説明

容器の保存用蓋を用いた液体の保存方法

【課題】 容器に収容した液体の品質を確実に保持することができると共に、液体の使用時には容器外に容易に流出させることができる容器の保存用蓋を提供する。
【解決手段】 容器口部52の外周に装着され端部が蓋体により密閉可能な直筒状の装着部10と、容器口部52と同心状になるように装着部10に支持され容器50の底部近傍まで延びる導入管20と、導入管20を被覆する袋状体30とを備え、導入管20は、装着部10の側方に突出する閉止可能な吹込部24を有し、吹込部24から吹き込まれた流体を袋状体30の内部に導入して膨張させるように設けられており、袋状体30は、容器50の起立状態で膨張させると液体に浸漬された部分が液面を上昇させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の保存用蓋およびこれを用いた液体の保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペットボトルやびん等の容器に収容された醤油、日本酒、ワイン、炭酸飲料等の液体は、開封後に再び栓をして密閉しても、容器内に空気が残留することで酸化の進行や成分の放出が生じ、品質が劣化するおそれがある。そこで、収容された液体の酸化等を防止することができる容器の構造が従来から検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1や特許文献2に開示された容器は、内部に配置して息を吹き込むことができる袋状体を備えており、袋状体を膨張させて容器の内周面に密着させることにより、容器内の空気と液体とを遮断するように構成されている。
【0004】
また、特許文献3に開示された容器も、内部に配置される袋状体を備えている。この袋状体は、液体の流出に伴い外部から容器内に取り入れられた空気が内部に収容されることで、容器内の液体と空気との接触を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−36277号公報
【特許文献2】実開平1−141243号公報
【特許文献3】特開平2−57567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記特許文献1および2に開示された容器は、液面の上方で袋状体を膨張させて容器の内周面に密着させる必要があることから、容器の形状や液面の高さ位置によっては、袋状体によって液体と空気とを確実に遮断することが困難であるという問題があった。また、袋状体に空気を導入する導入管が容器口部の開口を狭めることから、液体が流出し難くなるという問題もあった。
【0007】
また、特許文献3に開示された容器は、袋状体の内部に空気を強制的に吹き込む構成でないため袋状体の膨張が不十分になり易く、袋状体の外部における空気と液体との接触が避けられず、液体の流出も困難であった。
【0008】
そこで、本発明は、容器に収容した液体の品質を確実に保持することができると共に、液体の使用時には容器外に容易に流出させることができる容器の保存用蓋の提供を目的とし、更に、これを用いた液体の保存方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の前記目的は、容器内に収容された液体の品質を保持するための保存用蓋であって、容器の口部外周に装着され、端部が蓋体により密閉可能な直筒状の装着部と、容器の口部と同心状になるように前記装着部に支持され容器の底部近傍まで延びる導入管と、前記導入管を被覆する袋状体とを備え、前記導入管は、前記装着部の側方に突出する閉止可能な吹込部を有し、前記吹込部から吹き込まれた流体を前記袋状体の内部に導入して膨張させるように設けられており、前記袋状体は、容器の起立状態で膨張させると、液体に浸漬された部分が液面を上昇させるように構成されている容器の保存用蓋により達成される。
【0010】
また、本発明の前記目的は、上述した容器の保存用蓋を用いた液体の保存方法であって、液体を収容した容器の口部外周に前記装着部を装着するステップと、前記吹込部から前記袋状体の内部に流体を導入して液面を前記装着部の近傍まで上昇させた後、前記吹込部を閉止するステップと、前記装着部を前記蓋体により密閉するステップとを備える液体の保存方法により達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、容器に収容した液体の品質を確実に保持することができると共に、液体の使用時には容器外に容易に流出させることができる容器の保存用蓋を提供することができ、更に、これを用いた液体の保存方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る容器の保存用蓋の断面図である。
