説明

家禽用飼料及び家禽の飼育方法

【課題】成育面で問題はなく、家禽の筋胃が良好に発達すると共に、敷料改善効果も得られる穀物殻の配合された家禽用飼料、及び穀物殻を給与する家禽の飼育方法等を提供する。
【解決手段】籾殻、蕎麦殻、麦殻などの穀物殻が、該穀物殻配合前の飼料100重量部に対して0.1〜10重量部配合されている。飼料は、クランブル又はペレット状であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平飼い家禽舎における敷料の質の改善や発達した砂肝が得られる家禽用飼料及び家禽の飼育方法に関し、詳しくは、穀物種子から分離された穀物殻の配合された家禽用飼料と、穀物殻を飼料に配合して家禽に給与する、穀物殻の有効利用も兼ねた家禽の飼育方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鶏を代表とする家禽は、ケージで飼育する方法(以下、ケージ飼いと称す)と、コンクリート等の床に直接放し飼いにする方法(以下、平飼いと称す)に大別される。ケージ飼いではケージ下に堆積した糞尿を家禽舎外へ搬出するため、家禽舎内は比較的良好な空気(環境)を保つことが可能である。これに対し平飼いでは、家禽舎内の床面上におがくず等の敷料を敷き詰め、この敷料の上において一定羽数が、雛から成長して出荷されるまでの一定期間を過ごす。敷料は、家禽の糞尿がコンクリート床にこびりつかないようにする、床面を砂状にして自然界で生活する環境に近づける、床や家禽舎内の保温、などを目的として使用されるが、家禽を雛の状態で導入してから出荷するまでの一連の飼育期間内に交換されることはほとんど無く、同じ敷料を敷設したままであることが一般的である。したがって、家禽は糞尿を敷料の上に直接排泄し、家禽は自らが排泄した糞尿の上で一生を過ごすこととなる。家禽の糞尿が排泄された直後は水分が高いため敷料が湿りやすいが、家禽がその上に座って暖める家禽の体温、歩行や運動等による攪拌、家禽舎の適切な空調、及び糞尿の発酵等によって水分を失い、次第に乾燥していく。充分に乾燥されれば、良質な砂状の敷料が形成される。
【0003】
しかし、実際には乾燥が追いつかず、湿った糞尿が次々と堆積して水分が高いベトベトした板状ないしブロック状の敷料になってしまうことが多い。このような状態を床湿りという。一旦このような板状ないしブロック状の敷料が形成されてしまうと、密度が高く空隙率が低いためなかなか乾燥しない。床湿りは、冬季などに家禽舎内が低温になること、湿った部分を避けるように家禽が寄り集まって床面全体が家禽によって充分に暖められないこと、空調が不適切(換気が不十分)であること、などによって起こりやすい。床湿りは、堆積する家禽の糞尿の質によっても影響を受ける。下痢便や水様便、下痢ではないが水分を多く含む糞、比重が重く嵩の少ない糞などが堆積し続けた場合は、床湿りの状態になりやすくなる。その他、家禽舎の断熱・気密性の不足、雨漏りや結露、飲料用給水設備からの水漏れやこれらの調整不良なども床湿りの発生要因となる。
【0004】
床湿り状態では、次のような種々の問題が生じる。第1に、家禽の生産性低下及び疾病罹患の問題がある。具体的には、家禽は湿った場所を避けるように集まる傾向があるため、家禽の実質的な生活スペースが制限されてしまい、飼料摂取や飲水といった発育のために必要な行動が阻害される。また、湿った敷料によって家禽の身体が冷され、下痢を起こし易くなる。固く湿った敷料の上を歩き回ることで、敷料と接触している趾部裏および飛節後部の皮膚が接触性皮膚炎を起こす。通常これを趾部裏の皮膚炎(Foot pad dermatitis,FPD)と呼ぶ。皮膚の角化亢進及び壊死が起こり、重症例では、皮下織の炎症を伴う潰瘍が起こる。また、飛節の皮膚が暗褐色に変色するHockburns(HB)と呼ばれる症状も敷料中の水分が関連し、重症例ではかさぶたが見られる。FPDやHBなどの趾瘤症は、重症例では家禽に痛みを与え、歩行の異常をもたらすもので、家禽の福祉を判断する上で重要な要素となる。趾部は食用、スープ用等に利用され、中国や香港を中心にアジア諸国へも輸出・販売される重要な商材であり、趾裏部の病変は趾部の格付けを低下させたり廃棄の原因ともなる。また、家禽の歩行能力が低下し、健全な発育にも悪影響を及ぼす。更に、FPDはオス種鶏の場合交尾行動を妨げるため、受精率、孵化率の低下につながる。種鶏及び平飼いの採卵鶏は巣箱ではなく直接床に産卵する事もあり、巣外卵として衛生的に問題とされているが、床が湿っている場合は巣外卵が重度に汚染されてしまうので特に問題である。家禽は胸骨に体重を乗せて休息するが、床湿りにより固くなった敷料の上で休息し続けた場合は、後胸骨部の腹方に胸骨滑液包(Sternal bursa)が形成される。胸骨滑液包が液性成分を貯留して嚢胞状に拡張した場合は、「胸部水疱」あるいは「胸骨滑液包炎(Keel bursitis、通称胸ダコ)」と呼ばれ、胸肉の商品化率を著しく低下させる。床湿り状態が長期間続けば、家禽の皮膚は毛胞炎(毛穴の炎症)を引き起こしやすくなる。これは壊疽性皮膚炎を誘発し、食鳥処理場での廃棄や消費者からの忌避の要因となる。湿った糞尿は家禽の羽毛にこびりつく。羽毛にこびりついた糞尿は、そのまま固まって剥がれ難くなり、食鳥処理場での脱羽工程で脱羽がされにくくなると共に、脱羽工程を家禽の糞尿で著しく汚染する。当然、そのような工程で処理された食肉は細菌数が多くなり衛生的とは言い難い。湿った敷料の中では、アイメリア(Eimeria)属原虫のオーシストが成熟して感染力を持つ。コクシジウム症は、アイメリア属原虫オーシストの経口的摂取によって感染し、家禽の疾病の中で最も被害が大きいものの一つであり、下痢、食欲不振、体重減少等の種々の症状が発症し、死亡も認められる。オーシストの成熟には敷料に25%以上の水分含有率が必要と言われ、湿った敷料ではコクシジウム症の大発生が確認される。また、湿った敷料中は細菌の増殖に好適な環境となり、高レベルのClostridium perfringens(ウェルシュ菌)が感染力を持ち、家禽が経口的に摂取することで小腸内で増殖し、頻繁に壊死性腸炎を引き起こす。壊死性腸炎を発症すると家禽は食欲が減退し、元気消失して死亡することもある。また、湿った敷料は有毒なカビの増殖をも助長する。敷料にカビが異常に発生し、家禽がその胞子を吸入して真菌症に感染する。真菌症に感染すると、家禽は元気消沈、呼吸症状、起立不能などを示し、最終的に集団的な急死に至ることもある。さらに、湿った敷料は内部で嫌気性発酵が行われるため、アンモニア等の強い臭気を発生して家禽舎内の空気の質を悪化させる。アンモニアは家禽にとって有害であり、肺に障害を与え、呼吸器病に対する感受性が増加する。50ppmを越えるアンモニアは、家禽の角膜炎や呼吸のストレスを起こす。
【0005】
第2に、環境問題がある。湿った敷料から生じる臭気は人間にとっても大きな苦痛であるため、管理者(生産者)は家禽舎内の空気を無理に入れ替えることを試み、結果的に家禽を寒がらせ、家禽の発育や健康を損なうという悪循環に陥る。雛が小さいうちや冬季は家禽舎内を暖房していることが多いが、暖房しながら無理に換気を行えば燃料の無駄になる。また、臭いの強い排気は近隣住民からの悪臭の苦情等、公害問題に発展する。
【0006】
第3に、敷料処理の問題がある。糞尿を含む敷料は、家禽の出荷後に次の飼育のため家禽舎内から排除される。家禽舎には、水洗消毒後、新しい敷料が再度敷き詰められる。使用済みの敷料は、ショベルローダーなどで集めてダンプカー等に積載し、堆肥化施設や焼却場等へ運ばれる。この際、湿った敷料は重量が重くて扱いにくいと共に、臭気が強いため搬出、運送の際にも公害問題になる。また、これらの施設へ運ばれた敷料は発酵処理や焼却処理などが行われるが、いずれも水分含有率が多く空隙率が低い場合は発酵又は焼却され難い。すなわち、敷料を焼却する場合は、燃料費がかかると共に煙や臭いの問題も発生する。発酵させて堆肥化するには、堆肥化に長時間を要すると共に、悪臭の問題が長期間続く。敷料を焼却してその熱を利用し、ボイラーで水を温め、家禽舎の床暖房に温水を使用する事例もあるが、湿った敷料はなかなか燃えずに温度が上がらず、飼育中の家禽を充分暖められず、更に湿った敷料が形成されるという悪循環に陥る。湿った敷料は燃焼時に白煙が大量に発生するため、公害問題にも発展する。
【0007】
このように、床湿りは家禽の平飼いにとって忌々しき問題であり、飼育者はこれを避けるため、水分調製の目的で副資材の追加や攪拌の作業に日夜追われているのが現状である。副資材とは、吸水性・保水性に富み、敷料と混合した場合にその通気性を高めるものであり、例えば稲わら、麦稈、おがくず、バーク等のほか、パーライト、ゼオライト等の無機質資材も使用される。しかし、一旦床湿りを起こした家禽舎へ新たな副資材を持ち込んで攪拌しても、多大な労力を要する割に完全な乾燥化は不可能なので、むしろ敷料の総量を増やすばかりで効果的な方法とはいえない。
【0008】
ここで、敷料の質の改善を図った技術として、特許文献1がある。特許文献1では、吸着性のある活性炭又は炭化物を、おがくずや籾殻などの植物系敷料に混合した混合敷料とすることで、敷料の質の改善を図っている。
【0009】
ところで、籾殻は現在土壌改良資材や野菜果樹園の敷料、家禽舎や畜舎の敷料、堆肥の水分調整用の副資材として利用されている。また、薫炭として園芸や田畑に利用されたり、燃焼時の熱を利用して発電、コンクリートなどに混ぜて利用される。しかし、籾殻は発生時期が一時に重なるため、完全に利用されていないのが現状であり、産業廃棄物扱いされている。籾殻は嵩張るので保管が難しく、貯蔵庫の設置が必要である。また、運搬にもコストがかかり扱い難い。特許文献1のように家禽舎の敷料として利用している事例も有るが、吸水性が悪く敷料としてはあまり適さないといわれている。籾殻は粉砕すれば吸水性も上がり用途も増えると考えられるが、籾殻にはケイ酸(シリカ)が含まれるため特殊な装置を使用せねば粉砕は困難であるといわれている。
【0010】
また、蕎麦殻については、玄蕎麦から約3割もの蕎麦殻が産出されるのに対し、蕎麦殻は枕程度しか利用手段が無く、ほとんどは産業廃棄物となり、廃棄処理にかかるコストの負担が大きくなっているのが現状である。麦殻についても同様であり、麦殻には大した有効利用手段がなく、現在ではその殆どが産業廃棄物として廃棄されているのみであり、これら穀物殻の有効利用が強く望まれているのが現状である。
【0011】
ここで、籾殻を直接又は加工して配合した家禽用としても使用できる飼料として特許文献2及び特許文献3がある。特許文献2では、籾殻から作られた有効量の燻炭を飼料に配合して給餌することで、コレステロール含有量が通常よりも相当に低くかつ安全性が確保される鶏卵等の食用卵を産生することができ、かつ、低いコレステロール含量でかつ安全という特性を有する食肉を生産できるとされている。特許文献3では、コーンミールからなる飼料を給餌することを前提として、当該コーンミールは家禽等の育成において求められる種々の栄養成分を欠いていることから、これらの不足栄養成分を補うために、肉骨粉、羽毛粉、ビタミン、ミネラル、脂肪、塩、コーングルテン飼料、製パン副産物及び全脂米糠と同列に、籾殻を配合してもよいとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−141037号公報
【特許文献2】特表2004−505645号公報
【特許文献3】特開平07−170917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1では、有意な吸着性を有する活性炭等を混合しているので、敷料の質の改善効果が期待できる。しかし、特許文献1では敷料自体に手を加えており、床湿りの最大の要因である糞尿に対して直接的に改良を行っているわけではない。したがって、下痢などによって水分の多い糞尿が排泄された場合には、活性炭の吸着量が飽和状態となってそれ以上の敷料の質の改善が期待できなくなる。これを避けるために活性炭を多量に混合したり、事後的に追加することも考えられるが、従来と同様コスト増と共に大きな労力を要するので好ましい解決策とはいえない。
【0014】
また、特許文献2や特許文献3では、籾殻を直接又は加工して家禽に給与している点で、籾殻の有効利用が図られている。しかし、特許文献2や特許文献3は、家禽の増体や栄養面の改善を図っているのみであって、敷料の改善を目的としていない。すなわち、特許文献2では、籾殻を燻炭として飼料に配合しており、燻炭処理に手間とコストを要するのみならず、家禽の体内で発揮される籾殻の機能(グリット効果)は得られない。特許文献3では、籾殻がそのままの状態で飼料に配合されることも考えられるが、不足栄養成分を補うために、肉骨粉、羽毛粉、ビタミン、ミネラル、脂肪、塩、コーングルテン飼料、製パン副産物及び全脂米糠と同列に、籾殻を配合してもよいとされているのみであって、敷料の質の改善に適した具体的な条件等は一切考慮されていない。
【0015】
近年、家禽の飼育、特にブロイラー養鶏においては、生産性を高めるため飼育密度が高い環境で家禽を急速に発育させている。急速に発育するため短期間に大量の飼料及び水を摂取することで多量の糞尿を排泄すると共に、飼育密度が高いことから全体的な糞尿の排泄量も多量になる。そのため、従来と比して一定期間中に単位面積あたりに排泄される家禽の糞尿量、すなわち単位面積あたりに散布される水分が多いので、家禽の体温、家禽による撹拌、家禽舎の空調、糞尿の発酵等による乾燥が追いつかず、深刻な床湿り状態を呈する。また、家禽の急速な発育を達成して高収益を上げるために、生産者は家禽へ高密度飼料を給餌している。高密度飼料とは、エネルギー価やタンパク質含有量が高い飼料であり、必然的に繊維質の含有量が低い。このような高密度飼料は飼料要求率を高める効果があるが、水分が多く密度の高い糞を作り、敷料が乾き難くなる。
