説明

容器及び容器入りシート状含浸体

【課題】本体と蓋体とをヒートシールすることなく、起立状態でも液剤の漏洩が防げる容器。
【解決手段】液状物がシート状繊維の少なくとも一部に含浸されたシート状含浸体を収容する容器1であって、本体2と、前記本体2と嵌合する蓋体3とからなり、前記本体2と前記蓋体3とのいずれか一方又は双方に、前記シート状含浸体を押圧する凸部44を形成する。前記本体2と前記蓋体3との間隙を狭めると共に、前記シート状含浸体の液状物の含浸部を収容する湿潤室と前記シート状含浸体の非含浸部を収容する乾燥室とを形成する仕切部20を設けることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器及び容器入りシート状含浸体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、顔面を覆える程度の大きさに成形したシート状繊維に、化粧料等を含浸した美容用マスク等の美容用シートが知られている。このような美容用シートの輸送、保管には、化粧料等の漏洩を防ぐために、ピロー包装等で密閉する包装形態が用いられる。さらに、美容用マスクの変形を防ぐために、美容用シートをトレイに置き、該トレイをピロー包装した包装形態が用いられることがある。
このような、ピロー包装による包装形態では、美容用シートが取り出しにくく、また、ピロー包装を開封した際に、シート状繊維が保持できない化粧料がこぼれるという問題があった。
こうした問題に対し、取り出しの容易化を図った包装形態として、パック用ゲルシートを収容する凹部を有する樹脂製のトレイと、該トレイの凹部を覆うフィルムとからなる包装構造が提案されている(例えば、特許文献1)。かかる包装構造では、フィルムの開封時に、パック用ゲルシートが該フィルムに密着した状態で容易に取り出せる。
また、化粧料がこぼれるという問題を解決する方策としては、美容用シート等の収容に、密閉性の高い食品用の容器を利用することが考えられる。このような食品用の容器としては、例えば特許文献2に提案されている密封容器が挙げられる。この密封容器は、蓋体のフランジ部と、容器本体のフランジ部とを嵌合させたものである。かかる密封容器は、蓋体と容器本体との嵌合部をヒートシールすることで密閉性が高められている。加えて、この密封容器は、蓋体下側壁にアーチ状の切り欠き部を設けることで、蓋体と容器本体との易剥離性が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−124882号公報
【特許文献2】特開2008−179389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、美容用シート等を収容した容器は、流通時には天面を鉛直方向上方に向けて梱包されている(平置き状態)のが通常であるが、店舗等では天面が垂直(起立状態)となるように陳列又は展示等されることが多い。特許文献1の包装構造で美容用シート等を収容した場合には、フィルムとトレイとを接着しないと、美容用シートに含浸させた液剤がトレイから容易に漏洩してしまう。また、フィルムとトレイとを接着した場合には、開封時にフィルムを剥がすという煩雑な作業が伴う。一方、特許文献2の容器に美容用シートを収容した場合には、蓋体と容器本体とがヒートシールされているため、起立状態での液剤の漏洩は防げるものの、開封時にヒートシール部を剥離するという煩雑な作業が伴う。さらに、美容用シートのような薄い形状の内容物を収容する場合には、内容物を保形するために容器自体が薄型化されるため、ヒートシール部の剥離がより困難となる。加えて、開封時の煩雑さを排除するために蓋体と本体容器とをヒートシールしないと、嵌合部から液剤が漏洩してしまう。特に、液剤の漏洩は、嵌合部が鉛直方向下方となるような起立状態で顕著となる。
そこで、本発明は、開封が容易で、起立状態でも液剤の漏洩が防げる容器を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の容器は、液状物がシート状繊維の少なくとも一部に含浸されたシート状含浸体を収容する容器であって、本体と、前記本体と嵌合する蓋体とからなり、前記本体と前記蓋体とのいずれか一方又は双方に、前記シート状含浸体を押圧する凸部が形成されていることを特徴とする。
