説明

家電製品操作補助装置

【課題】使用者の直接操作のみによって家庭用電化製品のリモコンを間接的に操作可能にする家電製品操作補助装置を提供する。
【解決手段】家電製品を制御するリモコン22上の操作部23材の位置座標データを入力するための位置座標データ入力部2と、予め入力された位置座標データの中から,使用者が直接操作信号を入力する使用者入力部3と、使用者に対して,選択可能な位置座標データを表示するとともに,使用者が現在選択中の位置座標データを表示する操作対象確認表示部4と、コントロールパネル22上の操作部材23を直接操作するロボットアーム部5と、位置座標データを記憶する領域を備え,操作対象確認表示部4に表示信号を発信し,かつ,ロボットアーム部5に制御信号を発信する制御部6とを有することを特徴とする家電製品操作補助装置1による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四肢の不自由な身障者のための顎の動きを利用した入力手段を備える家電製品操作補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、身障者が家電製品を使用するのを補助する装置として、肢体の代わりに頭部の動きを検知して利用する補助装置がいくつか開示されている。
【0003】
特許文献1には「照射選択による入力装置」という名称で、重度の上肢運動機能障害者でも使用できる入力装置に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示される発明は、文献中に記載される符号をそのまま用いて説明すると、操作者の状況を検出し事前に定めた条件を満たす場合のみ照射許可信号を出力する照射許可部6と、照射許可信号に基づいて指向性を有する光線を送光する送光部1と、1つ1つが選択すべき命令を意味して受光量に応じた信号を出力する1個以上の命令選択用受光部21と、照射許可信号がない場合に各命令選択用受光部からの信号を取得し演算処理した大きさを保持しておき、照射許可信号がある場合に各命令選択用受光部の信号と比較して特定の命令選択用受光部が受光したことを検知し、その命令選択用受光部に対応する命令が選択されたことを意味する信号を生成して電気電子機器に送る処理部3とから構成されることを特徴とするものである。
上記構成の特許文献1に開示される発明によれば、電気電子機器の選択的な入力情報を得る装置において、重度の障害者でも頭部運動を利用して環境光の影響を受けずに命令選択を実行することができるという効果を有する。
【0004】
特許文献2には「頭部運動による入力装置」という名称で、重度の上肢運動機能障害者でも使用可能な電気電子機器の入力情報を得る装置に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示される発明は、操作者頭部の周囲に、概ね相対する位置にそれぞれ設置して、操作者頭部の向きに対応する情報を無拘束・非接触で検出するための一対の頭部検出部と、それら一対の頭部検出部から得た信号から、必要に応じて方向情報抽出の前処理を行うと共に、信号の保持・演算・比較とデータの読み出し、またはそれらのうちの一部の処理をすることにより、操作者頭部がどの方向を向いたかという頭部運動を推定し、その向きに相当する電気電子機器への命令を生成するための信号処理部とから構成されることを特徴とするものである。
上記構成の特許文献2に開示される発明によれば、重度の上肢運動機能障害者であっても、頭部運動だけで、ジョイスティックやマウスのようなポインティングデバイス類に相当する信号を生成できるので、そのような入力装置を有する電気電子機器を扱えるようになるという効果を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−190330号公報
【特許文献2】特開2007−207201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示される発明においては、送光部を操作する際に高い操作精度が要求されるという課題があった。通常、身障者は健常者に比べて運動能力が著しく低下しているため、体の部位を正確に動かすことは極めて困難である。
このため、目的とする動作を行っている最中に、他の操作を行う命令選択用受光部に誤って指向性を有する光線を送光してしまう恐れがあり、この場合、被操作対象である電化製品が誤動作を起こしてしまうという課題があった。
【0007】
また、特許文献2に開示される発明においても、入力情報を適切に入力するためには身障者は頭部を正確に動かさなければならず、身障者への負担が大きかった。
また、特許文献2に開示される発明においては、顔の向いた位置情報という連続的なデータを入力情報として用いるため、パソコンマウスのような連続的な操作には適していると考えられるものの、複数ある選択候補の中から目的とするものを順次選択して、決定する(確定する)という操作には適さないという課題があった。
【0008】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものでありその目的は、使用者である身障者が顎又は頬を使って選択又は決定に関する操作信号を直接入力することができる誤作動の少ない家電製品操作補助装置提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため請求項1記載の発明である家電製品操作補助装置は、計算により得られた家庭用電化製品を制御するコントロールパネル上の操作部材の位置座標データの登録を指示する信号を送信する位置座標データ入力部と、予め登録された位置座標データの中から,使用者が目的とする位置座標データを決定する操作信号を入力する使用者入力部と、使用者に対して,選択可能な位置座標データを表示するとともに,使用者が現在選択中又は決定した位置座標データを表示する操作対象確認表示部と、使用者が決定した位置座標データ上にあるコントロールパネルの操作部材を直接操作するロボットアーム部と、位置座標データ入力部の指令に基づいて位置座標データを記憶する領域を備え,ロボットアーム部から送信されるデータに基づいてロボットアーム部の先端の位置座標データを計算により求め,使用者入力部から送信された操作信号を受けて操作対象確認表示部に対して使用者が選択中又は決定した位置座標データを操作対象確認表示部上に表示させる表示信号を発信し,ロボットアーム部の作動を制御する制御信号を発信する制御部とを有し、使用者入力部において,位置座標データを決定する操作信号は,使用者の顎又は頬により入力されることを特徴とするものである。
