説明

容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングの製造方法

【課題】赤色野菜及び緑色野菜を少なくとも含む複数種類の野菜汁が配合され、栄養価に優れた容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングの製造方法であって、振盪して生野菜等の食材にかけることで当該食材が鮮やかな赤色の色調で彩られた外観のよいサラダが得られる容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングの製造方法を提供する。
【解決手段】赤色野菜と緑色野菜を少なくとも含む野菜汁を水相原料液に対して10%以上含む容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングの製造方法であって、赤色野菜として少なくともパプリカ及び/又は赤ピーマンを含み、粘度を5〜1000mPa・sに調整した前記野菜汁と、キサンタンガムとを含む水相原料液を調製し、次いで、得られた水相原料液と油相原料液とを混合処理した後、得られた混合物を容器に充填する容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤色野菜及び緑色野菜を少なくとも含む複数種類の野菜汁が配合され、栄養価に優れた容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングの製造方法であって、より詳しくは、振盪して生野菜等の食材にかけることで当該食材が鮮やかな赤色の色調で彩られた外観のよいサラダが得られる容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
核家族化等の家庭環境の変化により、日々の食生活の中で、他品目の食材を摂取することが難しくなっている。特に、ニンジン等の赤色野菜やホウレンソウ等の緑色野菜等の色が濃い野菜は、ビタミンやミネラル等を多く含んでおり複数種類摂取することが望まれるが、それぞれの野菜について皮むきや裁断等の下処理の必要があり手間がかかるためあまり摂取されていないのが現状である。
【0003】
ところで、野菜を摂取する方法としては、野菜を食材として食べる他、タレ等の液状調味料に、例えば、すりおろしたニンジンを配合して摂取する場合もある。従来このように液状調味料にニンジンを配合するのは、主に鮮やかな赤い色調を得たり、すりおろしたニンジンの食感を得たりするためである。すりおろしたニンジンを配合した液状調味料としては、例えば、特開2000−262239号公報(特許文献1)には、ニンジン等のおろしを配合した調味料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−262239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、赤色野菜と緑黄色野菜等を含む複数の野菜を手間をかけずに摂取できるようにする方法として、従来調味料に色調改善や食感付与の目的で配合されるニンジンだけでなく、緑色野菜等の複数の野菜のすりおろし汁を配合してドレッシングを製造することを着想した。つまり、ニンジンに加えて緑色野菜等の複数種類の野菜を配合したドレッシングを製造して提供できれば、例えば、レタス等の生野菜にかけるだけでも、赤色野菜や緑黄色野菜等を含む複数種類の野菜を一度に摂取できるサラダを簡便に調製することが可能となる。しかも、ニンジン等の赤色野菜でレタス等の食材が彩られた外観のよいサラダを得ることも期待できる。
【0006】
ドレッシングとしては、分離液状タイプと乳化液状タイプが知られているが、白濁する乳化液状タイプに比べて分離液状タイプは配合原料の色調がそのまま現れ易く、野菜ドレッシングとしては外観上もニンジン等の赤い色調が得られ好ましい。そこで、本発明者は、従来調味料に色調改善や食感付与の目的で配合されるニンジンだけでなく、ホウレンソウ等の緑色野菜を含む複数の野菜汁と食酢等の調味料を配合して水相原料液を調製し、得られた水相原料液に食用油脂からなる油相原料を積層して分離液状のドレッシングを製造した。そして、得られた分離液状赤色野菜ドレッシングを振盪してレタスにかけたところ、複数種類の野菜汁を含む水相部分の色調が、くすんだ暗い色調となり鮮やかさに欠けるだけでなく、レタスにかけたドレッシングがレタス表面から流れ落ちやすく赤色の色調で彩られた外観のよいサラダは得られなかった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、赤色野菜及び緑色野菜を少なくとも含む複数種類の野菜汁が配合され、栄養価に優れた容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングの製造方法であって、振盪して生野菜等の食材にかけることで当該食材が鮮やかな赤色の色調で彩られた外観のよいサラダが得られる容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく配合する野菜の種類や添加材、更に製造工程等について鋭意研究を重ねた。