説明

家電用部品、その塗装方法及び家電製品

【課題】本発明の目的は、プライマーを介さずにポリプロピレン製の部品上に塗装される、意匠性や顔料分散性,薬品耐性に優れた塗膜を有する家電用部品、及びその塗装方法を提供することにある。
【解決手段】家電用部品は、水酸基を有するアクリル樹脂100重量部に対して、イソシアネート基を少なくとも2つ含む架橋剤を0.5重量部以上5重量部以下を有する樹脂組成物の硬化物が、表面を酸化処理されたポリプロピレン製の基材上に直に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装された樹脂製の外装部材を有する家電用部品,ポリプロピレン製の家電用部品の塗装方法,家電用部品を用いる洗濯機などの家電製品に関する。
【背景技術】
【0002】
家電の外装部材には塗装された鋼板やガラス,成形樹脂など多くの材料が用いられる。特に樹脂材料は他の材料に比較して安価で軽量であり、用いられる部位に応じてあらゆる種類の樹脂材料が用いられている。中でもポリプロピレン類は特に軽量であり、耐薬品性や強度に優れているために多用される。
【0003】
このように優れた特性を持つポリプロピレンではあるが、塗装が困難であると言う欠点がある。このためポリプロレンの着色には顔料を分散させて着色することが多く、例えば特許文献1では金属調の外観を得るためにアルミフレーク顔料を分散させる手法が取られている。このような手法によれば金属調の外観を有するポリプロピレン成形材を得ることができるが、顔料の使用量が大きくなるために大型部品への適用は難しく、また、リサイクル性が悪くなると言う課題があった。
【0004】
ポリプロピレンに塗装する手法としては、ポリプロピレンと塗膜の双方に付着性がある塩素化ポリオレフィンなどのプライマーと呼ばれる下塗りを塗布する手法が広く知られている。この手法によれば多くの塗料をポリプロピレン上に塗装することが可能となる。しかし、密着層としてプライマーを作る工程が加わることは、生産性や使用する溶剤の増加による環境負荷の課題があり、プロセス上好ましくは無かった。
【0005】
この課題を解決するために、例えば特許文献2で開示されているように、プライマーを用いずポリプロピレン上に直接塗布できるプライマーレス塗料と呼ばれる塗料が提案されている。本品を用いることで下塗りを施すことなく簡便にポリプロピレンに塗装できる。しかし、一般に塩素化ポリオレフィンを基とするプライマーレス塗料は光沢が不足しており、また、アルミフレーク,マイカなどの顔料の濡れ性や分散性に難があった。また、家電の外装部材として用いるには家庭で用いられる洗剤や漂白剤などに対する耐性に不足があった。
【0006】
以上のように、ポリプロピレンに対する塗装技術は家電用部品に対して採用するにはプライマーを用いることによる生産性や環境負荷の課題、また、洗剤や漂白剤などに対する耐性や光沢などの外観に課題があるために採用することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−83608号公報
【特許文献2】特開2003−313331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、プライマーを介さずにポリプロピレン製の基材上に塗装される、意匠性や顔料分散性,薬品耐性に優れた塗膜を有する家電用部品、及びその塗装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の家電用部品は、水酸基を有するアクリル樹脂100重量部に対して、イソシアネート基を少なくとも2つ含む架橋剤を0.5重量部以上5重量部以下を有する樹脂組成物(塗料)の硬化物(塗膜)が、表面を酸化処理されたポリプロピレン製の基材上に直に形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に開示する家電用部品は光沢や顔料分散性などの意匠性や薬品耐性に優れるために、各種の家電製品、特に前記の特性を強く求められる洗濯機に好適に用いられる。本家電部品はプライマーを介さずに特にゴム成分の少ないポリプロピレンにも塗膜を密着させることができるために生産性が高く、環境負荷を低く抑えて製造することができる。また、汎用的なアクリル樹脂塗料を主原料とし、添加するイソシアネート架橋剤が少量であるために上塗り塗装の密着性に優れ、また、ポリスチレン,ABSなど他の材料への塗装も可能であり、塗装の対象を広くできると言う利点も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の家電用部材の断面を示す模式図。
