の所定種類の状態を検出し、その検出結果の電気信号を信号送信装置4に送る状態検出部5cと、膣内に配置されて温度や体液の酸性度(pH)や導電度等の、状態検出部5cと異なるかまたは同一の所定種類の状態を検出し、その検出結果を筒状容器2内の信号送信装置4に送る外部状態検出部5aとの両方を具えている。
ここでも、外部状態検出部5aを筒状容器2内の信号送信装置4に繋ぐリード線5bは、翼部1が筒状容器2の長手方向軸線から外方へ延在するよう配置した形状の状態でも外部状態検出部5aが膣内の底壁に接触できる程度の長さを有しており、また外部状態検出部5aは牛の姿勢に拘らず自重でぶら下がって膣内の子宮前庭部等の体液に接触できる程度の重さを有している。
かかる第3実施例の牛用膣内留置装置によれば、先の第1実施例と同様の作用効果が得られるのに加えて、第2実施例の作用効果である外部状態検出部5aが膣内の状態を直接的に検出するので、両者によりその状態の変化をより高感度に検出することができるなどの相乗の効果が得られる。
【0022】
さらに他の実施例の牛用膣内留置装置においては、前記翼部1をニッケルーチタン合金製で超弾性特性を示す形状記憶合金とした。かかる実施例の牛用膣内留置装置によれば、図5に示されるように翼部1は前記筒状容器の長手方向軸線から各翼の遠位端に対する角度が0℃から180℃の範囲で弾性的に変形可能であり、折り曲げに対抗することができる。また翼部1の生体適合性と超弾性がステンレスワイヤより優れるため、長期間に渡る膣炎の防止効果がより高く、塑性変形をおこしにくいため、繰り返し使用することが出来る。
さらに上記の実施例において、翼部を形成している金属製ワイヤを図9に示されるように一本のワイヤで構成することもできる。
【0023】
図6は、さらにこの発明の他の実施例の牛用膣内留置装置の外観を示す斜視図である。この実施例の牛用膣内留置装置においては、翼部7が導電性電極として膣壁又は膣内粘液と接触して、膣内の温度や体液の酸性度(pH)や導電度等の所定種類の状態を検出し、その検出結果を前記信号送信装置4に送る外部状態検出部となる。一実施例では、最も遠方に位置する翼部7の電極対(図6におけるA−H)間で導電度を検出した。この検出方法により膣内の非局所的な状態を検知することが出来る。さらに他の実施例では、膣口付近に位置する翼部7の電極対(図6におけるA−D)と膣の奥に位置する翼部7の電極対(図6におけるF−G)で同一の状態(導電度)を検出した。この検出方法により膣内のデータ分布を把握することが可能であり、得られたデータを平均化することでデータを丸めることも出来る。このデータの丸め方は単一データの移動平均処理とはことなり、発情時に見られる急激な状態変化をより確実に捕らえることが出来る。
この実施例の牛用膣内留置装置によれば、先に述べた実施例と同様の作用効果に加えて、膣壁や膣内粘液と接触良好な翼部1が膣内の状態を直接的に検出するので、膣内の状態の変化をより高感度で、精確に安定して検出することができる。
【0024】
また上述の実施例に限らず、翼部7の枚数や回路に応じて、膣内の単一の状態を検出してもよいし、膣内の複数の状態を検出しても良い。
【0025】
図7に示されるように本発明の家畜用膣内留置装置は牛の膣内に留置される。
【0026】
牛にプロゲステロン(黄体ホルモン)を持続的に投与すると、下垂体前葉からのLH(黄体形成ホルモン)とFSH〈卵胞刺激ホルモン〉の放出が抑制される。卵胞の発育は抑制され、発育中の卵胞は退行し、発情周期が停止する。投与を中止すると、下垂体前葉からのLHとFSHの放出抑制が解除され、その結果、卵胞の発育が再開される。そして、発情が発現する。牛に黄体ホルモンを持続的に投与する薬剤として、CIDR(膣内に挿入するもの)などがある。
他の実施例ではナイロン製の筒状容器にプロゲステロン(黄体ホルモン)1.9gを含浸させたシリコンエラストマーをコーティングし、翼部として超弾性特性を示すニッケルーチタン合金製の形状記憶合金を用いた膣内留置装置を牛に15日間留置した後に取り出した。
30頭の牛に実施したが、全頭が膣内留置装置を除去後2〜4日以内に発情が発現した。
また、試験期間中、該膣内留置装置の脱落はなく、膣炎の発生も観察されなかった。この様に発情を同期させる目的で該膣内留置装置を用いる場合、プロゲステロン量は、血中プロゲステロン濃度を下垂体前葉からのLHとFSHの放出を抑制するのに十分な量、すなわち2ng/ml以上に保つ量であればよい。
【0027】
この実施例に限定されることなく、生理学的に効果のある薬剤は筒状容器に直接含浸されていてもよく、医薬用カプセルに充填された薬剤を筒状容器に貼り付けてもよい。
【0028】
以上、実施例に基づき説明したが、この発明は上述の構成に限定されるものでなく、例えば筒状容器2の片端に配置される翼部1の枚数は2枚でも良いが、家畜の膣壁と筒状容器1との接触を減らす効果を得るためには3枚以上が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の家畜用膣内留置装置の翼部は超弾性による変形回復力により、適切な係留力を得ることができ、過度に膣壁を刺激することがなく、長期に渡り係留しても膣炎の発生を防ぐことが出来る。また塑性変形をおこすことがないため、繰り返し使用することが出来るなど優れた効果があり、家畜用膣内留置装置として、この分野での高い利用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】(a)、(b)は、この発明の第1実施例の家畜用膣内留置装置の翼部が曲げたたまれた状態と筒状容器2の長手方向軸線から外方へ延在するよう配置した状態をそれぞれ示す断面図である。