その結果、まず、赤色野菜として少なくともパプリカ及び/又は赤ピーマンを含み、粘度を5〜1000mPa・sに調整した野菜汁と、キサンタンガムとを含む水相原料液を調製し、次に、得られた水相原料液と油相原料液とを混合処理することにより製造した容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングは、振盪して生野菜等にかけることで鮮やかな赤色の色調で彩られた外観のよいサラダが得られることを見出し、遂に本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)、赤色野菜と緑色野菜を少なくとも含む野菜汁を水相原料液に対して10%以上含む容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングの製造方法であって、赤色野菜として少なくともパプリカ及び/又は赤ピーマンを含み、粘度を5〜1000mPa・sに調整した前記野菜汁と、キサンタンガムとを含む水相原料液を調製し、次いで、得られた水相原料液と油相原料液とを混合処理した後、得られた混合物を容器に充填する容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングの製造方法、
(2)、前記野菜汁の粘度が5〜500mPa・sである(1)記載の容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングの製造方法、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により得られた分離液状赤色野菜ドレッシングは、赤色野菜及び緑色野菜を少なくとも含む複数種類の野菜汁が配合され、栄養価に優れており、当該分離液状赤色野菜ドレッシングを、例えば、レタスにかけるだけでも、緑黄色野菜等を含む複数種類の野菜を一度に摂取できるサラダを簡便に調製することができる。しかも、本発明で得られた分離液状赤色野菜ドレッシングは、赤色野菜及び緑色野菜を少なくとも含む複数種類の野菜汁が配合されているにもかかわらず、振盪して生野菜等の食材にかけることで当該食材が鮮やかな赤色の色調で彩られた外観のよいサラダが得られる。したがって、本発明の容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングの製造方法を提供することにより、容器入り分離液状ドレッシングの更なる需要の拡大が期待される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングの製造方法を詳述する。なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0012】
本発明において、分離液状赤色野菜ドレッシングとは、赤色野菜を主原料とする野菜汁を配合した分離液状ドレッシングをいう。また、分離液状ドレッシングとは、食酢及び/又はかんきつ類果汁に、必要により食塩、砂糖類、香辛料等の調味料を加えて調製した水相部に、食用油脂からなる油相部が積層された液状調味料であって、主としてサラダに使用するものをいう。前記油相部を構成する食用油脂の配合量は、分離液状ドレッシング全体に対して好ましくは5〜60%であり、前記水相部は、一部の食用油脂が均一に分散した乳化相であってもよい。
【0013】
本発明の容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングは、前記分離液状赤色野菜ドレッシングが容器詰めされたものであって、使用の際に当該分離液状ドレッシングが入った容器を上下又は左右に振って一時的に乳化して使用できるようにされたものである。
【0014】
本発明はこのような容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングの製造方法であって、まず、特定の野菜を含み特定粘度に調整した野菜汁と、キサンタンガムとを含む赤色の水相原料液を調製する工程を有することを特徴とする。
【0015】
ここで、本発明の前記野菜汁とは、野菜を破砕して搾汁したもの、あるいは、野菜を裏ごし又はすりおろし処理したものをいう。このような野菜汁としては、常法により搾汁装置等で搾汁したジュース等や、常法により、裏ごし処理、あるいはすりおろし処理用の装置を用いて製造したピューレ、おろし等が挙げられる。
【0016】
本発明においては前記野菜汁として、赤色野菜と緑色野菜を少なくとも含む野菜汁を用いる。赤色野菜とは、赤色の野菜をいい、例えば、ニンジン、トマト、パプリカ、赤ピーマン等が挙げられる。一方、緑色野菜とは、緑色の野菜をいい、例えば、ホウレンソウ、レタス、キャベツ、コマツナ、セロリ、モロヘイヤ、クレソン、ケール、ブロッコリー等が挙げられる。本発明においては、このように赤色野菜や緑色野菜を含む複数の野菜を少なくとも用いることにより栄養価に優れたドレッシングとすることができる。
