説明

容器用の天蓋及びそれを用いた容器

【課題】 伏臥(水平)状態の天蓋の把手内に手(素手又は手袋)を差し込み易くすることにより、把手を起立し易くして、容器の持ち上げをし易くできる容器用の天蓋、及びそれを用いた容器を提供すること。
【解決手段】 収納物を収納する容器本体1の上部開口を被蓋し、かつ容器持ち上げ用で起伏自在な把手10を有する容器用の天蓋4であって、前記把手10の伏臥状態において、該把手10を把持した場合に、少なくともその把持した手が対面する前記天蓋4の上面5には、手が接触しないような凹陥部6を形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料や化学薬品等の収納物を収納する缶などの容器に使用される把手つきの天蓋、及びそれを用いた容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、塗料や灯油などの収納物を収納する缶として、(イ)例えば18リットル缶などの大型缶としては図9に示すような構成のものが知られている。また、(ロ)中小缶としては図10に示すような構成のものが知られている。
これら図9及び図10の公知の缶は、いずれも、収納室02を有する筒状の容器本体01と、容器本体01の下端部を閉塞する底板03と、容器本体01の上端部を閉塞する天蓋04とからなっている。
【0003】
前記天蓋04の中央部上面には、把手挿入孔06を有する座金05を溶着しており、この座金05の把手挿入孔06に略台形状に形成されたリング状で比較的小形の把手07の一方側の棒部である枢支部07aを枢動可能に遊嵌してあり、該把手07は起伏自在に枢支される。すなわち、前記把手07の枢支部07aを回動中心とする自由端側(把持部07b等)は、伏臥(水平)状態では天蓋04の上面に当接する。そして、この伏臥(水平)状態の把手07を起立させる際には、該把手07内に手を差し込んで、前記把手07の一方側の棒部である枢支部07aとは反対側の棒部である把持部07bを把持し起立させて缶(容器)全体を持ち上げるものである。
なお、図9及び図10で、08は天蓋04の隅角部に穿設された出入口であって、この出入口08から収納物が出し入れされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の缶(容器)では、天蓋04の把手07を把持して容器を持ち上げる場合に、伏臥(水平)状態の把手07は、その把持部07bなどが天蓋04の上面に当接しているため、該把手07内に手を差し込み難く把手07を起立し難いという問題があった。
【0005】
また、容器が重い場合には、容器を持ち上げる際に手が痛まないように、手袋をした手で把手07を把持することがあるが、このような場合には、把手07内に手を一層差込し難いものであった。
【0006】
本発明は、上記従来例の缶(容器)の有する問題点を解消しようするものであり、伏臥(水平)状態の天蓋の把手内に手(素手又は手袋)を差し込み易くすることにより、把手を起立し易くして、容器の持ち上げをし易くできる容器用の天蓋、及びそれを用いた容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1の容器用の天蓋は、収納物を収納する容器本体の上部開口を被蓋し、かつ容器持ち上げ用で起伏自在な把手を有する容器用の天蓋であって、前記把手の伏臥状態において、把手の少なくとも把持部と該把持部が対面する天蓋の上面との間には、伏臥状態の把手を把持した手が天蓋の上面に接触しないような空間を形成してあることを特徴とする。
【0008】
請求項2の容器用の天蓋は、前記空間としては、把手の伏臥状態において、該把手を把持した場合に、少なくともその把持した手が対面する前記天蓋の上面に形成され、手が接触しないようにした凹陥部によることを特徴とする。この場合、天蓋の上面に形成される凹陥部は、把手の伏臥状態において手を入れる部分に対面する天蓋の上面に形成され、その形状は任意に選定できるし、間隔をおいて複数個形成することができる。また、前記凹陥部の形成場所は、把手の枢支部を中心にして左右の両側に形成することもできるし、左側または右側の片側だけに形成することもできる。
【0009】
請求項3の容器用の天蓋は、前記空間としては、把手の把持部に形成され、該把手の伏臥状態において、把持する手が天蓋の上面に接触しないようにした婉曲部によることを特徴とする。
【0010】
把手の把持部に形成される婉曲部は、手が入る程度の屈曲部を有すればよく、その形状や大きさは適宜に設計変更できる。
【0011】
請求項4の容器用の天蓋は、前記空間としては、把手の伏臥状態において、該把手が対面する前記天蓋の上面に突設された凸部によることを特徴とする。
【0012】
請求項5の容器は、請求項1〜4のいずれかの容器用の天蓋を容器本体の上端部に固定してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、把手の少なくとも把持部と該把持部が対面する天蓋の上面との間には、伏臥状態の把手を把持した手が天蓋の上面に接触しないような空間を形成してあることから、伏臥状態の把手を起立させる際に、手(素手又は手袋)が天蓋の上面に当接することなく、把手内に手を差し込み易く該把手を容易に起立でき、容器の持ち上げが簡便となる。
【0014】