【0016】
なお、一般的に家禽の生産は、上述の如く多数を群単位で飼育するため、各種の細菌、ウイルス、各種の寄生虫の感染から守るために、法で定められた安全な方法により、抗生物質や抗菌製剤を飼料添加物や動物用医薬として投与して飼育している。しかし、消費市場の一部では安心・安全・健康志向から、抗生物質や抗菌製剤を投与しないで飼育する試みが行われている。現在、日本食鳥協会の制定した「鶏肉表示のガイドライン」により、全飼育期間にわたり抗生物質や抗菌製剤を投与しないで飼育したものは「特別飼育鶏」と定義される。特別飼育鶏は抗生物質・抗菌製剤を投与しないため、腸管内の細菌やコクシジウムが多くなり一般的に生産性が悪い。更に、上述の如くコクシジウムは湿った敷料中で感染力を獲得すること、ウェルシュ菌も湿った敷料中に存在しやすいなどの理由から、特別飼育鶏の生産性は一般的な抗生物質・抗菌製剤を使用した飼育と比較して、より一層敷料の質による影響を受けやすい。
【0017】
上記種々の理由から、床湿りは家禽の生産性、ひいては収益性を左右する大問題に発展しているといえる。高い飼育密度や急速な発育、特別飼育鶏の普及など、家禽産業における床湿りへの圧力は高まる一方で、飼料の面からの配慮は残念ながらほとんどなされておらず、むしろそれを助長するような飼料が選択されているのが現状である。家禽飼育現場では、現在新たな副資材を追加混合するなどの労力を要せず、生産性も損なわずに敷料の質を改善できる方法が強く望まれている。
【0018】
そこで、本発明者らは上記課題に鑑みて鋭意検討の結果、穀物殻を有効利用して家禽に給与することで家禽の筋胃が良好に発達し、かつ高い敷料改善効果も得られることを知見し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は上記課題を解決するものであって、成育面で問題はなく、家禽の筋胃が良好に発達すると共に敷料改善効果も得られる穀物殻の配合された家禽用飼料、及び穀物殻を給与する家禽の飼育方法等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願によれば、次の発明が提案される。
(1)穀物殻が、該穀物殻配合前の飼料100重量部に対して、0.1〜10重量部配合されている家禽用飼料。
(2)前記穀物殻が、籾殻、蕎麦殻、麦殻からなる群から選ばれる1種又は2種以上である、(1)に記載の家禽用飼料。
(3)クランブル又はペレット状である、(1)または(2)に記載の家禽用飼料。
(4)平飼い家禽舎で飼育される家禽に給餌される、(1)ないし(3)のいずれかに記載の家禽用飼料。
(5)(1)ないし(4)のいずれかに記載の家禽用飼料を給餌する、家禽の飼育方法。
(6)7日齢以降の家禽に給餌する、(5)に記載の家禽の飼育方法。
(7)穀物殻を、該穀物殻配合前の飼料100重量部に対して0.1〜10重量部配合して給与する、平飼い家禽舎における敷料の質の改善方法。
(8)前記穀物殻が蕎麦殻である、(7)に記載の平飼い家禽舎における敷料の質の改善方法。
(9)穀物殻を、該穀物殻配合前の飼料100重量部に対して0.1〜10重量部配合して給与する、砂肝の生産方法。
(10)前記穀物殻が籾殻である、(9)に記載の砂肝の生産方法。
【0020】
穀物殻とは、食用となる種子の外側を覆う比較的硬い皮をいう。例えば籾殻とは、米の精米過程で得られる副産物で、籾摺りによって得られる。蕎麦殻とは、玄蕎麦からそば粉を得る際に得られる副産物ある。麦殻とは、精麦の工程で得られる副産物である。本発明における「配合」とは、成型後の飼料に穀物殻を単に追加しただけで飼料と穀物殻とを簡単に区別できる場合と、粉状の飼料に穀物殻が添加されて良好に混合され、飼料と穀物殻とを簡単には区別し難い場合とを含む。
【0021】
家禽用飼料には、その形状からマッシュ飼料、ペレット飼料、クランブル飼料の3種に大別される。マッシュ飼料とは、現在最も普及している配合飼料の形態であり、穀類を粗く粉砕したものと粉状の原料を混ぜ合わせたものである。ペレット飼料とは、微粉状の飼料に水蒸気等により水分を加えて加熱調湿後、円柱形に加圧成型した固形飼料である。クランブル飼料とは、ペレットに成型した飼料を食べ易いようにクランブラーで粗砕きした、粒度の揃った飼料である。また、クランブル飼料とマッシュ飼料とを混ぜ合わせたものもある。クランブル飼料やペレット飼料に使用する成型機としては、ペレットミルやエキスパンダー等を使用できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、家禽の発育(増体)に悪影響なく、平飼い家禽舎における敷料の質を改善することができる。ここで、敷料の「質」とは、その湿度・形状・固さ・比重・におい等を指し、「質が良い」とは乾燥して砂状にサラサラしている、軟らかく空隙率が高い、比重が軽くにおいも少ない状態である。逆に、「質が悪い」とは湿ってベタベタとしており、板状ないしブロック状に固まって比重が重く、においの強い状態である。敷料の質が改善されることで、床湿りに伴う上記第1〜第3の問題、具体的には、家禽の生産性低下及び疾病罹患の問題、環境問題、及び敷料処理の問題も改善される。また、趾部の罹患率も低減するので、趾部(通称もみじ)の生産性も向上する。また、従来殆どが廃棄処分されていた穀物殻の有効利用を図ることができる。そのうえ、硬い穀物殻を摂取することで家禽の筋胃が良好に発達し、砂肝の生産性も向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】評価試験1のマッシュ対照区における敷料の写真である。
【図2】評価試験1のペレット対照区における敷料の写真である。
【図3】評価試験1のマッシュ籾殻区における敷料の写真である。
【図4】評価試験1のペレット籾殻区における敷料の写真である。
【図5】評価試験2の対照区における敷料の写真である。
【図6】評価試験2の籾殻区における敷料の写真である。
【図7】評価試験2の蕎麦殻区における敷料の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、穀物種子から分離(正確には脱ぷ)された穀物殻を、飼料に配合した状態で家禽に給与する。穀物殻としては、米、蕎麦、韃靼蕎麦、大麦、裸麦、小麦、ライ麦、燕麦(オーツ麦)、カラス麦、ハト麦、トウモロコシ、キビ、アワ、ヒエ、タカキビ、コウリャン、ソルガム、シコクビエ、トウジンビエ、テフ、フェニオ、コドラ、マコモ、大豆、小豆、リョクトウ、ササゲ、キノアなどから得られる殻を使用できる。中でも、家禽の筋胃内でのグリット効果が高い籾殻、蕎麦殻、麦殻、コーンブラン(ドライミリングではコーン糠ということがある)が好ましい。さらに、敷料の質の改善を重視する場合は蕎麦殻が好ましく、砂肝の生産性向上を重視する場合は籾殻が好ましい。これら穀物殻は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合使用してもよい。なお、穀物殻を飼料に配合せず、飼料とは別に単独で給与しても、家禽が穀物殻を摂取する限り本発明の作用効果は期待できる。
【0025】
家禽としては、代表的には鶏が挙げられるが、敷料を敷き詰めた状態で平飼いされる家禽であれば、ウズラ、七面鳥、アヒル、ガチョウも含まれる。鶏とはニワトリ全般を指し、肉用鶏(ブロイラー)、採卵鶏(レイヤー)、肉用種鶏、卵用種鶏などがある。
【0026】
穀物殻は、粉砕してから家禽に給与してもよいが、粉砕すること無くそのまま家禽に給与することが好ましい。粉砕する場合は、あまり細かく粉砕すると敷料改善効果が低下するので、粗粉砕に留めておく。粉砕しなければ、粉砕に要するコストの節約になる。一般的に、穀物殻は粉砕した方が表面積が大きくなり、吸湿性が高まるため利用しやすいといわれているが、粉砕していない穀物殻でも家禽の筋胃(砂嚢とも呼ばれる)で粉砕されるため、必ずしも事前に粉砕する必要は無い。穀物殻を粉砕せずに給与すれば、比重が小さいまま給与できると共に、消化されずそのまま糞尿と共に排出された穀物殻によって敷料の空隙も大きくなって敷料改善効果も高くなる。さらに、家禽の筋胃が活発化されて発達するので、砂肝の歩留りが高くなる点でも好ましい。
【0027】
穀物殻は、穀物殻配合前の飼料100重量部に対して0.1〜10重量部配合することが好ましい。より好ましくは0.5〜8重量部であり、さらに好ましくは1〜6重量部である。穀物殻の配合量が0.1重量部より少ないと、敷料改善効果や筋胃の増大効果が得られ難い。一方、穀物殻の配合量が10重量部を超えて配合されると、敷料の改善効果は高くなるが、飼料の栄養成分が希釈されて飼料要求率が悪化すると共に、家禽が充分な栄養を摂取できずに生産性(発育成績)を損なう。また、飼料の嵩が増大することで、飼料の運送効率が低下する。穀物殻を飼料へ一定割合配合すれば、飼料の栄養成分が希釈されて発育成績や飼料要求率が低下してしまうという懸念が有るが、穀物殻配合前の飼料100重量部に対して0.1〜10重量部程度であれば、このような問題を回避できる。これは、筋胃内で穀物殻がグリットの役割を果たし、飼料を効率よく磨砕することで、未消化のまま排泄されることになる飼料が減少するからと考えられる。つまり、穀物殻によって飼料の消化率が向上することにより飼料が希釈される点が補われる。穀物殻の配合量が穀物殻配合前の飼料100重量部に対して0.5重量部以上あれば、確実にグリット効果が得られ、穀物殻を配合していない場合に比べて発育成績が向上する。また、穀物殻の配合量が穀物殻配合前の飼料100重量部に対して8重量部以下であれば、殆ど発育成績が低下することはない。また、筋胃内に貯留される穀物殻は、筋胃から十二指腸への消化物の流入を調整する能力を発達させ、筋胃と十二指腸の間で行われる逆蠕動を効率的に行い、完全に磨砕された飼料から徐々に腸管へ移行することにより、消化吸収が効率よく行われる点も影響していると考えられる。このように、穀物殻を摂取させることにより、飼料の消化吸収が促進され、更に飼料の未消化部分が減少することで消化管下部での微生物による異常発酵が抑えられるため、健全な腸内環境が得られる。このことは、特別飼育を実施するうえでのメリットが非常に高い。なお、発育成績をある程度犠牲にしてでも「大きな砂肝が欲しい」「乾いた敷料が欲しい」という要望が強い場合は、穀物殻の配合量を穀物殻配合前の飼料100重量部に対して12重量部程度にまで増量することもできる。発育成績を下げることなくできるだけ砂肝増大と敷料改善とを図る場合は、穀物殻の配合量を8〜10重量部程度とすればよい。
【0028】
穀物殻を飼料に配合する場合、雛の状態から出荷まで一貫して同じ配合量としてもよいが、家禽の成長段階に応じて、穀物殻の配合量を順次段階的に増量させながら給餌してもよい。筋胃の発達していない雛の状態では、穀物殻の粉砕機能も未成熟であり、飼料を選り食いして穀物殻が給餌器に多く残存してしまう傾向があるからである。一般的には、日齢が進むにつれて飼料摂取量も多くなるので、これに伴い穀物殻の摂取量も多くなる。穀物殻の配合量を段階的に増量させる目安としては、穀物殻配合前の飼料100重量部に対して、例えば14日齢までは0.1〜1重量部程度、14〜21日齢では0.5〜2重量部程度、21〜28日齢では1〜3重量部程度、28〜35日齢では1〜5重量部程度、35日齢〜出荷までは2〜10重量部程度とすればよい。なお、このパターンはほんの一例であって、本発明の飼育方法等を拘束するものではない。
【0029】
穀物殻は、7日齢以降の家禽に給与することが好ましい。穀物殻を給与し始める時期が7日齢より早くても、雛のクチバシがまだ小さいため食べにくくて殆ど摂取できず、未熟な胃腸へ大きな負荷もかかる。但し、穀物殻を粉砕した状態であれば、7日齢前でも給与可能である。また、食用として屠殺する場合は、屠殺の2日前までに給与を中止することが好ましい。食用として屠殺する2日前以降に給与しても構わないが、腸管内等に穀物殻が残留するため、食鳥処理工程を汚染する可能性がある。
【0030】
また、季節や気候に応じて穀物殻の配合量を変更することも好ましい。例えば、夏季と比べて家禽舎内の換気があまりなされず床が湿りやすい冬季や、湿度の高い梅雨の季節には、飼料に対する穀物殻の配合量を比較的多くする。逆に、気温が高く家禽舎内の換気が充分取れていることから床湿りが少ない夏季、若しくは空気が乾燥し始める秋季には、飼料に対する穀物殻の配合量を比較的少なくすればよい。この場合、雛の状態から出荷まで一貫して同じ配合量でもよいが、家禽の成長段階に応じて段階的に増量させることとの組み合わせがより好ましい。
【0031】
さらに、床湿りの度合いに応じて適宜配合量を増減させることもできる。例えば、基本的には雛の状態から出荷まで一貫して同じ配合量としながらも、床湿りの程度が軽いか殆ど生じていないような場合は配合量を適宜少なく(例えば穀物殻配合前の飼料100重量部に対して0.1〜1重量部程度)し、逆に床湿りが激しい場合は配合量を適宜多く(例えば穀物殻配合前の飼料100重量部に対して2〜10重量部程度)することもできる。または、敷料が湿りだす飼育前半(全飼育日数の前1/2程度)のみ、若しくは飼育終期まで(全飼育日数の前2/3ないし前3/4程度)のみ穀物殻を給与し、これにより良好に敷料が乾燥してくる飼育後半(全飼育日数の後1/2程度)若しくは飼育終期以降(全飼育日数の後1/3ないし後1/4程度)は穀物殻の給与を停止してもよい。
【0032】
