容器用のヒンジキャップ
【課題】製品の輸送中に蓋が誤って開かないヒンジキャップを提供することを課題とする。
【解決手段】容器2に取り付ける容器2用のヒンジキャップ1であって、前記容器2の開口端に取り付ける基部3と、前記基部3にヒンジ4を介して回動可能に連結されて、前記容器2の内容物を吐出する前記基部3の吐出口を開閉可能な蓋部5と、を備え、前記蓋部5は、該蓋部5を閉じた状態において前記基部3に当接する部位のうち、前記ヒンジ4に隣接する特定の部位が、該蓋部5に対するユーザの開操作によって切り離し可能な程度の溶着力で該基部3に溶着されて、前記吐出口を封止している。
【解決手段】容器2に取り付ける容器2用のヒンジキャップ1であって、前記容器2の開口端に取り付ける基部3と、前記基部3にヒンジ4を介して回動可能に連結されて、前記容器2の内容物を吐出する前記基部3の吐出口を開閉可能な蓋部5と、を備え、前記蓋部5は、該蓋部5を閉じた状態において前記基部3に当接する部位のうち、前記ヒンジ4に隣接する特定の部位が、該蓋部5に対するユーザの開操作によって切り離し可能な程度の溶着力で該基部3に溶着されて、前記吐出口を封止している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器用のヒンジキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料を収納するものには、例えば、特許文献1に示すような容器がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−168825号公報
【特許文献2】特開平07−315404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
容器用のヒンジキャップは、開閉がしやすいものの、衝撃等によって誤開閉することがある。そこで、輸送する際は輸送中に加わる振動や衝撃等によってキャップが誤開閉しないよう、キャップを閉状態で固定する係止機構を強固にすることも考えられる。しかし、係止機構を強固なものにすると、日常の開閉操作が煩わしくなり一般的な使用に耐えないし、開閉に要する力が加工精度によって変動するので、係止機構の固定力にバラつきが生ずる。
【0005】
その他の方策として、シール(いわゆるバージンシール)などを貼り付けて輸送時のみキャップを固定することも考えられるが、一般消費者がこれを剥がす必要があり、また、製造時の工数が無視できない。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、製品の輸送中に蓋が誤って開かないヒンジキャップを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、蓋部を閉じた状態において基部に当接する蓋部の部位の少なくとも一部を基部に溶着した。
【0008】
詳細には、容器に取り付ける容器用のヒンジキャップであって、前記容器の開口端に取り付ける基部と、前記基部にヒンジを介して回動可能に連結されて、前記容器の内容物を吐出する該基部の吐出口を開閉可能な蓋部と、を備え、前記蓋部は、該蓋部を閉じた状態において前記基部に当接する部位の少なくとも一部が、該蓋部に対するユーザの開操作によって切り離し可能な程度の溶着力で該基部に溶着されて、前記吐出口を封止している。
【0009】
上記ヒンジキャップであれば、蓋部を閉じた状態において基部に当接する蓋部の部位の少なくとも一部が溶着されているので、輸送中の容器に振動や衝撃が加わっても蓋部が誤って開かない。また、基部に溶着された蓋部の溶着力は、蓋部に対するユーザの開操作によって切り離し可能な程度の力である。このため、ユーザは、容器の内容物を最初に取り出す際、蓋部が基部に溶着されていることを意識することなく、通常の開閉操作で蓋部を開くことができる。
【0010】
また、前記蓋部は、該蓋部を閉じた状態において前記基部に当接する部位のうち、前記ヒンジに隣接する所定の部位が該基部に溶着されて、前記吐出口を封止しているものであってもよい。このようなヒンジキャップであれば、ヒンジに隣接する特定の部位で、蓋部
が基部に溶着されているので、輸送中の容器に振動や衝撃が加わっても蓋部が誤って開かない。このため、ユーザは、容器の内容物を最初に取り出す際、蓋部が基部に溶着されていることを意識することなく、通常の開閉操作で蓋部を開くことができる。
【0011】
なお、前記ヒンジキャップは、一体成形品であり、前記蓋部は、該蓋部を閉じた状態において前記所定の部位を溶かすことにより、前記基部に溶着されて、前記吐出口を封止していてもよい。ヒンジキャップを一体成形する場合は、不可避的に蓋部を開いた状態で成形することになるが、蓋部を閉じた状態で前記所定の部位を溶かせば、蓋部を基部に溶着することができる。
【0012】
ここで、前記所定の部位とは、例えば、前記蓋部を閉じた状態で外部から視認することができ、且つ該蓋部の開閉操作においてユーザが触れる必要の無い部位である。このような部位で蓋部が基部に溶着されていることにより、蓋部に対するユーザの開操作によって溶着部分が切り離されても切れ端がユーザに触れにくく、ユーザに不快感を与えることが無い。
【0013】
また、前記蓋部は、該蓋部を閉じて前記基部へ押し当てた状態において該蓋部へ加えた超音波振動によって、該蓋部を閉じた状態において前記基部に当接する部位の少なくとも一部が該基部へ溶着されて、前記吐出口を封止するものであってもよい。このようなヒンジキャップであれば、未開封状態で溶着部が見えないため、容器の審美性を損なうことなく、輸送中の容器に振動や衝撃が加わっても蓋部が誤って開くことを防止できる。そして、ユーザは、容器の内容物を最初に取り出す際、蓋部が基部に溶着されていることを意識することなく、通常の開閉操作で蓋部を開くことができる。
【0014】
また、前記蓋部は、該蓋部に設けた突起であって、該蓋部を閉じた状態において先端が前記基部に当接する突起の先端、或いは、該蓋部を閉じた状態で該基部に設けた突起に当接する該蓋部の特定の部位が、該蓋部に溶着されて、前記吐出口を封止するものであってもよい。このようなヒンジキャップであれば、ヒンジキャップの成型精度が低くても、溶着力にばらつきが生じにくいため、ユーザが容器の内容物を最初に取り出す際に蓋が開きにくかったり、或いは、輸送中に蓋部が誤って開くことが無い。
【発明の効果】
【0015】
製品の輸送中に蓋が誤って開くことが無くなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ヒンジキャップを取り付けたチューブ容器の側面図である。
【図2】第一実施形態に係るヒンジキャップの内部構造図である。
【図3】吐出口と突起との嵌合部分の拡大図である。