【0017】
更に、本発明においては、赤色野菜として少なくともパプリカ及び/又は赤ピーマンを用いる。これにより、水相原料液の色調を赤色に着色するだけでなく、後述するように油相部の色調を赤色に着色して、分離液状赤色野菜ドレッシングを生野菜等の食材にかけた際の色調を鮮やかな赤色の色調とすることができる。なお、本発明の野菜汁に用いる野菜としては、これら赤色野菜、緑色野菜の他、カボチャ、タマネギ、ダイコン、カブ等のその他の種々の野菜を本発明の効果を損なわない範囲で配合するとより栄養価に優れ好ましい。
【0018】
水相原料液に配合する野菜汁は、水相原料液の色調が赤色を呈するように各野菜の配合割合を調整する。具体的には、緑色野菜の配合量があまり多すぎると水相原料液の色調が暗緑色となり赤色を呈さなくなるので、緑色野菜汁の配合量を、赤色野菜汁の配合量100部に対して好ましくは0.01〜30部、より好ましくは0.01〜10部、更に好ましくは0.01〜5部とすればよい。また、本発明においては、パプリカ汁及び赤ピーマン汁は水相部の色調を赤色に着色するだけでなく、後述するように油相部の色調を赤色に着色する目的でも用いる。したがって、パプリカ汁及び赤ピーマン汁は水相部及び油相部を適度に着色できる量配合することが好ましいがあまり配合量が多すぎてもパプリカ及び赤ピーマンの味により風味のバランスが崩れる場合があることから、パプリカ汁及び赤ピーマン汁の配合量は、水相原料液に対して好ましくは1〜50%、より好ましくは3〜30%である。
【0019】
水相原料液に対する前記野菜汁の合計配合量としては、栄養価を高める点から少なくとも水相原料液に対して10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上配合する。一方、前記野菜汁の合計配合量の上限としては、食酢等のその他の水相原料との配合バランスを考慮すると、水相原料液に対して好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である。
【0020】
上述のように本発明の水相原料液を調製する際には前記特定野菜の野菜汁を用いて赤色の水相原料液を調製するが、本発明においては緑色野菜等を含む複数の野菜汁を用いているため、単にこれらの野菜汁を水相原料に配合しても、緑色野菜等に由来する色素が食酢、かんきつ類果汁等の影響を受ける等により、得られたドレッシングを生野菜等にかけた際の色調が暗くくすんで鮮やかさに欠ける色調となりやすい。そこで、本発明においては、水相原料液を調製する際に、前記野菜汁として、粘度を5〜1000mPa・sに調整した野菜汁を用いるとともに、キサンタンガムを用いる。このように、比較的低粘度に調整した野菜汁とキサンタンガムとを含む水相原料液を用いて分離液状赤色野菜ドレッシングを製造することにより、得られたドレッシングを振とうして生野菜等にかけた際に、ドレッシングが適度に白濁して緑色野菜等に由来する暗くくすんだ色調を目立たなくすることができるだけでなく、レタス等の食材表面にドレッシングが保持されやすくなって鮮やかな赤色の色調で彩られた外観のよいサラダが得られる。
【0021】
水相原料液に配合する前記野菜汁の粘度としては、分離液状赤色野菜ドレッシングを振とうして使用する際に、分離液状赤色野菜ドレッシングがレタス等の食材表面に保持される効果がより得られ易いことから、好ましくは5〜500mPa・s、より好ましくは5〜300mPa・sである。
【0022】
これに対して、野菜汁として前記範囲よりも粘度が高い野菜汁を用いた場合は、レタス上にかけた分離液状赤色野菜ドレッシングの赤い色がくすんで鮮やかさに欠けるだけでなく、野菜汁を含む水相部分の多くがレタス表面から流れ落ち、その結果、鮮やかな赤色の色調で彩られた外観のよいサラダが得られ難い。一方、前記範囲よりも粘度が低い野菜汁を用いた場合も、ドレッシングがレタス等の食材表面に保持される効果が得られ難く、鮮やかな赤色の色調で彩られた外観のよいサラダが得られ難い。また、キサンタンガムではなく、例えば、調味料の増粘材として使用されることが多い澱粉を用いた場合は、分離液状赤色野菜ドレッシングを振とうして使用する際に分離液状赤色野菜ドレッシングが白濁しすぎて白っぽい色調となり赤色の鮮やかな色調が損なわれる。
【0023】
前記野菜汁の粘度の調整方法は特に制限はないが、例えば、裏ごし処理、あるいはすりおろし処理用の装置を用いて製造したピューレ、おろし等においては、パルプ質がより細かくなるように処理条件を設定することにより野菜汁の粘度を下げることができるので、このような処理条件の調整により野菜汁の粘度を調整できる。また、裏ごし処理、あるいはすりおろし処理後の野菜汁からパルプ質を濾過等により一部除去する等によっても野菜汁の粘度を低下することができるので、このようなパルプ質の除去の程度によっても野菜汁の粘度を前記特定粘度に調整することができる。
【0024】