穀物殻を配合する飼料自体(ベース飼料)は、従来から家禽用として使用されている公知の飼料を使用できる。本発明においては、穀物殻を各種栄養素を補うことを主目的として配合するものではないので、家禽に必要な各種栄養素(栄養バランス)は、穀物殻配合前の飼料自体によって調整しておく。飼料の形態は、マッシュ飼料、クランブル飼料、ペレット飼料、及びこれらを混合した飼料のいずれの形状でも構わない。いずれの形状においても、敷料の質が改善すると共に、大きな筋胃が得られる。中でも、クランブル飼料およびペレット飼料が好ましい。マッシュ飼料に比べて、クランブル飼料は雛の餌付け時や幼雛用として、ペレット飼料は有る程度大きくなった家禽にとって最適であり、家禽の発育を促し飼料要求率が優れる。これは、クランブル飼料やペレット飼料が家禽にとって丁度食べやすい大きさに加工されているため、家禽は容易に飼料を摂取して短時間に必要量を充足することが出来るからと考えられている。家禽はクチバシで飼料を摂取するため、マッシュ飼料に大量に含まれる粉は食べにくい。クランブル飼料やペレット飼料はその形状を安定化するために、飼料を一旦細かく粉砕したうえで成型される。また、ペレットミルで成型する際にも、ペレットミルのせん断力によって飼料が粉砕される。そのため、粉砕された飼料はそ嚢内で水と混和されて膨軟するだけで微粒子に戻るため、家禽は筋胃で特に飼料を磨砕することなく栄養として利用できる。これは、筋胃が未発達の初生雛にとっては非常に有益であり、マッシュ飼料より格段に餌付きが良く、消化吸収が早い。結果的に初期増体が大きくなり家禽体重の揃いも良くなる。また、クランブル飼料で餌付けすることにより、雛に選り食いさせることなくビタミン、ミネラル、添加アミノ酸、その他飼料添加物等の微量成分を均一に摂取させることが可能となり、結果的に家禽の摂取栄養素に偏りが無くなり発育のバラツキも少なくなる。
【0033】
しかし、家禽にクランブル飼料やペレット飼料を給餌し続けると、一般的には筋胃の発育が悪くなるという問題がある。クランブル飼料やペレット飼料を長期間給餌し続けると、飼料要求率は改善されるが、消化管の形態を変え、筋胃の運動が必要無くなり、その結果筋胃の発達が遅れ、食用として屠殺時点では明らかに筋胃が小さくなってしまう。筋胃は砂肝として販売される重要な商材であり、年間を通じて高値で取引されるため、小さくなってしまうのは問題である。また、クランブル飼料やペレット飼料を家禽に給与すると、マッシュ飼料と比して明らかに床が湿りやすくなる。上述の如くクランブル飼料及びペレット飼料はマッシュ飼料を粉砕して成型し、さらにペレットミルのせん断力によっても粉砕されるため、クランブル飼料及びペレット飼料を構成する飼料の粒子が細かくなる。結果的に、ペレット飼料は大変比重が高くなり、これを摂取した家禽が排泄する糞も微粒子で構成されるため、密度が高く板状に固まった乾きにくい敷料となるためである。そのため、ペレット飼料やクランブル飼料は摂取量を増加させて家禽の増体を改善すると共に、飼料要求率を改善する効果が高く飼料としての価値が高いのにも拘らず、あまり普及していないのが現状である。
【0034】
しかし、本発明では穀物殻を飼料に配合することで、飼料の形態を問わず敷料の質を改善できる。すなわち、マッシュ飼料と比べてより床湿りの問題が大きいクランブル飼料やペレット飼料であっても、敷料改善効果が得られる。また、上述のようにクランブル飼料やペレット飼料を給餌して長期間飼育された家禽の筋胃は小さくなるが、穀物殻が配合されていることでこれを大幅に改善することができる。このように、従来問題であった床湿りと筋胃の問題を解決しつつ、優れた飼料要求率も得ることができる点で、穀物殻の配合対象をクランブル飼料やペレット飼料とすることが好ましい。
【0035】
なお、クランブル飼料やペレット飼料とする場合は、日齢が若い内はクランブル飼料を給餌し、ある程度成長した段階でペレット飼料を給餌する。若齢の雛は、筋胃の発達が未成熟であり、特に孵化後始めて飼料を摂取させる餌付け段階においては、なおさら配合飼料に慣れていない為、予め微粉砕したペレットを粗く砕いた、クランブル飼料を給与する。家禽雛にクランブル飼料を給与すると、雛の餌付きが大幅に改善され、摂取した飼料がスムーズに消化吸収されるため、初期増体が大きくかつ揃いの良い家禽を飼育することができる。また、飼料をより食いさせることなく微量成分(ビタミン、ミネラル、添加アミノ酸等)を均一に摂取させることが可能となり、家禽ひなの発育のバランスが良くなり、体重のバラツキも少なくなる。クランブル飼料からペレット飼料への変更時期としては、日齢7〜14日程度を目安とすればよい。
【0036】
クランブル飼料やペレット飼料への穀物殻の配合タイミングは、成型前後のいずれでも構わない。すなわち、ペレットミルによる成型前に穀物殻を配合して、飼料と穀物殻とを同時に成型しても良いし、ペレットミルによる成型後に穀物殻を配合しても良い。ペレットミルによる成型前に穀物殻を配合して同時に成型する場合は、穀物殻もペレットミルによるせん断力を受けることもある。このように、本発明における「配合」とは、単に成型された飼料に穀物殻を追加しただけで飼料と穀物殻とを簡単に区別できる場合と、粉状の飼料に穀物殻を添加して良好に混合したうえで同時に成型することで、飼料と穀物殻とを簡単には区別し難い場合とを含む。
【0037】
穀物殻を飼料に配合しても、家禽は穀物殻を選択的に摂取する。これは、穀物殻が家禽にとって非常に食べやすい大きさ・形状であることに加え、家禽は本能的に穀物殻のような硬質物を必要としているためと考えられる。家禽は筋胃を持ち、ここに運ばれた飼料は筋胃の強い収縮運動により砕かれると共に、腺胃から分泌された胃液による消化も行われる。筋胃は歯を持たない鳥類が飼料を砕き、消化を行う重要な器官である。野生もしくは庭先等で自由に飼育した家禽は、筋胃内に砂礫が確認される。これは、飼料の磨砕を効率よく行うため家禽が本能的に取り入れたものである。かつては、グリットと呼ばれる小石を家禽に与えることが行われていたが、給餌システムや食鳥処理の機械化により、これら小石が機械のトラブルや異物混入の原因になることから現在ではほとんど行われていない。したがって、平飼い飼育される家禽は砂礫に替わるものを求め、固くてある程度の大きさのあるものを積極的に摂取しようとする傾向にある。実際、敷料としておがくずやウッドチップ等を使用した場合は、これらを有る程度摂取することが、屠殺した家禽の筋胃内にいくらかの木片が存在していることから確認される。しかし、一般的に消毒されることの無い敷料としてのおがくず等を摂取することは不衛生である。しかも、家禽の糞尿が付着した敷料を摂取することは極めて不衛生である。糞尿が付着した敷料を摂取すると、コクシジウムオーシストやウェルシュ菌を経口的に摂取して腸炎を発症するきっかけになりかねない。他に、釘やネジの類も積極的に摂取する傾向にあるため、上記同様異物混入の原因となりやすいといった問題もある。
【0038】
ここで、家禽に穀物殻を給与した場合、筋胃の発達と飼料の効率的な磨砕のために選択的にこれらを摂取して筋胃内に貯留する。貯留された穀物殻は筋胃内で繰り返し磨砕されるが、その際に上記グリットの役割を果たし、飼料の消化を大いに促進すると考えられる。このように、家禽は穀物殻を積極的に摂取して筋胃内に充分貯留するため、それ以上グリットの役割を持つものの摂取は必要無くなる。穀物殻を家禽に給与すれば、敷料に使用したおがくずやウッドチップ等の木片、さらにはネジや釘のような異物を摂取することが無くなるので、これらによって引き起こされるリスクを回避できる。
【0039】
穀物殻は筋胃内で磨砕を受けるが、いくらかは磨砕を逃れて完全に原形を失うことなく排泄されるものもある。家禽の糞の中には、粉砕された穀物殻の他に未粉砕の穀物殻そのものも多量に混在するため、嵩の大きな糞となる。嵩が大きいため押し固められてもブロック状ないし板状になり難く、良好な空隙を保ったまま堆積することで、乾燥し易く軟らかい砂状の敷料を形成する。これは、表面積の大きい副資材を家禽の糞尿に良く混合した状態に等しい。つまり、穀物殻はわざわざ機械で粉砕しなくとも、筋胃の中で効率的に粉砕され表面積の大きい敷料が得られる。これは、穀物殻を処理する上で非常に有益であるだけでなく、粉砕に要するコストを節減できる点で非常に有益である。また、家禽は粉砕された穀物殻を腸管内で良く混和した状態で排泄するので、人手を使って家禽舎内に新たな副資材を導入攪拌する必要もない。これにより、作業員の肉体労働の負荷を大幅に低減し、人件費の低減や食肉の安価流通にもつながる。
【0040】
また、敷料の質が改善されることで、次のような利点が得られる。家禽が乾いたところに集中して寄り集まることが回避され、家禽舎内スペースの有効活用率が向上する。これにより、給餌器や給水器へ家禽が集中してアクセスすることが回避され、結果的に飼料摂取量が増加して高い増体を確保できる。湿って固まり凹凸の有る床よりも、乾いた床であれば給餌器や給水器へのアクセスが容易になる。敷料が乾いていればその上に鶏が座っても身体を冷すことが無く、快適に休息することが出来るため疾病に罹患する可能性も低くなる。給餌器や給水器へのアクセスが容易になることから、鶏どうしの争いも回避され、喧騒性も低下する。互いに傷つけあうことも無くなるので、傷や皮膚炎などが減少し、屠体質の向上につながり、食鳥処理場での廃棄も減少する。趾部裏の皮膚炎(FPD)、飛節のかさぶた(HB)も減少し、趾部の格付けが向上し、廃棄も減少する。FPDやHBの発生は、ブロイラーがどれくらい快適に飼養されていたかを推し量る上で有用であり、動物福祉の指標として欧米諸国では食鳥処理場でモニタリングされている。我が国でも近い将来動物福祉に関する規制が行われた場合、乾いてやわらかい敷料というものは極めて有利と言えよう。FPDやHBが種鶏の交尾行動を妨げることも無くなり、受精率や孵化率の向上につながる。種鶏や平飼いの採卵鶏では巣外卵の汚染が減り、孵化率や商品化率の向上にもつながる。湿って固まった敷料上で鶏が継続して休息することによって発生する胸骨滑液胞およびそれが拡張した状態である胸部水疱(胸ダコ)が減少し、胸肉の商品化率は高くなる。胸部や腹部への湿った糞尿の付着量が減少する。これにより、毛胞炎を減少させ、壊疽性皮膚炎のリスクを低減すると共に、食鳥処理場での脱羽を容易にし、肉に付着する細菌数も低下するため、屠体質が向上して収益性が改善される。乾いた敷料の上では、糞中に排泄されたアイメリア属原虫オーシストが成熟しにくくなるため、コクシジウム症の被害が軽減される。ウェルシュ菌の増殖も抑えられ、壊死性腸炎のリスクが低下する。家禽舎内に増殖するカビも減少するため、真菌症の発生を軽減できる。これらは、特に特別飼育の場合に大きな利点となる。また、乾いた敷料は良好な空隙を有しているため、通気性が良く乾燥し、水分が少なく嫌気性の発酵が起こりにくいため、アンモニアの発生が減少する。これにより、家禽の呼吸器や角膜に与える悪影響が軽減できる。さらに、アンモニアの発生が減少することで、それを排出するための強制的な換気も最小限度に抑えられ、無理に家禽舎内の温度が下がることも無くなり、暖房費や電気代が節約されるだけでなく、家禽にとって適度な温度を維持することが可能となり、生産性向上につながる。家禽舎周囲の臭気も少なくなり、環境問題も起こりにくくなる。良好な空隙を保ち穀物殻が良く混合された乾燥状態の敷料であるため、搬出時も軽くて臭いも少なく取り扱いが容易となる。乾燥した敷料は、発酵・焼却いずれの方法でも処分が容易であり、公害問題にも発展しにくい。鶏糞ボイラーを使用している場合も温度が上がりやすく、白煙や臭気での苦情も少なくなる。
【0041】
(評価試験1)
先ず、穀物殻として籾殻を用い、ベース飼料としてマッシュ飼料およびペレット飼料を使用した場合の効果について対比評価した。
【0042】
<供試動物>
チャンキー種雄ブロイラー320羽を使用して試験を行った。7日齢までは予備飼育を行い、その後、各試験区の体重が均等になるように鶏を4試験区×4反復の合計16区画(各20羽)に区分けして飼育試験を行い、43日齢で出荷した。なお、各区画の面積は0.4坪(1.32m)である。また、7日齢までの予備飼育では、中部飼料社製餌付け用配合飼料「餌付け名人」を一般的な飼育方法に基づいて給与した。各試験区へは試験開始時に敷料としておがくずを3.8kg投入し、1.5cm厚になるように敷設した。
【0043】
<試験区及び供試飼料>
対照区として籾殻無配合のマッシュ飼料区(マッシュ対照区)と籾殻無配合のペレット飼料区(ペレット対照区)を設定し、マッシュ飼料100重量部に対して籾殻を2重量部配合した区(マッシュ籾殻区)と、ペレット飼料又はクランブル飼料100重量部に対して籾殻を2重量部配合した区(ペレット籾殻区)の4水準とした。籾殻は、飼料に対して単に後追加しただけとした。なお、ペレット飼料にはマッシュ飼料と同一の飼料を使用した。つまり、ペレット飼料とマッシュ飼料とは、その配合割合及び成分は同一である。ペレット飼料は4mm径とした。ペレット飼料区では、7日齢の試験開始から14日齢までの1週間は、鶏のクチバシの大きさを考慮してクランブル化して給与した。ここでの籾殻の配合割合は、通期2重量部に固定した。各試験区の内容を表1に示し、籾殻を配合する前の飼料の配合割合及び成分表を表2(表2中の数値は重量%)に示す。籾殻は、飼料が完成した後に配合したため、籾殻を配合した飼料の最終的な栄養成分は表2の状態から変化する。各試験区における給餌条件を表3に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
<発育成績>
まず、上記飼育条件での各試験区における発育成績について分析した。その結果を表4に示す。増体量は、42日齢時点での平均体重から、7日齢の試験開始時点の体重を差し引いて算出した。飼料摂取量は、7日齢から42日齢の間に1羽あたりが摂取した飼料の重量を示す。飼料要求率は、7〜42日齢の飼料摂取量を、7〜42日齢の増体量で除して算出した。
【0048】
【表4】