【図4】ヒンジキャップの動作説明図である。
【図5】溶着部付近の拡大図である。
【図6】変形例に係る溶着部の拡大図である。
【図7】第二実施形態に係るヒンジキャップの内部構造図である。
【図8】第二実施形態に係るヒンジキャップを上から見た図である。
【図9】第三実施形態に係るヒンジキャップの内部構造図である。
【図10】第三実施形態に係るヒンジキャップを上から見た図である。
【図11】第三実施形態に係るヒンジキャップの膨らみ部を拡大した図である。
【図12】変形例に係るヒンジキャップの溶着部分を拡大した図である。
【図13】ダボ部がダボ受け部に嵌る状態を示した図である。
【図14】ダボ部の先端部分がダボ受け部の底部に溶着する状態を示した図である。
【図15】ヒンジキャップを取り付けたボトル状の容器の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本願発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本願発明の一態様を示すものであり、本願発明の技術的範囲を以下の実施形態に限定するものではない。
【0018】
図1は、第一実施形態に係るチューブ容器用のヒンジキャップ1を取り付けたチューブ容器2の側面図である。ヒンジキャップ1は、図1に示すように、チューブ容器2の開口端に取り付けられる基部3と、基部3にヒンジ4を介して回動可能に連結される蓋5とを備えている。
【0019】
図2は、ヒンジキャップ1の内部構造図である。ヒンジキャップ1は、ヒンジ4を介して蓋5を回動させることにより、吐出口6を開閉する。蓋5を閉じると、蓋5に設けられている突起7が吐出口6に嵌合し、吐出口6が塞がる。また蓋5には、蓋5の開閉状態を保持するリンク機構8が設けられている。ヒンジキャップ1は、チューブ容器2の開口端に設けられたネジと螺合するネジ部12の内側に吐出口6が設けられている。この吐出口6は、蓋5に設けられた突起7が嵌合しやすいように、吐出口6の上側(出口側)に向かうにつれて内径が広がっており、蓋5を閉じると突起7が吐出口6の中へ案内されるようになっている。
【0020】
リンク機構8は、ヒンジキャップ1を構成するプラスチック材の弾性により、蓋5が開閉されると、上側リンク9と下側リンク10とを締結する締結部11が変形して弾性力を発生し、蓋5を開方向や閉方向へ付勢する。蓋5が開方向あるいは閉方向へ付勢されることにより、蓋5の遊動が防止されるので、チューブ容器2の内容物を吐出させやすい。
【0021】
図2の符号Aで囲った吐出口6と突起7との嵌合部分の拡大図を、図3に示す。吐出口6は上側へ向かうにつれて内径が広がっているため、蓋5を閉じる過程で突起7が吐出口6の周囲に接触して干渉することなく、突起7が吐出口6の中へ案内される。ここで、突起7の先端に形成された係止部13は、蓋5が閉止状態において、係止部13と被係止部14との間に遊びSが形成されるようになっている。この遊びSは、ヒンジキャップ1を製造する際の成形上の理由によって形成される。すなわち、成形用の金型の設計上はこの遊びSを確保しておかないと、量産品の中に蓋5を閉止状態にしても係止部13が被係止部14と係合しないものが生ずる虞がある。遊びSは、このような不良品の発生を防ぐため、設計者の本意ではないものの不可避的に形成される。
【0022】
しかし、このような遊びSが形成されていたとしても、ヒンジキャップ1は、次のように構成されているため、チューブ容器2の輸送中に蓋5が誤って開くことがない。図4は、ヒンジキャップ1の動作説明図である。ヒンジキャップ1は、ヒンジ4を介して蓋5を回動するため、ヒンジ4に隣接する位置で基部3と蓋5とが締結されていれば、蓋5が回動して誤って開くことが無い。そこで、このヒンジキャップ1は、ヒンジ4に隣接する位置に溶着部16が設けられている。
【0023】
図4の符号Bで囲ったヒンジ4の隣接部位の拡大図を、図5に示す。図5(A)は、蓋5を開ける前(開封する前)の状態を示している。溶着部16は、図5(A)に示すように、ヒンジ4の隣接部位で基部3と蓋5とを締結している。溶着部16は、蓋5を閉じた状態で高温の押型を押し当て、或いはレーザー光で焼き付けを行なう等して形成する。
【0024】
図5(B)は、蓋5をやや開いた時のヒンジ4の拡大図である。蓋5は、誤って開くことが無いよう、溶着部16によって基部3に溶着されている。このため、蓋5が外部からの衝撃等により少々開かれようとしても、ヒンジ4やその周辺、或いは溶着部16の変形などにより、溶着部16により基部3と蓋5との締結状態が保たれて、蓋5の開動作が阻
止される。
【0025】
図5(C)は、蓋5を開いた時のヒンジ4の拡大図である。溶着部16は、蓋5に対するユーザの開操作によって切り離し可能な程度の溶着力で、基部3と蓋5とを溶着している。よって、ユーザ操作により蓋5が開かれると、溶着部16が切れて基部3と蓋5との締結状態が解除される。溶着部16は、一旦切れると、基部3と蓋5とを再び締結することは無いものの、ユーザが使用を開始する前の輸送段階においては、基部3と蓋5とを締結して蓋5が誤って開くことを十分に防ぐことができる。また、溶着部16の切れ端が少々毛羽立つものの、ヒンジ4付近であれば通常の使用でユーザの手に触れることは無いため、ユーザに不快感や違和感を与えることも無い。
【0026】
溶着部16の位置や大きさについては、蓋5の大きさや必要な締結力等に応じて適宜決定する。但し、溶着部16は、溶着部16の切れ端が通常の使用でユーザの手に触れないよう、ヒンジ4から離れすぎない位置であることが好ましい。溶着部16は、例えば、図6に示すようにヒンジ4から少々離れた位置であってもよいし、2つ以上設けられていてもよいし、或いは、リンク機構8の動きを阻害する位置に設けられていてもよい。リンク機構8を阻害する位置とは、例えば、上側リンク9と蓋5とを互いに溶着するような位置、或いは、下側リンク10と基部3とを互いに溶着するような位置である。何れにしても、溶着部16は、蓋5を閉じた状態で外部から視認することができ、且つ蓋5の開閉操作においてユーザが触れる必要の無い部位に設けられていることが好ましいが、少なくとも、蓋5を閉じた状態において基部3と蓋5とが当接する部位のうち、ヒンジ4に隣接する部位に設ける必要がある。
【0027】
以上のように構成されるヒンジキャップ1であれば、次のような効果がある。すなわち、本実施形態に係るヒンジキャップ1であれば、係止部13と被係止部14とによって構成される係止機構15に遊びSがあっても、基部3と蓋5とが溶着部16によって相互に締結されているため、蓋5の基部3に対する遊動が防止される。このため、チューブ容器2の輸送中にコンテナの中などで蓋5が誤って開き、チューブ容器2の内容物が飛び出したりする虞が無い。よって、従来は必要とされていた、蓋5が誤って開くのを防止するためのシール(いわゆるバージンシール)を貼り付ける必要が無くなり、商品の製造コストを大幅に削減することができる。
