説明

容器詰つゆ

【課題】 低食塩含量であるにもかかわらず、適度なうま味、だし感を呈し、味のまとまりがある風味良好な容器詰つゆを提供する。
【解決手段】 次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)ナトリウム 1.4〜3.4質量%
(B)グルタミン酸 1.0〜2.0質量%
(C)スレオニン 0.03〜0.23質量%
を含有し、(B)グルタミン酸/(A)ナトリウム比が0.4〜0.8である容器詰つゆ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰つゆに関する。
【背景技術】
【0002】
食塩(塩化ナトリウム)の過剰摂取は、高血圧、心臓疾患などの循環器系疾患を招き易いことから、食塩含量の高い食品、特にしょうゆやつゆ、ぽん酢などのしょうゆ加工品などのしょうゆ含有液体調味料の摂取に対して関心が高まっている。また、食塩含量の低いしょうゆ、つゆ、ぽん酢などのしょうゆ加工品においては、塩味が不足して、継ぎ足して使用する場合があり、食塩の摂取低減につながらないという問題がある。食塩はそれ自身が示す塩味の他に、甘味やうま味、味の厚みにも寄与することが知られており、しょうゆ、つゆ、ぽん酢などのしょうゆ加工品においては、食塩含量の低下は塩味の不足のみならず、他の呈味にも影響を及ぼす。
そこで、調味料の成分のうち、食塩の一部を塩化カリウムで代替して塩味を増強する技術、更にカリウム由来の異味をマスキングすることにより、食塩含量が低いにも拘わらず、適度な塩味を呈する技術が提案されている(特許文献1、2)。このほか、オルニチンやグリシンエチルエステル等の塩味増強物質を添加する技術が知られている(非特許文献1、2)。
【0003】
一方、アミノ酸が食物の味にとって重要な役割を担っていることは古くから知られており、グルタミン酸はうま味、スレオニンは甘味を有するアミノ酸として知られている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-149205号公報
【特許文献2】特開2009-27974号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Agric. Biol. Chem., 53巻, 6号, p.1625 (1989年)
【非特許文献2】Biosci. Biotech. Biochem., 59巻, 1号, p.35 (1995年)
【非特許文献3】アミノ酸ハンドブック、p.47(味の素株式会社編、株式会社工業調査会、2003年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、食塩含量の低下は塩味の不足のみならず、他の呈味にも影響を及ぼし、風味が低下するという課題があった。
本発明者は、以上のような風味を主とする課題がある中で、食塩含量を低減させた場合に生ずる風味上の課題について検討してきた。
【0007】
本発明の課題は、低食塩含量であるにもかかわらず、風味の良好な容器詰つゆを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、風味良好で有用な容器詰つゆについて検討してきた結果、ナトリウム、グルタミン酸及びスレオニンを特定量含有することにより、低食塩含量であるにもかかわらず、適度なうま味、だし感を有し、味のまとまりがある風味良好な容器詰つゆが得られることを見出した。
本願において「うま味」とはアミノ酸、核酸、有機酸などに由来するおいしさのことであり、「だし感」とはうま味だけでなく、鰹節や昆布やしいたけ等の味の深みや香りであり、「味のまとまり」とは塩味、うま味、甘味のバランスのことである。
【0009】
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)ナトリウム 1.4〜3.4質量%
(B)グルタミン酸 1.0〜2.0質量%