【0049】
表4の結果から、飼料の形状をマッシュからペレットに加工することで、体重(増体量)、飼料要求率が改善されたことがわかる。これにより、ペレット飼料がマッシュ飼料よりも摂取しやすいという利点が改めて確認された。また、飼料100重量部に対して籾殻を2重量部配合しても、体重(増体)は小さくなることは無く、飼料要求率も悪化しなかった。これは、筋胃内で籾殻がグリットの役割を果たし、飼料を効率よく磨砕することで、対照区では未消化のまま排泄されてしまっていた飼料が、籾殻区では有効利用できるためと考えられる。これにより、籾殻によって飼料の消化率が向上し飼料の希釈が補われると考えられる。なお、飼料の形状と籾殻の有無での相互作用は得られなかった。これは、ベース飼料がマッシュ飼料であろうとペレット飼料であろうとを問わず、籾殻を配合してもいずれも発育成績には悪影響が無いことを示している。
【0050】
<敷料の性状>
次に、各試験区における敷料の質に関し、その比重及び水分含有率を測定すると共に、臭いについて評価した。その結果を表5に示す。また、各試験区で得られた敷料の状態を示す写真を図1〜図4に示す。図1は、マッシュ対照区における敷料の写真である。図2は、ペレット対照区における敷料の写真である。図3は、マッシュ籾殻区における敷料の写真である。図4は、ペレット籾殻区における敷料の写真である。
【0051】
敷料の性状については、43日齢に鶏を搬出し、料全量を回収して攪拌機(大塚鉄工所製養魚用練機20K)で5分間よく攪拌して均一化した後、所定量を採取して比重を測定し、さらに乾燥機にて恒量に達するまで乾燥して、水分含有率を測定した。比重の測定は、木製升(No14、1007ml)を用いて均一化した敷料をすりきり一杯分採取し、重量を測定して次式によって求めた。
敷料比重(g/cm3)=敷料重量(g)/敷料容積(1007ml=cm3
水分含有率の測定は、攪拌機にて均一化した敷料1kgをアルミバットに載せ、循環式熱風乾燥機(TYPE102-DL-3、根来製作所製、60℃に設定)で恒量に達するまで約72時間乾燥し、その乾燥重量を求めて次式より敷料の水分含有率を算出した。
敷料の水分含有率(%)=((乾燥前重量−乾燥後重量)/乾燥前重量)×100
敷料のにおいについては、均一化した敷料を各100g採取し、ビニール袋へ投入して24時間密閉した後に被験者9人にその袋の中のにおいを嗅がせ、においの強さを5段階で評価した平均値を取った(点数が高いほどにおいが強い)。
【0052】
【表5】