なお、本発明においては、水相原料液に用いる前記野菜汁の粘度は、原料として用いる野菜汁全てを混合した時の粘度を表す。したがって、比較的低粘度に調整し難い緑色の葉野菜等の野菜汁は粘度調整を特に行わず、例えば低粘度に調整し易い赤色野菜であるパプリカ汁、赤ピーマン汁、ニンジン汁等において粘度を低粘度に調整することにより、野菜汁全てを混合した時の粘度を前記特定範囲となるように調整してもよい。また、野菜汁としては製造条件の違いにより粘度が様々に異なるジュース、ピューレ、おろし等が市販されているので、これらを適宜組み合わせて水相原料液に配合する野菜汁の粘度が前記特定粘度となるように調整してもよい。
【0025】
本発明における前記野菜汁の粘度は、BH形粘度計で、品温20℃、回転数20rpmの条件で、粘度が375mPa・s未満のときローターNo.1、375mPa・s以上1500mPa・s未満のときローターNo.2、1500mPa・s以上3750mPa・s未満のときローターNo.3、3750mPa・s以上7500mPa・s未満のときローターNo.4、7500mPa・s以上15000mPa・s未満のときローターNo.5、15000mPa・s以上37500mPa・s未満のときローターNo.6、37500mPa・s以上のときローターNo.7を使用し、測定開始後ローターが3回転した時の示度により求めた値である。
【0026】
一方、水相原料液に配合するキサンタンガムの含有量は、あまり少なすぎるとドレッシングがレタス等の食材表面に保持される効果が得られ難く、鮮やかな赤色の色調で彩られた外観のよいサラダが得られ難い。一方、キサンタンガムの含有量が多すぎてもドレッシングとしての粘度が高くなりすぎて好ましくないことから、キサンタンガムの含有量は、水相原料に対して好ましくは0.01〜2%、より好ましくは0.01〜1.5%である。
【0027】
水相原料液の調製は、上述した特定の野菜汁及びキサンタンガムを配合するほかは一般的な分離液状赤色野菜ドレッシングと同様に、食酢及び/又はかんきつ類果汁、食塩、砂糖類、香辛料等を配合し、撹拌タンク等で混合して調製すればよい。この際、野菜汁及びキサンタンガム等を配合する順序には特に制限は無く、例えば、パプリカ汁、赤ピーマン汁、緑色野菜汁等を予め混合した野菜汁と食酢等のその他の原料を混合してもよく、あるいは、パプリカ汁や赤ピーマン汁と食酢等を混合した後、緑色野菜汁を加えて混合してもよい。
【0028】
次に、本発明の容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングの製造方法においては、上述のようにして調製した水相原料液と油相原料液とを混合する工程を有することを特徴とする。上述した水相原料液には、パプリカ汁及び/又は赤ピーマン汁を含むため、水相原料液と油相原料液とを混合することにより、水相原料中のパプリカ汁及び/又は赤ピーマン汁の色素を油相原料液に移行させて油相原料液の色調を赤色に着色することができる。
【0029】
本発明においては、上述したように、比較的低粘度に調整した野菜汁とキサンタンガムとを含む水相原料液を用いて分離液状赤色野菜ドレッシングを製造することにより、得られた分離液状赤色野菜ドレッシングを振とうして生野菜等の食材にかけた際に、分離液状赤色野菜ドレッシングが適度に白濁して、緑色野菜等に由来する暗くくすんだ色調を目立たなくして明るい色調とすることができるだけでなく、レタス等の食材表面にドレッシングが保持され、鮮やかな赤色の色調で彩られた外観のよいサラダが得られるが、分離液状赤色野菜ドレッシングがやや白濁することにより原料野菜に由来する赤色の鮮やかさがやや損なわれる傾向がある。そこで、本発明においては、上述のようにパプリカ汁及び/又は赤ピーマン汁を含む水相原料液と油相原料液とを混合することにより、油相原料液の色調を赤色に着色する。このようにして前記特定の野菜汁及びキサンタンガムを含む赤色の水相部の上に、原料野菜由来の色素により赤色に着色した油相部が積層された状態とした本発明の分離液状赤色野菜ドレッシングを用いれば、鮮やかな赤色の色調で彩られた大変外観のよいサラダを得ることができる。
【0030】
本発明の油相原料液に用いる食用油脂とは、トリアシルグリセロール又はジアシルグリセロールを主成分とする脂質のことであり、例えば、菜種油、大豆油、コーン油、サフラワー油、ひまわり油、綿実油、ごま油、こめ油、パーム油、パームオレイン、オリーブ油、落花生油、やし油、しそ油、牛脂、ラード、魚油等の動植物油又はこれらの精製油、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、エステル交換油等のような化学的あるいは酵素処理等を施して得られる油脂等が挙げられる。
【0031】