上記構成の発明において、位置座標データ入力部は、制御部に対してロボットアーム部に制御信号を送信するよう指令するとともに、制御部に対してロボットアーム部を構成する個々のパーツの連結角度,及び,接地面に対するロボットアーム部の基部の回動角度に関するデータに基づいて,ロボットアーム部の先端部の位置座標データを計算するよう指令する信号を送信するという作用を有する。さらに、位置座標データ入力部は、制御部に対して,制御部において計算された位置座標データを制御部の記憶領域に「使用者が選択可能な位置座標データ」として登録するよう指令するという作用も有する。
また、使用者入力部は、使用者の顎又は頬により直接操作されて、制御部に目的とする位置座標データを決定する操作信号を送信するという作用を有する。
さらに、操作対象確認表示部は、制御部から送信される表示信号に基づいて、使用者に対して,選択可能な位置座標データを表示するとともに,使用者が現在選択中又は決定した位置座標データを表示するという作用を有する。
また、ロボットアーム部は、制御部から発信される制御信号を受けて作動するという作用を有する。加えて、ロボットアーム部は、使用者入力部から制御部に対して目的とする位置座標データを決定する操作信号が送信された場合に、制御部から発信される制御信号を受けて使用者が決定した位置座標データ上にある操作部材を直接操作するという作用を有する。
そして、制御部は、ロボットアーム部を構成する個々のパーツの連結角度,及び,接地面に対するロボットアーム部の基部の回動角度に関するデータに基づいてロボットアーム部の先端部の位置座標データを計算により求めるとともに、位置座標データ入力部からの指令に基づいて計算により得られた位置座標データを記憶領域に記憶するという作用を有する。さらに、制御部は、操作対象確認表示部に対して使用者が選択中の又は決定した位置座標データを操作対象確認表示部上に表示させる表示信号を発信し、ロボットアーム部に対して制御信号を発信するという作用を有する。
【0010】
請求項2記載の発明である家電製品操作補助装置は、請求項1記載の家電製品操作補助装置であって、使用者入力部は、操作対象確認表示部に表示される位置座標データの候補を順次選択させる第1のスイッチと,選択された位置座標データを決定させる第2のスイッチとを備えることを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項1記載の発明と同じ作用に加えて、第1のスイッチは、使用者の顎又は頬で押圧され又は接触した際に、制御部に予め登録された位置座標データを順次選択させてその結果を操作対象確認表示部に表示させるという作用を有する。
また、第2のスイッチは、使用者の顎又は頬で押圧され又は接触した際に、使用者が現在選択中の位置座標データを、使用者が目的とする位置座標データとして決定する操作信号を制御部に発信するという作用を有する。
【0011】
請求項3記載の発明である家電製品操作補助装置は、請求項1又は請求項2に記載の家電製品操作補助装置であって、コントロールパネルの数は複数であり、操作対象確認表示部は液晶モニタからなり、使用者入力部は、複数のコントロールパネルから目的とする一つのコントロールパネルを選択可能にするメニュー画面を表示させる信号を入力できることを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明と同じ作用に加えて、操作対象確認表示部を液晶モニタとすることで、複数のコントロールパネルがある場合に、それぞれのコントロールパネル上の複数の選択可能な位置座標データを1つの表示部を用いて表示可能にするという作用を有する。
さらに、使用者入力部から送信されるメニュー画面を表示させる信号は、制御部に対して、操作対象確認表示部にメニュー画面を表示させる表示信号を発信させるという作用を有する。
また、操作対象確認表示部に表示されるメニュー画面は、使用者に対して目的とするコントロールパネルを1つ選択可能にするという作用を有する。
【0012】
請求項4記載の発明である家電製品操作補助装置は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の家電製品操作補助装置であって、家電操作補助装置は、コントロールパネルを着脱可能に支持固定するホルダーを備えることを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項1乃至請求項3のそれぞれに記載の発明と同じ作用に加えて、ホルダーはコントロールパネルを着脱可能に支持固定するという作用を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1記載の発明によれば、使用者は顎又は頬を用いた操作を行うだけで、家庭用電化製品を制御するコントロールパネル上の操作部材を、ロボットアーム部を用いて間接的に操作することができるという効果を有する。
この場合、使用者が顎又は頬を用いて使用者入力部の操作を行う際に、高い操作精度が要求されないので、使用者の身体的及び心理的な負担を大幅に軽減することができるという効果を有する。
さらに、使用者の顎又は頬と,請求項1記載の発明を構成する機器とが直接接触した場合にのみ、使用者入力部から操作信号が送信されるため、その動作に至る過程において使用者の頭部がどのように動いたとしても操作信号が制御部に発信される恐れがないので、使用者の意図しない頭部の動きによりロボットアームが誤作動するのを防止することができる。従って、この点からも使用者の心理的な負担を大幅に軽減することができる。
また、請求項1記載の発明では、使用者の顎又は頬による直接的な操作が行われた場合にのみ操作信号が発信されるので、操作信号を発信させるための構成を簡素にすることができるという効果を有する。この結果、請求項1記載の発明における使用者入力部及び制御部の構成をシンプルにすることができるという効果を有する。
【0014】
本発明の請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同じ効果に加えて、使用者入力部に、操作対象確認表示部に表示される選択可能な位置座標データを順次選択させる第1のスイッチと、操作対象確認表示部において選択された位置座標データを使用者の目的とする位置座標データとして決定する第2のスイッチを備えることで、使用者は多くの選択可能な位置座標データの中から目的とする位置座標データを容易にかつ確実に選択し決定することができるという効果を有する。