【0028】
なお、上記実施形態では、係止機構15を設けていたが、溶着部16による誤開防止機能は、係止機構15が無くても失われるものではない。また、上記実施形態では、細い突起7が吐出口6に嵌合していたが、突起7や吐出口6の径が大きくてもよい。
【0029】
また、上述した第一実施形態に係るヒンジキャップ1は、ヒンジ4に隣接する位置で基部3と蓋5とが溶着部16によって締結されていた。しかし、本発明に係るヒンジキャップは、このような態様に限定されるものではなく、例えば、基部と蓋部とを以下のように溶着してもよい。
【0030】
図7は、第二実施形態に係るヒンジキャップ21の内部構造図である。ヒンジキャップ21は、第一実施形態に係るヒンジキャップ1と同様、図7に示すように、チューブ容器の開口端に取り付けられる基部23と、基部23にヒンジ24を介して回動可能に連結される蓋25とを備えている。このヒンジキャップ21は、基部23の上面の外縁を形成する円周部26と蓋25の底部の外縁を形成する円周部27とを溶着し、溶着部28を構成している。
【0031】
円周部26は、図8に示すように、ヒンジキャップ21の上側から見ると、基部23の上面の外縁や蓋25の底部の外縁を一周するように構成されている。これは、蓋25を閉
じると、周状の外縁部分で蓋25が基部23に当接するためである。蓋25を閉じた状態で、図7に示すように、超音波溶着を行なう装置の超音波ホーン29を蓋25の上面に押し当てているため、超音波ホーン29の加圧力が基部23の円周部26と蓋25の円周部27との当接部分に集中し、溶着部28が円周状に構成されることになる。
【0032】
ここで、超音波溶着は、熱可塑性樹脂同士を微細な超音波振動と加圧力とによって瞬時に溶着する技術である。すなわち、超音波溶着は、熱可塑性樹脂に機械的な振動エネルギーを与えると同時に加圧することにより、2つの熱可塑性樹脂の接合面に強力な摩擦熱を発生させ、樹脂を溶融して結合させるものである。よって、超音波溶着が適用可能なプラスチックは熱を加えると熔融する熱可塑性樹脂に限られ、ウレタンやエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂には適用することができない。そこで、本実施形態に係るヒンジキャップ21は、基部23と蓋25が熱可塑性樹脂で構成されている。
【0033】
超音波溶着の際は、溶着部28の溶着力が、係止部30が被係止部31に嵌合している時の嵌合力、換言すると、蓋25を日常的に開閉する際に必要な力(以下、通常の嵌合力という)よりも大きくなるように、超音波溶着する際の加圧力や溶着時間を適宜調整することが好ましい。溶着部28の溶着力が通常の嵌合力よりも大きければ、製品を購入したユーザが蓋25を初めて開く際に違和感を感じ取ることができるため、溶着部28がバージンシールと同様の機能を奏することができる。
【0034】
また、超音波溶着の際は、溶着部28の溶着力が、製造過程や輸送過程において蓋25に加わる可能性のある力よりも大きくなるように、超音波溶着する際の加圧力や溶着時間を適宜調整することが好ましい。溶着部28の溶着力が、製造過程や輸送過程において蓋25に加わる可能性のある力よりも大きければ、製品を購入したユーザが使用を開始する前に溶着部28の溶着が外れ、蓋25が誤って開いてしまうことが無い。
【0035】
また、超音波溶着の際は、溶着部28の溶着力が、ユーザが工具類を用いることなく開くことが可能な力の範囲内となるように、超音波溶着する際の加圧力や溶着時間を適宜調整することが好ましい。
【0036】
そこで、このような溶着力の具体例としては、ヒンジキャップ21の形状や大きさにもよるが、例えば、蓋25を開く際に必要な力が概ね20〜30N程度となるような溶着力としておく。通常は5〜15N程度であれば無理なく開閉できるため、蓋25を開く際に必要な力が20〜30N程度となるような溶着力としておけば、製品を購入したユーザ(特に女性)が使用を開始する際に蓋25を無理なく開けることが可能であり、ユーザが蓋25を初めて開く際に違和感を感じ取ることができるので溶着部28をバージンシールとして機能させることができ、更に、製造過程や輸送過程において蓋25が誤って開くこともない。そして、一旦蓋25を開いてしまえば、溶着部28の溶着が外れるので、通常の開閉操作においては特別な力を加えなくても蓋25を容易に開閉することができる。
【0037】
本実施形態について、2種類のチューブ容器を用いて実験を行なった。2種類のチューブ容器とは、直径が50mmでチューブ長が155mmと比較的大型なスカルプ&コンディショナー用のチューブ容器(以下、第1のチューブ容器という)と、直径が40mmでチューブ長が150mmと比較的小型な洗顔用のチューブ容器(以下、第2のチューブ容器という)である。これらのチューブ容器に用いるヒンジキャップについて、3段階の強度で超音波溶着(強、中、弱)を行なった。超音波溶着の強度の段階調整は、例えば、溶着強度が強くなるに従って、超音波振動を与える時間が長くなるように、超音波溶着を行なう時間を段階的に設定して行なった。各溶着強度における溶着時間の設定値は、輸送中に蓋が誤って開くことなく、また、通常の操作で開くことができる程度の溶着力が得られると推定される範囲内で適当に決定したものであり、ヒンジキャップを構成する材質や溶
着装置の仕様等に応じて適宜決定したものである。第1のチューブ容器に関する、蓋25を開く際に必要な力の計測結果を以下の表1に示す。
【表1】
【0038】
表1に示すように、超音波溶着を「強」で行なった場合、蓋25を初めて開く際に必要な力の平均値は18.25Nとなり、通常時(2回目以降)に必要な力の平均値は12.22Nとなった。また、超音波溶着を「中」で行なった場合、蓋25を初めて開く際に必要な力の平均値は15.69Nとなり、通常時(2回目以降)に必要な力の平均値は12.21Nとなった。また、超音波溶着を「弱」で行なった場合、蓋25を初めて開く際に必要な力の平均値は14.06Nとなり、通常時(2回目以降)に必要な力の平均値は13.46Nとなった。通常時(2回目以降)に必要な力の平均値が、超音波溶着を「弱」で行なった場合と超音波溶着を「強」あるいは「中」で行なった場合とで大きく相違しているのは、ヒンジキャップの成型精度によるためと考えられる。
【0039】
また、第2のチューブ容器に関する計測結果を以下の表2に示す。
【表2】
【0040】
