説明

家畜飼料貯配タンク用スライドダンパー及び家畜飼料の取り出し方法

【課題】家畜飼料貯配タンク内の飼料を必要量取り出すことが容易で、その際に、タンク内からの飼料の取出し位置の偏りを抑制し、タンク内に飼料を逐次供給していっても、以前からの飼料の残留を防ぐことも可能で、ブリッジ現象の発生も防止することが可能な家畜飼料貯配タンク用スライドダンパー及び家畜飼料の取り出し方法を提供する。
【解決手段】開口部1fを備えたダンパー本体1と、ダンパー本体1にそれぞれ同じ方向にスライドするように並列に取り付けられ、開口部1fを開閉自在とする一対のシャッター部材3,3とを備え、家畜飼料貯配タンクの下部開口部に取り付けられる家畜飼料貯配タンク用スライドダンパーA及び家畜飼料貯配タンク内の飼料を取り出す際に、家畜飼料貯配タンク用スライドダンパーAのシャッター部材3,3を、1〜3回毎に交互に開けて、タンク内の飼料を供給する家畜飼料の取り出し方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛などの家畜の飼料を貯配するための家畜飼料貯配タンクに使用する家畜飼料貯配タンク用スライドダンパー及び該家畜飼料貯配タンク用スライドダンパーを利用してタンク内の家畜飼料を取り出す家畜飼料の取り出し方法に関し、より詳細には、家畜飼料貯配タンク内の飼料の取り出し量を容易に調節することができ、更に、タンク内の飼料の偏荷重の発生を抑制することが可能であり、ブリッジ現象の発生も抑制することが可能な家畜飼料貯配タンク用スライドダンパー及び家畜飼料の取り出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
牛などの家畜飼料としては、例えば、粉状のマッシュ系、顆粒状タイプ、草など、多種の飼料が混ざり、粒径がばらばらでかさばり、飼料流動性の悪いミックス系などに分類することができる。そして、これらの家畜飼料は、従来、例えば、開口部を開閉するシャッターを備えたダンパーをタンクの下部開口部に取り付けた家畜飼料貯配タンク内に投入し、飼料供給時には、ダンパー開口部のシャッターを開いて、タンク内の飼料を取り出していた。このようなダンパーとしては、スライドシャッターダンパー、バタフライダンパー、クローバーダンパー、袋取ダンパー等が挙げられる。スライドシャッターダンパーは、ダンパー開口部に1枚の四角形シャッター部材をスライド可能に取り付け、このシャッター部材をスライドさせることによって、ダンパーの開口部を開け閉めするものである。バタフライダンパーは、ダンパー開口部とほぼ同径の円形シャッター部材の中心に軸があり、開いた時、シャッター部材が上下になるダンパーであり、通常、マッシュ系(粉状)の飼料に対して使用されている。クローバーダンパーは、ダンパー開口部とほぼ同径の円形シャッター部材をクローバーの葉のような形に繰り抜いた一対のシャッター部材を重ね合わせ、一方のシャッター部材を円周方向にスライドさせることによって、ダンパー開口部を開閉するものであり、開口比率が小さく、飼料扱いは、流動性の良い顆粒状のものが良いとされている。袋取ダンパーは、ダンパー開口部の開閉の構造は、上記バタフライダンパーと同様だが、飼料を袋に取れるように、排出口を絞ったタイプであり、この袋取ダンパーは、通常のバタフライダンパーに比べてシャッター部口径が小さいため、ミックス系の飼料を扱っても、通常のバタフライダンパーよりも噛み込みは少ないが、通常のバタフライダンパーに比べてダンパーの高さが長いため、通常のバタフライダンパーが使いにくいといって、このタイプのダンパーに交換すると、取り出し口が低くなりすぎて、使用し難い場合もあるとされている。
【0003】
上記のような家畜飼料貯配タンクから飼料を取り出す場合、1回の飼料使用量の少ない農家では、シャッターを全開にしないで取り出し量を調節することが行われていた。しかしながら、このような方法で取り出し量を連日、調節して、使用していると、例えばミックス系飼料のように飼料流動性の悪いなどの飼料物性によっては、タンク内に偏荷重を発生して、タンク内でいわゆるブリッジ現象が発生したり、ブリッジ現象を起こした飼料が崩壊することもあり、その時の衝撃音が激しく、怖いという話も生じていた。また、タンクの形状によっては、タンクホッパー部に損傷が生じ易くなるという課題もあった。更に、タンクからの飼料の排出が偏っていることから、タンク内の飼料を完全排出してから飼料の次期投入を行えば、何ら問題がないが、実際には、片側に飼料が多少残っている状態で次期投入をしてしまうため、残った飼料がタンク内に滞留していき、かびたり、腐ったりするケースが発生するおそれもあった。
