説明

容器詰しょうゆ含有液体調味料

【課題】 低食塩含量であるにもかかわらず、適度な塩味を呈し、煮物の外観の良好な容器詰しょうゆ含有液体調味料を提供する。
【解決手段】 次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)ナトリウム 2.75〜5.1質量%
(B)アスパラギン酸 0.3〜5質量%
(C)アラニン 0.35〜1.8質量%
を含有し、(B)アスパラギン酸及び(C)アラニンの合計が1.1〜6.8質量%である容器詰しょうゆ含有液体調味料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰しょうゆ含有液体調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
食塩(塩化ナトリウム)の過剰摂取は、高血圧、心臓疾患などの循環器系疾患を招き易いことから、食塩含量の高い食品、特にしょうゆやしょうゆ加工品などのしょうゆ含有液体調味料の摂取に対する関心が増加している。また、食塩含量の低い減塩しょうゆや低塩しょうゆにおいては、塩味が不足して、継ぎ足して使用する場合があり、食塩の摂取低減につながらないという問題がある。
そこで、調味料の成分のうち、食塩の一部を塩化カリウムで代替して塩味を増強する技術、更にカリウム由来の異味をマスキングすることにより、食塩含量が低いにも拘わらず、適度な塩味を呈する技術が提案されている(特許文献1、2)。このほか、オルニチンやグリシンエチルエステル等の塩味増強物質を添加する技術が知られている(非特許文献1、2)。
液体調味料の中でも、しょうゆ(醤油)の用途は多岐にわたっている。刺身や冷奴、お浸しなどにつけたり、かけたりする用途だけでなく、麺つゆや鍋物つゆ、煮物などに、だし汁等で希釈して使用する場合や、炒め物の仕上げに使用する場合もある。
【0003】
一方、アスパラギン酸には、塩味増強作用、昆布風味向上作用、酸性調味料中の破砕野菜の色調・風味安定化作用などが知られている(特許文献1、3〜6)。
また、えびやかになどの水産食品特有の風味を付与するのにアラニンを用いる方法が提案されている(特許文献7、8)。アラニン自体は、甘味を呈することが公知である(非特許文献1)。
また、イソロイシン自体は、苦味を呈すること、塩味増強効果を有することが知られている(非特許文献3、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-149205号公報
【特許文献2】特開2009-27974号公報
【特許文献3】特開2007-289083号公報
【特許文献4】特開2002-209550号公報
【特許文献5】特開2002-345430号公報
【特許文献6】特開2006-75101号公報
【特許文献7】特開平7-177863号公報
【特許文献8】特開2007-44039号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Agric. Biol. Chem., 53巻, 6号, p.1625 (1989年)
【非特許文献2】Biosci. Biotech. Biochem., 59巻, 1号, p.35 (1995年)
【非特許文献3】Chem. Pharm. Bull. 55巻,11号,p.1581(2007年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、しょうゆの用途は多岐にわたっている。特に、低食塩含量のしょうゆ含有液体調味料の場合、煮物などのようにしょうゆをだし汁などで割って調理すると、塩味不足や風味バランスが崩れてしまうという課題があった。
本発明者は、以上のような風味を主とする課題がある中で、しょうゆ含有液体調味料の食塩含量を低減させた場合に生ずる風味上の課題について検討してきた。
【0007】