(C)スレオニン 0.03〜0.23質量%
を含有し、(B)グルタミン酸/(A)ナトリウム比が0.4〜0.8である容器詰つゆを提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低食塩含量であるにもかかわらず、適度なうま味、だし感を呈し、味のまとまりがある風味良好な容器詰つゆを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のつゆとは、しょうゆ、だし等を含有する液体状の調味料をいい、しょうゆを1%以上、好ましくは3〜70%、より好ましくは5〜50%、更に5〜40%、殊更5〜30%含有するものをいう。
【0012】
本発明のつゆは、しょうゆに糖類及び風味原料(かつおぶし、こんぶ、乾しいたけ等をいう。)から抽出した「だし」を加えたもの又はこれにみりん、食塩その他の調味料を加えたものであって、直接又は希釈して、めん類、惣菜等のつけ汁、かけ汁として用いる液体をいい、めんつゆ、煮物つゆ、鍋物つゆ、天つゆ、汎用つゆ等が挙げられる。めんつゆとしては、そばつゆ、うどんつゆ、そうめんつゆ、冷麦つゆ、中華めんつゆ、冷やし中華つゆ等が例示される。
【0013】
本発明のつゆの原料として使用されるしょうゆとしては、濃口しょうゆ、淡口しょうゆ、たまりしょうゆ、低塩しょうゆ、減塩しょうゆ等を挙げることができるが、製品100g中のナトリウム量が3.55g超〜5.5g以下の低塩しょうゆ、3.55g以下である減塩しょうゆを用いるのが、食塩摂取量、風味バランスの点で好ましい。
【0014】
本発明の容器詰つゆ(以下、単に「つゆ」や「本発明品」とも記載する)においては、(A)ナトリウム、(B)グルタミン酸及び(C)スレオニンを特定量含有する。
【0015】
本発明のつゆは、(A)ナトリウムを1.4〜3.4質量%(以下、単に「%」で示す)含有するが、好ましくは1.5〜3.3%、更に1.7〜3.2%、特に2.0〜3.0%含有するのが、希釈して使用する場合に程よい塩味とうま味が発現する点で好ましい。またナトリウムの過剰摂取抑制、風味バランス、しょうゆ感発現、保存性、工業的生産性の点で好ましい。
【0016】
本発明において、ナトリウムは、食品成分表示上の「ナトリウム」又は「Na」を指し、つゆ中にイオンの形態で含有されているものをいう(以下に記載するナトリウム以外のアルカリ金属又はアルカリ土類金属についても同様である)。
【0017】
本発明のつゆにナトリウムを含有させる場合には、無機ナトリウム塩、有機酸ナトリウム塩、アミノ酸ナトリウム塩、核酸ナトリウム塩等を用いることができる。具体的には、塩化ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム、これらの2種以上の混合物が挙げられる。これらのうち、塩化ナトリウムを食塩という形態で使用するのが、コストの点で好ましい。
【0018】
食塩として、様々なものが市販されているが、乾燥物基準で塩化ナトリウム100質量部(以下、単に「部」で示す)に対して、塩化マグネシウムを0.01〜2部、塩化カルシウムを0.01〜2部、塩化カリウムを0.01〜2部含有するものが、風味、工業的生産性の点で好ましい。
【0019】
本発明のつゆ中のナトリウム(Na)の含有量は原子吸光光度計により測定することができる。
【0020】
本発明のつゆ中の(B)グルタミン酸の含有量は1.0〜2.0%であるが、好ましくは1.1〜1.9%、より好ましくは1.2〜1.8%、特に1.2〜1.7%であるのが、うま味の点で好ましい。
【0021】