【図2】本発明における家電用部品の塗装方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳述する。
【0013】
本発明で家電用部品に用いられるポリプロピレンについて制限は無いが、強度や耐熱性などの諸物性を鑑みて適切に選択される。特に家電用部品においてはゴム成分が少なく薬品耐性に優れるグレードのポリプロピレンが多用される。また、着色や耐候性や強度の付与などのためにポリプロピレン内に予め顔料などを含んでいても良い。また、表面の汚染物を除くために必要に応じてアルコール類やヘキサンなどの有機溶剤類や水系洗浄剤による脱脂洗浄が、後に示す表面酸化処理前に施されても良い。
【0014】
本発明の塗料(樹脂組成物)は、(A)アクリル樹脂と、(B)イソシアネート基を含む架橋剤を含む。
【0015】
本発明における(A)アクリル樹脂成分は、ポリプロピレン上に形成される塗膜の主鎖となる成分である。(A)アクリル樹脂成分は他の汎用塗料よりも透明性や耐候性に優れ、家電用部品への塗装に好適である。また、顔料成分の良分散性を有し、塗料としての扱いも容易である。このような(A)アクリル樹脂成分には主成分としてアクリル基あるいはメタクリル基を有するモノマー、若しくはそれらが複数個重合したポリマーが用いられる。また、(B)イソシアネート架橋剤との架橋のために構造中に少なくとも2つ以上の水酸基など結合基を有している必要がある。
【0016】
本発明における(B)イソシアネート架橋剤は、ポリプロピレン上に形成される塗膜の架橋成分であり、(A)アクリル樹脂成分を後に示すポリプロピレン上の酸化官能基と架橋することによって(A)アクリル樹脂成分をポリプロピレンと化学的に結合させる働きがある。このような働きをするには(B)イソシアネート架橋剤は構造中に2つ以上のイソシアネート基を有している必要がある。架橋剤にはイソシアネート系架橋剤のほかにアミノ系やエポキシ系などを選択することも可能であるが、変形温度が120℃以下であるポリプロピレンの塗装には低温での反応性が良好なイソシアネート架橋剤が最も好ましい。ここでの(B)イソシアネート架橋剤はトリレンジイソシアネート,ジフェニルメタンジイソシアネート,イソホロンジイソシアネート,ヘキサメチレンジイソシアネート,キシレンジイソシアネートなどのジイソシアネートの他、これらの2官能イソシアネートを主原料として作られる、トリメチロールプロパン等の3官能アルコールとの付加物,ベンゼン1,3,5−トリオール等の3官能フェノールとの付加物のような3官能体及び4官能体以上のイソシアネートを用いることもできる。また、必要に応じてイソシアネート基が別の官能基で保護されて保存安定性に優れるブロックイソシアネートを用いることもできる。(B)イソシアネート架橋剤の配合比は(A)アクリル樹脂成分100重量部に対して0.5重量部以上5重量部以下であることが好ましい。(B)イソシアネート架橋剤の添加量がこの範囲より少ない場合は架橋不足のためにポリプロピレンへの密着が不十分となり、過剰な場合には塗膜が固すぎるために上塗り付着不良などの問題が生じる。さらに、(B)イソシアネート架橋剤の選択や配合比の調整によって硬化速度や表面硬度の調整ができる。また、塗装対象であるポリプロピレンの耐熱性,塗料のポットライフや取り扱いと生産性の兼ね合いから(B)イソシアネート架橋剤は、混合後の塗料の硬化温度が室温以上120℃以下の範囲で、硬化時間10秒以上180分以下の範囲にて少なくとも指差し乾燥に達する系が選択される。
【0017】
また、本発明では塗料(樹脂組成物)中に、さらに(C)反応開始剤を加えることができる。(C)反応開始剤は主に(A)アクリル樹脂成分のモノマー類やオリゴマー類の重合を開始ないし促進する目的で用いられる。このような(C)反応開始剤の例としては、ラジカル重合開始剤,カチオン重合開始剤,アニオン重合開始剤、または遷移金属系の各種重合触媒などが挙げられる。これらは用いる重合の種類(熱重合あるいは光重合)や求められる重合の速度などに応じてその種類と分量は適宜決定されるが、通常は(A)アクリル樹脂100重量部に対して10重量部以下の範囲に設定する。