従って、本発明の課題は、低食塩含量であるにもかかわらず、適度な塩味を呈し、風味の良好な容器詰しょうゆ含有液体調味料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、風味良好で有用な容器詰しょうゆ含有液体調味料について検討してきた結果、ナトリウム、アスパラギン酸及びアラニンを特定量含有することにより、低食塩含量であるにもかかわらず、適度な塩味を呈する容器詰しょうゆ含有液体調味料が得られることを見出した。更に今回の検討で、アラニンの添加により、煮物の光沢が優れ、見た目の嗜好性を良好にすることを新たに見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)ナトリウム 2.75〜5.1質量%
(B)アスパラギン酸 0.3〜5質量%
(C)アラニン 0.35〜1.8質量%
を含有し、(B)アスパラギン酸及び(C)アラニンの合計が1.1〜6.8質量%である容器詰しょうゆ含有液体調味料を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低食塩含量であるにもかかわらず、適度な塩味を呈し、風味が良く、煮物の光沢等に優れ、調理における見た目の嗜好性を高めることが可能な容器詰しょうゆ含有液体調味料を簡便に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の容器詰しょうゆ含有液体調味料(以下、単に「本発明の液体調味料」又は「本発明品」とも記載する)においては、(A)ナトリウム、(B)アスパラギン酸及び(C)アラニンを特定量含有する。
【0012】
本発明の液体調味料は、(A)ナトリウム(以下、Naとも記載する)を2.75〜5.1質量%(以下、単に「%」で示す)含有するが、好ましくは2.77〜4%、更に2.8〜3.5%、特に2.85〜3.2%、殊更2.9〜3.1%含有するのが、希釈して使用する場合やそのまま煮詰める場合に、程よい塩味が発現する点から好ましい。またナトリウムの過剰摂取抑制、風味バランス、しょうゆ感発現、保存性、工業的生産性の点で好ましい。
【0013】
本発明において、ナトリウムは、食品成分表示上の「ナトリウム」又は「Na」を指し、液体調味料中にイオンの形態で含有されているものをいう(以下に記載するナトリウム以外のアルカリ金属又はアルカリ土類金属についても同様である)。
【0014】
本発明の液体調味料にナトリウムを含有させる場合には、無機ナトリウム塩、有機酸ナトリウム塩、アミノ酸ナトリウム塩、核酸ナトリウム塩等を用いることができる。具体的には、塩化ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム、これらの2種以上の混合物が挙げられる。これらのうち、塩化ナトリウムを食塩という形態で使用するのが、コストの点で好ましい。
【0015】
食塩として、様々なものが市販されているが、乾燥物基準で塩化ナトリウム100質量部(以下、単に「部」で示す)に対して、塩化マグネシウムを0.01〜2部、塩化カルシウムを0.01〜2部、塩化カリウムを0.01〜2部含有するものが、風味、工業的生産性の点で好ましい。
【0016】
本発明において、液体調味料中のナトリウム(Na)の含有量は原子吸光光度計により測定することができる。
【0017】
本発明の液体調味料中の(B)アスパラギン酸(以下、Aspとも記載する)の含有量は0.3〜5.0%であるが、好ましくは0.4〜3.0%、より好ましくは0.5〜2.0%、特に0.6〜1.5%であるのが、塩味付与や煮物の光沢付与の点で好ましい。
【0018】
本発明の液体調味料中のアスパラギン酸の含有量は、しょうゆ由来の遊離アスパラギン酸量と、しょうゆ以外に新たに添加した原料由来の遊離アスパラギン酸量との合計量をいい、ペプチド体を含まない。すなわち、しょうゆ以外に新たに添加した原料とは、調味料の原料として用いられる日本酒、ワイン等の酒、味醂(本みりん、みりん風調味料、塩みりん等)等の醸造調味料(しょうゆを除く)の他、植物エキス、動物エキス、酵母エキス等の各種エキス、蛋白加水分解物等の調味料、又はアミノ酸そのもの等をいう。なお、アスパラギン酸の含有量は、アミノ酸分析装置を用いて測定することができる(「しょうゆ試験法」、(財)日本しょうゆ研究所編集、(株)醤協通信社販売、昭和60年、以下の「アミノ酸分析装置」を用いた測定において同じ。)。アミノ酸として添加するアスパラギン酸は、L−アスパラギン酸、D−アスパラギン酸、DL−アスパラギン酸、これらの塩を使用することができるが、L−アスパラギン酸、L−アスパラギン酸ナトリウムが好ましく、特にL−アスパラギン酸ナトリウムが好ましい。