前記凸部は、その断面の輪郭形状が半円形状とされ、この容器を定められた姿勢に起立させた状態で、その直線状部分を上方に向けて配置されていることが好ましく、上下に複数段、各段にてそれぞれ略水平方向に列設され、かつ各上下の段の各凸部が略水平方向に位置をずらせて配置されていることがより好ましい。前記本体と前記蓋体との間隙を狭めると共に、前記シート状含浸体の液状物の含浸部を収容する湿潤室と前記シート状含浸体の非含浸部を収容する乾燥室とを形成する仕切部が設けられていることが好ましく、前記乾燥室は、この容器を定められた姿勢に起立させた状態で、起立方向上方に形成されていることがより好ましい。
【0006】
本発明の容器入りシート状含浸体は、液状物がシート状繊維の少なくとも一部に含浸されたシート状含浸体が、前記容器に収容されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の容器によれば、シート状含浸体を押圧する凸部が形成されているため、この容器を定められた姿勢に起立させた状態でも、液剤の漏洩の防止と、開封の容易化が図れる。
凸部は、その断面の輪郭形状が半円形状とされ、その直線状部分を上方に向けて配置されているため、液剤の流下を妨げ、さらなる液剤の漏洩を防止できる。
凸部は、上下に複数段、各段にてそれぞれ略水平方向に列設され、かつ各上下の段の各凸部が略水平方向に位置をずらせて配置されているため、シート状含浸体をずれや偏りなく固定できる。
収容室には仕切部が設けられているため、シート状含浸体から漏洩した液剤が、非含浸部に浸透することを防止できる。
乾燥室は、この容器を定められた姿勢に起立させた状態で、起立方向上方に形成されているため、起立状態でも、非含浸部に液剤が浸透することを防止できる。
本発明の容器入りシート状含浸体によれば、開封が容易であると共に、この容器を定められた姿勢に起立させた状態でも、液剤の漏洩の防止が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態にかかる容器の斜視図である。
【図2】(a)本発明の一実施形態にかかる容器の本体の平面図である。(b)本発明の一実施形態にかかる容器の蓋体の平面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる容器の断面図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる本体の平面図である。
【図5】本発明の容器に収容するシート状含浸体の平面図である。
【図6】本発明の一実施形態にかかる本体の平面図である。
【図7】比較例に用いた容器を説明する断面図である。
【図8】比較例に用いた容器を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の容器の一実施形態について、以下に図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態を説明する容器1の斜視図である。図2−(a)は、容器1の本体の平面図であり、図2−(b)は、容器1の蓋体の平面図である。図3は、本発明の容器1にシート状含浸体70を収容した状態を示す断面図である。なお、容器1は、符号4の上端を上方、符号5の下端を下方とした状態が、店舗等で陳列・展示される際の状態、即ち、定められた姿勢に起立させた状態(起立状態)である。以下、説明の便宜上、上端4を上方とし、下端5を下方とした上下方向を起立方向とする。
【0010】
図1〜2に示すように、容器1は、本体2と、本体2と着脱可能に嵌合する蓋体3とで構成されたものである。
本体2には、シート状含浸体70を収容するための凹状の収容部11と、周縁のフランジ12とが形成されている。フランジ12には、収容部11の周縁に沿う凹状の本体嵌合部16が形成されている。フランジ12には、起立方向上方の一隅に略三角形の吊穴14が形成されている。