水相原料液と油相原料液との混合は、撹拌タンク等を用い、水相原料液と油相原料液とを撹拌混合して全体を略均一となる程度に行えばよい。油相原料液の色調が赤色に充分に着色されるように、混合処理時間は、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上行えばよく、一方、混合処理時間が長すぎても製造効率が悪いことから、混合処理時間は好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下である。混合された水相原料液と油相原料液は、一時的に乳化状態となるが、撹拌混合後しばらく静置すると油相が上層に分離して分離液状となる。
【0032】
続いて、本発明の容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングの製造方法においては、上述した水相原料液及び油相原料液を容器に充填する。本発明においては、水相原料液と油相原料液との前記混合工程において、これらが一時的に乳化状態となるとなるので、この一時的に乳化状態となった水相原料液と油相原料液との混合液を容器に充填すればよい。
【0033】
用いる容器としては、特に制限は無く、一般的な分離液状ドレッシングに使用する種々の容器を用いればよい。このような容器としては、例えば、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート等の自立性容器や、樹脂性パウチ等が挙げられる。
【0034】
以上により本発明の容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングが得られる。得られた容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングは、赤色を呈する水相部の上に赤色を呈する油相部が積層された分離液状の状態であり、赤色野菜や緑色野菜を含む複数の野菜を含むことにより栄養価に優れたものとなる。また、本発明の容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングは、振盪して生野菜等の食材にかけた際にドレッシングの赤色の色調が改善されるだけでなく、生野菜等の食材表面にドレッシングが保持されやすくなって鮮やかな赤色の色調で彩られた外観のよいサラダが得られる。
【0035】
なお、本発明の容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングには、上述した水相原料である野菜汁、キサンタンガム、食酢、かんきつ類果汁、調味料等、更に油相部を構成する食用油脂等以外に本発明の効果を損なわない範囲で分離液状ドレッシングに一般的に使用されている各種原料を適宜選択し配合させることが出来る。このような原料としては、例えば、アスコルビン酸、ビタミンE等の酸化防止剤、スクラロース等の高甘味度甘味料、ミネラル類、静菌剤、並びにごま、のり、しいたけ、ねぎ、ナッツ、ベーコン、ゆず等の具材の截断物等が挙げられる。
【0036】
次に、本発明を実施例及び比較例に基づき、更に説明する。
【実施例】
【0037】
[実施例1]
下記の配合割合に準じ、まず、撹拌タンクに全水相原料を投入して均一に混合することにより、赤色の水相原料液を調製した。次に、この水相原料液が入った撹拌タンクに、更に、油相原料を投入して撹拌混合した。水相原料液と油相原料液との撹拌混合を15分間行ったところ、水相原料液と油相原料液は一時的に乳化状態となった。続いて、水相原料液と油相原料液との混合液を250mL容量のPET容器に充填して密栓した後、30分間静置して、容器内の水相原料液と油相原料液との混合液を油相部と水相部とに分離させた。得られ容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングは、赤色の水相部に赤色の油相部が積層された状態となっていた。
【0038】
なお、配合した野菜汁に関し、ニンジン汁は粘度20mPa・sのジュースを用い、パプリカ汁、ケール汁及びホウレンソウ汁は粘度が3000〜6000mPa・sのピューレを用いた。水相原料液に配合するこれら野菜汁全てを混合した野菜汁の粘度は250mPa・sであり、水相原料に対するこれら野菜汁の合計配合量は38%であった。また、緑色野菜汁の配合量は、赤色野菜汁100部に対して7部であった。
【0039】
<分離液状赤色野菜ドレッシングの配合割合>
(油相原料)
サラダ油 20%
(水相原料)
ニンジン汁 23%
パプリカ汁 5%
ケール汁 1%
ホウレンソウ汁 1%
食酢(酸度4%) 17%
ブドウ糖果糖液糖 6%
食塩 4%
キサンタンガム 0.1%
清水 22.9%
―――――――――――――――――――
合計 100%
【0040】
得られた容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングを上下に5回振って一時的に乳化し、これをカットレタス65gの上に20gかけてサラダを得た。得られたサラダを5分間静置した後に外観を評価したところ、レタス表面に鮮やかな赤色のドレッシングが保持された外観のよいサラダであり大変好ましかった。
【0041】
[実施例2]