【0019】
なお、アスパラギン酸ナトリウムを用いた場合、ナトリウムは成分(A)、アスパラギン酸は成分(B)として、本発明を構成するものとする。
【0020】
本発明の液体調味料中の(C)アラニン(以下、Alaとも記載する)の含有量は0.35〜1.8%であるが、好ましくは0.4〜1.5%、より好ましくは0.5〜1.1%、特に0.8〜1.0%であるのが、塩味付与や煮物の光沢付与の点で好ましい。
【0021】
本発明の液体調味料中のアラニンの含有量は、しょうゆ由来の遊離アラニン量と、しょうゆ以外に新たに添加した原料由来の遊離アラニン量との合計量をいい、ペプチド体を含まない。すなわち、しょうゆ以外に新たに添加した原料とは、調味料の原料として用いられる日本酒、ワイン等の酒、味醂(本みりん、みりん風調味料、塩みりん等)等の醸造調味料(しょうゆを除く)の他、植物エキス、動物エキス、酵母エキス等の各種エキス、蛋白加水分解物等の調味料、又はアミノ酸そのもの等をいう。なお、アラニンの含有量は、アミノ酸分析装置を用いて測定することができる。アミノ酸として添加するアラニンは、L−アラニン、D−アラニン、DL−アラニン、これらの塩を使用することができるが、L−アラニンが好ましい。
【0022】
本発明において、本発明の液体調味料中の成分(B)と成分(C)の合計量は、1.1〜6.8%であるが、1.1〜4.5であるのが好ましく、更に1.2〜3.1%、特に1.6〜2.5%であるのが、塩味付与や煮物の光沢付与の点で好ましい。
【0023】
本発明において、成分(B)と成分(C)との質量比(B)/(C)は0.4〜2.2であるのが好ましく、より好ましくは0.5〜2、更に0.55〜1.95、特に0.6〜1.7であるのが、塩味付与や煮物の光沢付与の点で好ましい。
【0024】
本発明の液体調味料中の可溶性固形分の含有量は10〜40%であることが好ましく、より好ましくは14〜38%、更に16〜37%、更に20〜36%、特に25〜35.5%、殊更26〜35%であるのが、風味の持続性向上、風味バランス、保存性の点で好ましい。
【0025】
本発明において、可溶性固形分とは、「デジタル屈折計RX−5000α型」(株式会社アタゴ製)を用いて20℃にて測定された値をいう。
【0026】
本発明の液体調味料は、可溶性固形分を所定の範囲とすることにより、未開封時は常温保存が可能であり、開封後は冷蔵保存することが可能となる。すなわち、未開封の状態においては、低温における保存の必要がなく、運搬時や、店頭での管理が容易となる。常温保存の温度は15〜35℃であるのが好ましく、更に20〜30℃、特に22〜25℃であるのが好ましい。
【0027】
本発明の液体調味料は、開封後は直ぐに使い切りしなくても、冷蔵にて保存すれば良い。ここで、冷蔵保存の温度は3〜15℃であるのが好ましく、更に4〜12℃、特に5〜10℃であるのが好ましい。家庭では冷蔵庫に保存し、喫食時に冷蔵庫から出して使用するのが好ましい。
本発明品は、未開封時は常温保存し、開封後は冷蔵保存するのが風味、保存性、流通の点で好ましい。
【0028】
可溶性固形分が所定の範囲となるようにするためには、数値が高い場合は、水などで希釈するのが好ましい。数値が低い場合は、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、糖類、無機塩類などを添加するのが好ましい。
【0029】
本発明の液体調味料の態様において、(D)イソロイシン(以下、Ileとも記載する)の含有量は0.04〜1%であるのが好ましく、より好ましくは0.05〜0.8%、より好ましくは0.05〜0.5%、特に0.5〜0.4%であるのが、塩味の持続性向上、しょうゆ感発現、濃厚感付与、風味バランスの点で好ましい。