つまり、制御部6からロボットアーム部5に制御信号が発信される前に、二度使用者の意思が確認されることになり、ロボットアーム部5及び操作対象である家電製品の誤作動を確実に防止することができるという効果を有する。
【0015】
本発明の請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載のそれぞれの発明と同じ効果に加えて、操作対象確認表示部を液晶パネルとすることで、家電製品のコントロールパネルを複数台同時に取り扱う場合に、それぞれのコントロールパネルにおいて選択可能な操作対象の位置座標データを表示するための操作対象確認表示部を1つにすることができるという効果を有する。
また、使用者入力部において、メニュー画面を表示させる信号を発信できるよう構成することで、使用者は操作対象確認表示部にメニュー画面を表示させるとともに、このメニュー画面において目的とする家電製品のコントロールパネルを選択し決定することができるという効果を有する。
この結果、使用者は、請求項3記載の装置を1台用いることで、複数台の家電製品のコントロールパネルを間接的に自由に操作することができるという効果を有する。このため、請求項3記載の発明の汎用性を高めることができるという効果を有する。
【0016】
本発明の請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3に記載のそれぞれの発明と同じ効果に加えて、ホルダーを備えることで、コントロールパネルと請求項4記載の発明との間に相対的な位置ズレが生じるのを防止することができるという効果を有する。
この結果、位置座標データ入力部によりコントロールパネルの操作対象の位置座標データを入力した後に、ロボットアーム部でコントロールパネル上の使用者が目的とする操作対象を実際に操作する際に、ロボットアーム部が誤った操作対象を操作してしまうのを防止することができるという効果を有する。
従って、請求項4記載の発明を用いた場合の家電製品の誤動作をより確実に防止することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る家電製品操作補助装置のシステム構成図である。
【図2】本発明に係る家電製品操作補助装置の一部を欠いて示す概念図である。
【図3】本発明に係る家電製品操作補助装置の使用の様子を示す使用状態図である。
【図4】本発明に係る位置座標データ入力部の概念図である。
【図5】本発明に係る使用者入力部の概念図である。
【図6】(a)〜(c)はいずれも本発明に係る使用者入力部の使用の様子を示す使用状態図である。
【図7】本発明に係る操作対象確認表示部の概念図である。
【図8】本発明に係る家電製品操作補助装置の作動の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態に係る家電製品操作補助装置について図1乃至図8を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は本発明に係る家電製品操作補助装置のシステム構成図であり、図2は本発明に係る家電製品操作補助装置の一部を欠いて示す概念図である。さらに、図3は本発明に係る家電製品操作補助装置の使用の様子を示す使用状態図である。
まず、図1を参照しながら本発明に係る家電製品操作補助装置1のシステム構成について説明する。
本発明に係る家電製品操作補助装置1は、主に肢体不自由者が家庭用電化製品を操作しようとする際に、そのリモコン(コントロールパネル)の操作を補助するための装置であり、図1に示すように、装置全体の制御を行うとともに,操作対象であるリモコンの操作ボタンの位置座標データの計算を行い,計算により得られた位置座標データを記憶する記憶領域を備えた制御部6と、この制御部6に直接又は間接的に接続され,制御部6に対して位置座標データの計算を指令するするとともに,制御部6に対してロボットアーム部5の制御を指令する位置座標データ入力部2と、制御部6直接又は間接的に接続され,使用者が顎又は頬を用いて直接操作信号を入力するとともに,入力された操作信号を制御部に発信する使用者入力部3と、使用者に選択可能なリモコンの操作ボタンの位置座標データを表示するとともに,使用者が現在選択中の又は決定したリモコンの操作ボタンの位置座標データを表示する操作対象確認表示部4と、制御部6から送信される制御信号に基づいてリモコンの操作ボタンを実際に操作するロボットアーム部5により構成されるものである。
上述のような家電製品操作補助装置1は、図2に示すように、制御部6とロボットアーム部5からなる本体部28に、接続コード又は無線等の通信設備により接続される位置座標データ入力部2(以下に示す図4を参照。)、使用者入力部3(以下に示す図5を参照。)及び操作対象確認表示部4(以下に示す図7を参照。)が設けられている。
【0020】
ここで、図2及び図3を参照しながら本発明に係る家電製品操作補助装置1の本体部28について説明する。
本発明に係る家電製品操作補助装置1の本体部28は、主に制御部6とロボットアーム部5により構成されるものであり、制御部6は、筐体状のハウジング24内に位置座標データ入力部2からの入力信号を記憶する領域を備えるとともに、使用者入力部3からの操作信号を受信して操作対象確認表示部4に表示信号を発信したり、ロボットアーム部5に操作信号を発信するための回路配線を備える配線基板25が収納されるものである。また、ロボットアーム部5は、複数のビーム5cがそれぞれ連結され、制御部6のハウジング24に接続部26を介して取設されるものである。
なお、ロボットアーム部5を構成する個々のビーム5cはそれぞれ個別のサーボモータ7によりビーム5c同士の連結角度が調節できるように構成され、さらに、ロボットアーム部5はその固定部5b上の接続部26がその中心軸を基軸にハウジング24内に収容されるサーボモータ7により回動可能になっている。
つまり、図2に示すようなロボットアーム部5によれば、その先端部5aを固定部5bの近傍から離れる方向に自在に動かすことができるとともに、ロボットアーム部5の接続部26を図2中の符号Aで示す方向に自在に回動させることができる。この結果、ロボットアーム部5の先端部5aを制御部6近傍の任意の位置座標データ上に容易に移動させることができる。
【0021】
より具体的には、ロボットアーム部5は、制御部6から送信される制御信号により作動し、それぞれのビーム5cのなす角度及び接続部26の回転角度に関するデータを制御部6に対して送信するよう構成されている。そして、制御部6ではロボットアーム部5から発信される個々のビーム5cのなす角度及び接続部26の回転角度に関するデータに基づいて先端部5aの現在位置に関する位置座標データを計算により求め、計算により求められた先端部5aの位置座標データを基にして先端部5aが目的とする位置に到達するまでに必要なX方向及びY方向の移動距離を逆算して求め、必要に応じてロボットアーム部5に制御信号を発信してその作動を制御している。