収容部11には、収容部11を起立方向上方の本体乾燥部32と起立方向下方の本体湿潤部42とに区画する仕切部20が形成されている。本体湿潤部42には、収容部11内に向かって突出した8個の凸部44が、起立状態で、上下に3段、各段にてそれぞれ略水平方向に列設され、かつ各上下の段の各凸部44が略水平方向に位置をずらせて配置されている。
【0011】
図2〜3に示すように、凸部44は、その輪郭形状、即ち突出方向に対し垂直な断面(横断面)の形状が、略水平方向に延びる直線状の上端と該直線の両端に連なる円弧からなる略半円形である。凸部44は、シート状含浸体70に当接する天面に向かうに従って断面積が徐々に小さくなるように形成されたものである。そして、本体湿潤部42には、凸部44が形成された以外の領域に凹部46が形成されている。
【0012】
蓋体3には、周縁のフランジ部56と、収容部11を覆う蓋体天壁50が形成されている。フランジ部56には、蓋体天壁50の周縁に沿い、本体嵌合部16と嵌合する凸状の蓋体嵌合部58が形成されている。蓋体天壁50には、本体乾燥部32を覆う乾燥部蓋52と、本体湿潤部42を覆う湿潤部蓋54とが形成されている。乾燥部蓋52には、その周縁に沿って、収容部11に向かって突出した溝部53が形成されている。湿潤部蓋54には、その周縁に沿って、収容部11に向かって突出した溝部55が形成されている。湿潤部蓋54には、容器1の外部に突出する突出部がマトリックス状に配置された易剥離加工が施されている。
【0013】
図3に示すように、本体2と蓋体3とが嵌合された状態では、容器1内に、蓋体天壁50と収容部11とで収容室10が形成されている。加えて、収容室10には、起立方向上方に、本体乾燥部32と乾燥部蓋52とで乾燥室30が形成され、起立方向下方に、本体湿潤部42と湿潤部蓋54とで湿潤室40が形成されている。
【0014】
本体2の材質は、シート状含浸体70に含浸させる液剤の種類等を勘案して決定でき、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
本体2の厚さは、材質等を勘案して決定でき、例えば、0.05〜0.5mmとされる。
蓋体3の材質は、本体2の材質と同様である。蓋体3の厚さは、本体2の厚さと同様である。
【0015】
収容室10の深さDは、シート状含浸体70の厚さに応じて決定でき、例えば、2.0〜5.0mmとされる。
収容室10の最大幅であり、湿潤室40の幅Wは、シート状含浸体70の大きさに応じて決定できる。
乾燥室30の長さL1は、シート状含浸体70の大きさ等を勘案して、適宜決定できる。
湿潤室40の長さL2は、シート状含浸体70の大きさ等を勘案して、適宜決定できる。
【0016】
凸部44の高さHは、シート状含浸体70を押圧し、シート状含浸体70の厚さを減少できるものであり、例えば、1.0〜3.0mmとされる。
凸部44の天面の大きさは、シート状含浸体70の大きさ等を勘案して決定でき、例えば、半径3〜6mmとされる。
仕切部20の高さhは、シート状含浸体70に含浸させた液剤量等に応じて決定でき、例えば、0.5〜2.0mmとされる。
【0017】
容器1の使用態様について、図3〜4を用いて説明する。図4は、本体2にシート状含浸体70を収容した状態を示す平面図である。図5は、シート状含浸体70の一例を示す平面図である。
本発明の容器1は、図5に示すようなシート状含浸体70を収容するものである。シート状含浸体70は、不織布や織物繊維等の吸液性を有するシート状繊維に、化粧料等の液剤を含浸させたものである。図5に示すように、シート状含浸体70は、第一の覆部72と第二の覆部74とを有し、第一の覆部72と第二の覆部74との間には、両側端から中心線80に向かう切込部76が形成されている。シート状含浸体70は、その長さlが240〜280mmとされ、幅wが120〜170mmとされる。
【0018】
第一の覆部72は、シート状含浸体70を顔面に装着した際に、口の周り(口囲)及び頬を覆う形状であり、中心線80から両側端に向かうに従い、その幅が狭くなるような略楕円形のシート状繊維である。第一の覆部72には、一対の耳掛け部73が設けられている。第一部の覆部72には、装着した際に鼻を露出する鼻露出部71が形成されている。第二の覆部74は、第一の覆部72の下方に設けられ、シート状含浸体70を顔面に装着した際に、下顎を覆う形状であり、中心線80から両端に向かうに従って、その幅が狭くなるような略欠円形のシート状繊維である。第二の覆部74には、一対の耳掛け部75が設けられている。