下記配合割合とした他は実施例1と同様にして容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングを製造した。なお、配合した野菜汁に関し、ニンジン汁は粘度20mPa・sのジュースを用い、パプリカ汁及びホウレンソウ汁は粘度が3000〜6000mPa・sのピューレを用いた。水相原料液に配合するこれら野菜汁全てを混合した野菜汁の粘度は750mPa・sであり、水相原料に対するこれら野菜汁の合計配合量は38%であった。また、緑色野菜汁の配合量は、赤色野菜汁100部に対して20部であった。
【0042】
<分離液状赤色野菜ドレッシングの配合割合>
(油相原料)
サラダ油 20%
(水相原料)
ニンジン汁 10%
パプリカ汁 15%
ホウレンソウ汁 5%
食酢(酸度4%) 17%
ブドウ糖果糖液糖 6%
食塩 4%
キサンタンガム 0.05%
清水 22.95%
―――――――――――――――――――
合計 100%
【0043】
得られた容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングを実施例1と同様にレタスの上にかけて5分間静置した後、外観を評価したところ、やや赤い色が薄く白っぽいものの問題のない程度といえる赤色のドレッシングがレタス表面に保持された外観のよいサラダであり好ましかった。
【0044】
[実施例3]
下記配合割合とした他は実施例1と同様にして容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングを製造した。なお、配合した野菜汁に関し、ニンジン汁は粘度20mPa・sのジュースを用い、パプリカ汁、赤ピーマン汁、パセリ汁、キャベツ汁、ホウレンソウ汁、及びケール汁は粘度が2000〜6000mPa・sのピューレを用いた。水相原料液に配合するこれら野菜汁全てを混合した野菜汁の粘度は150mPa・sであり、水相原料に対するこれら野菜汁の合計配合量は65%であった。また、緑色野菜汁の配合量は、赤色野菜汁100部に対して9部であった。
【0045】
<分離液状赤色野菜ドレッシングの配合割合>
(油相原料)
サラダ油 15%
(水相原料)
ニンジン汁 42%
パプリカ汁 3%
赤ピーマン汁 1%
パセリ汁 1%
キャベツ汁 1%
ホウレンソウ汁 1%
ケール汁 1%
オレンジ果汁 5%
食酢(酸度4%) 17%
ブドウ糖果糖液糖 6%
食塩 4%
キサンタンガム 0.1%
清水 2.9%
―――――――――――――――――――
合計 100%
【0046】
得られた容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングを実施例1と同様にレタスの上にかけて5分間静置した後、外観を評価したところ、レタス表面に鮮やかな赤色のドレッシングが保持された外観のよいサラダであり大変好ましかった。
【0047】
[比較例1]
実施例1において、パプリカ汁を配合せず、その減少分はニンジン汁の配合量を増やした他は同様にして容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングを製造した。なお、得られた容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングは油相部が赤く着色されていなかった。
【0048】
得られた容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングを実施例1と同様にレタスの上にかけて5分間静置した後、外観を評価したところ、レタス上にかけた分離液状赤色野菜ドレッシングは、赤い色が薄く鮮やかさに欠ける白っぽい色調であり好ましくなかった。
【0049】
[比較例2]
実施例1において、配合するニンジン汁の一部を、ニンジンのすりおろし品(粘度170000mPa・s)に置き換えることにより、水相原料液に配合する野菜汁全てを混合した野菜汁の粘度が1700mPa・sとなるようにした。このようにニンジン汁の一部を、ニンジンのすりおろし品に置き換え他は実施例1と同様にして容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングを製造した。
【0050】
得られた容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングを実施例1と同様にレタスの上にかけて5分間静置した後、外観を評価したところ、レタス上にかけた分離液状赤色野菜ドレッシングは、赤い色がくすんでいるだけでなく、その多くがレタス表面から流れ落ちていて、鮮やかな赤色の色調で彩られた外観のよいサラダが得られなかった。
【0051】
[比較例3]
実施例1において、キサンタンガムを配合しない他は同様にして容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングを製造した。
【0052】