表2に示すように、超音波溶着を「強」で行なった場合、蓋25を初めて開く際に必要な力の平均値は39.80Nとなり、通常時(2回目以降)に必要な力の平均値は4.65Nとなった。また、超音波溶着を「中」で行なった場合、蓋25を初めて開く際に必要な力の平均値は40.03Nとなり、通常時(2回目以降)に必要な力の平均値は6.33Nとなった。また、超音波溶着を「弱」で行なった場合、蓋25を初めて開く際に必要な力の平均値は21.20Nとなり、通常時(2回目以降)に必要な力の平均値は6.14Nとなった。
【0041】
各チューブ容器に関する計測結果より、超音波溶着を行う際にはチューブ容器の形状や大きさに見合った加圧力や溶着時間を選定する必要があることが判る。
【0042】
図9は、第三実施形態に係るヒンジキャップ41の斜視図である。ヒンジキャップ41は、第一実施形態に係るヒンジキャップ1や第二実施形態に係るヒンジキャップ21と同様、図9に示すように、チューブ容器の開口端に取り付けられる基部43と、基部43にヒンジ44を介して回動可能に連結される蓋45とを備えている。このヒンジキャップ41は、基部43の上面の外縁を形成する円周部のうちヒンジ44と反対の側にある2箇所の部位46L,46Rと、蓋45の底部の外縁を形成する円周部のうちヒンジ44と反対の側にある2箇所の部位47L,47Rとを溶着することにより、溶着部を構成する。
【0043】
溶着部を構成する部位46L,46Rは、図10に示すように、ヒンジキャップ41の上側から見ると、基部43の中心点から円弧を描くようにそれぞれ構成されており、部位46Lの端から部位46Rの端までの最大角度が約80°程度になるようにしている。このような部位46L,46Rによって溶着部を構成するべく、ヒンジキャップ41を形成する段階で、当該溶着部を構成する部位46L,46Rを予め微妙に盛り上げて、図11に示すような微小の膨らみ部59L,59Rを設けておく。そして、第二実施形態と同様、超音波溶着を行なう。膨らみ部59L,59Rを設けておくことにより、蓋45を加圧しながら超音波振動を加えると、超音波振動が膨らみ部59L,59Rに集中して当該部分が溶解し、相手材に溶着する。膨らみ部59L,59Rは、基部43側に設けてもよいし、或いは蓋44側に設けてもよい。
【0044】
また、このような微小の膨らみ部59L,59Rによって溶着部を形成するには、ヒンジキャップ41を構成する基部43や蓋45をある程度高精度に形成しておき、超音波溶着の際に基部43および蓋44が膨らみ部59L,59R以外で接触しないようにする必要がある。そこで、溶着部の溶着力にばらつきが生じるのを防ぐため、上記ヒンジキャップ41は、次のように変形してもよい。
【0045】
本変形例に係るヒンジキャップの、第三実施形態に係るヒンジキャップ41でいう部位46L,46Rに相当する部分を拡大した図を図12に示す。本変形例に係るヒンジキャップは、図12に示すように、基部43’にダボ部が嵌るダボ受け部61L,61Rが形成されている。そして、図13に示すように蓋45’を閉じると、図13に示すように、ダボ部60L,60Rがダボ受け部61L,61Rに嵌る。そして、蓋45’を閉じた状態で蓋45’を加圧しながら超音波振動を加えると、図14に示すように、ダボ部60L,60Rの先端部分がダボ受け部61L,61Rの底部に溶着する。ダボ部60L,60Rの先端部分が溶着するため、溶着面積がヒンジキャップの成型精度等によってばらつくことが無い。よって、ユーザがチューブ容器の内容物を最初に取り出す際に蓋が開きにくかったり、或いは、輸送中に蓋部が誤って開いたりする製品の発生を抑制できる。
【0046】
このように構成される各実施形態や変形例のヒンジキャップであれば、輸送中にコンテナの中などで蓋が誤って開き、チューブ容器の内容物が飛び出したりする虞が無い。特に
、第二実施形態や第三実施形態、或いは第三実施形態の変形例に係るヒンジキャップであれば、未開封状態で溶着部が見えないため、容器の審美性を損なうことも無い。また、いわゆるバージンシールの貼り付けが不要となるので部品点数が減り、商品の製造コストを削減することができる。なお、第一実施形態に係るヒンジキャップの溶着部16を、第二,第三実施形態や変形例に係るヒンジキャップに適用してもよい。
【0047】
なお、上記ヒンジキャップは、チューブ容器2に適用していたが、例えば、ローションのような液体を収容する図15のようなボトル状の容器に適用することも可能である。液体を収容したボトル状の容器に適用した場合であっても、輸送中にコンテナの中などで蓋が誤って開き、ボトル状の容器の内容物が飛び出したりする虞が無い。
【符号の説明】
【0048】
1,21,41・・ヒンジキャップ;2・・チューブ容器;3,23,43,43’・・基部;4,24,44・・ヒンジ;5,25,45,45’・・蓋;6・・吐出口;7・・突起;8・・リンク機構;9・・上側リンク;10・・下側リンク;11・・締結部;12・・ネジ部;13,30・・係止部;14,31・・被係止部;15・・係止機構;16,28・・溶着部;26,27・・円周部;29・・超音波ホーン;46L,46R,47L,47R・・部位;59L,59R・・膨らみ部;60L,60R・・ダボ部;61L,61R・・ダボ受け部
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器用のヒンジキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料を収納するものには、例えば、特許文献1に示すような容器がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−168825号公報
【特許文献2】特開平07−315404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
容器用のヒンジキャップは、開閉がしやすいものの、衝撃等によって誤開閉することがある。そこで、輸送する際は輸送中に加わる振動や衝撃等によってキャップが誤開閉しないよう、キャップを閉状態で固定する係止機構を強固にすることも考えられる。しかし、係止機構を強固なものにすると、日常の開閉操作が煩わしくなり一般的な使用に耐えないし、開閉に要する力が加工精度によって変動するので、係止機構の固定力にバラつきが生ずる。
【0005】
その他の方策として、シール(いわゆるバージンシール)などを貼り付けて輸送時のみキャップを固定することも考えられるが、一般消費者がこれを剥がす必要があり、また、製造時の工数が無視できない。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、製品の輸送中に蓋が誤って開かないヒンジキャップを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、蓋部を閉じた状態において基部に当接する蓋部の部位の少なくとも一部を基部に溶着した。
【0008】
