説明

家畜用飼料

【課題】家畜に対して抗菌、消炎効果等を有する木本植物桑は、木質化して、堅いため、機械化による収穫ができない等の問題点がある。そこで、製造コストが安く、商品化実現が可能で、しかも、デオキシノジリマイシンの含有量が多い家畜用飼料を提供する。
【解決手段】促成種の家畜用木本植物桑の桑枝が完全に木質化しない内に桑の葉と若い桑枝を刈り取り、乾燥、粉末加工した家畜用飼料であって、前記桑の葉と桑枝の組成が、葉が付いている若い桑枝の葉と枝を自然の割合で構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜用木本植物飼料、特に、桑を原料とした家畜用飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、桑葉は蚕の餌として使われてきた。
【0003】
また、中国で桑葉は漢方薬として最も常用している。
【0004】
20世紀80年代、アメリカ、インド、日本国等の研究員は大量の試験を通じて、桑葉を家畜に与えることで家畜の生産能力を向上させるだけでなく、肉、卵、乳の栄養成分を改善し、家畜製品の風味を良くする効果があると共に、最も注目されたのは、家畜の免疫力を上昇させることから抗菌、消炎効果を発揮して、一部抗生物質の代替をすることができるということがわかった。
【0005】
そのため、桑の葉エキスを用いたペット用サプリメントとして、ペットの嗜好性に合い、過剰な体重減少や便の軟便化、下痢等の症状を起こさず、症状にあった有効量を安全に摂取することができるような抗肥満硬化に優れたものの提案がなされている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−357503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、通常の木本植物桑は、木質化して、堅いため、機械化による収穫ができず、やむを得ず、人手による単純な摘み取り収穫作業となってしまい、したがって、短時間で大量の収穫ができず、しかも、人件費が嵩むため、コストが高く、商品化として実現できない状態となっている。
【0007】
本発明の目的は、製造コストが安く、商品化実現が可能で、しかも、デオキシノジリマイシンの含有量が多い家畜用飼料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明の家畜用飼料は、促成種の家畜用木本植物桑の桑枝が完全に木質化しない内に桑の葉と若い桑枝を刈り取り、乾燥、粉末加工した家畜用飼料であって、前記桑の葉と桑枝の組成が、葉が付いている若い桑枝の葉と枝を自然の割合で構成したことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、促成種の家畜用木本植物桑の桑枝が完全に木質化しない内に桑の葉と若い桑枝を刈り取り、桑の葉と桑枝の組成が、葉が付いている若い桑枝の葉と枝を自然の割合で構成したため、まだ桑の枝が木質化していないので、機械生産が可能となり、短時間で、多量の刈り取りが可能となり、人件費が少なくて済み、製造コストが安く、市場商品化実現が可能となる。
【0010】
特に、若い桑枝の皮は、桑の葉のデオキシノジリマイシンの含有量よりも3倍程度のデオキシノジリマイシンが含有されており、その結果、デオキシノジリマイシンの含有量が多い家畜用飼料を提供することができる。
【0011】
このデオキシノジリマイシンは、家畜に対して抗菌、消炎、消臭効果を有し、家畜の生産能力を向上させるだけでなく、肉、卵、乳の栄養成分を改善し、家畜製品の風味を良くする効果がある。
【0012】
また、この家畜用飼料を粉末状にすることで、家畜にとって食べやすく、消化も良いものとすることができる。
【0013】
本発明においては、前記粉末状態の加工品をさらに圧縮固化させてペレット状に形成することができる。
【0014】
このような構成とすることにより、この家畜用飼料を扱いやすいものとすることができる。
【0015】
本発明においては、飼料中の粗繊維含有量は、飼料の嗜好性と消化率に影響を与えないように25%より少なくすることができる。
【0016】
このような構成とすることにより、確実に飼料の嗜好性と消化率に影響を与えないものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について説明する。
【0018】
この実施の形態における家畜用飼料は、促成種の家畜用木本植物桑を原料として製造される。
【0019】
特に、桑枝が完全に木質化しない内に桑の葉と若い桑枝を刈り取り、乾燥、粉末加工した家畜用飼料である。
【0020】
そして、桑の葉と桑枝の組成が、葉が付いている若い桑枝の葉と枝を自然の割合で構成している。
【0021】
このように、促成種の家畜用木本植物桑の桑枝が完全に木質化しない内に桑の葉と若い桑枝を刈り取り、桑の葉と桑枝の組成が、葉が付いている若い桑枝の葉と枝を自然の割合で構成したため、まだ桑の枝が木質化していないので、機械生産が可能となり、短時間で、多量の刈り取りが可能となり、人件費が少なくて済み、製造コストが安く、市場商品化実現が可能となる。
【0022】
特に、若い桑枝の皮は、桑の葉のデオキシノジリマイシンの含有量よりも3倍程度のデオキシノジリマイシンが含有されており、その結果、デオキシノジリマイシンの含有量が多い家畜用飼料とすることができる。
【0023】
このデオキシノジリマイシンは、家畜に対して抗菌、消炎、消臭効果を有し、家畜の生産能力を向上させるだけでなく、肉、卵、乳の栄養成分を改善し、家畜製品の風味を良くする効果がある。
【0024】
例えば、この家畜用飼料を鶏に給与することで、その量によって鶏の腸内pHを制御することが可能となる。
【0025】
鶏の腸は、大腸では、空回腸と大腸の移行部に長さ10数cmに達する一対の盲腸があり、結直腸は結腸と直腸を区別することはできず、この部分はほ乳類の直腸に相当する。
【0026】
盲腸は、サルモネラ菌の最終的な好寄生部位であり、サルモネラ菌の分離率が高い。
【0027】