【0004】
従来より、飼料タンク内の飼料の残存を防止する技術は種々提案されており、例えば特許文献1などには、タンク内の飼料の残存を防止し、効率のよい飼料排出を行うことなどを目的として、タンク本体の材質、内壁の傾斜を規定した技術が提案されている。また、例えば特許文献2などには、固形牧草との混合飼料のスムーズな流れの実現による飼料取り出し量の調節の容易化、飼料タンクの損傷を防止することを目的として、家畜飼料貯配タンクの取り出し口ハッチをバランスよく開口する複数のダンパー部材を備えた構成とすることが提案されている。
【特許文献1】特開平11−91868号公報
【特許文献2】特開平7−50948号公報
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術の場合、タンク本体の構成に関するものであるため、使用しているタンク自体の入れ替えが必要となってしまうなどの問題があった。また、特許文献1に記載されたタンクの場合、シャッターの構成としては、上述した1枚のスライドシャッターを斜めに取り付けたものであるので、引き出す際に、斜め上方に引き出さなければならないため、引き出し操作が行い難くなる場合があり、また、取り出し量を上述したようにして、連日、調節していると、開口部のシャッターで閉じられている位置がいつも同じになってしまうので、タンク内の所定位置の飼料が残存され易くなり、飼料の排出が偏るという問題が生じてしまう。一方、特許文献2に記載された技術の場合も、取り出し口ハッチの開口部をバランスよく開口するものであるので、取り出し量を上述したようにして、連日、調節していると、特許文献1の場合と同様に、開口部のダンパー部材で閉じられている位置がいつも同じになってしまうという問題が生じてしまう。また、特許文献2の場合、複数のダンパー部材によって取り出し口ハッチをバランスよく開口するための特別の構成、装置が必要となる。
【0006】
そのため、このような問題がなく、家畜飼料貯配タンク内の飼料を容易に必要量取り出すことができ、連日、取り出し量を調節していても、タンク内で残存飼料の偏在が生じ難くする技術の開発が望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、家畜飼料貯配タンク内から必要量の飼料を容易に取り出すことができ、また、例えば、連日、飼料の取り出し量を調節していても、タンク内の飼料に偏荷重が発生するのを抑制して、タンク内に飼料を逐次供給していっても、以前からの飼料が残留してしまうことを防止し、また、ブリッジ現象の発生も防止することが可能な家畜飼料貯配タンク用スライドダンパー及び家畜飼料の取り出し方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するため、(1)家畜飼料貯配タンクの下部開口部に取り付けられるダンパーであって、開口部を備えたダンパー本体と、該ダンパー本体にそれぞれ同じ方向にスライドするように並列又はほぼ並列に取り付けられ、上記開口部を開閉自在とする複数のシャッター部材とを備えたことを特徴とする家畜飼料貯配タンク用スライドダンパー及び(2)家畜飼料貯配タンク内の飼料を取り出す際に、上記(1)記載の家畜飼料貯配タンク用スライドダンパーの上記シャッター部材を、1〜3回毎に交代させて開けて、タンク内の飼料を供給することを特徴とする家畜飼料の取り出し方法を提供する。
【0009】