【0030】
本発明の液体調味料の態様において、前記(D)イソロイシンの含有量は、しょうゆ由来の遊離イソロイシン量と、しょうゆ以外に新たに添加した原料由来の遊離イソロイシン量との合計量をいい、ペプチド体を含まない。すなわち、しょうゆ以外に新たに添加した原料とは、調味料の原料として用いられる日本酒、ワイン等の酒、味醂(本みりん、みりん風調味料、塩みりん等)等の醸造調味料(しょうゆを除く)の他、植物エキス、動物エキス、酵母エキス等の各種エキス、蛋白加水分解物等の調味料、又はアミノ酸そのもの等をいう。なお、イソロイシンの含有量は、アミノ酸分析装置を用いて測定することができる。アミノ酸として添加するイソロイシンは、L−イソロイシン、D−イソロイシン、DL−イソロイシン、これらの塩を使用することができるが、L−イソロイシンが好ましい。
【0031】
本発明の液体調味料において、成分(A)、(B)、(C)、(D)が所定量含まれるとき、成分(B)と(C)の和と、成分(A)と(D)の和との質量比((Asp+Ala)/(Ile+Na))は、0.3〜0.85であるのが好ましく、更に0.35〜0.8、特に0.4〜0.75、殊更0.5〜0.7であるのが、塩味付与や煮物の光沢付与、しょうゆ感発現、風味バランスの点で好ましい。
【0032】
本発明の液体調味料中の遊離の塩基性アミノ酸含量は1%未満であるのが好ましく、更に0.1〜0.9%、特に0.15〜0.8%、殊更0.16〜0.7%であるのが風味バランスの点で好ましい。
ここで、塩基性アミノ酸とはヒスチジン、リジン、アルギニンのことである。ヒスチジン含量は0.5%未満であるのが好ましく、更に0.01〜0.4%、特に0.02〜0.2%、殊更0.03〜0.1%であるのが好ましい。リジン含量は0.5%未満であるのが好ましく、更に0.01〜0.4%、特に0.02〜0.3%、殊更0.05〜0.2%であるのが好ましい。アルギニン含量は0.5%未満であるのが好ましく、更に0.01〜0.49%、特に0.02〜0.45%、殊更0.05〜0.3%であるのが好ましい。
【0033】
本発明の液体調味料において、遊離のグルタミン酸含量は3%未満であるのが好ましく、より好ましくは0.05〜2%、更に0.1〜1.7%未満、特に0.15〜1.2%、殊更0.15〜1.1%であるのが、風味バランスの点で好ましい
【0034】
本発明の液体調味料において、カリウム(以下、Kとも記載する)の含有量は0.8%未満であるのが好ましく、より好ましくは0.03〜0.7%、更に0.05〜0.6%、特に0.06〜0.5%、殊更0.08〜0.4%であることが、苦味や刺激味といったカリウム由来の異味を生じない点から好ましい。
【0035】
本発明において、カリウム(K)の含有量は前記ナトリウム(Na)の含有量の測定の場合と同様に、原子吸光光度計により測定することができる。
【0036】
本発明の液体調味料は、(A)ナトリウム100部に対して、うま味調味料を20〜250部含有するのが好ましく、より好ましくは25〜150部、更に30〜100部、特に35〜70部、殊更40〜50部含有するのが、カリウム由来の異味抑制、濃厚感付与、風味バランスの点で好ましい。
【0037】
本発明の液体調味料において、エタノールの含有量は3〜8%であるのが好ましく、更に3.5〜7%、特に3.7〜6%、殊更3.9〜5.5%であるのが、保存性、風味バランスの点で好ましい。
【0038】
また、本発明の液体調味料のpHは2以上7未満の酸性であることが好ましく、より好ましくは3〜6、更に3.5〜5.5、特に4〜5.2、殊更4.5〜5であることが、しょうゆ感発現、カリウム由来の異味抑制、保存性、風味バランスの点から好ましい。酸味料等を添加することより、pHを所望の範囲に調製することができる。
【0039】