請求項2の発明によれば、把手の伏臥状態において、該把手を把持した場合に、少なくともその把持した手が対面する前記天蓋の上面には、手が接触しないような凹陥部を形成してあるから、この凹陥部が把手と天蓋の上面との間の空間部となり、伏臥状態の把手を起立させる際に、手(素手又は手袋)が天蓋の上面に当接することなく、把手内に手を差込みし易く該把手を容易に起立でき、容器の持ち上げが簡便となる。
【0015】
請求項3の発明によれば、把手の把持部には、該把手の伏臥状態において、把持する手が天蓋の上面に接触しないようにした婉曲部を形成してあるから、この婉曲部が把手と天蓋の上面との間の空間部となり、請求項1の発明と同様に、伏臥状態の把手を起立させる際に、手(素手又は手袋)が天蓋の上面に当接することなく、把手の婉曲部内に手を差し込み易く該把手を容易に起立でき、容器の持ち上げが簡便となる。
【0016】
請求項4の発明によれば、前記空間としては、把手の伏臥状態において、該把手が対面する天蓋の上面に突設された凸部が形成されていることから、把手の伏臥状態時には、該把手は前記凸部上に載置されて、把手の把持部と天蓋の上面との間に空間部を形成する。それゆえ、請求項1の発明と同様に、伏臥状態の把手を起立させる際に、手(素手又は手袋)が天蓋の上面に当接することなく、把手内に手を差込みし易く該把手を容易に起立でき、容器の持ち上げが簡便となる。
【0017】
請求項5の発明によれば、請求項1〜4のいずれかに記載された効果を有する容器が提供できる。
【実施例】
【0018】
(第1実施例) 本発明の第1の実施例を図1〜図2に基づいて以下に説明する。
【0019】
1は塗料や灯油や化学薬品等の収納物が収納される収納室2を有する容器本体であって、この容器本体1の下端部には底板3が形成され、上端部には容器本体1の収納室2の上部開口を被蓋する天蓋4が形成されている。
【0020】
天蓋4は、容器本体1の上端部に結合されるのであるが、その結合構造は種々採用できる。この実施例では、図示していないが、容器本体1の上端部と天蓋4の外周縁部とを巻き締めにより結合して結合部を形成している。
【0021】
前記天蓋4の中央部上面には、把手挿入孔16を有する座金15を溶着しており、この座金15の把手挿入孔16に、略台形状に形成されたリング状で比較的小形の把手10の一方側の棒部である枢支部11を枢動可能に遊嵌してあり、該把手10は前記枢支部11を回動中心として起伏自在に枢支される。
【0022】
すなわち、把手10は、通常時には、図1に示されているように、把手10の一方側の棒部である枢支部11とは反対側の棒部である把持部12は伏臥されている。この伏臥状態から把手10を起立させる場合には、把手10内に手を差し込み該把手10の把持部12を把持し起立させて、この起立状態で容器全体を持ち上げるものである。なお、図1及び図2で、13は枢支部11と把持部12とを連結する架橋部である。
【0023】
前記把手10の伏臥状態において、該把手10を把持した場合に、少なくともその把持した手が対面する前記天蓋4の上面5には、手が接触しないような凹陥部6がプレス機などにより形成してある。すなわち、この凹陥部6は、把手10の伏臥状態において、把手10の少なくとも把持部12と該把持部12が対面する天蓋4の上面5との間に形成された空間Sをも形成することになる。
【0024】
従って、図1に示されている把手10の伏臥状態から把手10を起立させる場合に、天蓋4の上面5に前記凹陥部6が形成してあるため、この凹陥部6が前記空間Sともなり、把手10内に手を差し込み把手10の把持部12を把持し起立させる際に、手が天蓋4の上面5に接触しない(仮に接触する場合があっても接触しない状態と同視し得る。)ので、把手10内に手を差し込み易く該把手10を容易に起立でき、容器の持ち上げ操作が簡便となる。
【0025】
なお、図1及び図2で、7は天蓋4の隅角部に穿設された出入口であって、この出入口7から収納物が出し入れされる。この出入口7には図示されていないがキャップが取り付けられる。
【0026】
また、天蓋4の上面5に形成される凹陥部6は、前述したように、図1と図2に示す如く把手10の把持部12対応位置に大きく形成したものに限らず、複数列に分割して形成したものでもよく、適宜設計変更できる。さらに、凹陥部6の形成場所は、把手10の枢支部11を中心にして、図2で下側の実線部だけでなく上側の仮想線部の両側に形成できるし、両者の片側だけに形成できる。
【0027】
(第2実施例) 本発明の第2の実施例を図3に基づいて以下に説明する。
【0028】
この第2実施例の容器用の天蓋は、中型や小型の缶に適用されるものであって、この図3の容器用の天蓋4は、公知の図10の構成に工夫を加えたものであり、図1及び図2のものに比べて、天蓋4自体の形状が異なるだけでなく、把手10や座金15などの形状及び取付位置も異なるが、把手10は枢支部11を回動中心として回動されるものであり、原理的には前記第1実施例のものと同様である。この第2実施例の場合も、隙間Sともなる凹陥部6を有する点で第1実施例と共通する。
【0029】
(第3実施例) 本発明の第3の実施例を図4に基づいて以下に説明する。
【0030】
この第3実施例の容器用の天蓋は、把手10の形状を工夫したものであって、図4では天蓋4や把手10が示されているだけで、容器本体1などは図1と同様に構成してあるので省略してある。
【0031】