さらに、図2及び図3に示すように、本発明に係る家電製品操作補助装置1は、ハウジング24の側面に、接地面27上をスライドするリモコンホルダー21を備えており、このリモコンホルダー21によりリモコン22を支持固定できるよう構成されている。このように、リモコンホルダー21を用いてリモコン22を支持固定することで、位置座標データ入力部2により操作ボタン23の位置座標データを入力する際のリモコン22の位置と、使用者の指示によりロボットアーム部5が操作ボタン23を実際に操作する際のリモコン22の位置が変わらないので、ロボットアーム部5の誤操作を防止することができるという効果を有する。
上述のようなロボットアーム部5によりリモコン22上の操作ボタン23を操作している様子を示したものが図3である。本発明に係る家電製品操作補助装置1においては、ロボットアーム部5の先端部5aを、リモコンホルダー21により支持固定されるリモコン22上の目的とする操作ボタン23上に移動して、その先端部5aで目的とする操作ボタン23の操作が行われる。
【0022】
次に、図2乃至図4を参照しながら本発明に係る家電製品操作補助装置1の位置座標データ入力部2について説明する。
図4は本発明に係る位置座標データ入力部の概念図である。なお、図1乃至図3に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図4に示すように、本発明に係る家電製品操作補助装置1の位置座標データ入力部2は、例えば、入力パネル2a上に、ロボットアーム部5の先端部5aを制御部6近傍のX及びY方向に自在に移動させるためのダイアル9a,9b及び、ダイアル9a,9bにより調整されたロボットアーム部5の先端部5aの位置座標データを制御部6に設けられる記憶領域に発信して登録するためのタクトスイッチ10を備えたものである。
そして、上述のような位置座標データ入力部2を用いて制御部6に操作ボタン23の位置座標データを登録するには、まず、位置座標データ入力部2を本体部28に接続コード又は無線通信設備により接続するとともに、本体部28に設けられるリモコンホルダー21にリモコン22をセットする。なお、この作業の順序は、入れ替わってもよい。
この後、ダイアル9a,9bを操作して、ロボットアーム部5の先端部5aを位置座標データを登録しようとしている操作ボタン23の真上に移動しておいてから(この時、位置座標データ入力部2から制御部6に対して,ロボットアーム部5に制御信号を送信するよう指令する信号が送信される。)、タクトスイッチ10を操作して制御部6の記憶領域に位置座標データを登録する。この時、ロボットアーム部5から制御部6に対して個々のビーム5cのなす角度及び接続部26の回転角度に関するデータが送信され、このデータに基づいて制御部6においてロボットアーム部5の先端部5aの位置座標データが計算により求められ、さらに、タクトスイッチ10の操作によって位置座標データ入力部2から送信される信号を受けて、制御部6において計算により求められたロボットアーム部5の先端部5aの位置座標データが「使用者にとって選択可能な位置座標データ」として制御部6の記憶領域に登録されるのである。
そして、この作業を繰り返すことで、制御部6の記憶領域に複数の操作ボタン23の位置座標データを記憶させることができる。また、制御部6の記憶領域に記録された位置座標データは全て使用者にとって選択可能な位置座標データとなるのである。さらに、使用者にとって選択可能な位置座標データとして制御部6の記憶領域に登録される位置座標データは、登録順に番号が付与され、制御部6の記憶領域に付与された番号とともに記憶される。
このように、本発明に係る家電製品操作補助装置1では、使用者は、制御部6の記憶領域に登録された位置座標データを選択することで、間接的にリモコン22上の目的とする操作ボタン23を選択できる仕組みになっている。
【0023】
なお、本実施の形態においては、位置座標データ入力部2においてロボットアーム部5の先端部5aの位置をダイアル9a,9bにより操作した後にタクトスイッチ10を用いてロボットアーム部5の先端部5aの位置座標データを制御部6に登録する場合を例に挙げて説明したが、ロボットアーム部5の先端部5aの位置座標データの登録は必ずしもこの手順で行う必要はなく、例えば、ロボットアーム部5のビーム5cの接続部分及び接続部26をともに手動で容易に動かせるようにしておき、作業者がまず手動でロボットアーム部5の先端部5aを目的とする操作ボタン23上に移動させ、その位置座標データを計算により求めて制御部6の記憶領域に登録してもよい。この場合、ロボットアーム部5の先端部5aの位置をダイアル9a,9bを用いて移動させる必要がないので、リモコン22の操作ボタン23の位置座標データの入力作業を簡略化することができるという効果が期待できる。
また、ロボットアーム部5の先端部5aのX及びY方向における現在位置を分かり易くするために、ロボットアーム部5の先端部5aからレーザー光が発せられるよう構成しておき、リモコン22上にロボットアーム部5の先端部5aの現在位置を目視可能に表示できるようにしてもよい。この場合、作業者はリモコン22上におけるロボットアーム部5の先端部5aの現在位置をリアルタイムで確認することができるので、位置座標データの入力作業をスピーディに行うことができるだけでなく、位置座標データの入力ミスによる家電製品の誤作動を防止することができるという効果が期待できる。
さらに、本実施の形態においては、本体部28(特に制御部6)と位置座標データ入力部2を別々に構成する場合を例に挙げて説明しているが、位置座標データ入力部2と制御部6を一体に構成し、それにロボットアーム部5を取り付けたものを本体部28としてもよい。
【0024】
続いて、本発明に係る使用者入力部3について図5及び図6を参照しながら説明する。
図5は本発明に係る使用者入力部の概念図であり、図6(a)〜(c)はいずれも本発明に係る使用者入力部の使用の様子を示す使用状態図である。なお、図1乃至図4に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図5に示すように、本発明に係る家電製品操作補助装置1の使用者入力部3は、キャップ11の両側に直鎖状チェーンブロック13,13が固定具12を介して取設され、このチェーンブロック13,13の固定具12に接続されない側の端部のそれぞれに決定スイッチ16と選択スイッチ15を備え、さらに、キャップ11は、選択スイッチ15や決定スイッチ16から発信される操作信号を本体部28の制御部6に送信するための送信機17を備えている。