本発明のつゆ中のグルタミン酸(Glu)の含有量は、しょうゆ由来の遊離グルタミン酸量と、しょうゆ以外から添加される原料由来の遊離グルタミン酸量との合計量をいい、ペプチド体を含まない。すなわち、しょうゆ以外から添加される原料とは、調味料の原料として用いられる日本酒、ワイン等の酒、味醂(本みりん、みりん風調味料、塩みりん等)等の醸造調味料(しょうゆを除く)の他、植物エキス、動物エキス、酵母エキス等の各種エキス、蛋白加水分解物等の調味料、又はアミノ酸そのものをいう。なお、グルタミン酸の含有量は、アミノ酸分析装置を用いて測定することができる(「しょうゆ試験法」、(財)日本しょうゆ研究所編集、(株)醤協通信社販売、昭和60年)。グルタミン酸としては、L−グルタミン酸、D−グルタミン酸、DL−グルタミン酸、これらの塩を使用することができるが、L−グルタミン酸、L−グルタミン酸ナトリウムが好ましく、特にL−グルタミン酸ナトリウムが好ましい。
【0022】
なお、グルタミン酸ナトリウムを用いた場合、ナトリウムは成分(A)、グルタミン酸は成分(B)として、本発明を構成するものとする。
【0023】
本発明のつゆ中の(C)スレオニンの含有量は0.03〜0.23%であるが、好ましくは0.05〜0.23%、より好ましくは0.07〜0.22%、特に0.1〜0.15%であるのが、うま味、だし感、味のまとまりの点で好ましい。
【0024】
本発明のつゆ中のスレオニン(Thr)の含有量は、しょうゆ由来の遊離スレオニン量と、しょうゆ以外に新たに添加した原料由来の遊離スレオニン量との合計量をいい、ペプチド体を含まない。すなわち、しょうゆ以外に新たに添加した原料とは、調味料の原料として用いられる日本酒、ワイン等の酒、味醂(本みりん、みりん風調味料、塩みりん等)等の醸造調味料(しょうゆを除く)の他、植物エキス、動物エキス、酵母エキス等の各種エキス、蛋白加水分解物等の調味料、又はアミノ酸そのもの等をいう。なお、スレオニンの含有量は、前述のアミノ酸分析装置を用いて測定することができる。アミノ酸として添加するスレオニンは、L−スレオニン、D−スレオニン、DL−スレオニン、これらの塩を使用することができるが、L−スレオニンが好ましい。
【0025】
本発明において、成分(A)と成分(B)との質量比(B)/(A)は0.4〜0.8であり、より好ましくは0.48〜0.74、更に0.5〜0.72であるのが、うま味、味のまとまりの点で好ましい。
【0026】
本発明のつゆにおいて、成分(A)、(B)、(C)がいずれも所定量含まれるとき、成分(B)と成分(C)との質量比(Glu/Thr)は、5〜30であるのが好ましく、更に6〜20、特に7〜15、殊更9〜13であるのが、うま味、だし感、味のまとまり、風味バランスの点で好ましい。
【0027】
本発明のつゆは、(D)カリウムを含有してもよい。この場合のカリウム(以下、Kとも記載する)の含有量は0.8%未満であるのが好ましく、より好ましくは0.01〜0.7%、更に0.02〜0.6%、特に0.03〜0.5%、殊更0.04〜0.4%であることが、苦味や刺激味といったカリウム由来の異味を生じない点から好ましい。
【0028】
本発明において、カリウム(K)の含有量は前記ナトリウム(Na)の含有量の測定の場合と同様に、原子吸光光度計により測定することができる。
【0029】
本発明のつゆにおいて、成分(A)、(B)、(C)、(D)がいずれも所定量含まれるとき、成分(A)と(B)の和と、成分(C)と(D)の和との質量比((Na+Glu)/(Thr+K))は、8〜40であるのが好ましく、更に11〜35、特に12〜26、殊更18.5〜21であるのが、ナトリウムの過剰摂取抑制、風味バランス、しょうゆ感発現、保存性、工業的生産性、うま味、だし感、味のまとまりの点で好ましい。
【0030】
本発明のつゆは、(E)糖類を5〜25%含有するのが好ましく、より好ましくは6〜22%、更に7〜20%、特に8〜19%、殊更9〜17%であるのが、カリウム由来の異味抑制、保存性、だし感発現、柑橘果汁感発現、コク・厚みのあるしょうゆ感発現、塩味、風味バランスの点で好ましい。糖類としては、グルコース、ガラクトース、アラビノース、フルクトース、シュークロース、マルトース、液糖、転化糖、水飴、澱粉、デキストリン等のほか、エリスリトール、グリセロール、ソルビトール、トレハロース、還元水あめ等の糖アルコールも例示されるが、グルコース、フルクトース、シュークロース、これらの2種以上の混合物が好ましい。本発明において、エリスリトールの含有量は3%未満であるのが好ましく、更に0〜2%、特に0.01〜1%であるのが、甘味、風味バランスの点で好ましい。