本発明の液体調味料において酸味料を用いる場合には、例えば、乳酸、酢酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、リン酸、フィチン酸等を使用することができる。中でも乳酸、リンゴ酸、クエン酸、リン酸、フィチン酸が好ましく、特に乳酸が好ましい。乳酸の含有量は0〜2%が好ましく、更に0.01〜1%、特に0.02〜0.5%、殊更0.04〜0.1%であるのが好ましい。また、リンゴ酸、クエン酸、リン酸、フィチン酸の含有量は0〜0.2%が好ましく、0.02〜0.1%が特に好ましい。工業的には、食酢や柑橘果汁を使用してpHを所定の範囲とするのが、風味、生産効率、コストの点で好ましい。食酢としては、米酢等の穀物酢、リンゴ酢、ブドウ酢等の果実酢、醸造酢の他、合成酢などを使用することができる。
【0040】
本発明の液体調味料は、しょうゆをベースとし(A)ナトリウム、(B)アスパラギン酸、(C)アラニン及び可溶性固形分が所定量となるよう調整し、攪拌、混合、溶解した調味液を容器に充填することにより、製造することができる。必要に応じて、その他の成分として、うま味調味料の他、酸味料、無機塩、酸、賦形剤、香辛料、うま味以外の調味料、抗酸化剤、着色料、保存料、強化剤、乳化剤、ハーブ、野菜等の食品に使用可能な原料や、水を配合してもよい。
【0041】
また、塩分(ナトリウム含量)を低下させた減塩しょうゆや低塩しょうゆを原料として使用し、本発明の液体調味料とする場合は、生しょうゆを電気透析、又は塩析/希釈により食塩含量を低下させた生しょうゆ(減塩生しょうゆ、低塩生しょうゆ)を調製し、火入れ工程後、成分(A)、(B)及び(C)などを混合する方法、又は、火入れ工程後のしょうゆを電気透析、又は塩析/希釈することにより食塩含量を低下させたしょうゆ(減塩しょうゆ、低塩しょうゆ)を調製し、成分(A)、(B)及び(C)などを混合する方法等により製造することができる。更に、容器に充填する際には、加熱処理を行うのが好ましい。この場合には、(1) 加熱処理した後、液体調味料の温度が低下しないうちに容器に充填する、(2) 加熱処理しながら容器に充填する、(3) 容器に充填した後、加熱処理するのが風味、安定性、色の点で好ましい。
【0042】
本発明の液体調味料は、加熱処理を施して製造するのが好ましい。調味液を容器に充填後、加熱処理を行ったり、調味液を予めプレート式熱交換器などで加熱処理した後に、容器に充填して製造することができる。加熱温度は60℃以上であることが好ましく、より好ましくは70〜130℃、更に75〜120℃、特に80〜100℃、殊更85〜95℃で加熱することが、風味、安定性、色等の点から好ましい。加熱時間は、加熱温度により異なるが、60℃の場合は10秒〜120分、更に30秒〜60分、特に1分〜10分、殊更2分〜5分であることが、風味、安定性、色等の点から好ましい。80℃の場合は、2秒〜60分、更に5秒〜30分、特に10秒〜10分、殊更30秒〜5分であるのが、風味、安定性、色等の点から好ましい。90℃の場合は、1秒〜30分、更に2秒〜10分、特に5秒〜5分、殊更10秒〜2分であるのが、風味、安定性、色等の点から好ましい。また、加熱温度と加熱時間を組合せて、60〜70℃で10分以上加熱した後、80℃で1分以上加熱する方法でもよい。
【0043】
本発明の液体調味料は、しょうゆ含有液体調味料を容器に充填したものである。本発明に使用される容器の容量は5mL〜20Lであるのが好ましく、次に好ましくは10mL〜5L、より好ましくは50mL〜2L、更に100mL〜1L、特に200mL〜800mL、殊更300〜600mLであるのが、安定性、使い勝手の点で好ましい。本発明に使用される容器は、一般の液体調味料と同様にポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、紙容器、合成樹脂製の袋、ガラス瓶などの通常の形態で提供することができる。紙容器としては、紙基材とバリア性層(アルミニウム等の金属箔、エチレン−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニリデン系重合体など)とヒートシール性樹脂層とを含む積層材を製函したものなどが挙げられる。