なお、特に図示していないが、図2に示す本体部28は、使用者入力部3の送信機17から発信される信号を受信するための受信設備を備えている。
また、図5に示す使用者入力部3においては、操作信号を無線の通信設備(送信機17)により制御部6に送信する場合を例に挙げて説明しているが、使用者入力部3と本体部28とは有線として接続コードでつないでもよい。
【0025】
上述のような使用者入力部3は、使用者の頭部にキャップ11を装着して操作信号の入力を行うものである。
図5に示す使用者入力部3を用いて使用者が操作信号を本体部28に発信するには、使用者の頭部にキャップ11を装着し、チェーンブロック13の先端に取り付けられた選択スイッチ15及び決定スイッチ16を使用者が左又は右方向に下顎を動かした際に顎又は頬に触れる位置に配置してから、使用者は必要に応じて下顎を右側あるいは左側に動かして顎又は頬で択スイッチ15又は決定スイッチ16に触れるか,あるいは,押して操作信号を直接入力すればよい。
より具体的には、図6(a)に示すように、使用者入力部3を頭部に装着した使用者が、下顎を右側に動かすと使用者の顎又は頬が選択スイッチ15に接触し、キャップ11の後ろ側に取り付けられている送信機17から本体部28に「選択」の操作信号が発信される。
また、図6(c)に示すように、使用者が下顎を左に動かすと使用者の顎又は頬が選択スイッチ15に接触し、キャップ11の後ろ側に取り付けられている送信機17から本体部28に「決定」の操作信号が発信される。
さらに、図6(b)に示すように、使用者の顎又は頬が選択スイッチ15や決定スイッチ16のいずれにも接触しない場合には、送信機17から操作信号が送信されることはない。つまり、選択スイッチ15や決定スイッチ16に使用者の顎又は頬が触れるまでのいかなる動作も、操作信号の発信に関与しないよう構成されている。
【0026】
そして、選択スイッチ15への使用者の顎又は頬の接触により第1回目の「選択」の操作信号が発信された場合には、制御部6の記憶領域に予め登録され、予め順序が定められた複数の選択可能な位置座標データのうちの第1番目の位置座標データが選択される。そして、これに引き続き選択スイッチ15への使用者の顎又は頬の接触により第2回目の「選択」の操作信号が発信されると、制御部6の記憶領域に登録された第2番目の位置座標データが選択される。このように、「選択」の操作信号が連続して送信される場合には、制御部6の記憶領域に予め登録されたn個の選択可能な位置座標データのうちの第1番目、第2番目、第3番目・・・第n番目の位置座標データが順次選択されるのである。
そして、最後の第n番目の位置座標データが選択された後に再び「選択」の操作信号が発信された場合には、再び第1番目の位置座標データが選択され、その後の「選択」の操作信号が発信されるごとに、再度第2番目から第n番目の位置座標データが順次選択されるよう構成されている。
つまり、使用者は、使用者入力部3により「選択」の操作信号の発信を繰り返すことで、制御部6の記憶領域に記憶される選択可能な位置座標データを1つずつ順番に呼び出すことができるのである。
【0027】
そして、使用者が選択可能な位置座標データの中から目的とする位置座標データを確定し、その位置座標データ上にある操作ボタン23をロボットアーム部5に実際に操作させるには、使用者は、使用者入力部3を装着した状態で自らの顎又は頬を決定スイッチ16に接触させて「決定」の操作信号を発信すればよい。
この「決定」の操作信号が制御部6に受信されると、制御部6はロボットアーム部5に対して,使用者の目的とする位置座標データ上にロボットアーム部5の先端部5aを移動してその位置座標データ上にある操作ボタン23を「押す」操作を行うよう制御信号を発信するのである。
この結果、ロボットアーム部5が使用者の目的とする位置座標データ上にある操作ボタン23を操作することで、使用者は、間接的に家電製品を操作することができるのである。
【0028】
本発明に係る家電製品操作補助装置1においては、使用者の顎又は頬と、選択スイッチ15又は決定スイッチ16とが直接接触した場合にのみ、使用者入力部3から制御部6に対して操作信号が発信されるよう構成されている。このため、スイッチ15や決定スイッチ16に使用者の顎又は頬が触れるまでの間に、使用者の頭部がどのように動いても使用者入力部3から制御部6に対して操作信号が発信されることはないので、誤まった操作信号によりロボットアーム部5及び家電製品が誤作動することがないのである。
また、本発明に係る使用者入力部3のように、選択スイッチ15や決定スイッチ16の支持材を図5に示すチェーンブロック13のような、位置の調整ができかつそのままの状態で固定可能な可撓材により構成することで、使用者の顎又は頬と,選択スイッチ15や決定スイッチ16の間隔を自由に調整することが可能になる。この結果、使用者が軽く頭を動かしただけで顎や頬が選択スイッチ15や決定スイッチ16に触るのを防止することができるので、操作信号が誤って発信される恐れを大幅に低減することができる。
また、本発明に係る家電製品操作補助装置1においては、「選択」の操作信号と「決定」の操作信号が、この順番で選択された場合に初めてロボットアーム部5を作動させるための制御信号が制御部6からロボットアーム部5に発信されるので、使用者の操作信号の誤発信によりロボットアーム部5や家電製品が誤作動するのを確実に防止することができる。
【0029】
なお、図5及び図6では、選択スイッチ15や決定スイッチ16の支持構造として、キャップ11及びチェーンブロック13を組み合せたものを用いる場合を例に挙げて説明しているが、選択スイッチ15や決定スイッチ16の支持構造は図示されるものに限定される必要はなく、例えば、ヘッドフォン用のヘッドセットを利用しても良いし、使用者がキャップ11やヘッドセットを装着できない場合には、使用者の体を支える椅子やベッドにチェーンブロック13のような位置調整及び固定が可能な可撓材を取り付けて選択スイッチ15や決定スイッチ16を支持してもよい。この場合も、同様の効果が期待できる。
さらに、選択スイッチ15や決定スイッチ16を別々に設ける必要もなく、例えば、選択スイッチ15と決定スイッチ16を兼ねるスイッチを1つだけ備え、このスイッチへの使用者の顎又は頬の接触時間に応じて「選択」の操作信号と、「決定」の操作信号を判別してそれぞれの操作信号を発信できるよう構成してもよい。この場合、麻痺等により右又は左のいずれかにしか顎を動かすことができない使用者も本発明に係る家電製品操作補助装置1を使用することができるというメリットを有する。