従来では、清浄なヒナに正常盲腸内細菌叢を投与したり、オリゴ糖や乳糖を投与することで腸内pHを制御し、サルモネラ菌に対処していたが、pHの制御範囲が狭く、十分に対処できなかった。
【0028】
これに対し、本桑を用いた家畜用飼料を用いることで、広範囲なpH制御が可能で、サルモネラ菌に殺菌効果のあるpH4.5以下まで下げることができ、しかも、乳糖やオリゴ糖投与の場合のように軟便に成らずにすますことができる。
【0029】
また、この家畜用飼料を粉末状にすることで、家畜にとって食べやすく、消化も良いものとすることができる。
【0030】
粉末状態の加工品をさらに圧縮固化させてペレット状に形成することで、この家畜用飼料を扱いやすいものとすることができる。
【0031】
さらに、飼料中の粗繊維含有量は、飼料の嗜好性と消化率に影響を与えないように25%より少なくして、確実に飼料の嗜好性と消化率に影響を与えないものとしている。
【0032】
また、桑の葉と若い枝で製造した家畜用飼料は配合飼料に添加して用い、その中の添加割合が配合飼料の総重量の3%〜5%となるようにして用いるとよい。
【0033】
この家畜用飼料は、鶏、豚、牛、馬、羊、鹿、ウサギ、魚等の全ての家畜の飼育に広範に用いることができ、家畜の生産能力が著しく高くなって、肉、卵、乳の栄養成分と家畜の免疫力を改善することができる。
【0034】
次に、このような家畜用飼料の製造方法について説明する。
【0035】
この家畜用飼料は、まず、原材料である飼料用木本植物桑の栽培から始める。
【0036】
この飼料用木本植物桑には、品種改良した2ヶ月〜3ヶ月で収穫できる促成種の葉の大きなしかも、水分需要量が少なく、生命力が強いものを採用する。
【0037】
この飼料用木本植物桑の栽培に際しては、例えばアジアの亜寒帯(北京、河北、山東等のエリア)で、年間3、4回刈り取り可能な地域を選び、大量の苗木を確保するため、温室(ビニールハウス)を設けて、種を蒔く。
【0038】
種を蒔いてから約1ヶ月後に成長した苗木を圃場に植え換えて、露地栽培に移行する。
【0039】
圃場の1区画は、例えば、約40m×400m程度で、苗は自動桑植え付け機を用いて、例えば幅30cm、横60cmの間隔で1ヘクタールに、例えば55,560本以上整然と植え付ける。
【0040】
露地で約2ヶ月間、桑の高さが10cm〜150cm程度になるまで栽培される。
【0041】
この時の桑の葉の大きさは直径16cm前後で、桑の若枝が完全に木質化していない状態とされる。
【0042】
次に、このような状態で桑の刈り取りを行う。
【0043】
刈り取りは、自動式大型桑葉専用刈り取り機と桑場輸送用トラクタが2台1組となり、地上約3cm〜5cmから桑葉のついた桑枝毎刈り取る。
【0044】
このようにすることで、年間3、4回の刈り取りが可能となり、その結果、桑の木を灌木状に栽培して、年間の1ヘクタールあたりの桑と桑木の乾燥物の生産量を18t〜25tとすることができる。
【0045】
次いで、刈り取った桑葉及び桑枝を屋根付きの乾燥場に搬入し、そこで約2日間自然乾燥させる。
【0046】
次に、自然乾燥させた桑葉及び桑枝をコンベア等にて乾燥機に搬送して、そこでコンピュータ制御により適切かつ安定した乾燥条件のもとに乾燥処理が行われる。
【0047】
その後、乾燥した桑葉、桑枝の破砕処理あるいはその後の圧縮処理によって粉末状あるいはペレット状の家畜用飼料を製造する。
【0048】
また、高速液体クロマトグラフィー(HPLC-PDA法)で桑の枝の皮と桑の葉に含まれているデオキシノジリマイシン(DNJ)の含有量を測定した結果、桑の枝の皮にDNJ含有量が496.5(mg/100mg)で、桑の葉のDNJ含有量が162.2(mg/100mg)となり、桑の枝の皮のDNJ含有量は桑の葉のDNJ含有量の約3.05倍であることが判明した。
【0049】
さらに、この家畜用飼料の桑の枝と桑の葉の組成は図1に示す状態となっており、桑の枝が平均36.77%、桑の葉が平均63.22%となっており、桑の葉のみを原材料とした家畜用飼料と異なり、DNJが多く含まれている桑の枝の皮が原材料に含まれているため、DNJ含有量が多い家畜用飼料が得られることとなる。
【0050】
本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の形態に変形可能である。
【0051】
例えば、桑の栽培面積、本数、植え付けの条件等は前記実施の形態に限定されるものではなく、栽培する条件に合わせて種々変更することができる。
【0052】
また、桑の栽培地域等についても前記実施の形態に限らず、世界中桑を飼料用として栽培可能な地域であれば自由に選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】桑の枝と桑の葉の組成を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
促成種の家畜用木本植物桑の桑枝が完全に木質化しない内に桑の葉と若い桑枝を刈り取り、乾燥、粉末加工した家畜用飼料であって、
前記桑の葉と桑枝の組成が、葉が付いている若い桑枝の葉と枝を自然の割合で構成したことを特徴とする家畜用飼料。
【請求項2】
請求項1において、
前記粉末状態の加工品をさらに圧縮固化させてペレット状に形成したことを特徴とする家畜用飼料。
【請求項3】
請求項1または2において、
飼料中の粗繊維含有量は、飼料の嗜好性と消化率に影響を与えないように25%より少なくされていることを特徴とする家畜用飼料。

【図1】
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【公開番号】特開2008−283957(P2008−283957A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251133(P2007−251133)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(507321864)株式会社可成利亜 (3)
【Fターム(参考)】