すなわち、この第3実施例の容器用の天蓋は、把手10の把持部12には、把手10の伏臥状態において、把持する手が天蓋4の上面5に接触しないようにした婉曲部17が形成されている。従って、図4の如く把手10が伏臥状態においては、把手10の枢支部11と把持部12間の架橋部13は天蓋4の上面5に当接するが、前記婉曲部17の下面側はトンネル状の空間Sが形成される。
【0032】
前記空間Sがあるため、図4の如く把手10の伏臥状態において、この空間S内に手を差し込み把手10の把持部12(婉曲部17)を把持し起立させる際に、手が天蓋4の上面5には接触しないので、把手10内に手を差し込み易く該把手10を容易に起立でき、容器の持ち上げ操作が簡便となる。
【0033】
上記把手10を図4で右方向に回動させた場合には、把手10の婉曲部17の近隣にある凹部19、19が前記空間Sと同様の役割を担う。
【0034】
図5は、図4の変形例を示すもので、これは、前記凹部19、19を図4のものよりかなり深い凹部としたものである。
【0035】
図6は、把手10の婉曲部17が、図4や図5の如く部分的な婉曲ではなく、円弧状に全体が婉曲されたものである。
【0036】
(第4実施例) 本発明の第4の実施例を図7及び図8に基づいて以下に説明する。
【0037】
この第4実施例の容器用の天蓋4は、公知の図10の構成のものに工夫を加えたものである。すなわち、把手10の伏臥状態において、該把手10が対面する天蓋4の上面5に凸部20を突設してなるものである。この凸部20としては、図7及び図8では、把手10の架橋部13が天蓋4の上面5に対面する部分に、該把手10の枢支部11を回動中心として左右に1対突設している。
【0038】
上記凸部20を設けたことから、例えば、図7及び図8に示す如く、把手10が図において左側に伏臥している時には、把手10の架橋部13は前記凸部20上に載置されて、この凸部20が把手10を支持する接点となり、把手10の把持部12と天蓋4の上面5との間に隙間Sを形成する。
【0039】
把手10を図7で右方向に回動して伏臥させた時には、図示されていないが、把手10の架橋部13が右側の凸部20に当接することにより、上記と同様にして、把手10の把持部12と天蓋4の右方向の上面5との間に空間Sが形成される。
【0040】
前記凸部20は、把手10の把持部12や枢支部11近傍位置に形成することもでき、適宜設計変更できる。
凸部20は、図7及び図8に示す如く左右1対でなくても、左右の一方側だけでもよく、また図7では下側だけ設けているが、上側の左右の両方又は片方に設けることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、塗料や化学薬品等の収納物を収納する金属製の缶に限らず、合成樹脂製の容器などにも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1実施例を示す容器全体の斜視図である。
【図2】図1に示した容器用の天蓋の平面図である。
【図3】本発明の第2実施例の容器用の天蓋の平面図である。
【図4】本発明の第3実施例の要部斜視図である。
【図5】図4の第1変形例の要部斜視図である。
【図6】図4の第2変形例の要部斜視図である。
【図7】本発明の第4実施例の容器用の天蓋の平面図である。
【図8】図7の一部を拡大した側面図である。
【図9】従来例の大型缶用の容器用の天蓋の平面図である。
【図10】従来例の中小缶用の容器用の天蓋の平面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 容器本体
2 収納室
4 天蓋
5 上面
6 凹陥部
10 把手
11 枢支部
12 把持部
13 架橋部
15 座金
16 把手挿入孔
17 婉曲部
19 凹部
20 凸部
S 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納物を収納する容器本体1の上部開口を被蓋し、かつ容器持ち上げ用で起伏自在な把手10を有する容器用の天蓋4であって、
前記把手10の伏臥状態において、把手10の少なくとも把持部12と該把持部12が対面する天蓋4の上面5との間には、伏臥状態の把手10を把持した手が天蓋4の上面5に接触しないような空間Sを形成してあることを特徴とする容器用の天蓋。
【請求項2】
前記空間Sとしては、把手10の伏臥状態において、該把手10を把持した場合に、少なくともその把持した手が対面する前記天蓋4の上面5に形成され、手が接触しないようにした凹陥部6によることを特徴とする請求項1記載の容器用の天蓋。
【請求項3】
前記空間Sとしては、把手10の把持部12に形成され、該把手10の伏臥状態において、把持する手が天蓋4の上面5に接触しないようにした婉曲部17によることを特徴とする請求項1記載の容器用の天蓋。
【請求項4】
前記空間Sとしては、把手10の伏臥状態において、該把手10が対面する天蓋4の上面5に突設された凸部20によることを特徴とする請求項1記載の容器用の天蓋。
【請求項5】
容器本体1の上端部に請求項1〜4のいずれかの容器用の天蓋4を固定してなることを特徴とする容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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