【0030】
さらに、本発明に係る家電製品操作補助装置1の操作対象確認表示部4について図7を参照しながら詳細に説明する。
図7は本発明に係る操作対象確認表示部の概念図である。なお、図1乃至図6に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
本発明に係る家電製品操作補助装置1の操作対象確認表示部4は、表示パネル4a上に表示器である複数の表示器18(例えば、LED等の発光体等)が整列した状態で取り付けられたものである。なお、このような操作対象確認表示部4は、図7に示すような接続コード20により本体部28に接続されてもよいし、無線設備により通信可能な状態で本体部28に接続されてもよい。
また、表示パネル4aにおける個々の表示器18は制御部6の記憶領域に予め登録される個々の位置座標データと対応しており、使用者は操作対象確認表示部4を見ることで自らが現在選択中の位置座標データ(リモコン22上の操作ボタン23)がどれであるかを確認することができる。
また、表示パネル4aの個々の表示器18の近傍に、その表示器18に対応して登録される操作ボタン23の機能をラベル19に記載して貼り付けておいてもよい。この場合、使用者は表示パネル4aを見るだけで、自らが操作しようとしているリモコン22の操作ボタン23の機能を理解するとともに、確認することができる。
【0031】
なお、操作対象確認表示部4の表示パネル4aは、例えば、液晶モニタで構成してもよい。位置座標データ入力部2による操作ボタン23の位置座標データ入力時に、それぞれの操作ボタン23の機能を電子データとして入力しておくことで、操作対象確認表示部4の表示パネル4aにおいて個々の表示器18に対応する機能を液晶パネルにダイレクトに表示することができるので、制御部6の記憶領域に登録される位置座標データを削除又は修正する際にラベル19の貼り代え作業を省略することができる。
この結果、本発明に係る家電製品操作補助装置1を複数種類の異なる家電製品のリモコンに対して用いることが容易になるので、本発明に係る家電製品操作補助装置1の汎用性を高めることができる。
また、図7では、本発明に係る家電製品操作補助装置1にテレビ操作用リモコン22の操作ボタン23の位置座標データを登録した場合を例に挙げて示している。このため、個々の表示器18の近傍には操作ボタン23を実際に操作した際の機能としてチャンネルが記載されたラベル19が貼り付けられている。
【0032】
ここで、図7に示す表示パネル4aにおいて表示器18が点灯する順序について説明する。
例えば、制御部6の記憶領域に第1番目から第8番目までの8個の位置座標データが登録されており、この8個の位置座標データが図7に示す表示パネル4aにおける8個の表示器18とそれぞれ対応している場合(ただし、図7に示す表示パネル4aでは、紙面左側に配置される表示器18から順に第1番目の表示器18、第2番目の表示器18・・・と決められているとする。)に、先に示した図5及び図6に示す使用者入力部3において、使用者の操作により「選択」の操作信号が送信機17を介して制御部6に送信されると、制御部6において第1番目の位置座標データが選択されるとともに、制御部6から操作対象確認表示部4に対して第1番目の位置座標データに対応する表示器18(紙面左側の第1の表示器18)を点灯させる表示信号が発信されて、表示パネル4a上の第1番目の表示器18が点灯する。
続いて、再度使用者入力部3から制御部6に「選択」の操作信号が発信されると、制御部6において第2番目の位置座標データが選択されると同時に、操作対象確認表示部4に対して第2番目の位置座標データに対応する表示器18(紙面左側から2番目の第2の表示器18)点灯させる表示信号が発信されて、第1番目の表示器18が消灯して第2番目の表示器18が点灯する。
このように、使用者入力部3から「選択」の操作信号が送信されるごとに、制御部6において選択された位置座標データに対応する表示パネル4a上の表示器18が点灯するよう構成されている。
【0033】
なお、図7に示す表示パネル4aでは、制御部6の記憶領域に登録(記憶)される第1番目から第8番目の位置座標データに対応する表示器18は、表示パネル4aにおいて紙面左側を第1番目として第8番目まで順番に一直線状に配置されているので、使用者入力部3から「選択」の操作信号が発信される度に、表示器18の点灯箇所は紙面左側から右側に向って一つずつ移動し、第8番目の表示器18が点灯した後は、再び第1番目の表示器18から第8番目の表示器18に向って1つずつ点灯することになる。
このように使用者入力部3からの操作信号と操作対象確認表示部4における表示を連動させることで、使用者は自らが現在選択中の位置座標データがどれであるかを正確に知ることができるのである。
【0034】
さらに、本発明に係る家電製品操作補助装置1によれば、図2又は図3に示す本体部28のリモコンホルダー21に複数のリモコン22を支持固定しておき、第1のリモコン22(例、テレビ用のリモコン)から例えば5個の操作ボタン23の位置座標データを制御部6の記憶領域に登録し、さらに、第2のリモコン22(例、ビデオデッキ用のリモコン)から例えば3個の操作ボタン23の位置座標データを制御部6の記憶領域に登録しておくことも可能である。
この場合、操作対象確認表示部4の表示パネル4aには、第1,第2のリモコン22から予め登録された位置座標データがともに選択可能な位置座標データとして表示されることになる。
【0035】
なお、使用者入力部3から制御部6に対して「決定」の操作信号が発信された場合、表示パネル4aにおいて点灯中の表示器18に対応する位置座標データが使用者の目的とする位置座標データとして決定され(確定され)、その位置座標データ上にある操作ボタン23がロボットアーム部5により実施に操作されることになる。
このため、制御部6において「決定」の操作信号が受信されたことを使用者が表示パネル4aにおいて確認することができよう、例えば、表示パネル4aにおいて連続点灯中の表示器18を点滅させたり、あるいは連続点灯中の表示器18の色を変える等の信号を制御部6から操作対象確認表示部4に対して発信させてもよい。あるいは、使用者入力部3から「決定」の操作信号が発信されるまでは表示パネル4aにおける表示器18を点滅させておき、「決定」の操作信号が発信されると同時に表示器18の点滅を停止させて連続点灯するよう設定してもよい。