【0019】
シート状含浸体70における液剤を含浸させた含浸部は、シート状含浸体70を装着した際に、耳に当たる部分(耳掛け部73の近傍及び耳掛け部75の近傍:非含浸部)を除いた部分である。図5では、符号90の枠で囲われた領域が含浸部である。
【0020】
シート状繊維の材質は、特に限定されず、例えば、天然繊維、合成繊維又はこれらの混合繊維からなる不織布や織物繊維等が挙げられる。不織布としては、例えば、スパンボンド、メルトブロー、サーマルボンド、ケミカルボンド、スパンレース、ニードルパンチ等の公知の製造方法により得られるものが挙げられる。
【0021】
液剤としては、例えば、美容液、化粧水(美白、紫外線防止も含む)、油性成分を含む乳化組成物(乳液)、クレンジング剤等の皮膚化粧料が挙げられる。
【0022】
次に、容器1へのシート状含浸体70の収容手順について、図3〜5を用いて説明する。
まず、シート状含浸体70を収容部11内に収容する。この際、シート状含浸体70は、中心線80と水平線82とで四つ折りとされ、非含浸部が本体乾燥部32に位置し、含浸部が本体湿潤部42に位置するように収容される。次いで、蓋体3は、本体嵌合部16に蓋体嵌合部58が嵌め込まれることで、本体2と嵌合される。本体2と蓋体3とが嵌合された容器入りシート状含浸体は、さらにピロー包装等により包装された後、流通される。流通時、容器入りシート状含浸体は、蓋体3を鉛直方向上方に向けられるのが通常である。店舗での陳列・展示時には、上端4が鉛直方向上方となるように置かれる。
【0023】
容器1は、本体2と蓋体3とが、本体嵌合部16と蓋体嵌合部58とで嵌合されることで、蓋体3が輸送・保管中に本体2から容易に外れることがないと共に、開封が容易である。
【0024】
シート状含浸体70は、収容室10に収容されると、凸部44により蓋体天壁50の方向に押圧される。シート状含浸体70は、その厚さが減少されると共に、本体2と蓋体3との間隙を塞いだ状態で固定される。そして、シート状含浸体70は、液剤を含むため、凸部44により押圧された部分においては本体2と蓋体3との間隙を密封することとなる。
ここで、起立状態においては、シート状含浸体70が保持できず漏洩した液剤が、下端5に向かって流下する。この際、シート状含浸体70は、凸部44により押圧された領域において、その厚さが減少された状態となり、シート状含浸体70の基材であるシート状繊維内の空隙が狭まっている。そして、下端5に流下しようとする液剤は、毛細管現象により上端4に向かって吸い上げられる作用を受ける。この結果、液剤は、下端5に到達する量が抑制される。
加えて、凸部44により、シート状含浸体70は、本体2と蓋体3との間隙を部分的に密封する形態とされる。シート状含浸体70が容器1内に収納された状態では、シート状含浸体70から漏洩した液剤が、凹部46に一時的に滞留することとなる。この凹部46に滞留した液剤は、下端5に向かって流下しようとしても、本体2と蓋体3との間隙を密封しているシート状含浸体70により、その流路を阻まれ、流下しにくくなる。流下しにくい状態となった液剤は、さらに上述した毛細管現象により、上端4の方向に吸い上げられる作用を受ける。この結果、容器1においては、液剤が流下する量を制限し、下端5から液剤が漏洩するのを防止できる。
【0025】
容器1は、本体湿潤部42に凸部44が、上下に複数段、各段にてそれぞれ略水平方向に列設され、かつ各上下の段の各凸部44が略水平方向に位置をずらせて配置されている。このため、凸部44によるシート状含浸体70への押圧を均等とし、シート状含浸体70が偏ったり、変形したりせずに固定される。そして、湿潤室40内では、シート状含浸体70による毛細管現象の効果が満遍なく発揮され、含浸部は、均一に液剤が含浸した状態を維持できる。加えて、シート状含浸体70から漏洩した液剤は、上下に複数段、各段にてそれぞれ略水平方向に列設され、かつ各上下の段の各凸部44が略水平方向に位置をずらせて配置された凸部44により、円滑な流下が阻害され、凹部46での滞留時間が長くなる。さらに、液剤は、凸部44がその直線状部分を上方に向けているため、該直線状部分で滞留しやすくなる。そして、容器1においては、前記直線状部分に滞留した液剤が上述した毛細管現象により上方に吸い上げられる作用を受けるため、液剤が下端5から漏洩することが防止できる。
【0026】
容器1には、仕切部20が形成されている。このため、例えば、平置き状態での流通の際には、本体湿潤部42から本体乾燥部32へ液剤が移動せず、非含浸部が液剤で濡れることがない。この結果、シート状含浸体70は、その耳掛け部73及び75の近傍がドライ状態に保たれるため、着用の際の不快感がない。加えて、乾燥室30は、容器1の起立方向上方に形成されているため、店舗等での陳列、展示等の際にシート状含浸体70から液剤が流下して、耳掛け部73、75の近傍を濡らすことがない。
【0027】
上述の実施形態では、凸部44の横断面の輪郭形状が略半円形とされているが、凸部44の形状は、これに限定されない。例えば、凸部の形状は、図6−(a)に示す本体2Aのように、横断面が略馬蹄形の凸部44Aであってもよい。あるいは、図6−(b)に示す本体2Bのように、横断面が矩形の凸部44Bであってもよい。また、あるいは、図6−(c)に示す本体2Cのように、横断面が波型の凸部44Cであってもよい。
【0028】
上述の実施形態では、凸部44の直線部分が起立方向上方に向かっているが、本発明はこれに限定されず、前記直線部分が下方、側方に向かっていてもよいし、個々に異なる方向に向かっていてもよい。ただし、容器1からの液剤の漏洩を精度高く防止する観点からは、前記直線部分を上方に向けることが好ましい。
【0029】
上述の実施形態では、8個の凸部44が形成されているが、凸部44の数はこれに限定されず、7個以下であってもよいし、9個以上であってもよい。凸部44の数は、収容するシート状含浸体70の大きさや、湿潤室の大きさ等を勘案して決定できる。
【0030】
上述の実施形態では、本体2にのみ凸部44が形成されているが、例えば、蓋体3にのみ凸部が形成されていてもよいし、本体2及び蓋体3の双方に凸部が形成されていてもよい。
【0031】
また、凸部44の配置は、特に限定されず、例えば、凸部44がランダムに配置されていてもよいし、起立方向に略直線状に配置されていてもよい。
【0032】
上述の実施形態では、収容室10内に仕切部20が形成されているが、本発明はこれに限定されず、仕切部20が形成されていなくてもよい。ただし、収容するシート状含浸体70において、含浸部と非含浸部とを設ける場合には、仕切部20を形成することが好ましい。
【実施例】
【0033】
以下に実施例を挙げて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
(シート状含浸体の作製)
下記のシート状繊維を下記仕様にて図5に示すシート状含浸体70と同様の形状に型抜きした。型抜きしたシート状繊維に、下記液剤A18mLを含浸させ、シート状含浸体Aを得た。シート状含浸体Aの含浸部の範囲は、図5における領域90を水平線82方向の長さ:130mm、中心線80方向の長さ150mmとした。
【0034】
<シート状繊維仕様>
・材質:ポリエチレンテレフタレート繊維をニードルパンチ法により作製した不織布(製品名;OS−90、厚さ;0.83mm、旭化成ホームプロダクト株式会社製)
・長さl:260mm
・幅w:150mm
【0035】
<液剤Aの調製>
表1の組成に従い、各成分をアジホモミキサー(真空乳化装置 PVI−I−20、みずほ工業株式会社製)にて以下の手順で混合し、液剤Aを調製した。
まず、グリセリン、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガムを精製水の一部に溶解し、水相小物とした。植物性スクワラン、ミリスチン酸イソプロピル、モノステアリン酸グリセリル、ポリオキシエチレン(10)フィトステロール、メチルポリシロキサン(10mm/s)、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)・ブチレン・メチルポリシロキサン共重合体、セトステアリルアルコールを70〜80℃に維持して溶解し、油相小物とした。エタノール、トリイソプロパノールアミンを精製水の残部に溶解し、エタノール相小物とした。