ここで、本発明の家畜飼料貯配タンク用スライドダンパーにおいて、上記シャッター部材が同形又はほぼ同形の一対のシャッター部材であり、上記ダンパー本体にそれぞれ摺動自在に取り付けられたものであると、より好適である。また、上記ダンパー本体が、上記シャッター部材をそれぞれ摺動自在に取り付ける支持部材を備え、該支持部材が上記開口部の両側近傍に対向するようにそれぞれ設けられた側壁案内部と、上記開口部を跨ぎ、上記側壁案内部と対向するように設けられた中間案内部とを備えると共に、上記各案内部がそれぞれ摺動用部材を備え、隣接する各案内部の間に上記シャッター部材がそれぞれ摺動自在に保持されるように取り付けられたものであると、更に好適である。また更に、上記各側壁案内部がそれぞれ上記シャッター部材の引き出し方向の先端部側に上記摺動用部材を備え、上記支持部材が、更に、上記各側壁案内部の下側に底面案内部を備え、上記シャッター部材が該シャッター部材の引き出し方向の後端部側にそれぞれ上記底面案内部の上面を摺動可能となるように摺動用部材を備えたものであったり、更に、ピン部材を備え、上記支持部材のシャッター部材の引き出し方向の先端部側にピン用孔を穿設したものであると、更に好適である。
【0010】
本発明の家畜飼料貯配タンク用スライドダンパーは、開口部を備えたダンパー本体と、該ダンパー本体にそれぞれ同じ方向にスライドするように並列又はほぼ並列に取り付けられ、上記開口部を開閉自在とする複数のシャッター部材とを備えたものであるので、飼料供給の際に、例えば一のシャッター部材を開けば、1回のシャッター開き(開口面積)が少なくなり、家畜飼料貯配タンク内の1回当たりの飼料供給量を少なくすることが容易となる。このようにして開口面積を小さくして飼料供給をする場合、毎日の飼料を出すのに、例えば、ダンパー本体に2枚のシャッター部材を取り付けたスライドダンパーであれば、例えば、偶数日は右側のシャッター部材、奇数日は左側のシャッター部材と決めて、2枚のシャッター部材を左右交互に全開状態にすることにより、タンク内の飼料が偏った位置から取り出されることを防ぐことが可能となり、タンク内の飼料に偏荷重が発生するのを防止したり、タンク内に飼料を逐次供給していっても、以前からの飼料が残留してしまうことを防止でき、また、ブリッジ現象の発生も防止することが可能となる。また、飼料投入時の圧密でタンク内の飼料を排出しにくい時は、例えば全ての又は大部分のシャッター部材を全開状態にすれば、家畜飼料貯配タンク内の飼料供給時にダンパーの開口面積を大きくして使用することもできる。なお、上述したように、シャッター部材を交代に全開状態にして、タンク内の飼料を排出していっても、例えば、タンク形状、材質、飼料物性などにより、タンク内壁に飼料が付着し易く、内壁に付着した飼料を取り出し難くなる可能性もあるが、このような場合、本発明の家畜飼料貯配タンク用スライドダンパーは、複数のシャッター部材をそれぞれ独立してスライドさせることができるので、スライド操作が従来のものに比べて行い易く、例えば、タンク上に上って、タンク内を攪拌したり、内壁に付着した飼料を落とさなくても、例えば、全開させるシャッター部材を軽く押し引きして、タンク内壁に付着した飼料を排出され易くなるようにすることも容易に行うことができる。
【0011】
ここで、本発明の家畜飼料貯配タンク用スライドダンパーは、シャッター部材を複数、取り付けたものであり、シャッター部材の枚数は、例えば3枚以上とすることもできるが、取り扱い易さ、実用性などを考慮すれば、同形又はほぼ同形の一対のシャッター部材を上記ダンパー本体にそれぞれ同じ方向に摺動自在となるように、並列又はほぼ並列に取り付けたものであると、より好適であり、このようなスライドダンパーであれば、例えばこれらのシャッター部材を交互に開閉して飼料の取り出し量を調節する場合、毎回、ダンパー本体の開口部の開口面積が同じかほぼ同じになるので、同じ程度の取り出し量に調節することが容易となる。
【0012】
また、本発明の家畜飼料貯配タンク用スライドダンパーにおいて、上記ダンパー本体が、上記シャッター部材をそれぞれ摺動自在に取り付ける支持部材を備え、該支持部材が上記開口部の両側近傍に対向するようにそれぞれ設けられた側壁案内部と、上記開口部を跨ぎ、上記側壁案内部と対向するように設けられた中間案内部とを備えると共に、上記各案内部がそれぞれ摺動用部材を備え、隣接する各案内部の間に上記シャッター部材がそれぞれ摺動自在に保持されるように取り付けられたもの、例えば、上述したように、左右一対のシャッター部材を取り付けるスライドダンパーであれば、上記中間案内部としてダンパー本体の開口部の中央又はほぼ中央を跨ぎ、側壁案内部と対向するように設けられた中間案内部を備えたものとなり、一の側壁案内部と中間案内部との間に一のシャッター部材が摺動自在に保持され、中間案内部と他の側壁案内部との間に他のシャッター部材が摺動自在に保持されるように取り付けられたものとなり、このようなスライドダンパーであれば、2枚のシャター部材が、それぞれ側壁案内部と中間案内部とによって挟持されたような状態となり、各シャッター部材をそれぞれ側壁案内部と中間案内部との間をこれら案内部に沿って引き出して、ダンパー本体の開口部を一方のシャッター部材のみを全開にした状態であれば半円形状に開いた状態、両方のシャッター部材を全開状態にすれば、ダンパー本体の開口部を完全に開いた状態とすることができ、また、各シャッター部材を支持部材内に収納するときにも、それぞれ側壁案内部と中間案内部との間をこれら案内部に沿って押し戻すことができる。
【0013】
更に、上記各側壁案内部がそれぞれ上記シャッター部材の引き出し方向の先端部側に上記摺動用部材を備え、上記支持部材が、更に、上記各側壁案内部の下側に底面案内部を備え、上記シャッター部材が該シャッター部材の引き出し方向の後端部側にそれぞれ上記底面案内部の上面を摺動可能となるように摺動用部材を備えたものであれば、側壁案内部と中間案内部との間に取り付けられたシャッター部材を全開状態にした時、底面案内部の摺動用部材が側壁案内部の先端部側に設けられた摺動用部材に係止されるので、シャッター部材全開時にシャッター部材の脱落を防ぐストッパーとしての機能も持たせることができる。また、本発明の家畜飼料貯配タンク用スライドダンパーが、ピン部材を備え、支持部材のシャッター部材の引き出し方向の先端部側にピン用孔を穿設したものであれば、シャッター部材を支持部材内に収納し、閉塞状態にした時、ピン部材をピン用孔に差し込めば、シャッター部材閉塞時のストッパーとして機能を備えたものとなり、シャッター部材を閉めた状態にしている時に、例えば牛などの家畜によって、シャッター部材が引き出されたりするという事態を防止することが可能となる。
【0014】
また、本発明の家畜飼料の取り出し方法は、家畜飼料貯配タンク内の飼料を取り出す際に、本発明の上記家畜飼料貯配タンク用スライドダンパーの上記シャッター板を、1〜3回毎に交代させて開けて、タンク内の飼料を供給するものであり、例えば、上述したように、一対のシャッター部材を取り付けたものであれば、2枚のシャッター部材を1〜3回毎に交互となるように開けて、タンク内の飼料を供給するので、毎回、ダンパー本体の開口部の半円の部分は完全に開いた状態となり、従来のように、例えば、ダンパー本体の開口部におけるシャッター部材の開閉による飼料の排出箇所が偏ってしまうという事態を防ぐことができ、タンク内の飼料が偏った位置から取り出されることを防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、家畜飼料貯配タンク内の飼料を必要量取り出すことが容易であり、また、その際に、タンク内の飼料が偏った位置から取り出されることを防ぐことができ、タンク内に飼料を逐次供給していっても、以前からの飼料が残留していくという事態の発生を抑制することも可能となり、更に、ブリッジ現象の発生を防止することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明につき図面を参照にして更に詳しく説明する。図1〜図3は、本発明の家畜飼料貯配タンク用スライドダンパーの一構成例を説明するものであり、図1は、一方のシャッター部材を引き出した家畜飼料貯配タンク用スライドダンパーAを上方から見た状態を示す概略斜視図、図2は、一方のシャッター部材を取り外した状態の家畜飼料貯配タンク用スライドダンパーAの概略下面図、図3は、家畜飼料貯配タンク用スライドダンパーAを取り付けた家畜飼料貯配タンクの一部を下方から見上げた状態を示す概略斜視図である。
【0017】
家畜飼料貯配タンク用スライドダンパーAは、家畜飼料貯配タンクB(図3参照)の図示しない下部開口部に取り付けられるものであり、ダンパー本体1、ダンパー本体1に付設された支持部材2、支持部材2によってダンパー本体1に取り付けられる一対のシャッター部材3,3を備えている。ダンパー本体1は、テーパー状に傾斜した傾斜壁部1aの上部開口部1bの周縁部に鍔状に設けられた鍔部1cを備え、その鍔部1cに穿設された複数の固定用孔1dによって、家畜飼料貯配タンクB(図3参照)の図示しない下部開口部に取り付けることができる。そして、傾斜壁部1aの下部には排出口1eが設けられ、下部開口部1fが形成されている。