【0031】
本発明のつゆにおいて、糖類の含有量は、液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して、測定することができる(「しょうゆ試験法」、(財)日本醤油研究所編集、(株)醤協通信社販売、昭和60年)。
【0032】
本発明のつゆは、コハク酸、イノシン酸、グアニル酸から選ばれる1種又は2種以上の(F)うま味調味料を添加しても良い。この場合のうま味調味料の添加量は、0.01〜2%とするのが、コク・厚みのあるしょうゆ感付与、風味バランスの点で好ましい。うま味調味料は、更に0.01〜1.5%、特に0.01〜1.2%であるのが好ましい。
【0033】
本発明のつゆにおいて、成分(F)としてコハク酸を用いる場合は、コハク酸塩を使用するのが好ましい。例えば、コハク酸二ナトリウムを使用する場合、ナトリウムの部分は成分(A)として、コハク酸の部分は成分(F)として、本発明を構成するものとする。
【0034】
本発明のつゆにおいて、成分(F)としてイノシン酸、グアニル酸といった核酸系調味料を用いる場合は、イノシン酸ナトリウムやグアニル酸ナトリウムといった塩を使用するのが好ましい。例えば、イノシン酸ナトリウム(5’−イノシンモノリン酸二ナトリウム)を使用する場合、ナトリウムの部分は成分(A)として、イノシン酸の部分は成分(F)として、本発明を構成するものとする。
【0035】
本発明のつゆは、しょうゆをベースとし(A)ナトリウム、(B)グルタミン酸、(C)スレオニンが所定量となるよう調整し、攪拌、混合、溶解した調味液を容器に充填することにより、製造することができる。必要に応じて、その他の成分として、うま味調味料、糖類の他、酸味料、無機塩、酸、賦形剤、香辛料、うま味以外の調味料、抗酸化剤、着色料、保存料、強化剤、乳化剤、ハーブ、野菜等の食品に使用可能な原料や、水を配合してもよい。
【0036】
また、塩分(ナトリウム含量)を低下させた減塩しょうゆや低塩しょうゆを原料として本発明のつゆを調整する場合は、生しょうゆを電気透析、又は塩析/希釈により食塩含量を低下させた生しょうゆ(減塩生しょうゆ、低塩生しょうゆ)を調製し、火入れ工程後、成分(A)、(B)及び(C)などを混合する方法、又は、火入れ工程後のしょうゆを電気透析、又は塩析/希釈することにより食塩含量を低下させたしょうゆ(減塩しょうゆ、低塩しょうゆ)を調製し、成分(A)、(B)及び(C)などを混合する方法等により製造することができる。
【0037】
本発明のつゆは、加熱処理を施して製造するのが好ましい。つゆを容器に充填後、加熱処理を行ったり、つゆを予めプレート式熱交換器などで加熱処理した後に、容器に充填して製造することができる。加熱温度は60℃以上であることが好ましく、より好ましくは70〜130℃、更に75〜120℃、特に80〜100℃、殊更85〜95℃で加熱することが、風味、安定性、色等の点から好ましい。加熱時間は、加熱温度により異なるが、60℃の場合は10秒〜120分、更に30秒〜60分、特に1分〜10分、殊更2分〜5分であることが、風味、安定性、色等の点から好ましい。80℃の場合は、2秒〜60分、更に5秒〜30分、特に10秒〜10分、殊更30秒〜5分であるのが、風味、安定性、色等の点から好ましい。90℃の場合は、1秒〜30分、更に2秒〜10分、特に5秒〜5分、殊更10秒〜2分であるのが、風味、安定性、色等の点から好ましい。また、加熱温度と加熱時間を組合せて、60〜70℃で10分以上加熱した後、80℃で1分以上加熱する方法でもよい。
【0038】