前記水相小物をアジホモミキサーに投入した。アジホモミキサーをかき取り羽根:90rpm、真空度:−40〜60kPa(ゲージ圧)の条件で運転し、70〜80℃で5分間、攪拌した。次いで、前記油相小物をアジホモミキサーに投入した。アジホモミキサーをかき取り羽根:90rpm、乳化用攪拌羽根:8000rpm、真空度:−40〜60kPa(ゲージ圧)の条件で運転し、70〜80℃で2分間、乳化した。乳化した後、乳化用攪拌羽根を停止し、かき取り羽根:90rpm、真空度:−40〜60kPaで乳化液を攪拌し冷却した。乳化液が42℃になった時点で、前記エタノール小物をアジホモミキサーに投入し、15分間攪拌して液剤Aを得た。
得られた液剤Aは、粘度が3000mPa・s、pH7.50であった。液剤Aの粘度は、BL型粘度計(東京計器株式会社製)を用い、ローターNo.3、30rpm、60秒、25℃の条件で測定した。pHは、液剤Aをバイアル瓶(SV−50、白電理化硝子株式会社製)にいれ、25±1℃の条件下で、ガラス電極式水素イオン濃度計(6366−10D、株式会社堀場製作所製)で測定した。
【0036】
【表1】

【0037】
(評価方法)
<液剤漏洩量>
各例の容器入りシート状含浸体をポリエチレンテレフタレート製袋に収容した。この容器入りシート状含浸体を下端が鉛直方向下方となるように起立させた状態で、1週間静置した。1週間後、容器から前記ポリエチレンテレフタレート製袋に漏洩した液剤の質量を計量した。
【0038】
<液剤保持率>
液剤保持率は、下記(1)により算出した。(1)式中、A1、A2、A3はそれぞれ以下の通りである。
A1:上記「(シート状含浸体の作製)」でシート状繊維に含浸させた液剤Aの質量
A2:上記「<液剤漏洩量>」で計量した液剤漏洩量
A3:上記「<液剤漏洩量>」で静置1週間後に、シート状含浸体Aから漏洩し容器内に残存した液剤の質量、
【0039】
液剤保持率(質量%)=(A1−A2−A3)÷A1×100 ・・・(1)
【0040】
<含浸部面積>
上記「<液剤漏洩量>」の測定後、容器からシート状含浸体Aを取り出し、液剤Aの含浸状態が十分な領域の面積を求めた。
【0041】
<総合判定>
上記「<液剤漏洩量>」、「<液剤保持率>」、「<含浸部面積>」の結果と、含浸部における含浸の均一性とを勘案し、下記基準により判定した。
○:容器から取り出した直後において、含浸部には、均一かつ十分量の液剤が含浸されており、目的とする範囲に液剤の効果が発揮できる。
△:容器から取り出した直後において、含浸部の液剤の均一性が「○」より劣る
×:容器から取り出した後、再度、液剤を含浸しなければ目的とする範囲に液剤の効果が発揮できない
【0042】
(実施例1)
図1〜3に示す容器1と同様の容器Aを下記仕様にて作製した。凸部の形状及び配置は、容器1と同様とした。この容器Aにシート状含浸体Aを図4と同様に収容し、容器入りシート状含浸体Aを得た。得られた容器入りシート状含浸体Aについて、液剤漏洩量、液剤保持率、含浸部面積を求め、その結果を表2に示す。
【0043】
<容器仕様>
・材質:ポリエチレンテレフタレート製、0.4mm厚
・収容室の深さD:3.5mm
・乾燥室の長さL1:79mm
・湿潤室の長さL2:66mm
・湿潤室の幅W:73mm
・湿潤室の体積:16.1cm
・凸部の高さH:2.0mm
・凸部の数:8個
・凸部の天面の大きさ:半径R=3.75mmの半円形
【0044】
(比較例1)
比較例1として、図7に示す容器100を作製した。図7は、容器100にシート状含浸体70を収容した状態の断面図である。容器100は、本体102と蓋体3とからなるものである。容器100の内部には、乾燥室30と湿潤室114とからなる収容室110(深さD:3.5mm)を形成した。本体102には、シート状含浸体70に押圧する凸部に換え、蓋体3と同様の易剥離加工を施した。これらの構成以外は、実施例1と同様の構成とし、容器100を作成した。
得られた容器100にシート状含浸体Aを収容し、容器入りシート状含浸体Bを得た。得られた容器入りシート状含浸体Bについて、液剤漏洩量、液剤保持率、含浸部面積を求め、その結果を表2に示す。