【0018】
支持部材2は、ダンパー本体1の下部開口部1fと同形の開口部が穿設された平面形状が略四辺形の部材であり、ダンパー本体1の排出口1eに下部開口部1fからの飼料の排出を妨げないように取り付けられている。そして、支持部材2には、シャッター部材の引き出し方向(図1,2中矢印C)の後端側に後壁部2a(図2,3参照)、シャッター部材の引き出し方向(図1,2中矢印C)に沿って側壁案内部2b,2bが、それぞれ下部開口部1fの周縁部近傍を通るように形成されており、シャッター部材の引き出し方向(図1,2中矢印C)前方を除き、三辺が下壁(ダンパーに取り付けた状態として)でほぼ囲われた状態となっている。更に、側壁案内部2b,2bの下辺には、下部開口部1f側に向けて底面案内部2c,2c(図2,3参照)が、排出口1e(下部開口部1f)からの飼料の排出を妨げないようにそれぞれ設けられている。従って、支持部材2のシャッター部材の引き出し方向(図1,2中矢印C)の両側端は、シャッター部材の引き出し方向(図1,2中矢印C)の前方から見たとき、端面がそれぞれ略コ字型、略逆コ字型になっている(図3参照)。そして、側壁案内部2b,2bの間には、中間案内部2dが、側壁案内部2b,2bに並行して設けられている。従って、中間案内部2dは、ダンパー本体1の下部開口部1fの中央又は略中央、より好ましくは中央を跨ぎ、側壁案内部2b,2bに対向するように設けられている。
【0019】
側壁案内部2b,2bの内側(開口部1f側)には、それぞれシャッター部材の引き出し方向(図1,2中矢印C)の先端部側にベアリング等の摺動用部材4,4(図2参照)が、ボルト・ナット等の固定用部材5,5(図2参照)によって、取り付けられている。そして、中間案内部2dには、複数個所(図では3箇所)に、両面(一の側壁案内部2b側と他の側壁案内部2b側)にベアリング等の摺動用部材4,4,4,4,4,4(図2参照)が、ボルト・ナット等の固定用部材5,5,5(図2参照)によって、取り付けられている。また、支持部材2には、シャッター部材の引き出し方向(図1,2中矢印C)の先端部近傍の両側端部近傍に、後述するロックピンなどのピン部材7を挿通させるためのピン用孔8,8(図2参照)が穿設されている。なお、支持部材2は、その材質が特に制限されるものではないが、ダンパー本体1と同様の材質であることが好ましく、また、ダンパー本体1の排出口1eへの取り付け手段も特に制限されるものではなく、溶接などの公知の手段によって取り付けることができる。更に、本発明において、摺動用部材としては、ベアリング以外にも適宜部材を使用することができ、固定用部材についても、ボルト・ナット等の締結部材以外にも適宜部材を使用することができる。
【0020】
左右一対となる2枚のシャッター部材3,3は、ダンパー本体1の下部開口部1fを2枚一組となって閉じることができるように、それぞれダンパー本体1の下部開口部1f(排出口1e)の半径よりやや大きい幅を有し、開口部1f(排出口1e)の直径よりやや長い長さを有する同形又はほぼ同形、より好ましくは同形の長方形の板状部材である。そして、図2,3にいずれも一方のシャッター部材3について示したように、シャッター部材3のダンパー取り付け時にシャッター部材の引き出し方向(図中矢印C)の後端側となり、支持部材2の底面案内部2cに対応する位置には、ベアリング等の摺動用部材4が底面案内部2cの上面を摺動可能となるように取り付けられている。ここで、シャッター部材3に摺動用部材4を取り付ける手段は、特に制限されるものではなく、例えばL字鋼などの取付用部材4aの一面(図3では、上面)をシャッター部材の上記した底面案内部2cに対応する位置に溶接などの適宜手段で固着し、他面(立ち上がっている面)にベアリング等の摺動用部材4をボルト・ナット等の固定用部材5を利用して取り付けるなどの手段によって、取り付けることができる。そして、この構成例の場合、ダンパー取り付け時にシャッター部材の引き出し方向(図1,2中矢印C)の先端側となる所には、ダンパー本体1の下部開口部1f(排出口1e)の開閉を行い易くするために、それぞれ把手9,9が備えられている。各把手9,9には、それぞれ上記したロックピンなどのピン部材7,7(図1では、一方のみ示した)が紛失しないように、チェーンなどの連結部材7a,7aによって取り付けられている。