本発明のつゆは、容器に充填されたものである。本発明に使用される容器の容量は5mL〜20Lであるのが好ましく、次に好ましくは10mL〜5L、より好ましくは50mL〜2L、更に100mL〜1L、特に200mL〜800mL、殊更300〜600mLであるのが、安定性、使い勝手の点で好ましい。本発明に使用される容器は、一般のつゆと同様にポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、紙容器、合成樹脂製の袋、ガラス瓶などの通常の形態で提供することができる。紙容器としては、紙基材とバリア性層(アルミニウム等の金属箔、エチレン−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニリデン系重合体など)とヒートシール性樹脂層とを含む積層材を製函したものなどが挙げられる。
【0039】
更に、本発明に使用する容器は、その酸素透過指数が0.8(cm3/day・m2)以下であることが好ましい。本発明でいう「酸素透過指数」とは、JIS法(K 7126 B法)により求められる「酸素透過度」(単位:cm3/day・bottle)を容器の表面積で除して、その材料1m2当たりに換算した値をいう。酸素透過度は、具体的にはMOCON社製装置を用いて、試験片(容器)の一方に酸素を供給し、もう一方に等圧で窒素キャリアーガスを流し、透過した酸素を酸素検知器を用いて測定された値(20℃、相対湿度60%)のことである。本発明に用いる容器の酸素透過指数は、好ましくは0〜0.6、より好ましくは0〜0.4、更に0.01〜0.2、特に0.02〜0.15、殊更0.05〜0.12であるのが、保存性、風味維持の点から好ましい。
【0040】
本発明のつゆを、容器から出して食品の製造・加工・調理に使用することで、しょうゆ感、良好な風味バランスなどの改善効果が得られる。従って、本発明は、風味改善方法、食品の加工・調理方法、食品の製造方法としても有用である。
【0041】
本発明のつゆは、各種食品に使用することができる。本発明のつゆを用いることで、食塩含量が低いにもかかわらず適度なうま味とだし感を呈することから、塩分量が少ない食品の設計が可能となる。
【0042】
本発明のつゆを使用した食品としては、喫食時に食塩が含まれるものであれば特に制限はないが、例えば、お浸し、鍋物、煮物、揚げ物、焼き物、蒸し物、酢の物等の調理食品が挙げられる。すなわち、本発明のつゆの食品への用途(使用方法)としては、これらの食品に直接つゆをかける用途、これらの食品をつゆにつける用途、つゆと食材を用いて調理する用途、つゆを用いて加工食品を製造する用途などが例示される。
【0043】
本発明のつゆの、食品中の含有量は0.01〜50%であるのが好ましく、更に0.05〜30%、特に0.1〜20%、殊更0.5〜10%であるのが風味バランス、ナトリウムや食塩摂取量の点で好ましい。
【実施例】
【0044】
(Na及びKの分析方法)
Na及びKの含有量は、原子吸光光度計(偏光ゼーマン原子吸光光度計 日立 Z−6100)を用いて測定した。
【0045】
(1)実施例1〜13、比較例1〜7
表1及び2に示す配合で、しょうゆ(特選丸大豆しょうゆ、キッコーマン(株))、上白糖(三井製糖(株))、食塩(株式会社 日本海水)、L−グルタミン酸ナトリウム(キリン協和フーズ(株))、L−スレオニン(キリン協和フーズ(株))、だし汁及び水をガラス製サンプル瓶(500mL)に450mL入れて閉栓した。次いで90℃温浴に1分間浸漬加熱して、溶解し、容器詰つゆを製造した。
尚、だし汁は以下の方法で調製した。鍋に水100部とかつお節10部、昆布2部を入れて、ガス火(都市ガス流量2L/分)で20分間加熱した。加熱前後の重量を測定し、加熱により減量した分の水を添加した後、これをクッキングペーパー(リードヘルシークッキングペーパー、ライオン(株))でろ過して、だし汁を得た。
【0046】
これらのつゆの風味について、そのまま舐めて官能評価を行った。3名の専門パネリストで評価し、その平均点を評価の値とした。評価基準を以下に示す。結果を表1及び2に示す。
【0047】
<うま味>
5:うま味が非常にある。
4:うま味がある。
3:若干うま味が足りないが問題ない。
2:うま味が物足りない。
1:うま味が非常に物足りない。
<だし感>
5:味・香りともにだし感がとても強い。
4:味・香りともにだし感が強い。
3:だしの香りはやや弱いが、味はだし感がある。
2:味・香りともにだし感がやや弱い。
1:味・香りともにだし感が弱い。
<味のまとまり>
5:塩味、うま味、甘味のバランスがとても良い。
4:塩味、うま味、甘味のバランスが良い。
3:塩味、うま味、甘味のバランスがやや崩れているが問題ない。
2:塩味、うま味、甘味のバランスが崩れていて、やや悪い。
1:塩味、うま味、甘味のバランスが悪い。
<総合評価>
うま味、だし感、味のまとまりの評価で、最も低い数字を総合評価の値とした。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
次に、調理評価(ざるそば)を行った。調理方法および評価結果を以下に示す。
<調理方法>
市販のそば(蕎麦通の更科八割、株式会社おびなた)を熱湯で3分間茹でて、ザルにあけて流水ですすいでから、よく水を切った。そばつゆは、実施例2、比較例2及び6のつゆを夫々に水で2倍(容量)に希釈して調製した。
そばつゆにそばをつけて、上記方法に従って、官能評価を行った。
【0051】
<評価結果>
実施例2は、食べた瞬間のだし感が強く、うま味、持続感、味のまとまりもあり良好な風味であった。一方、比較例2及び6は、だし感や味が弱く、そばの風味に負けていた。
【0052】
さらに、調理評価(卵焼き)を行った。調理方法および評価結果を以下に示す。
<調理方法>
鶏卵をよく溶いた溶き卵60gに、実施例2、比較例2及び6の夫々のつゆ10gを加えかき混ぜた。次いで、市販の油(日清キャノーラ油、日清オイリオグループ(株))1gを入れた卵焼き器(アルミニウム製テフロンコーティング、18cm×13cm)に、これを入れ、ガス火で焼きながら(都市ガス流量2L/分)3回巻いて、卵焼きを作製した。
【0053】
<評価結果>
実施例2を使用した卵焼きはうま味とコクがあり、その持続感、味のまとまりも有し良好な風味であった。一方、比較例2及び6を使用した卵焼きはうま味が物足りず、コクも弱く感じられた。
【0054】
以上の実施例のとおり、減塩つゆにグルタミン酸とスレオニンとを特定量含むことで、適度なうま味、だし感を有し、味のまとまりがある風味良好な容器詰つゆが得られた。また、このつゆを料理に使用しても、だし感やうま味、味のまとまりを有し風味良好であることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)ナトリウム 1.4〜3.4質量%
(B)グルタミン酸 1.0〜2.0質量%
(C)スレオニン 0.03〜0.23質量%
を含有し、(B)グルタミン酸/(A)ナトリウム比が0.4〜0.8である容器詰つゆ。
【請求項2】
(D)カリウムの含有量が0.8質量%未満である請求項1に記載の容器詰つゆ。
【請求項3】
(B)グルタミン酸の含有量が1.2〜1.7質量%である請求項1または2に記載の容器詰つゆ。
【請求項4】
(C)スレオニンの含有量が0.1〜0.15質量%である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の容器詰つゆ。
【請求項5】
(A)ナトリウムの含有量が2〜3質量%である請求項3または4に記載の容器詰めつゆ。

【公開番号】特開2011−229469(P2011−229469A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103502(P2010−103502)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】