【0044】
更に、本発明において使用する容器は、その酸素透過指数が0.8(cm3/day・m2)以下であることが好ましい。本発明でいう「酸素透過指数」とは、JIS法(K 7126 B法)により求められる「酸素透過度」(単位:cm3/day・bottle)を容器の表面積で除して、その材料1m2当たりに換算した値をいう。酸素透過度は、具体的にはMOCON社製装置を用いて、試験片(容器)の一方に酸素を供給し、もう一方に等圧で窒素キャリアーガスを流し、透過した酸素を酸素検知器を用いて測定された値(20℃、相対湿度60%)のことである。本発明に用いる容器の酸素透過指数は、好ましくは0〜0.6、より好ましくは0〜0.4、更に0.01〜0.2、特に0.02〜0.15、殊更0.05〜0.12であるのが、保存性、風味維持の点から好ましい。
【0045】
本発明においては、しょうゆ含有液体調味料とは、しょうゆ、だししょうゆ等の通常、しょうゆを含有する液体状の調味料をいい、しょうゆを1%以上、好ましくは5〜99%、より好ましくは10〜97%、更に30〜95%、特に50〜93%、殊更70〜90%含有するものをいう。また、「しょうゆ」に調味料、酸味料、香料、だし、エキス類等を添加した、「しょうゆ」と同様の用途で用いられる液体調味料を含む。すなわち、しょうゆ含有液体調味料とは、しょうゆ、しょうゆ加工品、つゆ又はたれのことで、本発明においては、好ましくはしょうゆ、しょうゆ加工品であり、更にしょうゆ加工品であるのが好ましい。
【0046】
本発明において、しょうゆとは、しょうゆ品質表示基準(平成16年9月13日農林水産省告示第1704号)の定義による液体調味料のことである。
【0047】
本発明において、しょうゆ加工品とは、しょうゆを原料とした液体調味料のうち、主原料であるしょうゆに、補助的に調味料、酸味料、香料、果汁、風味原料、だし等が配合されたものである。例えば、だししょうゆ、昆布しょうゆ、土佐しょうゆ、かつおしょうゆ、ぽん酢しょうゆ、ステーキしょうゆ、かきしょうゆ、しそしょうゆ、にんにくしょうゆ、わさびしょうゆ等が挙げられる。
【0048】
本発明において、つゆとは、しょうゆに糖類及び風味原料(かつおぶし、こんぶ、乾しいたけ等をいう。)から抽出した「だし」を加えたもの又はこれにみりん、食塩その他の調味料を加えたものであって、直接又は希釈して、めん類、惣菜等のつけ汁、かけ汁として用いる液体をいい、めんつゆ、煮物つゆ、鍋物つゆ、天つゆ、汎用つゆ等が挙げられる。めんつゆとしては、そばつゆ、うどんつゆ、そうめんつゆ、冷麦つゆ、中華めんつゆ、冷やし中華つゆ等が例示される。
【0049】
本発明において、たれとは、「しょうゆ」を原料としたもので、上記「しょうゆ加工品」、「つゆ」以外のものをいい、例えば、蒲焼のたれ、焼き鳥のたれ、焼肉のたれ、しゃぶしゃぶのたれ、すきやきのたれ、照り焼きのたれ、唐揚げのたれ、みたらし団子のたれの他、ノンオイルドレッシング等が挙げられる。
【0050】
本発明の液体調味料は、原料として使用するしょうゆとしては、濃口しょうゆ、淡口しょうゆ、たまりしょうゆ、低塩しょうゆ、減塩しょうゆ等を挙げることができるが、製品100g中のナトリウム量が3.55g超〜5.5g以下の低塩しょうゆ、3.55g以下である減塩しょうゆを用いるのが、食塩摂取量、風味バランスの点で好ましい。
【0051】
本発明の液体調味料を、容器から出して食品の製造・加工・調理に使用することで、カリウム由来の異味抑制、しょうゆ感、良好な風味バランスなどの改善効果が得られる。従って、本発明は、風味改善方法、食品の加工・調理方法、食品の製造方法としても有用である。
【0052】
本発明の液体調味料は、各種食品に使用することができる。本発明の液体調味料を用いることで、食塩含量が低いにもかかわらず強い塩味を呈することから、塩分量が少ない食品の設計が可能となる。
【0053】