【0021】
上記構成例のスライドダンパーAは、図3に示すように、家畜飼料貯配タンクBの下部開口部にダンパー本体1の鍔部1cの複数の固定用孔1dを利用して、複数のボルト・ナット等の固定用部材5により取り付ける。ここで、本発明の家畜飼料貯配タンク用スライドダンパーを取り付けるタンクは、その種類などが特に制限されるものではなく、例えばFRP(繊維強化プラスチック)製タンクなどの公知の家畜飼料貯配タンクに取り付けることができる。なお、図3中、Dは、家畜飼料貯配タンクBの支持体である。
【0022】
家畜飼料貯配タンクBの下部開口部に取り付けたスライドダンパーAは、常時は、2枚のシャッター部材3,3を、その反把手側が支持部材2の後壁部2aに当たるまで支持部材2内に押し込み、ダンパー本体1の排出口1e(開口部1f)を完全に閉塞した状態としておく。そして、例えば牛などの家畜によって、シャッター部材3,3が引き出されたりするという事態を防止するために、各ピン部材7,7をそれぞれピン用孔8,8に差し込んでおく。家畜飼料貯配タンクB内には、飼料を投入し、飼料供給の際には、ピン部材7を抜いてから、シャッター部材3を、把手9を利用して引っ張り、側壁案内部2bと中間案内部2dとの間からこれらに沿って引き出す。このとき、摺動用部材4が取り付けられているので、シャッター部材3の引き出し、押し込み等のスライド操作が容易となる。また、従来は、本構成例の約倍の大きさのスライドシャッターを引き出したり、押し込んだりしていたのに比べて、本構成例のシャッター部材は、引き出し、押し込み等のスライド操作がより容易となる。従って、タンク内壁に飼料が付着している場合、例えば、シャッター部材を軽く押し引きして、タンク内の飼料に軽い振動を与えることも容易にできる。そして、シャッター部材3が全開状態となった時(引き出しきった時)、底面案内部2cの摺動用部材4が側壁案内部2bの引き出し方向先端部側に設けられた摺動用部材4に係止されるので、シャッター部材3を引っ張りすぎることによって、シャッター部材3が支持部材2から脱落してしまうことが防止される。
【0023】
このとき、例えば一方のシャッター部材3を開けば、1回のシャッター開き(開口面積)が少なくなり、家畜飼料貯配タンク内の1回当たりの飼料供給量を少なく調節することが容易となる。このような使用方法による場合、毎日の飼料を出すのに、例えば、偶数日は右側のシャッター部材、奇数日は左側のシャッター部材と決めて、2枚のシャッター部材を左右交互に全開状態となるように引き出すことにより、タンク内の飼料が偏った位置から取り出されることを防ぐことができ、タンク内に飼料を逐次供給していっても、以前からの飼料が残留していくという事態を防止することが可能で、タンク内の飼料の偏荷重の発生やブリッジ現象の発生を防止することも可能となり、これによって、ブリッジ現象を起こした飼料の崩壊による衝撃音の発生を防止したり、タンクホッパー部の損傷を防止することができる。また、例えば、飼料投入時の圧密などでタンク内の飼料を排出しにくい時は、例えば両方のシャッター部材を引いて開けば、家畜飼料貯配タンク内の飼料供給時にダンパーの開口面積を大きくして使用することもできる。なお、家畜飼料貯配タンク用スライドダンパーAは、2枚(左右一対)のシャッター部材を、同じ方向にそれぞれスライドするように取り付け、ダンパー本体の開口部を開放、閉塞するようにしたものであるが、本発明の家畜飼料貯配タンク用スライドダンパーは、ダンパーの大きさなどにより、3枚以上のシャッター部材を、同じ方向にそれぞれスライドするように取り付け、ダンパー本体の開口部を開放、閉塞するようにすることもできる。
【0024】