また、表示パネル4aを液晶モニタにより構成する場合も、使用者が選択中の位置座標データと、決定された位置座標データとを明確に識別できるよう表示方法を変えることが望ましい。
【0036】
さらに、本発明に係る家電製品操作補助装置1においては、操作対象確認表示部4に代えて、使用者に現在選択中の位置座標データ又は決定した位置座標データを音声で知らせる音声ガイド部を備えてもよい。なお、この場合、音声ガイド装置は本体部28と一体に構成されてもよい。このような音声ガイド装置は、使用者入力部3において「選択」又は「決定」の操作信号が送信された際にそのことを使用者に知らせる音声ガイドが発せられるものであり、特に目の不自由な人に対しても本発明に係る家電製品操作補助装置1を使用可能にすることができる。
また、本発明に係る家電製品操作補助装置1においては、操作対象確認表示部4と上述の音声ガイド部を両方備えてもよい。
【0037】
最後に図1乃至図8を参照しながらリモコン22上の使用者が目的とする操作ボタン23が本発明に係る家電製品操作補助装置1により操作されるまでの一連の流れを説明する。
図8は本発明に係る家電製品操作補助装置の作動の流れを示すフローチャートである。
図8に示すように、本発明に係る家電製品操作補助装置1を用いて使用者が電化製品用のリモコンをロボットアーム部5により操作するには、まず、図3に示すように本発明に係る家電製品操作補助装置1のリモコンホルダー21にリモコン22を支持固定(ステップS1)した後、本体部28に有線又は無線で接続される位置座標データ入力部2(図4を参照。)を用いて、リモコン22上の複数の操作ボタン23の位置座標データを制御部6の記憶領域に登録する(ステップS2)。なお、本発明に係る家電製品操作補助装置1の使用者が肢体不自由者である場合には、上記ステップS1及びステップS2の作業は、位置座標データ入力部2の操作が可能な例えば健常者が行う必要がある。また、このステップS2の作業と並行して、登録されたそれぞれの位置座標データに対応する表示パネル4a(図7を参照。)上の表示器18の近傍にラベル19を貼っておくとよい。
なお、本願の実施の形態においては、制御部6に記憶領域を設けたが、特に制御部6に限定するものではなく、制御部6との情報のやりとりを可能とするならば他の構成要素に設けてもよいし、独立して制御部6の外部、さらには本体部28の外部に有線・無線で接続可能に設けられてもよい。また、携帯に便利な記憶媒体として本体部28に着脱可能としてもよい。
【0038】
このステップS2を完了した後、使用者の頭部に図5に示す使用者入力部3を装着し、使用者が顎を右側又は左側に向けた際に選択スイッチ15や決定スイッチ16を使用者の顎又は頬で操作可能な位置に配置する。そして、使用者入力部3の装着が完了した後、使用者は図7に示す操作対象確認表示部4を見ながら、図6(a)に示すように、顎又は頬を使用者入力部3の選択スイッチ15に接触させて制御部6に対して「選択」の操作信号の発信を行い、この操作を繰り返すことで目的とする位置座標データの呼び出しを行う(ステップS3)。
そして、このステップS3において使用者の目的とする位置座標データが呼び出されたら、図6(c)に示すように、使用者は自らの顎又は頬を使用者入力部3の決定スイッチ16に接触させて制御部6に対して「決定」の操作信号を発信し、目的とする位置座標データを確定する(ステップS4)。
さらに、使用者入力部3からの「決定」の操作信号が制御部6において受信されると、制御部6からロボットアーム部5に対して制御信号が発信され、ロボットアーム部5は確定された位置座標データ上にある操作ボタン23をその先端部5aにより操作する(ステップS5)。
この結果、リモコン22から家電製品に対して作動信号が発信され、この作動信号を受信した家電製品は使用者の目的とする操作を行うのである。
【0039】
このように、図1乃至図8に示すような本発明に係る家電製品操作補助装置1によれば、使用者は顎又は頬で使用者入力部3を直接操作するだけで、ロボットアーム部5を用いて間接的に家電製品のリモコンを操作することができるという効果を有する。
そして、この場合、使用使者が目的とする位置座標データを選択し決定するための「選択」又は「決定」の操作信号は、使用者入力部3において使用者の顎又は頬と装置との直接接触が起こった場合にのみ発信される。つまり、その操作に至るまでに使用者の頭部がどのように動いても操作信号が発信される恐れがないのである。このため、ロボットアーム部5が誤作動する恐れを大幅に低減することができるという効果を有する。
また、本発明に係る家電製品操作補助装置1においては、使用者の頭部の動きを定量的に測定してその測定結果に応じて操作信号を発信するものではないので、使用者入力部3の構成をシンプルにするとともに軽量化することができるという効果も有する。
さらに、本発明に係る家電製品操作補助装置1においては、使用者によって目的とする位置座標データが単に選択されただけでは、制御部6からロボットアーム部5に対して制御信号が発信されないよう構成されている。つまり、本発明に係る家電製品操作補助装置1においては、目的とする位置座標データが選択された後、それとは別の操作信号が発信されて初めて、ロボットアーム部5の作動の基となる位置座標データが確定されるので、ロボットアーム部5が誤作動する恐れを大幅に低減することができる。
すなわち、本発明に係る家電製品操作補助装置1においては、ロボットアーム部5の作動に際して二重に使用者の意思を確認することで、ロボットアーム部5の誤作動を防止しているのである。
従って、上述のような本発明に係る家電製品操作補助装置1によれば、肢体の不自由な人であっても容易に家電製品を操作することができる。この結果、介護者の手間を軽減するとともに、使用者は電化製品を自在に操作して快適に過ごすことができるという効果を有する。
【0040】
最後に、本発明に係る家電製品操作補助装置の変形例について説明する。
本発明の変形例に係る家電製品操作補助装置は、複数のリモコン22の操作ボタン23の位置座標データを分けて登録するとともに、必要に応じて目的とするリモコン22の位置座標データのみを呼び出して選択可能にできるよう構成されるものである。ここでは、図1乃至図8に示す家電製品操作補助装置1との相違点に重点をおいて説明する。なお、図1乃至図8に示す家電製品操作補助装置1との共通部分については同じ符号を用いて説明する。
変形例に係る家電製品操作補助装置は、本体部28のリモコンホルダー21に複数のリモコン22を支持固定して用いるものであり、かつ、操作対象確認表示部4が液晶モニタにより構成され、さらに、使用者入力部3において、「選択」及び「決定」の操作信号に加えて、「メニュー画面起動」の操作信号を発信することができるよう構成されるものである。