【図2】図1に示す容器の保存用蓋を用いた液体保存方法を説明するための断面図である。
【図3】上記の液体保存方法の変形例を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る容器の保存用蓋の断面図である。図1に示すように、保存用蓋1は、容器50の口部に装着される装着部10と、装着部10に支持されて容器50の内部に延びる導入管20と、導入管20を被覆する袋状体30とを備えている。容器50は、本実施形態では調味料や飲料等の液体が収容されるペットボトルであり、口部52の外周にはキャップ(栓)が螺合されるねじ部54が形成されている。
【0014】
装着部10は、樹脂等の材料により中空の直筒状に形成されており、一端側の内周面には、容器50のねじ部54に螺合するねじ部12が形成されている。装着部10の他端側の外周面には、密閉可能な蓋体(図示せず)が螺合されるねじ部14が形成されており、他端側の開口が液体を流出させるための流出口16とされている。
【0015】
導入管20は、直管状の本体部22と、本体部22の端部から湾曲する吹込部24とを備えており、吹込部24が装着部10の側壁を貫通して側方に突出するように、装着部10に固定されている。本体部22は、外周全体が装着部10の内周面との間に略均一な隙間を形成するように配置されており、容器50の口部52と同心状になるように、装着部10に支持されている。本体部22は、装着部10が装着される容器50の底部近傍に到達する程度の長さを有しており、開口した先端部から袋状体30の内部に気体や液体等の流体を導入する。
【0016】
吹込部24は、樹脂製の薄肉管やゴム管等からなる可撓管24aが端部に装着されており、可撓管24aに結び目を形成したり、折り曲げてクリップ等で挟持することで、吹込部24の流路を閉止可能とされている。吹込部24は、可撓管24aを備える代わりに、介在させた手動バルブの操作により流路を閉止するように構成してもよい。
【0017】
袋状体30は、樹脂フィルム等により変形自在に形成されており、装着部10から露出する導入管20の大部分を覆うように、開口部32が導入管20の外周面に気密に接着されている。導入管20の先端開口と袋状体30の底部34との間には、気体の流通を確保できる程度に若干の隙間が形成されている。袋状体30の形状や大きさは、最大膨張時に容器50の内周面の略全体と接触するように、容器50の形状や大きさに合わせて適宜設定することが好ましい。
【0018】
次に、上記の構成を備える保存用蓋1を用いて液体を保存する方法を、図2を参照しながら説明する。開封後の容器50内に液体が残存する場合、まず、図2(a)に示すように、収縮状態にある袋状体30を、導入管20の本体部22と共に口部52から容器50の内部に挿入し、装着部10のねじ部12を口部52のねじ部54に螺合する。これにより、装着部10が容器50の口部52の外周に装着されて、導入管20の先端位置が容器50の底部56の近傍に固定され、袋状体30の底部34側が、容器50内の液体Lに浸漬した状態になる。
【0019】
ついで、容器50を起立させた状態で、吹込部24から息を吹き込む等して袋状体30の内部に気体を強制的に導入し、袋状体30を膨張させる。袋状体30は、液体Lに浸漬されていない上部がまず膨張し、容器50の内周面に密着した後、図2(b)に示すように、液体Lに浸漬された部分が膨張を開始する。これにより、容器50の内周面と袋状体30の外周面との間に形成される僅かな隙間を、液体Lが上昇する。
【0020】
袋状体30への気体の導入を更に続けると液体Lが更に上昇して、図2(c)に示すように、液面Sが装着部10の近傍まで到達する。この後、吹込部24の可撓管24aを折り曲げてクリップ60等で挟持することにより、袋状体30の膨張状態を維持する。最後に、装着部10のねじ部14に蓋体18を螺着することにより、容器50内の液面Sの高さが維持された状態で、流出口16が密閉される。
【0021】
本実施形態の保存用蓋1によれば、袋状体30の液体Lに浸漬された部分が膨張することにより、液体Lの液面Sが上昇して容器50内に存在する空気が押し上げられるので、従来のように液面Sの上方で袋状体30を膨張させる構成と比較して、容器50内の空気を流出口16から確実に排出することができる。したがって、蓋体18を閉じた後の液体Lの酸化や成分放出を抑制することができ、保存する液体Lの品質を良好に維持することができる。液面Sの高さ位置は、液体Lが容器50から溢れない程度でなるべく高い位置であることが好ましく、本実施形態では装着部10の内部としているが、装着部10の近傍であれば、必ずしも装着部10の内部まで到達しなくてもよい。