【0018】
本発明の構成では塗装前にポリプロピレンに酸化処理が施される。この酸化処理は例えば真空プラズマ処理,大気圧プラズマ処理,コロナ放電処理,火炎処理,紫外線照射,オゾン水処理などの手法によって施され、特に大気圧プラズマ処理が処理の強度や簡便性から最も好ましい。表面処理によってポリプロピレンの表面には水酸基など酸化起因の官能基を形成される。その処理強度の目安としては液体の接触角測定などの手法で導出される表面エネルギーが用いられ、好ましくは42mN/m以上に設定される。接触角測定の他に、より簡便にはテストインク(例えば日本プラズマトリート社:プラズマトリートテストインクなど)の濡れ性によっても表面エネルギーは評価可能である。酸化処理によってポリプロピレン表面に導入された水酸基などの官能基は、前述の(B)イソシアネート架橋剤を介して(A)アクリル樹脂成分と架橋されることによってポリプロピレンと塗膜の密着性を改善する。
【0019】
さらに、本発明において塗膜に(A)アクリル樹脂成分に対する良分散性を有する(D)顔料を分散することができる。特に家電用部品では外観に優れ、塗膜厚さよりも十分に薄い、厚さ0.01mm以下の例えば燐片状の金属箔(特にアルミフレーク,ステンレスフレーク,ニッケルフレークなど)、または無機物(特にマイカ,チタニア,ガラスフレークなど)からなる顔料を分散させることで、反射輝度の優れた高意匠の家電用部品を少量の顔料のみを用いて形成することができる。(D)顔料の添加量は塗料の遮蔽性や色調の兼ね合いで調節可能であるが、通常は(A)アクリル樹脂100重量部に対して0.5重量部から50重量部の間で調整される。この値よりも小さい場合には塗膜の下地遮蔽性が不十分であり、大きい場合には(A)アクリル樹脂の質感が失われ、意匠性に問題がある。
【0020】
また、本発明の全ての形態において塗料は各種溶剤によって希釈される。溶剤は塗料の流動性や乾燥速度を調整する目的で用いられ、例えばジメチルアセトアミド,トルエン,キシレン,酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸ブチル,アセトン,メタノール,エタノール,2−プロパノール,n−ブタノール,2−メチルプロパノール,4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン,エチレングリコール,メチルセロソルブ,エチルセロソルブ,ブチルセロソルブ等から選択して混合される。この選択は使用する環境の温度や湿度などに応じて適宜調整される。
【0021】
また、本発明の全ての形態において塗料には可塑剤,乾燥剤,分散剤,沈降防止剤,防カビ剤,レベリング剤,安定化剤などが適宜含まれる。
【0022】
さらに本発明の全ての形態において、これまでに述べた塗膜にさらに上塗り塗装を加えることができる。このような上塗り塗装を加えることで塗膜全体として硬度,光沢,耐薬品性をさらに改善することができる。上塗り塗料としては硬度,光沢,耐薬品性に優れる塗料であれば特に限定されないが、例えばアクリルウレタン塗料,ウレタン塗料,シリコン塗料,フッ素樹脂塗料などのラッカーや熱硬化性塗料、あるいは紫外線硬化型アクリル樹脂塗料などの光硬化性のある塗料を用いることができる。特に上塗り層を熱硬化あるいは光硬化されたアクリルモノマー類あるいはアクリルオリゴマー類とすると、下塗り層の(A)アクリル樹脂を基とする塗膜との密着性が良く好適である。
【0023】
本発明における家電用部品の塗装方法を図2に示す。
【0024】
まず、被塗装材であるポリプロピレン成形材101に酸化処理を施し、表面に酸化処理を受けた部位102を形成する。その後に、硬化前の塗料(樹脂組成物)103を表面に塗布し、所定の温度,時間で加熱処理して、(A)アクリル樹脂成分とポリプロピレン表面の酸化処理を受けた部位102に導入された酸化官能基との間に(B)イソシアネート架橋剤による架橋を形成して溶剤を揮発させて塗膜(硬化物)104を得る。なお、架橋形成時、あるいは形成前に(A)アクリル樹脂成分内のモノマーあるいはオリゴマー間にも熱硬化あるいは光硬化によって架橋を加えることもできる。この後、必要に応じて上塗り塗装を施すことできる。
【実施例】
【0025】
以下、実施例を参照してより詳細に本発明の構成を説明する。
【0026】
(実施例1)