詳細には、容器に取り付ける容器用のヒンジキャップであって、前記容器の開口端に取り付ける基部と、前記基部にヒンジを介して回動可能に連結されて、前記容器の内容物を吐出する該基部の吐出口を開閉可能な蓋部と、を備え、前記蓋部は、該蓋部を閉じた状態において前記基部に当接する部位の少なくとも一部が、該蓋部に対するユーザの開操作によって切り離し可能な程度の溶着力で該基部に溶着されて、前記吐出口を封止している。
【0009】
上記ヒンジキャップであれば、蓋部を閉じた状態において基部に当接する蓋部の部位の少なくとも一部が溶着されているので、輸送中の容器に振動や衝撃が加わっても蓋部が誤って開かない。また、基部に溶着された蓋部の溶着力は、蓋部に対するユーザの開操作によって切り離し可能な程度の力である。このため、ユーザは、容器の内容物を最初に取り出す際、蓋部が基部に溶着されていることを意識することなく、通常の開閉操作で蓋部を開くことができる。
【0010】
また、前記蓋部は、該蓋部を閉じた状態において前記基部に当接する部位のうち、前記ヒンジに隣接する所定の部位が該基部に溶着されて、前記吐出口を封止しているものであってもよい。このようなヒンジキャップであれば、ヒンジに隣接する特定の部位で、蓋部
が基部に溶着されているので、輸送中の容器に振動や衝撃が加わっても蓋部が誤って開かない。このため、ユーザは、容器の内容物を最初に取り出す際、蓋部が基部に溶着されていることを意識することなく、通常の開閉操作で蓋部を開くことができる。
【0011】
なお、前記ヒンジキャップは、一体成形品であり、前記蓋部は、該蓋部を閉じた状態において前記所定の部位を溶かすことにより、前記基部に溶着されて、前記吐出口を封止していてもよい。ヒンジキャップを一体成形する場合は、不可避的に蓋部を開いた状態で成形することになるが、蓋部を閉じた状態で前記所定の部位を溶かせば、蓋部を基部に溶着することができる。
【0012】
ここで、前記所定の部位とは、例えば、前記蓋部を閉じた状態で外部から視認することができ、且つ該蓋部の開閉操作においてユーザが触れる必要の無い部位である。このような部位で蓋部が基部に溶着されていることにより、蓋部に対するユーザの開操作によって溶着部分が切り離されても切れ端がユーザに触れにくく、ユーザに不快感を与えることが無い。
【0013】
また、前記蓋部は、該蓋部を閉じて前記基部へ押し当てた状態において該蓋部へ加えた超音波振動によって、該蓋部を閉じた状態において前記基部に当接する部位の少なくとも一部が該基部へ溶着されて、前記吐出口を封止するものであってもよい。このようなヒンジキャップであれば、未開封状態で溶着部が見えないため、容器の審美性を損なうことなく、輸送中の容器に振動や衝撃が加わっても蓋部が誤って開くことを防止できる。そして、ユーザは、容器の内容物を最初に取り出す際、蓋部が基部に溶着されていることを意識することなく、通常の開閉操作で蓋部を開くことができる。
【0014】
また、前記蓋部は、該蓋部に設けた突起であって、該蓋部を閉じた状態において先端が前記基部に当接する突起の先端、或いは、該蓋部を閉じた状態で該基部に設けた突起に当接する該蓋部の特定の部位が、該蓋部に溶着されて、前記吐出口を封止するものであってもよい。このようなヒンジキャップであれば、ヒンジキャップの成型精度が低くても、溶着力にばらつきが生じにくいため、ユーザが容器の内容物を最初に取り出す際に蓋が開きにくかったり、或いは、輸送中に蓋部が誤って開くことが無い。
【発明の効果】
【0015】
製品の輸送中に蓋が誤って開くことが無くなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ヒンジキャップを取り付けたチューブ容器の側面図である。
【図2】第一実施形態に係るヒンジキャップの内部構造図である。
【図3】吐出口と突起との嵌合部分の拡大図である。
【図4】ヒンジキャップの動作説明図である。
【図5】溶着部付近の拡大図である。
【図6】変形例に係る溶着部の拡大図である。
【図7】第二実施形態に係るヒンジキャップの内部構造図である。
【図8】第二実施形態に係るヒンジキャップを上から見た図である。
【図9】第三実施形態に係るヒンジキャップの内部構造図である。
【図10】第三実施形態に係るヒンジキャップを上から見た図である。
【図11】第三実施形態に係るヒンジキャップの膨らみ部を拡大した図である。
【図12】変形例に係るヒンジキャップの溶着部分を拡大した図である。
【図13】ダボ部がダボ受け部に嵌る状態を示した図である。
【図14】ダボ部の先端部分がダボ受け部の底部に溶着する状態を示した図である。
【図15】ヒンジキャップを取り付けたボトル状の容器の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本願発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本願発明の一態様を示すものであり、本願発明の技術的範囲を以下の実施形態に限定するものではない。
【0018】
図1は、第一実施形態に係るチューブ容器用のヒンジキャップ1を取り付けたチューブ容器2の側面図である。ヒンジキャップ1は、図1に示すように、チューブ容器2の開口端に取り付けられる基部3と、基部3にヒンジ4を介して回動可能に連結される蓋5とを備えている。
【0019】
図2は、ヒンジキャップ1の内部構造図である。ヒンジキャップ1は、ヒンジ4を介して蓋5を回動させることにより、吐出口6を開閉する。蓋5を閉じると、蓋5に設けられている突起7が吐出口6に嵌合し、吐出口6が塞がる。また蓋5には、蓋5の開閉状態を保持するリンク機構8が設けられている。ヒンジキャップ1は、チューブ容器2の開口端に設けられたネジと螺合するネジ部12の内側に吐出口6が設けられている。この吐出口6は、蓋5に設けられた突起7が嵌合しやすいように、吐出口6の上側(出口側)に向かうにつれて内径が広がっており、蓋5を閉じると突起7が吐出口6の中へ案内されるようになっている。
【0020】
リンク機構8は、ヒンジキャップ1を構成するプラスチック材の弾性により、蓋5が開閉されると、上側リンク9と下側リンク10とを締結する締結部11が変形して弾性力を発生し、蓋5を開方向や閉方向へ付勢する。蓋5が開方向あるいは閉方向へ付勢されることにより、蓋5の遊動が防止されるので、チューブ容器2の内容物を吐出させやすい。
【0021】
図2の符号Aで囲った吐出口6と突起7との嵌合部分の拡大図を、図3に示す。吐出口6は上側へ向かうにつれて内径が広がっているため、蓋5を閉じる過程で突起7が吐出口6の周囲に接触して干渉することなく、突起7が吐出口6の中へ案内される。ここで、突起7の先端に形成された係止部13は、蓋5が閉止状態において、係止部13と被係止部14との間に遊びSが形成されるようになっている。この遊びSは、ヒンジキャップ1を製造する際の成形上の理由によって形成される。すなわち、成形用の金型の設計上はこの遊びSを確保しておかないと、量産品の中に蓋5を閉止状態にしても係止部13が被係止部14と係合しないものが生ずる虞がある。遊びSは、このような不良品の発生を防ぐため、設計者の本意ではないものの不可避的に形成される。