【0053】
表5の結果から、飼料の形状をマッシュからペレットに加工することで、敷料の比重及び敷料の水分含有率が有意に増加していることがわかる。これは、一般的にも認められるペレット飼料のデメリットである。敷料のにおいは、有意に強くなっている。しかし、籾殻を配合することで、敷料の比重および敷料の水分含有率が有意に減少し、敷料のにおいも弱くなることがわかる。図1〜図4を見ても、籾殻を配合していない対照区では敷料が板状に固まっている部分が多いが、籾殻を配合した籾殻区では、サラサラした砂状の敷料となっていることがわかる。特に、ペレット飼料へ籾殻を添加した場合は、マッシュ対照区と差が無いところまで敷料の比重および水分含有率が減少しており、ペレット飼料の増体や飼料要求率等の利点を維持しながら、従来問題となっていた敷料をマッシュ飼料並みに改善することができることがわかった。なお、表5の結果からも、飼料の形状と籾殻の有無での相互作用は得られなかった。これは、籾殻を添加する飼料の形状がマッシュであろうとペレットであろうとを問わず、籾殻を添加することによる効果は均等であることを示している。
【0054】
<筋胃(砂肝)の大きさ>
次に、穀物殻の及ぼす筋胃への影響について分析した。具体的には、各試験区から全体の平均体重がほぼ等しくなるように鶏を4羽ずつ選抜し、44日齢時に12時間の絶食後屠殺し、筋胃を摘出し、切開して内容物を除去してからその重量および体重に対する比率(歩留り)を測定した。その結果を表6に示す。
【0055】
【表6】