次に、本発明の家畜飼料の取り出し方法の構成例を、家畜飼料貯配タンク用スライドダンパーAを利用して説明すると、家畜飼料貯配タンクB内の飼料を取り出す際に、家畜飼料貯配タンク用スライドダンパーAの一対のシャッター部材3,3を、1〜3回毎、より好ましくは1回毎に交互となるように開けて、タンク内の飼料を供給し、毎回、開口部の半円の部分は完全に開いた状態とすることによって、ダンパー本体の開口部におけるシャッター部材による飼料の排出箇所が偏ってしまうという事態をなくし、タンク内から飼料が偏った位置から取り出されることを防ぐことが可能となる。これによって、家畜飼料貯配タンク内の飼料を必要量取り出すことが容易となり、また、その際に、タンク内の飼料が偏った位置から取り出されることを防ぐことができ、タンク内に飼料を逐次供給していっても、以前からの飼料が残留してしまうことを防止することも可能で、また、ブリッジ現象の発生も防止することが可能となる。なお、本発明の家畜飼料の取り出し方法は、スライドダンパーの複数のシャッター部材を1〜3回毎に交代させて開けて、タンク内の飼料を供給するものであるが、本発明の取り出し方法によって、連日、飼料を供給している期間中に、スライドダンパーの複数のシャッター部材を2枚以上同時に開けてタンク内の飼料を供給するという工程を含むこともできる。
【0025】
なお、本発明は、上記構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の家畜飼料貯配タンク用スライドダンパーの一構成例を説明する概略斜視図である。
【図2】上記家畜飼料貯配タンク用スライドダンパーをシャッター板を外した状態で示した概略下面図である。
【図3】上記家畜飼料貯配タンク用スライドダンパーを家畜飼料貯配タンクに取り付け、下方から見た状態で示した概略斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
A 家畜飼料貯配タンク用スライドダンパー
B 家畜飼料貯配タンク
C シャッター部材の引き出し方向
1 ダンパー本体
1f 開口部
2 支持部材
2b 側壁案内部
2c 底面案内部
2d 中間案内部
3 シャッター部材
4 摺動用部材
7 ピン部材
8 ピン用孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜飼料貯配タンクの下部開口部に取り付けられるダンパーであって、開口部を備えたダンパー本体と、該ダンパー本体にそれぞれ同じ方向にスライドするように並列又はほぼ並列に取り付けられ、上記開口部を開閉自在とする複数のシャッター部材とを備えたことを特徴とする家畜飼料貯配タンク用スライドダンパー。
【請求項2】
上記シャッター部材が同形又はほぼ同形の一対のシャッター部材であり、上記ダンパー本体にそれぞれ摺動自在に取り付けられた請求項1記載の家畜飼料貯配タンク用スライドダンパー。
【請求項3】
上記ダンパー本体が、上記シャッター部材をそれぞれ摺動自在に取り付ける支持部材を備え、該支持部材が上記開口部の両側近傍に対向するようにそれぞれ設けられた側壁案内部と、上記開口部を跨ぎ、上記側壁案内部と対向するように設けられた中間案内部とを備えると共に、上記各案内部がそれぞれ摺動用部材を備え、隣接する各案内部の間に上記シャッター部材がそれぞれ摺動自在に保持されるように取り付けられた請求項1又は2記載の家畜飼料貯配タンク用スライドダンパー。
【請求項4】
上記各側壁案内部がそれぞれ上記シャッター部材の引き出し方向の先端部側に上記摺動用部材を備え、上記支持部材が、更に、上記各側壁案内部の下側に底面案内部を備え、上記シャッター部材が該シャッター部材の引き出し方向の後端部側にそれぞれ上記底面案内部の上面を摺動可能となるように摺動用部材を備えた請求項3記載の家畜飼料貯配タンク用スライドダンパー。
【請求項5】
更に、ピン部材を備え、上記支持部材のシャッター部材の引き出し方向の先端部側にピン用孔を穿設した請求項3又は4記載の家畜飼料貯配タンク用スライドダンパー。
【請求項6】
家畜飼料貯配タンク内の飼料を取り出す際に、請求項1乃至5のいずれか1項記載の家畜飼料貯配タンク用スライドダンパーの上記シャッター部材を、1〜3回毎に交代させて開けて、タンク内の飼料を供給することを特徴とする家畜飼料の取り出し方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−22810(P2008−22810A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−201404(P2006−201404)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(506255050)株式会社ハマナカ (1)
【Fターム(参考)】