本発明の液体調味料を使用した食品としては、喫食時に食塩が含まれるものであれば特に制限はないが、例えば、サラダ、刺身、お浸し、冷奴、湯豆腐、鍋物、煮物、揚げ物、焼き物、蒸し物、酢の物等の調理食品が挙げられる。すなわち、本発明の液体調味料の食品への用途(使用方法)としては、これらの食品に直接液体調味料をかける用途、これらの食品を液体調味料につける用途、液体調味料と食材を用いて調理する用途、液体調味料を用いて加工食品を製造する用途などが例示される。
【0054】
本発明の液体調味料の、食品中の含有量は0.01〜50%であるのが好ましく、更に0.05〜20%、特に0.1〜10%、殊更0.5〜5%であるのが風味バランス、ナトリウムや食塩摂取量の点で好ましい。
【実施例】
【0055】
(Na及びKの分析方法)
Na及びKの含有量は、原子吸光光度計(偏光ゼーマン原子吸光光度計 日立 Z−6100)を用いて測定した。
【0056】
(1)実施例1〜8、比較例1〜8
表1に示す配合で、しょうゆ(特選丸大豆しょうゆ、キッコーマン)、塩化ナトリウム(和光純薬工業)、L−アスパラギン酸ナトリウム(和光純薬工業)、DL−アラニン(和光純薬工業)、エタノール(和光純薬工業)及び水をガラス製サンプル瓶(300mL)に入れて閉栓した。次いで90℃温浴に1分間浸漬加熱して、溶解し、容器詰しょうゆ含有液体調味料(「しょうゆ加工品」)を製造した。
各容器詰しょうゆ含有液体調味料中の成分分析を前述の方法に従って行った結果を表1に示す。尚、表中、Naはナトリウム、Kはカリウム、Aspはアスパラギン酸、Alaはアラニン、Ileはイソロイシンを意味する。
【0057】
これら調味料の風味について、そのまま舐めて官能評価を行った。評価基準を以下に示す。塩味については、比較例1を基準とし評価とした。結果を表1に示す。
【0058】
<塩味>
5:塩味がとても強く、美味しい。
4:塩味が強く、美味しい。
3:塩味がやや強い。
2:塩味がやや弱く物足りない:評価の基準(比較例1)。
1:塩味が弱く、非常に物足りない。
【0059】
更に、これらを用いて、調理評価(里芋の煮付け)を行った。調理方法を以下に示す。
<調理方法>
皮むき冷凍里芋300g、だし汁200g(1.3gのだしの素(味の素社製)を溶かして200gにしたもの)、砂糖6.5g、みりん(宝酒造社製)13.5g、実施例及び比較例のしょうゆ加工品18gをなべに入れ、落し蓋下で100℃、30分の処理の後、里芋をなべより取り出し、評価した。
また、調理品の「煮物の光沢」の評価基準を以下に示す。結果を表1に示す。
【0060】
<煮物の光沢>
5:非常につやがある。
4:つやがある。
3:多少弱いがつやはある。
2:あまりつやがない:標準(比較例1)。
1:つやがない。
【0061】
【表1】

【0062】
アラニン単独、若しくはアスパラギン酸単独での処方(比較例1〜3)では、塩味、若しくは煮物の光沢のいずれかに課題があった。またアラニンのみの配合(比較例3)では寧ろ塩味に悪影響があった。アラニン量及びアスパラギン酸量が規定範囲内のものでは、塩味が優れ、煮物の光沢が良くなった。特にアラニンとアスパラギン酸量が1.1%以上ではこれらの評価結果が向上した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)ナトリウム 2.75〜5.1質量%
(B)アスパラギン酸 0.3〜5質量%
(C)アラニン 0.35〜1.8質量%
を含有し、(B)アスパラギン酸及び(C)アラニンの合計が1.1〜6.8質量%である容器詰しょうゆ含有液体調味料。
【請求項2】
前記成分(B)と成分(C)の質量比(B)/(C)が0.4〜2.2である請求項1記載の容器詰しょうゆ含有液体調味料。
【請求項3】
成分(D)イソロイシンを0.04〜1質量%含有する請求項1又は2いずれか1項記載の容器詰しょうゆ含有液体調味料。
【請求項4】
カリウムの含有量が0.8質量%未満である請求項1〜3いずれか1項記載の容器詰しょうゆ含有液体調味料。
【請求項5】
容器詰しょうゆ含有調味料が、しょうゆ、しょうゆ加工品、つゆ又はたれである請求項1〜4いずれか1項記載の容器詰しょうゆ含有液体調味料。