【0056】
表6の結果から、飼料の形状をマッシュからペレットに加工することで、筋胃の重量および歩留りは有意に減少することがわかる。これは、一般的にも認められるペレット飼料のデメリットである。しかし、籾殻を配合することで、筋胃の重量および歩留りが有意に増加することがわかる。特に、ペレット飼料へ籾殻を添加した場合は、マッシュ対照区と差が無いところまで筋胃が増大しており、ペレット飼料における増体や飼料要求率等の利点を維持しながら、従来問題であった筋胃をマッシュ飼料並みに改善できることがわかった。なお、表6の結果からも、飼料の形状と籾殻の有無での相互作用は得られなかった。これは、籾殻を添加する飼料の形状がマッシュであろうとペレットであろうと、籾殻を添加することによる効果は均等であることを示している。よって、マッシュ飼料へ籾殻を添加した場合においても筋胃の重量および歩留りが増加するため、マッシュ飼料でも大きな筋胃を生産することを目的とした場合に有益であるといえる。
【0057】
以上の各結果から、ペレット飼料やマッシュ飼料へ穀物殻を配合して家禽に給与することは、飼育成績を悪化させること無く敷料の質を改善し、大きな筋胃を作ることが確認できた。また、ペレット飼料へ穀物殻を配合することで、マッシュ飼料と比較して優れた飼料要求率を確保しつつ、従来問題であった敷料の質と筋胃をマッシュ飼料並みに改善することが確認でき、ペレット飼料への穀物殻配合がより一層効果的であることが確認された。これにより、穀物殻を飼料に所定量配合した平飼い家禽舎における敷料の改善方法と、穀物殻を飼料に所定量配合した砂肝の生産方法も提案されることになる。
【0058】
(評価試験2)
次に、穀物殻として蕎麦殻を配合した場合の効果を、籾殻を配合した場合の効果と対比しながら評価した。
【0059】
<供試動物及び飼育条件>
基本的には、評価試験1と同様の条件で飼育した。具体的には、チャンキー種雄ブロイラー600羽を使用して3試験区×4反復の合計12区画(各50羽)に区分けし、ベース飼料は市販のマッシュ飼料のみとした。各区画の面積は0.83坪(2.74m2)である。また、日齢に応じたベース飼料の切り替えタイミングも異なる。すなわち、0〜7日齢において餌付け飼料(中部飼料社製「餌付け名人」)を穀物殻未配合で給与した点は同じであるが、8〜21齢で前期飼料(中部飼料社製「ハイブロA」)を穀物殻を配合して給与し、22〜35日齢で後期飼料(中部飼料社製「ハイブロB」)を穀物殻を配合して給与した。鶏は36日齢で搬出した。各試験区の条件を表7に示す。
【0060】
【表7】