得られた容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングを実施例1と同様にレタスの上にかけて5分間静置した後、外観を評価したところ、レタス上にかけた分離液状赤色野菜ドレッシングは、赤い色がくすんでいるだけでなく、その多くがレタス表面から流れ落ちていて、鮮やかな赤色の色調で彩られた外観のよいサラダが得られなかった。
【0053】
[比較例4]
実施例1において、キサンタンガムをα化澱粉に変えた他は同様にして容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングを製造した。
【0054】
得られた容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングを実施例1と同様にレタスの上にかけて5分間静置した後、外観を評価したところ、レタス上にかけた分離液状赤色野菜ドレッシングは、赤い色が薄く鮮やかさに欠ける白っぽい色調であり好ましくなかった。
【0055】
[比較例5]
実施例1において、製造工程を変えた他は同様にして容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングを製造した。つまり、まず、撹拌タンクに全水相原料を投入して均一に混合することにより、赤色の水相原料液を調製した。続いて、分離液状赤色野菜ドレッシングの容量が250mLとなるように250mL容量のPET容器に水相原料液を充填した後に、油相原料液である食用油脂を充填して水相部に油相部であるサラダ油を積層させ密栓した。なお、得られた容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングは油相部がほとんど着色されていなかった。
【0056】
得られた容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングを実施例1と同様にレタスの上にかけて5分間静置した後、外観を評価したところ、レタス上にかけた分離液状赤色野菜ドレッシングは、赤い色が薄く鮮やかさに欠ける白っぽい色調であり好ましくなかった。
【0057】
以上の実施例1乃至3、並びに比較例1乃至5より、赤色野菜として少なくともパプリカ及び/又は赤ピーマンを含み、粘度を5〜1000mPa・sに調整した野菜汁と、キサンタンガムとを含む赤色の水相原料液を調製する工程と、得られた赤色の水相原料液と油相原料液とを混合する工程を有する実施例1乃至3の容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングの製造方法で得られた本発明の容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングを用いることで、鮮やかな赤色の色調で彩られた外観のよいサラダが得られることが理解できる。
【0058】
これに対し、赤色野菜としてパプリカ汁及び/又は赤ピーマン汁を配合せず、ニンジン汁のみを配合した比較例1、パプリカ汁は配合しているが水相原料液と油相原料液とを混合する工程を行わず、単に容器に水相原料液と油相原料液を別々に充填して製造した比較例5の製造方法で得られた分離液状赤色野菜ドレッシング、並びにキサンタンガムを配合せずα化澱粉を配合した比較例4の製造方法で得られた分離液状赤色野菜ドレッシングは、振盪してサラダにかけた際の色調が、赤い色が薄く鮮やかさに欠ける白っぽい色調であり好ましくなかった。また、配合する野菜汁の粘度が前記特定範囲より高い比較例2、及びキサンタンガムを配合しなかった比較例3の製造方法で得られた分離液状赤色野菜ドレッシングは、赤い色がくすんで鮮やかさに欠けるだけでなく、レタス上にかけた分離液状赤色野菜ドレッシングの野菜汁を含む水相部分の多くがレタス表面から流れ落ち、その結果、鮮やかな赤色の色調で彩られた外観のよいサラダが得られず好ましくなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤色野菜と緑色野菜を少なくとも含む野菜汁を水相原料液に対して10%以上含む容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングの製造方法であって、赤色野菜として少なくともパプリカ及び/又は赤ピーマンを含み、粘度を5〜1000mPa・sに調整した前記野菜汁と、キサンタンガムとを含む水相原料液を調製し、次いで、得られた水相原料液と油相原料液とを混合処理した後、得られた混合物を容器に充填することを特徴とする容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングの製造方法。
【請求項2】
前記野菜汁の粘度が5〜500mPa・sである請求項1記載の容器入り分離液状赤色野菜ドレッシングの製造方法。

【公開番号】特開2011−4689(P2011−4689A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153041(P2009−153041)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】