【0045】
(比較例2)
比較例2として、図8に示す容器200を作成した。図8は、容器200にシート状含浸体70を収容した状態の断面図である。容器200は、本体202と蓋体3とからなるものである。容器200の内部には、乾燥室30と湿潤室214とからなる収容室210(深さD:3.5mm)を形成した。本体202の本体湿潤部242には、シート状含浸体70に押圧する凸部に換え、シート状含浸体70を臨む凹部220を形成した。凹部220は、実施例1の凸部44と同様の形状(半径=3.75mmの半円形を底面とする、深さd=2.0mmの凹部)、配置で、容器200の外部に突出するように形成されたものである。
得られた容器200にシート状含浸体Aを収容し、容器入りシート状含浸体Cを得た。得られた容器入りシート状含浸体Cについて、液剤漏洩量、液剤保持率、含浸部面積を求め、その結果を表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
実施例1、比較例1〜2は、いずれも非含浸部への液剤の浸透が見られなかった。
表2に示すように、本体にシート状含浸体を押圧する凸部を形成させた実施例1は、液剤漏洩量が0.00gであり、容器外への液剤の漏洩は認められなかった。一方、蓋体及び本体にシート状含浸体を押圧する凸部を形成しなかった比較例1〜2は、容器外への液剤の漏洩が認められた。
また、本発明を用いた実施例1は、含浸部面積が6.0cmであった。一方、比較例1の含浸部面積は4.0cmであり、5.0cmであった。
以上の結果から、シート状含浸体を押圧する凸部を形成することで、容器からの液剤の漏洩が防止できることが判った。加えて、本発明によれば、含浸部面積を広域に保てることが判った。
【符号の説明】
【0048】
1 容器
2 本体
3 蓋体
20 仕切部
30 乾燥室
40 湿潤室
44 凸部
70 シート状含浸体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状物がシート状繊維の少なくとも一部に含浸されたシート状含浸体を収容する容器であって、
本体と、前記本体と嵌合する蓋体とからなり、
前記本体と前記蓋体とのいずれか一方又は双方に、前記シート状含浸体を押圧する凸部が形成されていることを特徴とする容器。
【請求項2】
前記凸部は、その断面の輪郭形状が半円形状とされ、この容器を定められた姿勢に起立させた状態で、その直線状部分を上方に向けて配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記凸部は、この容器を定められた姿勢に起立させた状態で、上下に複数段、各段にてそれぞれ略水平方向に列設され、
かつ各上下の段の各凸部が略水平方向に位置をずらせて配置されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の容器。
【請求項4】
前記本体と前記蓋体との間隙を狭めると共に、前記シート状含浸体の液状物の含浸部を収容する湿潤室と前記シート状含浸体の非含浸部を収容する乾燥室とを形成する仕切部が設けられていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の容器。
【請求項5】
前記乾燥室は、この容器を定められた姿勢に起立させた状態で、起立方向上方に形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の容器。
【請求項6】
液状物がシート状繊維の少なくとも一部に含浸されたシート状含浸体が、請求項1〜5のいずれか1項に記載の容器に収容されてなることを特徴とする、容器入りシート状含浸体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−6081(P2011−6081A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148783(P2009−148783)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】