【0061】
<発育成績>
上記飼育条件での各試験区における発育成績について分析した。その結果を表8に示す。なお、増体量、飼料摂取量、飼料要求率は、それぞれ評価試験1と同じ手法で35日齢を基準として算出した。
【0062】
【表8】

【0063】
表8の結果から、飼料100重量部に対して蕎麦殻を2重量部配合しても増体は小さくなることは無く、飼料要求率も悪化しないという籾殻と同様の効果が得られた。これは、籾殻と同じく筋胃内で蕎麦殻がグリットの役割を果たし、飼料を効率よく磨砕するためと考えられる。したがって、対照区では未消化のまま排泄されてしまっていた飼料が、籾殻区及び蕎麦殻区では有効利用でき、蕎麦殻によっても飼料の消化率が向上し飼料の希釈が補われると考えられる。なお、発育成績に関しては、籾殻の方が若干優れているが、籾殻と蕎麦殻の間には大きな差が無かった。
【0064】
<敷料の性状及び趾瘤症スコア>
また、各試験区における鶏搬出後の敷料の質に関してその比重及び水分含有率を測定すると共に、鶏の足の裏に関して趾瘤症スコアを測定した。その結果を表9に示す。なお、敷料の比重及び水分含有率は、評価試験1と同じ手法で算出した。趾瘤症スコアに関しては、36日齢に各試験区の鶏すべてについて、足の裏に透明な5mm方眼の定規をあてることで、おおまかに趾瘤の面積を測定し、下記の如くスコア化して平均値を算出した。
趾瘤症スコア
スコア0:趾瘤が無いかごく軽微なもの(趾瘤の面積が0.5cm2以下)
スコア1:軽度の趾瘤がみられるもの(趾瘤の面積が0.5〜1.0cm2のもの)
スコア2:中度の趾瘤がみられるもの(趾瘤の面積が1.0〜1.5cm2のもの)
スコア3:重度の趾瘤がみられるもの(趾瘤の面積が1.5cm2以上のもの)
また、各試験区で得られた敷料の状態を示す写真を図5〜図7に示す。図5は、対照区における敷料の写真である。図6は、籾殻区における敷料の写真である。図7は、蕎麦殻区における敷料の写真である。なお、敷料の写真はその性状がわかりやすいように、乾燥して砂状になった部分と板状に固まった部分を分けて撮影した。
【0065】
【表9】

【0066】
表9の結果から、飼料に蕎麦殻を配合することで、籾殻と同様に敷料の比重及び敷料の水分含有率が有意に減少した。図5〜図7を見ても、穀物殻を配合していない対照区では敷料が板状に固まっている部分が極めて多いが、籾殻区及び蕎麦殻区では、サラサラした砂状の部分が多いことがわかる。また、表9の結果から、飼料に籾殻又は蕎麦殻を配合することで、趾瘤症スコアが大幅に低下することがわかる。これは、籾殻又は蕎麦殻を配合することで敷料の性状がフカフカと柔らかくなり、空隙を保つため敷料が良く乾燥し、趾瘤症の発生が少なくなったためと考えられる。籾殻と蕎麦殻の比較では、蕎麦殻の方が敷料比重を軽くし、水分含量も少なく、更に趾瘤症スコアも低かった。これは、蕎麦殻の方が籾殻より見かけ体積が大きいため、鶏糞中でも空隙を作りやすいためと考えられる。このことから、敷料の質の改善効果に関しては、蕎麦殻の方が好ましいことがわかった。
【0067】
<筋胃(砂肝)の大きさ>
また、評価試験1と同様の手法で、穀物殻の及ぼす筋胃への影響について評価した。その結果を表10に示す。
【0068】
【表10】