【0022】
しかし、このような遊びSが形成されていたとしても、ヒンジキャップ1は、次のように構成されているため、チューブ容器2の輸送中に蓋5が誤って開くことがない。図4は、ヒンジキャップ1の動作説明図である。ヒンジキャップ1は、ヒンジ4を介して蓋5を回動するため、ヒンジ4に隣接する位置で基部3と蓋5とが締結されていれば、蓋5が回動して誤って開くことが無い。そこで、このヒンジキャップ1は、ヒンジ4に隣接する位置に溶着部16が設けられている。
【0023】
図4の符号Bで囲ったヒンジ4の隣接部位の拡大図を、図5に示す。図5(A)は、蓋5を開ける前(開封する前)の状態を示している。溶着部16は、図5(A)に示すように、ヒンジ4の隣接部位で基部3と蓋5とを締結している。溶着部16は、蓋5を閉じた状態で高温の押型を押し当て、或いはレーザー光で焼き付けを行なう等して形成する。
【0024】
図5(B)は、蓋5をやや開いた時のヒンジ4の拡大図である。蓋5は、誤って開くことが無いよう、溶着部16によって基部3に溶着されている。このため、蓋5が外部からの衝撃等により少々開かれようとしても、ヒンジ4やその周辺、或いは溶着部16の変形などにより、溶着部16により基部3と蓋5との締結状態が保たれて、蓋5の開動作が阻
止される。
【0025】
図5(C)は、蓋5を開いた時のヒンジ4の拡大図である。溶着部16は、蓋5に対するユーザの開操作によって切り離し可能な程度の溶着力で、基部3と蓋5とを溶着している。よって、ユーザ操作により蓋5が開かれると、溶着部16が切れて基部3と蓋5との締結状態が解除される。溶着部16は、一旦切れると、基部3と蓋5とを再び締結することは無いものの、ユーザが使用を開始する前の輸送段階においては、基部3と蓋5とを締結して蓋5が誤って開くことを十分に防ぐことができる。また、溶着部16の切れ端が少々毛羽立つものの、ヒンジ4付近であれば通常の使用でユーザの手に触れることは無いため、ユーザに不快感や違和感を与えることも無い。
【0026】
溶着部16の位置や大きさについては、蓋5の大きさや必要な締結力等に応じて適宜決定する。但し、溶着部16は、溶着部16の切れ端が通常の使用でユーザの手に触れないよう、ヒンジ4から離れすぎない位置であることが好ましい。溶着部16は、例えば、図6に示すようにヒンジ4から少々離れた位置であってもよいし、2つ以上設けられていてもよいし、或いは、リンク機構8の動きを阻害する位置に設けられていてもよい。リンク機構8を阻害する位置とは、例えば、上側リンク9と蓋5とを互いに溶着するような位置、或いは、下側リンク10と基部3とを互いに溶着するような位置である。何れにしても、溶着部16は、蓋5を閉じた状態で外部から視認することができ、且つ蓋5の開閉操作においてユーザが触れる必要の無い部位に設けられていることが好ましいが、少なくとも、蓋5を閉じた状態において基部3と蓋5とが当接する部位のうち、ヒンジ4に隣接する部位に設ける必要がある。
【0027】
以上のように構成されるヒンジキャップ1であれば、次のような効果がある。すなわち、本実施形態に係るヒンジキャップ1であれば、係止部13と被係止部14とによって構成される係止機構15に遊びSがあっても、基部3と蓋5とが溶着部16によって相互に締結されているため、蓋5の基部3に対する遊動が防止される。このため、チューブ容器2の輸送中にコンテナの中などで蓋5が誤って開き、チューブ容器2の内容物が飛び出したりする虞が無い。よって、従来は必要とされていた、蓋5が誤って開くのを防止するためのシール(いわゆるバージンシール)を貼り付ける必要が無くなり、商品の製造コストを大幅に削減することができる。
【0028】
なお、上記実施形態では、係止機構15を設けていたが、溶着部16による誤開防止機能は、係止機構15が無くても失われるものではない。また、上記実施形態では、細い突起7が吐出口6に嵌合していたが、突起7や吐出口6の径が大きくてもよい。
【0029】
また、上述した第一実施形態に係るヒンジキャップ1は、ヒンジ4に隣接する位置で基部3と蓋5とが溶着部16によって締結されていた。しかし、本発明に係るヒンジキャップは、このような態様に限定されるものではなく、例えば、基部と蓋部とを以下のように溶着してもよい。
【0030】
図7は、第二実施形態に係るヒンジキャップ21の内部構造図である。ヒンジキャップ21は、第一実施形態に係るヒンジキャップ1と同様、図7に示すように、チューブ容器の開口端に取り付けられる基部23と、基部23にヒンジ24を介して回動可能に連結される蓋25とを備えている。このヒンジキャップ21は、基部23の上面の外縁を形成する円周部26と蓋25の底部の外縁を形成する円周部27とを溶着し、溶着部28を構成している。
【0031】
円周部26は、図8に示すように、ヒンジキャップ21の上側から見ると、基部23の上面の外縁や蓋25の底部の外縁を一周するように構成されている。これは、蓋25を閉
じると、周状の外縁部分で蓋25が基部23に当接するためである。蓋25を閉じた状態で、図7に示すように、超音波溶着を行なう装置の超音波ホーン29を蓋25の上面に押し当てているため、超音波ホーン29の加圧力が基部23の円周部26と蓋25の円周部27との当接部分に集中し、溶着部28が円周状に構成されることになる。
【0032】
ここで、超音波溶着は、熱可塑性樹脂同士を微細な超音波振動と加圧力とによって瞬時に溶着する技術である。すなわち、超音波溶着は、熱可塑性樹脂に機械的な振動エネルギーを与えると同時に加圧することにより、2つの熱可塑性樹脂の接合面に強力な摩擦熱を発生させ、樹脂を溶融して結合させるものである。よって、超音波溶着が適用可能なプラスチックは熱を加えると熔融する熱可塑性樹脂に限られ、ウレタンやエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂には適用することができない。そこで、本実施形態に係るヒンジキャップ21は、基部23と蓋25が熱可塑性樹脂で構成されている。
【0033】
超音波溶着の際は、溶着部28の溶着力が、係止部30が被係止部31に嵌合している時の嵌合力、換言すると、蓋25を日常的に開閉する際に必要な力(以下、通常の嵌合力という)よりも大きくなるように、超音波溶着する際の加圧力や溶着時間を適宜調整することが好ましい。溶着部28の溶着力が通常の嵌合力よりも大きければ、製品を購入したユーザが蓋25を初めて開く際に違和感を感じ取ることができるため、溶着部28がバージンシールと同様の機能を奏することができる。