なお、「メニュー画面起動」の操作信号を発信する方法としては、例えば、使用者入力部3に選択スイッチ15及び決定スイッチ16に加えて、別途、メニュー画面起動スイッチを設け、例えば、使用者が顎を上下動させてメニュー画面起動スイッチに直接顎を接触させた場合にのみ「メニュー画面起動」の操作信号が発信されるよう構成してもよいし、あるいは、選択スイッチ15に比べて使用頻度が低い決定スイッチ16に一定時間以上使用者が顎又は頬を接触させた場合にのみ「メニュー画面起動」の操作信号が発信されるよう構成してもよい。
【0041】
そして、上述のような操作により「メニュー画面起動」の操作信号が制御部6に対して発信されると、液晶モニタからなる操作対象確認表示部4に対して制御部6からメニュー画面の表示信号が発信されて液晶モニタに、複数のリモコン22から目的とするリモコン22を1つだけ選択できるようメニュー画面が表示される。
この場合、使用者は複数の選択可能な位置座標データから目的とする位置座標データを選択し決定する場合と同じ手順で、複数のリモコン22から目的とするリモコン22を1つだけ選択することができる。
そして、使用者による目的とするリモコン22の選択が完了した後に、液晶モニタからなる操作対象確認表示部4に、目的とするリモコン22における選択可能な操作ボタン23の位置座標データが表示されるので、その後は、図8に示すステップS3からステップS5の手順に従って操作すればよい。
【0042】
このような変形例に係る家電製品操作補助装置によれば、使用者は複数の家電製品のリモコンを目的に応じて自由に操作することができるというメリットを有する。
つまり、変形例に係る家電製品操作補助装置を1台用いることで使用者は、例えば、テレビの操作と、ビデオデッキの操作と、エアコンの操作を他の人によらず自ら行うことが可能になるのである。
この結果、介護者の作業を一層軽減するとともに、使用者は電化製品を自在に操作して一層快適に過ごすことができるという効果を有する。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上説明したように、本発明は使用者の顎又は頬を用いた直接操作のみにより家庭用電化製品のリモコンを間接的に操作可能にする家電製品操作補助装置であり、介護福祉機器又は家庭用電化製品の分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1…家電製品操作補助装置 2…位置座標データ入力部 2a…入力パネル 3…使用者入力部 4…操作対象確認表示部 4a…表示パネル 5…ロボットアーム部 5a…先端部 5b…固定部 5c…ビーム 6…制御部 7…サーボモータ 8…受信設備 9a,9b…ダイアル 10…タクトスイッチ11…キャップ 12…固定具 13…チェーンブロック(フレキシブル支持材) 14…イモネジ 15…選択スイッチ 16…決定スイッチ 17…送信機 18…表示器(例、LED) 19…ラベル 20…接続コード 21…リモコンホルダー 22…リモコン(コントロールパネル) 23…操作ボタン(操作部材) 24…ハウジング 25…配線基板 26…接続部 27…接地面 28…本体部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計算により得られた家庭用電化製品を制御するコントロールパネル上の操作部材の位置座標データの登録を指示する信号を送信する位置座標データ入力部と、
予め登録された前記位置座標データの中から,使用者が目的とする前記位置座標データを決定する操作信号を入力する使用者入力部と、
前記使用者に対して,選択可能な前記位置座標データを表示するとともに,前記使用者が現在選択中又は決定した前記位置座標データを表示する操作対象確認表示部と、
前記使用者が決定した前記位置座標データ上にある前記コントロールパネルの前記操作部材を直接操作するロボットアーム部と、
前記位置座標データ入力部の指令に基づいて前記位置座標データを記憶する領域を備え,前記ロボットアーム部から送信されるデータに基づいて前記ロボットアーム部の先端の位置座標データを計算により求め,前記使用者入力部から送信された操作信号を受けて前記操作対象確認表示部に対して前記使用者が選択中又は決定した前記位置座標データを前記操作対象確認表示部上に表示させる表示信号を発信し,前記ロボットアーム部の作動を制御する制御信号を発信する制御部とを有し、
前記使用者入力部において,前記位置座標データを決定する操作信号は,前記使用者の顎又は頬により入力されることを特徴とする家電製品操作補助装置。
【請求項2】
前記使用者入力部は、前記操作対象確認表示部に表示される前記位置座標データの候補を順次選択させる第1のスイッチと,選択された前記位置座標データを決定させる第2のスイッチとを備えることを特徴とする請求項1記載の家電製品操作補助装置。
【請求項3】
前記コントロールパネルの数は複数であり、
前記操作対象確認表示部は液晶モニタからなり、
前記使用者入力部は、複数の前記コントロールパネルから目的とする一つのコントロールパネルを選択可能にするメニュー画面を表示させる信号を入力できることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の家電製品操作補助装置。
【請求項4】
前記家電操作補助装置は、前記コントロールパネルを着脱可能に支持固定するホルダーを備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の家電製品操作補助装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図7】
image rotate

【図6】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−213914(P2010−213914A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64442(P2009−64442)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【特許番号】特許第4414476号(P4414476)
【特許公報発行日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(309008457)
【Fターム(参考)】