【0069】
表10の結果から、飼料に蕎麦殻を配合することで、籾殻と同様に筋胃の重量及び歩留まりが有意に増加することがわかる。これにより、蕎麦殻のグリット効果によっても筋胃が良く活動し、飼料を良く消化することが確認された。籾殻と蕎麦殻の比較では、籾殻の方が筋胃の重量が大きく、歩留まりも高かった。これは、蕎麦殻と籾殻では蕎麦殻の方が柔らかく、籾殻はそのガラス繊維が非常に硬いため、それを砕くために筋胃が更に良く活動して大きくなるからと考えられる。この差が、表8に示す発育成績に関して籾殻が蕎麦殻より若干優れている要因にも繋がると考えられる。このことから、砂肝の生産に関しては、籾殻の方が好ましいことがわかった。
【0070】
(評価試験3)
次に、穀物殻として敷料改善効果が高い蕎麦殻を選択し、その添加量を種々変更した場合の効果について評価した。
【0071】
<供試動物及び飼育条件>
本評価試験3も、基本的には評価試験1や評価試験2と同様の条件で飼育した。本評価試験3でも、各区画は評価試験1と同じ広さで各20羽としている。日齢に応じて給与するベース飼料は評価試験2と同じである。鶏は42日齢で搬出した。各試験区の条件を表11に示す。
【0072】
【表11】

【0073】
<発育成績>
上記飼育条件での各試験区における発育成績について分析した。その結果を表12に示す。なお、増体量、飼料摂取量、飼料要求率は、それぞれ評価試験1と同じ手法で42日齢を基準として算出した。
【0074】
【表12】

【0075】
表12の結果から、飼料100重量部に対して蕎麦殻を2〜8重量部配合(試験区1〜4)しても、増体に殆ど影響なかった。しかし、10重量部(試験区5)では若干増体量が小さく、12重量部(試験区6)では有意に増体量が低下した。飼料要求率に関しては、2〜8重量部(試験区1〜4)までは殆ど影響しなかったが10重量部(試験区5)で若干悪化し、12重量部(試験区6)では有意に悪化した。これにより、穀物殻の配合量を10重量部以下、好ましくは8重量部以下とすれば、穀物殻による飼料栄養成分の希釈が補われ、発育成績が悪化しないことがわかった。一方、穀物殻を12重量部以上配合すると、飼料栄養成分の希釈の悪影響が勝ってしまい、発育成績が悪化することがわかる。
【0076】
<敷料の性状>
また、各試験区における鶏搬出後の敷料の質に関して、評価試験1と同じ手法でその比重及び水分含有率を算出測定した。その結果を表13に示す。
【0077】
【表13】

【0078】
表13の結果から、穀物殻を配合すればするほど、敷料の比重及び敷料の水分含有率が減少することがわかる。また、敷料の性状を目視にて観察したところ、対照区においては半分以上(体積基準)が板状ないしブロック状に固まっていたが、試験区1では板状ないしブロック状に固まった敷料は対照区と比べてかなり減少していた。さらに、試験区2、3では板状ないしブロック状に固まった敷料は殆ど無く、試験区4〜6にいたってはほぼ確認されなかった。これにより、穀物殻を配合すればするほど、敷料改善効果が高くなることがわかった。
【0079】
<筋胃(砂肝)の大きさ>
また、評価試験1と同様の手法で、穀物殻の及ぼす筋胃への影響について評価した。その結果を表14に示す。
【0080】
【表14】

【0081】
表14の結果から、穀物殻を配合すればするほど、筋胃の重量及び歩留まりが有意に増加し、砂肝の生産性が向上することが分かる。これにより、穀物殻のグリット効果によって筋胃が良く活動し、飼料を良く消化することが確認された。
【0082】
(評価試験4)
評価試験3により、穀物殻配合量の好ましい上限が確認できた。そこで、次に、穀物殻配合量の好ましい下限を確認するための評価試験を行った。
【0083】
<供試動物及び飼育条件>
本評価試験4は、鶏を36日齢で搬出した以外は、評価試験3と同じ条件で飼育した。各試験区の条件を表15に示す。
【0084】
【表15】

【0085】
<発育成績>
上記飼育条件での各試験区における発育成績について、35日齢を基準として算出した。その結果を表16に示す。
【0086】
【表16】

【0087】
表16の結果から、飼料100重量部に対して蕎麦殻を0.05〜2.5重量部配合しても、増体及び飼料要求率への悪影響は全くなかった。増体に関しては、穀物殻を0.5重量部以上配合(試験区9〜13)した場合の方が、むしろ改善する傾向が見られた。これにより、穀物殻のグリット効果が改めて確認できた。
【0088】
<敷料の性状>
また、各試験区における鶏搬出後の敷料の質に関して、評価試験3と同じ手法でその比重及び水分含有率を算出測定した。その結果を表17に示す。
【0089】
【表17】

【0090】
表17の結果から、穀物殻を配合すればするほど、敷料の比重及び敷料の水分含有率が減少することが改めて確認できる。しかし、穀物殻の配合量が0.05重量部(試験区7)では大きな差はなく、敷料改善効果がほとんど得られていない。穀物殻の配合量が0.1重量部(試験区8)であれば少なからず敷料改善効果は得られ、穀物殻の配合量が0.5重量部(試験区9)であれば確実に敷料の質が改善している。敷料の性状を目視にて観察しても、対照区と試験区7とでは、ブロック状に固まっていた敷料の量にほとんど差はなかった。
【0091】
<筋胃(砂肝)の大きさ>
また、評価試験3と同様の手法で、穀物殻の及ぼす筋胃への影響について評価した。その結果を表18に示す。
【0092】
【表18】

【0093】
表18の結果から、穀物殻を配合すればするほど、筋胃の重量及び歩留まりが増加することが改めて確認できる。しかし、穀物殻の配合量が0.05重量部(試験区7)では対照区と比べて大きな差はない。これに対し、穀物殻の配合量が0.1重量部(試験区8)であればある程度の筋胃発達効果が得られ、穀物殻の配合量が0.5重量部(試験区9)であれば筋胃が確実に発達することがわかる。
【0094】
以上、評価試験3及び評価試験4の各結果(表12〜14、16〜18)から、穀物殻の配合量は、少なくとも敷量改善及び砂肝の生産性向上のために0.1重量部以上とし、発育成績も向上する0.5重量部以上が好ましいことがわかった。一方、発育成績を犠牲にすれば穀物殻配合量の上限は特に制限されないが、発育成績の悪化を避けながら敷料改善及び砂肝の生産性を向上させるためには、穀物殻の配合量を10重量部以下とすることが好ましく、より好ましくは8重量部以下とすることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物殻が、該穀物殻配合前の飼料100重量部に対して、0.1〜10重量部配合されている家禽用飼料。
【請求項2】
前記穀物殻が、籾殻、蕎麦殻、麦殻からなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1に記載の家禽用飼料。
【請求項3】
クランブル又はペレット状である、請求項1または請求項2に記載の家禽用飼料。
【請求項4】
平飼い家禽舎で飼育される家禽に給餌される、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の家禽用飼料。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の家禽用飼料を給餌する、家禽の飼育方法。
【請求項6】
7日齢以降の家禽に給餌する、請求項5に記載の家禽の飼育方法。
【請求項7】
穀物殻を、該穀物殻配合前の飼料100重量部に対して0.1〜10重量部配合して給与する、平飼い家禽舎における敷料の質の改善方法。
【請求項8】
前記穀物殻が蕎麦殻である、請求項7に記載の平飼い家禽舎における敷料の質の改善方法。
【請求項9】
穀物殻を、該穀物殻配合前の飼料100重量部に対して0.1〜10重量部配合して給与する、砂肝の生産方法。
【請求項10】
前記穀物殻が籾殻である、請求項9に記載の砂肝の生産方法。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−219482(P2009−219482A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29593(P2009−29593)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(391012095)中部飼料株式会社 (11)
【Fターム(参考)】