【0034】
また、超音波溶着の際は、溶着部28の溶着力が、製造過程や輸送過程において蓋25に加わる可能性のある力よりも大きくなるように、超音波溶着する際の加圧力や溶着時間を適宜調整することが好ましい。溶着部28の溶着力が、製造過程や輸送過程において蓋25に加わる可能性のある力よりも大きければ、製品を購入したユーザが使用を開始する前に溶着部28の溶着が外れ、蓋25が誤って開いてしまうことが無い。
【0035】
また、超音波溶着の際は、溶着部28の溶着力が、ユーザが工具類を用いることなく開くことが可能な力の範囲内となるように、超音波溶着する際の加圧力や溶着時間を適宜調整することが好ましい。
【0036】
そこで、このような溶着力の具体例としては、ヒンジキャップ21の形状や大きさにもよるが、例えば、蓋25を開く際に必要な力が概ね20〜30N程度となるような溶着力としておく。通常は5〜15N程度であれば無理なく開閉できるため、蓋25を開く際に必要な力が20〜30N程度となるような溶着力としておけば、製品を購入したユーザ(特に女性)が使用を開始する際に蓋25を無理なく開けることが可能であり、ユーザが蓋25を初めて開く際に違和感を感じ取ることができるので溶着部28をバージンシールとして機能させることができ、更に、製造過程や輸送過程において蓋25が誤って開くこともない。そして、一旦蓋25を開いてしまえば、溶着部28の溶着が外れるので、通常の開閉操作においては特別な力を加えなくても蓋25を容易に開閉することができる。
【0037】
本実施形態について、2種類のチューブ容器を用いて実験を行なった。2種類のチューブ容器とは、直径が50mmでチューブ長が155mmと比較的大型なスカルプ&コンディショナー用のチューブ容器(以下、第1のチューブ容器という)と、直径が40mmでチューブ長が150mmと比較的小型な洗顔用のチューブ容器(以下、第2のチューブ容器という)である。これらのチューブ容器に用いるヒンジキャップについて、3段階の強度で超音波溶着(強、中、弱)を行なった。超音波溶着の強度の段階調整は、例えば、溶着強度が強くなるに従って、超音波振動を与える時間が長くなるように、超音波溶着を行なう時間を段階的に設定して行なった。各溶着強度における溶着時間の設定値は、輸送中に蓋が誤って開くことなく、また、通常の操作で開くことができる程度の溶着力が得られると推定される範囲内で適当に決定したものであり、ヒンジキャップを構成する材質や溶
着装置の仕様等に応じて適宜決定したものである。第1のチューブ容器に関する、蓋25を開く際に必要な力の計測結果を以下の表1に示す。
【表1】
【0038】
表1に示すように、超音波溶着を「強」で行なった場合、蓋25を初めて開く際に必要な力の平均値は18.25Nとなり、通常時(2回目以降)に必要な力の平均値は12.22Nとなった。また、超音波溶着を「中」で行なった場合、蓋25を初めて開く際に必要な力の平均値は15.69Nとなり、通常時(2回目以降)に必要な力の平均値は12.21Nとなった。また、超音波溶着を「弱」で行なった場合、蓋25を初めて開く際に必要な力の平均値は14.06Nとなり、通常時(2回目以降)に必要な力の平均値は13.46Nとなった。通常時(2回目以降)に必要な力の平均値が、超音波溶着を「弱」で行なった場合と超音波溶着を「強」あるいは「中」で行なった場合とで大きく相違しているのは、ヒンジキャップの成型精度によるためと考えられる。
【0039】
また、第2のチューブ容器に関する計測結果を以下の表2に示す。
【表2】
【0040】
表2に示すように、超音波溶着を「強」で行なった場合、蓋25を初めて開く際に必要な力の平均値は39.80Nとなり、通常時(2回目以降)に必要な力の平均値は4.65Nとなった。また、超音波溶着を「中」で行なった場合、蓋25を初めて開く際に必要な力の平均値は40.03Nとなり、通常時(2回目以降)に必要な力の平均値は6.33Nとなった。また、超音波溶着を「弱」で行なった場合、蓋25を初めて開く際に必要な力の平均値は21.20Nとなり、通常時(2回目以降)に必要な力の平均値は6.14Nとなった。
【0041】
各チューブ容器に関する計測結果より、超音波溶着を行う際にはチューブ容器の形状や大きさに見合った加圧力や溶着時間を選定する必要があることが判る。
【0042】
図9は、第三実施形態に係るヒンジキャップ41の斜視図である。ヒンジキャップ41は、第一実施形態に係るヒンジキャップ1や第二実施形態に係るヒンジキャップ21と同様、図9に示すように、チューブ容器の開口端に取り付けられる基部43と、基部43にヒンジ44を介して回動可能に連結される蓋45とを備えている。このヒンジキャップ41は、基部43の上面の外縁を形成する円周部のうちヒンジ44と反対の側にある2箇所の部位46L,46Rと、蓋45の底部の外縁を形成する円周部のうちヒンジ44と反対の側にある2箇所の部位47L,47Rとを溶着することにより、溶着部を構成する。
【0043】
溶着部を構成する部位46L,46Rは、図10に示すように、ヒンジキャップ41の上側から見ると、基部43の中心点から円弧を描くようにそれぞれ構成されており、部位46Lの端から部位46Rの端までの最大角度が約80°程度になるようにしている。このような部位46L,46Rによって溶着部を構成するべく、ヒンジキャップ41を形成する段階で、当該溶着部を構成する部位46L,46Rを予め微妙に盛り上げて、図11に示すような微小の膨らみ部59L,59Rを設けておく。そして、第二実施形態と同様、超音波溶着を行なう。膨らみ部59L,59Rを設けておくことにより、蓋45を加圧しながら超音波振動を加えると、超音波振動が膨らみ部59L,59Rに集中して当該部分が溶解し、相手材に溶着する。膨らみ部59L,59Rは、基部43側に設けてもよいし、或いは蓋44側に設けてもよい。
【0044】
また、このような微小の膨らみ部59L,59Rによって溶着部を形成するには、ヒンジキャップ41を構成する基部43や蓋45をある程度高精度に形成しておき、超音波溶着の際に基部43および蓋44が膨らみ部59L,59R以外で接触しないようにする必要がある。そこで、溶着部の溶着力にばらつきが生じるのを防ぐため、上記ヒンジキャップ41は、次のように変形してもよい。
【0045】