本発明の家電用部材を洗濯機外装部材として作成した第一の例を示す。
【0027】
材質のポリプロピレンにはサンアロマー社製PM970Wを使用し、射出成形によって外装部材の形状に成形した。成形したポリプロピレン製部材に大気圧プラズマ処理装置(日本プラズマトリート社)にてプラズマフレームを発生するノズルとポリプロピレン製部材との距離を12mm、ノズル速度10m/分と固定して表面酸化処理を施した。水とヨウ化メチレンの接触角測定によって求めた塗装直前における表面エネルギーは42mN/mであった。
【0028】
塗料にはプラスチック塗装用アクリルラッカーであるレクラック78(藤倉化成)を使用した。本品は水酸基を有するアクリル樹脂成分とトルエン,酢酸エチルなどの溶剤成分,アルミフレーク顔料などからなるメタリック調アクリルラッカーである。本実施例ではこのレクラック78を100重量部に対して希釈剤として105重量部の専用シンナーと、イソシアネート架橋剤として1重量部のHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)を塗装直前に添加して、攪拌機にて各成分を均一に混合した。
【0029】
表面処理を施したポリプロピレンに前記の塗料をスプレー塗装し、5分間のセッティング時間後に80℃・30分の条件で防爆炉中にて熱処理を施すことで塗料中のアクリル樹脂成分とポリプロピレン表面の酸化官能基の間にイソシアネート架橋を形成し、塗料中の溶剤を揮発させることで、ポリプロピレン上に平均厚さ12μmのメタリック塗膜を形成した。さらに本実施例ではアクリル系紫外線硬化塗料であるフジハードHH(藤倉化成)を前記の塗膜上にスプレー塗装し、60℃・5分のベーク後に高圧水銀ランプ(ウシオ電機)にて1000mJ/cm2の積算光量の紫外線照射を施して、平均厚さ15μmのクリア塗膜を形成した。
【0030】
(実施例2)
本発明に開示の家電用部材を洗濯機外装部材として作成した第二の例を示す。
【0031】
先の実施例と同様に材質のポリプロピレンにはサンアロマー社製PM970Wを使用し、射出成形によって外装部材の形状に成形した。成形したポリプロピレン製部材に大気圧プラズマ処理装置(日本プラズマトリート社)にてプラズマフレームを発生するノズルとポリプロピレン製部材との距離を12mm、ノズル速度10m/分と固定して表面酸化処理を施した。水とヨウ化メチレンの接触角測定によって導出した塗装直前における表面エネルギーは42mN/mであった。
【0032】
塗料にはアクリル系紫外線硬化塗料であるフジハードHH(藤倉化成)を使用した。本品はアクリルオリゴマー成分とトルエン,酢酸エチルなどの溶剤成分,反応開始剤からなり、本実施例ではさらに、水酸基を有するアクリルモノマーである2−ヒドロキシエチルアクリレート(東邦化学)をフジハードHH100重量部に対して10重量部,メタリック塗料化のためにアルミフレーク(東洋アルミ)を3重量部加えた。本実施例ではこの塗料にさらに架橋剤としてフジハードHHに対して0.5重量部のHDIを塗装直前に添加して、攪拌機にて各成分を均一に混合した。
【0033】
表面処理を施したポリプロピレンに前記の塗料をスプレー塗装し、5分間のセッティング時間後に60℃・5分のベークを施し、高圧水銀ランプにて1000mJ/cm2の積算光量の紫外線照射を施して、平均厚さ15μmのメタリック塗膜を形成した。さらに60℃・15分の条件で防爆炉中にて熱処理を施すことで塗膜中のアクリル樹脂成分とポリプロピレン表面の酸化官能基の間にイソシアネート架橋を形成した。
【0034】
(比較例1)
実施例1の条件において、ポリプロピレン成形材に表面処理を施さずに塗装を行った。その他のポリプロピレン成形材,塗料,塗装の条件は実施例1と同一とした。水とヨウ化メチレンの接触角測定によって導出した塗装直前におけるポリプロピレンの表面エネルギーは33mN/mであった。
【0035】
(比較例2)
実施例1の条件において、塗料にHDIを加えずに塗装を行った。その他のポリプロピレン成形材,表面処理,塗料,塗装の条件は実施例1と同一とした。
【0036】
(比較例3)
実施例2の条件において、ポリプロピレン成形材に表面処理を施さずに塗装を行った。その他のポリプロピレン成形材,塗料,塗装の条件は実施例2と同一とした。水とヨウ化メチレンの接触角測定によって導出した塗装直前におけるポリプロピレンの表面エネルギーは33mN/mであった。