【0022】
また、導入管20の本体部22が、容器50の口部52と同心状になるように配置されているので、容器50の内部において袋状体30を均一に膨張させることができる。したがって、液面Sの高さを所望の位置に調整することが容易であり、作業性を高めることができる。
【0023】
保存した液体Lの使用時には、吹込部24のクリップ60を取り外して流路を開放することにより、袋状体30に導入されていた気体の一部が自然に放出され、液面Sが降下する。そして、通常の場合と同様に、容器50を傾けて液体Lを装着部10の流出口16から流出させる。装着部10は口部52の外周側に装着されると共に、導入管20は吹込部24が装着部10の側方に突出するように支持されているので、容器50の口部52の流路面積と同程度の装着部10の流路面積を、容易に確保することができる。したがって、保存用蓋1を容器50に装着したまま液体Lをスムーズに流出させることができ、液体Lを使用する度に保存用蓋1を着脱する煩雑さを解消することができる。
【0024】
装着部10を密閉する蓋体18は特に限定されないが、容器50の口部52に螺合するキャップ(栓)を装着部10に装着できるように、装着部10のねじ部14が形成されていることが好ましい。この場合、容器50を開封したキャップをそのまま蓋体18として使用することができて便利である。
【0025】
また、容器50は、装着部10を外周に装着可能な口部52を有するものであれば特に限定されず、本実施形態のペットボトル以外に、例えば、一升瓶やワインボトル等のビンであってもよい。この場合、装着部10をビンの口部に外嵌できるように、ゴム等の弾性材料で装着部10を形成し、ビンの口部を密閉可能なゴム栓やコルク栓等を装着部10の蓋体18とすることで、本実施形態と同様の効果を奏することができる。容器50は、液面Sの高さを目視で容易に確認できるように、透明または半透明の材料から形成されていることが好ましい。
【0026】
また、袋状体30に吹き込む流体は、上述した気体以外に液体であってもよい。この場合、図3(a)に示すように、袋状体30の膨張が底部34側から開始され、袋状体30は、液体Lに浸漬された部分から容器50の内周面に接触し、液体Lの液面Sが上昇する。袋状体30への気体の導入を更に続けると、図3(b)に示すように、袋状体30が容器50の内周面と接触する部分が下部から上部に向けて拡がり、液面Sが更に上昇する。このように、袋状体30へ吹き込む流体を液体とすることで、液面Sの上昇が緩やかなものとなり、装着部10の近傍への液面Sの高さ調整を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0027】
1 保存用蓋
10 装着部
20 導入管
22 本体部
24 吹込部
30 袋状体
50 容器
52 口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に収容された液体の品質を保持するための保存用蓋であって、
容器の口部外周に装着され、端部が蓋体により密閉可能な直筒状の装着部と、
容器の口部と同心状になるように前記装着部に支持され容器の底部近傍まで延びる導入管と、
前記導入管を被覆する袋状体とを備え、
前記導入管は、前記装着部の側方に突出する閉止可能な吹込部を有し、前記吹込部から吹き込まれた流体を前記袋状体の内部に導入して膨張させるように設けられており、
前記袋状体は、容器の起立状態で膨張させると、液体に浸漬された部分が液面を上昇させるように構成されている容器の保存用蓋。
【請求項2】
前記蓋体は、容器を密閉可能な栓である請求項1に記載の容器の保存用蓋。
【請求項3】
請求項1または2に記載の容器の保存用蓋を用いた液体の保存方法であって、
液体を収容した容器の口部外周に前記装着部を装着するステップと、
前記吹込部から前記袋状体の内部に流体を導入して液面を前記装着部の近傍まで上昇させた後、前記吹込部を閉止するステップと、
前記装着部を前記蓋体により密閉するステップとを備える液体の保存方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−56685(P2013−56685A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195667(P2011−195667)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【特許番号】特許第5014505号(P5014505)
【特許公報発行日】平成24年8月29日(2012.8.29)
【出願人】(399007936)
【出願人】(305017099)
【Fターム(参考)】