本変形例に係るヒンジキャップの、第三実施形態に係るヒンジキャップ41でいう部位46L,46Rに相当する部分を拡大した図を図12に示す。本変形例に係るヒンジキャップは、図12に示すように、基部43’にダボ部が嵌るダボ受け部61L,61Rが形成されている。そして、図13に示すように蓋45’を閉じると、図13に示すように、ダボ部60L,60Rがダボ受け部61L,61Rに嵌る。そして、蓋45’を閉じた状態で蓋45’を加圧しながら超音波振動を加えると、図14に示すように、ダボ部60L,60Rの先端部分がダボ受け部61L,61Rの底部に溶着する。ダボ部60L,60Rの先端部分が溶着するため、溶着面積がヒンジキャップの成型精度等によってばらつくことが無い。よって、ユーザがチューブ容器の内容物を最初に取り出す際に蓋が開きにくかったり、或いは、輸送中に蓋部が誤って開いたりする製品の発生を抑制できる。
【0046】
このように構成される各実施形態や変形例のヒンジキャップであれば、輸送中にコンテナの中などで蓋が誤って開き、チューブ容器の内容物が飛び出したりする虞が無い。特に
、第二実施形態や第三実施形態、或いは第三実施形態の変形例に係るヒンジキャップであれば、未開封状態で溶着部が見えないため、容器の審美性を損なうことも無い。また、いわゆるバージンシールの貼り付けが不要となるので部品点数が減り、商品の製造コストを削減することができる。なお、第一実施形態に係るヒンジキャップの溶着部16を、第二,第三実施形態や変形例に係るヒンジキャップに適用してもよい。
【0047】
なお、上記ヒンジキャップは、チューブ容器2に適用していたが、例えば、ローションのような液体を収容する図15のようなボトル状の容器に適用することも可能である。液体を収容したボトル状の容器に適用した場合であっても、輸送中にコンテナの中などで蓋が誤って開き、ボトル状の容器の内容物が飛び出したりする虞が無い。
【符号の説明】
【0048】
1,21,41・・ヒンジキャップ;2・・チューブ容器;3,23,43,43’・・基部;4,24,44・・ヒンジ;5,25,45,45’・・蓋;6・・吐出口;7・・突起;8・・リンク機構;9・・上側リンク;10・・下側リンク;11・・締結部;12・・ネジ部;13,30・・係止部;14,31・・被係止部;15・・係止機構;16,28・・溶着部;26,27・・円周部;29・・超音波ホーン;46L,46R,47L,47R・・部位;59L,59R・・膨らみ部;60L,60R・・ダボ部;61L,61R・・ダボ受け部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に取り付ける容器用のヒンジキャップであって、
前記容器の開口端に取り付ける基部と、
前記基部にヒンジを介して回動可能に連結されて、前記容器の内容物を吐出する該基部の吐出口を開閉可能な蓋部と、を備え、
前記蓋部は、該蓋部を閉じた状態において前記基部に当接する部位の少なくとも一部が、該蓋部に対するユーザの開操作によって切り離し可能な程度の溶着力で該基部に溶着されて、前記吐出口を封止している、
容器用のヒンジキャップ。
【請求項2】
前記蓋部は、該蓋部を閉じた状態において前記基部に当接する部位のうち、前記ヒンジに隣接する所定の部位が該基部に溶着されて、前記吐出口を封止している、
請求項1に記載の容器用のヒンジキャップ。
【請求項3】
前記ヒンジキャップは、一体成形品であり、
前記蓋部は、該蓋部を閉じた状態において前記所定の部位を溶かすことにより、前記基部に溶着されて、前記吐出口を封止している、
請求項2に記載の容器用のヒンジキャップ。
【請求項4】
前記所定の部位とは、前記蓋部を閉じた状態で外部から視認することができ、且つ該蓋部の開閉操作においてユーザが触れる必要の無い部位である、
請求項2または3に記載の容器用のヒンジキャップ。
【請求項5】
前記蓋部は、該蓋部を閉じて前記基部へ押し当てた状態において該蓋部へ加えた超音波振動によって、該蓋部を閉じた状態において前記基部に当接する部位の少なくとも一部が該基部へ溶着されて、前記吐出口を封止している、
請求項1から4の何れか一項に記載の容器用のヒンジキャップ。
【請求項6】
前記蓋部は、該蓋部に設けた突起であって、該蓋部を閉じた状態で先端が前記基部に当接する突起の先端、或いは、該蓋部を閉じた状態において該基部に設けた突起に当接する該蓋部の特定の部位が、該蓋部に溶着されて、前記吐出口を封止している、
請求項1から5の何れか一項に記載の容器用のヒンジキャップ。
【請求項1】
容器に取り付ける容器用のヒンジキャップであって、
前記容器の開口端に取り付ける基部と、
前記基部にヒンジを介して回動可能に連結されて、前記容器の内容物を吐出する該基部の吐出口を開閉可能な蓋部と、を備え、
前記蓋部は、該蓋部を閉じた状態において前記基部に当接する部位の少なくとも一部が、該蓋部に対するユーザの開操作によって切り離し可能な程度の溶着力で該基部に溶着されて、前記吐出口を封止している、
容器用のヒンジキャップ。
【請求項2】
前記蓋部は、該蓋部を閉じた状態において前記基部に当接する部位のうち、前記ヒンジに隣接する所定の部位が該基部に溶着されて、前記吐出口を封止している、
請求項1に記載の容器用のヒンジキャップ。
【請求項3】
前記ヒンジキャップは、一体成形品であり、
前記蓋部は、該蓋部を閉じた状態において前記所定の部位を溶かすことにより、前記基部に溶着されて、前記吐出口を封止している、
請求項2に記載の容器用のヒンジキャップ。
【請求項4】
前記所定の部位とは、前記蓋部を閉じた状態で外部から視認することができ、且つ該蓋部の開閉操作においてユーザが触れる必要の無い部位である、
請求項2または3に記載の容器用のヒンジキャップ。
【請求項5】
前記蓋部は、該蓋部を閉じて前記基部へ押し当てた状態において該蓋部へ加えた超音波振動によって、該蓋部を閉じた状態において前記基部に当接する部位の少なくとも一部が該基部へ溶着されて、前記吐出口を封止している、
請求項1から4の何れか一項に記載の容器用のヒンジキャップ。
【請求項6】
前記蓋部は、該蓋部に設けた突起であって、該蓋部を閉じた状態で先端が前記基部に当接する突起の先端、或いは、該蓋部を閉じた状態において該基部に設けた突起に当接する該蓋部の特定の部位が、該蓋部に溶着されて、前記吐出口を封止している、
請求項1から5の何れか一項に記載の容器用のヒンジキャップ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−49475(P2013−49475A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188987(P2011−188987)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【出願人】(000160223)吉田プラ工業株式会社 (136)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【出願人】(000160223)吉田プラ工業株式会社 (136)
【Fターム(参考)】
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