【0037】
(比較例4)
実施例2の条件において、塗料にHDIを加えずに塗装を行った。その他のポリプロピレン成形材,表面処理,塗料,塗装の条件は実施例2と同一とした。
【0038】
以上の実施例1,2及び比較例1から4において得られた洗濯機外装部材の塗装膜に対して以下の試験を行った。
【0039】
(剥離試験)
塗装面の中の3箇所に対し、塗膜面にカッターナイフで1mm間隔に5×5の碁盤目状切り込みを形成し、セロテープ(登録商標)No.405(ニチバン)で密着させた後に剥し、残留した碁盤目の平均値を求めた。試験詳細はJIS−K5600−5−6(塗料一般試験方法:第5部−塗膜の機械的性質−第6節:クロスカット法)に準拠した。
【0040】
(光沢)
自然昼光のもとで目視にて標準試料と比較して光沢の有無を判定した。
【0041】
(硬度)
Hi−uni(三菱鉛筆)鉛筆による鉛筆硬度試験を行った。試験詳細はJIS−K5600−5−4(塗料一般試験方法:第4部−塗膜の機械的性質−第4節:引っかき硬度(鉛筆法))に準拠した。
【0042】
(耐薬品性)
洗濯機に用いられる代表的な洗剤としてアクロン(柔軟剤:ライオン),液体アタック(液体洗剤:花王)の原液をそれぞれ塗装面に滴下し、40℃にて24時間保持した後に外観変化の有無を調べた。
【0043】
(評価)
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
以上の結果から、実施例1,2に示す洗濯機外装部材は洗濯機としての使用に耐えうる塗膜密着性,光沢,硬度,耐薬品性を有していることが分かる。洗濯機においては特にこれらの特性を満たすポリプロピレンへの塗装法が望まれていた。ただし、洗濯機以外の家電用部品、例えば掃除機,炊飯器,エアーコンディショナー,空気清浄機などの部材においても類似の特性は求められるため、本発明の家電用部品がこれらの他の家電用部品にも応用可能であることは明らかである。
【符号の説明】
【0047】
1 家電用部品
2,101 ポリプロピレン成形材
3 塗膜
102 酸化処理を受けた部位
103 硬化前の塗料(樹脂組成物)
104 塗膜(硬化物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基を有するアクリル樹脂100重量部に対して、イソシアネート基を少なくとも2つ含む架橋剤を0.5重量部以上5重量部以下を有する樹脂組成物の硬化物が、表面を酸化処理されたポリプロピレン製の基材上に直に形成されていることを特徴とする家電用部品。
【請求項2】
前記硬化物の上に、熱硬化あるいは光硬化されたアクリルモノマー類あるいはアクリルオリゴマー類からなる上塗り塗膜を有することを特徴とする請求項1記載の家電用部品。
【請求項3】
前記樹脂組成物中に、厚さ0.01mm以下の金属箔、または無機物からなる顔料を含むことを特徴とする請求項1または2記載の家電用部品。
【請求項4】
前記酸化処理が、大気圧プラズマ処理であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の家電用部品。
【請求項5】
ポリプロピレン製の基材の表面を酸化処理する工程と、
前記酸化処理された基材に、水酸基を有するアクリル樹脂100重量部に対して、イソシアネート基を少なくとも2つ含む架橋剤を0.5重量部以上5重量部以下を有する樹脂組成物を塗布する工程と、
前記樹脂組成物を熱硬化して硬化物を形成する工程と、
を有することを特徴とする家電用部品の塗装方法。
【請求項6】
前記酸化処理が大気圧プラズマ処理であることを特徴とする請求項5に記載の家電用部品の塗装方法。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか1項記載の家電用部品を用いることを特徴とする家電製品。
【請求項8】
前記家電製品が、洗濯機であることを特徴とする請求項7に記載の家電製品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−274423(P2010−274423A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125948(P2009−125948)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】