【図2】(a)、(b)は、外部状態検出部を具えた、この発明の第2実施例の家畜用膣内留置装置の翼部が曲げたたまれた状態と筒状容器2の長手方向軸線から外方へ延在するよう配置した状態をそれぞれ示す断面図である。
【図3】(a)、(b)は、この発明の第3実施例の家畜用膣内留置装置の翼部が曲げたたまれた状態と筒状容器2の長手方向軸線から外方へ延在するよう配置した状態をそれぞれ示す断面図である。
【図4】(a)、(b)、(c)は 、上記第1実施例の家畜用膣内留置装置の図1(a ),(b)の状態の外観を示す斜視図およびその図中の矢印P方向から見た端面図、そして(c)は、その第1実施例の牛用膣内留置式センサーの図1(a)の状態の外観を示す斜視図である。
【図5】は、第1実施例の翼部1が前記筒状容器の長手方向軸線から各翼の遠位端に対する角度が0℃から180℃の範囲で弾性的に変形することを示す説明図である。
【図6】は、この発明の家畜用膣内留置装置の他の実施例の牛用膣内留置装置の外部状態検出部の導電性電極翼部の外観を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る家畜用膣内留置装置が牛の膣内に留置されている状態示す断面図である。
【図8】本発明に係る家畜用膣内留置装置を用いた膣内の所定状態を検出し、モニタを行うシステムの説明図である。
【図9】本発明に係る家畜用膣内留置装置の第1、2及び3実施例などの装置に用いられる金属製ワイヤの形状を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1 翼部
2 筒状容器
3 筒状容器の両端領域
4 信号送信装置
5a 外部状態検出部
5b リード線
5c 内部状態検出部
6 バッテリー
7 導電性電極翼部
8 直腸
9 膣
10 牛用膣内留置装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜の膣内に留め置かれる留置装置において、
前記家畜の膣道を通過可能な細長い筒状容器と、
前記筒状容器の長手方向の両端領域に装着され、前記家畜の膣道を通過可能に曲げ畳まれて前記膣内に挿入された後に前記筒状容器の長手方向軸線から外方へ延在するよう配置可能な環状の複数の金属製ワイヤからなる翼部と
を具えることを特徴とする家畜用膣内留置装置。
【請求項2】
前記翼部を超弾性特性を具える形状記憶合金により構成することを特徴とする請求項1に記載の家畜用膣内留置装置。
【請求項3】
前記形状記憶合金がニッケル−チタン合金であることを特徴とする請求項2に記載の家畜用膣内留置装置。
【請求項4】
前記筒状容器内部に装着され、家畜の体外に配設される信号受信装置に信号を伝送する信号送信装置と、
前記家畜の膣内からわかる生体情報を検出し、その検出結果を前記信号送信装置に伝送する状態検出部と
を具えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の家畜用膣内留置装置。
【請求項5】
前記家畜の膣内からわかる生体情報を検出し、その検出結果を前記信号送信装置に伝送する状態検出部が、前記筒状容器内に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の家畜用膣内留置装置。
【請求項6】
前記家畜の膣内からわかる生体情報を検出し、その検出結果を前記信号送信装置に伝送する状態検出部が、前記筒状容器内に配置されている信号送信装置にリード線で接続されて、前記筒状容器の外部の前記膣内に配設されていること特徴とする請求項4に記載の家畜用膣内留置装置。
【請求項7】
前記膣内に放出可能に筒状容器に保持される生理理学的に効果のある薬剤
を具えることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の家畜用膣内留置装置。
【請求項8】
前記薬剤は、前記筒状容器に貼付されて保持されることを特徴とする請求項7に記載の家畜用膣内留置装置。
【請求項9】
記薬剤は、含侵可能な前記容器に含侵されて保持されることを特徴とする請求項7に記載の家畜用膣内留置装置。
【請求項10】
前記翼部は、導電性電極部を具え、前記状態検出部は、膣壁又は膣内粘液と接触する前記導電性電極部により、前記家畜の膣内からわかる生体情報を検出し、その検出結果を前記信号送信装置に伝送することを特徴とする請求項4から9のいずれか1項に記載の家畜用膣内留置装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−246944(P2006−246944A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−63972(P2005−63972)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(592059448)原田電子工業株式会社 (20)
【出願人】(000232922)日油技研工業株式会社 (67)
【出願人】(000004341)日本油脂株式会社 (896)
【出願人】(594044381)株式会社ミック (1)